説明

近接場光デバイスの製造方法および近接場光デバイス

【課題】量産化に適した近接場光デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】近接場光デバイスの製造方法は、基板(30)に光源層(21、22、23)を形成するステップと、光源層上に量子ドット層(12、13)を形成するステップと、形成した量子ドット層の一部を除去し、近接場光発生部(10)を形成するステップと、形成した近接場光発生部の周囲を光源層の一部に至るまで除去するステップと、除去した光源層の表面に電極(44)を形成するステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、HAMR(熱アシスト磁気記録: Heat Assisted Magnetic Recording)、SNOM(走査型近接場光学顕微鏡:Scanning Near Field Optical Microscope)等の近接場光の微小スポットを利用する近接場光デバイス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近接場光を利用した、光の回折限界を超えたナノスケールの微小光スポットの利用例として、例えば、近接場光を磁気記録媒体の昇温するための光源として用いる熱アシスト磁気記録(特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、近年の半導体微細加工技術の進歩により、量子力学的効果を利用し、単一電子を制御することにより電子の粒子性を極限まで利用するナノスケールの量子ドットが注目されている。たとえば、量子ドットのサイズを適切に制御する製造方法(特許文献2参照)、および、積層された量子ドットを利用した近接場集光器が提案されている(特許文献3参照)。さらに、面発光レーザにより近接場光を生成し、この近接場光を用いた光ヘッドにて高密度記録を可能にする取り組みも提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−045004号公報
【特許文献2】特開2009−231601号公報
【特許文献3】特開2006−080459号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】微小共振器面発光レーザによる近接場光生成(電子情報通信学会論文誌 C Vol.J83-C No.9 pp.826-834 2000年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近接場光デバイスの近接場光を発生する部分(以下、“近接場光発生部”と称する)のサイズは、ナノオーダーと大変小さい。従って、かかる近接場光発生部に光を出射する光源と、近接場光発生部と、が一体になった近接場光デバイスを量産形成することは困難性が極めて高いという課題がある。
【0007】
特に、光源として面発光レーザを用い、かかる面発光レーザ上に近接場光発生部を形成した場合、近接場光発生部の回りを取り巻くように配置される面発光レーザの電極が邪魔をして、近接場光発光部の先端を対象物である磁気記録媒体の表面に近接させることができず、高密度記録を達成できないという課題が発生した。
【0008】
本発明は、例えば上記課題に鑑みてなされたものであり、量産化に適し、更に高密度記録を達成することができる近接場光デバイスの製造方法および近接場光デバイスを提供することをその目的・課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の近接場光デバイスの製造方法は、基板に光源層を形成するステップと、光源上に量子ドットを含む近接場光発生部を形成するステップと、形成した前記近接場光発生部の周囲を前記光源層の一部に至るまで除去するステップと、除去した光源層の表面に電極を形成するステップと、を備える。
【0010】
また、本発明の近接場光デバイスは、基板と、基板上に形成され、第一の面と当該第一の面より低い位置となる第二の面とを備える光源層と、第一の面上に形成された近接場光発生部と、前記第二の面上に形成された電極と、を備える。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る近接場光デバイスの構造を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る近接場光デバイスの製造方法の一工程を示す工程断面図である。
【図3】図2の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図4】図3の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図5】図4の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図6】図5の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係る近接場光デバイスの構造を示す図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係る近接場光デバイスの構造を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る近接場光デバイスの製造方法の一工程を示す工程断面図である。
【図10】図9の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図11】図10の工程に続く工程を示す工程断面図である。
【図12】第2実施形態の変形例に係る近接場光デバイスの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の近接場光デバイスに係る実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、以下の図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0014】
<第1実施形態>
本発明の近接場光デバイスに係る第1実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
【0015】
(近接場光デバイスの構成)
