説明

近接センサおよびこの近接センサを遊技媒体の流路に配設した遊技機

【課題】被検知物体を検知したとき、異なる信号レベルの検知信号が得られるようにし、被検知物体の方向判別を容易に行うことができ、小型化が可能となるとともに簡素な回路構成により精度の高い検出信号が得られる近接センサを提供する。
【解決手段】高周波磁界の変化による検知センサのインダクタンスの変化に基づいて検知信号を出力する近接センサであり、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賞球を遊技媒体とするパチンコ遊技機、メダルを遊技媒体とするスロット遊技機において、遊技媒体を計数する近接センサおよびこの近接センサを遊技媒体の流路に配設した遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記に例示した遊技機は、遊技媒体の計数システムが急速に発達し、遊技媒体の計数に伴う煩雑な作業の合理化が進んでいる。例えば、パチンコ遊技機においては、遊技者が獲得した賞球は賞球容器に貯留され、これを賞球計数装置あるいは景品交換所へ運び、所望の景品と交換するようにしているが、賞球の獲得量が多い場合には、これに比例して重量が嵩み運搬作業に大きな労力を必要とするものであった。また、賞球が賞球容器に貯留されていると、この賞球はパチンコ遊技機稼動対象とはならなくなることから、遊技場の賞球の総量が増加するという問題があった。
【0003】
そこで、遊技者が獲得した賞球をパチンコ遊技機の背面に誘導して排出するとともに、同時に賞球の数を計数してその計数値を記録したカードを発券機から遊技者に提供し、遊技者がそのカードを景品交換所へ提出するようにしたシステムが提案されている。このようなシステムによれば、遊技者は重い賞球容器を運ぶ手間が省けるとともに、遊技場の賞球の総量を少なくできるという利点が得られる。
【0004】
したがって、かかるシステムの場合は、賞球をパチンコ遊技機の背面に誘導する構成、およびパチンコ遊技機の背面で賞球を計数する機能が必要となる。これらの機能要素はパチンコ遊技機とは別途に配設されるものであり、通常、賞球受皿に開口して接続された樋状の誘導手段により賞球をパチンコ遊技機の背面へ導くようにしている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このように、誘導手段により導かれた賞球は、これを個々に計数するための計数手段を通過するようにされており、この計数手段には、光学式センサあるいは磁気変化を電気信号に変換する近接センサが採用されている。ところが、光学式センサには、検知対象である遊技媒体以外の物が通過した場合であっても、遊技媒体が通過したと同様に検知してしまう問題があった。
【0006】
また、近接センサによる場合は、賞球同士の接触による跳ね返り、あるいは不正行為による誤動作に対する対策が必要であった。そこで、通過する遊技媒体を正方向数量として、また、逆方向へ移動した遊技媒体を逆方向数量としてそれぞれカウントし、正方向数量から逆方向数量を差し引くようにして遊技媒体の正確な数量を計数できるようにした遊技媒体計数機が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実用新案登録第1596000号公報
【特許文献2】特開2002−325955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に開示された構成においては、賞球受皿に賞球を計数装置へ導く案内腕が接続されており、この案内腕の排出ノズルから落下する賞球を検知して計数するようにしている。賞球を検知する検知センサは、賞球を磁気的あるいは光学的に検知するものが採用されており、このような構成の場合、検知センサを外部から意図的に作動し、計数値を歩進させる不正行為が可能となる。
【0008】
即ち、図7に示すように従来の賞球回収装置の賞球受皿100には、賞球Bが流入する開口部100aに賞球誘導樋101が接続され、この賞球誘導樋101の先端のノズル部101aから流出した賞球Bが賞球検知センサ102により検知され、計数装置により計数される。このように構成される賞球誘導樋101は賞球Bが円滑に流れ、玉詰まりにより賞球Bの流れが停止してしまうなどの不具合が発生しないようにしなければならない。
【0009】
このため、賞球誘導樋101は賞球検知センサ102に至るまでの間が極力緩いスロープであることが望ましいことになる。したがって、このように構成される賞球回収装置では、賞球受皿100の開口部100aからノズル部101aまでに障害となるものが介在しないため、同図に示すように、先端に賞球Bに擬した疑似賞球FBを備える金属棒状体Wが容易に差し込まれてしまうことになる。
