説明

近接場光発生素子、近接場光ヘッド及び情報記録再生装置

【課題】導入された光束の向きを変えながら集光して該光束から近接場光を効率良く発生させること。
【解決手段】光束Lを集光させながら伝播させる光束集光部40bと、集光された光束から近接場光Rを生成して外部に発する近接場光生成部40cと、を有する多面体のコア40と、コアを内部に閉じ込めるクラッド41とを有し、コアは、一端側から他端側に向かう長手方向に沿って延びる1つの側面と他の側面とを有し、光束集光部は、1つの側面が他端側に向かうにしたがって他の側面に近づくように傾くことにより絞り成形され、近接場光生成部は、1つの側面が他端側に向かうにしたがって他の側面に近づき、光束集光部における傾きより大きく傾くことによりさらに絞り成形されると共に、他端側で外部に露出する端面40dが光の波長以下のサイズとされ、且つ1つの側面が遮光膜42によって遮光されている近接場光発生素子22を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入された光束を集光して該光束から近接場光を発生させる近接場光発生素子、該近接場光発生素子により発生された近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を超高密度で記録する近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式に移行しつつある。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、この不具合を解消するために、近接場光により磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式(近接場光アシスト磁気記録方式)が提供されている。このハイブリッド磁気記録方式は、微小領域と、近接場光ヘッドに形成された光の波長以下のサイズに形成された光学的開口との相互作用により発生する近接場光を利用する方式である。このように、光の回折限界を超えた微小な光学的開口、即ち、近接場光発生素子を有する近接場光ヘッドを利用することで、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域における光学情報を扱うことが可能となる。よって、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。
なお、近接場光発生素子は、上述した光学的微小開口によるものだけでなく、例えば、ナノメートルサイズに形成された突起部により構成しても構わない。この突起部によっても、光学的微小開口と同様に近接場光を発生させることができる。
【0006】
上述したハイブリッド磁気記録方式による記録ヘッドとしては、各種のものが提供されているが、その1つとして、光スポットのサイズを縮小して記録密度の増大化を図った近接場光ヘッドが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この近接場光ヘッドは、主に主磁極と、補助磁極と、螺旋状の導体パターンが絶縁体の内部に形成されたコイル巻線と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる金属散乱体と、金属散乱体に向けてレーザ光を照射する平面レーザ光源と、照射されたレーザ光を集束させるレンズとを備えている。これら各構成品は、ビームの先端に固定されたスライダの側面に取り付けられている。
【0007】
主磁極は、一端側が記録媒体に対向した面となっており、他端側が補助磁極に接続されている。つまり、主磁極及び補助磁極は、1本の磁極(単磁極)を垂直方向に配置した単磁極型垂直ヘッドを構成している。また、コイル巻線は、磁極と補助磁極との間を一部が通過するように補助磁極に固定されている。これら磁極、補助磁極及びコイル巻線は、全体として電磁石を構成している。
主磁極の先端には、金等からなる上記金属散乱体が取り付けられている。また、金属散乱体から離間した位置に上記平面レーザ光源が配置されると共に、該平面レーザ光源と金属散乱体との間に上記レンズが配置されている。
上述した各構成品は、スライダの側面側から、補助磁極、コイル巻線、主磁極、金属散乱体、レンズ、平面レーザ光源の順に取り付けられている。
【0008】
このように構成された近接場光ヘッドを利用する場合には、近接場光を発生させると同時に記録磁界を印加することで、記録媒体に各種の情報を記録している。
即ち、平面レーザ光源からレーザ光を照射させる。このレーザ光は、レンズによって集光され、金属散乱体に照射される。すると金属散乱体は、内部の自由電子がレーザ光の電場によって一様に振動させられるのでプラズモンが励起されて先端部分に近接場光を発生させる。その結果、記録媒体の磁気記録層は、近接場光によって局所的に加熱され、一時的に保磁力が低下する。
また、上記レーザ光の照射と同時に、コイル巻線の導体パターンに駆動電流を供給することで、主磁極に近接する記録媒体の磁気記録層に対して記録磁界を局所的に印加する。これにより、保磁力が一時的に低下した磁気記録層に各種の情報を記録することができる。つまり、近接場光と磁場との協働により、記録媒体への記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特開2005−4901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の近接場光ヘッドには、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、情報の記録に不可欠な近接場光を発生させる際に、平面レーザ光源からレンズを介して金属散乱体にレーザ光を照射させている。ところが、主磁極の先端に金属散乱体が取り付けられているので、平面レーザ光源からレーザ光を斜めに照射せざるを得なかった。よって、金属散乱体に沿ってレーザ光を入射させることができず、レーザ光が途中で散乱等により損失してしまい、近接場光を効率良く発生させることが難しかった。特に、金属散乱体は、導入された光の向きを意図的に変えることができるものではないので、上述したようにレーザ光を斜めに照射して金属散乱体に入射せざるを得なかった。
また、記録媒体への干渉を考慮しながら、平面レーザ光源と金属散乱体との間にレンズを配置する必要があるので、半円形状のものを使用している。そのため、レーザ光を効率良く金属散乱体に集光することが難しかった。このことも、近接場光の発生効率の低下を招く要因であった。
【0011】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、導入された光束の向きを変えながら集光して該光束から近接場光を効率良く発生させることができる近接場光発生素子、該近接場光発生素子を有する近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る近接場光発生素子は、一端側に導入された光束を導入方向とは異なる方向で他端側に集光しながら伝播すると共に、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子であって、導入された前記光束を導入方向とは異なる方向に反射させる反射面と、前記一端側から前記他端側に向かう長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形され、反射された前記光束を集光させながら他端側に向けて伝播させる光束集光部と、該光束集光部の端部から前記他端側に向けてさらに絞り成形され、集光された前記光束から前記近接場光を生成して他端側から外部に向けて発する近接場光生成部と、を有する多面体のコアと、該コアよりも屈折率が低い材料で形成され、コアの他端側を外部に露出させた状態でコアの側面に密着してコアを内部に閉じ込めるクラッドと、を有し、前記コアは、前記長手方向に沿って延びる1つの側面と他の側面とを有し、前記光束集光部は、前記1つの側面が前記他端側に向かうにしたがって前記他の側面に近づくように傾くことにより前記長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形され、前記近接場光生成部は、前記1つの側面が前記他端側に向かうにしたがって前記他の側面に近づき、前記光束集光部における傾きより大きく傾くことにより、前記長手方向に直交する断面積が漸次減少するようにさらに絞り成形されると共に、前記他端側で外部に露出する端面が光の波長以下のサイズとされ、且つ前記1つの側面が遮光膜によって遮光されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る近接場光発生素子においては、反射面、光束集光部及び近接場光生成部により一体的に形成された多面体のコアと、該コアを内部に閉じ込めるクラッドとを有しており、一端側からコアの内部に導入された光束を他端側から近接場光として外部に発することができる。
