近傍電磁界測定法ならびに近傍電磁界測定装置
【課題】
近年,情報通信の高速化,大容量化に伴い,電子機器の動作周波数が高くなっているため,不要電磁波の発生の問題が深刻化になっている。これらの電子機器から放射される不要電磁波の位置と原因を特定するために,近傍電磁界を高精度で測定する必要がある。しかし,近傍電磁界の測定では,プローブとそれにつなぐケーブルが近傍電磁界に影響を及ぼすために,高精度な近傍電磁界の測定が困難であるという課題があった。
【解決手段】
本発明では,電磁界プローブとして無線でかつ小形の変調散乱素子を用いた近傍電磁界の測定法を考案し、ローカル信号発生器、変調散乱素子、分析器とで近傍電磁界測定装置を構成することで高精度な近傍電磁界の測定を可能にした。
近年,情報通信の高速化,大容量化に伴い,電子機器の動作周波数が高くなっているため,不要電磁波の発生の問題が深刻化になっている。これらの電子機器から放射される不要電磁波の位置と原因を特定するために,近傍電磁界を高精度で測定する必要がある。しかし,近傍電磁界の測定では,プローブとそれにつなぐケーブルが近傍電磁界に影響を及ぼすために,高精度な近傍電磁界の測定が困難であるという課題があった。
【解決手段】
本発明では,電磁界プローブとして無線でかつ小形の変調散乱素子を用いた近傍電磁界の測定法を考案し、ローカル信号発生器、変調散乱素子、分析器とで近傍電磁界測定装置を構成することで高精度な近傍電磁界の測定を可能にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な近傍電磁界の測定を行うための,ワイヤレスでかつ小形な変調散乱素子(Modulated
Scattering Element, MSE)を用いた近傍電磁界測定法ならびに、近傍電磁界測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,電子機器の動作周波数の向上と共に,広帯域化,低電圧化,小型化が進んでいるため,電子機器から放出される不要電磁波の問題が深刻になっている。不要電磁波の抑制法について,多数の研究報告が発表されているが(非特許文献1),ほとんどの方法は不要電磁波の発生源が特定できる前提で考案されている。そのため,電子機器の近傍電磁界を正確に測定し,不要電磁波の発生源を特定できる技術が必要である。通常,近傍電磁界を測定する際,測定用電磁界プローブとそのケーブルが、測定する近傍電磁界の分布に影響を与え,本来の電磁界分布を高精度で測定することが困難である。プローブを小型化することにより,プローブの影響を低減することができるが,受信感度も悪くなり,受信S/Nが劣化してしまうと言う欠点がある。また,プローブのケーブルの影響がプローブの小型化により相対的に大きくなり,その影響を補償することも困難である。光プローブのケーブルでは電磁界に影響を与えず,高精度の測定が可能であるが,高周波の領域での適用が難しく,システムのコストが高いという問題点がある。
【非特許文献1】入江泰行,陳強,澤谷邦男, ”変調散乱ダイポールアレーを用いた電磁界分布の測定”, 電子情報通信学会総合大会,2003 年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年,情報通信の高速化,大容量化に伴い,電子機器の動作周波数が高くなっているため,不要電磁波の発生の問題が深刻化になっている。これらの電子機器から放射される不要電磁波の位置と原因を特定するためには精密な測定が必要である。しかし,上記のように従来の技術では、近傍電磁界の測定において,プローブとそれにつなぐケーブルが近傍電磁界に影響を及ぼすために,高精度な近傍電磁界の測定が困難であり、特に非侵襲的近傍電磁界の測定が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、近傍電磁界を高精度で測定する近傍電磁界測定法ならびに近傍電磁界測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を得ることにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法を提供する。
【0006】
また本発明は、電磁界強度分布測定装置において、ローカル発信器と、該ローカル発信器の出力を送出する送信アンテナと、該送信アンテナの出力を受けかつ被測定波源の電磁界で変調される変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナと、該受信アンテナの出力を分析する分析器とで構成されることを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0007】