【0010】
このように金属棒状体Wを差し込んだ不正行為者は、この金属棒状体Wの先端の疑似賞球FBを賞球検知センサ102の部分で往復動させ、賞球Bが通過する仮想の状態を現出し、計数装置を作動して計数を歩進させることになる。かかる不正行為は、賞球受皿10
0から賞球検知センサ102まで円滑な流路としなければならないことによるもので、このような不正行為を効果的に防止できる手段が望まれているのが実情である。
【0011】
特許文献2に開示された技術は、このような不正行為に対する対策も可能となるようにしたものであるが、遊技媒体の流路に2個または3個の検知センサを配置し、この検知センサから出力される検知信号の発生タイミングを監視するもので、この検知信号の発生タイミングに基づいて計数した正方向数量から逆方向数量を差し引いた数量を通過した遊技媒体の総数量としている。
【0012】
図8は、かかる構成をブロック図により示したもので、第1の近接センサ200と第2の近接センサ300をパチンコ遊技機の賞球Bの流路に配設した状態を示す。各近接センサ200、300は、高周波発振器400に接続された励振コイル201、301および検知コイル202、302をフェライトなどの磁性体材料からなる鉄心(コア)303,304に備える。したがって、高周波発振器400から発振電力が励振コイル201、301に供給されると、鉄心の端面間に高周波磁界MF1、MF2が発生する。
【0013】
かかる状態において、賞球Bが通過して高周波磁界MF1、MF2を通過すると、検知コイル202、302のインダクタンスLが変化することから、この検知コイル202、302から検波回路401、402へ入力している高周波信号H1、H2は、賞球Bの通過に伴って減衰するエンベロープ波形となる。そして検波回路401、402から出力された検波信号E1、E2は波形整形回路403、404に入力し、パルス信号S1、S2が出力される。
【0014】
波形整形回路403、404から出力したパルス信号S1、S2は、方向判定回路405へ入力し、このパルス信号S1、S2の到来順位を監視する。即ち、パルス信号S1がパルス信号S2より早く到来した場合は、賞球Bが正常に近接センサ200、300を通過したと判断し、前記パルス信号S1、S2の何れかで計数装置を作動する。一方、パルス信号S2がパルス信号S1より早く到来した場合は、何らかの異常状態であると判断し、警報装置を作動するなどして報知することが可能となる。
【0015】
したがって、このような検知センサから得られるパルス信号は、計数装置が正確に計数できるように所定のパルス幅であって所定の発生タイミングとなるようにしなければならない。そして、この条件を満たすためには、複数の検知センサを所定の間隔で遊技媒体の流路に正確に配設しなければならない。
【0016】
ところが、遊技場における全ての遊技機においてパルス信号が同一のタイミングで発生するようにするのは甚だ困難であり、検知センサの据付作業に多くの労力を強いられるものとなる。また、方向判定を行うためには、時間差のある異なるパルス信号を生成しなければならないことから、複数の近接センサおよび信号を処理する回路が必要となり、コスト削減の妨げとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はかかる従来の問題に鑑みなされたもので、以下に述べる手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、高周波磁界の変化による検知コイルのインダクタンスの変化に基づいて検知信号を出力する近接センサであり、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装する。
【0018】
請求項2記載の発明では、遊技媒体を計数するようにした遊技機において、高周波磁界の変化による検知コイルのインダクタンスの変化に基づいて検知信号を出力する検知センサであり、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装してなる近接センサを遊技媒体の流路に配設し、該近接センサの検知コイルから出力される検知信号に基づいて遊技媒体の計数が可能となるようにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1記載の近接センサによれば、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装して一体化したので、被検知物体を検知したとき、異なる信号レベルの検知信号を得ることができ、被検知物体の方向判別を容易に行うことができる。また、検知コイルを一体化してあるため、完成した近接センサ間で、異なる信号レベルの発生タイミングを正確に一致させることができ、小型化が可能となるとともに簡素な回路構成により精度の高い検出信号を得ることができる。
