説明

近赤外線吸収フィルターおよびその製造方法

【課題】近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れるとともに、耐環境性にも優れる近赤外線吸収フィルターおよび、該近赤外線吸収フィルターを生産性よく製造する方法を提供する。
【解決手段】ホスホン酸化合物と少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得られる近赤外線吸収剤および樹脂から形成される近赤外線吸収フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収フィルターおよびその製造方法に関し、詳しくは近赤外線を好適に吸収することが可能であり、かつ透明性に優れる樹脂製の近赤外線吸収フィルターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオンの中でも、銅イオンは、近赤外領域の光(以下、「近赤外線」ともいう)の吸収特性に優れている。
銅イオンが有する近赤外線の吸収特性を利用した光学材料が従来から提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。特許文献1には、特定のリン酸エステル化合物と銅化合物とから形成されるリン酸エステル銅化合物を含有する光学材料が開示されている。特許文献2には、特定のリン酸エステル化合物、銅化合物および樹脂を含有する樹脂組成物から形成されたディスプレイ前面板が開示されている。特許文献3には、特定のリン酸エステル化合物と、銅化合物とから形成されるリン酸エステル銅化合物を含有する近赤外線吸収層を有する光学フィルターが開示されている。また、特許文献4には、特定のリン酸エステル化合物と、銅イオンとを含有してなる近赤外線吸収性組成物が開示されている。
【0003】
従来提案されている光学材料は、近赤外線吸収フィルターとして用いた場合には、近赤外線の吸収特性には優れるものであった。しかしながら、ディスプレイパネル用、シリコンフォトダイオード用等の近赤外線吸収フィルターでは、近赤外線の吸収特性に優れるとともに、可視光の透過性に優れることが望まれるが、従来提案されている光学材料は、可視光の透過性が充分ではなく、いまだ改善が望まれていた。なお、前記特許文献に記載された各種光学材料では、銅イオンは、主にリン酸エステル化合物と銅塩(銅化合物)とを反応させることにより得られる錯体として光学材料中に含まれる。
【0004】
また、近年、各種電子機器は、小型化、省スペース化、軽量化が強く求められている。そのため近赤外線吸収フィルターは、優れた近赤外線の吸収特性を維持しつつ、フィルター自体の厚さを薄くすることが求められている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載された発明はいずれも、フィルター自体の厚さを薄くした場合には、近赤外線の吸収特性が充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−83318号公報
【特許文献2】特開2001−83890号公報
【特許文献3】特開2001−154015号公報
【特許文献4】国際公開第01/77250号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近赤外線の吸収特性を維持しつつ、フィルターの厚さを薄くするためには、近赤外線吸収特性に寄与する銅イオンの濃度を高くする必要、すなわち、多量の錯体を含有する原料から近赤外線吸収フィルターを製造する必要がある。しかしながら、原料中の錯体濃度を増加させると、一般に成形性が悪化するため生産性が低下するという問題点があった。
【0008】
また、フィルターを薄くするために銅イオン濃度を上げた場合には、一般にフィルターの耐湿性、耐熱性等の耐環境性が悪化する傾向があるが、屋外で使用されることが多い各種携帯機器に用いられる近赤外線吸収フィルターは、耐環境性にも優れることが要求される。
【0009】
また、ディスプレイの表示部等に用いられる近赤外線吸収フィルターは、ディスプレイの視認性の観点から当然に可視光の透過性に優れることが望まれる。フォトダイオード等の受光部等に視感度補正フィルターとして用いられる近赤外線樹脂フィルターもまた、可視光の透過性に優れることが望まれる。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑み、近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れるとともに、耐環境性にも優れる近赤外線吸収フィルターおよび、該近赤外線吸収フィルターを生産性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れるとともに、耐環境性にも優れることを見出し、さらに該近赤外線吸収フィルターは生産性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の近赤外線吸収フィルターは、下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得られる近赤外線吸収剤および樹脂から形成される。
【0013】
【化1】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0014】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成されることが好ましい。
【0015】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得て、前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成される近赤外線吸収フィルター。
【0016】
前記樹脂が、単官能芳香族ビニル化合物、多官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構成単位を有することが好ましい。また、前記モノマーの少なくとも一部が、多官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0017】
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法は、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程、前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程を有する。
【0018】
