説明

近紫外発光素子光源用カラーフィルタ

【課題】
本発明は、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能な近紫外発光素子光源用カラーフィルタおよびその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】
透明基材と、上記透明基材上に形成され、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層と、を有することを特徴とする近紫外発光素子光源用カラーフィルタを提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことができ、視認性に優れたカラー表示を行うことが可能な近紫外発光素子光源用カラーフィルタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるバックライトの光源としては、従来から、赤色、緑色、および青色の波長領域に発光ピークを有する水銀ガス励起の蛍光灯管(FL)、冷陰極管(CCFL)等が用いられている。しかしながら、液晶表示装置においては、近年、より鮮明なカラー表示が望まれているところ、FLやCCFLは、赤色、緑色、および青色の波長領域以外にも副発光を有することから色純度が劣化することが懸念される。
【0003】
そこで、FLやCCFLの代わりに、副発光を有さない発光ダイオード(以下、LEDと称して説明する場合がある。)をバックライトの光源に用いることが検討されている。
またLEDは、FLやCCFLに比べて応答性に優れ、長寿命で、低電圧駆動が可能であり、水銀フリーであることから環境保全性に優れているといった利点も有している。
【0004】
このようなLED光源を用いたバックライトとしては、特許文献1に青色光領域(435nm〜460nm)に発光ピークを有する光(青色光)を発光する青色LEDと、青色光を吸収して赤色光領域または緑色光領域に発光ピークを有する光(赤色光または緑色光)を発光する赤色蛍光体および緑色蛍光体を分散させた透光性樹脂とを組み合わせた光源を有するバックライトが開示されている。上記光源を有するバックライトは、青色LEDから発光される青色光と、赤色蛍光体から発光される赤色光と、緑色蛍光体から発光される緑色光との3色の光を合わせて白色光を呈するものである。
しかしながら、上記構成を有するバックライトにおいては、上記青色光を吸収して所望の赤色光または緑色光を発光することが可能な赤色蛍光体や緑色蛍光体が限定される場合があり、液晶表示装置に用いた場合に、色再現性を所望のものとすることが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、LED光源を用いたバックライトとしては、特許文献2および特許文献3に示すように、近紫外光領域(360nm〜430nm)に発光ピークを有する近紫外発光素子と、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を含有する蛍光体層とを組み合わせた構成が検討されている。上記構成を有するバックライトにおいては、蛍光体層に用いることが可能な各色の蛍光体の選択の自由度を広げることが可能であり、上述した青色LEDを用いたバックライトに比べ、液晶表示装置の色再現性を向上させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記蛍光体層に用いられる青色蛍光体に関しては、近紫外光を吸収して所望の青色光を発光することが可能なものが現状見出されていないという問題がある。そのため、実際には青色光領域よりも長波長側に発光ピークを有する光を発光する青色蛍光体が用いられる。またこれにより、上記構成を有するバックライトを用いた液晶表示装置においては、所望の青色表示を行うことが困難であり、より具体的には青色表示の色濃度が薄くなってしまうという問題がある。
【0007】
上記問題に対しては、青色表示の色濃度をカラーフィルタ側で調整することにより解決することが試みられており、例えば青色着色層中に含有される色材の量を多くすることにより調整することが検討されている。しかしながら、例えばCCFL光源を備えた液晶表示装置と同等の青色表示を近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置で行うために、フタロシアニン系青色顔料等の従来から用いられている色材によって青色着色層の色濃度を調整する場合は、色材の濃度が高くなりすぎるため従来の膜厚での青色着色層の形成が困難となるという問題や、厚膜に形成した場合も製版性が低下したり、液晶表示装置を薄膜化することが困難となるという問題がある。
【0008】
なお、近紫外発光素子光源とともに用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能なカラーフィルタの青色色材については、未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−209331号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/144922号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2010/103767号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能な近紫外発光素子光源用カラーフィルタおよびその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、近紫外発光素子光源用カラーフィルタの青色着色層の色材として、トリアリールメタン系色材を用いることにより、青色着色層を薄膜に形成した場合も、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に所望の色濃度での青色表示を行うことが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層と、を有することを特徴とする近紫外発光素子光源用カラーフィルタを提供する。
【0013】
本発明によれば、青色着色層が色純度の高いトリアリールメタン系色材を含有するものであることから、従来のフタロシアニン系顔料を用いた場合に比べ、所望の色濃度を示す青色着色層を薄膜に形成することが可能となる。よって、本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタを用いて良好な青色表示を行うことが可能となる。
【0014】
本発明においては、上記青色着色層上にガスバリア性を有する退色防止層が形成されていることが好ましい。退色防止層を有することにより、青色着色層を形成する工程において、トリアリールメタン系色材が昇華することにより、青色着色層が退色してしまうことを好適に防止することが可能となる。
【0015】
本発明は、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層用組成物を透明基材上に塗布することにより青色着色層形成用層を形成する青色着色層用組成物塗布工程、上記青色着色層形成用層に露光および現像処理を施すことにより上記青色着色層形成用層をパターニングする露光・現像処理工程、並びにパターニングされた上記青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより青色着色層を形成するポストベーク処理工程を有する青色着色層形成工程と、上記ポストベーク処理工程前に樹脂を含有する退色防止層用組成物を上記青色着色層形成用層上に塗布することにより退色防止層形成用層を形成する退色防止層用組成物塗布工程、および、上記ポストベーク処理工程で上記青色着色層形成用層中の上記トリアリールメタン系色材が昇華する前に上記退色防止層形成用層を硬化させてガスバリア性を有する退色防止層を形成する硬化工程を有する退色防止層形成工程と、を有することを特徴とする近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法の製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、退色防止層形成工程を有することにより、ポストベーク処理工程におけるトリアリールメタン系色材の昇華を好適に防止して、青色着色層を形成することが可能となる。よって、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能な近紫外発光素子光源用カラーフィルタを製造することが可能となる。
【0017】
本発明においては、上記退色防止層用組成物が、上記トリアリールメタン系色材の昇華温度よりも低い温度で硬化するものであることが好ましい。ポストベーク処理工程において、青色着色層形成用層からトリアリールメタン系色材が昇華する前に退色防止層形成用層を硬化させることが可能となることから、より好適に上記昇華を防止することが可能となる。また、硬化工程をポストベーク処理工程と同時に行うことが可能となることから、本発明のカラーフィルタの製造方法の製造工程を簡便なものとすることが可能となる。
【0018】
