説明

近接カウンタ

【課題】近接センサとカウンタ/タイマを含む機械・装置(システム)の高信頼・高安全稼動の予防診断および不具合時の適切な処理を行う。
【解決手段】センサ内蔵の近接ヘッド部と、この近接ヘッド部から入力する検出生データを補正、生成する近接センサ機能部と、近接センサ機能部から検出生データを取り込み、この取り込んだ検出生データからデータ累積/分布および/または設定時間ないし設定時刻等のデータへの加工処理、および加工に際して上位コントローラからのデータとパラメータとを用いることが可能になっているカウンタ/タイマ機能部と、両機能部からのデータを複数別系統にて入出力し、かつ、上位コントローラからのデータを入力してカウンタ/タイマ機能部に出力することが可能な入出力インターフェース機能部と、を備えたもので、近接センサ機能部の検出生データとカウンタ/タイマ機能部による加工データとの2系統の情報を持たせた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサ機能とカウンタ/タイマ機能とを備え、データの共有化技術とプログラムの共有化技術を用いた新規な近接カウンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、機能向上、低価格化した組み込みCPUやASICとこれらの組み込みソフトウエアによる近接センサの故障診断機能(特許文献1)や複合機能化(特許文献2)、シングル/マルチデータとシングル/マルチ命令共有化の種々の組み合わせによる一体化によるさらなる高機能化、高信頼性化、安全化が実現されてきた。
【特許文献1】特開2005−229390号公報
【特許文献2】米国特許6650111号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近接センサにて、距離、位置、速度などをON/OFF検出し、カウンタ/タイマに接続し、これら近接センサやカウンタ/タイマそれぞれの出力を上位コントローラ(上位制御機能)に渡し、上位コントローラではその出力に基づいて例えば工場内の機械や装置等の制御・管理を行うようにした制御システムでは、これら近接センサとカウンタ/タイマとの間では有線や無線による通信が必要で、近接センサの検出生データと完全に同期のとれた上位コントローラの予防診断、信頼性・安全性向上に必要な加工データの作成と近接センサへのフィードバックが困難であり、システム価格も高価である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明においては、単一または複数の組込みCPUやASIC、組込みソフトウエアにより近接センサの補正・制御およびカウンタ/タイマを構築し、これらのデータと制御も一体化できるコンパクトな「近接センサ+カウンタ/タイマ」を構成し、これを含む機械・装置、システムの予防診断を助け、機能・信頼性・安全性を向上することができる近接カウンタを提供しようとするものである。
【0005】
そして、本発明においては、近接センサ機能とカウンタ/タイマ機能とを、独立したモジュールで実現するのではなく、シングルおよびマルチデータ処理ソフトウエアおよびシングルおよびマルチプロセッサにより実現することを可能としたものである。例えば上記両機能をこのシングルおよびマルチプロセッサを含む制御演算にて構成し、この制御演算にSISD(単一命令、単一データストリーム)、SIMD(単一命令複数データストリーム)、MISD(複数命令単一データストリーム)、MIMD(複数命令複数データストリーム)のいずれかの方式を用いることができるようになっている。
【0006】
以上により、
(1)本発明による近接カウンタは、検出物の近接状態を電気信号に変えるセンサ内蔵の近接ヘッド部と、この近接ヘッド部から入力する電気信号値から近接状態の検出生データを補正生成する近接センサ機能部と、上記近接センサ機能部から検出生データを取り込み、この取り込んだ検出生データからデータ累積/分布および/または設定時間ないし設定時刻等のデータへの加工処理、および上記加工に際してはプリセットデータおよび上位コントローラからのデータを用いることが可能になっているカウンタ/タイマ機能部と、上記両機能部からのデータを複数別系統にて入力し、複数別系統にて出力することが可能で、かつ、上記上位コントローラからのデータを入力してカウンタ/タイマ機能部に出力することが可能な入出力インターフェース機能部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、近接ヘッド部には静電誘導型、磁気型、静電容量型、光電型、超音波型などがある。また、入出力インターフェース機能部では、近接センサ機能部にて検出生データを補正し、LED等への表示や、上位機器へ検出生データを出力する系統と、補正された検出生データを、カウンタ/タイマ機能部に入力し、累積や時間・時刻やプリセットデータや上位機器からの設定・指示データでの制御や、上位機器への加工データ出力の系統、等の少なくとも2つの出力系統で構成することができる。