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法の別の態様としては、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程、前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得る工程、前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れるとともに、耐環境性にも優れる。また、本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法は、生産性よく該近赤外線吸収フィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1および比較例1で得られた樹脂板(近赤外線吸収フィルター)の分光透過率を示す。
【図2】実施例2で得られた樹脂板(近赤外線吸収フィルター)の分光透過率を示す。
【図3】実施例3で得られた樹脂板(近赤外線吸収フィルター)の分光透過率を示す。
【図4】実施例2および比較例1で得られた樹脂板(近赤外線吸収フィルター)を60℃、相対湿度90%で保持した際の樹脂板のヘイズの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の近赤外線吸収フィルターは、下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得られる近赤外線吸収剤および樹脂から形成される。
【0022】
【化2】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0023】
<近赤外線吸収剤>
本発明の近赤外線吸収フィルターには、近赤外線吸収剤が含有される。
前記近赤外線吸収剤は、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得られる。
【0024】
なお、本発明において、「一般式(1)で表されるホスホン酸化合物」を、「特定のホスホン酸化合物」とも記し、「一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物」を、「特定のリン酸エステル化合物」とも記す。
【0025】
本発明に用いられる近赤外線吸収剤は、主として前記特定のホスホン酸化合物と銅塩とが反応したホスホン酸銅塩が有する銅イオンによって近赤外線吸収特性を有すると考えられる。前記ホスホン酸銅塩は、前記特定のリン酸エステル化合物の作用によって、極めて微細な状態で維持されると考えられる。本発明の近赤外線吸収フィルター中に存在する近赤外線吸収剤は、微細な粒子として存在するため、本発明の近赤外線吸収フィルターは可視光の透過率に優れる。
【0026】
また、本発明に用いられる近赤外線吸収剤は、銅イオンに対して主として前記特定のホスホン酸化合物が配位し、さらにその周りに前記特定のリン酸エステル化合物が存在すると考えられる。このため、近赤外線吸収剤中の銅イオンは、熱等に対する安定性に優れ、例えば近赤外線吸収フィルターを近赤外線吸収剤およびモノマーから製造する際に、高温下でモノマーの重合をおこなった場合であっても、得られる近赤外線吸収フィルターは、銅イオンの影響を受けず、着色が少なく透明性に優れる。
【0027】
前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物において、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基である。前記R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。フッ素化アルキル基は、対応するアルキル基における水素原子の一部または全部がフッ素原子によって置換されたものである。
【0028】
このような特定のホスホン酸化合物を用いることにより、本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れ、耐熱性等の耐環境性にも優れる。
【0029】
前記特定のホスホン酸化合物としては、R11が水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であるものが好ましい。一般式(1)で表されるホスホン酸化合物としては例えば、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ウンデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、トリデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸が挙げられる。なお、一般式(1)で表されるホスホン酸化合物としては、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0030】
前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物において、R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基(ポリオキシアルキル基)である。nは4〜25の整数であり、6〜15の整数であるとより好ましい。
nが4未満である場合には、赤外線吸収フィルターの透明性が不充分となる。また、nが25を超えると、充分な透明性を有する赤外線吸収フィルターを得るために必要な、リン酸エステル化合物の量が増え、コスト高の原因となる。
【0031】
また、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基であり、炭素数6〜25のアルキル基であることが好ましく、12〜20のアルキル基であることがより好ましい。R5が、炭素数6未満の基であると、近赤外線吸収フィルターの透明性が不充分となる。また、R5が、炭素数25を超える基であると、充分な透明性を有する赤外線吸収フィルターを得るために必要な、リン酸エステル化合物の量が増え、コスト高の原因となる。
【0032】