本発明においては、上記青色着色層用組成物塗布工程および上記退色防止層用組成物塗布工程では、多層同時塗布法を用いて、上記青色着色層用組成物および上記退色防止層用組成物を一括で塗布することにより上記透明基材上に上記青色着色層形成用層および上記退色防止層形成用層を同時に形成することが好ましい。これにより、本発明のカラーフィルタの製造方法の製造工程を簡便なものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、近紫外発光素子光源を備えた表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能であり、視認性に優れたカラー表示を行うことが可能な近紫外発光素子光源用カラーフィルタおよびその製造方法を提供するといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の近紫外発光素子光源用カラーフィルタ(以下、単にカラーフィルタと称して説明する場合がある。)、およびカラーフィルタの製造方法について説明する。
【0022】
A.カラーフィルタ
まず、本発明のカラーフィルタについて説明する。
本発明のカラーフィルタは、透明基材と、上記透明基材上に形成され、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層と、を有することを特徴とするものである。
また、本発明のカラーフィルタは近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いられるものである。近紫外発光素子光源については後述する。
【0023】
ここで、本発明のカラーフィルタについて図を用いて説明する。図1は本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基材1と、透明基材1上に形成され、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層2Bとを有するものである。また、本発明のカラーフィルタ10は、通常、青色着色層2Bとともに赤色着色層2Rおよび緑色着色層2Gが透明基材1上に形成されているものである。また、必要に応じて、着色層間に遮光部3を有していてもよいものである。
【0024】
本発明によれば、青色着色層が色純度の高いトリアリールメタン系色材を含有するものであることから、従来のフタロシアニン系顔料を用いた場合に比べ、所望の色濃度を示す青色着色層を薄膜に形成することが可能となる。よって、本発明のカラーフィルタを、近紫外発光素子光源を備えた表示装置に用いた場合に、良好な青色表示を行うことが可能となる。またこれにより、視認性に優れたカラー表示を行うことが可能なカラーフィルタとすることができる。
以下、本発明のカラーフィルタの各構成について説明する。
【0025】
1.青色着色層
まず、本発明における青色着色層について説明する。
【0026】
(1)青色着色層の材料
本発明における青色着色層は、トリアリールメタン系色材とバインダ樹脂とを含有するものである。
【0027】
(i)トリアリールメタン系色材
本発明に用いられるトリアリールメタン系色材は、トリアリールメタン系染料を含有するものである。また、上記トリアリールメタン系色材としては、トリアリールメタン系染料をそのまま用いてもよく、トリアリールメタン系レーキ顔料であってもよい。
以下、トリアリールメタン系染料およびトリアリールメタン系レーキ顔料について説明する。
【0028】
(a)トリアリールメタン系染料
本発明に用いられるトリアリールメタン系染料は、下記一般式(I)で表わされる構造を有する染料を含有するものである。本発明においては、下記一般式(I)で表わされる1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
【化1】

(一般式(I)中、R11〜R16は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表わすか、あるいはR11とR12、R13とR14、R15とR16が結合して環構造を形成している。Xはアニオンである。)
【0030】
11〜R16におけるアルキル基とは、特に限定されないが、炭素数1〜20の直鎖又は分枝状アルキル基等が挙げられ、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが、製造および原料調達の容易さの点から、より好ましい。中でも、R11〜R16におけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
11〜R16におけるアリール基とは、特に限定されないが、例えばフェニル基、ナフチル基、フェニルメチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0031】
11とR12、R13とR14、R15とR16が結合して環構造を形成しているとは、R11とR12、R13とR14、R15とR16が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。環構造は特に限定されないが、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0032】
中でも化学的安定性の点からR11〜R16としては、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はR11とR12、R13とR14、R15とR16が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0033】
11〜R16はそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも色純度の点からR15が水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からR11〜R14及びR16がすべて同一であることがより好ましい。
【0034】
はアニオンであり、トリアリールメタンカチオンの対アニオンである。Xとして用いられるアニオンとしては、特に限定されず、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオンや、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、有機スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0035】
として用いられる有機スルホン酸イオンとしては、例えば、メシル酸イオンのようなアルキルスルホン酸イオンや、トシル酸イオンのようなアリールスルホン酸イオンが挙げられる。また、芳香族化合物にスルホナト基が2つ以上結合した2価以上のアニオンであっても良く、例えば、ナフタレンジスルホン酸イオンや、ナフタレントリスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0036】
(b)トリアリールメタン系レーキ顔料
次に、本発明に用いられるトリアリールメタン系レーキ顔料について説明する。トリアリールメタン系レーキ顔料とは、トリアリールメタン系染料をレーキ化したものである。
なお、「レーキ化」とは、金属塩等の沈殿剤を加えることにより、溶媒可溶性の染料を沈殿剤に吸着、沈殿させ、上記沈殿物からなる不溶性の微粒子(顔料)を生成する手法を指す。
【0037】
トリアリールメタン系レーキ顔料に用いられるトリアリールメタン系染料については、上述したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0038】
上記トリアリールメタン系レーキ顔料に用いられる沈殿剤としては、青色着色層に用いることが可能な顔料とすることが可能なものであれば特に限定されず、例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、酢酸鉛、タンニン酸、カタノール、タモールの他、フォスフォタングステン酸、フォスフォモリブデン酸、フォスフォタングステンモリブデン酸、シリコタングステンモリブデン酸、シリコタングステン酸、シリコモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸等のヘテロポリ酸が好適に用いられる。
中でも、耐久性に優れる点から、ヘテロポリ酸を用いることが好ましく、ヘテロポリ酸の中でも、入手が容易な点から、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸を用いることがより好ましい。
【0039】
本発明において用いられるトリアリールメタン系レーキ顔料は、所望の構造を有するトリアリールメタン系染料と上記沈殿剤を用いて、公知の方法でレーキ化することによって得ることができる。また、トリアリールメタン系レーキ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー9、C.I.ピグメントブルー10、C.I.ピグメントブルー14、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット39等を用いることができる。他にも、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ベーシックブルー7、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3等を、上記沈殿剤を用いてレーキ化して用いることができる。
【0040】
(c)トリアリールメタン系色材
本発明においては、上述したトリアリールメタン系染料のみを用いてもよく、トリアリールメタン系レーキ顔料のみを用いてもよく、トリアリールメタン系染料およびトリアリールメタン系レーキ顔料を混合して用いてもよい。
上記トリアリールメタン系色材の含有量としては、青色着色層を用いて所望の青色表示を行うことが可能な程度であれば特に限定されないが、トリアリールメタン系色材とその他色材の色材中の比率が、50:50〜100:0、中でも70:30〜100:0、特に80:20〜100:0であることが好ましい。上記含有量が上記範囲に満たない場合は、色純度の高いトリアリールメタン系色材を用いた場合も、所望の色濃度を示さない可能性があるからであり、上記含有量が上記範囲を超える場合は、青色着色層を形成すること自体が困難となる可能性があるからである。