更に詳しく言えば、本発明は、電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を測定することにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法を提供する。
【0008】
また、本発明は、電磁界強度分布測定装置において、ローカル信号発生器と、該ローカル信号発生器の出力および被測定波源からの電磁界を受け前期被測定波源の電磁界で変調された変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信、分析する分析手段とを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0009】
本発明の具体化において、前記分析手段がスペクトラムアナライザーであることを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0010】
更なる本発明の具体例として、前記変調散乱素子は、絶縁基板上に層状に形成された半波長ダイポールアンテナと、該半波長ダイポールアンテナの中心部に設置された変調ダイオードとを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0011】
また、更なる本発明の具体例として、前記半波長ダイポールアンテナの長さは前記ローカル信号発生器の発するローカル周波数の半波長またはその整数倍であることを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0012】
また、更なる本発明の具体例として、前記半波長ダイポールアンテナが線状ダイポールアンテナであることを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0013】
また、更なる本発明の具体例として、前記ローカル信号発生器はその出力を送信する送信アンテナを含み、かつ、前記分析手段は前記変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0014】
また、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは対数周期アンテナであること、或いは、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは標準ホーンアンテナであることも解決手段である。
【0015】
更に、ローカル信号を発生させて送信アンテナから送出し、該ローカル信号を該送信アンテナから受信して変調散乱素子によって被測定波源の電磁界で変調させ、変調された信号を受信アンテナで受信して分析する近傍電磁界測定方法において、前記変調散乱素子と、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとの相対位置を固定して測定することを特徴とする近傍電磁界測定方法も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワイヤレスでかつ小形な変調散乱素子(Modulated Scattering Element, MSE)を用いプローブの影響を低減し、測定精度とダイナミックレンジが向上図り、非侵襲的近傍電磁界の測定が可能となるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態による近傍電磁界測定装置の概略構成を示す図である。以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に変調散乱素子を用いた近傍電磁界の測定システムを示す。近傍電磁界測定システムは変調散乱素子1,ローカル信号発生器2,スペクトラムアナライザ3,ローカル信号発生器2の出力の送信アンテナ4,変調散乱素子1により変調された変調信号を受信する受信アンテナ5から構成される.変調散乱素子1は被測定波源6の近傍に置かれており,プローブとして使われる.送信アンテナ4が周波数
のローカル信号を送信し,被測定波源6から周波数
の電磁波を放射するとする。二つの信号が変調散乱素子1において変調され,
,
,・・・という周波数をもつ変調信号が変調散乱素子1から再放射される。放射された変調信号が受信アンテナ5に受信され,その振幅がスペクトラムアナライザ3によって測定される.
