説明

近赤外線吸収組成物用塩及び近赤外線吸収粘着剤組成物

塩に係る本発明は、所定の式で示されるアニオンを有し、それ自身が実質的に近赤外線吸収能を有さない近赤外線吸収組成物用塩である。上記アニオンを有する塩のカウンターカチオンは、アルカリ金属カチオンであるのが好ましい。粘着剤組成物に係る本発明は、アセトン溶液における最大吸収波長が1000〜1060nmであるジイモニウム色素(A)及び計算ガラス転移温度が−20℃以下である樹脂(B)を含有する。好ましくは、前記ジイモニウム色素は、特定のジイモニウムカチオンと、特定のイミドアニオンとからなる。好ましくは、前記樹脂(B)の酸価が25以下とされる。好ましくは、前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが9.80以下とされる。本発明は、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー等に好適に用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
塩に係る本発明は、近赤外線吸収組成物用塩、当該塩を含む近赤外線吸収組成物、該近赤外線吸収組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収組成物ならびに近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターに関する。特に、塩に係る本発明は、近赤外線吸収色素の耐久性を向上させる塩、可視領域の透明性と耐久性に優れる当該塩を含む近赤外線吸収組成物、ならびに当該近赤外線吸収組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収組成物または近赤外線吸収材を用いてなる光半導体素子用光学フィルター、該近赤外線吸収組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。
【0002】
粘着剤組成物に係る本発明は、近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。特に、粘着剤組成物に係る本発明は、可視領域の透明性と赤外線吸収能の持続性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物、該近赤外線吸収粘着剤組成物を含有する近赤外線吸収材、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる光半導体素子用光学フィルター、該近赤外線吸収粘着剤組成物または近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルターなどに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、薄型で大画面に適用できる液晶ディスプレーやPDP(Plasma Display Panel)等の薄型ディスプレーが注目されている。薄型ディスプレーは波長が800nm〜1100nmの近赤外線を発生させる。この近赤外線が家電用リモコンの誤作動を誘発することが問題となっている。また、CCDカメラ等に使用される光半導体素子も近赤外線領域の感度が高いため、近赤外線の除去が必要である。そこで、近赤外線の吸収能が高く、可視領域での透明性が高い近赤外線吸収材料が求められている。
【0004】
近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素としては、従来、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子が使用されている。中でもジイモニウム系色素は近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている(例えば、特開2003−96040号公報及び特開2000−80071号公報参照)。
【0005】
また、PDPは、パネル内部に封入された希ガス、特にネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネル内部のセルに設けられたR、G、Bの蛍光体を発光させる。よって、この発光過程でPDPの作動に不必要な電磁波も同時に放出される。この電磁波も遮蔽されることが必要である。また、反射光を抑えるために反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム(アンチグレアフィルム)も必要である。このため、プラズマディスプレー用光学フィルターは、近赤外線吸収フィルム、電磁波遮蔽フィルム及び反射防止フィルムを、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に積層して作製されることが一般的である。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、PDPの前面側に載置される。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、接着剤や粘着剤を用いて、支持体であるガラスや衝撃吸収材の上に直接貼合わされて使用される場合もある。
【0006】
近年、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程を簡略化することを目的として、粘着剤に近赤外線吸収色素を含有させることにより、近赤外線吸収フィルムと粘着剤層を一体化させる試みがなされている(特許3621322号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−96040号公報
【特許文献2】特開2000−80071号公報
【特許文献3】特許3621322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ジイモニウム系色素をはじめとして近赤外線吸収色素は耐久性が劣る場合があり、近赤外線の吸収能の低下や着色は、ディスプレーや光半導体素子用途で使用する際の重大な問題となりうる。この劣化は、熱、水分、光等の様々な要因で、色素が変質することで引き起こされると考えられる。このため、従来から近赤外線吸収色素の耐久性改良が試みられてきたが、その効果は十分なものではない。また、リン酸銅系化合物は近赤外線吸収組成物中での含有量を高めることが難しいため、近赤外線吸収能に優れる薄膜の材料を得ることが困難である。
【0009】
そこで、塩に係る本発明は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させる近赤外線吸収組成物に好適に使用できる塩を提供することを目的とする。
【0010】
塩に係る本発明の他の目的は、可視領域での透明性と耐久性に優れる近赤外線吸収組成物を提供することである。
【0011】
また、近年、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程を簡略化することを目的として、粘着剤に近赤外線吸収色素を含有させ、近赤外線吸収フィルムと粘着剤層とを一体化させる試みがなされている。しかし、粘着剤のようなTgの低い樹脂中では色素の劣化はより激しく、実用に耐えうるジイモニウム色素含有粘着剤は未だ得られていない状況であった。
【0012】
塩に係る本発明は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性が高く、樹脂の形態によらず耐久性に優れる近赤外線吸収組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、塩に係る本発明は、該組成物を使用した近赤外線吸収材、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、および薄型ディスプレーを提供することを目的とする。
【0014】
上述の通り、ジイモニウム系色素は耐久性が劣る場合があり、近赤外線の吸収能の低下や着色は、光半導体素子やディスプレー用途で使用する際の重大な問題となりうる。特に、粘着剤樹脂のようなガラス転移点(Tg)の低い樹脂中では色素の劣化が激しく、実用に耐えうるジイモニウム系色素含有粘着剤は未だ得られていない。
【0015】
特開2005−325292号公報にはジイモニウムカチオンのアルキル基にハロゲン原子を導入することにより耐久性を向上させたジイモニウム色素が開示されている。確かにこのジイモニウム色素と高Tgバインダー樹脂を用いた近赤外線遮断フィルターでは、従来のジイモニウム色素と比較して耐久性の向上が見られる。しかし、劣化の激しい低Tgの粘着剤樹脂との組み合わせでは、その耐久性は不十分なものであった。
【0016】