本発明に用いる近赤外線吸収剤を得る際には、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物、前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物の少なくとも一方が用いられるが、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物、前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物の両方を用いることが好ましい。前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物を用いると、近赤外線吸収フィルターの透明性、耐熱性に優れる傾向があり好ましい。前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物、前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物の両方を用いる場合には、一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物と、一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物との割合は、特に限定されないが、通常はモル比((2a):(2b))で10:90〜90:10である。
【0033】
また、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物としては、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよく、前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物としては、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0034】
また、近赤外線吸収剤を得る際には、その他のリン系化合物、例えばリン酸トリエステルをさらに用いてもよい。
前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物としては、市販されているリン酸エステル化合物を用いることもできる。
【0035】
前記銅塩としては、2価の銅イオンを供給することが可能な銅塩が通常用いられる。前記銅塩としては例えば、無水酢酸銅、無水蟻酸銅、無水ステアリン酸銅、無水安息香酸銅、無水エチルアセト酢酸銅、無水ピロリン酸銅、無水ナフテン酸銅、無水クエン酸銅等の有機酸の銅塩、該有機酸の銅塩の水和物もしくは水化物;酸化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩、該無機酸の銅塩の水和物もしくは水化物;水酸化銅が挙げられる。なお、銅塩としては、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0036】
銅塩としては、無水酢酸銅、酢酸銅1水和物が、溶解性や副生成物の除去の点から好ましく用いられる。
本発明に用いられる近赤外線吸収剤は、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得られる。近赤外線吸収剤は、各成分自体を含んでいてもよいが、通常は各成分同士が反応して生じた成分を含む。具体的には、本発明に用いられる近赤外線吸収剤としては、前記特定のホスホン酸化合物と銅塩とが反応したホスホン酸銅塩が存在し、さらにその周りに前記特定のリン酸エステル化合物が存在すると考えられる。また、前記ホスホン酸銅塩を構成する前記特定のホスホン酸化合物の一部が、前記特定のリン酸エステル化合物で置き換わったホスホン酸銅塩も存在すると考えられる。
【0037】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線吸収剤および樹脂から形成されるが、前記ホスホン酸銅塩は、主に粒子の状態で、樹脂中に分散していることが好ましい。前記ホスホン酸銅塩は、前記特定のリン酸エステル化合物とともに、近赤外線吸収剤を構成するため、樹脂中で微細な粒子となると考えられる。前記ホスホン酸銅塩の、平均粒子径は、好ましくは250nm以下であり、より好ましくは10〜200nmである。樹脂中に微細なホスホン酸銅塩の粒子が分散することにより、本発明の近赤外線吸収フィルターは、優れた透明性および耐熱性を有する。
【0038】
本発明に用いられる近赤外線吸収剤を、前記特定のホスホン酸化合物と、前記特定のリン酸エステル化合物と、銅塩とから得る際に用いる、前記各成分の量は以下のとおりである。前記特定のホスホン酸化合物は、前記特定のリン酸エステル化合物1モルあたり、5モル以上用いることが好ましく、8〜100モル用いることがより好ましく、10〜80モル用いることが特に好ましい。5モルを下回ると、近赤外線吸収フィルターの透明性には優れるものの、近赤外線の吸収特性が悪化する場合や、耐熱性が低下する場合がある。
【0039】
また、前記特定のホスホン酸化合物は、銅塩中の銅1モルあたり、0.4モル以上であることが好ましく、0.5〜1.5モルであることがより好ましく、0.5〜1.2モルであることが特に好ましい。前記範囲内では、近赤外線吸収フィルターの透明性、耐熱性が特に優れるため好ましい。
【0040】
<近赤外線吸収剤の製造方法>
本発明に用いる近赤外線吸収剤の製造方法としては、例えば、前記特定のホスホン酸化合物と、前記特定のリン酸エステル化合物と、前記銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程(以下、反応工程とも記す)、および前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程(以下、溶媒除去工程とも記す)を有する方法が挙げられる。
【0041】
前記反応工程では、主に前記特定のリン酸エステル化合物の存在下で、前記特定のホスホン酸化合物と、前記銅塩とが反応し、該反応によって、前記溶媒に溶解しない粒子状のホスホン酸銅塩が生成する。前記リン酸エステル化合物は、反応時に良好な分散剤として作用することができるため、前記ホスホン酸銅塩は分散性が高く保たれ、凝集を抑制することができる。
【0042】
なお、前記反応工程では、前記特定のホスホン酸化合物と銅塩との反応のみではなく、例えば前記特定のリン酸エステル化合物と銅塩とが反応してもよい。また、前記特定のホスホン酸化合物、特定のリン酸エステル化合物、銅塩の一部が反応せずに残存していてもよい。
【0043】
反応工程で用いる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、水等が挙げられ、良好に反応を行う観点から、エタノール、THFまたはDMFが好ましい。また、反応工程は、好ましくは室温〜60℃、より好ましくは20〜40℃の温度条件で、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間行われる。
【0044】
本発明に用いる近赤外線吸収剤としては、通常、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより得られる。
前記反応工程で得られた反応混合物には、前記ホスホン酸銅塩、前記特定のリン酸エステル化合物、特定のホスホン酸化合物、銅塩、副生成物、反応工程で用いた溶媒等が含まれる。
