説明

迅速脱灰・脱脂・固定装置

【課題】
固定工程、脱脂工程、脱灰工程を行える超音波を用いた生体組織処理装置を提供する。
【解決手段】
液を貯める槽1と、槽内に超音波を照射する手段2と、槽内の液を加熱する手段3と、槽内の液を冷却する手段5を備えている。固定工程、脱脂工程では加熱手段3により槽内を約60℃にし、超音波を照射する。この時冷却手段5はOFFにする。脱灰工程では冷却手段5により槽内を約10℃にし、超音波を照射する。この時加熱手段3はOFFにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病理検査の生体組織標本作製工程の、特に生体組織の脱灰工程及び脱脂工程及び固定工程に使用される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病理診断用の生体組織切片作製には、固定液にホルマリン、脱水剤にアルコール、中間処理剤にキシレンを用い、生体組織のホルマリンによる固定工程からアルコールによる脱水工程、キシレンによる中間処理工程、パラフィンによるパラフィン浸透工程等の工程を経た後、パラフィンの充填を行いパラフィンブロックを作製する。その後パラフィンブロックの薄切を行い、スライドガラスに貼り付けた後キシレンによる脱パラフィン、脱キシレン、脱アルコール等を行い、各種の染色法で染色してカバーグラスをかけるという手順を踏む。
【0003】
生体の一部を数ミリから1〜2cm程採取してきて検査する生検材料では、これらの過程に通常2〜3日間かかっており、最終診断が出るのに3〜5日必要である。このうち組織の固定工程からパラフィン包埋工程までの組織包埋が大部分の時間を占めている。
【0004】
病理検体の中でも特に骨の脱灰工程は、蟻酸やEDTAなどの脱灰液に4日〜7日浸けてカルシウムを抜いた後に検体の作製を行う。従って最終診断までに7日〜10日要している。
【0005】
脂肪組織の脱脂には1〜2日を要している。
【0006】
最近、生検材料では組織のホルマリンによる固定工程からアルコールによる脱水工程、キシレンによる中間処理工程、パラフィンによるパラフィン浸透工程等の工程で超音波を照射し、且つこの時の温度を約60℃にする事で短時間に組織診断用の病理組織検体を作製できる様になった。
【0007】
脂肪組織においても、固定工程、脱脂工程、脱水工程、中間処理工程、パラフィン浸透工程等の工程で超音波を照射し、且つこの時の温度を約60℃にする事で短時間に組織診断用の病理組織検体を作製できる様になった。
【0008】
また脱灰工程においても超音波を照射し、且つこの時の温度を約10℃にする事で短時間に組織診断用の病理組織検体を作製できる様になった。
【特許文献1】特願2004−163339
【特許文献2】特願2004−163356
【特許文献2】特願2004−163359
【非特許文献1】医歯薬出版株式会社発行 臨床検査学講座 病理学/病理検査学
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
固定工程、脱脂工程、脱灰工程を行える超音波を用いた生体組織処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、液を貯める槽と、槽内に超音波を照射する手段と、槽内の液を加熱する手段と、槽内の液を冷却する手段を備え、固定工程、脱脂工程では加熱手段により槽内を約60℃にし、超音波を照射する。この時冷却手段はOFFにする。
【0011】
脱灰工程では冷却手段により槽内を約10℃にし、超音波を照射する。この時加熱手
段はOFFにする。
【発明の効果】
【0012】
1台の装置で、槽内の液を加熱する手段と、槽内の液を冷却する手段を切り替え超音
波を照射することで、固定工程、脱脂工程、脱灰工程の処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1に示す。
【0014】
処理槽1には超音波を照射する手段2と加熱手段であるヒーター3、温度センサ4および冷却器5が取り付けられている。
フレーム6の操作パネル7には固定・脱灰切り替えスイッチ8、タイマー9、温度指示計10、スタートスイッチ11が設けられている。
組織12は、薬液13とともにビーカー14に入れ、処理槽1にセットする。
【0015】
固定工程
1、 処理槽1に水15を入れる。

2、 ビーカー14内に10%〜20%緩衝ホルマリンを入れ、処理槽1内にセットする。

3、 温度指示計10で処理槽1内の温度を60℃に設定する。

4、 ビーカー14に生体組織を入れ処理を開始する。

【0016】

脱脂工程

1、 処理槽1に水15を入れる。

2、 ビーカー14内にアルコールを入れ、処理槽1内にセットする。

3、 温度指示計10で処理槽内の温度を60℃に設定する。

4、 ビーカー14に脂肪組織を入れ処理を開始する。

【0017】

脱灰工程

1、 処理槽1に水15を入れる。

2、 ビーカー14内に脱灰液を入れ、処理槽1内にセットする。

3、 温度指示計10で処理槽1内の温度を10℃に設定する。

4、 ビーカー14内に脂肪組織をセットし処理を開始する。

【図面の簡単な説明】
【0018】

【図1】本発明の構成の例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】

1 処理槽
2 超音波を照射する手段
3 ヒーター
4 温度センサ
5 冷却器
6 フレーム
7 操作パネル
8 固定・脱灰切り替えスイッチ
9 タイマー
10 温度指示計
11 スタートスイッチ
12 組織
13 薬液
14 ビーカー
15 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を貯める槽と、槽内に超音波を照射する手段と槽内の液を加熱する手段と、槽内の液を冷却する手段を備えていることを特徴とする生体組織処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−93254(P2007−93254A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279521(P2005−279521)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000146445)株式会社常光 (35)
【出願人】(503052911)
【出願人】(504212057)
【Fターム(参考)】