そこで、粘着剤組成物に係る本発明は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性が高い近赤外線吸収材を作製するのに有用な、近赤外線吸収粘着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、粘着剤組成物に係る本発明は、該組成物を使用した近赤外線吸収材、光半導体素子用光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、および薄型ディスプレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
塩に係る本発明の発明者らは、近赤外線吸収色素、特に光学フィルターに使用される近赤外線吸収組成物の耐久性の改良について鋭意検討を行なった結果、特定の構造を持つ塩を近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させること、このような塩を添加した近赤外線吸収組成物は可視領域での透明性及び耐久性(特に耐熱性及び耐湿熱性)に優れることを見出した。また、この近赤外線吸収組成物を使用することによって、耐久性に優れかつ可視領域の透明性に優れた薄型ディスプレー用光学フィルター及び光半導体素子用光学フィルターが得られることを見出した。上記知見に基づいて、塩に係る本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、上記目的は、下記の式(1)、式(2)、式(3)又は式(4)で示されるアニオンを有し、それ自身が実質的に近赤外線吸収能を有さない近赤外線吸収組成物用塩を添加することで達成される。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
ただし、式(1)及び式(3)においてR、R及びRは、それぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示し、式(2)においてRはフルオロアルキレン基を示し、式(4)においてmは1以上6以下の整数を示す。
【0024】
また、塩に係る本発明において、上記他の目的は、本発明の塩及び近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収組成物によって達成される。
【0025】
塩に係る本発明において、上記さらなる別の目的は、本発明の近赤外線吸収材を用いてなる薄型ディスプレー用光学フィルター及び光半導体素子用フィルター、ならびにこれらのフィルターを用いてなる薄型ディスプレー及び光半導体素子によって達成される。
【0026】
粘着剤組成物に係る本発明の発明者らは、ジイモニウム色素と樹脂の組み合わせについて鋭意検討を行なった。その結果、特定の最大吸収波長を有するジイモニウム色素と特定の計算ガラス転移温度を有する樹脂とを組み合わせることにより、色素の耐久性に優れた近赤外線吸収粘着剤組成物が得られることを見出した。更に、樹脂の酸価を規定することにより、色素の耐久性がより一層高まることを見出した。
【0027】
すなわち、粘着剤組成物に係る本発明において、上記目的は、アセトン溶液における最大吸収波長が1000〜1060nmであるジイモニウム色素と、計算ガラス転移温度が−20℃以下である樹脂を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の塩は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させる。更に、本発明の塩は、可視領域での透明性を損なうことがないため、従来耐久性に問題のあったジイモニウム系色素をはじめとする様々な色素を含む近赤外線吸収材料において好適に使用できる。
【0029】
また、本発明の塩を含む近赤外線吸収組成物を使用した光学フィルターを薄型ディスプレーや光半導体素子に使用すると、近赤外線の吸収能及び可視光領域での透明性が長期間にわたって維持されるので、ディスプレーや光半導体素子の外観を向上することができる。
【0030】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用した近赤外線吸収材料は、色素の近赤外線吸収能が長期間に渡って維持される。よって、この近赤外線吸収粘着剤組成物を、光半導体素子や薄型ディスプレー用の光学フィルターの作製に使用すると、光学フィルターの薄層化や、光学フィルターの製造工程の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例2に係る試験体の、耐熱性試験前及び耐熱性試験後における可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図2】図2は、実施例6に係る試験体の、耐熱性試験前及び耐熱性試験後における可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3は、比較例3に係る試験体の、耐熱性試験前及び耐熱性試験後における可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図4】図4は、実施例9で得られた試験体の可視−近赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5は、実施例25で得られた試験体の可視−近赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】図6は、比較例4で得られた試験体の可視−近赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、実施例27で得られた試験体の可視−近赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、塩に係る本発明について説明し、次に、粘着剤組成物に係る本発明について説明する。塩に係る本発明は、以下の項目番号1−1から1−8において説明される。粘着剤組成物に係る本発明は、以下の項目番号2−1から2−6において説明される。
【0033】
1−1.[式(1)〜(4)のアニオン]
近赤外線吸収組成物用塩に係る本発明は、下記の式(1)、式(2)、式(3)又は式(4)で示されるアニオンを有し、それ自身が実質的に近赤外線吸収能を有さない近赤外線吸収組成物用塩である。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
ただし、式(1)及び式(3)においてR、R及びRは、それぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示し、式(2)においてRはフルオロアルキレン基を示し、式(4)においてmは1以上6以下の整数を示す。式(4)において、Rは限定されない。Rはあらゆる原子又はあらゆる原子団である。この塩が添加されることにより、近赤外線吸収色素の耐久性が向上しうる。
【0039】
「実質的に近赤外線吸収能を有さない」とは、下記の測定方法(A)により測定された透過率が、800nm以上1100nm以下のあらゆる波長において、80%以上であることを意味する。測定方法(A)は、次の通りである。
測定方法(A):測定される塩又はイオンを、塩の固形分が0.1重量%となるようにメチルエチルケトンに溶解し、この溶液について吸光度測定を行う。スペクトルの測定には、UV−3600(島津製作所)が用いられる。測定には、石英製であり光路長が10mmである測定セルが用いられる。
【0040】
上記式(1)においてR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよいフルオロアルキル基を示す。上記式(3)においてRはフルオロアルキル基を示す。
【0041】
、R及びRにおいて、フッ素原子の数や炭素数にはとくに限定されない。好ましいR、Rの例としては炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が挙げられる。式(1)で示されるアニオンとして、RとRとが同一であるアニオン及びRとRとが異なるアニオンが挙げられる。RとRとが同一である好ましい具体例として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド及びビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドが挙げられる。RとRとが異なる好ましい具体例として、ペンタフルオロエタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホニルヘプタフルオロプロパンスルホニルイミド、ノナフルオロブタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミド等が挙げられる。
