説明

近赤外吸収剤を含有する粘着剤組成物

十分な近赤外線遮断特性及び透明性を維持し、かつ耐熱性、耐湿熱性に優れた近赤外吸収剤を含有した粘着剤組成物を提供する。(I)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、(II)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外吸収剤を含有する粘着剤組成物に関するものである。特に、本発明は、耐熱性、耐湿熱性に優れた近赤外(NIR)吸収剤を含有する粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面に適用できるPDP(Plasma Display Panel)が注目されている。PDPはプラズマ放電の際に近赤外線光が発生し、この近赤外線が家電用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等の電気機器の誤動作を誘発することが問題となっている。このような問題を解決するために高度な近赤外線遮断性と可視光透過性を有する近赤外線遮断フィルムに関する発明がある(特開2001−133624号公報)。上記特開2001−133624号公報に開示される近赤外線遮断フィルムは、透明樹脂フィルム層と、近赤外線吸収剤を含有する透明近赤外線遮断層と、透明樹脂フィルム層と、該透明近赤外線遮断層の色調を補整する色材を含有する透明色調補整層とを積層して構成される。この際、近赤外線吸収剤としては、920nmを超える波長の光を最も効果的にカットできるという点で、ジイモニウム系化合物が使用されている。
【0003】
一方、ディスプレイなどのパネルに使用するためには、近赤外吸収特性と同時に色調も重要であり、通常数種類の色素を混合して色調を調整する必要がある。しかし、近赤外領域に吸収特性を有する色素の中には他の色素と混在すると特性が変化したり、化学反応等や誘電的相互作用によって近赤外線吸収能が変化するものがある。加えて、パネルの製造では高温での溶融押出や重合反応の工程を含むため、熱的および化学的に安定な近赤外吸収材を使用する必要がある。このような問題に対処するため、例えば、近赤外線吸収能を有する色素と高分子樹脂とを溶剤に均一に混合した溶液からキャスト法、コーティング法、または当該色素と高分子樹脂の混練物の溶融押出し法、または近赤外線吸収能を有する色素とモノマーを均一に混合した混合物を重合または固化する重合法のいずれかによって成膜した近赤外線吸収フィルターが開示されている(特開2002−82219号公報)。上記特開2002−82219号公報に開示される方法は、色素の中には他の色素と混在すると特性が変化したり、化学反応等や誘電的相互作用を有するもの、熱安定性に欠けるものがあるため、これらの特性に応じた成型法で個々にフィルムを製造し、これらのフィルムを積層して目的に応じた近赤外線吸収範囲とするものである。なお、近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系色素、ジイモニウム化合物、ジチオールニッケル錯体、ポリメチン系色素などが例示されている。
【0004】
さらに、800〜1200nmに吸収極大波長を有する近赤外吸収色素(A色素)を1種以上含有し、かつ575〜595nmに吸収極大波長を有し半値幅が40nm以下であるB色素を1種以上含有してなる厚さ1〜50ミクロンの樹脂層を透明基材上に形成した近赤外吸収フィルムも開示されている(特開2002−187229号公報)。800〜1200nmに吸収極大波長を有する近赤外吸収色素としてはフタロシアニン系色素が例示されている。また、ネオン発光の選択吸収性を有する色素、すなわち575〜595nmに吸収極大波長を有し半値幅が40nm以下であるB色素としては、シアニン系色素が例示されている。
【0005】
加えて、近赤外線吸収色素と、波長550〜620nmの領域のみを選択的に吸収する色素とを含有する透明樹脂塗膜を用いる近赤外線吸収材料も開示されている(米国特許出願公開第2002/127395号明細書)。該波長は、画像を不鮮明にするオレンジ光であり、該波長を除去するためである。なお、該公報で使用する近赤外線吸収色素としては、ジチオールニッケル錯体、ジイモニウム化合物があり、オレンジ光(550〜620nm領域)のみを選択的に吸収する色素としては、シアニン色素が例示されている。
【0006】
ディスプレイ用近赤外線遮断フィルターでは、近赤外線の遮断に加えて可視光領域における透過性に優れることも重要な要素である。
【発明の開示】
【0007】
しかしながら、特開2001−133624号公報に開示される近赤外線遮断フィルムに使用されるジイモニウム系化合物は、溶媒中や樹脂中での化学的安定性が悪く色調が変化したり消色したりするという問題があるため、熱安定性、耐湿熱性や耐光性も劣る上、近赤外線吸収剤を含有する透明近赤外線遮断層を透明樹脂フィルム層と同じ層として形成することができず、独立した層として存在させる必要があり、積層数の増加に伴い製造工程数が増え、手間がかかるという問題があった。
【0008】
また、特開2002−82219号公報に記載の近赤外線吸収フィルターで使用される近赤外線吸収剤として使用されるジイモニウム系化合物は、上記したような問題があるのに加え、ジチオールニッケル錯体は、溶媒溶解性が十分でなく樹脂との相溶性に劣る場合があり、可視光領域での透過性が低下し鮮明画像が得られない場合があるという問題がある。加えて、特開2002−82219号公報では、近赤外線吸収樹脂と混合される樹脂として、芳香族ジオール化合物やジカルボン酸を使用しているが、このように水酸基やカルボキシル基が樹脂中に存在すると、これと近赤外線吸収剤が反応して、近赤外線吸収を低下させる場合がある。
【0009】
また、特開2002−187229号公報及び米国特許出願公開第2002/127395号明細書に記載のように、複数の近赤外線吸収剤を併用する場合には、両者の混合によって化学的に反応し、または各近赤外線吸収剤の特性が変化して、十分な近赤外線遮断特性を発揮できず、リモコン等の誤動作を抑制する効果が十分でない場合がある。
【0010】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、十分な近赤外線遮断特性及び透明性を維持し、かつ耐熱性、耐湿熱性に優れた近赤外吸収剤を含有した粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明の他の目的は、近赤外線吸収剤を粘着剤樹脂に混合して粘着層を形成しても、製造された粘着層の近赤外線遮断特性及び透明性を維持できる粘着剤組成物を提供することである。
【0012】
特開2004−309655号公報において、少なくとも800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニンと920nmを超える領域に最大吸収波長を有するフタロシアニンとは、溶媒中や樹脂中での化学的安定性に優れているため、高Tgバインダーや接着剤中に添加して使用する場合、従来使用されてきたジイモニウム系色素を使用する場合に比べて、色調が変化したり消色したりするという問題が起きにくいことが考えられる。
【0013】
そこで、本発明者らは、上記目的を達成するためにこれらのフタロシアニン化合物に注目してさらに鋭意検討を行なった結果、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物は、特定の値以下の酸価を有する粘着剤樹脂中に混合した場合には、その安定性が向上することを見出した。このため、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物と(II)最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物とをこのような粘着剤樹脂に分散して得た粘着剤組成物は、高い安定性を有し、かつキセノン発光に由来する800〜1200nmの近赤外線波長の光を有効にカットでき、長期にわたって電気機器の誤動作を有効に抑止できることを見出した。このような粘着剤組成物は、光学フィルターやプラズマディスプレイ(特に、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルター)の製造に好適に使用できることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、(I)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上;(II)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上;ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物によって達成できる。
【0015】
本発明の近赤外吸収剤を含有する粘着剤組成物は、(I)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、(II)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂を含有することを特徴とするものである。本発明によると、特定の酸価以下に抑制した粘着剤樹脂を使用しているので、(II)の安定性を向上できる。このため、(I)及び(II)をこのような粘着剤樹脂に分散して得た粘着剤組成物は、高い安定性を有し、色調が変化したり消色したりしにくいという利点がある。上記利点に加えて、本発明の(I)及び(II)をこのような粘着剤樹脂に分散して得た粘着剤組成物は、キセノン発光に由来する800〜1200nmの近赤外線波長の光を有効にカットでき、長期にわたって電気機器の誤動作を有効に抑止できる。したがって、本発明の粘着剤組成物を用いて製造された光学フィルターやプラズマディスプレイ(特に、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルター)は、可視領域の透明性が高く、ディスプレイの外観が向上し、また、安定性に優れるため、プラズマディスプレイ周辺のリモコンの誤動作が起きにくく、ディスプレイの外観も変化しにくくすることができる。
【0016】
さらに、粘着層と近赤外線遮断層とを一の層として製造できるため、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルターの製造工程が簡略化できる。
【0017】
本発明の他の目的、特性、及び利点は、下記説明中に例示された好ましい実施の形態を参照することによって、明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第一実施形態は、(I)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の少なくとも1種以上、(II)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の少なくとも1種以上、ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物に関するものである。従来からフタロシアニン系化合物を高分子樹脂と混合することについては報告がされていたが、樹脂について詳細な検討がなされているものはあまり知られていなかったため、高分子樹脂、特に粘着剤用の樹脂と、フタロシアニン系化合物とを混合して粘着層を形成すると、安定性が低下してしまうことがしばしばであり、粘着層と近赤外線遮断層を独立した2層として形成せざるをえなかった。本発明では、粘着層と近赤外線遮断層とを単一の層にすることを目的として、上記フタロシアニンの近赤外線遮蔽性、熱安定性(耐熱性)、耐湿熱性や耐光性などの諸性質を低下させることのない粘着剤樹脂としては、酸価が25以下の粘着剤樹脂が特に好適に使用できることが判明した。すなわち、酸価が25以下の粘着剤樹脂中での(II)の安定性が向上でき、これを粘着剤組成物を用いた単層タイプの光学フィルターやプラズマディスプレイは、色調が変化したり消色したりにくいことが判明した。また、(I)及び(II)を併用することによって、キセノン発光に由来する800〜1200nmの近赤外線波長の光を有効にカットでき、長期にわたって電気機器の誤動作を有効に抑止できることをも判明した。このため、(I)及び(II)ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂からなる粘着剤組成物は、粘着層と近赤外線遮断層との機能を併せ持つ単層を形成するのに非常に有用であり、ゆえに、光学フィルターやプラズマディスプレイ(特に、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルター)の製造に好適に使用できる。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)フタロシアニン系化合物/ナフタロシアニン系化合物
本発明においては近赤外吸収剤として、(I)最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、ならびに(II)最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上を用いる。(I)及び(II)としては、800〜920nm及び920nmを超える領域に最大吸収波長を有するものであれば、いずれの化合物も用いることができる。
【0020】
