近接給電・通信装置
【課題】基地局側から携帯機側へ近接給電を行う場合でも近接給電を行わない場合でも、そのまま利用することができる近接給電・通信装置を提供すること。
【解決手段】基地局は、LF送信アンテナ1とLF送信回路2を通して通信用LF信号を送信し、携帯機からのUHF応答信号をUHF受信アンテナ3とUHF受信回路4を通して受信する通常通信モードと、通常通信モードでの動作に続いてLF送信アンテナ1とLF送信回路2を通して近接給電用LF信号を送信し、近接給電された携帯機からのUHF応答信号をUHF受信アンテナ3とUHF受信回路4を通して受信する近接給電モードとを有する。基地局は、通常通信モードあるいは近接給電モードで携帯機からUHF応答信号を受信したときに動作を休止する。複数の携帯機の存在が想定される場合には通常通信モードと近接給電モードを常に実行すればよい。
【解決手段】基地局は、LF送信アンテナ1とLF送信回路2を通して通信用LF信号を送信し、携帯機からのUHF応答信号をUHF受信アンテナ3とUHF受信回路4を通して受信する通常通信モードと、通常通信モードでの動作に続いてLF送信アンテナ1とLF送信回路2を通して近接給電用LF信号を送信し、近接給電された携帯機からのUHF応答信号をUHF受信アンテナ3とUHF受信回路4を通して受信する近接給電モードとを有する。基地局は、通常通信モードあるいは近接給電モードで携帯機からUHF応答信号を受信したときに動作を休止する。複数の携帯機の存在が想定される場合には通常通信モードと近接給電モードを常に実行すればよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接給電・通信装置に関し、特に、基地局側から携帯機側へ近接給電を行う場合でも近接給電を行わない場合でも、利用者がスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用することができる近接給電・通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局から送信される電磁波が持つ放射磁界に基づく電磁誘導エネルギを携帯機の動作エネルギとする装置、すなわち携帯機の動作エネルギを基地局側から近接給電により得る装置が知られている。
【0003】
このような装置として、従来、自動車用キーレスエントリ装置、RFIDタグ装置、ICカード装置などが実用化されている。これらの装置では、近接給電と通信に使用する周波数を同一とするのが一般的であり、基地局と携帯機は、近接給電に使用する電磁波と同一の周波数を用いて通信(以下、これを単一周波通信方式と称する)を行う。
【0004】
図12は、LF(Low Frequency)信号を使用する従来の単一周波通信方式における基地局および携帯機の動作を示すタイムチャートである。
【0005】
図12に示すように、基地局は、LF送信期間とLF応答受信期間と休止を繰り返し、携帯機は、LF受信期間とLF応答送信期間と休止を繰り返す。これは、同一の周波数では送信と受信を同時に行うことができないためである。そのために、基地局および携帯機はそれぞれ、LF送受信アンテナとLF送受信回路を持つ。携帯機のLF受信期間は、基地局のLF送信期間に対応し、基地局のLF応答受信期間は、携帯機のLF応答送信期間に対応する。
【0006】
基地局は、LF送信期間でLF送受信回路をLF送信回路に切り替え、LF信号を送信する。このLF信号は、一般的に、近接給電用LF信号および通信用LF信号を含む。LF送信期間は、LF信号の電磁波による放射磁界がオンとなる期間であり、この期間に携帯機が近接給電される。LF信号に通信用LF信号を含ませれば、通信を行うこともできる。
【0007】
LF応答受信期間では、LF送受信回路をLF受信回路に切り替え、LF信号の送信を停止する。LF応答受信期間は、放射磁界がオフとなる期間であり、この期間に、LF送信期間で近接給電された携帯機からLF応答信号を待つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0008】
携帯機は、LF受信期間でLF送受信回路をLF受信回路に切り替え、基地局からのLF信号を受信して近接給電による電力を発生する。LF信号に通信用LF信号が含まれていれば、それに対する応答処理を行う。LF応答送信期間では、LF送受信回路をLF送信回路に切り替え、LF応答信号を送信する。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0009】
以上のように、LF信号を使用する単一周波通信方式では、まず、基地局からLF信号を送信する。携帯機では、基地局から送信されたLF信号を受信し、その電磁波が持つ放射磁界に基づいて電力を生成し、その電力によりLF送受信回路を含む回路を動作させてLF応答信号を送信する。基地局は、LF信号の送信を完了した後、携帯機から送信されるLF応答信号をLF受信機で受信する。
【0010】
例えば、自動車用キーレスエントリ装置の場合、自動車側の基地局およびキー側の携帯機はそれぞれ、LF送受信アンテナとLF送受信回路を備え、LF信号を使用して近接給電と通信を行う。この場合、基地局から携帯機へ近接給電(一般に通信用LF信号の送信も含む)を行う期間と携帯機から基地局へ応答信号を送信する期間を異ならせる。
【0011】
RFIDタグ装置の場合、送受信される信号がRF(Radio Frequency)信号である点を除いて同様であり、ICタグリーダ側の基地局およびICタグ側の携帯機はそれぞれ、RF送受信アンテナとRF送受信回路を備え、RF信号を使用して近接給電と通信を行う。この場合でも、基地局から携帯機へ近接給電と基地局と携帯機間の通信は、単一周波通信方式であり、同一の周波数では送信と受信を同時に行うことができない。
【0012】
RF信号を使用する単一周波通信方式では、まず、基地局からRF信号を送信する。このRF信号は、一般的に、近接給電用RF信号と通信用RF信号を含む。携帯機は、基地局から送信されたRF信号を受信し、その電磁波が持つ放射磁界に基づいて電力を生成し、その電力によりRF送受信回路を含む回路を動作させてRF応答信号を送信する。基地局は、RF信号の送信を完了した後、携帯機から送信されるRF応答信号をRF受信機で受信する。このような送受信期間は、RF信号を使用する単一周波通信方式のICカード装置でも実現されている。
【0013】
また、同一周波数帯の異なる周波数を使用して基地局と携帯機間の上り、下りの近接給電および通信を同時に行う方式(以下、これを双方向通信方式と称する)も知られている。
【0014】
図13は、LF信号を使用する従来の双方向通信方式における基地局および携帯機の動作を示すタイムチャートである。この方式は、基地局が携帯機からの応答信号を常時受信できるという特徴がある。
【0015】
図13に示すように、基地局は、周波数F1のLF信号を送信するLF送信期間と休止を繰り返し、同時に、F1とは異なる周波数F2のLF応答信号を受信するLF応答受信期間と休止を繰り返す。また、携帯機は、周波数F1のLF信号を受信するLF受信期間と休止を繰り返し、同時に、周波数F2のLF応答信号を送信するLF応答送信期間と休止を繰り返す。
【0016】
そのために、基地局は、周波数F1のLF信号を送信するLF送信手段と周波数F2のLF信号を受信するLF受信手段を持ち、携帯機は、周波数F1のLF信号を受信するLF受信手段と周波数F2のLF信号を送信するLF送信手段を持つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0017】
基地局は、携帯機の起動に必要な電力が生成されるのに十分な時間のLF送信期間を設定し、このLF送信期間で周波数F1のLF信号を送信し続け、LF送信期間と同時のLF受信応答期間で、LF信号により近接給電された携帯機から周波数F2のLF応答信号を待つ。LF送信期間ではLF信号の電磁波による放射磁界がオンとなり、休止の期間では放射磁界がオフとなる。
【0018】
基地局は、LF送信期間で放射磁界がオンとなっている期間、携帯機側へ放射磁界を利用した近接給電を行う。LF信号は、一般的に、近接給電用LF信号および通信用LF信号を含む。一方、放射磁界がオンの期間(LF送信期間)ので給電された携帯機は、LF送信期間と同時のLF応答期間でLF応答信号を送信する。
【0019】
例えば、RFIDタグを用いる動物識別に対する規定ISO11785の技術指針では、LF(134.2kHz±1.8kHz)を用いる例として、以下の給電方法を規定している。
【0020】
基地局側のLF送信機からの放射磁界を50msecオン、3msecオフとし、この動作を繰り返して基地局からの放射磁界で携帯機側に近接給電を行う。放射磁界のオン期間(50msec)に携帯機は近接給電される。この期間では、常時、基地局側のLF受信機は、携帯機からの応答信号を待つ。このISO11785の技術指針で提示されている基地局から携帯機への近接給電と通信の送受信期間は、RF信号を使用する双方向通信方式のICカードでも実現されている。
【0021】
また、非特許文献1には、LF信号を使用して携帯機を起動し、UHF信号を使用して携帯機から基地局へ応答信号を送信する入退室管理システムが記載されている。この入退室管理システムは、タグリーダ、外部アンテナおよびアクティブタグから構成される。ここで、タグリーダは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF受信回路、制御回路(CPU)を備え、外部アンテナは、LFアンテナおよびLF送信回路を備え、アクティブタグは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF送信回路、制御回路(CPU)および電池を備える。
【0022】
アクティブタグは、電池が消耗していなければ、タグリーダからのLF信号の鼓動パターンにより起動され、ID番号を含むUHF応答信号をUHF送信回路を通じてタグリーダに送信する。しかし、電池が消耗している場合、アクティブタグは、タグリーダからのLF信号により誘起される電力により動作し、LF送信回路から2値のFSK(Frequency Shift Keying)変調したLF信号をタグリーダへ送信し、タグリーダはLF受信回路でこのLF信号を受信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】鍋嶋 秀夫 他著,"アクティブタグによるハンズフリー入退室管理システム" パナソニック電工技報(Vol.57 No.2),52-57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、従来のLF信号を使用する単一周波通信方式には、以下のような課題があった。
【0025】
携帯機の電源から携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られる場合、基地局からのLF信号(通信用LF信号を含む)の受信により直ちに携帯機を起動させ、基地局から近接給電を受けることなく、受信されたLF信号に対するLF応答信号を送信することは可能である。しかし、携帯機の電源が消耗していて携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られない場合には、基地局から連続的にLF信号を送信して携帯機に近接給電し、携帯機が起動に必要な電力を得た後でないと携帯機はLF応答信号を送信できない。
【0026】
従来の単一周波通信方式では、携帯機の電源が消耗していて携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られない場合を想定して、携帯機が直ちに起動可能な状態にあるか否かに関係なく、基地局から近接給電用LF信号を一定時間連続的に送信し続け、携帯機がその内部の回路を起動するのに必要な電力が得られるようにする、あるいは携帯機の電源が消耗していて近接給電を必要とするか否かに応じて、利用者が基地局に設けられたスイッチなどを操作してLF信号を一定時間連続して送信させるか否かを選択するようにすることが必要であった。
【0027】
しかし、携帯機が直ちに起動可能な状態にあるか否かに関係なく、基地局から連続的に一定時間LF信号を送信し続けるものとした場合、基地局と携帯機間の通信に要する時間が常に長くなるという課題があった。
【0028】
また、基地局に設けられたスイッチなどを操作してLF信号を一定時間連続して送信させるか否かを選択するものとした場合には、利用者が予め携帯機がその内部電源により起動可能な状態にあるかどうかを携帯機の表示などで確認する必要があり、また、基地局に設けられた近接給電起動用に用いるスイッチは、外部からいたずらされたり、破壊されたりして実際に利用したいときに利用できないというケースが発生するという課題があった。さらに、緊急事態などで利用者があわてているような場合でも、携帯機がその内部電源により起動可能な状態にあるかどうかを携帯機の表示などで毎回確認し、起動可能でない場合には近接給電用LF信号が送信されるように基地局に設けられた近接給電起動用のスイッチで送信回路のモードを切り替える必要があるので、実使用上のトラブルの原因となり、設備設置者にとっても利用者にとっても悩みの種であった。
【0029】
また、単一周波通信方式においては、基地局は、放射磁界のオン期間が経過すれば直ちにLF応答受信期間となり、携帯機は、LF受信期間が終了すれば直ちにLF応答送信期間となるので、基地局および携帯機において、LF信号が受信回路側に回り込むことによる電源雑音やLF信号の放射磁界が受信アンテナ側に空間的に回り込むことによる雑音の影響を受けて、広範のエリアで安定した通信を確保することが困難となるという課題があった。
【0030】
RF信号を使用する単一周波通信方式でも非特許文献1に記載の入退室管理システムでも、LF信号を使用する単一周波通信方式と同様の課題がある上、基地局側に設けられた近接給電起動用のスイッチを使用するという課題もあった。
【0031】
同一周波数帯の異なる周波数のLF信号を使用する双方向通信方式でも、従来のLF信号を使用する単一周波通信方式と同様の課題があった。特に、双方向通信方式では、全く同一時間に送信と受信を行うので、基地局あるいは携帯機において、LF送信アンテナのアンテナループとLF受信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界による雑音成分(アンテナ効果)を排除することができない。これにより、LF受信アンテナによる受信がLF送信アンテナによる送信により妨害されたり、フェージング効果が生じることで通信が不安定になったり、通信距離が確保できないなどといった課題があった。