【0041】
(ii)バインダ樹脂
次に、本発明におけるバインダ樹脂について説明する。
本発明に用いられるバインダ樹脂としては、上述したトリアリールメタン系色材を分散または溶解させることにより、青色着色層を構成することが可能なものであれば特に限定されず、従来公知のカラーフィルタの着色画素に用いられているアルカリ可溶性樹脂、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0042】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸及びこれらの酸無水物等のモノマーを重合した、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
この他、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、市販のバインダ樹脂を用いることもでき、例えば、アロニックスM−5600(東亞合成(株)製の商品名アロニックスM−5600、アロニックスM−6200、アロニックスM−7100及びアロニックスM−9050が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の分子量は、5000〜50000が好ましい。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、例えば、特開2010−2746号公報に記載の式(1)で表わされる構成単位及び式(2)で表わされる構成単位から構成される重合体(バインダ樹脂性エポキシ樹脂)が好ましい。
熱硬化性樹脂の分子量は、5000〜100000が好ましい。
【0044】
本発明においては、上記アルカリ可溶性樹脂や熱硬化性樹脂を1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
(iii)その他の材料
本発明に用いられる青色着色層の材料としては、上述したトリアリールメタン系色材、およびバインダ樹脂以外にも、適宜選択して追加することが可能である。このような材料としては、例えば、トリアリールメタン系色材以外の色材、顔料分散剤、酸化防止剤等を挙げることができる。トリアリールメタン系色材以外の色材、顔料分散剤については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0046】
本発明においては、上述した任意の材料のうち、少なくとも酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤を用いることでトリアリールメタン系色材の酸化劣化による退色を抑制することが可能となるからである。
【0047】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール(分子量206)、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐p‐クレゾール(分子量220)(商品名:ヨシノックス BHT(エーピーアイコーポレーション社製))、4,4’‐ブチリデンビス(6‐t‐ブチル‐3‐メチルフェノール)(分子量383)(商品名:ヨシノックス BB(エーピーアイコーポレーション社製))、2,2’‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐t‐ブチルフェノール)(分子量341)(商品名:ヨシノックス 2246G(エーピーアイコーポレーション社製))、2,2’‐メチレンビス(4‐エチル‐6‐t‐ブチルフェノール)(分子量369)(商品名:ヨシノックス 425(エーピーアイコーポレーション社製))、2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐エチルフェノール(分子量234)(商品名:ヨシノックス 250(エーピーアイコーポレーション社製))、1,1,3‐トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐t‐ブチルフェニル)ブタン(分子量545)(商品名:ヨシノックス 930(エーピーアイコーポレーション社製))、n‐オクタデシル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量531)(商品名:トミノックス SS(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 1076(チバ・ジャパン株式会社製))、テトラキス[メチレン‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(分子量1178)(商品名:トミノックス TT(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 1010(チバ・ジャパン株式会社製))、トリエチレングリコールビス[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオネート](分子量587)(商品名:トミノックス 917(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 245(チバ・ジャパン株式会社製))、トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト(分子量784)(商品名:ヨシノックス 314(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX 3114(チバ・ジャパン株式会社製))、6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]‐ジオキサホスフェピン(分子量741)(商品名:Sumilizer GA−80(住友化学製))、2,2‐チオ‐ジエチレンビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量643)(商品名:IRGANOX 1035(チバ・ジャパン株式会社製))、N,N’‐ヘキサメチレンビス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐ヒドロシンナマミド)(分子量637)(商品名:IRGANOX 1098(チバ・ジャパン株式会社製))、イソオクチル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量391)(商品名:IRGANOX 1135(チバ・ジャパン株式会社製))、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775)(商品名:IRGANOX 1330(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4‐ビス(ドデシルチオメチル)‐6‐メチルフェノール(分子量537)(商品名:IRGANOX 1726(チバ・ジャパン株式会社製))、ビス(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックスの混合体(分子量695)(商品名:IRGANOX 1425(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4‐ビス[(オクチルチオ)メチル]‐o‐クレゾール(分子量425)(商品名:IRGANOX 1520(チバ・ジャパン株式会社製))、1,6‐ヘキサンジオール‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量639)(商品名:IRGANOX 259(チバ・ジャパン株式会社製))、2,4‐ビス‐(n‐オクチルチオ)‐6‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐t‐ブチルアニリノ)‐1,3,5‐トリアジン(分子量589)(商品名:IRGANOX 565(チバ・ジャパン株式会社製))、ジエチル((3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフォナート(分子量356)(商品名:IRGAMOD 295(チバ・ジャパン株式会社製))等が挙げられる。特に、上述したようにこの中でも、分子量2,500以下のフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0048】
リン系酸化防止剤の具体例としては、6‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロポキシ]‐2,4,8,10‐テトラ‐t‐ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン(分子量661)(商品名:Sumilizer GP(住友化学製))、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト(分子量647)(商品名:IRGAFOS 168(チバ・ジャパン株式会社製))、2‐[[2,4,8,10テトラキス(1,1‐ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン‐6‐イル]オキシ]‐N,N‐ビス[2‐[[2,4,8,10テトラキス(1,1‐ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン‐6‐イル]オキシ]‐エチル]エタナミン(分子量1465)(商品名:IRGAFOS 12(チバ・ジャパン株式会社製))、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチル‐6‐メチルフェニル)エチルフォスファイト(分子量514)(商品名:IRGAFOS 38(チバ・ジャパン株式会社製))等が挙げられる。