(I)及び(II)として使用されるフタロシアニン系化合物としては下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
式(1)中のA〜A16は官能基を表し、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキル基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリール基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルスルホニル基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールスルホニル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルスルホニル基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアシル基(アシル基とは科学技術用語大辞典、第三版、日刊工業新聞社、P17記載を指す)、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基、総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニルオキシ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A〜A16の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。
【0023】
(アミノ基、アミノスルホニル基、アミノカルボニル基以外の官能基の場合)
式(1)中の官能基A〜A16としてハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニル基としては、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニル基としては、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
式(1)中の官能基A〜A16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0025】
(アミノ基、アミノスルホニル基、アミノカルボニル基の場合)
式(1)中の官能基A〜A16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0026】
上記の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0027】
また、式(1)中のMの、2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Clなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}、Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR、{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、(I)及び(II)として使用されるナフタロシアニン系化合物としては下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
式(2)中のB〜B24は官能基を表し、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキル基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリール基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルスルホニル基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールスルホニル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルスルホニル基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアシル基(アシル基とは科学技術用語大辞典、第三版、日刊工業新聞社、P17記載を指す)、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基、総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニルオキシ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。B〜B24の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。
【0031】
(アミノ基、アミノスルホニル基、アミノカルボニル基以外の官能基の場合)
式(2)中の官能基B〜B24としてハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニル基としては、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニル基としては、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数8〜20個の置換されていてもよいアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
式(2)中の官能基B〜B24のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0033】
(アミノ基、アミノスルホニル基、アミノカルボニル基の場合)
式(2)中の官能基B〜B24の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0034】
上記の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0035】
また、式(2)中のMの、2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Clなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}、Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR、{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
さらに、本発明でより好ましく使用される(I)は、下記式(3)で表されるフタロシアニン系化合物である。
【0037】
【化3】

【0038】
式(3)中Z〜Z16は官能基を表し、各々独立して、ハロゲン原子、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基を表す。Z〜Z16の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。より好ましくは、式(3)中、Z〜Z16の官能基のうち少なくとも4個は、各々独立して、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基であり、かつ少なくとも1個は、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基である。また、これらの置換基は同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。
【0039】
3は2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。M3が2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属の場合、上記式(1)中に記載した例が挙げられる。
【0040】
また、式(3)中のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0041】
式(3)中の置換されていてもよいアミノ基の置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0042】
上記の置換されていてもよいアミノ基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0043】
さらに、本発明でより好ましく使用される他の(I)は、下記式(4)で表されるナフタロシアニン系化合物である。
【0044】
【化4】

【0045】
式(4)中Y〜Y24は官能基を表し、各々独立して、ハロゲン原子、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基を表す。Y〜Y24の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。M4が金属の場合、上記式(2)中に記載した例が挙げられる。
【0046】
また、式(4)中のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0047】
式(4)中の置換されていてもよいアミノ基の置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらアミノ基の置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらアミノ基の置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0048】
上記の置換されていてもよいアミノ基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0049】
本発明では、該(I)として、800nm以上850nm未満に最大吸収波長を有するフタロシアニンを1種以上と、850〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン1種以上とを併用すると、得られる近赤外吸収フィルターの可視光透過率が高くなり、また効率よく近赤外光をカットできる点で有利である。
【0050】
上記(I)の中で、800nm以上920nm未満に最大吸収波長を有するものを以下に例示する。なお、下記の化合物の略称において、Phはフェニル基を示し、Pcはフタロシアニン核を表わし、Pcのすぐ前にMを表わし、Pcのすぐ後にフタロシアニン核のβ位(Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、Z15の置換位置)に置換する8個の置換基を表わし、そのβ位に置換する置換基の後にフタロシアニン核のα位(Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13、Z16の置換位置)に置換する8個の置換基を表わす。800nm以上850nm未満に最大吸収波長を有するものには、CuPc(2,5−C1PhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)(λmax807nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax835nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){PhCHNH}F(λmax840nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax828nm)、VOPc(2,6−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax835nm)、VOPc(4−CNPhO)(2,6−Br−4−CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax836nm)、VOPc(4−CNPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(λmax834nm)がある。
【0051】
また、850〜920nmに最大吸収波長を有するものには、例えばVOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)(λmax870nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)(λmax916nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){(CNCHCHNH}(λmax893nm)がある。
【0052】
上記(I)の具体例としては、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14及びTX−EX−906B(いずれも日本触媒社製)が挙げられる。
【0053】
上記(I)は、フタロシアニン(I)として1種の化合物を単独で用いることもできるし、フタロシアニン系化合物及び/またはナフタロシアニン系化合物のうちの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
本発明でより好ましく使用される920nmから1100nmの領域に最大吸収波長を有する(II)は、下記式(5)で表されるフタロシアニン誘導体である。
【0055】
【化5】

【0056】