【0042】
式(3)で示されるRSOの具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸等が挙げられる。耐久性向上効果の観点から、式(1)ではRとRが同一であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましく、式(3)ではトリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
【0043】
また、式(2)のRは、フルオロアルキレン基である。好ましいRとして、炭素数2〜10のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。Rは、より好ましくは炭素数は2〜8のパーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数3のパーフルオロアルキレン基である。炭素数3のパーフルオロアルキレン基として、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドが挙げられる。
【0044】
式(4)で示されるRとしては、Rがリン、アンチモン、ヒ素、ホウ素及びスズからなる群から選ばれるのが好ましい。耐久性向上効果を高める観点から、より好ましいRとして、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロスズ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン及びヘキサフルオロ砒酸アニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上のアニオンが挙げられる。
【0045】
1−2.[式(1)〜(4)のアニオンを含む塩]
式(1)から(4)で示されるアニオンを含む塩は、上記式(1)から(4)のアニオンと近赤外線吸収能を実質的に有さないカチオンとの塩である。
【0046】
本発明による前記式(1)から(4)のアニオンを含む塩として、上記アニオンの、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、キノリニウム塩、カルベニウム塩、フォスフォニウム塩、ヨードニウム塩などが使用できる。アルカリ金属塩として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の塩が挙げられる。遷移金属塩として、銀、銅等の塩が挙げられる。アンモニウム塩として、アンモニウム、n−ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム等の塩が挙げられる。アニリニウム塩として、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチル−4−メチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−ジフェニルアニリニウム、N,N,N−トリメチルアニリニウム等の塩が挙げられる。ピリジニウム塩として、ピリジニウム、N−メチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−メチル−4−メチル−ピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム、3−メチル−N−ブチルピリジニウム、2−メチルピリジニウム、3−メチルピリジニウム、4−メチルピリジニウム、2,3−ジメチルピリジニウム、2,4−ジメチルピリジニウム、2,6−ジメチルピリジニウム、3,4−ジメチルピリジニウム、3,5−ジメチルピリジニウム、2,4,6−トリメチルピリジニウム、2−フルオロピリジニウム、3−フルオロピリジニウム、4−フルオロピリジニウム、2,6−ジフルオロピリジニウム、2,3,4,5、6−ペンタフルオロピリジニウム、2−クロロピリジニウム、3−クロロピリジニウム、4−クロロピリジニウム、2,3−ジクロロピリジニウム、2,5−ジクロロピリジニウム、2,6−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロー2,4,6−トリフルオロピリジニウム、2−ブロモピリジニウム、3−ブロモピリジニウム、4−ブロモピリジニウム、2,5−ジブロモピリジニウム、2,6−ジブロモピリジニウム、3,5−ジブロモピリジニウム、2−シアノピリジニウム、3−シアノピリジニウム、4−シアノピリジニウム、2−ヒドロキシピリジニウム、3−ヒドロキシピリジニウム、4−ヒドロキシピリジニウム、2,3−ジヒドロキシピリジニウム、2,4−ジヒドロキシピリジニウム、2−メチル−5−エチルピリジニウム、2−クロロ−3−シアノピリジニウム、4−カルボキサミドピリジニウム、4−カルボキシアルデヒドピリジニウム、2−フェニルピリジニウム、3−フェニルピリジニウム、4−フェニルピリジニウム、2,6−ジフェニルピリジニウム、4−ニトロピリジニウム、4−メトキシピリジニウム、4−ビニルピリジニウム、4−メルカプトピリジニウム、4−t−ブチルピリジニウム、2,6−ジt−ブチルピリジニウム、2−ベンジルピリジニウム、3−アセチルピリジニウム、4−エチルピリジニウム、2−カルボン酸ピリジニウム、4−カルボン酸ピリジニウム、2−ベンゾイルピリジニウム等の塩が挙げられる。イミダゾリウム塩として、イミダゾリウム、1−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−N−ベンジルイミダゾリウム、1−メチル−3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等の塩が挙げられる。ピロリジニウム塩として、1−エチル−1−メチル−ピロリジニウム、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウム等の塩が挙げられる。キノリニウム塩として、キノリニウム、イソキノリニウム等の塩が挙げられる。カルベニウム塩として、トリフェニルカルベニウム、トリ−4−メトキシフェニルカルベニウム等の塩が挙げられる。フォスフォニウム塩として、ジメチルフェニルフォスフォニウム、トリフェニルフォスフォニウム、テトラエチルフォスフォニウム、テトラフェニルフォスフォニウム等の塩が挙げられる。スルフォニウム塩として、トリメチルスルフォニウム、トリフェニルスルフォニウム等の塩が挙げられる。ヨードニウム塩として、ジフェニルヨードニウム、ジ−4−メトキシフェニルヨードニウム等の塩が挙げられる。
【0047】
上記塩のうち、特に好ましいのは、アルカリ金属塩である。カチオンとして特に好ましいのは、アルカリ金属カチオンである。カチオンとして好ましいアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等である。
【0048】
1−3.[近赤外線吸収色素]
本発明の塩は、近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収組成物の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させることができる。したがって、他の本発明は、本発明の塩及び近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収組成物に関するものである。上述したように、本発明の塩は近赤外線吸収色素や近赤外線吸収組成物の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上できるため、本発明の近赤外線吸収組成物は、優れた耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を発揮できる。また、本発明の近赤外線吸収組成物は、可視領域での透明性にも優れている。
【0049】
本発明において、近赤外線吸収組成物で使用できる近赤外線吸収色素は、特に制限されず、例えば、シアニン系、ポリメチン系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ジチオール金属錯体系、フタロシアニン系、ジイモニウム系の近赤外線吸収色素等が挙げられる。これらの中でも、シアニン系及びジイモニウム系の近赤外線吸収色素は、可視領域の透明性に優れ、フタロシアニン系の近赤外線吸収色素は耐久性に優れるため、好ましい。
【0050】
本発明における好ましい上記ジイモニウム色素は、下記式(5)で示されるカチオンと、対アニオンからなる塩である。ただし式(5)においてRからRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
【0051】
【化9】

【0052】