クラッドは、コアよりも屈折率が低い材料によりコアの側面に密着するように形成されており、コアとの間に隙間が生じないようにコアを閉じ込めている。ここで、一端側からコアの内部に光束を導入すると、該光束は反射面で反射されて向きが変わる。即ち、導入方向とは異なる方向に向きが変化する。そして、向きが変化した光束は、光束集光部によって一端側から他端側に向けてコアの内部を伝播する。
【0014】
この際、光束集光部は、一端側から他端側に向かう長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形されている。そのため、光束はこの光束集光部を通過する際に、側面で反射を繰り返しながら徐々に集光されてコアの内部を伝播していく。特に、コアの側面にはクラッドが密着しているので、コアの外部に光が漏れることなく、導入された光束を無駄にすることなく絞りながら他端側に伝播させることができる。
そして、光束集光部の端部まで伝播された光束は、続いて近接場光生成部に入射する。この近接場光生成部は、他端側に向けてさらに絞り成形されており、他端側で外部に露出する端面が光の波長以下のサイズ(光の回析限界を超えた微小なサイズ)となっている。しかも、この近接場光生成部の側面のうち少なくとも1つの側面が遮光膜によって遮光されている。よって、近接場光生成部に入射した光束を、クラッド側に漏らすことなく端面に向けて伝播させることができる。そのため、近接場光を生成することができ、端面から外部に発することができる。
【0015】
上述したように、コアの一端側から導入させた光束を近接場光に変換することができると共に、他端側からこの近接場光を外部に発することができる。また、導入された光束を反射面で反射させて他端側に向けて自由に向きを変えることができるので、どの方向から光束が導入されても該光束を他端側から確実に近接場光として発生させることができる。更には、光束集光部と近接場光生成部とが一体的に形成されているので、従来のレンズと金属散乱体とのように両者の位置合わせが不要である。
これらのことから、近接場光発生素子を近接場光が必要な各種のデバイスに容易に用いることができ、設計の自由度を向上することができる。特に、光束の導入方向に関係なく、効率良く近接場光を発生させることができるので、扱い易く利便性に優れている。
【0016】
また、本発明に係る近接場光発生素子は、上記本発明の近接場光発生素子において、前記クラッドが、前記コアの一端側を外部に露出させた状態で形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る近接場光発生素子においては、クラッドがコアの一端側を外部に露出させた状態で形成されているので、クラッドを介さずに直接コアに光束を導入することができると共に、より効率良く近接場光に変換して端面から外部に発することができる。
【0018】
また、本発明に係る近接場光発生素子は、上記本発明の近接場光発生素子において、前記近接場光生成部が、前記他端側における所定長さが前記端面と同じサイズでストレート状に成形されていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る近接場光発生素子においては、近接場光生成部が光束集光部の端部から端面に亘って絞り成形されているのではなく、他端側における所定長さが端面と同じサイズでストレート状に成形されている。よって、近接場光発生素子の製造過程において、コア及びクラッドの他端側をダイシングして端面を形成する際に、多少のダイシング誤差が生じたり、絞り成形誤差が生じていたりしていても、端面のサイズを常に同じにすることができる。従って、近接場光発生素子を大量に製造したとしても、各近接場光発生素子のばらつき(個体差)をなくすことができ、同じ品質のものを安定して製造することができる。よって、歩留まりを向上することができる。
【0020】
また、本発明に係る近接場光発生素子は、上記本発明のいずれかの近接場光発生素子において、前記近接場光生成部の全ての側面が、前記遮光膜によって遮光されていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る近接場発生素子においては、近接場光生成部の全ての側面が遮光膜によって遮光されているので、近接場光生成部に入射した光束がクラッド側に漏れることがない。よって、光束の損失を最小限に抑えることができ、より効率良く近接場光を生成することができる。
【0022】
また、本発明に係る近接場光発生素子は、上記本発明の近接場光発生素子において、前記遮光膜が、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜であることを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る近接場発生素子においては、より光強度の強い近接場光を発生させることができる。つまり、光束集光部で集光された光束は、近接場光生成部で金属膜に入射する。すると、この金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜とコアとの界面を端面に向かって伝播する。そして、端面に達した時点で、光強度の強い近接場光となって外部に漏れ出す。特に、金属膜とコアとの界面に光強度の強い近接場光を発生させることができるので、端面の設計サイズ自体に直接影響を受けることがない。つまり、端面のサイズをより微細化する等の作りこみを行わなくても、これら物理的な設計に影響されることなく、光強度の強い近接場光を確実に発生させることができる。
【0024】
また、本発明に係る近接場光発生素子は、上記本発明の近接場光発生素子において、前記金属膜が設けられている前記近接場光生成部の側面が、前記光束集光部で集光された前記光束が共鳴角度で前記金属膜に入射されて、該光束のエネルギーで表面プラズモンが励起されるように角度調整されていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る近接場光発生素子においては、光束集光部で集光された光束を、光のエネルギーが最も表面プラズモンの励起に利用される共鳴角度で金属膜に入射させることができる。従って、最も効率良く表面プラズモンを励起することができ、より効率良く、しかもさらに強い光強度の近接場光を発生させることができる。よって、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドであって、前記磁気記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、該スライダの先端面に固定された補助磁極と、磁気回路を介して前記補助磁極に接続され、前記記録磁界を補助磁極との間で発生させる主磁極と、前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路の周囲を螺旋状に巻回するコイルと、前記他端側を前記磁気記録媒体側に向けた状態で前記主磁極に隣接して固定された、上記本発明のいずれかの近接場光発生素子と、前記スライダに対して平行に配置された状態で該スライダに固定され、前記一端側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段とを備え、前記近接場光生成部が、前記主磁極の近傍に前記近接場光を発生させることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、近接場光発生素子により発生した近接場光と、両磁極で発生した記録磁界とを協働させた近接場光アシスト磁気記録方式により、回転する磁気記録媒体に対して情報の記録を行うことができる。
まず、スライダは、磁気記録媒体の表面に対向した状態で配置されている。そして、このスライダの先端面に補助磁極が固定されていると共に、該補助磁極に磁気回路を介して主磁極が接続されている。さらにこの主磁極に隣接して近接場光発生素子が固定されている。つまり、スライダの先端面には、スライダ側から順に、補助磁極、磁気回路、主磁極、近接場光発生素子が配置されている。
また、近接場光発生素子は、近接場光が発生する他端側が磁気記録媒体側に向けた状態で固定されている。よって、光束が導入される一端側が、磁気記録媒体から離間した位置に向いている。そして、この一端側にスライダに固定された光束導入手段が接続されている。
【0028】
ここで記録を行う場合には、光束導入手段から光束をコア内に導入する。この際、スライダに対して平行な方向に光束を導入することができる。すると、導入された光束は、反射面により向きが略90度曲げられた後、磁気記録媒体側に位置する他端側に向かって光束集光部で集光されながら伝播する。そして、近接場光生成部によって近接場光となり、端面から外部に漏れ出す。この近接場光によって磁気記録媒体は、局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。特に近接場光生成部は、近接場光を主磁極の近傍で発生させるので、主磁極にできるだけ近い位置で磁気記録媒体の保磁力を低下させることができる。