【0032】
例えば、基地局では、図14に示すように、送信回路側から受信回路側へ回り込む電源雑音、LF送信アンテナから送信されたLF信号(周波数F1)の電磁波がLF受信アンテナへ回り込むことによる空間的回り込み雑音が発生する。このような雑音は、広範のエリアで安定した通信を確保しようとする場合の障害となる。
【0033】
電磁波は、電界Eと磁界Hが直交する平面波であり、伝播方向に垂直な単位面積当たりの電力密度Sは、S=E×Hで与えられる。自由空間での電界Eと磁界Hの振幅比E/Hは、空間インピーダンスとして扱われ、E/H=377Ωである。この空間インピーダンスを用いると、電力密度Sは、S=377H2で与えられる。特に電磁波によるトリガ起動や近接給電を行う、4分の1波長(λ/4)以内では、電磁界のうちの磁界が支配的であり、磁界の振幅は、電界の振幅に対して空間インピーダンスの逆数H/E=1/377に相当するほど小さい。そこで、基地局から携帯機に十分な磁界エネルギを供給すると、大きな電界エネルギが受信回路側に回り込み、結果として電気的雑音を発生させることになる。
【0034】
基地局ほど顕著ではないが、携帯機においても同様に、送信回路側から受信回路側へ回り込む電源雑音、LF送信アンテナから送信されたLF信号(周波数F2)の電磁波がLF受信アンテナへ回り込むことによる空間的回り込み雑音が発生する。
【0035】
上述したように、単一周波通信方式にしても双方向通信方式にしても、基地局と携帯機間の通信に要する時間が常に長くなったり、通信が不安定になったり、通信距離が確保できないなどといった課題があった。
【0036】
本発明は、基地局側から携帯機側へ近接給電を行う場合でも近接給電を行わない場合でも、利用者がスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用することができる近接給電・通信装置を提供することを目的としている。また、本発明は、広範のエリアで安定した通信を確保することができる近接給電・通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題を解決するため、本発明は、基地局側から携帯機側へ近接給電を行うと共に、基地局と携帯機間で通信を行う近接給電・通信装置において、前記基地局は、通信用LF信号を送信し、該通信用LF信号に対して携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する通常通信モードと、該通常通信モードでの動作に続いて近接給電用LF信号を送信し、該近接給電用LF信号により近接給電された携帯機からのUHF応答信号を受信する近接給電モードを有することを基本的特徴としている。
【0038】
ここで、基地局が、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信した場合に、近接給電モードでの動作を実行することなく動作を休止し、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しない場合には、近接給電モードでの動作を実行するようにしたり、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行するようにしたりすることができる。
【0039】
また、基地局における通信用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、近接給電用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、前記携帯機における通信用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間、近接給電用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間に、それぞれ予め設定された時間間隔を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、基地局からのLF信号の送信に対する携帯機からのUHF応答信号の有無を元に、基地局でのLF信号の送信を通常通信モードから近接給電モードに切り替え、無用な近接給電用LF信号の送信をしないようにするので、利用者はスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用して基地局と携帯機間の通信を行うことができるとともに、通信に要する時間が常に長くなるという、従来の装置での課題を解決できる。
【0041】
また、基地局が、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行するようにすれば、1つ以上の携帯機が存在するような場合でも基地局と各携帯機間の通信が可能になる。
また、本発明では、基地局から携帯機への通信や近接給電にLF帯の信号を使用し、携帯機から基地局への応答信号の通信に、LF帯やRF帯とは周波数が大きく異なり、電波伝播特性のよいUHF帯の信号を使用するので、携帯機からの応答信号を受信するために使用する基地局の受信アンテナの配置エリアを拡大することができ、装置を具体化する上での装置構成や配置の自由度を高めることができる。また、効率のよい近接給電が可能になる。
また、携帯機から応答信号を特定小電力のUHF帯で伝送するので、通信速度を高めることができ、結果として、通信に要する時間を短縮したり、暗号化の適用を容易にしたりすることができ、通信の秘匿性や携帯機の応答速度を高めることができる。
【0042】
また、本発明では、基地局から携帯機への通信および近接給電を共にLF帯で行うので、基地局は、1組のLF送信アンテナとLF送信回路を用いる構成で携帯機への通信および近接給電が可能であり、携帯機は、1組のLF受信アンテナとLF受信回路を用いる構成で基地局からの通信および近接給電が可能である。この構成では、基地局と携帯機でアンテナや送信回路や受信回路を切り替える必要もないので、回路構成やその制御を簡単にすることができる。
さらに、基地局と携帯機間の通信が、LF信号やUHF応答信号の回り込み雑音で影響されないように、各信号の送受信期間を設定して通信および近接給電を行うことにより、電源雑音やアンテナ効果による雑音の影響を排除し、基地局と携帯機間の有効通信距離を最大限拡大するとともに、安定した通信を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の他の実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の一例を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信した場合の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信しなかった場合の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の他の例を示すフローチャートである。
【図10】基地局と複数の携帯機の組み合わせに上記遅延の仕組みを組み込んだ実施形態における、通常通信モードでの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の近接給電・通信装置による通信および近接給電エリアを示す概念図である。
【図12】LF信号を使用する従来の単一周波通信方式における基地局および携帯機間でのLF信号の送信および受信の期間を示すタイムチャートである。
【図13】LF信号を使用する従来の双方向通信方式における基地局および携帯機間でのLF信号の送信および受信の期間を示すタイムチャートである。
【図14】基地局における雑音発生の様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の実施形態を示すブロック図である。
【0045】
図1に示す基地局は、LF送信アンテナ1、LF送信回路2、UHF受信アンテナ3、UHF受信回路4および基地局側制御回路5を備える。
【0046】
LF送信アンテナ1とLF送信回路2は、携帯機に通信用LF信号を送信する通信用LF送信手段として機能(以下、この機能での送受信を通常通信モードと称する)し、また、携帯機に近接給電用LF信号を送信し、その電磁波が持つ放射磁界で近接給電を行う近接給電用LF送信手段として機能(以下、この機能での送受信を近接給電モードと称する)する。通信用LF信号でも近接給電されるが、それの送信期間は極めて短いので、以下では無視することとする。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。近接給電用LF信号は、携帯機が近接給電されて起動する電力を生成するのに十分な時間、継続して送信される。
【0047】
UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信するUHF受信手段として機能する。UHF受信回路4は、携帯機から送信されるUHF応答信号が暗号化されていれば、UHF応答信号を復号する機能も有する。UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4で受信されたUHF応答信号は、制御回路5へ送出される。
【0048】
基地局側制御回路5は、UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4で受信されたUHF応答信号に従って必要な制御、例えば、入退室管理システムの場合には、室入口ドアのロック開閉を制御する。このために、基地局側制御回路5は、外部機器との間でデータをやり取りするインタフェースを備えている。
【0049】
また、基地局側制御回路5は、LF送信回路2とUHF受信回路4の動作を制御する。この制御については、後で詳細に説明するが、通常通信モードにおいて携帯機からUHF応答信号が受信されない場合、通常通信モードを近接給電モードに切り替える。また、基地局側制御回路5は、基地局におけるLF送信期間とUHF応答受信期間が重ならないようにタイミング制御する。このタイミング制御に際しては、LF信号の空間的伝播遅延分も考慮するのが好ましい。
【0050】
図2は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【0051】
図2に示す携帯機は、近接給電用LF受信アンテナ6、通信用LF受信アンテナ7、通信用LF受信回路8、LF近接受電回路9、UHF送信アンテナ10、UHF送信回路11および携帯機側制御回路12を備える。
【0052】
一般に、放射磁界による電磁誘導には低インピーダンスのアンテナが電力効率がよく、データ信号の受信には高インピーダンスのアンテナが受信効率がよいことが知られている。そこで、本実施形態の携帯機は、低インピーダンスの近接給電用LF受信アンテナ6と高インピーダンスの通信用LF受信アンテナ7を別々に備えている。通信用LF受信アンテナ7は、その指向性をよくするため、X軸、Y軸の2軸構成の2次元方式のアンテナあるいはX軸、Y軸、Z軸の3軸構成の3次元方式のアンテナが好ましい。
【0053】
以下では、図1の基地局と図2の携帯機を組み合わせた場合の動作を説明するが、他の実施形態では、後述する基地局や携帯機を適宜組み合わせることもできる。
【0054】
携帯機において、近接給電用LF受信アンテナ6は、基地局のLF送信アンテナ1から送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界を受信し、LF近接受電回路9は、近接給電用LF受信アンテナ6で受信された放射磁界による電磁誘導により電力を生成する。LF近接受電回路9は、近接給電用LFアンテナ6からの電力を整流する整流回路および電力を蓄えるコンデンサを含む。この整流回路およびコンデンサは、携帯機の電源として機能する。LF近接受電回路9により生成された電力は、携帯機内部の回路の動作エネルギとなり、所定レベル以上の電源が得られれば、携帯機は起動可能となる。
【0055】
通信用LF受信アンテナ7は、基地局のLF送信アンテナ1から送信される,携帯機起動信号を含む通信用LF信号を受信する。通信用LF受信回路8は、通信用LF受信アンテナ7で受信された通信用LF信号を携帯機側制御回路12送出する。基地局から送信される通信用LF信号が暗号化されていれば、LF受信回路8は、その信号を復号する機能も有する。
【0056】
UHF送信アンテナ10は、UHF応答信号を送信し、UHF送信回路11は、UHF応答信号を生成する。
【0057】
携帯機側制御回路12は、通信用LF受信回路8、LF近接受電回路9およびUHF送信回路11の動作を制御し、また、通信用LF受信回路8からの通信用LF信号に従って携帯機の起動や表示部の表示などの処理を行う。また、携帯機側制御回路12は、基地局と同様に、UHF応答送信期間とLF受信期間が重ならないようにタイミング制御する。この際、UHF応答信号の空間的伝播遅延分も考慮するのが好ましい。具体的には、携帯機側制御回路12によるタイミング制御を、基地局側制御回路5によるタイミングの制御に対応して行う。このタイミング制御は、基地局から送信される通信用LF信号に含まれる携帯機起動信号が携帯機で受信されたタイミングに基づいて、例えば、カウンタを用いて制御することで実現することができる。
【0058】
図3は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の他の実施形態を示すブロック図である。なお、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付している。
【0059】
図1に示す基地局は、1組のLF送信アンテナ1とLF送信回路2を備え、これを通信と近接給電に兼用する構成であるが、図3に示す基地局は、通信用LF送信アンテナ13と通信用LF送信回路14、近接給電用LF送信アンテナ15と近接給電用LF送信回路16を備え、通信用送信手段と近接給電用送信手段を別々にした構成である。
【0060】
この構成によれば、近接給電用LF送信アンテナ15として低インピーダンスのアンテナを用いることができるので、基地局と携帯機間の近接給電の効率を高めることでき、また、通信用LF信号の周波数と近接給電用LF信号の周波数を異ならせることもできる。その他の部分の構成および動作は、図1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