からRを構成するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
からRを構成する炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖、分岐状又は脂環式アルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。具体的には、R〜Rとして、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基等が挙げられる。
【0055】
本発明では、R〜Rは、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、すべて同じであることが好ましい。
【0056】
ジイモニウム色素の対アニオンは、特に限定はされず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ペンタフルオロエタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミドイオン、トリフルオロメタンスルホニルヘプタフルオロプロパンスルホニルイミドイオン、ノナフルオロブタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミドイオン、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。ジイモニウムカチオンは、上記式(5)で示されるように、2価の陽イオンである。よって、例えば、塩化物イオン等の1価のアニオンが使用される場合には、本発明によるジイモニウム系色素は、ジイモニウムカチオン1個に対して、2個のアニオンが結合する形態である。
【0057】
ジイモニウム色素の対アニオンとして、下記式(6)〜(9)で示されるアニオンが好ましい。
【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
上記式(6)のR及びRにおいて、フッ素原子の数や炭素数にはとくに限定されない。好ましいR、Rの例としては炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が挙げられる。式(6)で示されるアニオンとして、RとRとが同一であるアニオン及びRとRとが異なるアニオンが挙げられる。RとRとが同一である好ましい具体例として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド及びビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドが挙げられる。RとRとが異なる好ましい具体例として、ペンタフルオロエタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホニルヘプタフルオロプロパンスルホニルイミド、ノナフルオロブタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミド等が挙げられる。
【0063】
また、上記式(7)のRは、フルオロアルキレン基である。好ましいRとして、炭素数2〜10のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。Rは、より好ましくは炭素数は2〜8のパーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数3のパーフルオロアルキレン基である。炭素数3のパーフルオロアルキレン基として、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドが挙げられる。
【0064】
上記式(8)で示されるRSOの具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸等が挙げられる。
【0065】
上記式(9)で示されるRのRは、リン、アンチモン、ヒ素、ホウ素及びスズからなる群から選ばれる。耐久性向上効果を高める観点から、より好ましいRとして、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロスズ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン及びヘキサフルオロ砒酸アニオンからなる群から選ばれる1種または2種以上のアニオンが挙げられる。
【0066】
上記のうち、好ましいアニオンは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドイオン、である。
【0067】
塩に係る本発明において用いられるジイモニウム色素は、アセトン溶液における最大吸収波長λが1000nm以上1060nm以下であるジイモニウム色素が特に好ましい。さらに好ましくは、この最大吸収波長λは、1010nm以上1055nm以下であり、より好ましくは、1020nm以上1050nm以下である。このようなジイモニウム色素は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性とに優れる。
【0068】
ジイモニウム色素の具体的な構造として、特開2005−325292号公報に記載されているものが挙げられる。
【0069】
ジイモニウム色素の化合物名として、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド)−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド)−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド)−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド)−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)が例示される。なお、括弧内の数値はアセトン溶液中での最大吸収波長を示す。
【0070】
ジイモニウム色素の具体的な製品としては、CIR−1085F(日本カーリット社製)が挙げられる。このCIR−1085Fは、アセトン溶液中での最大吸収波長が1049nmである。
【0071】
アセトン溶液における最大吸収波長は、次のように測定される。測定されるジイモニウム色素を所定量のアセトンに溶解させ、不溶分がないことを確認した後、吸光度測定を行う。スペクトルの測定には、UV−1600(島津製作所製)が使用される。測定には、石英製であり光路長が10mmである測定セルが用いられる。
【0072】
ジイモニウム色素以外の色素として、公知のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等が挙げられる。
【0073】
塩に係る本発明の近赤外線吸収組成物を薄型ディスプレイ用光学フィルターとして使用する場合には、上記のジイモニウム色素とともに最大吸収波長が800〜950nmのフタロシアニン系色素、最大吸収波長が800〜950nmのシアニン系色素または最大吸収波長が800〜950nmの金属ジチオール錯体系色素が併用されるのが好ましい。この併用により、800〜1100nmの近赤外線が効果的に吸収されうる。耐久性の良好な近赤外線吸収組成物を得る観点から、フタロシアニン色素が併用されるのが特に好ましい。
【0074】
塩に係る本発明で使用できるフタロシアニン系化合物としては、近赤外線吸収能に優れるものが好ましく、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、下記式(X)で表される化合物、または下記式(Y)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
[式(X)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化14】

【0076】
上記式(X)において、A〜A16は官能基を表す。上記式(X)において、A〜A16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A〜A16の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。なお、本明細書において、「アシル基」とは、日刊工業新聞社発行の第三版科学技術用語大辞典の17頁に記載される定義と同様であり、具体的には、有機酸からヒドロキシル基が除去された基であり、式:RCO−(Rは、脂肪基、脂環基または芳香族基である)で表される基である。