【0029】
一方、上記光束の導入と同時に、記録する情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。すると電磁石の原理により、電流磁界が磁気回路内に磁束を発生させるので、主磁極と補助磁極との間に磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。具体的には、主磁極から発生した磁束が、磁気記録媒体に対して垂直に流れると共に、磁気記録媒体を経由した後に補助磁極に戻ってくる。これにより、近接場光によって保磁力が低下した磁気記録媒体の局所的な位置に対してピンポイントで記録磁界を作用させることができる。なお、この記録磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。
そして、磁気記録媒体は、記録磁界を受けると該記録磁界の方向に応じて磁化の方向が垂直方向に反転する。その結果、情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光と記録磁界とを協働させた近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。また、垂直磁気記録方式で記録を行うので、熱揺らぎの現象を受け難く、書き込みの信頼性が高い安定した記録を行うことができる。
【0030】
特に、主磁極の近傍で磁気記録媒体の保磁力を低下させることができるので、記録磁界が局所的に作用する位置に加熱温度のピーク位置を入れることができる。従って、より確実に記録を行うことができると共に高密度記録を可能にすることができる。
【0031】
また、近接場光を効率良く発生することができる近接場光発生素子を備えているので、近接場光ヘッド自体の書き込みの信頼性を高めることができ、高品質化を図ることができる。また、どの方向から光束が導入されても該光束を他端側から近接場光として発生させる近接場光発生素子でもあるので、スライダに平行に光束導入手段を配置したとしても、該光束導入手段からの光束を主磁極の近傍で近接場光にすることができる。このように、光束の導入方向に影響されずに光束導入手段を配置できるので、近接場光ヘッドの設計をコンパクトにすることができる。しかも従来の光の入れ方とは異なり、光束を空中伝播させる必要がないので、導光損失を極力低下させることができる。
更に、スライダの先端面に、順に補助磁極、主磁極や近接場光発生素子等を配置しているので、光束導入手段以外の各構成品がスライダの厚み方向に重なることを極力防止している。従って、近接場光ヘッド自体の薄型化を図ることができる。
【0032】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記クラッドには、前記近接場光生成部の側面を露出させる溝部が形成されており、前記主磁極が、前記溝部を介して前記近接場光生成部の側面に接触する突出部を有していることを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、主磁極がクラッドに形成された溝部を介して近接場光生成部の側面に接触する突出部を有しているので、近接場光が発生する位置と記録磁界が発生する位置とを極力近づけることができる。従って、より効率良く近接場光と記録磁界とを協働させることができ、高密度記録化により対応することができる。
【0034】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記突出部と前記近接場光生成部の側面との間に、前記遮光膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0035】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、突出部と近接場光生成部の側面との間に遮光膜が形成されているので、突出部の近傍により集中的に近接場光を発生することができる。よって、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0036】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0037】
この発明に係る情報記録再生装置においては、回転駆動部により磁気記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりビームを移動させて近接場光ヘッドをスキャンさせる。そして、近接場光ヘッドを磁気記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際、近接場光ヘッドは、磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態、即ち、2軸を中心として捻れることができるようにビームに支持されている。よって、磁気記録媒体にうねりが生じたとしても、うねりに起因する風圧変化、又は、直接伝わってくるうねりの変化を捩じりによって吸収でき、近接場光ヘッドの姿勢を安定にすることができる。
【0038】
その後、制御部は光源を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。これにより、近接場光ヘッドは、近接場光と記録磁界とを協働させて、磁気記録媒体に情報を記録することができる。
特に、上述した近接場光ヘッドを備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応することができ、高品質化を図ることができる。また、同時に薄型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る近接場光発生素子によれば、コアの一端側から導入させた光束を効率良く近接場光に変換することができると共に、他端側からこの近接場光を外部に発することができる。特に、光束の導入方向に関係なく、効率良く近接場光を発生させることができるので、扱い易く利便性に優れている。従って、近接場光が必要な各種のデバイスに容易に用いることができ、設計の自由度を向上することができる。
【0040】
また、本発明に係る近接場光ヘッドによれば、上述した近接場光発生素子を備えているので、書き込みの信頼性を高めることができ、高品質化を図ることができる。また、光束の導入方向に影響されずに光束導入手段を配置できるので、設計をコンパクトにすることができる。しかも従来の光の入れ方とは異なり、光束を空中伝播させる必要がないので、導光損失を極力低下させることができる。また、光束導入手段以外の各構成品がスライダの厚み方向に重なることを極力防止しているので、薄型化を図ることができる。
【0041】
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、上述した近接場光ヘッドを備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応することができ、高品質化を図ることができる。また、同時に薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る近接場光発生素子を有する近接場光ヘッドを備えた情報記録再生装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す近接場光ヘッドの拡大断面図である。
【図3】図2に示す近接場光ヘッドを、ディスク面側から見た図である。
【図4】図2に示す近接場光ヘッドの流出端側の側面を拡大した断面図であり、近接場光発生素子及び記録素子の構成を示すと共に、記録を行っている際の近接場光と磁界との関係を示した図である。
【図5】図4に示す近接場光発生素子のコアを矢印A方向から見た図である。
【図6】図5に示すコアの他端側を拡大した図である。
【図7】図4に示す近接場光発生素子の他端側を拡大した図である。
【図8】図7に示す近接場光発生素子を端面側から見た図である。
【図9】本発明に係る近接場光発生素子の変形例を示す図であって、近接場光生成部の一部がストレート状に形成されたコアを示す図である。
【図10】図9に示すコアを有する近接場光発生素子の断面図である。
【図11】図10に示す近接場光発生素子を端面側から見た図である。
【図12】本発明に係る近接場光発生素子の変形例を示す図であって、近接場光生成部の側面全てに遮光膜が形成されている近接場光発生素子の断面図である。
【図13】図12に示す近接場光発生素子を端面側から見た図である。
【図14】本発明に係る近接場光発生素子の変形例を示す図であって、近接場光生成部の側面全てに遮光膜が形成されていると共に、遮光膜の1つが金属膜となっている近接場光発生素子の断面図である。
【図15】図14に示す近接場光発生素子を端面側から見た図である。