【0008】
(2)本発明において、好ましい態様は、上記カウンタ/タイマ機能部は、上位コントローラからのデータに基づいて当該上位コントローラが機械・装置の異常時での運転管理・制御を行うためのデータを生成することが可能になっている、ことである。
【0009】
この態様では、上位コントローラが機械・装置を運転管理・制御、例えば、緊急停止や限定運転の指示を行う場合に近接カウンタにそのための制御データ加工生成するデータやパラメータを近接カウンタに初期およびリアルタイムに入力設定することができる。近接カウンタにおいては、その入力された制御データに従い検出生データに対してその運転管理・制御のための時間や時刻に関連して加工し、その加工データを上位コントローラに与えることができるようになる。
【0010】
(3)本発明において、さらに別の好ましい態様は、上記カウンタ/タイマ機能部は、上位コントローラからプリセットカウンタとして設定することが可能になっていることである。
【0011】
この態様では、近接カウンタのプリセット(初期設定)および/または接続上位制御機器である上位コントローラからのプリセットで近接センサ検出生データから、時間トレンド、頻度分布、変動範囲などのデータに加工することができるようになる。この場合、機械・装置稼動前のプリセットだけではなく、構成によっては、稼働中のリアルタイム設定も含むことができる。
【0012】
(4)本発明において、さらに別の好ましい態様は、上記近接センサ機能部は、検出生データの各種処理を行うCPU(組込みソフトウエアを含む。以降は組込みソフトウエアを含めてCPUという)と、近接ヘッド部のCPUバスインターフェースに接続されたCPUバスとを備え、上記カウンタ/タイマ機能部は、上記検出生データから上記加工データの生成処理を行うCPUと、入出力インターフェース機能部に接続されたCPUバスとを備え、上記近接センサ機能部のCPUおよびそのCPUバスと、カウンタ/タイマ機能部のCPUとをそれぞれマルチバスに共通接続したことである。
【0013】
この態様では、上記CPUはシングルプロセッサであるが、ソフトウエアをリアルタイム性の強いマルチタスクにして、近接センサとカウンタ/タイマを一体化させるもっと安価な手段である。近接センサの検出対称(物)が機構要素などは、近接応答時間がながく、この手段は有効である。検出生データに優先権をもたせることや、OS(オペレーティング システム)によらない、ノンプリムティブ(nonpreemtive)・マルチタスクを用いることができる。
【0014】
(5)本発明において、さらに別の好ましい態様は、上記近接ヘッド部が、マルチCPUバスに代えて共有メモリを用いて近接センサ機能部のそれぞれのCPUバスに接続されていることである。
【0015】
(6)本発明において、さらに別の好ましい態様は、共に同一機能を有して、いずれか一方に検出上の不具合が発生すると、当該一方に代えて他方が検出動作を継続する構成となっている少なくとも1対の近接ヘッド部を備え、これら両近接ヘッド部を、マルチCPUバスを介して上記近接センサ機能部とカウンタ/タイマ機能部それぞれの互いに独立したCPUをそれぞれのCPUバス経由で接続し、また、マルチCPUバスに互いに独立してデータの入出力が可能な入出力インターフェース機能部を接続したことである。
【0016】
上記の場合、上記近接ヘッド部はそれぞれセンサとドライバとでモジュール構成し、互いのセンサを襷かけ接続し、その接続にて不具合のモジュールを落とし、検出動作を継続可能とすることが好ましい。また、近接センサが誘導型の場合は同一コア/ボビン上に独立したコイルを2つ巻くことで実現できる。この態様では、高信頼性、高安全性、高機能を実現する構成であり、近接ヘッド、CPU、入出力インタフェース、2系統の回路ないしモジュールで構成し、CPUは例えばマルチプロセッサ構成のMISD、MIMDとし、近接カウンタの全モジュールをマルチCPUバスで接続することができるものである。