【0049】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(分子量515)(商品名:DLTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX PS 800 FD(チバ・ジャパン株式会社製))、ジステアリルチオジプロピオネート(分子量683)(商品名:DSTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:IRGANOX PS 802 FD(チバ・ジャパン株式会社製))、ジミリスチルチオジプロピオネート(分子量571)(商品名:DMTP「ヨシトミ」(エーピーアイコーポレーション社製)、商品名:Sumilizer TPM(住友化学製))、ジトリデシルチオジプロピオネート(分子量543)(商品名:DTTP(エーピーアイコーポレーション社製)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(分子量1162)(商品名:Sumilizer TP−D(住友化学製))等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤は青色着色層中で0.01〜10質量%含有することが好ましく、中でも0.05〜5%、特に0.1〜3%含有することが好ましい。
【0051】
(2)青色着色層
本発明に用いられる青色着色層について説明する。
本発明に用いられる青色着色層は、近紫外発光素子光源を備えた表示装置に用いることにより所望の青色を呈することが可能なものであれば特に限定されない。より具体的には、CIE色度図における青色着色層の色度座標が、0.140≦x≦0.160、かつ0.050≦y≦0.075、なかでも0.145≦x≦0.160、かつ0.050≦y≦0.070、特に0.148≦x≦0.155、かつ0.055≦y≦0.065であることが好ましい。青色着色層の色度座標が上記範囲内であることにより、本発明のカラーフィルタを近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に、所望の青色表示を行うことが可能となる。
なお、青色着色層の色度座標については、例えば以下の測定方法により求めることができる。
まず、透明基材上に所望の厚みで青色着色層を形成した評価用青色着色層基板を作製する。次いで、バックライトとして近紫外発光素子光源を用い、輝度計SR−UL1(TOPCON社製)により色度座標を測定することができる。
【0052】
上記青色着色層の厚みとしては、本発明のカラーフィルタを近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いた場合に所望の青色表示を行うことが可能となる程度の厚みであれば特に限定されないが、1.0μm〜10μmの範囲内、なかでも1.5μm〜7.0μmの範囲内、特に2.0μm〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。青色着色層の厚みが上記範囲に満たない場合は、上記トリアリールメタン系色材を用いた場合であっても、本発明のカラーフィルタを用いて所望の色濃度を達成することが困難となる可能性があるからであり、青色着色層の厚みが上記範囲を超える場合は、本発明のカラーフィルタを薄膜に形成することが困難となる可能性があるからである。
【0053】
上記青色着色層は、通常、後述する赤色着色層および緑色着色層とともに所定の配列パターンで透明基材に形成されるものである。このような配列パターンについては、一般的なカラーフィルタにおける着色層の配列パターンと同様とすることができ、具体的には、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができ、着色面積は任意に設定することができる。
【0054】
青色着色層の形成方法については、一般的なカラーフィルタにおける着色層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0055】
2.透明基材
次に、本発明における透明基材について説明する。
本発明における透明基材としては、近紫外発光素子光源からの光に対する透光性を有し、かつ上記青色着色層等を形成することが可能なものであれば特に限定されず、ガラス基板等の屈曲性を有さない透明な基材であってもよく、あるいは、樹脂製フィルム等の屈曲性を有する透明な基材であってもよい。なお、具体的な透明基材については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
3.その他の構成
本発明のカラーフィルタは、上述した青色着色層と、透明基材とを有するものであれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して追加することができる。以下、このような構成について説明する。
【0057】
(1)退色防止層
本発明のカラーフィルタは、青色着色層上にガスバリア性を有する退色防止層を有していることが好ましい。
ここで、青色着色層に含有されるトリアリールメタン系色材は、未硬化のバインダ樹脂中に存在する場合においては、所定の温度に加熱することにより昇華及び酸化劣化するという性質を有する色材である。そのため本発明においては、青色着色層の色濃度をより高く保つためには、トリアリールメタン系色材の昇華温度よりも低い温度で青色着色層が形成されることがより好ましい。しかしながら、現行のカラーフィルタの製造方法においては、着色層を形成するに際して、上記昇華温度よりも高い温度で着色層組成物からなる着色層形成用層を焼成して硬化させる工程を行う場合が多いことから、焼成時にトリアリールメタン系色材が昇華して、最終的に得られる青色着色層が所望の色濃度を示さないことが懸念される。
よって、本発明のカラーフィルタの製造時においては、焼成時において青色着色層形成用層からトリアリールメタン系色材が昇華する前に、上記昇華を防止することが可能な程度のガスバリア性を有する退色防止層を形成することにより、青色着色層の退色を防止することが好ましいのである。
【0058】
このような退色防止層の形成位置としては、青色着色層の形成工程中にトリアリールメタン系色材が昇華することを防止することが可能な位置であれば特に限定されず、また、本発明のカラーフィルタを表示装置に用いた場合に青色画素として用いられる青色着色層上に形成されていれば特に限定されない。またカラーフィルタが遮光部を有する場合は、少なくとも青色着色層が形成されている遮光部の開口部を覆うことが可能であれば特に限定されない。
より具体的には、図2(a)、(b)に示すように、青色着色層2B上に退色防止層4が形成されていてもよく、図3に示すように、青色着色層2Bを覆うように退色防止層4が形成されていてもよい。また青色着色層2B上に退色防止層4が形成されている場合は、図2(a)に示すように,青色着色層2Bの表面全体に退色防止層4が形成されていてもよく、図2(b)に示すように、青色画素に用いられる青色着色層2B上(図2(b)においては遮光部3の開口部分に形成されている青色着色層2B)のみに退色防止層4が形成されていてもよい。
なお、図2(a)、(b)および図3は本発明のカラーフィルタの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
また、本発明においては、図4に示すように、カラーフィルタ10の着色層側表面を覆うように退色防止層4が形成されていてもよい。なお、図4に示すように退色防止層4が形成されている場合は、退色防止層4を後述する平坦化層としても用いることが可能となる。なお、図4は本発明のカラーフィルタの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0060】
上記退色防止層としては、青色着色層の分光特性を阻害しないものであれば特に限定されず、透明性を有するものであってもよく、青色であってもよいが、透明性を有するものであることがより好ましい。退色防止層が透明性を有するものであることにより、青色着色層の分光特性をより効果的に発揮することが可能となるからである。
【0061】
上記退色防止層の材料としては、ガスバリア性を有する層を青色着色層上に形成することが可能なものであれば特に限定されず、無機材料であってもよく、有機材料であってもよいが、製造工程の簡易性等を考慮すると、有機材料であることが好ましい。
【0062】
このような退色防止層に用いられる有機材料としては、上述した青色着色層のバインダ樹脂に用いられるアルカリ可溶性樹脂、および熱硬化性樹脂と同様とすることができる。
【0063】
退色防止層に用いられる有機材料としては、なかでも、エポキシ化合物、シランカップリング剤、シリコーンアルコキシオリゴマーが好ましい。エポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。シランカップリング剤としては、KMB−903、KBE−903、KBM573、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−303、KBM−802、KBM−803、KBE−9007、X−12−967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。シリコーンアルキルオリゴマーとしては、エポキシ、メルカプト、アクリル、アミノ基を有するものが好ましい。例えば、X−41−1053、X−41−1805、KR−513(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0064】