図4は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の他の実施形態を示すブロック図である。なお、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付している。
【0062】
図2に示す携帯機は、近接給電用LF受信アンテナ6と通信用LF受信アンテナ7を別々にした構成であるが、図4に示す携帯機は、1つのLF受信アンテナ17を近接給電用と通信用に兼用する構成である。
【0063】
LF受信アンテナ17として2次元方式あるいは3次元方式のアンテナを用いれば、複数のアンテナの指向性による通信の受信効率の改善と複数のLFアンテナが受信する電力和を利用することで近接給電効率の改善の両方を共に満足させることができる。その他の部分の構成および動作は、図2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
図5は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられたか否かを判定する(S51)。トリガは、基地局の電源がオンであれば、通信用LF送信期間(TSL)を開始させる時点で一定周期ごとに与えられる。トリガが与えられなければ、トリガが与えられるまで待つ。入退室管理やドア制御のシステムのような場合、基地局から一定距離内に人が入ってきたときに、基地局の電源がオンになるようにしてもよい。
【0066】
基地局休止期間においてトリガが与えられれば、基地局は、まず、通常通信モードでの動作を始め、携帯機へ通信用LF信号を送信する(S52)。通信用LF信号の送信は、通信用LF送信期間(TSL)(例えば200msec)内で行い、通信用LF送信期間(TSL)が経過すれば、その送信を停止する(S53)。通信用LF信号の送信を停止してから一定時間(τsec)経過後(S54)、基地局は、携帯機からのUHF応答信号の受信を開始する(S55)。UHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)とする。UHF応答受信窓期間(TRU)は、携帯機の動作可能時間により規定される。
【0067】
具体的には、UHF応答受信窓期間(TRU)の最大値は、携帯機からのUHF応答信号の再送を考慮した場合のUHF応答送信期間(TSU)の最大値と同一とする。また、一定時間(τsec)は、例えば、LF信号(データ)の1ビット相当分以上の値に設定すればよい。
【0068】
次に、UHF応答受信窓期間(TRU)内での携帯機からのUHF応答信号の受信の有無を判定する(S56)。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信すれば、S56でUHF応答信号の受信ありと判定されるので、基地局は、携帯機との通信を終了して休止する(S58)。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。ここで、通常通信モードの動作は終了する。
【0069】
基地局が携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、S56でUHF応答信号の受信なしと判定される。この場合には携帯機の電源が消耗していると考え、近接給電モードに入る。
【0070】
近接給電モードでは、まず、基地局から携帯機へ近接給電用LF信号を送信する(S58)。近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機の動作エネルギが確保されるまでの時間により規定される。例えば、近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機を起動するのに十分な電力が近接給電により得られる近接給電用LF送信期間TP(例えば2〜3sec)とする。近接給電用LF信号の送信から一定時間(TP+τ)が経過(S59)したら、携帯機からのUHF応答信号の受信を開始する(S60)。UHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)とする。このUHF応答受信窓期間(TRU)は、通常通信モードでのUHF応答受信窓期間(TRU)と同じでよい。
【0071】
次に、UHF応答受信窓期間(TRU)内での携帯機からのUHF応答信号の受信の有無を判定する(S61)。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信すれば、S61でUHF応答信号の受信ありと判定されるので、基地局は、携帯機との通信を終了して休止する(S62)。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。ここで、近接給電モードの動作は終了する。
【0072】
基地局が携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、S61でUHF応答信号の受信なしと判定される。その状態でUHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S63)したら基地局は休止(S64)する。以上により、基地局は、携帯機との通信および近接給電を終了する。
【0073】
図6は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の一例を示すタイムチャートである。基地局は、携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、このタイムチャートに従う動作を一定周期で繰り返す。
【0074】
図6に示すように、基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。通信用LF信号の送信は、通信用LF送信期間(TSL)(例えば200msec)内で行い、通信用LF送信期間(TSL)が経過したらその送信を停止すする。その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。通信用LF送信期間(TSL)およびその後の一定時間(τsec)は、UHF受信停止期間とする。また、通信用LF信号送信が終了してからUHF応答受信窓期間(TRU)が経過するまでの期間は、LF送信停止期間とする。以上は、通常通信モードでの動作である。
【0075】
基地局は、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、近接給電モードに入る。近接給電モードでは、まず、近接給電用LF信号を送信する。近接給電用LF信号は、その終端部分に携帯機起動信号を含む。近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機が起動するのに十分な電力が近接給電により得られる近接給電用LF送信期間TPとする。
【0076】
近接給電用LF送信期間TPは、例えば、携帯機が全くの初期状態にあるとし、その状態から携帯機各部の起動に必要な動作エネルギが生成されるまでの時間を予め求めることにより得ることができる。
【0077】
近接給電用LF送信期間TPが経過したら近接給電用LF信号の送信を停止する。その後、一定時間(τsec)が経過したら携帯機からのUHF応答信号を待つ。携帯機からのUHF応答信号を待つ期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)とする。近接給電用LF送信期間(TSL)およびその後の一定時間(τsec)は、UHF受信停止期間とする。また、近接給電用LF信号の送信が終了してからUHF応答受信窓期間(TRU)が経過するまでの期間は、LF送信停止期間とする。以上は、近接給電モードでの動作である。
【0078】
図7は、本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信した場合の動作の一例を示すタイムチャートである。これは、携帯機が基地局から近接給電を受けることなく、直ちに起動可能な場合である。
【0079】
図7における基地局の動作は、図6の通常通信モードでの動作と同じである。基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF送信期間(TSL)内で通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。
【0080】
通信用LF送信期間が経過したら通信用LF信号の送信を停止し、その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRL)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0081】
携帯機は、基地局の通信用LF送信期間(TSL)に対応するLF受信期間(TRL)内で基地局からの通信用LF信号に含まれる起動信号を受信すると直ちに起動し、通信用LF送信期間(TSL)が経過してから一定時間(τsec)後、UHF応答送信期間(TSU)内にUHF応答信号を送信する。
【0082】
UHF応答送信期間(TSU)は、携帯機の動作可能時間により規定される。すなわち、UHF応答送信期間(TSU)は、基地局からの近接給電による動作エネルギにより携帯機が動作可能な時間を越えない時間内に予め設定される。
【0083】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内に携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。通常通信モードでの送受信が成功すれば、基地局および携帯機は、そこで動作を休止する。なお、基地局の通信用LF送信期間(TSL)と携帯機のLF受信期間(TRL)は、LF信号の空間的伝播遅延分を考慮して対応させるのが好ましい。他の期間についても同様である。
【0084】
図8は、本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信しなかった場合の動作の一例を示すタイムチャートである。これは、携帯機が基地局から近接給電を受けて初めて起動可能となる場合である。
【0085】
図8における基地局の動作は、図6の常通常通信モードおよび近接給電モードでの動作と同じである。基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF送信期間(TSL)内で通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。
【0086】
通信用LF送信期間(TSL)が経過したら通信用LF信号の送信を停止し、その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRU)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0087】
ここでは、携帯機からのUHF応答信号を受信しないので、基地局は、さらに近接給電用LF送信期間TP内で近接給電用LF信号を送信し、近接給電用LF送信期間TPが経過したらその送信を停止する。近接給電用LF信号は、その終端部分に携帯機起動信号を含む。その後、一定時間(τsec)が経過したらUHF応答受信窓期間(TRU)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0088】
携帯機は、基地局の近接給電用LF送信期間TPに対応するLF受信期間内で基地局からの通信用LF信号により近接給電されて起動可能になり、近接給電用LF信号の終端部分に含まれる起動信号により起動する。それから一定時間(τsec)後、UHF応答送信期間(TSU)内にUHF応答信号を送信する。
【0089】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TSU)内に携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。近接給電モードでの送受信が成功すれば、基地局および携帯機は、そこで動作を休止する。
【0090】
以上の実施形態は、基地局に対して1つだけの携帯機が存在することを想定しているが、基地局に対して複数の携帯機が存在することを想定した場合の実施形態を以下に説明する。
【0091】
図9は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の他の例を示すフローチャートであり、ここでは、基地局に対して複数の携帯機が存在することが想定している。
【0092】
基地局がトリガを受けてから通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信を開始するまでの動作(S91〜S95)は、図5のS51〜S55と同じであるので、説明を省略する。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)とする。UHF応答受信窓期間(TRU)は、複数の携帯機それぞれがUHF応答信号を送信するタイミングを考慮して設定する。
【0093】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内であれば携帯機からUHF応答信号を受信することができる(S96)。ここで、基地局から近接給電を受けることなく直ちに起動可能な1つあるいは複数の携帯機が存在すれば、それからのUHF応答信号は、UHF応答受信窓期間(TRU)内で受信される。なお、複数の携帯機からの応答の衝突は、後述する遅延の仕組みを利用することにより防止できる。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。
【0094】
UHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S96)したら、基地局は、近接給電モードに入る。近接給電モードで携帯機へ近接給電用LF信号を送信してから携帯機からのUHF応答信号の受信を開始するまでの動作(S97〜S99)も、図5のS58〜S60と同じであるので、説明を省略する。このUHF応答受信窓期間(TRU)も複数の携帯機それぞれがUHF応答信号を送信するタイミングを考慮して設定する。このUHF応答受信窓期間(TRU)は、通常通信モードでのUHF応答受信窓期間(TRU)と同じでよい。