【0017】
(7)本発明による近接カウンタは、独立した2つのコイルを実装し、2つの独立した誘導型センサとして機能させた一対の近接ヘッド部と、上記両近接ヘッド部が共通接続されるマルチCPUバスと、このマルチCPUバスに接続されて上記近接ヘッド部から入力する電気信号値から検出物近接の検出生データを補正生成する近接センサ機能と、検出生データからデータ累積/分布および/または設定時間ないし設定時刻等のデータへの加工処理、および上記加工に際しては上位コントローラからのデータとパラメータとを用いることが可能になっているカウンタ/タイマ機能とをそれぞれ有すると共に、検出生信号の温度・検出物種類・近接動作等による補正、データ生成、および異常発振・コイル断線・電源異常などの故障診断処理を行う一対のCPUと、上記マルチCPUバスに接続されて上記一対のCPUからの検出生データおよび加工データそれぞれを少なくとも2系統にて出力することが可能で、かつ上記上位コントローラからのデータおよびパラメータの入力が可能な入出力インターフェース機能部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
(8)本発明において、さらに別の好ましい態様は、上記検出生データを検出物検出でON/OFF時間・時刻データに正規化した加工データに加工すると共に、この加工データをメモリにあらかじめ記憶している正常、注意、異常範囲に時間・時刻分布した分布データと比較して、その比較データを上位コントローラに送り出すことである。
【0019】
この態様では、検出生データをカウンタ/タイマを用いて作成した検出頻度、検出間時間差、検出感度等の累積データ分布と機械・装置の正常・異常状態の設計および稼動実績による同分布とを比較して、正常・異常の予防診断および異常時のリアルタイム制御を行う高度な機能を持つことができる。なお分布関数等は機械・装置によって選定することができる。
【発明の効果】
【0020】
従来から近接センサはカウンタの入力源として用いられてきたが、ケーブル等で接続して用いられていた。このような近接センサとカウンタとを用いたシステムでは、近接センサはもっぱら検出データ源、カウンタはもっぱらカウンタ機能でしかなかった。しかしながら、最近の組込みCPUは超小型/高機能/安価でワンチップマルチプロセッサまで製品化され、マルチタスク等のソフトウエアの高機能化が可能となっている。
【0021】
そして本発明では、このような近接センサとカウンタ/タイマとのデータおよびプログラムの一体化構成を可能にしたものであり、外観形状および実装方法をほとんど変えずに両機能を一体化することにより、近接センサ、カウンタを含む機械・装置の高信頼、高安全運転の予防診断や故障時の安全運転選択等の重要な情報源を得ることができる近接カウンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る近接カウンタを説明する。
【0023】
図1は実施の形態1の近接カウンタと、この近接カウンタを用いて機械・装置を運転管理・制御する上位コントローラとを示す。この上位コントローラ(名称)は分離型近接カウンタの一部の場合、機械・装置の制御装置、パソコンなどの総称で、実施の形態の近接カウンタを限定するものではない。図1では実施の形態1の近接カウンタは、近接ヘッド部10、CPU制御・演算部20、および入出力インタフェース機能部30を備える。40は上位コントローラを示す。
【0024】
近接ヘッド部10は、近接物体の近接状態(位置、距離、速度)を電気信号に変えるものであり、これには誘導型、磁気型、静電容量型、光電型、超音波型等の各種があり、近接物体を検出するセンサ部101と、センサ部101を駆動するドライバ部102とを含む。
【0025】
CPU制御・演算部20は、CPUを1つまたは複数内蔵し、組み込みソフトウエアにより、近接センサ機能部201と、カウンタ/タイマ機能部202とを有し、データ/プログラムを共有化する。
【0026】
近接センサ機能部201においては、近接ヘッド部10からの検出生信号の温度・検出物種類・近接動作等による補正、データ生成、および異常発振・コイル断線・電源異常などの故障診断処理、入出力インタフェース機能部30および上位コントローラ40にその検出データを出力する。例えばドライバが高周波発振型であればその検出コイルの各種AC抵抗値が温度変化で変化するのでこの変化に対して温度補償を行う。また、検出コイルがこれを駆動する回路と接続されているかどうかの故障診断を行う。これらは、公知技術により実施することができるものであり、本明細書ではその説明を略する。