上記退色防止層の厚みとしては、青色着色層からトリアリールメタン系色材が昇華することを防止することが可能な程度の厚みであれば特に限定されないが、0.05μm〜1.0μmの範囲内、なかでも0.1μm〜0.8μmの範囲内、特に0.3μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。退色防止層の厚みが上記範囲に満たない場合は、退色防止層を形成した場合も上記昇華を防止することが困難となる可能性や、青色着色層および退色防止層が混ざり合う可能性があるからである。また、退色防止層の厚みが上記範囲を超える場合は、本発明のカラーフィルタを薄膜に形成することが困難となるからである。
【0065】
(2)着色層
本発明のカラーフィルタは、通常、上述した青色着色層とともに他の色の着色層が形成されているものである。このような着色層としては、通常、赤色着色層および緑色着色層を有するものである。また、本発明においては、赤色、緑色、および青色以外の色の着色層をさらに有していてもよい。
【0066】
上記赤色着色層および緑色着色層は、各色の色材を上述した「1.青色着色層」の項で説明したバインダ樹脂に分散または溶解させることにより構成されるものである。
【0067】
上記赤色着色層に用いられる色材としては、本発明のカラーフィルタを近紫外発光素子光源を備えた表示装置に用いた場合に所望の赤色表示を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知の赤色色材を用いることができる。
また、上記緑色着色層に用いられる色材としては、本発明のカラーフィルタを近紫外発光素子光源を備えた表示装置に用いた場合に所望の緑色表示を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知の緑色色材を用いることができる。
【0068】
赤色着色層および緑色着色層の厚みおよび配列パターンについては、上述した青色着色層の厚みおよび配列パターンと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
(3)遮光部
本発明のカラーフィルタは、必要に応じて、着色層間に画素を区画するための遮光部を形成することができる。
【0070】
このような遮光部のパターン形状については、上述した着色層または蛍光層のパターン形状等により適宜選択することができる。
【0071】
また、遮光部の材料としては、所望の遮光性を示すことが可能であれば特に限定されず、一般的なカラーフィルタの遮光部に用いられるものと同様とすることができる。具体的には、クロム、ニッケル等の遮光性を有する金属または金属酸化物からなる遮光部、黒色顔料等の遮光剤を含む樹脂組成物からなる遮光部、上述した着色層同士を積層させた遮光部等を挙げることができる。なかでも、本態様においては、着色層同士を積層させた遮光部であることが好ましい。着色層の形成と同時に形成することができ、また、別途遮光部の材料を準備しなくてもよいことから、製造コストを削減することができるからである。
【0072】
(4)平坦化層
本発明のカラーフィルタは、必要に応じて、透明基材の着色層側を覆うように形成された平坦化層を有することができる。上記平坦化層は、カラーフィルタ表面を平坦化するとともに、各色の着色層を保護するために用いられるものである。
平坦化層に用いられる材料、厚み等については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0073】
本発明においては、上述したように、退色防止層が平坦化層を兼ねていてもよい。
【0074】
(5)その他の構成
本発明のカラーフィルタは、上述した構成以外にも任意の構成を適宜選択して追加することが可能である。このような構成としては、カラーフィルタと対向基板とのセルギャップを保持し、液晶層の厚みを均一にするために用いられる柱状スペーサ等を挙げることができる。
【0075】
4.用途
本発明のカラーフィルタは、近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いられるものである。
【0076】
また、本発明のカラーフィルタは、上述した液晶表示装置のなかでも、青色発光ピークが450nm〜500nmの範囲内に存在する近紫外発光素子光源を備えた液晶表示装置に用いられることが好ましい。本発明においては、上述した波長領域に青色発光ピークを有する近紫外発光素子光源とともに用いた場合であっても、優れた青色表示を行うことが可能となる。
【0077】
5.カラーフィルタの製造方法
本発明のカラーフィルタの製造方法については、特に限定されず、例えば、後述する「B.カラーフィルタの製造方法」の項で説明する方法等を挙げることができる。
【0078】
6.その他
本発明のカラーフィルタは、近紫外発光素子光源とともに用いられるものである。以下、近紫外発光素子光源について説明する。
【0079】
上記近紫外発光素子光源は、通常、上述した波長領域に発光ピークを有する近紫外発光素子と、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体を含有する蛍光体層とを有するものである。
【0080】
上記近紫外発光素子光源としては、上述した波長領域に発光ピークを有するものであれば特に限定されず、例えば近紫外光発光ダイオード(LED)や近紫外光レーザ等を挙げることができる。本発明においては中でも近紫外光LEDであることが好ましい。近紫外光LEDについては、公知のものを用いることができる。
【0081】
上記蛍光体層としては、通常、透明樹脂層中に上述した各色の蛍光体が分散されたものが用いられる。透明樹脂層に用いられる樹脂材料、赤色蛍光体、緑色蛍光体、および青色蛍光体については公知のものを用いることができる。
【0082】
上記近紫外発光素子光源の形態としては、表示装置全面に配置される直下型であってもよく、導光板を有し、上記導光板の側方に配置されるエッジライト型のものであってもよい。なお、導光板については公知のものとすることができる。
【0083】
本発明のカラーフィルタとともに用いられる近紫外発光素子光源としては、上述した構成に限定されない。
【0084】
B.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層用組成物を透明基材上に塗布することにより青色着色層形成用層を形成する青色着色層用組成物塗布工程、上記青色着色層形成用層に露光および現像処理を施すことにより上記青色着色層形成用層をパターニングする露光・現像処理工程、並びにパターニングされた上記青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより青色着色層を形成するポストベーク処理工程を有する青色着色層形成工程と、上記ポストベーク処理工程前に樹脂を含有する退色防止層用組成物を上記青色着色層形成用層上に塗布することにより退色防止層形成用層を形成する退色防止層用組成物塗布工程、および、上記ポストベーク処理工程で上記青色着色層形成用層中の上記トリアリールメタン系色材が昇華する前に上記退色防止層形成用層を硬化させてガスバリア性を有する退色防止層を形成する硬化工程を有する退色防止層形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0085】
ここで、本発明のカラーフィルタの製造方法について図を用いて説明する。図5(a)〜(e)は本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。まず、本発明における青色着色層形成工程について説明する。上記青色着色層形成工程においては、まず図5(a)、(b)に示すように、多層同時塗布装置20を用いて青色着色層用組成物12Bを透明基材1上に塗布することにより青色着色層形成用層2B’を形成する(青色着色層用組成物塗布工程)。次に、図5(c)、(d)に示すように、青色着色層形成用層2B’にフォトマスク30を介して露光光40を照射することにより露光を施し、次いで現像処理を施すことにより青色着色層形成用層2B’をパターニングする(露光・現像処理工程)。次に、パターニングされた青色着色層形成用層2B’にポストベーク処理を施すことにより、図5(e)に示す青色着色層2Bを形成する(ポストベーク処理工程)。
【0086】
次に、本発明における退色防止層形成工程について説明する。上記退色防止層形成工程においては、まず図5(a)、(b)に示すように、多層同時塗布装置20を用いて、青色着色層用組成物塗布工程と同時に、退色防止層用組成物14を青色着色層形成用層2B’上に塗布することにより退色防止層形成用層4’を形成する。次に、図5(c)、(d)に示すように、退色防止層形成用層4’についても、青色着色層形成用層2B’と同時に露光・現像処理工程およびポストベーク処理工程が行われる。
ここで、退色防止層用組成物14が光硬化性を示すものである場合は、図5(c)、(d)に示すように、露光・現像処理工程の露光時に退色防止層形成用層4’が硬化して退色防止層4となる。一方、退色防止層用組成物14が熱硬化性を示すものである場合は、図5(d)、(e)に示すように、ポストベーク処理工程で退色防止層形成用層4’が硬化して退色防止層4となる。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した各工程を行うことにより、図5(e)に示すようなカラーフィルタ10を製造することができる。