【0077】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(X)において、官能基A〜A16のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、上記式(X)において、官能基A〜A16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基または複素環基が置換されている場合、これらの官能基A〜A16に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0079】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(X)において、官能基A〜A16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個または2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0080】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0081】
また、金属Mとしての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR、{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらの誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0082】
[式(Y)で示されるフタロシアニン系化合物]
【化15】

【0083】
上記式(Y)において、B〜B24は官能基を表す。B〜B24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基または置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。B〜B24の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子またはオキシ金属を表す。
【0084】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(Y)において、官能基B〜B24のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
上記式(Y)において、官能基B〜B24のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基または複素環基が置換されている場合、これら官能基B〜B24に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0086】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(Y)において、官能基B〜B24の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個または2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0087】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0088】
また、金属Mとしての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R1)、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基またはそれらの誘導体を表す}、Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基またはそれらの誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、またはその誘導体を表す}などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0089】
具体的には、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14やTX−EX−906B、TX−EX−910B、TX−EX−902K(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0090】
また、本発明の近赤外線吸収組成物には近赤外線吸収色素としてシアニン系色素が用いられてもよい。シアニン系色素は近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されないが、インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンと、対アニオンからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオン、ベンゾチアゾリウム系カチオンとしては、下記式(a)〜(i)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化16】

【0092】
【化17】

【0093】
【化18】

【0094】
【化19】

【0095】
【化20】

【0096】
【化21】

【0097】
【化22】

【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンの対アニオンは、特に制限されず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンなどが使用できる。インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンの対アニオンは、前述した本発明の塩と同様に、上記式(1)〜(4)で示されるアニオンのいずれかであってもよい。
【0101】
より具体的には、上記一般式(a)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS812MI(対アニオンはヨウ化物イオン);上記一般式(b)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0712(対アニオンはヘキサフルオロリン酸イオン);上記一般式(c)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0726(対アニオンは塩化物イオン);上記一般式(d)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS780MT(対アニオンはp−トルエンスルホン酸イオン);上記一般式(e)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0006(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(f)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0081(対アニオンは過塩素酸イオン);上記一般式(g)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0773(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(h)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0772(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン);上記一般式(i)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0734(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)等の市販されているものを用いることができる。シアニン系色素を使用することにより可視領域の透明性が高い近赤外線吸収組成物が得られる。
【0102】
1−4.[樹脂]
本発明の近赤外線吸収組成物は、さらに樹脂を含むものであってもよい。本発明で使用する樹脂としては、一般に光学材料に使用しうるものであれば特に制限されず、出来るだけ透明性の高いものが好ましい。より具体的には、好ましい樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル酸エステル系ポリマー、メタクリル酸エステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポバール等のビニル系ポリマー、ナイロン等のポリアミド系、ポリウレタン系、PET等のポリエステル系、ポリカーボネート系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系などが好ましい。