【0027】
また近接センサ機能部201は、データが内蔵されているCPU(複数)で共用出来るので、検出生データをカウンタ/タイマ機能部202で同時に使用出来る。カウンタ/タイマ機能部202においては、検出生データから、検出頻度、検出間時間差、検出感度等の累積データ、その累積データの分布データに加工し、その加工したデータを入出力インターフェース機能部30から上位コントローラ40に出力する一方で、上記データ加工にはプリセットデータや上位コントローラ40からの設定データを入力設定できるようになっている。
【0028】
入出力インターフェース機能部30においては、上位コントローラ40への検出生データ、加工データの出力、上位コントローラ40からの制御データやパラメータ等を入力し、カウンタ/タイマ機能部202に出力することができるようになっている。
【0029】
上位コントローラ40においては、これら検出生データと、加工データと、プログラムに動作条件を与える情報であるパラメータ、機械・装置の諸データから全体システムの故障処理および故障予防診断や、近接カウンタの加工データの加工方法指示パラメータ等を、入出力インターフェース機能部30経由CPU制御・演算部20のカウンタ/タイマ機能部202に出力する。上位コントローラ40では、機械・装置の運転管理、近接カウンタの異常情報の解析、緊急停止、限定運転指示、近接カウンタへ制御データ等の出力を行うことができる。
【0030】
以上説明したように実施の形態1の近接カウンタでは、近接センサ機能とカウンタ/タイマ機能とを有機一体化したものであるから、この近接カウンタを用いた上位コントローラが機械・装置等に対する運転管理・制御を行う際や、それらシステム全体の故障診断、故障予防診断を補助し、当該システムの信頼性・安全性の向上および機械・装置の不具合の状態によっては限定運転をも可能とすることができる。
【0031】
図2は実施の形態2の近接カウンタのブロック構成を示す。
【0032】
実施の形態2では、近接カウンタ機能部201による検出生データと、カウンタ/タイマ機能部202による加工データと、2系統情報経路(従来の近接センサの情報経路1と近接カウンタのもう1つの情報経路2と)を矢印1a,1b(情報経路1),矢印2a,2b(情報経路2)にて示している。矢印1aは近接ヘッド部10からCPU制御・演算部20の近接センサ機能部201への検出生データの情報経路を示す矢印であり、矢印1bは、CPU制御・演算部20にて従来の近接センサの機能であるLED動作表示と上位コントローラ40へ出力の情報経路を示す矢印であり、矢印2aは、近接センサ機能部201からカウンタ/タイマ機能部202への検出生データの情報経路を示す矢印であり、矢印2bは、CPU制御・演算部20のカウンタ/タイマ機能部202にて累積や時間・時刻やプリセットデータ等で加工され、上位コントローラ40へのその加工データの情報経路を示す矢印である。
【0033】
図2中には、近接センサ機能部201では検出ソフトウェアおよび補正ソフトウェアを内蔵して近接ヘッド部10からの検出生信号により補正、故障診断、LED表示、上位コントローラへの出力等を行い、カウンタ/タイマ機能部202で基本的なカウンタ/タイマ機能を用いて、累積や分布関数によ検出データの高信頼性化、上位コントローラ40での機械・装置の安全性向上に有効な加工データを作成する。上位コントローラ40からはこれらに必要な設定データ/パラメータを初期およびリアルタイムでの入力も可能である。検出物の近接動作と、ターゲット機械・装置の安全運転との相関情報をカウンタ/タイマ機能部に入力し、安全運転管理・制御に必要なデータに加工し、上位コントローラ40の安全運転管理・制御に必要な異常解析その他を行うことが示されている。
【0034】
また、入出力インターフェース機能部30では、検出生データ、動作状態LED表示出力および上位コントローラ40への異常出力、上位コントローラ40からの安全相関情報入力、限定安全運転断等の各種指示を行うことが示されている。上位コントローラ40では、機械・装置の運転管理、異常情報の解析、緊急停止、限定運転指示その他を行うことが示されている。
【0035】
図3は実施の形態3の近接カウンタのブロック構成を示す。
【0036】