【図16】本発明に係る近接場光発生素子の変形例を示す図であって、近接場光生成部の側面の1つに金属膜が形成されている近接場光発生素子の断面図である。
【図17】図16に示す近接場光発生素子を端面側から見た図である。
【図18】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、近接場光生成部の側面に接触する主磁極を備えた近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図19】図18に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【図20】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、図18に示す主磁極と近接場光生成部の側面との間に遮光膜が形成された近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図21】図20に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【図22】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、図20に示す遮光膜を金属膜とした近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図23】図22に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【図24】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、図22に示す金属膜が形成されている近接場光生成部の側面を角度調整した近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図25】図24に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【図26】表面プラズモンを励起させる光の入射角度と反射光強度との関係を説明するための図である。
【図27】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、図22に示す金属膜の一部がクラッドと重なっている近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図28】図27に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【図29】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、図22に示す金属膜と突出部との間にシールド膜が形成されている近接場光ヘッドの一部拡大図である。
【図30】図29に示す近接場光ヘッドを端面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る近接場光発生素子、近接場光ヘッド及び情報記録再生装置の一実施形態を、図1から図8を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、垂直記録層d2を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、垂直記録方式で書き込みを行う装置である。また、本実施形態では、ディスクDが回転する空気の流れを利用して近接場光ヘッド2を浮かせた空気浮上タイプを例に挙げて説明する。
【0044】
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、後述するスポットサイズ変換器(近接場光発生素子)22を有する光近接場光ヘッド2と、ディスク面(磁気記録媒体の表面)D1に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で近接場光ヘッド2を先端側で支持するビーム3と、光導波路(光束導入手段)4の基端側から該光導波路4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、ビーム3の基端側を支持すると共に、該ビーム3をディスク面D1に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、情報に応じて変調した電流を後述するコイル33に対して供給すると共に、光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0045】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。
凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にビーム3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びビーム3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
【0046】
なお、キャリッジ11及びビーム3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、近接場光ヘッド2とビーム3とで、サスペンション12を構成している。また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0047】
上記近接場光ヘッド2は、回転するディスクDを加熱すると共に、ディスクDに対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させるものである。この近接場光ヘッド2は、図2及び図3に示すように、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態でディスクDに対向配置され、ディスク面D1に対向する対向面20aを有するスライダ20と、該スライダ20の先端面(以降、流出端側の側面と表現する)に固定された記録素子21と、該記録素子21に隣接して固定されたスポットサイズ変換器22と、該スポットサイズ変換器22の後述するコア40内に光信号コントローラ5からの光束Lを導入する光導波路4とを備えている。また、本実施形態の近接場光ヘッド2は、スポットサイズ変換器22に隣接して固定された再生素子23を備えている。
【0048】
上記スライダ20は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。このスライダ20は、対向面20aをディスクD側にした状態で、ジンバル部24を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部24は、X軸回り及びY軸回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ20は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0049】
スライダ20の対向面20aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部20bが形成されている。本実施形態では、レール状に並ぶように、長手方向に沿って延びた凸条部20bを2つ形成している場合を例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、スライダ20をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ20をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ20を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部20bの表面はABS(Air Bearing Surface)と呼ばれる面とされている。
【0050】
スライダ20は、この2つの凸条部20bによってディスク面D1から浮上する力を受けている。また、ビーム3は、ディスク面D1に垂直なZ方向に撓むようになっており、スライダ20の浮上力を吸収している。つまり、スライダ20は、浮上した際にビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。よってスライダ20は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。しかもスライダ20は、ジンバル部24によってX軸回り及びY軸回りに回動するようになっているので、常に姿勢が安定した状態で浮上するようになっている。
なお、ディスクDの回転に伴って生じる空気流は、スライダ20の流入端側(ビーム3の基端側)から流入した後、ABSに沿って流れ、スライダ20の流出端側(ビーム3の先端側)から抜けている。
【0051】