先ず、本実施形態に係る近接場光デバイスの構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る近接場光デバイスの構造を示す図である。
【0016】
図1において、近接場光デバイス100は、n−GaAs基板30と、該n−GaAs基板30の下面に形成された下部電極42と、該n−GaAs基板30の上面に積層された光源20と、該光源20の上に積層された近接場光発生部10と、該光源20の上面に形成された上部電極41と、を備えて構成されている。尚、n−GaAs基板30は、p−GaAs基板であってもよい。
【0017】
近接場光発生部10は、GaAs基板11と、該GaAs基板11の上に積層された量子ドット層12と、該量子ドット層12の上に積層された量子ドット層13と、該量子ドット層13の上に形成された金属端14と、を備えて構成されている。
【0018】
光源20は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発行レーザ)である。VCSELの構成は当業者にとって周知であるため、ここでは詳述しない。光源20は、上部ミラー層22、発光層21及び下部ミラー層23を備えて構成されている。光源20の動作時には、上部電極41及び下部電極42間に電力が供給される。
【0019】
(近接場光デバイスの製造方法)
次に、本実施形態に係る近接場光デバイス100の製造方法について、図2乃至図6を参照して説明する。
【0020】
図2において、n−GaAs基板30の上に、下部ミラー層23、発光層21及び上部ミラー層22が、この順番で積層される。次に、図3に示すように、上部ミラー層22の上に、GaAs基板11、量子ドット層12、量子ドット層13及び金属層15が、この順番で積層される。
【0021】
次に、金属層15の上に所定のマスクが形成され、該形成されたマスクを用いて金属層15にエッチング等が施されることにより、図4に示すように金属端14が形成される。次に、金属端14を覆うように量子ドット層13の上に所定のマスクが形成され、該形成されたマスクを用いて量子ドット層13、量子ドット層12及びGaAs基板11に対してエッチング等が施されることにより、図5に示すように近接場光発生部10が形成される。
【0022】
次に、近接場光発生部10を覆うように上部ミラー層22の上に所定のマスクが形成され、該形成されたマスクを用いて上部ミラー層22、発光層21及び下部ミラー層23に対してエッチング等が施されることにより、図6に示すように光源20が形成される。その後、上部ミラー層22の上に上部電極41が形成される(図1参照)。尚、下部電極42は、典型的には、図2に示した工程以前に形成される。また、上部電極41及び下部電極42は、例えば金(Au)又は銅(Cu)等により構成されている。
【0023】
上述した製造方法によれば、近接場光発生部10と光源20とが一体に形成された近接場光デバイス100を、比較的容易にして量産することができる。
【0024】
<第1変形例>
図6に示した工程において、図7に示すように、n−GaAs基板30に対してもエッチング等が施されてもよい。
【0025】
<第2変形例>
或いは、図6に示した工程において、図8に示すように、上部ミラー層22がテーパー状となるようにエッチング等が施されてもよい。この場合、発光層21の上面に、例えばSiO等からなる酸化被膜60が形成された後に、上部電極45が形成される。
【0026】
<第2実施形態>
本発明の近接場光デバイスに係る第2実施形態を、図9乃至図11を参照して説明する。第2実施形態では、近接場光デバイスの構成が一部異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図9乃至図11を参照して説明する。
【0027】
(近接場光デバイスの製造方法)
本実施形態では、近接場光発生部10が形成された後(図5参照)、近接場光発生部10を覆うように上部ミラー層22の上に所定のマスク50が形成され、該形成されたマスク50を用いて上部ミラー層22に対してエッチング等が施されることにより、図9に示すように、発光層21の上面が露出される。
【0028】
次に、露出された発光層21の上面に、例えばSiO等からなる酸化被膜60が形成される。続いて、図10に示すように、該形成された酸化被膜60の上に、例えば金等からなる金属膜43が形成される。
【0029】
次に、マスク50が剥離された後に、所定のマスクを用いて金属膜43、酸化被膜60、発光層21及び下部ミラー層23に対してエッチング等が施されることにより、図11に示すように、上部電極44等が形成される。
【0030】
<変形例>
図11に示した工程において、図12に示すように、n−GaAs基板30に対してもエッチング等が施されてもよい。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う近接場光デバイスの製造方法および近接場光デバイスもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
10…近接場光発生部、20…光源、21…発光層、22…上部ミラー層、23…下部ミラー層、41…上部電極、42…下部電極、100…近接場光デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光源層を形成するステップと、
前記形成された光源上に量子ドットを含む近接場光発生部を形成するステップと、
前記形成された近接場光発生部の周囲を前記光源層の一部に至るまで除去するステップと、
前記除去した光源層の表面に電極を形成するステップと、
を備えることを特徴とする近接場光デバイスの製造方法。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成され、第一の面と当該第一の面より低い位置となる第二の面とを備える光源層と、
前記第一の面上に形成された近接場光発生部と、
前記第二の面上に形成された電極と、
を備えることを特徴とする近接場光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−25830(P2013−25830A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157105(P2011−157105)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】