実施の形態3では、図中太矢印でプリセットカウンタデータの経路を示すように、カウンタ/タイマ機能部202にプリセットカウンタ機能を付けて、上位コントローラ40からのプリセットデータにて近接ヘッド部10からCPU制御・演算部20の近接センサ機能部201を介した検出生データをカウンタ/タイマ機能部202にてプリセット値により、時間トレンド、頻度分布、変動範囲などの分布データに加工しその加工データを上位コントローラ40に出力する形態である。
【0037】
図3中の近接センサ機能部201、カウンタ/タイマ機能部202、入出力インターフェース機能部30および上位コントローラ40それぞれには図2とほぼ同様のことが記載されて示されている。
【0038】
図4は実施の形態4の近接カウンタのブロック構成を示す。
【0039】
実施の形態4では、CPU制御・演算部20が、マルチプロセッサ構成であり、近接センサ機能部201とカウンタ/タイマ機能部202それぞれが、CPU1,2とメモリとを含んだ構成になっている。近接センサ機能部201では、検出、補正および自己診断と、その自己診断結果のLED表示演算と、カウンタ/タイマ機能部202のCPUとの連携と、データの共用と、を担当する。動作表示ドライバ&発光素子部50は、表示制御ドライバ50aと発光ダイオード50bを含み、近接センサ機能部201で制御される。
【0040】
カウンタ/タイマ機能部202のCPU2では、近接センサ機能部201のCPU1との連携、データの共用、近接センサ機能部201のCPU1の検出生データの累積/分布、上位コントローラ40からのプリセットおよびリアルタイムのパラメータデータの入力、各種加工データの生成処理等を行う。
【0041】
CPU制御・演算部20内のマルチバス60に近接センサ機能部201とカウンタ/タイマ機能部202それぞれの両CPU1,2が共通接続されて、近接センサ機能部201からカウンタ/タイマ機能部202への検出生データおよび加工データ/プログラムが共用される。
【0042】
また、マルチバス60に近接センサ機能部201とカウンタ/タイマ機能部202それぞれのCPUバス61,62が接続されると共に、この近接センサ機能部201のCPUバス61は近接ヘッド部10のCPUバスインターフェースに接続され、カウンタ/タイマ機能部202のCPUバス62は入出力インターフェース機能部30に接続される。
【0043】
近接ヘッド部10、入出力インターフェース機能部30はハードウエア的に1系統で構成する。CPU制御・演算部20を効率よく安価にするために、近接センサ機能部201とカウンタ/タイマ機能部202の両CPU1,2はCPU機能、周辺回路、ソフトウエア容量ともに必要最低限にできる非対称マルチプロセッサ方式を用いる。近接カウンタの機能によっては、1CPUのマルチタスクのSISDやSIMD方式を用いてもよい。
【0044】
なお、図4で示す近接ヘッド部10内のCPUバスインタフェースに代えて、図5で示すように、CPU制御・演算部20内のCPUバス61に共有メモリ70を接続し、この共有メモリ70を近接ヘッド部10に接続すると共に、カウンタ/タイマ機能202のCPUバス62と入出力インタフェース機能部30との間を共有メモリ71を介して接続した共用メモリ構成とすることができる。
【0045】
図6は、実施の形態5の近接カウンタのブロック構成を示す。
【0046】
実施の形態5では、マルチCPUバス80に、1対の近接ヘッド部10a,10bと、CPU制御・演算部20内の近接センサ機能とカウンタ/タイマ機能を実行する一対のCPU20a,20bと、一対の入出力インターフェース機能部30と、を共通に接続して構成する。
【0047】
一対のCPU20a,20bは、近接センサ機能にて両近接ヘッド部10a,10bからのいずれかの電気信号から検出生データを補正、生成しカウンタ/タイマ機能にて上記検出生データを加工してなる加工データを、マルチCPUバス80を経由して入出力インターフェース機能部30に出力する構成としている。
【0048】
CPU制御・演算部20では、近接ヘッド部10a,10bの検出場所の周囲温度や、近接ヘッド部10a,10bが内蔵するセンサの検出感度ばらつきを補正する数値や、パラメータ、検出信号の閾値幅をあらかじめ内部のメモリにプリセットして補正や故障診断を行うようにしてもよい。
【0049】
近接カウンタを含む機械・装置等のシステムの高信頼性、高安全性、高機能を実現する構成ないし形態として、それぞれ、センサ部1,2とドライバ/補償部1,2とでなる近接ヘッド部10a,10bを1対、CPU20a,20b一対でなるCPU制御・演算部20、入出力インターフェース機能部30a,30b一対でなる入出力インターフェース機能部30、電源部81a,81bを一対備えた構成になって全て2系統回路/モジュールで構成し、CPU制御・演算部20はマルチプロセッサ構成のMISD、MIMDであり、かつ近接カウンタの全2系統モジュールをマルチCPUバス(あるいは図5と同様にした図示略の共有メモリ)80で接続している。