上記記録素子21は、図4に示すように、スライダ20の流出端側の側面に固定された補助磁極30と、磁気回路31を介して補助磁極30に接続され、ディスクDに対して垂直な記録磁界を補助磁極30との間で発生させる主磁極32と、磁気回路31を中心として該磁気回路31の周囲を螺旋状に巻回するコイル33とを備えている。つまり、スライダ20の流出端側から順に、補助磁極30、磁気回路31、コイル33、主磁極32が配置されている。
両磁極30、32及び磁気回路31は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル33は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、磁気回路31との間、両磁極30、32との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁体34によってモールドされている。そして、コイル33は、情報に応じて変調された電流が制御部8から供給されるようになっている。即ち、磁気回路31及びコイル33は、全体として電磁石を構成している。なお、主磁極32及び補助磁極30は、ディスクDに対向する端面がスライダ20のABSと面一となるように設計されている。
【0052】
上記スポットサイズ変換器22は、図4及び図5に示すように、一端側がスライダ20の上方側に向くと共に、他端側がディスクD側に向いた状態で、記録素子21に隣接して固定されている。より具体的には、主磁極32に隣接して固定されている。なお、図5は、後述するコア40を図4に示す矢印A方向から見た図である。
このスポットサイズ変換器22は、一端側に導入された光束Lを導入方向とは異なる方向で他端側に集光しながら伝播すると共に、近接場光Rに生成した後に外部に発する素子であって、図4から図8に示すように、多面体のコア40と、該コア40を内部に閉じ込めるクラッド41とから構成されており、全体として略板状に形成されている。
なお、図6は図5に示すコア40の他端側の拡大図であり、図7は図4で示すスポットサイズ変換器22の他端側の拡大図であり、図8は図7に示すスポットサイズ変換器22を端面40d側から見た図である。
【0053】
上記コア40は、反射面40aと、光束集光部40bと、近接場光生成部40cとにより一体的に形成されている。なお、本実施形態では、光束集光部40b及び近接場光生成部40cがそれぞれ3つの側面を有するように形成されており、そのうちの1つの側面が主磁極32に対向するように配置されるようになっている。
反射面40aは、一端側から光導波路4によって導入された光束Lを導入方向とは異なる方向に反射させている。本実施形態では、光束Lの向きが略90度変わるように反射させている。また、光束集光部40bは、一端側から他端側に向かう長手方向(Z方向)に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形された部分であり、反射面40aによって反射された光束Lを集光させながら他端側に向けて伝播させている。つまり光束集光部40bは、導入された光束Lのスポットサイズを小さいサイズに絞ることができるようになっている。
【0054】
近接場光生成部40cは、光束集光部40bの端部から他端側に向けてさらに絞り成形された部分である。つまり近接場光生成部40cは、光束集光部40bによって絞られたスポットサイズをさらに小さく絞ることができるようになっている。この際、近接場光生成部40cは、図8に示すように、他端側に位置する端面40dが光の波長以下のサイズとなるように絞り成形されている。つまり、端面40d上で確保できる最大直線長さL1が、光の波長以下となるように設計されている。なお、この光の波長以下のサイズとしては、1nmから1μmの範囲にすることが好ましく、より好ましくは1nmから500nmの範囲である。
これにより、スポットサイズを最大直線長さL1と同程度の大きさ、即ち、直径を約1nmから1μm程度(或いは1nmから500nm程度)に絞ることができ、このサイズの近接場光Rとして端面40dから外部に発することができる。
【0055】
また、本実施形態では光束集光部40b及び近接場光生成部40cが、図4に示すように、共に主磁極32側に向けて漸次絞り成形されている。これにより、主磁極32側に端面40dが位置するようになっている。これにより、主磁極32の近傍に上記サイズの近接場光Rを発生させることができるようになっている。なお、本発明でいう「近傍」とは、端面40dから発生する近接場光Rの直径と同程度の距離、或いは、それ以下の距離だけ、主磁極32から離間した範囲内の領域をいう。よって、本実施形態の場合は、主磁極32と近接場光生成部40cの端面40dとの距離が、近接場光Rの直径(最大直線長さL1)と同程度である1nmから1μm程度(或いは1nmから500nm程度)或いは、それ以下の距離になるように設計されている。
【0056】
上記クラッド41は、図4及び図5に示すように、コア40よりも屈折率が低い材料で形成されており、コア40の側面に密着して、コア40を内部に閉じ込めている。よって、コア40とクラッド41との間に隙間が生じないようになっている。また、本実施形態のクラッド41は、コア40の一端側と同様に、他端側の端面40dについても外部に露出させるように形成されている。
【0057】
なお、クラッド41及びコア40として使用される材料の組み合わせの一例を記載すると、例えば、石英(SiO2)でコア40を形成し、フッ素をドープした石英でクラッド41を形成する組み合わせが考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コア40の屈折率が1.47となり、クラッド41の屈折率が1.47未満となるので好ましい組み合わせである。また、ゲルマニウムをドープした石英でコア40を形成し、石英(SiO2)でクラッド41を形成する組み合わせも考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コア40の屈折率が1.47より大きくなり、クラッド41の屈折率が1.47となるのでやはり好ましい組み合わせである。
特に、コア40とクラッド41との屈折率差が大きいほど、コア40内に光束Lを閉じ込める力が大きくなるので、コア40に酸化タンタル(Ta25:波長が550nmのときに屈折率が2.16)を用い、クラッド41に石英等を用いて、両者の屈折率差を大きくすることがより好ましい。また、赤外領域の光束Lを利用する場合には、赤外光に対して透明な材料であるシリコン(Si:屈折率が約4)でコア40を形成することも有効である。
【0058】
また、近接場光生成部40cの3つの側面のうち、主磁極32に対向する1つの側面を除く2面には、光束Lを遮光する遮光膜42が形成されている。これにより、近接場光生成部40cからクラッド41側に光束Lが漏れ出さないようになっている。近接場光生成部40cは、この遮光膜42と上述した絞り成形とによって、光束集光部40bで集光された光束Lから近接場光Rを生成して端面40dから外部に発することができるようになっている。しかも、端面40dが主磁極32側に形成されているので、近接場光Rを主磁極32の近傍に発生させることができるようになっている。なお、スポットサイズ変換器22の端面40dは、スライダ20のABSと面一となるように設計されている。
【0059】
上記光導波路4は、図4及び図5に示すように、コア4aとクラッド4bとからなる2軸の導波路であり、コア4a内を光束Lが伝播するようになっている。この光導波路4は、クラッド41に形成された溝部41a及びスライダ20の上面に形成された図示しない溝部内に嵌った状態で固定されている。これにより、光導波路4は、スライダ20に対して平行に配置された状態となっている。
また、光導波路4の先端は、スポットサイズ変換器22の一端側に接続されており、光束Lをコア40内に導入している。また、光導波路4の基端側は、ビーム3及びキャリッジ11等を介して光信号コントローラ5に引き出された後、該光信号コントローラ5に接続されている。
なお、図5に示すように、光導波路4からコア40内に導入された光束Lが反射面40aの略中心に入射するように、スポットサイズ変換器22及び光導波路4の位置関係が調整されている。
【0060】
また、上記再生素子23は、ディスクDの垂直記録層d2から漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜である。この再生素子23には、図示しないリード膜等を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことができるようになっている。
【0061】