【0045】
溶媒除去工程では、反応混合物中から、少なくとも前記溶媒の一部を除去する。溶媒除去工程では、溶媒以外にも、反応混合物中の液体成分を合わせて除去してもよい。
溶媒除去工程では、通常反応混合物を加熱することにより、少なくとも前記溶媒の一部を除去するが加熱条件は、通常、室温〜70℃であり、好ましくは40〜60℃である。また、溶媒除去工程は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。減圧下で溶媒除去工程を行う場合には、加熱を行わなくてもよい場合や、加熱温度が低くてもよい場合がある。
【0046】
<樹脂>
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前記近赤外線吸収剤および樹脂から形成される。
本発明に用いられる樹脂としては、単官能芳香族ビニル化合物、多官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構成単位を有することが、近赤外線吸収フィルターの透明性、耐熱性の観点から好ましい。また、前記モノマーの少なくとも一部が、多官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0047】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「メタクリル酸」および「アクリル酸」を意味する。
単官能芳香族ビニル化合物としては例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレンが挙げられる。
【0048】
多官能芳香族ビニル化合物としては例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼンが挙げられる。
単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0049】
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる樹脂は、前述のように単官能芳香族ビニル化合物、多官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構成単位を有することが好ましいが、樹脂を構成する、全構成単位100重量%あたり、単官能芳香族ビニル化合物や単官能(メタ)アクリル酸エステル等の単官能性モノマーに由来する構成単位を95〜50重量%有し、多官能芳香族ビニル化合物や多官能(メタ)アクリル酸エステル等の多官能性モノマーに由来する構成単位を5〜50重量%有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位、すなわち単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を、40重量%以上有することが樹脂の信頼性の点から好ましい。
【0051】
本発明において、近赤外線吸収フィルターは、前記近赤外線吸収剤と樹脂とから形成されるが、樹脂100重量部に対して、近赤外線吸収剤が通常は1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部用いられる。
【0052】
<近赤外線吸収フィルター>
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前述の近赤外線吸収剤および樹脂から形成される。本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収特性に優れ、かつ可視光の透過性に優れるとともに、耐環境性にも優れる。
【0053】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前記近赤外線吸収剤を、樹脂中に混練することにより得られる組成物を成形することにより製造してもよい。しかしながら、該方法では、得られる組成物中に、近赤外線吸収剤が偏在する場合がある。そのため、近赤外線吸収フィルターを製造する場合には、通常は、近赤外線吸収剤存在下で、モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る。該組成物の形状がフィルターとなる条件で重合をおこなった場合には、重合により得られた組成物を近赤外線吸収フィルターとして用いることができる。また、得られた組成物をさらに切断・研磨等成形することにより、近赤外線吸収フィルターを得てもよい。
【0054】
本発明の近赤外線吸収フィルターとしては、具体的には、以下の二つの態様が挙げられる。
第一の態様の近赤外線吸収フィルターは、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成される近赤外線吸収フィルターである。
【0055】
第二の態様の近赤外線吸収フィルターは、前記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得て、前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成される近赤外線吸収フィルターである。
【0056】
すなわち、第一の態様では、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより得られた近赤外線吸収剤を、直接モノマーに分散させることにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得ているのに対して、第二の態様では、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより得られた近赤外線吸収剤を、低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得て、得られた分散液にモノマーを添加し、その後低沸点溶媒の除去を行うことにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得ている。
【0057】
第一の態様、第二の態様はともに、近赤外線吸収剤を、樹脂ではなくモノマーに分散させることにより、得られる近赤外線吸収フィルター中に偏在することなく、近赤外線吸収剤が分散しており、近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収特性に優れ、透明性にも優れる。
【0058】
第二の態様のように、近赤外線吸収剤を一度低沸点溶媒に分散させ、得られた分離液にモノマーを添加すると、近赤外線吸収フィルター中に、より均一に近赤外線吸収剤が分散する傾向があり好ましい。