【0050】
図7は、実施の形態6の近接カウンタのブロック構成を示す。
【0051】
実施の形態6では、誘導形近接センサを用いた近接カウンタ構成であり、近接ヘッド部10を検出物10eに近接配置する独立した2つ(白地と斜線地)の発振・励起コイル10fと、この独立した2つ発振・励起コイル10fに対応する一対のセンサ部10g,10hを同一コア/ボビン上にコイルを2つ巻くことで実現している。一対のセンサ部10g,10h、一対のCPU制御部・演算部20c,20d、一対の入出力インターフェース機能部30c,30dは全てCPUマルチバス(または図示略の共有メモリ)90で接続されている。入出力インターフェース機能部30cは検出情報、自己故障情報、自己診断情報等の出力、動作表示発光デバイス100への動作状態LED表示出力を行う。入出力インターフェース機能部30dは、2系統異常出力、上位コントローラ40からの安全情報入力、限定安全運転断・指示を経由する。上位コントローラ40は図2のそれと同様のことが示されている。
【0052】
図8は、実施の形態7に係り、検出生データをカウンタ/タイマを用いて作成した検出頻度、検出間時間差、検出感度等の累積データ分布と、予め機械・装置の設計時予想データおよび稼動実績データによる同分布とを比較して、予防診断およびリアルタイムでの安全動作の判断データに確率密度関数を用いることである。図8では被比較分布および近接カウンタ生成分布との正規分布(ガウス分布)と仮定して、A:正常、B:注意、C:異常との3つに評価している。
【0053】
図9は実施の形態の近接カウンタにおける2系統情報システムを構築するCPUの形態例を示し、ハードウェアブロック100、ソフトウエアブロック200、およびデータブロック300から構成されている。各ブロック100−300間を接続する白抜きおよび斜線矢印はハードウェアブロック100がマルチCPU構成の場合、ハッチング矢印はハードウェアブロック100がシングルCPU構成の場合を示す。
【0054】
ハードウェアブロック100は、マルチバスまたは共用メモリで接続された2つのCPU1,CPU2を含む。
【0055】
ソフトウエアブロック200は、センサ初期設定のためのソフトウエア1−1、信号入力と補正とを行うソフトウエア1−2、…補正生データを出力したり表示LED等を行うソフトウエア1−nとを含むと共に、カウンタ/タイマ用のソフトウエア2−1、加工データ生成用のソフトウエア2−2、加工パラメータ処理用のソフトウエア2−3、…加工や設定データ等の処理用のソフトウエア2−nを含む。
【0056】
データブロック300は、検出と補正(生データ)のデータ1−1、生データ出力バッファのデータ1−2、…、故障診断のデータ1−nを含み、カウンタ/タイマの値であるデータ2−1、加工データのデータ2−n、比較分布データのデータn、設定値のデータmを含む。
【0057】
ハードウェアブロック100がマルチCPU構成の場合、CPU1,2はそれぞれ、白抜きおよび斜線矢印で示すように、処理を行い、ハードウェアブロック100がシングルCPU構成の場合、CPU1が、ハッチング矢印で示すように、処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる近接カウンタの基本構成を示す図である。
【図2】図2は実施の形態2において近接カウンタの2系統情報の流れを示す図である。
【図3】図3は実施の形態3においてカウンタ/タイマにプリセットカウンタを採用した構成を示す図である。
【図4】図4は実施の形態4において非対称マルチプロセッサを用いた近接カウンタ構成を示す図である。
【図5】図5は図4の別の変形例を示す図である。
【図6】図6は実施の形態5において2系統回路/モジュールを用いた近接カウンタ構成例を示す図である。
【図7】図7は実施の形態6において誘導型近接センサを用いた2系統回路/モジュール近接カウンタ構成例を示す図である。
【図8】図8は実施の形態7において検出間隔基準タイマによる確率分布と確率密度関数を示す図である。
【図9】図9は実施の形態の近接カウンタにおける2系統情報システムを構築する単一CPUまたは2つの独立したCPUの形態例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 近接ヘッド部