式(5)中W〜W16は官能基を表し、各々独立して、ハロゲン原子、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基を表す。W〜W16の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。より好ましくは、式(5)中、W〜W16の官能基のうち少なくとも4個は、各々独立して、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基であり、かつ少なくとも4個は、各々独立して、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基である。これらの置換基は同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。
【0057】
5は2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。M5が2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属の場合、上記式(1)中に記載した例が挙げられる。
【0058】
また、式(5)中のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0059】
式(5)中の置換されていてもよいアミノ基の置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらアミノ基の置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらアミノ基の置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0060】
上記の置換されていてもよいアミノ基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0061】
さらに、本発明でより好ましく使用される920nmから1100nmの領域に最大吸収波長を有する(II)は、下記式(6)で表されるナフタロシアニン系化合物である。
【0062】
【化6】

【0063】
式(6)中X〜X24は官能基を表し、各々独立して、ハロゲン原子、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルコキシ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールオキシ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルオキシ基、総炭素原子数1〜20個の置換されていてもよいアルキルチオ基、総炭素原子数6〜20個の置換されていてもよいアリールチオ基、総炭素原子数7〜20個の置換されていてもよいアラルキルチオ基、総炭素原子数2〜20個の置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基を表す。X〜X24の官能基は同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良く、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。Mが金属の場合、上記式(1)中に記載した例が挙げられる。
【0064】
また、式(6)中のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0065】
式(6)中の置換されていてもよいアミノ基の置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらアミノ基の置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらアミノ基の置換基は存在しなくとも、あるいは、1個または2個存在していても良く、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0066】
上記の置換されていてもよいアミノ基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していても良く、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良く、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0067】
本発明では、該(II)として、920nmを超え950nm未満に最大吸収波長を有する1種以上と、950〜1100nmに最大吸収波長を有する1種以上と、を用いると、得られる近赤外吸収フィルターの可視光透過率が高くなり、また効率よく近赤外光をカットできる点で有利である。
【0068】
上記(II)の中で、920nmを越え1100nm未満に最大吸収波長を有するものを以下に例示する。なお、下記の化合物の略称において、Phはフェニル基を示し、Pcはフタロシアニン核を表わし、Pcのすぐ前にM5を表わし、Pcのすぐ後にフタロシアニン核のβ位(W、W、W、W、W10、W11、W14、W15の置換位置)に置換する8個の置換基を表わし、そのβ位に置換する置換基の後にフタロシアニン核のα位(W、W、W、W、W、W12、W13、W16の置換位置)に置換する8個の置換基を表わす。
【0069】
920nmを超え950nm未満に最大吸収波長を有するものには、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{(CNCHCHNH}(λmax941nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}[{CH(CHCH}NCHCHNH](λmax944nm)、
【0070】
【化7】

【0071】
【化8】

【0072】
hO}{(CHCHO(CHNH))(λmax928nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{(CH2CHO(CHNH}(λmax930nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHO(CHNH}(λmax930nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHO(CHNH}(λmax933nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHNH}(λmax930nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}(λmax939nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHNH}(λmax931nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CH17NH})(λmax935nm)がある。
【0073】
また、950〜1100nmに最大吸収波長を有するものには、VOPc{4−(CHO)PhS}{2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}(λmax968nm)、VOPc{2−(CHO)PhS}{2,6−(CHPhO}{(CNCHCHNH})(λmax950nm)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}[{(CHCH}NCHCHNH](λmax952nm)、VOPc(2,5−ClPhO)(PhCHNH)(λmax1020nm)がある。
【0074】
このような(II)の具体例としては、TX−EX−910B及びTX−EX−902K(いずれも日本触媒社製)が好ましく挙げられる。
【0075】
上記(II)は、フタロシアニン(II)として1種の化合物を単独で用いることもできるし、フタロシアニン系化合物及び/またはナフタロシアニン系化合物のうちの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0076】
本発明において、(I)及び(II)の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、特開平2004−309655号公報に記載の方法などの公知の方法によって製造できる。
【0077】
本発明の近赤外吸収フィルターにおいて使用することのできる920nmを超える領域に最大吸収波長を有する(II)としては、透過スペクトルの測定において、920nmを超える近赤外領域、より好ましくは920〜1100nmの透過率の最低値が5〜6%になるように該フタロシアニンの濃度を調整した溶液中において、可視光透過率が65%以上、好ましくは70%以上を示し得るものである。
【0078】
上記(I)及び(II)の粘着剤樹脂への配合量は、所望の性質、特に効率のよい近赤外線カット能、可視光領域における優れた透明性、耐熱性及び耐湿熱性が達成できる量であれば特に制限されないが、乾燥膜厚を10〜30μmに設定する場合には、粘着剤樹脂固形分100重量部に対して、0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜8重量部、最も好ましくは1〜5重量部となるような量である。この際、(I)及び(II)の配合量が0.1重量部未満であると、フタロシアニンの配合が不十分であり、優れた近赤外線カット能が得られず、逆に、配合量が10重量部を超えても、フタロシアニンの添加に見合う上記性能の向上が認められず、経済的でなく、可視領域の透明性が失われる可能性がある。なお、上記(I)及び(II)の配合量は、目的とする近赤外吸収フィルターの可視および近赤外域の透過率の設定および該近赤外吸収フィルターの厚みによって変えることができる。また、近赤外吸収フィルターの形状には格別の制約はなく、最も一般的な平板状やフィルム状のほか波板状、球面状、ドーム状など、様々な形状のものが含有される。波板等の異形のものは上方からの投影面積中の重量と考えればよい。また、外観上問題がない限りフタロシアニンの濃度の分布にむらがあってもかまわない。
【0079】
また、(I)及び(II)の配合比は、所望の近赤外線吸収能及び透明性が発揮できる割合であれば特に制限されないが、(I)及び(II)の配合比(重量比)は、好ましくは2〜8:8〜2、より好ましくは3〜7:7〜3、最も好ましくは4〜6:6〜4である。
【0080】
(2)粘着剤樹脂
本発明で使用される粘着剤樹脂は、酸価が25以下であることを必須とする。このような樹脂に、上述した(I)及び(II)を配合して粘着層を形成することによって、粘着剤樹脂の酸基と(II)との反応を有意に抑制できるため、形成される粘着層は、優れた安定性を示すため、近赤外線を効率よく吸収し、可視光領域における透過性に優れる。さらに、粘着剤樹脂を組み合わせて粘着層を形成することによって、従来必要であった近赤外線遮断層を別途形成する必要がなくなり、近赤外吸収フィルターの製造工程を有意に簡略化することが可能になる。このため、これらを使用した粘着剤組成物は、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用近赤外線遮断フィルターの製造に特に好適に使用できる。
【0081】
本発明において、粘着剤樹脂の酸価は、25以下である。酸価が当該範囲に入る場合には、上記粘着剤樹脂中に含有される近赤外線吸収剤として使用される(II)の粘着剤樹脂中での安定性が高いため、より安定に優れた近赤外線吸収や透明性の機能を発揮するができるからである。また、粘着剤樹脂の酸価は、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10、最も好ましくは0である。本明細書において、「酸価」とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg量をいう。
【0082】
また、本発明で使用される粘着剤樹脂は、10以下の水酸基価を有することが好ましく、より好ましくは、粘着剤樹脂の水酸基価は、0〜10、さらにより好ましくは0〜5、最も好ましくは0〜2である。
【0083】
本実施態様に用いられる、上述したような性質を有する材料として、具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタンエステル系樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエ−テルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマ−(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエ−テルとヘキサフルオロプロピレンコポリマ−(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマ−(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマ−(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0084】