【0059】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、前記近赤外線吸収剤および樹脂からなるが、さらに各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合速度調整剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
【0060】
本発明の近赤外線吸収フィルターの厚さとしては特に限定はないが、通常は0.1mm〜3.0mmである。
本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線を吸収することが求められる各種フィルターとして用いることができる。具体的には、近赤外線カットフィルター、色純度補正フィルター等が挙げられる。本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の吸収性に優れ、かつ耐環境性にも優れるため、従来よりもフィルターの厚さを薄くすることが可能である。また、本発明の近赤外線吸収フィルターは、可視光の透明性にも優れるため、ディスプレイの表示面上に設置される近赤外線カットフィルターや、フォトダイオード等の受光部等に設置される視感度補正フィルター、CCD素子やC−MOS素子等の撮像素子を使用したカメラの視感度補正フィルターとして用いることができる。他の色素との組み合わせにより、特定波長および近赤外域を吸収するフィルターを作成する事も可能である。
【0061】
<近赤外線吸収フィルターの製造方法>
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法としては、以下の二つの態様がある。
第一の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法は、前記特定のホスホン酸化合物と、前記特定のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程((I)工程)、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程((II)工程)、前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程((III)工程)、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程((IV)工程)を有する近赤外線吸収フィルターの製造方法である。
【0062】
第二の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法は、前記特定のホスホン酸化合物と、前記特定のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程((i)工程)、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程((ii)工程)、前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得る工程((iii)工程)、前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程((iv)工程)、前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程((v)工程)を有する近赤外線吸収フィルターの製造方法である。
【0063】
第一の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の(I)工程および(II)工程は、第二の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の(i)工程および(ii)工程と同様の工程であり、それぞれ前述の<近赤外線吸収剤の製造方法>の項で記載した、反応工程および溶媒除去工程に相当する。
【0064】
第一の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の、(III)工程は、近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程である。
近赤外線吸収剤をモノマーに分散させる方法としては、例えばモノマーを近赤外線吸収剤に添加し、超音波照射、ホモジナイザー、攪拌、加温攪拌等の方法によって、近赤外線吸収剤をモノマー中に分散させる方法が挙げられる。
【0065】
なお、近赤外線吸収剤をモノマーに分散させる場合には、モノマーの一部に近赤外線吸収剤を分散し、その後残りのモノマーを添加しさらに混合を行ってもよい。
また、後述の(IV)工程において、モノマーを好適に重合するために、通常はラジカル重合開始剤を、近赤外線吸収剤をモノマーに分散させるのと同時、あるいは分散させた後に添加し、ラジカル重合開始剤を含む近赤外線吸収剤含有モノマーを得ることが好ましい。
【0066】
第二の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の、(iii)工程は、近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得る工程である。
低沸点溶媒としては通常、沸点が35℃〜80℃の沸点が用いられ、前記近赤外線吸収剤を分散可能な溶媒が用いられる。低沸点溶媒としては、例えば、塩化メチレン、アセトン、メタノール、クロロフォルム等が用いられる。
【0067】
近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させる方法としては、例えば低沸点溶媒を近赤外線吸収剤に添加し、超音波照射、ホモジナイザー、攪拌、加温攪拌等の方法によって、近赤外線吸収剤を低沸点溶媒中に分散させる方法が挙げられる。
【0068】
第二の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の、(iv)工程は、分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程である。
【0069】
(iv)工程では、(iii)工程で得られた分散液に、モノマーを添加することにより、分散液中にモノマーを溶解させることが好ましい。次いで低沸点溶媒を除去することにより、近赤外線吸収剤が分散した、近赤外線吸収剤含有モノマーを得ることができる。
【0070】
低沸点溶媒を除去する方法としては、特に限定はなく、例えば減圧による低沸点溶媒の除去、加温と減圧の組み合わせによる除去等が挙げられる。