20 CPU制御・演算部
30 入出力インターフェース機能部
40 上位コントローラ
50 動作表示ドライバ&発光素子部
60 マルチバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出物の近接状態を電気信号に変えるセンサ内蔵の近接ヘッド部と、
この近接ヘッド部から入力する電気信号値から近接状態の検出生データを生成する近接センサ機能部と、
上記近接センサ機能部から検出生データを取り込み、この取り込んだ検出生データからデータ累積/分布および/または設定時間ないし設定時刻等のデータへの加工処理、および上記加工に際して上位制御機能(外部コントローラ)からのデータとパラメータとを用いることが可能になっているカウンタ/タイマ機能部と、
上記両機能部からのデータを複数別系統にて入力し、また、複数別系統にて出力することが可能で、かつ、上記上位コントローラからのデータを入力して上記カウンタ/タイマ機能部に出力することが可能な入出力インターフェース機能部と、
を備えた近接カウンタ。
【請求項2】
上記カウンタ/タイマ機能部は、上位制御機能が機械・装置の運転管理を行うためのデータを生成することが可能になっている、請求項1に記載の近接カウンタ。
【請求項3】
上記カウンタ/タイマ機能部は、上位制御機能からプリセットカウンタとして設定することが可能になっている、請求項1に記載の近接カウンタ。
【請求項4】
上記カウンタ/タイマ機能部は、CPUとメモリを含んだCPU回路で、単一CPU構成もしくはマルチCPU構成がある。上記近接センサ機能部検出の生信号の温度・検出物種類・近接動作等による補正、データ生成、および異常発振・コイル断線・電源異常などの故障診断処理を行う。
上記近接センサ機能部、入出力インターフェース機能部は、それぞれのCPUバスおよびマルチCPUバスで接続されている請求項1ないし3のいずれかに記載の近接カウンタ。
【請求項5】
上記近接センサ機能部、入出力インターフェース機能部は、上記マルチCPUバスに代えて共有メモリにて近接センサ機能部に接続されている、請求項4に記載の近接カウンタ。
【請求項6】
共に同一機能を有して、いずれか一方に検出上の不具合が発生すると当該一方に代えて他方が検出動作を継続する構成となっている少なくとも1対の近接ヘッド部を備え、これら両近接ヘッド部をマルチCPUバスを介して上記近接センサ機能部とカウンタ/タイマ機能部それぞれの互いに独立したCPUに接続し、また、上記マルチCPUバスに互いに独立してデータの入出力が可能な入出力インターフェース機能部を接続した、請求項1に記載の近接カウンタ。
【請求項7】
独立した2つのコイルを実装し、2つの独立した誘導型センサとして動作を行う近接ヘッド部と、
上記近接ヘッド部に独立して発振・励起・検出を行う2つのセンサドライブが共通接続されるCPUマルチバスと、
このCPUマルチバスに接続されて上記近接ヘッド部から入力する電気信号値から検出物近接の検出生データを生成する近接センサ機能と、検出生データからデータ累積/分布および/または設定時間ないし設定時刻等のデータへの加工処理、および上記加工に際しては上位制御機能からのデータとパラメータとを用いることが可能になっているカウンタ/タイマ機能とをそれぞれ有すると共に検出生データの補正や故障診断を行う一対のCPUと、
上記CPUマルチバスに接続されて上記一対のCPUからの検出生データおよび加工データそれぞれを少なくとも2系統にて出力することが可能で、
かつ上記上位制御機能からのデータおよびパラメータの入力が可能な入出力インターフェース機能部と、
を備えた近接カウンタ。
【請求項8】
上記検出生データを検出物検出でON・OFF時間データに正規化した加工データに加工すると共に、この加工データをメモリにあらかじめ記憶している正常、注意、異常範囲に時間分布した分布データと比較して、その比較データを上位コントローラに送り出す、請求項1ないし7のいずれかに記載の近接カウンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−253508(P2009−253508A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96996(P2008−96996)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】