本発明において特に好ましく使用される(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として用いて重合された、粘着剤の原料として用いられる、酸価が25以下の(メタ)アクリル系重合体をいう。この際、(メタ)アクリル系樹脂は、酸価が25以下であることが必須であるため、(メタ)アクリル酸は、単量体として使用されないことが特に好ましい。(メタ)アクリル系重合体は、1種の(メタ)アクリル酸エステルのみをまたは2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体として用いて重合されてもよく、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸エステルに共重合可能な化合物(以下、「共重合可能な化合物」とも記載)を単量体として用いて重合されてもよい。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」は、架橋剤によって架橋されていない重合体および架橋剤によって架橋された重合体の双方を意味するが、好ましくは少なくとも一部が架橋された構造を有する。
【0085】
本発明において、単量体として用いられる(メタ)アクリル酸エステルの具体的としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートおよびその置換体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)付加物(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド(PO)付加物(メタ)アクリレート等の、アルコールのオキシアルキレン付加物の(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、シクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、これらの化合物以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。上記(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0086】
必要に応じて単量体として用いられる共重合可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和結合を有する化合物とは、エチレン(CH=CH)の水素原子が、置換された化合物を意味する。(メタ)アクリル酸エステルに共重合可能であり、本発明の効果を妨げないのであれば、他の化合物を単量体として用いてもよい。共重合可能な化合物の他の例としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体;ビニルエーテル系単量体が挙げられる。また、本発明においては、製造される粘着剤樹脂の酸価が25を超えない範囲で、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を含有する単量体を共重合可能な化合物として使用してもよい。
【0087】
上記単量体のうち、本発明で好ましく使用される単量体としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。また、本発明では、上記単量体のうち、少なくとも高いガラス転移温度(Tg)を有するモノマー(以下、「高Tgモノマー」とも称する)をモノマー成分として用いて重合を行ない、本発明による(メタ)アクリル系樹脂を製造することが好ましい。このようにTgの高いモノマーを用いて重合することにより得られた粘着層は、粘着特性に優れ、耐熱性が向上するからである。この際、高TgモノマーのTgは、より好ましくは50〜150℃、最も好ましくは60〜100℃である。この際、高Tgモノマーは、脂環式モノマーであることが好ましい。脂環式モノマーを用いることによって、従来の(メタ)アクリル樹脂に比べて、耐候性や熱分解温度の上昇による耐熱性の向上が達成できるからである。この際好ましく使用できる脂環式モノマーの例としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル系の脂環式モノマー、特にシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
本発明では、単量体の重合/共重合によって(メタ)アクリル系樹脂が合成されるが、(メタ)アクリル系樹脂の重合方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。使用する単量体や作業環境に応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などから、適切な重合方法を選択すればよい。好ましくは、溶液重合が用いられる。溶液重合を採用すれば、重合時の重合熱の除去が容易であり、重合反応の作業性に優れるからである。
【0089】
溶液重合の際に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。ただし、重合反応を阻害しなければ、他の化合物を用いてもよく、これらに特に限定されない。上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合溶媒の形態でしようされてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されるものではない。なお、溶媒の使用量は、単量体の種類や量に応じて、適宜決定すればよい。
【0090】
さらに、重合反応に用いられる重合開始剤も、特に限定されない。重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド、商品名「ナイパーBMT−K40」(日本油脂株式会社製;m−トルオイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドの混合物)等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、商品名「ABN−E」[日本ヒドラジン工業株式会社製;2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)]等のアゾ系化合物など、公知のラジカル重合開始剤が使用されうる。場合によっては、2種以上の重合開始剤を併用してもよい。
【0091】
重合開始剤量の使用量は、単量体の総重量に対して、好ましくは0.01〜1重量%である。重合開始剤の使用量が多すぎると、粘着性に優れた高分子量の(メタ)アクリル系樹脂が得られない恐れがある。
【0092】
重合温度や重合時間等の重合条件は、単量体の種類、重合溶媒の種類、重合開始剤の種類、得られる(メタ)アクリル系樹脂に求める特性、粘着剤の用途等に応じて適宜設定すればよい。反応圧力も、特に限定されるものではなく、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。なお、重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが望ましい。
【0093】
上記したようにして得られる(メタ)アクリル系樹脂の組成については、特に限定はないが、(メタ)アクリル系樹脂中に含まれる(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の総重量が、(メタ)アクリル系樹脂の重量に対して、好ましくは70〜99.9重量%である。(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の総重量がこの範囲であると、十分な粘着特性を発現する。
【0094】
また、十分な粘着性を有する(メタ)アクリル系樹脂を得るためには、使用される(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が、好ましくは200,000以上であり、より好ましくは300,000以上である。使用される(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量の上限は特に限定されない。合成の困難性を考慮すると、使用される(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が、好ましくは2,000,000以下であり、より好ましくは1,000,000以下である。
【0095】
本発明では、粘着剤樹脂、特に(メタ)アクリル系樹脂は、架橋剤を用いて架橋されると、粘着剤としての十分な機能が引き出されるため好ましい。ただし、粘着剤組成物の段階では、(メタ)アクリル系樹脂は、架橋剤によって架橋されていなくてもあるいは架橋剤によって既に架橋された形態であってもよい。このため、本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。架橋剤を含んでいない粘着剤組成物を用いて粘着剤を製造する場合には、組成物に粘着剤を配合し、用途に応じた形態に成形したのち、(メタ)アクリル系樹脂を架橋すればよい。
【0096】
この際、使用できる架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、トランスビニレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物;多価アルコール系、フェノール系、酸アミド系、酸イミド系、ケトンのオキシム系、アルデヒドのオキシム系、ラクトン系、ラクタム系等のブロック化剤で保護したブロックイソシアネート化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタンアセチルアセトネート、アンモニウムチタンラクテート、炭酸ジルコニールアンモニウム等の多価金属のキレート化合物;ポリグリシジルエーテル系、ポリグリシジルアミン系、ポリグリシジルエステル類、ヒダントイン系、トリグリシジルイソシアヌレート系、ビスフェノール系等のエポキシ化合物;ポリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン等のメラミン化合物等が挙げられる。ただし、例示した以外の化合物も、架橋剤として用いられうる。また、上記架橋剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0097】
本発明において、粘着剤組成物が架橋剤を含む場合の、架橋剤の使用量は、粘着剤樹脂(好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂)100重量部に対して、好ましくは0〜4重量部、より好ましくは0〜2.5重量部である。架橋剤の使用量が上記範囲から外れると、十分な粘着性能が発揮されない恐れがある。
【0098】
また、本発明で使用される他の好ましい粘着剤樹脂としては、50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分と0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分とを同一分子内に有する重合体(以下重合体(A)とする)が挙げられる。重合体(A)のように、2つ以上の異なるガラス転移温度を有する重合体部分を有する重合体は、ミクロ相分離構造を取ることが一般に知られており、高いガラス転移温度を有する重合体部分が不連続相(ミクロドメイン)を形成し、擬似架橋構造を取るために、架橋剤等による架橋を施さなくとも高い凝集力を有する。一方、低いガラス転移温度を有する重合体部分は連続相を形成し粘着性を発現する。よって、重合体(A)を粘着剤樹脂として使用すると、優れた粘着性を維持しつつ、架橋剤を用いなくとも高い凝集力を有し、しかも粘着組成物の耐熱性、耐湿熱性が向上するため、好ましい。
【0099】
上記重合体(A)としては、同一分子内に、50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分と、0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分とを有する構造をもつようなものであればよい。そのような重合体としては、例えばブロック重合体またはグラフト重合体が挙げられる。
【0100】
上記ブロック重合体もしくはグラフト重合体の製造方法の例としては、有機金属化合物を開始剤としてイオン重合を行うもの(3M、特開昭60−8379号)、イニファーターを用いてラジカル重合を行うもの(大阪市立大学、大津、「ABおよびABA型ブロックコポリマーの均一合成におけるリビングモノおよびバイラジカル重合」、Polymer Bulletin、11,135−142(1984)、多価メルカプタンを用いラジカル重合を行うもの(特許第2842782号、特許第3385177号など)、マクロモノマーを用いてラジカル重合を行うもの(特開平2−167380号)などが挙げられる。これらのうちでも、多価メルカプタンを用いラジカル重合により製造する方法が、より安価にブロック重合体を合成できるため好ましい。
【0101】
上記重合体(A)に用いられる重合性モノマーは、ラジカル重合により単独重合体あるいは共重合体を生成するものであれば、いずれのモノマーも使用可能である。
【0102】