なお、分散液にモノマーを添加する場合には、モノマーの一部を分散液に添加し、低沸点溶媒の除去を行った後に、残りのモノマーをさらに添加し、混合を行ってもよい。
【0071】
また、後述の(v)工程において、モノマーを好適に重合するために、通常はラジカル重合開始剤を、モノマーを分散液に添加するのと同時、あるいは添加した後に添加し、ラジカル重合開始剤を含む近赤外線吸収剤含有モノマーを得ることが好ましい。
【0072】
モノマーとしては、単官能芳香族ビニル化合物、多官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。
【0073】
用いる全モノマー100重量%あたり、単官能芳香族ビニル化合物や単官能(メタ)アクリル酸エステル等の単官能性モノマーを95〜50重量%用い、多官能芳香族ビニル化合物や多官能(メタ)アクリル酸エステル等の多官能性モノマーを5〜50重量%用いることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、すなわち単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルを、40重量%以上用いることが、得られる樹脂の信頼性の点から好ましい。
【0074】
前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定はなく、例えば有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤を用いることができる。有機過酸化物系重合開始剤としては例えば、tert-ブチルパーオクタノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカネート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート等の非芳香族系のパーオキシエステル、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイドなどを用いることが、得られる樹脂の着色が少ない点で好ましい。アゾ系ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−2−カルボニトリル)等を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、モノマー100重量部に対して、0.3〜5.0重量部用いられる。
【0075】
第一の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の(IV)工程と、第二の態様の近赤外線吸収フィルターの製造方法の(v)工程とは、同様の工程(以下、重合工程とも記す)であり、近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程である。該工程ではモノマーが重合され樹脂になる。通常はラジカル重合開始剤を含む近赤外線吸収剤含有モノマーを用い、該工程ではラジカル重合が行われる。重合工程は、近赤外線吸収剤含有モノマーが重合されればよいが、例えば、注型(キャスト)重合法によって行われる。
【0076】
本発明の重合工程では、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物が得られるが、該組成物は溶融成形等の成形が困難であるため、モールド等を用いた注型重合法によって、該組成物の形状がフィルター上、すなわち近赤外線吸収フィルターとして得られる条件で重合を行うことが好ましい。特に、多官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能芳香族ビニル化合物等の多官能性モノマーを用いた場合には、得られる組成物は耐熱性に優れ、熱成形が困難であるため、該組成物が近赤外線吸収フィルターとして得られる条件で重合を行うことが好ましい。
【実施例】
【0077】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0078】
〔実施例1〕
酢酸銅1水和物0.70g(3.5×10-3mol)を、エタノール35gに溶解させた溶液(a1)、並びに、酢酸銅1水和物に対して等モルのヘキシルホスホン酸0.58gおよび下記リン酸エステル化合物(A)0.5gを、エタノール5gに溶解させた溶液(b1)をそれぞれ準備した。
【0079】
なお、前記リン酸エステル化合物(A)は、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物(モノエステル)と、前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物(ジエステル)と、前記一般式(2b)中のヒドロキシル基の水素原子が同様の基でさらに置換されたトリエステルとの混合物であり、前記式中におけるnが10であり、R5が炭素数13〜15のアルキル基であるものである。なお、リン酸エステル化合物(A)中のモノエステルとジエステルとトリエステルとの存在比(モル比)は、1:1:1であり、R5は炭素数が13〜15のアルキル基であるが、平均すると炭素数14のアルキル基である。リン酸エステル化合物(A)のモル数や、リン酸エステル化合物(A)中の各成分のモル数を算出する場合には、上記値に基づいて算出することができる。
【0080】
次いで、上記で得られた溶液(a1)と溶液(b1)とを混合し、室温下で2時間攪拌して反応させた。反応後、得られた反応混合物から副生成物および溶媒を、減圧下、60℃で留去した。
【0081】
そして、反応混合物から溶媒を除去して得られた固形分にスチレンを3.7g添加し超音波照射して再分散処理を行い、近赤外線吸収剤を分散したスチレンモノマー5gを得た。この分散液中の近赤外線吸収剤(銅錯体)の、平均粒子径は125nmであった。なお、平均粒子径は大塚電子株式会社製ELSZ−2を用いて求めた。
【0082】
この近赤外線吸収剤を分散したスチレンモノマー3.5g、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO 共栄社化学(株)社製)2.5g、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(NKエステル DCP 新中村化学工業(株)社製)1.0gを混合し、重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV 日本油脂(株)社製)0.07gを添加、混合して近赤外線吸収剤含有モノマーA1を得た。
【0083】
次に2枚の直径80mm厚さ5mmのガラス板を、間隔0.54mmで対向して配置し、両ガラス板の端面をテープにてシールし、ガラスモールドを作成した。