【0019】
図2に5GHzと10GHzで動作する2つの変調散乱素子1を示す.変調散乱素子1はテトラフルオロエチレンのフッ素系重合体基板に作られるプリント半波長ダイポールアンテナとプリント半波長ダイポールアンテナの中心に挿入される変調ダイオードから構成される。プリント半波長ダイポールアンテナの長さはローカル周波数の半波長で,被測定周波数に依存しない。ローカル周波数は被測定周波数より遥かに高く設定されるため,変調散乱素子は長さが短く,しかも無線で作られており,被測定電磁界に与える影響が小さい。
【0020】
変調散乱素子1は様々のアンテナから作られるが,本発明では直線偏波を測定するため,線状ダイポールアンテナを使用している。
【0021】
電磁界分布の測定は電磁界の放射源をYZ平面に移動することにより行われる。YZ平面走査装置(不図示)はGPIB経由でコンピュータ(不図示)に制御されている。測定中に変調散乱素子1,送信アンテナ4、受信アンテナ5は固定されるため,変調散乱素子1と送信アンテナ4、受信アンテナ5の相対位置は固定である。受信用のスペクトラムアナライザ3はコンピュータに制御され,自動測定が行われる。
【0022】
本発明による2つのシステムが構築されている。1つのシステムでは,ローカル周波数は5GHzで,送信アンテナ4、受信アンテナ5として対数周期アンテナが用いられる。図3に本システムの線形性の測定値(1)を示す。ダイナミックレンジ30dBの範囲で線形性が保たれ,約2dBの誤差が含まれることがわかる。
【0023】
もう1つのシステムでは,ローカル周波数は10GHzで,送信アンテナ4、受信アンテナ5として標準ホーンアンテナが使用されている。10GHzの空間伝送損失が大きいため,受信側に30dBのプリアンプを使用する.図4に本システムの線形性の測定値を示す。5GHzシステムとほぼ同じ結果を得たことが分かる。
【0024】
本測定システムを用いて,長さ15センチの標準ダイポールアンテナの近傍界分布を測定した結果を示す。
【0025】
最初に,アンテナから2cm離れた25cm×15cmの平面における電界の
成分を測定した。図5-8に周波数500MHzと1GHzにおける測定値とFDTDによる計算値を示す。値は最大値に規格化されており,-20dBから0dBまでの範囲で表示されている。500MHzにおいては,測定値と計算値はほぼ位置しているが,周波数が高くなると,測定精度が落ちていることが分かる。
【0026】
次に,変調散乱素子1と被測定アンテナ間の距離を変えて,測定を行った。ローカル周波数を10GHzに固定し,距離を2cmと6cmとした。図9-12は測定値とFDTDによるシミュレーションの結果も示している。両者は完全に一致いていないものの,電磁界分布の傾向がほぼ同じであることが分かる。
【0027】
本発明による非侵襲的な近傍電磁界測定法によると、測定結果から,ダイナミックレンジが30dBの範囲で誤差が2dB程度ということが分かった。低周波においては実測値と計算値とほぼ一致していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る近傍電磁界測定法は、情報通信機器、電子機器の不要電磁波発生源の特定等の様々な分野に適用できる。
【0029】
また本発明の近傍電磁界測定法を組み込んだ近傍電磁界測定装置は、近傍電磁界の分布に影響を与えず、本来の電磁界分布を高精度で測定できる測定装置として広く用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態による近傍電磁界測定装置の構成図である。
【図2】本発明による変調散乱素子
【図3】本システムの線形性の測定値(1)
【図4】本システムの線形性の測定値(2)
【図5】本システムの測定データ(1)
【図6】本システムの測定データ(2)
【図7】本システムの測定データ(3)
【図8】本システムの測定データ(4)
【図9】本システムの測定データ(5)
【図10】本システムの測定データ(6)
【図11】本システムの測定データ(7)
【図12】本システムの測定データ(8)
【符号の説明】
【0031】
1 変調散乱素子
2 ローカル信号発生器
3 スペクトラムアナライザー
4 送信アンテナ
5 受信アンテナ
6 被測定波源
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な近傍電磁界の測定を行うための,ワイヤレスでかつ小形な変調散乱素子(Modulated
Scattering Element, MSE)を用いた近傍電磁界測定法ならびに、近傍電磁界測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,電子機器の動作周波数の向上と共に,広帯域化,低電圧化,小型化が進んでいるため,電子機器から放出される不要電磁波の問題が深刻になっている。不要電磁波の抑制法について,多数の研究報告が発表されているが(非特許文献1),ほとんどの方法は不要電磁波の発生源が特定できる前提で考案されている。そのため,電子機器の近傍電磁界を正確に測定し,不要電磁波の発生源を特定できる技術が必要である。通常,近傍電磁界を測定する際,測定用電磁界プローブとそのケーブルが、測定する近傍電磁界の分布に影響を与え,本来の電磁界分布を高精度で測定することが困難である。プローブを小型化することにより,プローブの影響を低減することができるが,受信感度も悪くなり,受信S/Nが劣化してしまうと言う欠点がある。また,プローブのケーブルの影響がプローブの小型化により相対的に大きくなり,その影響を補償することも困難である。光プローブのケーブルでは電磁界に影響を与えず,高精度の測定が可能であるが,高周波の領域での適用が難しく,システムのコストが高いという問題点がある。