そのようなモノマーの具体例としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、メトキシエチル(メタ)アクリレ−ト、エトキシエチル(メタ)アクリレ−ト、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレ−ト、などに代表される(メタ)アクリレ−ト類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどに代表されるマレイミド系単量体;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テルなどに代表されるビニルエ−テル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾ−ルなどを挙げることができ、いずれかを単独で、または、2種類以上を合わせて使用することができる。
【0103】
また、第1段階の50℃以上のガラス転移点を有する第1の重合体部分として、マクロモノマーを使用することも可能である。マクロモノマーとしては、50℃以上のガラス転移温度を有し、かつ、片末端に重合性二重結合を有する重合体であればよい。そのようなマクロモノマーの例としては、ポリメチルメタクリレート(AA−6、東亞合成社製)、ポリスチレン(AS−6、東亞合成社製)、ポリ(アクリロニトリルースチレン)(AN−6、東亞合成社製)などが挙げられる。
【0104】
50℃以上のガラス転移温度を有する重合体部分と0℃未満のガラス転移温度を有する重合体部分で使用されるモノマーは、下記式で表わされるFoxの式を用いて計算されたガラス転移温度が所定の値を満足していれば特に限定されない。
【0105】
【数1】

【0106】
50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分は、重合体(A)の凝集力を高める働きから設計されるため、よりガラス転移温度が高いほど良く、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
【0107】
0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分は、重合体(A)の粘着性を付与する働きから設計されるため、よりガラス転移温度が低いほど良く、好ましくは−10℃未満、より好ましくは−20℃未満、さらに好ましくは−30℃未満である。
【0108】
第1重合体部分と第2重合体部分の重量比(固形分重量比)は、3/97〜50/50である。第1重合体部分が3重量%未満であると凝集力向上の効果が得られない恐れがあり、50重量%を超えると粘着性が不足する恐れがある。
【0109】
なお、重合体(A)を本発明の樹脂組成物に用いた場合、プラズマディスプレイ用光学フィルターは、400nm〜800nmのいわゆる可視光領域での透過率が高いことが望ましい。
【0110】
重合体(A)はミクロ相分離構造を有しているため、通常のランダム共重合体と比較すると透過率が低くなる傾向がある。ただし、高Tg重合体部分と低Tg重合体部分の組成や重量比、さらに合成方法を最適化することにより透過率の改善が可能となる。400nm〜800nmの平均透過率としては50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0111】
以下に重合体(A)を得るために好ましい製造方法の一つを説明する。重合体(A)は、多価メルカプタン存在下による多段階重合工程によって得られ、該多段階重合工程における少なくとも第1段階と第2段階の重合工程において、互いに組成の異なる単量体成分を用いて行う多段階重合工程を行う事により得ることが好ましい。
【0112】
つまり、多価メルカプタンの存在下で、各段階で種類の異なる重合性モノマ−を使用するラジカル重合を複数段階行うことにより得られる星型ブロック重合体である事は好ましい製造形態の一つである。
【0113】
製造の手順としては、多価メルカプタン存在下に、第1段階として、50℃以上のガラス転移点を有する重合体部分を形成する第1重合性単量体成分のラジカル重合を行い、重合率が50%以上、好ましくは60%以上になってから、第2段階として、0℃未満のガラス転移点を有する重合体部分を形成する第2重合性単量体成分を加えて重合することにより、50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分と0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分とを、同一分子内に有する重合体を得ることができる。先に行うラジカル重合の重合率を50%以上とするのは、重合後残存している重合性単量体を除去せずに次の重合を行ったとしても、第2重合体部分を形成する重合体の性質をできるだけ異なるようにするためである。そのために第1の重合後、重合性単量体を揮発除去することも可能である。
【0114】
第1段階として、第1重合性単量体のラジカル重合を重合率70%で停止した後、引き続いて第2重合性単量体成分を加えてラジカル重合を行った場合、この第2段階で生成する重合体部分は、第1段階の重合において反応していない30%の単量体と第2重合体成分として加えられる単量体との共重合体となる。
【0115】
上記多価メルカプタンとしては、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、1,4−ブタンジオールジチオプロピオネートなどのジオールとカルボキシル基含有メルカプタン類とのジエステル;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネートなどのトリオールとカルボキシル基含有メルカプタン類とのトリエステル;ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどの水酸基を4個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類とのポリエステル;ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネートなどの水酸基を6個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類とのポリエステル;その他水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類とのポリエステル化合物;トリチオグリセリンなどのメルカプト基を3個以上有する化合物;2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンなどのトリアジン多価チオール類;多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて複数のメルカプト基を導入してなる化合物;多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなるエステル化合物;を挙げることができ、それらのいずれかを単独で、または2以上併せて使用することができる。ここで、カルボキシル基含有メルカプタン類とは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸など、1個のメルカプト基と1個のカルボキシ基を有する化合物である。
【0116】
星型ブロック重合体の重合方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。使用
する単量体や作業環境に応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などから、適切な重合方法を選択すればよい。好ましくは、溶液重合が用いられる
溶液重合の際に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0117】
さらに、重合反応に用いられる重合開始剤も、特に限定されない。重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド、商品名「ナイパーBMT−K40」(日本油脂株式会社製;m−トルオイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドの混合物)等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、商品名「ABN−E」[日本ヒドラジン工業株式会社製;2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)]等のアゾ系化合物など、公知のラジカル重合開始剤が使用されうる。場合によっては、2種以上の重合開始剤を併用してもよい。
【0118】
重合開始剤量の使用量は、重量比で好ましくは多価メルカプタンの1/3以下、より好ましくは1/5以下である。前記比率よりも多量に使用すると、ブロック重合体を与える多価メルカプタンから伸びた重合体部分以外に、重合開始剤から伸びた重合体が多量に生成し、ブロック重合体の生成効率が低下してしまい、また得られた重合体の凝集力が低下してしまう。
【0119】
重合温度や重合時間等の重合条件は、単量体の種類、重合溶媒の種類、重合開始剤の種類、星型ブロック重合体に求める特性、粘着剤の用途等に応じて適宜設定すればよい。反応圧力も、特に限定されるものではなく、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0120】
本発明による粘着剤樹脂は、そのまま使用されてもよいが、有機溶媒に溶解されることが好ましく、この際使用できる溶媒としては、粘着剤樹脂を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶媒が用いられうる。具体的には、トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル等の炭化水素類が挙げられるが、重合反応を阻害するものでなければ特に上記に限定されず、他の溶媒もまた使用できる。これらのうち、酢酸エチル、トルエンが好ましい。この際、上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、この際の粘着剤樹脂の固形分濃度もまた、特に制限されないが、好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜60%である。この際、固形分濃度が20%未満であると、乾燥に時間がかかりすぎて経済的でない可能性があり、逆に60%を超えると、粘度が高くなりすぎて塗工性が損なわれる可能性がある。
【0121】
本発明の粘着剤組成物中には、粘着付与剤が含まれてもよい。本発明において、粘着付与剤とは、樹脂とブレンドされることによって、粘着剤の粘着力を向上せしめる添加物を意味する。
【0122】
粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂など、各種公知の粘着付与剤が用いられうる。これらの粘着付与剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらの粘着付与剤の中では、好ましくは、一般に安価である、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、または石油樹脂が用いられる。また、これらの樹脂は、着色が強いことが多く、蛍光増白剤を配合する意義が大きい。ただし、用いられる粘着付与剤がこれらに限定されるわけではなく、他の粘着付与剤も配合されうる。
【0123】
ロジン系樹脂とは、松の木から採取されるガムロジン、松の切り株をチップにした後、石油系溶剤で抽出して得られるウッドロジン、クラフトパルプ製造時の蒸解廃液から得られるトール油ロジンなどのロジン、およびこれらの誘導体を意味する。ロジンは、C1929COOHの一般式で示される数種の異性体と、少量の中性成分から構成され、組成は原木の種類、産地、およびロジンの精製工程によって異なる。主成分は、通常、アビエチン酸である。ロジンの誘導体とは、酸化に対する安定性を改良するために、水添、不均化、または二量化などの改変が施されたロジンを意味する。ロジン誘導体としては、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどが挙げられる。ロジン誘導体は、ロジンをもとに合成されうる。商品名「ハイペール」(荒川化学工業株式会社製)、商品名「Poly−pale」(ハーキュレス社製)などの市販のロジン誘導体を用いてもよい。
【0124】
テルペン系樹脂とは、松の木からロジンを得る際に得られるテレピン油を原料とした樹脂である。テレピン油には、ガムテレピン油、ウッドテレピン油、サルフェートテレピン油などがある。組成は原木の種類、産地、およびテルペン系樹脂の精製工程によって異なる。テルペン系樹脂の主成分は、通常、α−ピネンである。他成分として、β−ピネン、カンフェン、ジペンテンなども含まれうる。テルペン系樹脂の具体例としては、テルペン、テルペンフェノール、ロジンフェノール、芳香族変成テルペン、水素化テルペンなどが挙げられる。その他にも、各種公知のテルペン系樹脂が用いられうる。テルペン系樹脂は合成されてもよく、商品名「タマノル803」(荒川化学工業株式会社製)、商品名「Zonatac」(アリゾナケミカル社製)などの市販のロジン誘導体を用いてもよい。
【0125】
石油樹脂とは、石油ナフサなどの熱分解によって副生する不飽和炭化水素を含む留分をカチオン重合したものを意味する。石油樹脂は、構成モノマーの種類や分子構造によって、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂などに大別される。脂肪族系石油樹脂は、ナフサ分解油のうち沸点が20〜80℃の留分を、塩化アルミニウムなどを触媒としてカチオン重合して得られる樹脂を意味する。芳香族系石油樹脂は、ナフサ分解油のスチレン類やインデン類を含むC9留分を、塩化アルミニウムやBF3触媒などでカチオン重合したものを意味する。共重合系石油樹脂は、C5留分とC9留分とを適当な割合に混合して、カチオン重合した樹脂を意味する。