なお、本実施形態のディスクDは、少なくとも、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d2と、高透磁率材料からなる軟磁性層d3との2層で構成される垂直2層膜ディスクを使用する。このようなディスクDとしては、例えば、図2に示すように、基板d1上に、軟磁性層d3と、中間層d4と、垂直記録層d2と、保護層d5と、潤滑層d6とを順に成膜したものを使用する。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。軟磁性層d3は、高透磁率層である。中間層d4は、垂直記録層d2の結晶制御層である。垂直記録層d2は、垂直異方性磁性層となっており、例えばCoCrPt系合金が使用される。保護層d5は、垂直記録層d2を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d6は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0062】
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に近接場光ヘッド2を位置させることができる。この際、近接場光ヘッド2は、スライダ20の対向面20aに形成された2つの凸条部20bによって浮上する力を受けると共に、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。近接場光ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0063】
また、近接場光ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、ビーム3によってZ方向の変位が吸収されると共に、ジンバル部24によってXY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、近接場光ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0064】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部8は光信号コントローラ5を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル33に供給する。
まず、光信号コントローラ5は、制御部8からの指示を受けて光束Lを光導波路4の基端側から入射させる。入射した光束Lは、光導波路4のコア4a内を先端側に向かって進み、図4に示すように、スポットサイズ変換器22の一端側からコア40内に導入される。この際光束Lは、スライダ20に対して平行な方向でコア40内に導入される。すると、導入された光束Lは、反射面40aで反射されて向きが略90度変わる。即ち、導入方向とは異なる方向に向きが変化する。そして、向きが変わった光束Lは、ディスクD側に位置する他端側に向かって光束集光部40bで集光されながら伝播して近接場光生成部40cに入射する。
【0065】
この際、光束集光部40bは、一端側から他端側に向かう長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形されている。そのため、光束Lはこの光束集光部40bを通過する際に、側面で反射を繰り返しながら徐々に集光されてコア40の内部を伝播していく。特に、コア40の側面にはクラッド41が密着しているので、コア40の外部に光が漏れることなく、導入された光束Lを無駄にすることなく絞りながら他端側に伝播させることができる。
そして、光束集光部40bの端部まで伝播された光束Lは、続いて近接場光生成部40cに入射する。この近接場光生成部40cは、他端側に向けてさらに絞り成形されており、端面40dが光の波長以下のサイズとされている。しかも、近接場光生成部40cの2つの側面は、遮光膜42によって遮光されている。よって、近接場光生成部40cに入射した光束Lを、クラッド41側に漏らすことなく端面40dに向けて伝播させることができる。そのため、近接場光Rを生成することができ、該近接場光Rを端面40dから外部に発することができる。
【0066】
この近接場光Rによって、ディスクDは局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。特に、近接場光生成部40cは、この近接場光Rを主磁極32の近傍、即ち、主磁極32から近接場光Rの直径と同程度の距離だけ離間した範囲内に発生させるので、主磁極32にできるだけ近い位置でディスクDの保磁力を低下させることができる。
【0067】
一方、制御部8によってコイル33に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路31内に磁界を発生させるので、主磁極32と補助磁極30との間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。すると、主磁極32側から発生した磁束が、図4に示すように、ディスクDの垂直記録層d2を真直ぐ通り抜けて軟磁性層d3に達する。これによって、垂直記録層d2の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d3に達した磁束は、該軟磁性層d3を経由して補助磁極30に戻る。この際、補助磁極30に戻るときには磁化の方向に影響を与えることはない。これは、ディスク面D1に対向する補助磁極30の面積が、主磁極32よりも大きいので磁束密度が大きく磁化を反転させるほどの力が生じないためである。つまり、主磁極32側でのみ記録を行うことができる。
【0068】
その結果、近接場光Rと両磁極30、32で発生した記録磁界とを協働させた近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
特に、主磁極32の近傍でディスクDの保磁力を低下させることができるので、記録磁界が局所的に作用する位置に加熱温度のピーク位置を入れることができる。従って、確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化を図ることができると共に高密度記録化を図ることができる。
【0069】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、スポットサイズ変換器22に隣接して固定されている再生素子23が、ディスクDの垂直記録層d2から漏れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、再生素子23の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
【0070】
上述したように、本実施形態の近接場光ヘッド2は、近接場光Rを効率良く発生することができるスポットサイズ変換器22を備えているので、近接場光ヘッド2自体の書き込みの信頼性を高めることができ、高品質化を図ることができる。しかも、本実施形態では、コア40の一端側及び他端側の端面40dを外部に露出させた状態でクラッド41が形成されているので、該クラッド41を介さずに直接コア40に光束Lを導入することができると共に、より効率良く近接場光Rに変換して端面40dから外部に発することができる。
【0071】
特に、このスポットサイズ変換器22は、導入された光束Lを反射面40aで反射させて自由に向きを変えることができるので、スライダ20に平行に光導波路4を配置しても、該光導波路4からの光束Lを主磁極32の近傍で近接場光Rにすることができる。よって、光束Lの導入方向に影響されずに光導波路4を配置できる。従って、近接場光ヘッド2の設計をコンパクトにすることができる。しかも従来の光の入れ方とは異なり、光束Lを空中伝播させる必要がないので、導光損失を極力低下させることができる。更に、スライダ20の流出端側の側面に、順に記録素子21、スポットサイズ変換器22及び再生素子23を配置しているので、光導波路4以外の各構成品がスライダ20の厚み方向に重なることを防止している。従って、近接場光ヘッド2自体の薄型化を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態の近接場光ヘッド2を製造する場合には、フォトリソグラフィ技術及びエッチング加工技術等の半導体技術を利用して製造を行うことができる。つまり、スポットサイズ変換器22を有している場合であっても、特別な手法を用いずに、従来の製造プロセスの流れの中でスポットサイズ変換器22も同時に作りこむことができる。
具体的に説明すると、スライダ20を所定の外形形状に加工した後、該スライダ20の流出端側の側面に上記半導体技術を利用して記録素子21を作りこむ。次いで、この記録素子21上に同様に半導体技術を利用して、スポットサイズ変換器22を作りこむ。そして最後に、スポットサイズ変換器22上に再生素子23を作りこめば良い。このように、スライダ20側から順々に各構成品を作りこむ途中で、スポットサイズ変換器22の製造工程を一工程追加するだけで、容易に近接場光ヘッド2を製造することができる。
【0073】