次に、該ガラスモールド中に、近赤外線吸収剤含有モノマーA1を注入した。
【0084】
近赤外線吸収剤含有モノマーA1を注入したガラスモールドをオーブンにて、45℃で8時間加温した後に、65℃まで4時間かけて昇温、次いで2.5時間かけて100℃まで昇温した後に100℃で1時間保持することにより重合を行った。重合終了後、オーブン温度を2時間かけて70℃まで降温した後にオーブンから取り出して、ガラスモールドを解体し、ガラスモールド内の無色透明な樹脂板(近赤外線吸収フィルター)を取り出した。
【0085】
取り出した樹脂板は厚さ0.5mmであった。該樹脂板の分光透過率を図1に示す。なお、分光透過率は、(株)日立製作所製分光光度計U4000を使用して求めた。また、この近赤外線吸収フィルターのヘイズは0.9であった。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用して光源設定をD65にして求めた。
【0086】
〔比較例1〕
リン酸ビスメタクリロキシエチルエステルとリン酸メタクリロキシエチルエステルとの混合物(ライトエステル P2M 共栄社化学(株)社製)18.0g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート8.45g、メチルメタクリレート15.36g、α-メチルスチレン0.35g、水0.8gを混合し、モノマー混合液を調製した。ここに無水安息香酸銅17.74gを加えて、80℃で加熱混合して銅イオンの溶解したモノマー混合液を調製した。このモノマー混合液を-20℃に冷却する事により析出してきた安息香酸を濾別しモノマーBを作成した。
【0087】
このようにして作成したモノマーB10.0gにtert‐ブチル パーオキシ‐2-エチルヘキサノエート(パーブチル O 日本油脂(株)社製)0.17gを混合、攪拌して実施例1と同様のガラスモールドに注入し、実施例1と同様に重合を行う事により青い樹脂板を得た。
【0088】
取り出した樹脂板は厚さ0.5mmであった。該樹脂板の分光透過率を図1に示す。なお、分光透過率は、(株)日立製作所製分光光度計U4000を使用して求めた。また、この近赤外線吸収フィルターのヘイズは0.5であった。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用して光源設定をD65にして求めた。
【0089】
〔実施例2〕
酢酸銅1水和物2.00g(1.0×10-2mol)を、エタノール100gに溶解させた溶液(a2)、並びに、酢酸銅1水和物に対して等モルのブチルホスホン酸1.38gおよび前記リン酸エステル化合物(A)1.0gを、エタノール10gに溶解させた溶液(b2)をそれぞれ準備した。
【0090】
次いで、上記で得られた溶液(a2)と溶液(b2)とを混合し、室温下で2時間攪拌して反応させた。反応後、得られた反応混合物から副生成物および溶媒を、減圧下、60℃で留去した。
【0091】
そして、この反応混合物から溶媒を除去して得られた固形分に塩化メチレン20gを添加して5時間超音波照射して再分散処理を行った。次いでこの分散液に、ジビニルベンゼン(試薬 ジビニルベンゼン55質量%、エチルスチレン45質量%の混合物)を4.0gを添加し、室温、減圧にて塩化メチレンを留去して近赤外線吸収剤を分散したジビニルベンゼン7gを得た。この分散液中の近赤外線吸収剤(銅錯体)の、平均粒子径は58nmであった。なお、平均粒子径は大塚電子株式会社製ELSZ−2を用いて求めた。
【0092】
この近赤外線吸収剤を分散したジビニルベンゼン1.6g、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO 共栄社化学(株)社製)4.5g、スチレン0.4g、ジエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル 2EG 新中村化学工業(株)社製)0.5gを混合し、重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV 日本油脂(株)社製)0.1gを添加、混合して近赤外線吸収剤含有モノマーA2を得た。
【0093】
得られた近赤外線吸収剤含有モノマーA2を、実施例1と同様のガラスモールドに注入し、実施例1と同様に重合を行う事により無色透明な樹脂板(近赤外線吸収フィルター)を得た。
【0094】
取り出した樹脂板は厚さ0.5mmであった。該樹脂板の分光透過率を図2に示す。なお、分光透過率は、(株)日立製作所製分光光度計U4000を使用して求めた。また、この近赤外光カットフィルターのヘイズは0.1であった。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用して光源設定をD65にして求めた。
【0095】
〔実施例3〕
酢酸銅1水和物1.56g(7.8×10-3mol)を、エタノール80gに溶解させた溶液(a3)、並びに、酢酸銅1水和物に対して等モルのオクチルホスホン酸1.52gおよび下記リン酸エステル化合物(B)1.0gを、エタノール10gに溶解させた溶液(b3)をそれぞれ準備した。
【0096】
前記リン酸エステル化合物(B)は、前記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物と前記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物との、混合比(モル比)((2a):(2b))が2:1の混合物である。リン酸エステル化合物(B)は、該式中におけるnが15であり、R5が炭素数12のアルキル基であるものである。リン酸エステル化合物(B)のモル数や、リン酸エステル化合物(B)中の各成分のモル数を算出する場合には、上記値に基づいて算出することができる。
【0097】
次いで、上記で得られた溶液(a3)と溶液(b3)とを混合し、室温下で2時間攪拌して反応させた。反応後、容器を静置すると沈殿物が得られるので上澄みの溶媒を取り除き、残った反応混合物から副生成物及び残存する溶媒を、減圧下、60℃で留去した。
【0098】
そして、この反応混合物から溶媒を除去して得られた固形分に塩化メチレン20gを添加して14時間超音波照射して再分散処理を行った。次いでこの分散液に、tert-ブチルスチレンを5.0g、スチレンを3.0gを添加し、室温、減圧にて塩化メチレンを留去して近赤外線吸収剤を分散したスチレン系モノマー9.5gを得た。この分散液中の近赤外線吸収剤(銅錯体)の、平均粒子径は70nmであった。なお、平均粒子径は大塚電子株式会社製ELSZ−2を用いて求めた。
【0099】