【0095】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内であれば携帯機からUHF応答信号を受信することができる(S100)。ここで、基地局から近接給電を受けて起動可能な1つあるいは複数の携帯機が存在すれば、それからのUHF応答信号は、UHF応答受信窓期間(TRU)内で受信される。ここでも、複数の携帯機からの応答の衝突は、後述する遅延の仕組みを利用することにより防止できる。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。
【0096】
UHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S100)したら、UHF応答受信窓期間(TRU)タイムアウト(S101)となり、基地局は休止(S102)する。以上により、基地局は、携帯機との通信および近接給電を終了する。
【0097】
図5〜図8では、携帯機が通信用LF信号を受信してからτ秒経過後のタイミングのUHF応答送信期間(TSU)で直ちにUHF応答信号を送信するものとしたが、基地局に対して複数の携帯機が存在することを想定した場合には、基地局から送信される通信用LF信号に対する複数の携帯機からの応答が衝突しないように考慮するのが好ましい。複数の携帯機からの応答が衝突は、以下のようにUHF応答信号を、T(=TSU)秒単位で遅延させて送信させる仕組みを利用すれば確実に防止できる。
なお、この仕組みは、携帯機が1つだけの場合に採用してもよい。
【0098】
図10は、基地局と複数の携帯機の組み合わせに上記遅延の仕組みを組み込んだ実施形態における、通常通信モードでの動作の一例を示すタイムチャートである。
【0099】
各携帯機は、乱数発生器を備える。この乱数発生器でn=0〜15の乱数を発生し、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従ってUHF応答送信期間(TSU)のタイミングを、一定時間(TRL+τ)が経過してから値nに従ってT(=TSU)秒単位で個別に設定する。
【0100】
すなわち、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従って通信用LF受信期間(TRL)が経過してから(τ+nT)秒後のUHF応答送信期間(TSU)を設定してUHF応答信号を送信する。基地局は、(τ+nT)秒後に携帯機から送信されるUHF応答信号の受信をトリガとしてUHF応答受信窓期間(TRU)を設定し、UHF応答受信窓期間(TRU)内でUHF受信回路を動作させる。基地局でのUHF応答受信窓期間(TRU)は、n=0〜15の全ての応答受信窓期間を含むように設定してもよい。ここで、UHF応答送信期間(TSU)のタイミングを乱数によって規定するので、複数の携帯機からの応答の衝突を防止できる。
【0101】
図10では、n=0の場合、n=2の場合、n=3の場合、n=15の場合のUHF応答送信期間(TSU)およびUHF応答受信窓期間(TRU)のタイミングを示す。いずれの場合でも、基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)ではLF送信を停止する。
【0102】
以上説明した遅延の仕組みは、近接給電モードでのUHF応答信号の送受信でも同様に組み込むことができる。すなわち、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従って近接給電用LF受信期間(TRL)が経過してから(τ+nT)秒後のUHF応答送信期間(TSU)を設定してUHF応答信号を送信し、基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。
【0103】
図11は、本発明による通信可能エリアの説明図である。携帯機が基地局のLF送信アンテナを通して近接給電を受けるには、携帯機Aのように、携帯機が近接給電有効エリア内に位置しなければならない。また、携帯機が基地局のLF送信アンテナを通して通信用LF信号を受信には、携帯機Bのように、携帯機がLF帯通信有効エリア内に位置しなければならない。従来のLF帯を使用する単一周波通信方式では、携帯機から送信される応答信号を受信し得る範囲内に基地局の受信アンテナを配置する必要があり、実質的には、基地局の受信アンテナを送信アンテナの近傍に配置せざるを得ない。しかし、本発明では、基地局は、携帯機からの応答信号をUHF帯で受信するので、受信アンテナの配置エリアは、そのようなエリアに縛られず、拡大することができる。
【0104】
具体的には、微弱方式のLF送信アンテナと特定小電力のUHF応答信号のUHF受信アンテナを、微弱無線方式では5m程度、特定小電力方式では数10m程度離間させて配置することができる。
【0105】
これにより、例えば、基地局の近接給電用LFアンテナをユーザの手の届く壁に配置し、携帯機からのUHF応答信号を受信するUHF受信アンテナを天井や床、あるいは隣接する部屋や屋外などに配置することができ、装置を具体化する上での装置構成や配置の自由度を高めることができる。
【0106】
また、図11に示すように、LF帯通信有効エリア内に複数の携帯機A,Bが存在しても、図9のフローチャートに従って動作させることにより、基地局とそれぞれの携帯機A,B間の通信を実現できる。
【0107】
例えば、携帯機Aの電池が消耗していて、携帯機Bの電池が消耗していない場合を想定すると、携帯機Bは、通常通信モードで基地局に対して直ちにUHF応答信号を送信し、携帯機Aは、近接給電モードで近接給電されてから基地局にUHF応答信号を送信する。
【0108】
上記実施形態では、図7や図8に示すように、基地局において、通信用LF送信期間(TSL)とUHF応答受信期間(TRU)、近接給電用LF送信期間TPとUHF応答受信期間(TRU)をそれぞれτ秒ずらし、LF信号を送信するタイミングとUHF応答信号を受信するタイミングが重ならないようにしているので、基地局において、送信回路から受信回路へり込む電源雑音や送信電磁波の受信アンテナへの空間的回り込み雑音をなくすことができる。
【0109】
これにより、基地局のLF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界によりUHF受信アンテナによるUHF応答信号の受信が妨害されるのを防ぐことができ、携帯機から送信されるUHF応答信号の受信が不安定になるのを防ぐことができる。
【0110】
また、携帯機においても、通信用LF受信期間(TRL)とUHF応答送信期間(TSU)、近接給電用LF受信期間TPとUHF応答送信期間(TSU)をそれぞれτ秒ずらしているので、送信回路から受信回路へ回り込む電源雑音や送信電磁波の受信アンテナへの空間的回り込み雑音を回避することができる。
【0111】
これにより、携帯機のUHF送信アンテナから送信されるUHF応答信号によりLF受信アンテナによるLF信号の受信が妨害されるのを防ぐことができる。したがって、基地局と携帯機間の有効通信距離を最大限拡大し、広範なエリアで安定した通信を確保することができる。
【0112】
基地局のLF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界によるUHF受信アンテナでの受信妨害は、LF送信アンテナとUHF受信アンテナを空間的に分離して形成することにより、さらに効果的に防ぐことができる。具体的には、LF送信アンテナとUHF受信アンテナを同一の導体パターン上に形成せずに、分離して形成すればよい。
【0113】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られず、種々に変形可能である。例えば、近接給電モードにおいて基地局から短い期間の近接給電用LF信号を複数回繰り返し送信し、その送信ごとに携帯機からのUHF応答信号が受信されるか否かを判定し、UHF応答信号が受信された時点で基地局および携帯機を休止させるようにしてもよい。なお、携帯機において、UHF応答送信期間後に再びLF受信期間とする場合、送信UHF応答信号がLF受信回路側に回り込んでLF受信が妨害されないように、LF受信期間の開始時点より前に間隔(例えば、数msec〜数十msec)をあけてUHF応答送信期間(TSU)を終了させるようにすればよい。
【0114】
また、通信に際してのセキュリティ性を確保するために、基地局および携帯機にその機能を持たせることもできる。セキュリティ性の確保には、例えば、基地局と携帯機を個別に識別する方法と通信用LF信号を暗号化する方法の一方あるいは両方を利用することができる。
【0115】
基地局と携帯機を個別に識別する方法では、予め基地局と携帯機それぞれに個別のIDを付与しておき、そのIDを基にグループ内での通信を可能にする。通信が可能なグループに属する基地局と複数の携帯機を識別するために、グループとなる基地局IDと複数の携帯機IDの組み合わせテーブルを基地局のメモリと携帯機のメモリにそれぞれ登録しておき、それらのIDを使用して基地局と携帯機を個別に識別する。
【0116】
具体的には、近接給電時に基地局からその基地局IDを含むLF信号を送信する。携帯機は、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機IDを含むUHF応答信号を送信する。該当する基地局IDでない場合には、携帯機は応答しないので、不要なUHF電波を出力しない。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信し、それに含まれる携帯機IDが自基地局を含む通信可能なグループ内の携帯機IDであれば、正しいUHF応答信号と認識する。
【0117】
通信用LF信号を暗号化する方法では、一般的なM系列カウンタを用いたローリングコード方式を採用することができる。送信するLF信号のデータ配列や有効データの配置・抽出において、グループに属する基地局と携帯機でユニークな対応関係と初期値を用い、単純なローリングコード方式とは異なる方法で通信用LF信号の暗号化、復合化を行なうようにしてもよい。
【0118】
さらに、基地局における近接給電用系統(LF送信アンテナやLF送信回路)と通信用系統(UHF受信アンテナやUHF受信回路)を別体にし、両者を離れた位置に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1・・・LF送信アンテナ、2・・・LF送信回路、3・・・UHF受信アンテナ、4・・・UHF受信回路、5・・・基地局側制御回路、6・・・近接給電用LF受信アンテナ、7・・・通信用LF受信アンテナ、8・・・通信用LF受信回路、9・・・LF近接受電回路、10・・・UHF送信アンテナ、11・・・UHF送信回路、12・・・携帯機側制御回路、13・・・通信用LF送信アンテナ、14・・・通信用LF送信回路、15・・・近接給電用LF送信アンテナ、16・・・近接給電LF送信回路、17・・・LF受信アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接給電・通信装置に関し、特に、基地局側から携帯機側へ近接給電を行う場合でも近接給電を行わない場合でも、利用者がスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用することができる近接給電・通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局から送信される電磁波が持つ放射磁界に基づく電磁誘導エネルギを携帯機の動作エネルギとする装置、すなわち携帯機の動作エネルギを基地局側から近接給電により得る装置が知られている。
【0003】
このような装置として、従来、自動車用キーレスエントリ装置、RFIDタグ装置、ICカード装置などが実用化されている。これらの装置では、近接給電と通信に使用する周波数を同一とするのが一般的であり、基地局と携帯機は、近接給電に使用する電磁波と同一の周波数を用いて通信(以下、これを単一周波通信方式と称する)を行う。
【0004】
図12は、LF(Low Frequency)信号を使用する従来の単一周波通信方式における基地局および携帯機の動作を示すタイムチャートである。
【0005】
図12に示すように、基地局は、LF送信期間とLF応答受信期間と休止を繰り返し、携帯機は、LF受信期間とLF応答送信期間と休止を繰り返す。これは、同一の周波数では送信と受信を同時に行うことができないためである。そのために、基地局および携帯機はそれぞれ、LF送受信アンテナとLF送受信回路を持つ。携帯機のLF受信期間は、基地局のLF送信期間に対応し、基地局のLF応答受信期間は、携帯機のLF応答送信期間に対応する。
【0006】
基地局は、LF送信期間でLF送受信回路をLF送信回路に切り替え、LF信号を送信する。このLF信号は、一般的に、近接給電用LF信号および通信用LF信号を含む。LF送信期間は、LF信号の電磁波による放射磁界がオンとなる期間であり、この期間に携帯機が近接給電される。LF信号に通信用LF信号を含ませれば、通信を行うこともできる。
【0007】
LF応答受信期間では、LF送受信回路をLF受信回路に切り替え、LF信号の送信を停止する。LF応答受信期間は、放射磁界がオフとなる期間であり、この期間に、LF送信期間で近接給電された携帯機からLF応答信号を待つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0008】
携帯機は、LF受信期間でLF送受信回路をLF受信回路に切り替え、基地局からのLF信号を受信して近接給電による電力を発生する。LF信号に通信用LF信号が含まれていれば、それに対する応答処理を行う。LF応答送信期間では、LF送受信回路をLF送信回路に切り替え、LF応答信号を送信する。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0009】
以上のように、LF信号を使用する単一周波通信方式では、まず、基地局からLF信号を送信する。携帯機では、基地局から送信されたLF信号を受信し、その電磁波が持つ放射磁界に基づいて電力を生成し、その電力によりLF送受信回路を含む回路を動作させてLF応答信号を送信する。基地局は、LF信号の送信を完了した後、携帯機から送信されるLF応答信号をLF受信機で受信する。
【0010】
例えば、自動車用キーレスエントリ装置の場合、自動車側の基地局およびキー側の携帯機はそれぞれ、LF送受信アンテナとLF送受信回路を備え、LF信号を使用して近接給電と通信を行う。この場合、基地局から携帯機へ近接給電(一般に通信用LF信号の送信も含む)を行う期間と携帯機から基地局へ応答信号を送信する期間を異ならせる。
【0011】