【0087】
なお、図5(a)〜(e)に示すように、本発明においては必要に応じて透明基材1上に予め遮光部3を形成してもよい。また、図5(a)〜(e)においては、予め赤色着色層2Rおよび緑色着色層2Gが形成された透明基材1を用いた例について説明したが、各色の着色層の形成順序については特に限定されず、図示はしないが、青色着色層を形成した後に、赤色着色層や緑色着色層を形成してもよい。
【0088】
図6(a)〜(e)は本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。本発明においては、図6(a)に示すように、青色着色層形成用層2B’を形成し、図6(b)、(c)に示すように、青色着色層形成用層2B’に露光および現像処理を施すことにより青色着色層形成用層2B’をパターニングした後に、図6(d)に示すように、青色着色層形成用層2B’上に退色防止層用組成物を塗布して退色防止層形成用層4’を形成することも可能である。また、図示はしないが、退色防止層用組成物が光硬化性を示すものである場合は、光照射を行い退色防止層形成用層を硬化して退色防止層とした後、青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより、図6(e)に示すように、青色着色層2Bを形成する。一方、退色防止層用組成物が熱硬化性を示すものである場合は、青色着色層形成用層とともに退色防止層形成用層にポストベーク処理を施すことにより、図6(e)青色着色層2Bおよび退色防止層4を形成する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した工程を行うことにより、図6(e)に示すカラーフィルタ10を製造することができる。
なお、図6(a)〜(e)においては、透明基材1の着色層側を覆うように退色防止層4を形成する例について説明したが、図2(a)、(b)および図3に示すように、青色着色層2B上に退色防止層4をパターン状に形成することも可能である。
また、図6(a)〜(e)において説明していない符号については、図5(a)〜(e)で説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
本発明によれば、退色防止層形成工程を有することにより、ポストベーク処理工程でのトリアリールメタン系色材の昇華を防止して青色着色層を形成することが可能となることから、青色発色の優れたカラーフィルタを製造することが可能となる。
【0090】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法の各工程について説明する。
【0091】
1.青色着色層形成工程
本発明における青色着色層形成工程は、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層用組成物を透明基材上に塗布することにより青色着色層形成用層を形成する青色着色層用組成物塗布工程、上記青色着色層形成用層に露光および現像処理を施すことにより上記青色着色層形成用層をパターニングする露光・現像処理工程、並びにパターニングされた上記青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより青色着色層を形成するポストベーク処理工程を有する工程である。
以下、各工程について説明する。
【0092】
(1)青色着色層用組成物塗布工程
本発明における青色着色層用組成物塗布工程は、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層用組成物を透明基材上に塗布することにより青色着色層形成用層を形成する工程である。
【0093】
(i)青色着色層形成用層の形成方法
本工程に用いられる青色着色層形成用層の形成方法としては、透明基材上に所望の厚みで青色着色層用組成物を塗布することが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な塗布方法を用いることができる。具体的には、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を挙げることができる。
【0094】
また、本工程においては、多層同時塗布法を用いて、青色着色層用組成物および後述する退色防止層用組成物を一括で塗布することにより透明基材上に青色着色層形成用層および後述する退色防止層形成用層を同時に形成することも可能である。
【0095】
ここで、多層同時塗布法とは、複数の塗布液を同時に塗布し、多層を形成する塗布方法である。また、上記多層同時塗布法は、具体的には、複数のスリットを有するダイコーター等の多層同時塗布装置を用いることにより行うことが可能である。
【0096】
なお、上記多層同時塗布法において形成される青色着色層形成用層および退色防止層形成用層は未乾燥のまま積層されることから、各層の成分が他の層へ混入することを防止することが可能となるように、以下のような混入防止方法を行うことが好ましい。すなわち、青色着色層用組成物に用いられる溶剤と退色防止層用組成物に用いられる溶剤とを相分離するような溶剤を選択する方法、透明基材上に形成された青色着色層形成用層および退色防止層形成用層が互いに混ざり合う前に後述するプリベーク処理、または後述する露光・現像処理工程を行う方法、等を挙げることができる。
【0097】
本工程においては、上述した種々の塗布方法を適宜選択して用いることが可能であるが、なかでも多層同時塗布法を用いることが好ましい。本発明のカラーフィルタの製造方法の製造工程を簡便なものとすることが可能となるため、生産性高くカラーフィルタを製造することが可能となるからである。
【0098】
(ii)青色着色層用組成物
本工程に用いられる青色着色層用組成物は、トリアリールメタン系色材とバインダ樹脂とを有するものである。なお、本工程に用いられるトリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂については上述した「A.カラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、上記バインダ樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。
【0099】
また、上記青色着色層用組成物は上述した成分以外にも、必要な成分を適宜選択して追加することが可能である。以下、これらの成分について説明する。
【0100】
(a)光重合開始剤
青色着色層用組成物のバインダ樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を用いる場合、硬化反応を促進等させる観点から、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0101】
光重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が好ましい。
光重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184、同369、同651、同819、同907、メルク社製の商品名ダロキュアシリーズ等を挙げることができる。
【0102】
光重合開始剤を用いる場合、その量は適宜調節すれば良いが、例えば、青色着色層用組成物の全固形分の合計質量に対して、1質量%〜20質量%とすることが好ましい。
【0103】
(b)溶剤
青色着色層用組成物の粘度、顔料分散性、分散の経時安定性を調整するために、必要に応じて溶剤を用いることができる。
溶剤としては、例えば、特開2010−128310号公報に記載のイソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチレングリコールジメチルエーテル(別名ビス(2‐メトキシエチル)エーテル)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(別名1‐メトキシプロパン‐2‐オール)等のグリコールエーテル類並びに酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名酢酸2‐メトキシ‐1‐メチルエチル)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名酢酸2‐エトキシ‐1‐メチルエチル)、3‐メトキシブチルアセテート(別名酢酸3‐メトキシブチル)及びブチルカルビトールアセテート(別名酢酸2‐(2‐ブトキシエトキシ)エチル)等の酢酸エステル類等があげられる。
中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び3−メトキシブチルアセテートが好ましい。
【0104】
溶剤を用いる場合、その量は適宜調節すれば良いが、例えば、青色着色層用組成物の合計質量に対して、10質量%〜90質量%とすることが好ましい。
【0105】
(c)その他の成分
上記青色着色層用組成物としては、上述した各成分のほかにも例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等を用いることができる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0106】
(iii)その他
本工程により形成される青色着色層形成用層の厚みについては、所望の青色着色層を形成することが可能な程度であれば特に限定されない。
【0107】
また、本発明においては、上記青色着色層形成用層を形成した後に、プリベーク処理を施してもよい。
【0108】
(2)露光・現像工程