【0103】
特に好ましい樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを重合してなるポリマーであって、この(メタ)アクリル酸エステルが、炭素数が1〜10の直鎖型、分岐型、脂環式、多環性脂環式アルキル基を有するポリマーである。具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等からなるポリマーが挙げられる。モノマーは1種のみを使用しても、複数種を共重合してもよい。それぞれのモノマーの使用量は特に限定されない。
【0104】
これらのうち、溶融または溶液化が可能である樹脂が好ましく使用される。この際、溶融が可能な高Tgの樹脂を使用すると、成形加工が可能な近赤外線吸収組成物が得られる。例えば、溶融が可能でTgが80℃以上の樹脂は、近赤外線吸収色素を練りこむことで成形材料とすることができる。このような樹脂として好適なものは、ポリメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル共重合体等のメタクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ブチラール樹脂、シクロポリオレフィンポリマー、アートン(日本合成ゴム製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、O−PET(鐘紡製)、スミペックス(住友化学製)、オプトレックス(日立化成工業製)が挙げられる。
【0105】
また、溶液化が可能な樹脂を用いることにより、近赤外線吸収組成物が溶液化されうる。この溶液化により、近赤外線吸収組成物がコーティング剤となりうる。この観点から、好ましい樹脂として、メタクリル酸エステル系ポリマー、アートン(日本合成ゴム製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、O−PET(鐘紡製)が挙げられる。特に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であって且つ直鎖状、分岐状、脂環式または多環性脂環式アルキル基を有するメタクリル酸エステルを重合したポリマーである。このメタクリル酸エステルとして、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。このポリマーは、1種のメタクリル酸エステル単量体からなるポリマーであってもよいし、複数のメタクリル酸エステル単量体からなる共重合体であってもよい。また、上記のメタクリル酸エステル以外の単量体と上記メタクリル酸エステルとを共重合したポリマーであってもよい。他の単量体としてはスチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;炭素数1〜15のアルキル基を有するアクリル酸エステル;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体等が挙げられる。上記のメタクリル酸エステル以外の単量体の使用量は好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。具体的には、スミペックス(住友化学製)、オプトレックス(日立化成工業製)、ハルスハイブリッドIR(日本触媒製)等が挙げられる。また、ガラス転移温度(Tg)が85℃よりも高い樹脂は、熱や水分による色素の劣化を効果的に抑制することができる。
【0106】
高Tgの樹脂は耐久性が極めて高いが、フィルム用途で使用する場合には割れやすいという欠点がある。樹脂の割れを抑制するためにはポリスチレン換算の重量平均分子量が5万以上、さらに好ましくは10万以上が好ましい。
【0107】
本発明の近赤外線吸収組成物はTgが85℃以下であっても耐久性は良好である。樹脂の種類は特に制限されず、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用できる。割れにくさと、高い耐久性を両立させるためには、樹脂のTgは65〜85℃、好ましくは70〜80℃であることが好ましい。
【0108】
割れにくくするためには、樹脂のポリマー構造は直鎖型のよりも分岐型の方が好ましい。分岐構造にすると高分子量化した場合でも樹脂の粘度が低く、取り扱いが容易になる。
【0109】
分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエステルEG、ライトエステル1・4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が使用できる。
【0110】
一方、この樹脂は、粘着剤若しくは接着剤であってもよいし、粘着剤と接着剤との混合物であってもよい。粘着剤である樹脂を、以下において粘着剤樹脂ともいう。樹脂として粘着剤や接着剤を用いた本発明の近赤外線吸収組成物は、他の機能性フィルムと貼りあわせることができるため、簡便かつ経済的に光学フィルターを製造することができる。粘着剤として好適な樹脂には、アクリル系、シリコン系、SBR系等が挙げられる。特に好ましくはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等を主成分として重合したポリマーである。被着体への粘着性を付与する観点から樹脂のTgは−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。使用される単量体は、下記式で表されるFoxの式を用いて計算されたガラス転移温度(計算ガラス転移温度)Tgが所定の値を満足していれば特に限定されない。
1/(Tg+273)=Σ[Wi/(Tgi+273)] :Foxの式
Tg(℃) : ガラス転移温度(計算ガラス転移温度)
Wi : 各単量体の重量分率
Tgi(℃) : 各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度
【0111】
本発明において、樹脂が1種の単量体からなる場合、この樹脂のガラス転移温度Tgは、実測値である。樹脂が共重合体である場合、この樹脂のガラス転移温度Tgは、上記Foxの式により計算された計算ガラス転移温度とされうる。
【0112】
粘着剤樹脂の計算溶解性パラメータが高い場合にはジイモニウム色素の耐久性が劣る場合があるため、溶解性パラメータは9.80以下であることが好ましい。計算溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147ページから154ページ記載の方法によって計算される値である。以下にその方法を概説する。
【0113】
単独重合体の溶解性パラメータ(δ)は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下式の計算法により算出される。
δ=(Σ△ei/Σ△vi)1/2
△ei: i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
△vi: i成分の原子または原子団のモル体積
【0114】
共重合体の溶解性パラメータは、その共重合体を構成する各構成単量体の蒸発エネルギーにモル分率を乗じて合算したもの(Σ△ei)を、各構成単量体のモル体積にモル分率を乗じて合算したもの(Σ△vi)で割り、1/2乗をとることで算出される。
【0115】
本発明に係る粘着剤樹脂として、脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを好ましくは0.05〜40重量%、より好ましくは0.5〜40重量%、特に好ましくは5〜40重量%共重合した粘着剤樹脂は、ジイモニウム色素の耐久性がよく好ましい。その理由は不明であるが、これら脂環式、多環性脂環式、芳香環式、多環性芳香環式のアルキル基部分とジイモニウム色素がスタッキング構造を採ることにより、耐熱性や耐湿熱性を向上させるものと考えられる。好ましい粘着剤樹脂は、芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とが共重合されてなる。特に、(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とが共重合されてなる粘着剤樹脂であって、この(メタ)アクリル酸エステルが芳香環を含有するアルキル基を有している場合、ジイモニウム色素の耐久性と粘着物性とのバランスが良好である。より好ましい粘着剤樹脂は、下記(m1)および(m2)を共重合してなる樹脂、または、下記(m1)〜(m3)を共重合してなる樹脂である。
(m1)脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。