RFIDタグ装置の場合、送受信される信号がRF(Radio Frequency)信号である点を除いて同様であり、ICタグリーダ側の基地局およびICタグ側の携帯機はそれぞれ、RF送受信アンテナとRF送受信回路を備え、RF信号を使用して近接給電と通信を行う。この場合でも、基地局から携帯機へ近接給電と基地局と携帯機間の通信は、単一周波通信方式であり、同一の周波数では送信と受信を同時に行うことができない。
【0012】
RF信号を使用する単一周波通信方式では、まず、基地局からRF信号を送信する。このRF信号は、一般的に、近接給電用RF信号と通信用RF信号を含む。携帯機は、基地局から送信されたRF信号を受信し、その電磁波が持つ放射磁界に基づいて電力を生成し、その電力によりRF送受信回路を含む回路を動作させてRF応答信号を送信する。基地局は、RF信号の送信を完了した後、携帯機から送信されるRF応答信号をRF受信機で受信する。このような送受信期間は、RF信号を使用する単一周波通信方式のICカード装置でも実現されている。
【0013】
また、同一周波数帯の異なる周波数を使用して基地局と携帯機間の上り、下りの近接給電および通信を同時に行う方式(以下、これを双方向通信方式と称する)も知られている。
【0014】
図13は、LF信号を使用する従来の双方向通信方式における基地局および携帯機の動作を示すタイムチャートである。この方式は、基地局が携帯機からの応答信号を常時受信できるという特徴がある。
【0015】
図13に示すように、基地局は、周波数F1のLF信号を送信するLF送信期間と休止を繰り返し、同時に、F1とは異なる周波数F2のLF応答信号を受信するLF応答受信期間と休止を繰り返す。また、携帯機は、周波数F1のLF信号を受信するLF受信期間と休止を繰り返し、同時に、周波数F2のLF応答信号を送信するLF応答送信期間と休止を繰り返す。
【0016】
そのために、基地局は、周波数F1のLF信号を送信するLF送信手段と周波数F2のLF信号を受信するLF受信手段を持ち、携帯機は、周波数F1のLF信号を受信するLF受信手段と周波数F2のLF信号を送信するLF送信手段を持つ。休止は、1つの周波数を継続して占有しないようにするために設けるものである(電波法の規定に従う)。
【0017】
基地局は、携帯機の起動に必要な電力が生成されるのに十分な時間のLF送信期間を設定し、このLF送信期間で周波数F1のLF信号を送信し続け、LF送信期間と同時のLF受信応答期間で、LF信号により近接給電された携帯機から周波数F2のLF応答信号を待つ。LF送信期間ではLF信号の電磁波による放射磁界がオンとなり、休止の期間では放射磁界がオフとなる。
【0018】
基地局は、LF送信期間で放射磁界がオンとなっている期間、携帯機側へ放射磁界を利用した近接給電を行う。LF信号は、一般的に、近接給電用LF信号および通信用LF信号を含む。一方、放射磁界がオンの期間(LF送信期間)ので給電された携帯機は、LF送信期間と同時のLF応答期間でLF応答信号を送信する。
【0019】
例えば、RFIDタグを用いる動物識別に対する規定ISO11785の技術指針では、LF(134.2kHz±1.8kHz)を用いる例として、以下の給電方法を規定している。
【0020】
基地局側のLF送信機からの放射磁界を50msecオン、3msecオフとし、この動作を繰り返して基地局からの放射磁界で携帯機側に近接給電を行う。放射磁界のオン期間(50msec)に携帯機は近接給電される。この期間では、常時、基地局側のLF受信機は、携帯機からの応答信号を待つ。このISO11785の技術指針で提示されている基地局から携帯機への近接給電と通信の送受信期間は、RF信号を使用する双方向通信方式のICカードでも実現されている。
【0021】
また、非特許文献1には、LF信号を使用して携帯機を起動し、UHF信号を使用して携帯機から基地局へ応答信号を送信する入退室管理システムが記載されている。この入退室管理システムは、タグリーダ、外部アンテナおよびアクティブタグから構成される。ここで、タグリーダは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF受信回路、制御回路(CPU)を備え、外部アンテナは、LFアンテナおよびLF送信回路を備え、アクティブタグは、LF送受信アンテナ、LF送受信回路、UHFアンテナ、UHF送信回路、制御回路(CPU)および電池を備える。
【0022】
アクティブタグは、電池が消耗していなければ、タグリーダからのLF信号の鼓動パターンにより起動され、ID番号を含むUHF応答信号をUHF送信回路を通じてタグリーダに送信する。しかし、電池が消耗している場合、アクティブタグは、タグリーダからのLF信号により誘起される電力により動作し、LF送信回路から2値のFSK(Frequency Shift Keying)変調したLF信号をタグリーダへ送信し、タグリーダはLF受信回路でこのLF信号を受信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】鍋嶋 秀夫 他著,"アクティブタグによるハンズフリー入退室管理システム" パナソニック電工技報(Vol.57 No.2),52-57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、従来のLF信号を使用する単一周波通信方式には、以下のような課題があった。
【0025】
携帯機の電源から携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られる場合、基地局からのLF信号(通信用LF信号を含む)の受信により直ちに携帯機を起動させ、基地局から近接給電を受けることなく、受信されたLF信号に対するLF応答信号を送信することは可能である。しかし、携帯機の電源が消耗していて携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られない場合には、基地局から連続的にLF信号を送信して携帯機に近接給電し、携帯機が起動に必要な電力を得た後でないと携帯機はLF応答信号を送信できない。
【0026】
従来の単一周波通信方式では、携帯機の電源が消耗していて携帯機内部の回路を起動するのに十分な電力が得られない場合を想定して、携帯機が直ちに起動可能な状態にあるか否かに関係なく、基地局から近接給電用LF信号を一定時間連続的に送信し続け、携帯機がその内部の回路を起動するのに必要な電力が得られるようにする、あるいは携帯機の電源が消耗していて近接給電を必要とするか否かに応じて、利用者が基地局に設けられたスイッチなどを操作してLF信号を一定時間連続して送信させるか否かを選択するようにすることが必要であった。
【0027】
しかし、携帯機が直ちに起動可能な状態にあるか否かに関係なく、基地局から連続的に一定時間LF信号を送信し続けるものとした場合、基地局と携帯機間の通信に要する時間が常に長くなるという課題があった。
【0028】
また、基地局に設けられたスイッチなどを操作してLF信号を一定時間連続して送信させるか否かを選択するものとした場合には、利用者が予め携帯機がその内部電源により起動可能な状態にあるかどうかを携帯機の表示などで確認する必要があり、また、基地局に設けられた近接給電起動用に用いるスイッチは、外部からいたずらされたり、破壊されたりして実際に利用したいときに利用できないというケースが発生するという課題があった。さらに、緊急事態などで利用者があわてているような場合でも、携帯機がその内部電源により起動可能な状態にあるかどうかを携帯機の表示などで毎回確認し、起動可能でない場合には近接給電用LF信号が送信されるように基地局に設けられた近接給電起動用のスイッチで送信回路のモードを切り替える必要があるので、実使用上のトラブルの原因となり、設備設置者にとっても利用者にとっても悩みの種であった。
【0029】
また、単一周波通信方式においては、基地局は、放射磁界のオン期間が経過すれば直ちにLF応答受信期間となり、携帯機は、LF受信期間が終了すれば直ちにLF応答送信期間となるので、基地局および携帯機において、LF信号が受信回路側に回り込むことによる電源雑音やLF信号の放射磁界が受信アンテナ側に空間的に回り込むことによる雑音の影響を受けて、広範のエリアで安定した通信を確保することが困難となるという課題があった。
【0030】
RF信号を使用する単一周波通信方式でも非特許文献1に記載の入退室管理システムでも、LF信号を使用する単一周波通信方式と同様の課題がある上、基地局側に設けられた近接給電起動用のスイッチを使用するという課題もあった。
【0031】
同一周波数帯の異なる周波数のLF信号を使用する双方向通信方式でも、従来のLF信号を使用する単一周波通信方式と同様の課題があった。特に、双方向通信方式では、全く同一時間に送信と受信を行うので、基地局あるいは携帯機において、LF送信アンテナのアンテナループとLF受信アンテナのアンテナループ相互間での導体パターン上に誘起する互いの電磁界による雑音成分(アンテナ効果)を排除することができない。これにより、LF受信アンテナによる受信がLF送信アンテナによる送信により妨害されたり、フェージング効果が生じることで通信が不安定になったり、通信距離が確保できないなどといった課題があった。
【0032】
例えば、基地局では、図14に示すように、送信回路側から受信回路側へ回り込む電源雑音、LF送信アンテナから送信されたLF信号(周波数F1)の電磁波がLF受信アンテナへ回り込むことによる空間的回り込み雑音が発生する。このような雑音は、広範のエリアで安定した通信を確保しようとする場合の障害となる。
【0033】
電磁波は、電界Eと磁界Hが直交する平面波であり、伝播方向に垂直な単位面積当たりの電力密度Sは、S=E×Hで与えられる。自由空間での電界Eと磁界Hの振幅比E/Hは、空間インピーダンスとして扱われ、E/H=377Ωである。この空間インピーダンスを用いると、電力密度Sは、S=377H2で与えられる。特に電磁波によるトリガ起動や近接給電を行う、4分の1波長(λ/4)以内では、電磁界のうちの磁界が支配的であり、磁界の振幅は、電界の振幅に対して空間インピーダンスの逆数H/E=1/377に相当するほど小さい。そこで、基地局から携帯機に十分な磁界エネルギを供給すると、大きな電界エネルギが受信回路側に回り込み、結果として電気的雑音を発生させることになる。
【0034】
基地局ほど顕著ではないが、携帯機においても同様に、送信回路側から受信回路側へ回り込む電源雑音、LF送信アンテナから送信されたLF信号(周波数F2)の電磁波がLF受信アンテナへ回り込むことによる空間的回り込み雑音が発生する。
【0035】
上述したように、単一周波通信方式にしても双方向通信方式にしても、基地局と携帯機間の通信に要する時間が常に長くなったり、通信が不安定になったり、通信距離が確保できないなどといった課題があった。
【0036】
本発明は、基地局側から携帯機側へ近接給電を行う場合でも近接給電を行わない場合でも、利用者がスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用することができる近接給電・通信装置を提供することを目的としている。また、本発明は、広範のエリアで安定した通信を確保することができる近接給電・通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題を解決するため、本発明は、基地局側から携帯機側へ近接給電を行うと共に、基地局と携帯機間で通信を行う近接給電・通信装置において、前記基地局は、通信用LF信号を送信し、該通信用LF信号に対して携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する通常通信モードと、該通常通信モードでの動作に続いて近接給電用LF信号を送信し、該近接給電用LF信号により近接給電された携帯機からのUHF応答信号を受信する近接給電モードを有することを基本的特徴としている。
【0038】
ここで、基地局が、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信した場合に、近接給電モードでの動作を実行することなく動作を休止し、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しない場合には、近接給電モードでの動作を実行するようにしたり、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行するようにしたりすることができる。
【0039】
また、基地局における通信用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、近接給電用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、前記携帯機における通信用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間、近接給電用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間に、それぞれ予め設定された時間間隔を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、基地局からのLF信号の送信に対する携帯機からのUHF応答信号の有無を元に、基地局でのLF信号の送信を通常通信モードから近接給電モードに切り替え、無用な近接給電用LF信号の送信をしないようにするので、利用者はスイッチなどを切り替え操作することなく、そのまま利用して基地局と携帯機間の通信を行うことができるとともに、通信に要する時間が常に長くなるという、従来の装置での課題を解決できる。
【0041】
また、基地局が、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行するようにすれば、1つ以上の携帯機が存在するような場合でも基地局と各携帯機間の通信が可能になる。
また、本発明では、基地局から携帯機への通信や近接給電にLF帯の信号を使用し、携帯機から基地局への応答信号の通信に、LF帯やRF帯とは周波数が大きく異なり、電波伝播特性のよいUHF帯の信号を使用するので、携帯機からの応答信号を受信するために使用する基地局の受信アンテナの配置エリアを拡大することができ、装置を具体化する上での装置構成や配置の自由度を高めることができる。また、効率のよい近接給電が可能になる。
また、携帯機から応答信号を特定小電力のUHF帯で伝送するので、通信速度を高めることができ、結果として、通信に要する時間を短縮したり、暗号化の適用を容易にしたりすることができ、通信の秘匿性や携帯機の応答速度を高めることができる。
【0042】