本発明における露光・現像工程は、上記青色着色層形成用層に露光および現像処理を施すことにより青色着色層形成用層をパターニングする工程である。
【0109】
本工程における露光は、通常、所望の開口を有するフォトマスクを介して露光光を照射することにより行われる。本工程に用いられるフォトマスク、露光光、露光条件等については、一般的なカラーフィルタの製造方法に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
本工程における現像処理に用いられる現像液、現像条件等については、一般的なカラーフィルタの製造方法に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
(3)ポストベーク処理工程
本発明におけるポストベーク処理工程は、青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより青色着色層を形成する工程である。
【0112】
本工程におけるポストベーク処理の温度としては、所望の青色着色層を形成することが可能であれば特に限定されず、通常は青色着色層の材料、青色着色層用組成物に用いられる溶剤等により適宜選択されるものである。
より具体的に、上記ポストベーク処理の温度としては、100℃〜220℃の範囲内、なかでも130℃〜210℃の範囲内、特に150℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。ポストベーク処理の温度が上記範囲に満たない場合は、青色着色層を十分に硬化させることが困難となる可能性があるからである。また、ポストベーク処理の温度が上記範囲を超える場合は、青色着色層の材料が劣化してしまう可能性があるからである。
【0113】
2.退色防止層形成工程
本発明における退色防止層形成工程は、上記ポストベーク処理工程前に樹脂を含有する退色防止層用組成物を上記青色着色層形成用層上に塗布することにより退色防止層形成用層を形成する退色防止層用組成物塗布工程、および、上記ポストベーク処理工程で上記青色着色層形成用層中の上記トリアリールメタン系色材が昇華する前に上記退色防止層形成用層を硬化させてガスバリア性を有する退色防止層を形成する硬化工程を有する工程である。
以下、各工程について説明する。
【0114】
(1)退色防止層用組成物塗布工程
本発明における退色防止層用組成物塗布工程は、上記ポストベーク処理工程前に樹脂を含有する退色防止層用組成物を上記青色着色層形成用層上に塗布することにより退色防止層形成用層を形成する工程である。
【0115】
(i)退色防止層形成用層の形成方法
上記退色防止層用組成物の形成方法としては、ポストベーク処理工程前に青色着色層形成用層上に退色防止層を形成することが可能であれば特に限定されず、多層同時塗布法、すなわち青色着色層用組成物と一括して退色防止層用組成物を塗布する方法であってもよく、青色着色層形成用層の形成後に退色防止層用組成物を塗布する方法であってもよい。
【0116】
なお、多層同時塗布法については、上述した「1.青色着色層形成工程」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0117】
一方、青色着色層形成用層の形成後に退色防止層用組成物を塗布する方法としては、青色着色層用組成物塗布工程後に退色防止層用組成物を塗布する方法であってもよく、露光・現像処理工程後にパターニングされた青色着色層形成用層上に退色防止層用組成物を塗布する方法であってもよい。なかでも、露光・現像処理工程後にパターニングされた青色着色層形成用層上に退色防止層用組成物を塗布する方法であることがより好ましい。また、この場合は、パターニングされた青色着色層形成用層上に退色防止層用組成物をパターン状に塗布してもよく、透明基材の着色層側全面を覆うように退色防止層用組成物を塗布してもよいが、透明基材の着色層側全面を覆うように退色防止層用組成物を塗布することがより好ましい。平坦化層を兼ねた退色防止層を形成することが可能となることにより、本発明のカラーフィルタの製造方法の工程数を少ないものとすることが可能となることから、製造効率を向上させることが可能となる。
【0118】
なお、具体的な退色防止層用組成物の塗布方法については、一般的な塗布法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
(ii)退色防止層用組成物
本工程に用いられる退色防止層用組成物は、樹脂を含有するものである。
また、上記退色防止層用組成物は、後述する硬化工程における退色防止層形成用層の硬化方法により、適宜選択される。
例えば、退色防止層形成用層を紫外線等の光を用いて硬化させる場合には、退色防止層用組成物は光硬化性を示すように調製される。このような退色防止層用組成物に用いられる樹脂としては、上述した「A.カラーフィルタ」の項で説明したアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。また、必要に応じて、上述した青色着色層用組成物の項で説明した光重合開始剤、溶剤等、その他の成分等が用いられる。
【0120】
また、退色防止層形成用層を熱硬化させる場合は、退色防止層用組成物は熱硬化性を示すように調製される。このような退色防止層用組成物に用いられる樹脂としては、上述した「A.カラーフィルタ」の項で説明した熱硬化性樹脂が挙げられる。また、必要に応じて、熱重合開始剤、硬化剤、触媒、および上述した青色着色層用組成物の項で説明したその他の成分が用いられる。なお、熱重合開始剤、硬化剤、および触媒については、一般的な熱硬化性樹脂を用いた樹脂部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0121】
本発明において退色防止層用組成物が熱硬化性を有するものである場合は、上記ポストベーク処理工程で上記青色着色層形成用層中の上記トリアリールメタン系色材が昇華する前に退色防止層を硬化させることが可能であれば特に限定されないが、トリアリールメタン系色材の昇華温度よりも硬化温度が低いものであることが好ましい。トリアリールメタン系色材の昇華を好適に防止することが可能となるからである。また、後述する硬化工程を青色着色層のポストベーク処理工程と同時に行うことが可能となることから、本発明のカラーフィルタの製造方法の工程数を少ないものとすることができ、製造効率を向上させることが可能となる。
【0122】
上記退色防止層形成用層の硬化温度については、青色着色層用組成物中に含有されるトリアリールメタン系色材の種類等により適宜選択されるものであるが、トリアリールメタン系色材の昇華温度との差が、10℃以上、なかでも20℃以上、特に30℃以上となることが好ましい。具体的な退色防止層形成用層の硬化温度としては、200℃以下、なかでも100℃〜200℃の範囲内、特に130℃〜170℃の範囲内であることが好ましい。なお、退色防止層形成用層の硬化温度の下限値としては、100℃程度である。上記温度を下回る場合は、退色防止層形成用層を硬化させること自体が困難となり、退色防止層を形成すること自体が困難となる可能性があるからである。
ここで硬化温度とはDSC(示差走査熱量分析)により得られた、発熱ピークのピークトップ温度のことを指す。
【0123】
(iii)その他
本工程により形成される退色防止層形成用層の厚みとしては、ポストベーク処理工程において、青色着色層形成用層からトリアリールメタン系色材が昇華することを防止することが可能な程度の厚みであれば特に限定されない。
【0124】
(2)硬化工程
本発明における硬化工程は、上記ポストベーク処理工程で上記青色着色層形成用層中から上記トリアリールメタン系色材が昇華する前に上記退色防止層形成用層を硬化させてガスバリア性を有する退色防止層を形成する工程である。
【0125】
上記硬化工程は、退色防止層形成用層形成後から上記ポストベーク処理工程で上記トリアリールメタン系色材が昇華する前までの間の任意のタイミングで行うことが可能である。
【0126】
またここで、本工程における退色防止層形成用層の硬化方法としては、退色防止層用組成物に用いられる樹脂等により適宜選択され、具体的には紫外線等の光を退色防止層形成用層に照射することにより硬化させてもよく、退色防止層形成用層を加熱することにより硬化させてもよい。
【0127】
光照射により退色防止層形成用層を硬化させる場合は、上記硬化工程としては、上記硬化工程を青色着色層形成工程の露光時に同時に行ってもよく、退色防止層形成用層を光硬化させる工程を別途行ってもよいが、青色着色層形成工程の露光時に同時に行うことがより好ましい。本発明のカラーフィルタの製造方法における工程数を少ないものとすることが可能となることから、製造効率を向上させることが可能となる。
【0128】
一方、加熱により退色防止層形成用層を硬化させる場合は、上記硬化工程としては、青色着色層形成工程のポストベーク処理工程と同時に行ってもよく、上記ポストベーク処理工程の前に退色防止層形成用層を加熱硬化させる工程を別途行ってもよいが、青色着色層形成工程のポストベーク処理工程と同時に行うことがより好ましい。本発明のカラーフィルタの製造方法における工程数を少ないものとすることが可能となることから、製造効率を向上させることが可能となる。
【0129】
3.その他の工程
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した青色着色層形成工程、および退色防止層形成工程を有する製造方法であれば特に限定されず、他にも必要な工程を適宜選択して追加することが可能である。このような工程としては、例えば、赤色着色層および緑色着色層等の他の色の着色層を形成する着色層形成工程、遮光部を形成する遮光部形成工程、平坦化層を形成する平坦化層形成工程等を挙げることができる。
【0130】