【非特許文献1】入江泰行,陳強,澤谷邦男, ”変調散乱ダイポールアレーを用いた電磁界分布の測定”, 電子情報通信学会総合大会,2003 年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年,情報通信の高速化,大容量化に伴い,電子機器の動作周波数が高くなっているため,不要電磁波の発生の問題が深刻化になっている。これらの電子機器から放射される不要電磁波の位置と原因を特定するためには精密な測定が必要である。しかし,上記のように従来の技術では、近傍電磁界の測定において,プローブとそれにつなぐケーブルが近傍電磁界に影響を及ぼすために,高精度な近傍電磁界の測定が困難であり、特に非侵襲的近傍電磁界の測定が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、近傍電磁界を高精度で測定する近傍電磁界測定法ならびに近傍電磁界測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を得ることにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法を提供する。
【0006】
また本発明は、電磁界強度分布測定装置において、ローカル発信器と、該ローカル発信器の出力を送出する送信アンテナと、該送信アンテナの出力を受けかつ被測定波源の電磁界で変調される変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナと、該受信アンテナの出力を分析する分析器とで構成されることを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0007】
更に詳しく言えば、本発明は、電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を測定することにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法を提供する。
【0008】
また、本発明は、電磁界強度分布測定装置において、ローカル信号発生器と、該ローカル信号発生器の出力および被測定波源からの電磁界を受け前期被測定波源の電磁界で変調された変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信、分析する分析手段とを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0009】
本発明の具体化において、前記分析手段がスペクトラムアナライザーであることを特徴とする近傍電磁界測定装置を提供する。
【0010】
更なる本発明の具体例として、前記変調散乱素子は、絶縁基板上に層状に形成された半波長ダイポールアンテナと、該半波長ダイポールアンテナの中心部に設置された変調ダイオードとを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0011】
また、更なる本発明の具体例として、前記半波長ダイポールアンテナの長さは前記ローカル信号発生器の発するローカル周波数の半波長またはその整数倍であることを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0012】
また、更なる本発明の具体例として、前記半波長ダイポールアンテナが線状ダイポールアンテナであることを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0013】
また、更なる本発明の具体例として、前記ローカル信号発生器はその出力を送信する送信アンテナを含み、かつ、前記分析手段は前記変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置も提供する。
【0014】
また、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは対数周期アンテナであること、或いは、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは標準ホーンアンテナであることも解決手段である。
【0015】
更に、ローカル信号を発生させて送信アンテナから送出し、該ローカル信号を該送信アンテナから受信して変調散乱素子によって被測定波源の電磁界で変調させ、変調された信号を受信アンテナで受信して分析する近傍電磁界測定方法において、前記変調散乱素子と、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとの相対位置を固定して測定することを特徴とする近傍電磁界測定方法も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワイヤレスでかつ小形な変調散乱素子(Modulated Scattering Element, MSE)を用いプローブの影響を低減し、測定精度とダイナミックレンジが向上図り、非侵襲的近傍電磁界の測定が可能となるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態による近傍電磁界測定装置の概略構成を示す図である。以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に変調散乱素子を用いた近傍電磁界の測定システムを示す。近傍電磁界測定システムは変調散乱素子1,ローカル信号発生器2,スペクトラムアナライザ3,ローカル信号発生器2の出力の送信アンテナ4,変調散乱素子1により変調された変調信号を受信する受信アンテナ5から構成される.変調散乱素子1は被測定波源6の近傍に置かれており,プローブとして使われる.送信アンテナ4が周波数
のローカル信号を送信し,被測定波源6から周波数
の電磁波を放射するとする。二つの信号が変調散乱素子1において変調され,
,
,・・・という周波数をもつ変調信号が変調散乱素子1から再放射される。放射された変調信号が受信アンテナ5に受信され,その振幅がスペクトラムアナライザ3によって測定される.