また、本発明では、基地局から携帯機への通信および近接給電を共にLF帯で行うので、基地局は、1組のLF送信アンテナとLF送信回路を用いる構成で携帯機への通信および近接給電が可能であり、携帯機は、1組のLF受信アンテナとLF受信回路を用いる構成で基地局からの通信および近接給電が可能である。この構成では、基地局と携帯機でアンテナや送信回路や受信回路を切り替える必要もないので、回路構成やその制御を簡単にすることができる。
さらに、基地局と携帯機間の通信が、LF信号やUHF応答信号の回り込み雑音で影響されないように、各信号の送受信期間を設定して通信および近接給電を行うことにより、電源雑音やアンテナ効果による雑音の影響を排除し、基地局と携帯機間の有効通信距離を最大限拡大するとともに、安定した通信を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の他の実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の一例を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信した場合の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信しなかった場合の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の他の例を示すフローチャートである。
【図10】基地局と複数の携帯機の組み合わせに上記遅延の仕組みを組み込んだ実施形態における、通常通信モードでの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の近接給電・通信装置による通信および近接給電エリアを示す概念図である。
【図12】LF信号を使用する従来の単一周波通信方式における基地局および携帯機間でのLF信号の送信および受信の期間を示すタイムチャートである。
【図13】LF信号を使用する従来の双方向通信方式における基地局および携帯機間でのLF信号の送信および受信の期間を示すタイムチャートである。
【図14】基地局における雑音発生の様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の実施形態を示すブロック図である。
【0045】
図1に示す基地局は、LF送信アンテナ1、LF送信回路2、UHF受信アンテナ3、UHF受信回路4および基地局側制御回路5を備える。
【0046】
LF送信アンテナ1とLF送信回路2は、携帯機に通信用LF信号を送信する通信用LF送信手段として機能(以下、この機能での送受信を通常通信モードと称する)し、また、携帯機に近接給電用LF信号を送信し、その電磁波が持つ放射磁界で近接給電を行う近接給電用LF送信手段として機能(以下、この機能での送受信を近接給電モードと称する)する。通信用LF信号でも近接給電されるが、それの送信期間は極めて短いので、以下では無視することとする。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。近接給電用LF信号は、携帯機が近接給電されて起動する電力を生成するのに十分な時間、継続して送信される。
【0047】
UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信するUHF受信手段として機能する。UHF受信回路4は、携帯機から送信されるUHF応答信号が暗号化されていれば、UHF応答信号を復号する機能も有する。UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4で受信されたUHF応答信号は、制御回路5へ送出される。
【0048】
基地局側制御回路5は、UHF受信アンテナ3とUHF受信回路4で受信されたUHF応答信号に従って必要な制御、例えば、入退室管理システムの場合には、室入口ドアのロック開閉を制御する。このために、基地局側制御回路5は、外部機器との間でデータをやり取りするインタフェースを備えている。
【0049】
また、基地局側制御回路5は、LF送信回路2とUHF受信回路4の動作を制御する。この制御については、後で詳細に説明するが、通常通信モードにおいて携帯機からUHF応答信号が受信されない場合、通常通信モードを近接給電モードに切り替える。また、基地局側制御回路5は、基地局におけるLF送信期間とUHF応答受信期間が重ならないようにタイミング制御する。このタイミング制御に際しては、LF信号の空間的伝播遅延分も考慮するのが好ましい。
【0050】
図2は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の実施形態を示すブロック図である。
【0051】
図2に示す携帯機は、近接給電用LF受信アンテナ6、通信用LF受信アンテナ7、通信用LF受信回路8、LF近接受電回路9、UHF送信アンテナ10、UHF送信回路11および携帯機側制御回路12を備える。
【0052】
一般に、放射磁界による電磁誘導には低インピーダンスのアンテナが電力効率がよく、データ信号の受信には高インピーダンスのアンテナが受信効率がよいことが知られている。そこで、本実施形態の携帯機は、低インピーダンスの近接給電用LF受信アンテナ6と高インピーダンスの通信用LF受信アンテナ7を別々に備えている。通信用LF受信アンテナ7は、その指向性をよくするため、X軸、Y軸の2軸構成の2次元方式のアンテナあるいはX軸、Y軸、Z軸の3軸構成の3次元方式のアンテナが好ましい。
【0053】
以下では、図1の基地局と図2の携帯機を組み合わせた場合の動作を説明するが、他の実施形態では、後述する基地局や携帯機を適宜組み合わせることもできる。
【0054】
携帯機において、近接給電用LF受信アンテナ6は、基地局のLF送信アンテナ1から送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界を受信し、LF近接受電回路9は、近接給電用LF受信アンテナ6で受信された放射磁界による電磁誘導により電力を生成する。LF近接受電回路9は、近接給電用LFアンテナ6からの電力を整流する整流回路および電力を蓄えるコンデンサを含む。この整流回路およびコンデンサは、携帯機の電源として機能する。LF近接受電回路9により生成された電力は、携帯機内部の回路の動作エネルギとなり、所定レベル以上の電源が得られれば、携帯機は起動可能となる。
【0055】
通信用LF受信アンテナ7は、基地局のLF送信アンテナ1から送信される,携帯機起動信号を含む通信用LF信号を受信する。通信用LF受信回路8は、通信用LF受信アンテナ7で受信された通信用LF信号を携帯機側制御回路12送出する。基地局から送信される通信用LF信号が暗号化されていれば、LF受信回路8は、その信号を復号する機能も有する。
【0056】
UHF送信アンテナ10は、UHF応答信号を送信し、UHF送信回路11は、UHF応答信号を生成する。
【0057】
携帯機側制御回路12は、通信用LF受信回路8、LF近接受電回路9およびUHF送信回路11の動作を制御し、また、通信用LF受信回路8からの通信用LF信号に従って携帯機の起動や表示部の表示などの処理を行う。また、携帯機側制御回路12は、基地局と同様に、UHF応答送信期間とLF受信期間が重ならないようにタイミング制御する。この際、UHF応答信号の空間的伝播遅延分も考慮するのが好ましい。具体的には、携帯機側制御回路12によるタイミング制御を、基地局側制御回路5によるタイミングの制御に対応して行う。このタイミング制御は、基地局から送信される通信用LF信号に含まれる携帯機起動信号が携帯機で受信されたタイミングに基づいて、例えば、カウンタを用いて制御することで実現することができる。
【0058】
図3は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する基地局の他の実施形態を示すブロック図である。なお、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付している。
【0059】
図1に示す基地局は、1組のLF送信アンテナ1とLF送信回路2を備え、これを通信と近接給電に兼用する構成であるが、図3に示す基地局は、通信用LF送信アンテナ13と通信用LF送信回路14、近接給電用LF送信アンテナ15と近接給電用LF送信回路16を備え、通信用送信手段と近接給電用送信手段を別々にした構成である。
【0060】
この構成によれば、近接給電用LF送信アンテナ15として低インピーダンスのアンテナを用いることができるので、基地局と携帯機間の近接給電の効率を高めることでき、また、通信用LF信号の周波数と近接給電用LF信号の周波数を異ならせることもできる。その他の部分の構成および動作は、図1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
図4は、本発明に係る近接給電・通信装置を構成する携帯機の他の実施形態を示すブロック図である。なお、図1と同一あるいは同等部分には同じ符号を付している。
【0062】
図2に示す携帯機は、近接給電用LF受信アンテナ6と通信用LF受信アンテナ7を別々にした構成であるが、図4に示す携帯機は、1つのLF受信アンテナ17を近接給電用と通信用に兼用する構成である。
【0063】
LF受信アンテナ17として2次元方式あるいは3次元方式のアンテナを用いれば、複数のアンテナの指向性による通信の受信効率の改善と複数のLFアンテナが受信する電力和を利用することで近接給電効率の改善の両方を共に満足させることができる。その他の部分の構成および動作は、図2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
図5は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられたか否かを判定する(S51)。トリガは、基地局の電源がオンであれば、通信用LF送信期間(TSL)を開始させる時点で一定周期ごとに与えられる。トリガが与えられなければ、トリガが与えられるまで待つ。入退室管理やドア制御のシステムのような場合、基地局から一定距離内に人が入ってきたときに、基地局の電源がオンになるようにしてもよい。
【0066】
基地局休止期間においてトリガが与えられれば、基地局は、まず、通常通信モードでの動作を始め、携帯機へ通信用LF信号を送信する(S52)。通信用LF信号の送信は、通信用LF送信期間(TSL)(例えば200msec)内で行い、通信用LF送信期間(TSL)が経過すれば、その送信を停止する(S53)。通信用LF信号の送信を停止してから一定時間(τsec)経過後(S54)、基地局は、携帯機からのUHF応答信号の受信を開始する(S55)。UHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)とする。UHF応答受信窓期間(TRU)は、携帯機の動作可能時間により規定される。
【0067】
具体的には、UHF応答受信窓期間(TRU)の最大値は、携帯機からのUHF応答信号の再送を考慮した場合のUHF応答送信期間(TSU)の最大値と同一とする。また、一定時間(τsec)は、例えば、LF信号(データ)の1ビット相当分以上の値に設定すればよい。
【0068】
次に、UHF応答受信窓期間(TRU)内での携帯機からのUHF応答信号の受信の有無を判定する(S56)。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信すれば、S56でUHF応答信号の受信ありと判定されるので、基地局は、携帯機との通信を終了して休止する(S58)。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。ここで、通常通信モードの動作は終了する。
【0069】
基地局が携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、S56でUHF応答信号の受信なしと判定される。この場合には携帯機の電源が消耗していると考え、近接給電モードに入る。
【0070】
近接給電モードでは、まず、基地局から携帯機へ近接給電用LF信号を送信する(S58)。近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機の動作エネルギが確保されるまでの時間により規定される。例えば、近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機を起動するのに十分な電力が近接給電により得られる近接給電用LF送信期間TP(例えば2〜3sec)とする。近接給電用LF信号の送信から一定時間(TP+τ)が経過(S59)したら、携帯機からのUHF応答信号の受信を開始する(S60)。UHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)とする。このUHF応答受信窓期間(TRU)は、通常通信モードでのUHF応答受信窓期間(TRU)と同じでよい。
【0071】
次に、UHF応答受信窓期間(TRU)内での携帯機からのUHF応答信号の受信の有無を判定する(S61)。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信すれば、S61でUHF応答信号の受信ありと判定されるので、基地局は、携帯機との通信を終了して休止する(S62)。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。ここで、近接給電モードの動作は終了する。
【0072】
基地局が携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、S61でUHF応答信号の受信なしと判定される。その状態でUHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S63)したら基地局は休止(S64)する。以上により、基地局は、携帯機との通信および近接給電を終了する。
【0073】
図6は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の一例を示すタイムチャートである。基地局は、携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、このタイムチャートに従う動作を一定周期で繰り返す。
【0074】