4.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタについては、上述した「A.カラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0132】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて説明する。
【0133】
合成例で用いている化合物の略称はそれぞれ、括弧内に示す通りである。
メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、メタクリル酸グリシジル(GMA)
【0134】
(合成例1)
重合槽中にMMAを63質量部、AAを12質量部、HEMAを6質量部及びDMDGを88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、AIBNを7質量部加え、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにGMAを7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部及びハイドロキノンを0.2質量部加え、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
【0135】
下記の材料を室温で混合、攪拌してバインダとしての硬化性樹脂組成物とした。
上記共重合樹脂溶液(固形分50%) 16質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製の商品名SR399)
24質量部
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート180S70) 4質量部
2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルホリノプロパン‐1‐オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア907)
4質量部
DMDG 52質量部
【0136】
<青色着色層用樹脂組成物1〜3の調製>
下記の材料を室温で混合、攪拌して青色画素用カラーフィルタ用樹脂組成物1〜3を調製した。なお、下記の青色顔料(PB1)は、トリアリールメタン系色材である。
【0137】
(青色着色層用樹脂組成物1)
青色顔料(PB1) 3質量部
上記硬化性樹脂組成物(バインダ) 11質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 84質量部
高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0138】
(青色着色層用樹脂組成物2)
青色顔料(PB1) 2質量部
青色顔料(PB15:6) 1質量部
上記硬化性樹脂組成物(バインダ) 11質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 84質量部
高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0139】
(青色着色層用樹脂組成物3)
青色顔料(PB15:6) 3質量部
上記硬化性樹脂組成物(バインダ) 11質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 84質量部
高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0140】
(退色防止層用樹脂組成物1)
エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製) 10質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 90質量部
【0141】
(退色防止層用樹脂組成物2)
X-41-1053(信越シリコーン社製) 10質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 90質量部
【0142】
(退色防止層用樹脂組成物3)
上記硬化性樹脂組成物 7質量部
エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製) 3質量部
酢酸‐3‐メトキシブチル(溶剤) 90質量部
【0143】
<評価用青色着色層基板の作製>
[実施例1]
上記調製した青色着色層用樹脂組成物1を、厚さ0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを基板より200μmのギャップを設けて設置し、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、青色着色層用樹脂組成物1の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。170℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることによって、所定のレリーフパターンの青色着色層を有する評価用青色着色層基板を得た。なお、青色着色層の厚みについては、色度座標が下記の表1に示される値となるように調整した。
【0144】
[実施例2]
青色着色層用樹脂組成物2を使用した以外は、実施例1と同様に評価用青色着色層基板を得た。
【0145】
[実施例3]
アルカリ現像後に退色防止層用樹脂組成物1をスピンコーターを用いて塗布し、0.3μmの退色防止層を形成した以外は、実施例1と同様に評価用青色着色層基板を得た。
【0146】
[実施例4]
退色防止層用樹脂組成物2を使用した以外は、実施例3と同様に評価用青色着色層基板を得た。
【0147】
[実施例5]
退色防止層用樹脂組成物3を多層一括コーターを用いて青色着色層用樹脂組成物を一括塗布した以外は、実施例1と同様に評価用青色着色層基板を得た。
【0148】
[比較例1]
青色着色層用樹脂組成物3を使用した以外は、実施例1と同様に評価用青色着色層基板を得た。
【0149】
<評価>
実施例1〜5、および比較例1の青色着色層基板の色度座標、膜厚、パターニング精度について表1に示す。表1中の○は青色着色層を所望の厚み、パターン状に形成することができたことを示し、×は青色着色層の膜厚が厚いことから十分に露光を行うことができず、所望のパターン状に形成することができなかったことを指す。
【0150】
【表1】

【0151】
トリアリールメタン系色材を用いることにより、青色着色層の色濃度を所望の値とした場合も、着色層の膜厚を薄く形成することができた。
【符号の説明】
【0152】
1 … 透明基材
2B … 青色着色層
2B’ … 青色着色層形成用層
2R … 赤色着色層
2G … 緑色着色層
3 … 遮光部
4 … 退色防止層
4’ … 退色防止層形成用層
10 … カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に形成され、トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層と、
を有することを特徴とする近紫外発光素子光源用カラーフィルタ。
【請求項2】
前記青色着色層上にガスバリア性を有する退色防止層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の近紫外発光素子光源用カラーフィルタ。
【請求項3】
トリアリールメタン系色材およびバインダ樹脂を含有する青色着色層用組成物を透明基材上に塗布することにより青色着色層形成用層を形成する青色着色層用組成物塗布工程、前記青色着色層形成用層に露光および現像処理を施すことにより前記青色着色層形成用層をパターニングする露光・現像処理工程、並びにパターニングされた前記青色着色層形成用層にポストベーク処理を施すことにより青色着色層を形成するポストベーク処理工程を有する青色着色層形成工程と、
前記ポストベーク処理工程前に樹脂を含有する退色防止層用組成物を前記青色着色層形成用層上に塗布することにより退色防止層形成用層を形成する退色防止層用組成物塗布工程、および、前記ポストベーク処理工程で前記青色着色層形成用層中の前記トリアリールメタン系色材が昇華する前に前記退色防止層形成用層を硬化させてガスバリア性を有する退色防止層を形成する硬化工程を有する退色防止層形成工程と、
を有することを特徴とする近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記退色防止層用組成物が、前記トリアリールメタン系色材の昇華温度よりも低い温度で硬化するものであることを特徴とする請求項3に記載の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記青色着色層用組成物塗布工程および前記退色防止層用組成物塗布工程では、多層同時塗布法を用いて、前記青色着色層用組成物および前記退色防止層用組成物を一括で塗布することにより前記透明基材上に前記青色着色層形成用層および前記退色防止層形成用層を同時に形成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の近紫外発光素子光源用カラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57871(P2013−57871A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197131(P2011−197131)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】