【0020】
また、請求項2記載の遊技機によれば、上記請求項1記載の近接センサを採用したことから、この近接センサ単体を遊技媒体の流路に配設するのみで正確な検知信号が得られるので、煩雑な据付調整作業を一掃することができ、遊技媒体の計数が可能となる。さらに、遊技媒体の通過を検知する毎に異なる信号レベルの検知信号を得ることができることから、この信号を利用して不正行為の監視を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明においては、パチンコ遊技機を実施例として説明するが、メダル遊技機においても同様に実施し得るものであり、パチンコ遊技機に特定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明を賞球誘導樋Aに実施したパチンコ遊技機Pを示すもので、パチンコ遊技機Pの側辺には玉貸機Cが配設されている。賞球誘導樋Aは、その上流側が賞球受皿10に連設され、下流側が玉貸機C内に臨むように構成されている。また、前記賞球受皿10には図2に示すように、中央に向かう下り勾配の傾斜面11が形成されており、底部には賞球誘導樋Aに向かう下り勾配の案内溝12が形成されている。したがって、パチンコ遊技機Pの賞球貯留部P1に貯留した賞球Bは、排出レバーLBを操作することにより賞球受皿10に放出され、案内溝12に導かれて賞球誘導樋Aへ流下する。
【0023】
賞球誘導樋Aは、流下する賞球Bをパチンコ遊技機Pの背面に向けて誘導できるように形成されており、側壁20の間に仕切壁21が形成され、底面が下り勾配の2条の賞球流路22が形成されている。なお、この賞球誘導樋Aの流下開口部23は玉貸機Cの開口部と一致するように構成し、ネジ止めなどの適宜手段により固定され着脱が可能となるようにしている。したがって、賞球誘導樋Aに誘導された賞球Bは流下開口部23からパチンコ遊技機Pの背面に流出し、賞球Bの回収が行われることになる。
【0024】
前記賞球誘導樋Aの賞球流路22の適宜位置には、図3に示すように賞球Bの通過を検知する本発明の近接センサ(賞球検知センサ)30が配置されており、この近接センサ30を賞球Bが通過する毎に検出信号が出力されるようにしている。前記近接センサ30は、図4に示すように、一対の磁極が同方向を向くようにコ字状、U字状などの形状であり、フェライトなどの磁性体材料からなる鉄心(コア)31、32に、相対的に巻回数の異なる検知コイル33、34が実装されている。なお、本実施例においては、検知コイル33の巻回数は検知コイル34の巻回数より多いことを前提に説明するが、この逆の場合においても、本発明の実施を妨げるものではない。
【0025】
前記鉄心31、32に実装した検知コイル33、34は発振回路40に接続され、この発振回路40の出力が検波回路41に入力するようにしている。発振回路40は、例えば、図5に示すようなハートレー発振回路を構成しており、発振回路40が発振を開始すると、この発振電力により検知コイル33、34から磁場が発生し、この磁場の磁束が鉄心31、32を通り、この鉄心31、32の端面から高周波磁界MFが発生する。
【0026】
かかる定常状態、即ち、賞球Bが高周波磁界MF内を通過していない状態における発振回路40からの出力信号は、図6(A)に示すように一定の発信出力Hとなる。この定常状態において、賞球Bが高周波磁界MF内を通過すると、検知コイル33のインダクタンスLが大きく変化したことによるスイープEaと、検知コイル34のインダクタンスLが小さく変化したことによるスイープEbが形成され、大小の減衰部分が連続して現れるエンベロープ信号Eとなる。
【0027】
このエンベロープ信号Eが波形整形回路41に入力すると、図6(C)に示すような整形信号Fが出力される。この整形信号Fは、前記エンベロープ信号Eのエンベロープ波形に基づいて生成されるもので、スイープEaに対応する部分は電圧降下の大きい直流矩形波Faとなり、スイープEbに対応する部分は電圧降下が直流矩形波Faより相対的に小さい直流矩形波Fbとなる。即ち、単一の高周波磁界MFから異なるレベルの信号を生成することがでることになる。
【0028】