【0126】
本発明の粘着剤組成物中に含まれる粘着付与剤の量は、粘着剤樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜50重量部である。粘着付与剤の含有量が少なすぎると、粘着付与剤による粘着力向上効果が発揮されない恐れがある。逆に、粘着付与剤の含有量が多すぎると、タックが減少して粘着力が低下するおそれがある。
【0127】
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、UVA(紫外線吸収剤)、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)、紫外線安定剤等の従来公知の添加剤が添加されうる。これらのうち、本発明の組成物をPDPなどのパネル用途に使用する場合には、UVA(紫外線吸収剤)、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)が好ましく使用される。UVA(紫外線吸収剤)としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤が使用できる。また、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)としても、特に制限されず、公知のヒンダードアミン光安定剤が使用できる。また、これらの添加剤の添加量は、所望する物性が得られるように適宜設定されるが、例えば、UVAを使用する場合の添加量は、粘着剤組成物の全重量に対して、0.1〜100重量%、より好ましくは2〜20重量%である。また、例えば、HALSを使用する場合の添加量は、粘着剤組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0128】
本発明の粘着剤組成物は、上記したように、(I)及び(II)、ならびに特定の粘着剤樹脂を必須の成分をして含むが、このような組成により、粘着層と近赤外線遮断層とを単一の層にしても、近赤外線遮断性や透明性の低下は認められず、また、得られる粘着層は、優れた熱安定性(耐熱性)、耐湿熱性や耐光性などの諸性質を発揮できる。したがって、本発明の粘着剤組成物は、近赤外線吸収材、光学フィルターやプラズマディスプレイ(特に、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルター)の製造に好適に使用できる。なお、本発明の粘着剤組成物は、上記用途以外にも、光学用、農業用、建築用、車両用、画像記録用などのフィルムやシート、冷凍・冷蔵ショーケース、色素増感型太陽電池など太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料、光ディスク用などの情報記録材料、眼精疲労防止材、感光紙などの光熱変換材、接着材などとして使用でき、特に、光学用、画像記録用などのフィルムやシート、光ディスク用などの情報記録材料、感光紙などの光熱変換材、粘接着材としての使用が好ましい。
【0129】
(3)近赤外線吸収材
本発明の近赤外線吸収材は、透明基材上に前記粘着剤組成物を含む層を積層したものである。
【0130】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としては、ガラス、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー、ポリ酢酸ビニルやポリハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。更に、該透明基材は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。また、上記基材樹脂は、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができ、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶解させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基板を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0131】
近赤外線吸収材をフィルムとして使用する場合の透明基材としては、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムが好ましく、PETフィルムがより好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが特に好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。
【0132】
また、透明基材として、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルなどの機能性フィルムを使用すると簡便にプラズマディスプレイ用光学フィルターを作製することができる。フィルムを使用することが好ましい。
【0133】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは一般に10μm〜10mm程度であるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0134】
本発明の粘着剤組成物を用いた粘着層の透明基材上の形成方法は、特に制限されず、公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターなどが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥、硬化方法としては熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥、硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。また、離型フィルム等の上に上記方法により塗布し、その後透明基板上に貼りあわせる方法等であってもよい。離型性の基材としては、シリコン系、オレフィン系、オイル系、フッ素系等の離型剤を塗布した紙やフィルム、フッ素系基材、オレフィン系基材等が用いられる。また、透明基材や塗工機は上記のものが使用できる。
【0135】
また、上記方法において、粘着層の厚みは、特に制限されず、所望の用途(例えば、プラズマディスプレイ前面板やプラズマディスプレイ用の近赤外線吸収フィルター用途)などによって適宜選択できるが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0136】
このような方法によって得られた粘着層は、公知の方法により、他の基板やプラズマディスプレイパネル等の他の部材と強固に接着することができ、また優れた近赤外線吸収能及び透明性を発揮すると同時に、熱安定性(耐熱性)、耐湿熱性や耐光性などの諸性にも優れる。
【0137】
本発明の近赤外線吸収材は、耐久性と近赤外線の吸収能が高い優れたプラズマディスプレイ用光学フィルターの構成材料となりうる。本発明の近赤外線吸収材は高い安定性を有するため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、このような特徴を有していることからディスプレー用途に限らず、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0138】
(4)プラズマディスプレイ用光学フィルター
本発明のプラズマディスプレイ用光学フィルターは前記の近赤外線吸収材を使用するものである。このような光学フィルターは可視領域の全光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、波長800〜1200nmの近赤外線の透過率が30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0139】
本発明の光学フィルターは、上記の近赤外線吸収材からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、ガラス等の支持体が設けられていてもよい。
【0140】
近赤外線吸収層と反射防止層を有する光学フィルターは、反射防止フィルムの裏面に本発明の粘着剤組成物からなる層を積層させるか、本発明の近赤外線吸収材上に反射防止コーティング剤を塗布することで得られる。
【0141】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合には、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に形成させる方法がある。また、後者の場合は、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0142】
また、近赤外線吸収層とぎらつき防止層を有する光学フィルターは、アンチグレアフィルムの裏面に本発明の粘着剤組成物からなる層を積層させるか、本発明の近赤外線吸収材上にアンチグレアコーティング剤を塗布することで得られる。
【0143】
アンチグレア層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤を有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、好ましくは、最外層に位置するように、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0144】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層を有する光学フィルターは、電磁波防止フィルム上に近赤外線吸収組成物からなる層を積層することで得られる。
【0145】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。フィルム上の金属のメッシュを平滑化する樹脂として粘着剤組成物を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する樹脂として、本発明の近赤外吸収組成物を使用することもできる。
【0146】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開平2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよいが、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうちどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせたものが好ましく、さらに好ましくは電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0148】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層となり、近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の組み合わせは任意である。また、3つ層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0149】
各層を本発明の近赤外線吸収材のみで貼り合わせてもよいし、他の粘着剤や接着剤を併用してもよい。本発明の近赤外線吸収材を使用することで、プラズマディスプレイ用光学フィルターの構成が簡略化されるため、経済的である。
【0150】
なお、各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の高極性ポリマー等の公知のアンカーコート剤を使用してもよい。
【0151】
(5)プラズマディスプレイ
本発明のプラズマディスプレイは、上記プラズマディスプレイ用光学フィルターを用いるものである。上記光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。
【0152】
直接貼り付ける場合は、支持体を使用していない光学フィルターを使用するのが好ましく、さらに好ましくは衝撃吸収層を設けた光学フィルターを使用するのが好ましい。
【0153】
表示装置に貼り付ける際の粘着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム類やポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは単独に用いられてもよいが、さらに粘着付与剤としてピッコライト、ポリペール、ロジンエステル等を添加したものを用いてもよい。また、特開2004−263084号公報で示されているように衝撃吸収能を有する粘着剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0154】