この近赤外線吸収剤を分散したスチレン系モノマー3.1g、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO 共栄社化学(株)社製)1.7g、エチレングリコールジメタクリレート(NKエステル 2EG 新中村化学工業(株)社製)0.7g、メチルメタクリレート 1.5gを混合し、重合開始剤としてtert-ブチル パーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチル O 日本油脂(株)社製)0.1gを添加、混合して近赤外線吸収剤含有モノマーA3を得た。
【0100】
得られた近赤外線吸収剤含有モノマーA3を、実施例1と同様のガラスモールドに注入し、実施例1と同様に重合を行う事により無色透明な樹脂板(近赤外線吸収フィルター)を得た。
【0101】
取り出した樹脂板は厚さ0.5mmであった。該樹脂板の分光透過率を図3に示す。なお、分光透過率は、(株)日立製作所製分光光度計U4000を使用して求めた。また、この近赤外光カットフィルターのヘイズは0.5であった。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用して光源設定をD65にして求めた。
【0102】
<耐湿性試験(信頼性試験)>
前記実施例2で得られた樹脂板および比較例1で得られた樹脂板を、それぞれ60℃、相対湿度90%に保持した恒温恒湿器に入れて、500時間保持した。
【0103】
樹脂板のヘイズの変化を図4に示す。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を使用して光源設定をD65にして求めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、
下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、
銅塩とから得られる近赤外線吸収剤および樹脂から形成される近赤外線吸収フィルター。
【化1】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、
前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、
前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、
前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成される近赤外線吸収フィルター。
【化2】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得て、
前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得て、
前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得て、
前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得て、
前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合することにより得られる、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物から形成される近赤外線吸収フィルター。
【化3】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
前記樹脂が、単官能芳香族ビニル化合物、多官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマー由来の構成単位を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項5】
前記前記モノマーの少なくとも一部が、多官能(メタ)アクリル酸エステルおよび多官能芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種のモノマーである請求項4に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項6】
下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程、
前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程、
前記近赤外線吸収剤をモノマーに分散させ、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程、
前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程を有する近赤外線吸収フィルターの製造方法。
【化4】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項7】
下記一般式(1)で表されるホスホン酸化合物と、下記一般式(2a)で表されるリン酸エステル化合物および下記一般式(2b)で表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と、銅塩とを、溶媒中で混合して反応混合物を得る工程、
前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の一部を除去することにより近赤外線吸収剤を得る工程、
前記近赤外線吸収剤を低沸点溶媒に分散させることにより分散液を得る工程、
前記分散液にモノマーを添加した後に、少なくとも低沸点溶媒の一部を除去することにより、近赤外線吸収剤含有モノマーを得る工程、
前記近赤外線吸収剤含有モノマーを重合し、近赤外線吸収剤および樹脂を含む組成物を得る工程を有する近赤外線吸収フィルターの製造方法。
【化5】

[式中、R1は、−CH2CH2−R11で表される1価の基であり、R11は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示す。R21、R22およびR23は、−(CH2CH2O)n5で表される1価の基であり、nは4〜25の整数であり、R5は、炭素数6〜25のアルキル基または炭素数6〜25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R21、R22およびR23は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203467(P2011−203467A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70389(P2010−70389)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】