なお、スポットサイズ変換器22を製造する際には、まず、主磁極32上にクラッド41を成膜する。この際、後に光導波路4を一端側に接続させるために、クラッド41に溝部41aが形成されるようにパターニングする。次いで、このクラッド41上にコア40を凸状に成膜した後、適宜エッチングを行って反射面40a、光束集光部40b及び近接場光生成部40cをそれぞれ形成する。次いで、近接場光生成部40cの側面上に遮光膜42を成膜する。次いで、コア40を内部に閉じ込めるように再度クラッド41を成膜する。そして、最後にクラッド41の外形形状が所定の形になるように加工する。この際、スポットサイズ変換器22の他端側をダイシング等で切断加工することで、端面40dを形成することができる。このように半導体技術を利用して、容易にスポットサイズ変換器22を製造することができる。
【0074】
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、上述した近接場光ヘッド2を備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応することができ、高品質化を図ることができる。また、同時に薄型化を図ることができる。
なお、上記実施形態において、図8に示す矢印L2方向に光束Lの偏光成分が向くように調整した後に、光束Lを光導波路4内に導入することが好ましい。こうすることで、近接場光Rを主磁極32側に向いた近接場光生成部40cの側面付近(図8に示す領域S)に集中的に局在化することができる。従って、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0075】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態では、スポットサイズ変換器22を近接場光ヘッド2に適用した場合を例に挙げて説明したが、近接場光ヘッド2に限定されず、近接場光Rが必要な各種のデバイスに適用しても構わない。特に上記実施形態では、近接場光ヘッド2に適用するにあたって、導入された光束Lを反射面40aで略90度向きが変わるように設計したが、反射角度はこの角度に限定されるものではない。つまり、反射面40aの設計しだいでは、一端側から導入された光束Lを反射面40aで反射させて他端側に向けて自由な角度で向きを変えることができる。従って、どの方向から光束Lが導入されても該光束Lを他端側から確実に近接場光Rとして発生させることができる。従って、扱い易く、様々なデバイスに利用することができる。
【0077】
また、上記実施形態において、図9から図11に示すように、他端側における所定長さL3が端面40dと同じサイズでストレート状になるように近接場光生成部40cを形成しても構わない。つまり、近接場光生成部40cが、光束集光部40bの端部から端面40dに亘って絞り成形されているのではなく、他端側における所定長さL3がストレート状に形成されている。
よって、スポットサイズ変換器22の製造過程において、コア40及びクラッド41の他端側をダイシングして端面40dを形成する際に、多少のダイシング誤差が生じたり、絞り成形誤差が生じていたりしていても、端面40dのサイズを常に同じにすることができる。従って、スポットサイズ変換器22を大量に製造したとしても、各スポットサイズ変換器22のばらつき(個体差)をなくすことができ、同じ品質のものを安定して製造することができる。よって、歩留まりを向上することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、近接場光生成部40cの3つの側面のうち、2つの側面だけを遮光膜42で遮光した構成にしたが、少なくとも1つの側面だけを遮光しても構わない。この場合であっても、近接場光Rを発生することができる。
但し、図12及び図13に示すように全ての側面(3つの側面)を遮光膜42で遮光することが好ましい。こうすることで、近接場光生成部40cに入射した光束Lが、クラッド41側に漏れることがない。よって、光束Lの損失を最小限に抑えることができ、より効率良く近接場光Rを発生させることができる。
【0079】
更には、いずれかの側面上に形成された遮光膜42を、近接場光Rの光強度を増強させる金属膜43としても構わない。例えば、図14及び図15に示すように、主磁極32に対向する側面上に形成された遮光膜を、近接場光Rの光強度を増強させる金属膜43としても構わない。こうすることで、より光強度の強い近接場光Rを発生することができる。つまり、光束集光部40bで集光された光束Lは、近接場光生成部40cでこの金属膜43に入射する。すると、この金属膜43には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜43とコア40との界面を端面40dに向かって伝播する。そして、端面40dに達した時点で、光強度の強い近接場光Rとなって漏れ出す。従って、更なる高密度記録化を図ることができる。
特に、金属膜43とコア40との界面に光強度の強い近接場光Rを発生させることができるので、端面40dの設計サイズに直接影響を受けることがない。つまり、端面40dのサイズを微細化する等の作りこみを行わなくても、これら物理的な設計に影響されることなく、光強度の強い近接場光Rを確実に発生させることができる。
【0080】
なお、このような金属膜43としては、例えば、金膜、銀膜やプラチナ膜等である。このうち、酸化に強く、耐久性に優れている点で金膜を使用することが好ましい。また、全て遮光膜を金属膜43としても構わない。
更には、近接場光生成部40cの3つの側面のうち、1つ又は2つの側面だけに金属膜43を形成しても構わない。例えば、図16及び図17に示すように、近接場光生成部40cの3つの側面のうち、主磁極32に対向する側面以外の側面の1つに、金属膜43を形成しても構わない。この場合であっても、物理的な設計に影響されることなく、金属膜43とコア40との界面に光強度の強い近接場光Rを局在化させた状態で発生させることができる。従って、更なる高密度記録化を図ることができる。
特に、近接場光生成部40cの3つの側面のうち1つの側面だけに金属膜43を形成させるので、2つ若しくは3つの側面に形成する場合と比較して作り易い。
【0081】
また、上記実施形態において、図18及び図19に示すように、近接場光生成部40cの側面を露出させる溝部41bをクラッド41に形成すると共に、該溝部41bを介して近接場光生成部40cの側面に接触する突出部32aを主磁極32に設けても構わない。
こうすることで、近接場光Rが発生する位置と記録磁界が発生する位置とを極力近づけることができる。従って、より効率良く近接場光Rと記録磁界とを協働させることができ、高密度記録化により対応することができる。
特に、この突出部32aを備える際に、図20及び図21に示すように、突出部32aと近接場光生成部40cの側面との間に遮光膜42が形成されているとより好ましい。こうすることで、突出部32aの近傍により集中的に近接場光Rを発生することができるので、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0082】
更には、突出部32aを設けた際に、図22及び図23に示すように、近接場光生成部40cの3つの側面のうち、主磁極32に対向する側面上に形成された遮光膜を、図14及び図15に示した場合と同様に、金属膜43とすることが好ましい。こうすることで、突出部32aにより近い位置で、光強度の強い近接場光Rを局在化させた状態で発生させることができる。従って、さらに効率良く近接場光Rと記録磁界とを協同させることができ、さらなる高密度記録化を図ることができる。
【0083】
また、図22及び図23に示すように金属膜43を設けた場合に、より効率良くしかもさらに強い光強度の近接場光Rを発生させることが可能である。
例えば、光束集光部40bで集光された光束Lを共鳴角度θで金属膜43に入射させて、光束Lのエネルギーで金属膜43の表面に表面プラズモンを励起させるように、図24及び図25に示すように、金属膜43が形成されている近接場光生成部40cの側面を角度調整すると良い。
【0084】
ここで、光束Lの入射角度と反射光強度について、簡単に説明する。
図26に示すように、底面に金属膜P2が設けられたプリズムP1に向けて、光L1を全反射条件で入射させると、入射角度θ(金属膜P2の表面に垂直な直線と光L1とのなす角度)に応じて反射光強度が変化する。これは、光L1のエネルギーが表面プラズモンの励起に利用されるからである。そして、入射角度を変化させて反射光強度を検出すると、反射光強度が最小となる入射角度がある。これは、光L1のエネルギーが最も表面プラズモンの励起に利用されるからである。そして、この反射光強度が最小となる入射角度を、一般的に共鳴角度と称している。
【0085】
よって、図24に示すように、光束集光部40bで集光された光束Lを共鳴角度θで金属膜43に入射させることで、最も効率良く表面プラズモンを励起することができ、より効率良く、しかもさらに強い光強度の近接場光Rを発生させることができる。