図6に示すように、基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。通信用LF信号の送信は、通信用LF送信期間(TSL)(例えば200msec)内で行い、通信用LF送信期間(TSL)が経過したらその送信を停止すする。その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。通信用LF送信期間(TSL)およびその後の一定時間(τsec)は、UHF受信停止期間とする。また、通信用LF信号送信が終了してからUHF応答受信窓期間(TRU)が経過するまでの期間は、LF送信停止期間とする。以上は、通常通信モードでの動作である。
【0075】
基地局は、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しなければ、近接給電モードに入る。近接給電モードでは、まず、近接給電用LF信号を送信する。近接給電用LF信号は、その終端部分に携帯機起動信号を含む。近接給電用LF信号を送信する期間は、携帯機が起動するのに十分な電力が近接給電により得られる近接給電用LF送信期間TPとする。
【0076】
近接給電用LF送信期間TPは、例えば、携帯機が全くの初期状態にあるとし、その状態から携帯機各部の起動に必要な動作エネルギが生成されるまでの時間を予め求めることにより得ることができる。
【0077】
近接給電用LF送信期間TPが経過したら近接給電用LF信号の送信を停止する。その後、一定時間(τsec)が経過したら携帯機からのUHF応答信号を待つ。携帯機からのUHF応答信号を待つ期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)(例えば60msec)とする。近接給電用LF送信期間(TSL)およびその後の一定時間(τsec)は、UHF受信停止期間とする。また、近接給電用LF信号の送信が終了してからUHF応答受信窓期間(TRU)が経過するまでの期間は、LF送信停止期間とする。以上は、近接給電モードでの動作である。
【0078】
図7は、本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信した場合の動作の一例を示すタイムチャートである。これは、携帯機が基地局から近接給電を受けることなく、直ちに起動可能な場合である。
【0079】
図7における基地局の動作は、図6の通常通信モードでの動作と同じである。基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF送信期間(TSL)内で通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。
【0080】
通信用LF送信期間が経過したら通信用LF信号の送信を停止し、その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRL)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0081】
携帯機は、基地局の通信用LF送信期間(TSL)に対応するLF受信期間(TRL)内で基地局からの通信用LF信号に含まれる起動信号を受信すると直ちに起動し、通信用LF送信期間(TSL)が経過してから一定時間(τsec)後、UHF応答送信期間(TSU)内にUHF応答信号を送信する。
【0082】
UHF応答送信期間(TSU)は、携帯機の動作可能時間により規定される。すなわち、UHF応答送信期間(TSU)は、基地局からの近接給電による動作エネルギにより携帯機が動作可能な時間を越えない時間内に予め設定される。
【0083】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内に携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。通常通信モードでの送受信が成功すれば、基地局および携帯機は、そこで動作を休止する。なお、基地局の通信用LF送信期間(TSL)と携帯機のLF受信期間(TRL)は、LF信号の空間的伝播遅延分を考慮して対応させるのが好ましい。他の期間についても同様である。
【0084】
図8は、本発明の近接給電・通信装置において、通常通信モードでの動作中に、基地局が携帯機からのUHF応答信号を受信しなかった場合の動作の一例を示すタイムチャートである。これは、携帯機が基地局から近接給電を受けて初めて起動可能となる場合である。
【0085】
図8における基地局の動作は、図6の常通常通信モードおよび近接給電モードでの動作と同じである。基地局は、基地局休止期間においてトリガが与えられると、通信用LF送信期間(TSL)内で通信用LF信号を送信する。通信用LF信号は、携帯機起動信号を含む。
【0086】
通信用LF送信期間(TSL)が経過したら通信用LF信号の送信を停止し、その後、一定時間(τsec)が経過したら、UHF応答受信窓期間(TRU)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0087】
ここでは、携帯機からのUHF応答信号を受信しないので、基地局は、さらに近接給電用LF送信期間TP内で近接給電用LF信号を送信し、近接給電用LF送信期間TPが経過したらその送信を停止する。近接給電用LF信号は、その終端部分に携帯機起動信号を含む。その後、一定時間(τsec)が経過したらUHF応答受信窓期間(TRU)内で携帯機からのUHF応答信号を待つ。
【0088】
携帯機は、基地局の近接給電用LF送信期間TPに対応するLF受信期間内で基地局からの通信用LF信号により近接給電されて起動可能になり、近接給電用LF信号の終端部分に含まれる起動信号により起動する。それから一定時間(τsec)後、UHF応答送信期間(TSU)内にUHF応答信号を送信する。
【0089】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TSU)内に携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。近接給電モードでの送受信が成功すれば、基地局および携帯機は、そこで動作を休止する。
【0090】
以上の実施形態は、基地局に対して1つだけの携帯機が存在することを想定しているが、基地局に対して複数の携帯機が存在することを想定した場合の実施形態を以下に説明する。
【0091】
図9は、本発明の近接給電・通信装置の基地局における動作の他の例を示すフローチャートであり、ここでは、基地局に対して複数の携帯機が存在することが想定している。
【0092】
基地局がトリガを受けてから通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信を開始するまでの動作(S91〜S95)は、図5のS51〜S55と同じであるので、説明を省略する。基地局が携帯機からUHF応答信号を受信する期間は、UHF応答受信窓期間(TRU)とする。UHF応答受信窓期間(TRU)は、複数の携帯機それぞれがUHF応答信号を送信するタイミングを考慮して設定する。
【0093】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内であれば携帯機からUHF応答信号を受信することができる(S96)。ここで、基地局から近接給電を受けることなく直ちに起動可能な1つあるいは複数の携帯機が存在すれば、それからのUHF応答信号は、UHF応答受信窓期間(TRU)内で受信される。なお、複数の携帯機からの応答の衝突は、後述する遅延の仕組みを利用することにより防止できる。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。
【0094】
UHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S96)したら、基地局は、近接給電モードに入る。近接給電モードで携帯機へ近接給電用LF信号を送信してから携帯機からのUHF応答信号の受信を開始するまでの動作(S97〜S99)も、図5のS58〜S60と同じであるので、説明を省略する。このUHF応答受信窓期間(TRU)も複数の携帯機それぞれがUHF応答信号を送信するタイミングを考慮して設定する。このUHF応答受信窓期間(TRU)は、通常通信モードでのUHF応答受信窓期間(TRU)と同じでよい。
【0095】
基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)内であれば携帯機からUHF応答信号を受信することができる(S100)。ここで、基地局から近接給電を受けて起動可能な1つあるいは複数の携帯機が存在すれば、それからのUHF応答信号は、UHF応答受信窓期間(TRU)内で受信される。ここでも、複数の携帯機からの応答の衝突は、後述する遅延の仕組みを利用することにより防止できる。基地局は、受信したUHF応答信号に従う処理や操作を行う。
【0096】
UHF応答受信窓期間(TRU)が経過(S100)したら、UHF応答受信窓期間(TRU)タイムアウト(S101)となり、基地局は休止(S102)する。以上により、基地局は、携帯機との通信および近接給電を終了する。
【0097】
図5〜図8では、携帯機が通信用LF信号を受信してからτ秒経過後のタイミングのUHF応答送信期間(TSU)で直ちにUHF応答信号を送信するものとしたが、基地局に対して複数の携帯機が存在することを想定した場合には、基地局から送信される通信用LF信号に対する複数の携帯機からの応答が衝突しないように考慮するのが好ましい。複数の携帯機からの応答が衝突は、以下のようにUHF応答信号を、T(=TSU)秒単位で遅延させて送信させる仕組みを利用すれば確実に防止できる。
なお、この仕組みは、携帯機が1つだけの場合に採用してもよい。
【0098】
図10は、基地局と複数の携帯機の組み合わせに上記遅延の仕組みを組み込んだ実施形態における、通常通信モードでの動作の一例を示すタイムチャートである。
【0099】
各携帯機は、乱数発生器を備える。この乱数発生器でn=0〜15の乱数を発生し、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従ってUHF応答送信期間(TSU)のタイミングを、一定時間(TRL+τ)が経過してから値nに従ってT(=TSU)秒単位で個別に設定する。
【0100】
すなわち、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従って通信用LF受信期間(TRL)が経過してから(τ+nT)秒後のUHF応答送信期間(TSU)を設定してUHF応答信号を送信する。基地局は、(τ+nT)秒後に携帯機から送信されるUHF応答信号の受信をトリガとしてUHF応答受信窓期間(TRU)を設定し、UHF応答受信窓期間(TRU)内でUHF受信回路を動作させる。基地局でのUHF応答受信窓期間(TRU)は、n=0〜15の全ての応答受信窓期間を含むように設定してもよい。ここで、UHF応答送信期間(TSU)のタイミングを乱数によって規定するので、複数の携帯機からの応答の衝突を防止できる。
【0101】
図10では、n=0の場合、n=2の場合、n=3の場合、n=15の場合のUHF応答送信期間(TSU)およびUHF応答受信窓期間(TRU)のタイミングを示す。いずれの場合でも、基地局は、UHF応答受信窓期間(TRU)ではLF送信を停止する。
【0102】
以上説明した遅延の仕組みは、近接給電モードでのUHF応答信号の送受信でも同様に組み込むことができる。すなわち、各携帯機は、自己が備える乱数発生器が発生する値nに従って近接給電用LF受信期間(TRL)が経過してから(τ+nT)秒後のUHF応答送信期間(TSU)を設定してUHF応答信号を送信し、基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する。
【0103】
図11は、本発明による通信可能エリアの説明図である。携帯機が基地局のLF送信アンテナを通して近接給電を受けるには、携帯機Aのように、携帯機が近接給電有効エリア内に位置しなければならない。また、携帯機が基地局のLF送信アンテナを通して通信用LF信号を受信には、携帯機Bのように、携帯機がLF帯通信有効エリア内に位置しなければならない。従来のLF帯を使用する単一周波通信方式では、携帯機から送信される応答信号を受信し得る範囲内に基地局の受信アンテナを配置する必要があり、実質的には、基地局の受信アンテナを送信アンテナの近傍に配置せざるを得ない。しかし、本発明では、基地局は、携帯機からの応答信号をUHF帯で受信するので、受信アンテナの配置エリアは、そのようなエリアに縛られず、拡大することができる。
【0104】
具体的には、微弱方式のLF送信アンテナと特定小電力のUHF応答信号のUHF受信アンテナを、微弱無線方式では5m程度、特定小電力方式では数10m程度離間させて配置することができる。
【0105】
これにより、例えば、基地局の近接給電用LFアンテナをユーザの手の届く壁に配置し、携帯機からのUHF応答信号を受信するUHF受信アンテナを天井や床、あるいは隣接する部屋や屋外などに配置することができ、装置を具体化する上での装置構成や配置の自由度を高めることができる。
【0106】
また、図11に示すように、LF帯通信有効エリア内に複数の携帯機A,Bが存在しても、図9のフローチャートに従って動作させることにより、基地局とそれぞれの携帯機A,B間の通信を実現できる。
【0107】
例えば、携帯機Aの電池が消耗していて、携帯機Bの電池が消耗していない場合を想定すると、携帯機Bは、通常通信モードで基地局に対して直ちにUHF応答信号を送信し、携帯機Aは、近接給電モードで近接給電されてから基地局にUHF応答信号を送信する。
【0108】
上記実施形態では、図7や図8に示すように、基地局において、通信用LF送信期間(TSL)とUHF応答受信期間(TRU)、近接給電用LF送信期間TPとUHF応答受信期間(TRU)をそれぞれτ秒ずらし、LF信号を送信するタイミングとUHF応答信号を受信するタイミングが重ならないようにしているので、基地局において、送信回路から受信回路へり込む電源雑音や送信電磁波の受信アンテナへの空間的回り込み雑音をなくすことができる。
【0109】
これにより、基地局のLF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界によりUHF受信アンテナによるUHF応答信号の受信が妨害されるのを防ぐことができ、携帯機から送信されるUHF応答信号の受信が不安定になるのを防ぐことができる。
【0110】
また、携帯機においても、通信用LF受信期間(TRL)とUHF応答送信期間(TSU)、近接給電用LF受信期間TPとUHF応答送信期間(TSU)をそれぞれτ秒ずらしているので、送信回路から受信回路へ回り込む電源雑音や送信電磁波の受信アンテナへの空間的回り込み雑音を回避することができる。
【0111】