(m2)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。ただし、このアルキル基は、直鎖型または分岐型であり、このアルキル基の炭素数は1〜10である。
(m3)その他共重合可能な単量体。
【0116】
共重合体の樹脂において、単量体の好ましい比率は、(m1)の(メタ)アクリル酸エステルが5〜40重量%であり、(m2)の(メタ)アクリル酸エステルが60〜95重量%であり、(m3)のその他の単量体が0〜30重量%である。
【0117】
上記単量体(m1)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0118】
上記単量体(m2)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0119】
上記単量体(m3)の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどに代表されるスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどに代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノアルキルエステル;マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノアルキルエステル;イタコン酸のジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。また、カルボキシル基、オキサゾリニル基、ピロリドニル基、フルオロアルキル基等の官能基を有する単量体も、本発明の目的を損なわない範囲で共重合されてもよい。
【0120】
重合に使用する開始剤は過酸化物系、アゾ系等、市販のものが使用できる。過酸化物系の開始剤としては、パーブチルO、パーヘキシルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシエステル系;パーロイルL、パーロイルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシジカーボネート系;ナイパーBW、ナイパーBMT(いずれも日本油脂製)などのジアシルパーオキサイド系;パーヘキサ3M、パーヘキサMC(いずれも日本油脂製)などのパーオキシケタール系;パーブチルP、パークミルD(いずれも日本油脂製)などのジアルキルパーオキサイド系;パークミルP、パーメンタH(いずれも日本油脂製)などのハイドロパーオキサイド系等が挙げられる。アゾ系の開始剤としてはABN−E、ABN−R、ABN−V(いずれも日本ヒドラジン工業製)等が挙げられる。
【0121】
樹脂の重合の際には必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤は所定の分子量に調整できれば特に制約されず、ノルマルドデシルメルカプタン、ジチオグリコール、チオグリコール酸オクチル、メルカプトエタノール等のチオール化合物等が使用できる。
【0122】
また、樹脂の重合は無溶媒で行ってもよいし、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒中で重合する際には、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;その他の公知の有機溶剤が使用できる。使用する有機溶媒の種類は得られる樹脂の溶解性、重合温度を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶媒の残りにくさの点からトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましい。
【0123】
また、樹脂は単一の組成からなるものでもよいし、異なる組成のポリマーを複合化したポリマーアロイやポリマーブレンドであってもよい。
1−5.[近赤外線吸収組成物]
【0124】
本発明の近赤外線吸収組成物は、実質的に近赤外線吸収能を有さない塩に由来するアニオン及びカチオンを含む。好ましくは、本発明の近赤外線吸収組成物は、近赤外線吸収色素に由来するアニオン及びカチオンを含む。
【0125】
本発明の近赤外線吸収組成物は、上記式(1)、上記式(2)、上記式(3)又は上記式(4)で示されるアニオンを有する。本発明の近赤外線吸収組成物は、上記式(1)から(4)で示されるアニオンのカウンターカチオン(対カチオン)としてのカチオンを有する。このカチオンは、好ましくはアルカリ金属カチオンである。好ましくは、本発明の近赤外線吸収組成物は、前述した近赤外線吸収色素を含む。好ましくは、本発明の近赤外線吸収組成物は、上記式(5)で表されるジイモニウムカチオンを含む。好ましくは、本発明の近赤外線吸収組成物は、上記式(6)〜(9)で表されるアニオンを含む。
【0126】
前述したように、本発明の近赤外線吸収組成物は、近赤外線吸収色素を含んでもよい。近赤外線吸収色素の配合量は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。例えば、ジイモニウム色素が用いられる場合、ジイモニウム色素の配合量、またはジイモニウム色素とその他の近赤外線吸収色素とを合計した配合量は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。本発明の近赤外線吸収組成物を厚さ10μm程度の薄膜として使用する場合、近赤外線吸収色素の配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10重量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0127】
本発明の近赤外線吸収組成物は可視領域の透明性、近赤外線吸収能の持続性、良好な加工性を特徴とする。本発明の近赤外線吸収組成物には、必要に応じて可視光を吸収する色素が添加されてもよい。可視光を吸収する色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系、金属ジチオール錯体系、スクアリリウム系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系、ジケトピロロピロール系等、従来公知の色素を広く使用することができる。
【0128】
本発明の近赤外線吸収組成物をPDP用の光学フィルターとして使用する場合は、不要なネオン発光を吸収するために最大吸収波長が550〜650nmの可視吸収色素が併用されるのが好ましい。ネオン発光を吸収する色素の種類は特に限定されず、例えばシアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が使用できる。具体的にはアデカアークルズTY−102(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−14(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−15(旭電化工業社製)、TAP−2(山田化学工業製)、TAP−18(山田化学工業製)、TAP−45(山田化学工業製)、商品名NK−5451(林原生物化学研究所製)、NK−5532(林原生物化学研究所製)、NK−5450(林原生物化学研究所製)等が挙げられる。ネオン発光を吸収するための色素の添加量は、色素の種類によって異なるが、最大吸収波長での透過率が20〜80%程度になるように添加するのが好ましい。
【0129】
また、近赤外線吸収組成物からなる薄膜の色調を調整するために、調色用の可視光吸収色素を添加してもよい。調色用の色素の種類は特に限定されないが、1:2クロム錯体、1:2コバルト錯体、銅フタロシアニン、アントラキノン、ジケトピロロピロール等が使用できる。具体的には、オラゾールブルーGN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブルーBL(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッド2B(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッドG(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブラックCN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2GLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2RLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、マイクロリスDPPレッドB−K(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、等が挙げられる。