このようにして生成された整形信号Fは、方向判定回路42へ入力する。ここで、本発明における方向判定回路42は、従来のように各別に到来するパルス信号の遅速を判断するようにしたものではなく、実施例における場合は、電圧降下の大きい直流矩形波Faが先に到来し、続いて電圧降下の小さい直流矩形波Fbが到来するかの時系列上の判断となる。
【0029】
即ち、直流矩形波Faに続いて直流矩形波Fbが到来した場合は、賞球Bが正常な方向に向かって通過したと判断し、計数装置50へ計数信号となる検知信号Gを出力する。一方、直流矩形波Fbが先に到来し、続いて直流矩形波Faが到来した場合は、賞球Bの不正行為などによる異常な流れと判断し、検知信号Gの出力を禁止するとともに、警報装置へ警報信号Rの送出が可能となる。なお、前記方向判定回路42における直流矩形波Fa、Fbの判断は、その電圧値の高低あるいは信号幅の長短に基づいて容易に行うことができる。
【0030】
上記実施例においては、鉄心31に実装する検知コイル33の巻回数を鉄心32に実装する検知コイル34の巻回数より多くした例について説明したが、この逆の構成としてもよく、この場合は、方向判定回路42における論理判断を逆にすればよい。また、検知コイル33、34は同相接続あるいは逆相接続でもよい。いずれにしても、本発明の近接センサを複数制作した場合においても、直流矩形波Fa、Fbの発生タイミングは、鉄心31、32の位置で一律に決定されるため、きわめて正確なものとなり、位置調整のような作業が不要となる。なお、検知コイルのインダクタンスLを変更したり、発信回路の発信周波数を変更することにより異なる金属の検知が可能となり、用途を拡大することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の説明においては、パチンコ遊技機、スロット遊技機を例示して説明したが、本発明の近接センサは、各種の金属部材を方向判定しながら数量を計数することが可能であるとともに、数量のみを計数する用途にも採用することができる融通性を備えることから、各産業分野に広範に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施したパチンコ遊技機を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施状態を示す要部の斜視図である。
【図3】本発明の近接センサの配設状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の近接センサの構成を説明する図である。
【図5】本発明の近接センサの要部の構成を示す図である。
【図6】本発明の近接センサの信号の生成状態を説明する図である。
【図7】従来の近接センサの構成を説明する図である。
【図8】従来のパチンコ遊技機における不具合の状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
A・・・・・・・賞球誘導樋
B・・・・・・・賞球
C・・・・・・・玉貸機
P・・・・・・・パチンコ遊技機
10・・・・・・賞球受皿
20・・・・・・側壁
21・・・・・・仕切壁
22・・・・・・賞球通路
23・・・・・・流下開口部
30・・・・・・近接センサ
31・32・・・鉄心
33・34・・・検知コイル
40・・・・・・発信回路
41・・・・・・波形整形回路
42・・・・・・方向判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波磁界の変化による検知コイルのインダクタンスの変化に基づいて検知信号を出力する近接センサであり、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装してなることを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
遊技媒体を計数するようにした遊技機において、
高周波磁界の変化による検知コイルのインダクタンスの変化に基づいて検知信号を出力する近接センサであり、磁極が同方向に向く一対の鉄心の双方に、相対的に巻回数の異なる検知コイルを実装してなる近接センサを遊技媒体の流路に配設し、該近接センサの検知コイルから出力される検知信号に基づいて遊技媒体の計数が可能となるようにしたことを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−189552(P2009−189552A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33219(P2008−33219)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】