これにより、携帯機のUHF送信アンテナから送信されるUHF応答信号によりLF受信アンテナによるLF信号の受信が妨害されるのを防ぐことができる。したがって、基地局と携帯機間の有効通信距離を最大限拡大し、広範なエリアで安定した通信を確保することができる。
【0112】
基地局のLF送信アンテナから送信されるLF信号の電磁波が持つ放射磁界によるUHF受信アンテナでの受信妨害は、LF送信アンテナとUHF受信アンテナを空間的に分離して形成することにより、さらに効果的に防ぐことができる。具体的には、LF送信アンテナとUHF受信アンテナを同一の導体パターン上に形成せずに、分離して形成すればよい。
【0113】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られず、種々に変形可能である。例えば、近接給電モードにおいて基地局から短い期間の近接給電用LF信号を複数回繰り返し送信し、その送信ごとに携帯機からのUHF応答信号が受信されるか否かを判定し、UHF応答信号が受信された時点で基地局および携帯機を休止させるようにしてもよい。なお、携帯機において、UHF応答送信期間後に再びLF受信期間とする場合、送信UHF応答信号がLF受信回路側に回り込んでLF受信が妨害されないように、LF受信期間の開始時点より前に間隔(例えば、数msec〜数十msec)をあけてUHF応答送信期間(TSU)を終了させるようにすればよい。
【0114】
また、通信に際してのセキュリティ性を確保するために、基地局および携帯機にその機能を持たせることもできる。セキュリティ性の確保には、例えば、基地局と携帯機を個別に識別する方法と通信用LF信号を暗号化する方法の一方あるいは両方を利用することができる。
【0115】
基地局と携帯機を個別に識別する方法では、予め基地局と携帯機それぞれに個別のIDを付与しておき、そのIDを基にグループ内での通信を可能にする。通信が可能なグループに属する基地局と複数の携帯機を識別するために、グループとなる基地局IDと複数の携帯機IDの組み合わせテーブルを基地局のメモリと携帯機のメモリにそれぞれ登録しておき、それらのIDを使用して基地局と携帯機を個別に識別する。
【0116】
具体的には、近接給電時に基地局からその基地局IDを含むLF信号を送信する。携帯機は、受信したLF信号に含まれる基地局IDが自携帯機を含む通信可能なグループ内の基地局IDであれば、正常に起動して自携帯機IDを含むUHF応答信号を送信する。該当する基地局IDでない場合には、携帯機は応答しないので、不要なUHF電波を出力しない。基地局は、携帯機から送信されるUHF応答信号を受信し、それに含まれる携帯機IDが自基地局を含む通信可能なグループ内の携帯機IDであれば、正しいUHF応答信号と認識する。
【0117】
通信用LF信号を暗号化する方法では、一般的なM系列カウンタを用いたローリングコード方式を採用することができる。送信するLF信号のデータ配列や有効データの配置・抽出において、グループに属する基地局と携帯機でユニークな対応関係と初期値を用い、単純なローリングコード方式とは異なる方法で通信用LF信号の暗号化、復合化を行なうようにしてもよい。
【0118】
さらに、基地局における近接給電用系統(LF送信アンテナやLF送信回路)と通信用系統(UHF受信アンテナやUHF受信回路)を別体にし、両者を離れた位置に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1・・・LF送信アンテナ、2・・・LF送信回路、3・・・UHF受信アンテナ、4・・・UHF受信回路、5・・・基地局側制御回路、6・・・近接給電用LF受信アンテナ、7・・・通信用LF受信アンテナ、8・・・通信用LF受信回路、9・・・LF近接受電回路、10・・・UHF送信アンテナ、11・・・UHF送信回路、12・・・携帯機側制御回路、13・・・通信用LF送信アンテナ、14・・・通信用LF送信回路、15・・・近接給電用LF送信アンテナ、16・・・近接給電LF送信回路、17・・・LF受信アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局側から携帯機側へ近接給電を行うと共に、基地局と携帯機間で通信を行う近接給電・通信装置において、
前記基地局は、通信用LF信号を送信し、該通信用LF信号に対して携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する通常通信モードと、該通常通信モードでの動作に続いて近接給電用LF信号を送信し、該近接給電用LF信号により近接給電された携帯機からのUHF応答信号を受信する近接給電モードを有することを特徴とする近接給電・通信装置。
【請求項2】
前記基地局は、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信した場合には、近接給電モードでの動作を実行することなく動作を休止し、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しない場合には、近接給電モードでの動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の近接給電・通信装置。
【請求項3】
前記基地局は、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の近接給電・通信装置。
【請求項4】
前記基地局における通信用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、近接給電用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、前記携帯機における通信用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間、近接給電用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間に、それぞれ予め設定された時間間隔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項5】
前記基地局から近接給電用LF信号が送信される期間は、前記携帯機において動作用エネルギが確保される時間により規定され、前記携帯機からUHF応答信号が送信される期間は、前記携帯機により確保される動作用エネルギの給電可能時間により規定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項6】
前記携帯機は、前記基地局から送信される近接給電用LF信号のLF電磁波が持つ放射磁界に基づいて生成されるエネルギを蓄えるコンデンサを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項7】
前記携帯機におけるUHF応答信号の送信期間および該送信期間に対する前記基地局におけるUHF応答信号の受信期間のタイミングは、UHF応答信号の送信期間を単位として乱数発生器により発生される乱数に従って規定されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項8】
前記基地局は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の送信に兼用されるLF送信アンテナおよびLF送信回路を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項9】
前記基地局は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の送信のために別々のLF送信アンテナおよびLF送信回路を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項10】
前記携帯機は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の受信に兼用されるLF受信アンテナを備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項11】
前記携帯機は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の受信にために別々のLF受信アンテナを備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項12】
前記携帯機は、自携帯機の正当性を認証する機能を有し、これにより正当性が認証された場合のみ、UHF応答信号を送信することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項13】
前記基地局は、通信用LF信号および近接給電用LF信号に基地局IDを含ませて送信するとともに、前記携帯機から送信されたUHF応答信号に含まれる基地局IDに基づいて携帯機の正当性を認証する機能を有し、前記携帯機は、受信した通信用LF信号または近接給電用LF信号に含まれる基地局IDに基づいて自携帯機の正当性を認証し、UHF応答信号に自携帯機IDを含ませて送信することを特徴とする請求項12に記載の近接給電・通信装置。
【請求項1】
基地局側から携帯機側へ近接給電を行うと共に、基地局と携帯機間で通信を行う近接給電・通信装置において、
前記基地局は、通信用LF信号を送信し、該通信用LF信号に対して携帯機から送信されるUHF応答信号を受信する通常通信モードと、該通常通信モードでの動作に続いて近接給電用LF信号を送信し、該近接給電用LF信号により近接給電された携帯機からのUHF応答信号を受信する近接給電モードを有することを特徴とする近接給電・通信装置。
【請求項2】
前記基地局は、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信した場合には、近接給電モードでの動作を実行することなく動作を休止し、通常通信モードで携帯機からUHF応答信号を受信しない場合には、近接給電モードでの動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の近接給電・通信装置。
【請求項3】
前記基地局は、通常通信モードで携帯機からのUHF応答信号の受信の有無に拘わらず、通常通信モードに続けて近接給電モードでの動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の近接給電・通信装置。
【請求項4】
前記基地局における通信用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、近接給電用LF信号の送信期間とUHF応答信号の受信期間の間、前記携帯機における通信用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間、近接給電用LF信号の受信期間とUHF応答信号の送信期間の間に、それぞれ予め設定された時間間隔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項5】
前記基地局から近接給電用LF信号が送信される期間は、前記携帯機において動作用エネルギが確保される時間により規定され、前記携帯機からUHF応答信号が送信される期間は、前記携帯機により確保される動作用エネルギの給電可能時間により規定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項6】
前記携帯機は、前記基地局から送信される近接給電用LF信号のLF電磁波が持つ放射磁界に基づいて生成されるエネルギを蓄えるコンデンサを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項7】
前記携帯機におけるUHF応答信号の送信期間および該送信期間に対する前記基地局におけるUHF応答信号の受信期間のタイミングは、UHF応答信号の送信期間を単位として乱数発生器により発生される乱数に従って規定されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項8】
前記基地局は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の送信に兼用されるLF送信アンテナおよびLF送信回路を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項9】
前記基地局は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の送信のために別々のLF送信アンテナおよびLF送信回路を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項10】
前記携帯機は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の受信に兼用されるLF受信アンテナを備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項11】
前記携帯機は、通信用LF信号と近接給電用LF信号の受信にために別々のLF受信アンテナを備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項12】
前記携帯機は、自携帯機の正当性を認証する機能を有し、これにより正当性が認証された場合のみ、UHF応答信号を送信することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の近接給電・通信装置。
【請求項13】
前記基地局は、通信用LF信号および近接給電用LF信号に基地局IDを含ませて送信するとともに、前記携帯機から送信されたUHF応答信号に含まれる基地局IDに基づいて携帯機の正当性を認証する機能を有し、前記携帯機は、受信した通信用LF信号または近接給電用LF信号に含まれる基地局IDに基づいて自携帯機の正当性を認証し、UHF応答信号に自携帯機IDを含ませて送信することを特徴とする請求項12に記載の近接給電・通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−70315(P2012−70315A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215032(P2010−215032)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
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