この粘着層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、粘着剤層にゴミ等が付着しないように、プラズマディスプレイの表面に張り付けるまで粘着剤層を保護するのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり、非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、剥離開始部とすれば貼着時の作業がやりやすい。
【実施例】
【0155】
次に、実施例を挙げて本発明をさらにより具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、近赤外線吸収能、耐熱性、耐湿熱性、最大吸収波長及び粘着特性(粘着力)の評価は以下に従った。
【0156】
1.近赤外線吸収能の評価
分光光度計(島津製作所製:UV−3700)を用いて、赤外領域の波長として980および1050nmにおける透過率を各試片について測定した。また、可視光領域の透過率として450nmの透過率も測定した。なお、下記表2においては、当該透過率を、それぞれ、「未処理」の欄に記載する。
【0157】
2.耐熱性の評価
試験体を100℃のオーブン中に120時間静置し、試験前後での可視−近赤外領域の透過スペクトルを測定した。スペクトルの測定にはスペクトロメーター(UV−3700島津製作所社製)を使用し、透過率の変化を測定した。
【0158】
3.耐湿熱性の評価
試験体を80℃90%RHの恒温恒湿器中に120時間静置し、耐熱性試験と同様に評価した。
【0159】
4.最大吸収波長の測定
使用するフタロシアニン又はナフタロシアニンは所定量をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸光度測定を行う。スペクトルの測定にはスペクトロメーターUV−1600(島津製作所社製)を使用し、測定セルにはガラス製セルで光路長:10mmのものを使用した。
【0160】
5.粘着特性(粘着力)の評価
下記実施例及び比較例で得られた粘着フィルムについて、粘着力を、JIS−Z0237に準じて、23℃、65%RHの雰囲気下で、25mm幅の粘着シートをステンレス鋼板(SUS304)に2kgのゴムローラーを1往復させて貼り合わせ、25分後に180度方向に速度300mm/分で剥離して測定した。粘着力が100g/25mm以上の時合格(下記表1では、「○」)とした。
【0161】
また、製造例1〜4、及び比較製造例1における酸価及び水酸基価の測定は下記方法に従った。
【0162】
6.酸価の測定方法
アクリル系重合体溶液0.5gを精秤し、トルエン50gを加えて均一に溶解させた。指示薬としてフェノールフタレイン/アルコール溶液を2〜3滴加え、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、液の赤みが約30秒で消えてなくなったときを終点とした。このときの滴定量と樹脂の固形分から酸価を求めた。酸価は、樹脂固形分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表わす。
【0163】
7.水酸基価の測定方法
JIS K0070に準じて、下記方法により測定した。
(アセチル化試薬の調製)
ピリジン/無水酢酸を容量比で100/30で均一に混合し、アセチル化試薬とした。
(ピリジン水溶液の調製)
試薬一級ピリジン/イオン交換水を容量比で2/3で混合し、ピリジン水溶液とした。
(KOHメタノール溶液の調製)
試薬特級KOH約70gを採取し、イオン交換水約50mlを加えて溶解させ、これに試薬一級メタノールを加えて約1リットルとして、振盪して溶解させた。炭酸ガスを遮り、一晩以上放置後、上澄液を取り、ファクターが既知の1mol/リットル塩酸で標定し、ファクター(下記式の「f」)を求めた。
(滴定)
試料10gを精秤し、アセチル化試薬5mlをホールピペットで添加した。試料を完全に溶解させた後、100±2℃のオイルバスに60分間浸漬した。ピリジン水溶液5mlをホールピペットで添加し、均一に混合した後、100℃のオイルバスに10分間浸漬した。
【0164】
常温で冷却した後、ジオキサン40mlを添加した。均一に混同し、フェノールフタレイン指示薬を2〜3滴加え、KOHメタノール溶液で滴定した。薄紅色となった時点を終点とし、滴定量(下記式の「C」)を求めた。
【0165】
同様に試料を添加しないブランクについても滴定量(下記式の「B」)を求めた。
(水酸基価の計算)
次式により水酸基価を計算した。水酸基価は、樹脂固形分1g中に含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmgで表わす。
【0166】
【数2】

【0167】
ただし、Bは、ブランクの滴定量(ml)であり;Cは、試料の滴定量(ml)であり;sは、試料の採取量(g)(10g)であり;fは、1mol/リットルのKOHメタノール溶液のファクターであり;Aは、樹脂固形分の酸価であり;およびNは、樹脂固形分である。
【0168】
製造例1:アクリル系重合体溶液の調製
モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート(478.2g)、シクロヘキシルメタクリレート(120g)、ヒドロキシエチルアクリレート(1.8g)を秤量し、十分に混合し、モノマー混合物を得た。
【0169】
このモノマー混合物の40重量%と、酢酸エチル(147g)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えたフラスコに添加した。モノマー混合物の60重量%、酢酸エチル(16g)、および重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.72g)からなる滴下用モノマー混合物を滴下ロートに入れ、良く混合した。
【0170】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を84℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.96g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から10分後に、滴下ロートに入れた滴下用モノマー混合物の滴下を開始した。滴下用モノマー混合物は、90分かけて、均等に滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(50g)をフラスコに投入した。その後、反応液を、82℃で4.3時間熟成した。
【0171】
反応終了後、酢酸エチル(44.4g)を添加し、最後に、不揮発分が約41%になるようにトルエンで反応液を希釈し、重量平均分子量41万のアクリル系重合体溶液(1)を得た。なお、このようにして得られたアクリル系重合体(1)の酸価及び水酸基価は、それぞれ、0及び1.4であった。
【0172】
製造例2:アクリル系重合体溶液の調製
モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート(478.2g)、ブチルアクリレート(120g)、ヒドロキシエチルアクリレート(1.8g)を秤量し、十分に混合し、モノマー混合物を得た。
【0173】
このモノマー混合物の40重量%と、酢酸エチル(147g)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えたフラスコに添加した。モノマー混合物の60重量%、酢酸エチル(16g)、および重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.72g)からなる滴下用モノマー混合物を滴下ロートに入れ、良く混合した。
【0174】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を84℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.96g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から10分後に、滴下ロートに入れた滴下用モノマー混合物の滴下を開始した。滴下用モノマー混合物は、90分かけて、均等に滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(50g)をフラスコに投入した。その後、反応液を、82℃で4.3時間熟成した。
【0175】
反応終了後、酢酸エチル(44.4g)を添加し、最後に、不揮発分が約41%になるようにトルエンで反応液を希釈し、重量平均分子量60万のアクリル系重合体溶液(2)を得た。なお、このようにして得られたアクリル系重合体(2)の酸価及び水酸基価は、それぞれ、0及び1.4であった。
【0176】
製造例3−a:50℃以上のガラス転移温度を有する重合体部分の製造
撹拌装置、窒素導入管、滴下ロ−ト、温度計、冷却管を備えた2リットルの4つ口フラスコにモノマ−として、メチルメタクリレ−ト(297g)、NKエステルA−200(新中村化学社製)(3g)、溶剤として酢酸エチル(300g)を加え、窒素雰囲気下で85℃まで昇温した。内温が85℃に達した後、多価メルカプタンとしてペンタエリスリト−ルテトラキスチオプロピオネート(9g)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(0.45g)、溶剤として酢酸エチル(9g)を投入して重合を開始した。重合開始10分後、メチルメタクリレ−ト(693g)、NKエステルA−200(7g)、ペンタエリスリト−ルテトラキスチオプロピオネート(21g)、アゾビスイソブチロニトリル(1.05g)、酢酸エチル(31g)を110分かけて滴下を行った。重合開始170分後に重合率が70.2%に達した時点で、重合禁止剤であるメトキシフェノ−ル(0.5g)、溶剤として酢酸エチル(475g)を加え、冷却を行って第1段階の重合を完了させた。
【0177】
製造例3:50℃以上のガラス転移温度を有する重合体部分を用いたブロック重合体の製造
撹拌装置、窒素導入管、滴下ロ−ト、温度計、冷却管を備えた2リットルの4つ口フラスコに、製造例3−aで得られた第1重合体部分(1−a)(137.1g)、アクリル酸ブチル(171.4g)、酢酸エチル(124.2g)を加え、窒素雰囲気下で85℃まで昇温した。内温が85℃に達した後、アゾビスイソブチロニトリル(0.14g)、酢酸エチル(3.5g)を投入して重合を開始した。反応開始10分後、第1重合体部分(1−a)(205.7g)、アクリル酸ブチル(257.1g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.22g)、酢酸エチル(192.4g)を110分かけて滴下した。滴下終了60、90、120、150分後にそれぞれアゾビスイソブチロニトリル(0.15g)、酢酸エチル(9g)を投入し、さらに還流下で4時間反応を行った後冷却を行い、固形分濃度50.6%、重量平均分子量34万のアクリル系重合体溶液(3)を得た。なお、このようにして得られたアクリル系重合体(3)の酸価及び水酸基価は、共に0であった。
【0178】
製造例4
製造例3と同様の操作で、表1に示した組成で重合を行い、固形分濃度50.3%、重量平均分子量16万のアクリル系重合体溶液(4)を得た。なお、このようにして得られたアクリル系重合体(4)の酸価及び水酸基価は、共に0であった。
【0179】
製造例5:マクロモノマーを用いたグラフト重合体の製造
撹拌装置、窒素導入管、滴下ロ−ト、温度計、冷却管を備えた2リットルの4つ口フラスコに、マクロモノマーAA−6(重合性不飽和基としてメタクリロイル基、モノマー組成としてメタクリル酸メチル、計算ガラス転移温度105℃、東亞合成社製)(48g)、アクリル酸ブチル(172.8g)、メタクリル酸シクロヘキシル(19.2g)、酢酸エチル(179g)、トルエン(179g)を加え、窒素雰囲気下で85℃まで昇温した。内温が85℃に達した後、アゾビスイソブチロニトリル(0.14g)、酢酸エチル(3.5g)を投入して重合を開始した。反応開始10分後、マクロモノマーAA−6(72g)、アクリル酸ブチル(259.2g)、メタクリル酸シクロヘキシル(28.8g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.22g)、酢酸エチル(120g)、トルエン(120g)を110分かけて滴下した。滴下終了60、90、120,150分後にそれぞれアゾビスイソブチロニトリル(0.15g)、酢酸エチル(9g)を投入し、さらに還流下で4時間反応を行った後冷却を行い、固形分濃度49.2%、重量平均分子量23万のアクリル系重合体溶液(5)を得た。なお、このようにして得られたアクリル系重合体(5)の酸価及び水酸基価は、共に0であった。
【0180】
実施例1
上記製造例1に記載の方法と同様にして製造したアクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素のフタロシアニン2重量部(VOPc{4−(CHO)PhS}{2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}:VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH):VOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F=5:2:5(重量比;以下同じ))を入れ、均一になるまで混合攪拌して樹脂溶液を作製した。なお、本実施例で使用されたフタロシアニンである(VOPc{4−(CHO)PhS}{2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}(以下、「化合物A」とする)、VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)(以下、「化合物B」とする)、及びVOPc(2,5−ClPhO)(2,6−(CHPhO){Ph(CH)CHNH}F(以下、「化合物C」とする)の最大吸収波長(λmax)は、それぞれ、968nm、916nm及び828nm(MEK溶媒中)である。