【0019】
図2に5GHzと10GHzで動作する2つの変調散乱素子1を示す.変調散乱素子1はテトラフルオロエチレンのフッ素系重合体基板に作られるプリント半波長ダイポールアンテナとプリント半波長ダイポールアンテナの中心に挿入される変調ダイオードから構成される。プリント半波長ダイポールアンテナの長さはローカル周波数の半波長で,被測定周波数に依存しない。ローカル周波数は被測定周波数より遥かに高く設定されるため,変調散乱素子は長さが短く,しかも無線で作られており,被測定電磁界に与える影響が小さい。
【0020】
変調散乱素子1は様々のアンテナから作られるが,本発明では直線偏波を測定するため,線状ダイポールアンテナを使用している。
【0021】
電磁界分布の測定は電磁界の放射源をYZ平面に移動することにより行われる。YZ平面走査装置(不図示)はGPIB経由でコンピュータ(不図示)に制御されている。測定中に変調散乱素子1,送信アンテナ4、受信アンテナ5は固定されるため,変調散乱素子1と送信アンテナ4、受信アンテナ5の相対位置は固定である。受信用のスペクトラムアナライザ3はコンピュータに制御され,自動測定が行われる。
【0022】
本発明による2つのシステムが構築されている。1つのシステムでは,ローカル周波数は5GHzで,送信アンテナ4、受信アンテナ5として対数周期アンテナが用いられる。図3に本システムの線形性の測定値(1)を示す。ダイナミックレンジ30dBの範囲で線形性が保たれ,約2dBの誤差が含まれることがわかる。
【0023】
もう1つのシステムでは,ローカル周波数は10GHzで,送信アンテナ4、受信アンテナ5として標準ホーンアンテナが使用されている。10GHzの空間伝送損失が大きいため,受信側に30dBのプリアンプを使用する.図4に本システムの線形性の測定値を示す。5GHzシステムとほぼ同じ結果を得たことが分かる。
【0024】
本測定システムを用いて,長さ15センチの標準ダイポールアンテナの近傍界分布を測定した結果を示す。
【0025】
最初に,アンテナから2cm離れた25cm×15cmの平面における電界の
成分を測定した。図5-8に周波数500MHzと1GHzにおける測定値とFDTDによる計算値を示す。値は最大値に規格化されており,-20dBから0dBまでの範囲で表示されている。500MHzにおいては,測定値と計算値はほぼ位置しているが,周波数が高くなると,測定精度が落ちていることが分かる。
【0026】
次に,変調散乱素子1と被測定アンテナ間の距離を変えて,測定を行った。ローカル周波数を10GHzに固定し,距離を2cmと6cmとした。図9-12は測定値とFDTDによるシミュレーションの結果も示している。両者は完全に一致いていないものの,電磁界分布の傾向がほぼ同じであることが分かる。
【0027】
本発明による非侵襲的な近傍電磁界測定法によると、測定結果から,ダイナミックレンジが30dBの範囲で誤差が2dB程度ということが分かった。低周波においては実測値と計算値とほぼ一致していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る近傍電磁界測定法は、情報通信機器、電子機器の不要電磁波発生源の特定等の様々な分野に適用できる。
【0029】
また本発明の近傍電磁界測定法を組み込んだ近傍電磁界測定装置は、近傍電磁界の分布に影響を与えず、本来の電磁界分布を高精度で測定できる測定装置として広く用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態による近傍電磁界測定装置の構成図である。
【図2】本発明による変調散乱素子
【図3】本システムの線形性の測定値(1)
【図4】本システムの線形性の測定値(2)
【図5】本システムの測定データ(1)
【図6】本システムの測定データ(2)
【図7】本システムの測定データ(3)
【図8】本システムの測定データ(4)
【図9】本システムの測定データ(5)
【図10】本システムの測定データ(6)
【図11】本システムの測定データ(7)
【図12】本システムの測定データ(8)
【符号の説明】
【0031】
1 変調散乱素子
2 ローカル信号発生器
3 スペクトラムアナライザー
4 送信アンテナ
5 受信アンテナ
6 被測定波源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を測定することにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法。
【請求項2】
電磁界強度分布測定装置において、ローカル信号発生器と、該ローカル信号発生器の出力および被測定波源からの電磁界を受け前期被測定波源の電磁界で変調された変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信、分析する分析手段とを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置。
【請求項3】
前記分析手段がスペクトラムアナライザーであることを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項4】
前記変調散乱素子は、絶縁基板上に層状に形成された半波長ダイポールアンテナと、該半波長ダイポールアンテナの中心部に設置された変調ダイオードとを含むことを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項5】