なお、コア40内に導入された光束Lは、コア40の側面で反射を繰り返しながら徐々に集光されて端面40dに進むが、光束集光部40bまで進んできた段階である程度に集約されているので進む方向が定まっている。つまり、コア40を設計した時点で、光束Lの主成分がどのように進みながらコア40を伝播するのかを把握することができる。そのため、図24に示すように、この光束Lの主成分が共鳴角度θで金属膜43に入射するように、近接場光生成部40cの側面の角度を調整すれば良い。
【0086】
なお、集光された光束Lを共鳴角度θで金属膜43に入射させる場合に、図27及び図28に示すように、金属膜43の一部がクラッド41に重なるように設計すると良い。上述したように、光束Lを共鳴角度θで金属膜43に入射させることで効率良く表面プラズモンを励起させることが知られているが、プリズムP1の金属膜P2に誘電体薄膜を吸着させるだけで共鳴角度θが変化することも一般的に知られている。そのため、図27に示すように、金属膜43とクラッド41とを一部重ねることで共鳴角度θを任意の角度に調整することができる。従って、図27に示す場合であっても、集光された光束Lを共鳴角度θで金属膜43に入射させることが可能となり、やはり同様に、さらに強い光強度の近接場光Rをより効率良く発生させることができる。
特に、近接場光生成部40cの側面の角度を機械的に調整し難い場合であっても、共鳴角度θ自体を変化させることができるので、機械的な設計を補助することができる。従って、設計の自由度を向上することができる。
【0087】
また、図22及び図23に示すように金属膜43を設けた場合に、金属膜43と突出部32aとの間に、図29及び図30に示すシールド膜44を設けても構わない。このシールド膜44は、突出部32aと金属膜43との間の電気的な繋がり又は磁気的な繋がりのうち、少なくともいずれか一方の繋がりを遮断するものである。こうすることで、近接場光Rと記録磁界とをより効果的に協働させた近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。
【0088】
また、上記各実施形態では、近接場光ヘッド2を浮上させた空気浮上タイプの情報記録再生装置1を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、ディスク面D1に対向配置されていればディスクDとスライダ20とが接触していても構わない。つまり、本発明に係る近接場光ヘッド2は、コンタクトスライダタイプのヘッドであっても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0089】
D ディスク(磁気記録媒体)
D1 ディスク面(磁気記録媒体の表面)
L 光束
R 近接場光
θ 共鳴角度
1 情報記録再生装置
2 近接場光ヘッド
3 ビーム
4 光導波路(光束導入手段)
5 光信号コントローラ(光源)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
20 スライダ
22 スポットサイズ変換器(近接場光発生素子)
30 補助磁極
31 磁気回路
32 主磁極
32a 主磁極の突出部
33 コイル
40 コア
40a 反射面
40b 光束集光部
40c 近接場光生成部
40d 端面
41 クラッド
41b クラッドの溝部
42 遮光膜
43 金属膜
44 シールド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に導入された光束を導入方向とは異なる方向で他端側に集光しながら伝播すると共に、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子であって、
導入された前記光束を導入方向とは異なる方向に反射させる反射面と、前記一端側から前記他端側に向かう長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形され、反射された前記光束を集光させながら他端側に向けて伝播させる光束集光部と、該光束集光部の端部から前記他端側に向けてさらに絞り成形され、集光された前記光束から前記近接場光を生成して他端側から外部に向けて発する近接場光生成部と、を有する多面体のコアと、
該コアよりも屈折率が低い材料で形成され、コアの他端側を外部に露出させた状態でコアの側面に密着してコアを内部に閉じ込めるクラッドと、を有し、
前記コアは、前記長手方向に沿って延びる1つの側面と他の側面とを有し、
前記光束集光部は、前記1つの側面が前記他端側に向かうにしたがって前記他の側面に近づくように傾くことにより前記長手方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形され、
前記近接場光生成部は、前記1つの側面が前記他端側に向かうにしたがって前記他の側面に近づき、前記光束集光部における傾きより大きく傾くことにより、前記長手方向に直交する断面積が漸次減少するようにさらに絞り成形されると共に、前記他端側で外部に露出する端面が光の波長以下のサイズとされ、且つ前記1つの側面が遮光膜によって遮光されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項2】
請求項1に記載の近接場光発生素子において、
前記クラッドは、前記コアの一端側を外部に露出させた状態で形成されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の近接場光発生素子において、
前記近接場光生成部は、前記他端側における所定長さが前記端面と同じサイズでストレート状に成形されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の近接場光発生素子において、
前記近接場光生成部の全ての側面は、前記遮光膜によって遮光されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場光発生素子において、
前記遮光膜は、前記近接場光の光強度を増加させる金属膜であることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項6】
請求項5に記載の近接場光発生素子において、
前記金属膜が設けられている前記近接場光生成部の側面は、前記光束集光部で集光された前記光束が共鳴角度で前記金属膜に入射されて、該光束のエネルギーで表面プラズモンが励起されるように角度調整されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項7】
一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、磁気記録媒体に対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドであって、
前記磁気記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、
該スライダの先端面に固定された補助磁極と、
磁気回路を介して前記補助磁極に接続され、前記記録磁界を補助磁極との間で発生させる主磁極と、
前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路の周囲を螺旋状に巻回するコイルと、
前記他端側を前記磁気記録媒体側に向けた状態で前記主磁極に隣接して固定された、請求項1から6のいずれか1項に記載の近接場光発生素子と、
前記スライダに対して平行に配置された状態で該スライダに固定され、前記一端側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段とを備え、
前記近接場光生成部は、前記主磁極の近傍に前記近接場光を発生させることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記クラッドには、前記近接場光生成部の側面を露出させる溝部が形成されており、
前記主磁極は、前記溝部を介して前記近接場光生成部の側面に接触する突出部を有していることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記突出部と前記近接場光生成部の側面との間には、前記遮光膜が形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−101748(P2013−101748A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−37481(P2013−37481)
【出願日】平成25年2月27日(2013.2.27)
【分割の表示】特願2007−29071(P2007−29071)の分割
【原出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】