【0181】
上記樹脂溶液を離型フィルム(シリコン処理したPETフィルム)へ、乾燥後の厚みが25μmとなるようにアプリケーターにて塗布して粘着層を形成した。これを100℃で2分間乾燥した。上記粘着層を25μ厚PETフィルムでラミネートした(粘着層はこちらに転写する)。この粘着試料について粘着性の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0182】
また、上記と同様にして作製した樹脂溶液をアプリケーターにて易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工し、100℃の熱風乾燥器中で2分間乾燥させ、厚さ25μmの塗膜を得た。この上に易接着処理PETフィルムを貼り合わせ、試験体を得た。このようにして得られた試験体の可視−近赤外線吸収スペクトルを図1に示す。また、上記試験体について、劣化性評価(耐熱性及び耐湿熱性の評価)を行ない、その結果を下記表2に示す。
【0183】
実施例2
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素のフタロシアニン2重量部(化合物A:化合物C=5:5)を添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0184】
実施例3
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素のフタロシアニン2重量部(化合物A:化合物B:化合物C=5:2:5)と、イソシアネート架橋剤コロネートL−55E(商品名、日本ポリウレタン社製)0.5重量部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0185】
実施例4
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりにアクリル系重合体溶液(2)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0186】
実施例5
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素のフタロシアニン2.7重量部(VOPc(2,5−ClPhO)(PhCHNH)(以下、「化合物D」とする):化合物A:化合物B:化合物C=4/5/2/5)を添加した以外は、実施例1と同様に行った。なお、本実施例で使用された化合物Dの最大吸収波長(λmax)は、1020nm(MEK溶媒中)である。結果を下記表2に示す。
【0187】
実施例6
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素のフタロシアニン2.5重量部(化合物D:化合物B:化合物C=8/2/5)を添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0188】
実施例7
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりにアクリル系重合体溶液(3)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0189】
実施例8
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりにアクリル系重合体溶液(4)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0190】
実施例9
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりにアクリル系重合体溶液(5)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0191】
実施例10
実施例6において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりにアクリル系重合体溶液(3)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0192】
比較例1
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の固形分100重量部あたり近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素1重量部(市販)とフタロシアニン系色素1重量部(化合物C)を添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0193】
比較製造例1:アクリル系重合体溶液の調製
モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート(126g)、ブチルアクリレート(422g)、アクリル酸(96.6g)、酢酸ビニル(30g)、ヒドロキシエチルアクリレート(0.6g)を秤量し、十分に混合し、モノマー混合物を得た。
【0194】
モノマー混合物の40重量%と、酢酸エチル(339g)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えたフラスコに添加した。モノマー混合物の60重量%、酢酸エチル(38.5g)、および重合開始剤であるABN−E(0.09g)からなる滴下用モノマー混合物を滴下ロートに入れ、良く混合した。
【0195】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を82℃まで上昇させ、重合開始剤であるABN−E(0.09g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から15分後に、滴下ロートに入れた滴下用モノマー混合物の滴下を開始した。滴下用モノマー混合物は、90分かけて、均等に滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(70g)をフラスコに投入した。その後、反応液を、80℃で5.5時間熟成した。
【0196】
反応終了後、酢酸エチル(650g)を添加し、最後に、不揮発分が約30%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、比較アクリル系重合体溶液(6)を得た。このようにして得られた比較アクリル系重合体(6)の酸価及び水酸基価は、それぞれ、27.2及び0.5であった。
【0197】
比較例2
実施例1において、アクリル系重合体溶液(1)の代わりに、比較アクリル系重合体溶液(6)を使用する以外は、実施例1と同様にして、近赤外線吸収色素の添加、粘着試料の作製、近赤外吸収色素の劣化性評価並びに粘着性の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0198】
【表1】

【0199】
【表2】

【0200】
以上の評価結果から実施例1〜10は、可視光域での透過率を保ちつつ近赤外域での透過率が抑えられ、さらに耐熱、耐湿熱性に優れた高い性能を持った粘着剤組成物であることが判る。
【0201】
また、λmaxが1020nm(MEK溶媒中)である化合物Dを用いた実施例5,6,10では1050nmにおける近赤外光カット効率も優れていることが判る。
【0202】
それに対し、比較例1ではジイモニウム系の色素が熱処理により劣化し、近赤外域での透過率が増加した。また、酸価が27.2の粘着剤樹脂を用いた比較例2では、近赤外域での透過率が非常に高くなってしまい、また、耐熱性及び耐湿熱性にも劣ることが示される。これは、酸基が樹脂中に多く存在するため、この酸基が色素を劣化させ、これにより、色素の近赤外光カット効率、耐熱性及び耐湿熱性を低下させていると考えられる。
【0203】
明細書、特許請求の範囲、図面及び要約を含む、2005年5月10日に出願された日本出願特開2005−1357546号の全ての開示は、全体として、本明細書で参照として引用される。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】実施例1で得られた試験体の可視−近赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例6で得られた試験体の可視−近赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例7で得られた試験体の可視−近赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例10で得られた試験体の可視−近赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を800〜920nmの領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、(II)近赤外吸収剤として、最大吸収波長を920nmを超える領域に有するフタロシアニン系化合物及びナフタロシアニン系化合物の1種以上、ならびに酸価が25以下の粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物。
【請求項2】
該組成物が、該(I)として、800nm以上850nm未満に最大吸収波長を有する1種以上と、850〜920nmに最大吸収波長を有する1種以上と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
該組成物が、該(II)として、920nmを超え950nm未満に最大吸収波長を有する1種以上と、950〜1100nmに最大吸収波長を有する1種以上と、を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
該粘着剤樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
該(メタ)アクリル系樹脂は、モノマー成分として脂環式モノマーを含む、請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
該粘着剤樹脂は、50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分と、0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分と、を同一分子内に有する重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
該粘着剤樹脂は、ブロック重合体またはグラフト重合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
該粘着剤樹脂は、多価メルカプタン中のメルカプト基のプロトンが解離した残りの部分である多価メルカプタン部分と、該多価メルカプタン部分から放射状に延びた50℃以上のガラス転移温度を有する第1重合体部分および0℃未満のガラス転移温度を有する第2重合体部分と、を同一分子内に有する重合体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
該粘着剤樹脂は、多価メルカプタンの存在下に各段階で種類の異なる重合性モノマーを使用するラジカル重合を複数段階行うことにより製造されるものである請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
該粘着剤樹脂は、50℃以上のガラス転移温度を有する重合体部分として、片末端に重合性二重結合を有するマクロモノマーを使用する請求項6または7記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
透明基材に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を含む塗膜を積層した近赤外線吸収材。
【請求項12】
該透明基材が、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の近赤外線吸収材。
【請求項13】
請求項11または12に記載の近赤外線吸収材を用いる、プラズマディスプレイ用光学フィルター。
【請求項14】
請求項13に記載の光学フィルターを用いる、プラズマディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−540692(P2008−540692A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549758(P2007−549758)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/JP2006/309615
【国際公開番号】WO2006/121174
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】