前記半波長ダイポールアンテナの長さは前記ローカル信号発生器の発するローカル周波数の半波長またはその整数倍であることを特徴とする請求項4記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項6】
前記半波長ダイポールアンテナが線状ダイポールアンテナであることを特徴とする請求項4記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項7】
前記ローカル信号発生器はその出力を送信する送信アンテナを含み、かつ、前記分析手段は前記変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナを含むことを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項8】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは対数周期アンテナであることを特徴とする請求項7記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項9】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは標準ホーンアンテナであることを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項10】
ローカル信号を発生させて送信アンテナから送出し、該ローカル信号を該送信アンテナから受信して変調散乱素子によって被測定波源の電磁界で変調させ、変調された信号を受信アンテナで受信して分析する近傍電磁界測定方法において、前記変調散乱素子と、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとの相対位置を固定して測定することを特徴とする請求項1記載の近傍電磁界測定方法。
【請求項1】
電磁界強度分布の測定方法において、被測定波源の発する電磁界により変調散乱素子を変調し、その変調波の変化を測定することにより電磁界強度分布を得ることを特徴とする近傍電磁界測定法。
【請求項2】
電磁界強度分布測定装置において、ローカル信号発生器と、該ローカル信号発生器の出力および被測定波源からの電磁界を受け前期被測定波源の電磁界で変調された変調波を出力する変調散乱素子と、該変調散乱素子の出力を受信、分析する分析手段とを含むことを特徴とする近傍電磁界測定装置。
【請求項3】
前記分析手段がスペクトラムアナライザーであることを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項4】
前記変調散乱素子は、絶縁基板上に層状に形成された半波長ダイポールアンテナと、該半波長ダイポールアンテナの中心部に設置された変調ダイオードとを含むことを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項5】
前記半波長ダイポールアンテナの長さは前記ローカル信号発生器の発するローカル周波数の半波長またはその整数倍であることを特徴とする請求項4記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項6】
前記半波長ダイポールアンテナが線状ダイポールアンテナであることを特徴とする請求項4記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項7】
前記ローカル信号発生器はその出力を送信する送信アンテナを含み、かつ、前記分析手段は前記変調散乱素子の出力を受信する受信アンテナを含むことを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項8】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは対数周期アンテナであることを特徴とする請求項7記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項9】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは標準ホーンアンテナであることを特徴とする請求項2記載の近傍電磁界測定装置。
【請求項10】
ローカル信号を発生させて送信アンテナから送出し、該ローカル信号を該送信アンテナから受信して変調散乱素子によって被測定波源の電磁界で変調させ、変調された信号を受信アンテナで受信して分析する近傍電磁界測定方法において、前記変調散乱素子と、前記送信アンテナと、前記受信アンテナとの相対位置を固定して測定することを特徴とする請求項1記載の近傍電磁界測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−10635(P2006−10635A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191607(P2004−191607)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
[ Back to top ]