【0130】
更に、本発明の近赤外線吸収組成物は、必要に応じて、その性能を失わない範囲で溶剤や添加剤、硬化剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0131】
本発明の近赤外線吸収組成物は、近赤外線吸収色素が樹脂中に固体(例えば、粉末)の形態で混合されたものであってもよい。近赤外線吸収組成物は、コーティング剤として利用されうる。近赤外線吸収組成物がフィルム上にコーティングされる場合、近赤外線吸収色素は溶剤中に、溶解、分散または懸濁した形態であることが好ましい。
【0132】
この際使用できる溶剤としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系;トルエン、キシレンなどの芳香族系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトニトリル等のニトリル系;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系等が使用できる。これらの溶剤は単独で使用されてもよいし、複数の溶剤が混合されてもよい。色素の耐久性を向上させるためにはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためにはトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等の沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるにはブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
【0133】
コーティング剤の粘度は塗工機の種類によって適宜選択されるが、マイクログラビアコーター等のような小径グラビアキスリバース方式で塗工する場合は1〜1000mPa・s、ダイコーター等押し出し方式で塗工する場合は100〜10000mPa・sが一般的である。コーティング剤の固形分は塗料粘度に合わせて調整される。
【0134】
また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に使用される従来公知の添加剤を用いることができ、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。なお、硬化剤としてはイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等が用いられうる。
【0135】
本発明の近赤外線吸収組成物は、光学用、農業用、建築用もしくは車両用の近赤外線吸収材料、感光紙などの画像記録材料、光ディスク用などの情報記録用材料、色素増感型太陽電池などの太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料または眼精疲労防止材に使用されうる。本発明の近赤外線吸収組成物は、特にフィルムやシート状での使用が好ましい。
【0136】
1−6.[近赤外線吸収材]
近赤外線吸収材に係る本発明は、本発明の近赤外線吸収組成物を含む近赤外線吸収材である。本発明の近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収組成物をフィルム状に成形したものであってもよいし、透明基材上に前記近赤外線吸収材料を含む塗膜を積層したものであってもよい。
【0137】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー;酢酸ビニルやハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー;PET等のポリエステル;ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。更に、該透明基材には、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングが施されてもよい。
【0138】
また、上記透明基材を構成する基材樹脂には、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等の配合が可能である。上記透明基材は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基材を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0139】
コーティング法で近赤外線吸収フィルムを得る場合の透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。また、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、紫外線吸収フィルムなどの機能性フィルムも透明基材として使用できる。これにより、簡便に薄型ディスプレー用や光半導体素子用の光学フィルターを作製することができる。透明基材は、フィルムであることが好ましい。
【0140】
これらのうち、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが透明基材として好ましく使用される。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合には、アルカリ成分が少ないものが近赤外線吸収色素の耐久性の観点から好ましい。
【0141】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは一般に0.1μmから10mm程度であるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0142】
本発明の近赤外線吸収材を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次の方法が利用できる。例えば、(I)樹脂に本発明の近赤外線吸収組成物を混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法;(II)本発明の近赤外線吸収組成物とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法;(III)本発明の近赤外線吸収組成物を上記の透明基材上にコーティングする方法等である。
【0143】
(I)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明の近赤外線吸収組成物を樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。
【0144】
(II)の作製方法としては、本発明の近赤外線吸収材料とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又はそれらの混合物を金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する方法が挙げられる。多くの樹脂がこの工程で成形可能であり、その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、メタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。このキャスティング法により、硬度、耐熱性及び耐薬品性に優れたアクリルシートが得られる。
【0145】
上記重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5重量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0146】
(III)の方法としては、本発明の近赤外吸収組成物を透明基材上にコーティングする方法、本発明の近赤外線吸収組成物を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を透明基材上にコーティングする方法等がある。
【0147】
基材に近赤外線吸収組成物を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。塗布後の乾燥・硬化方法としては、熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥・硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0148】
塗膜の乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥や遠赤外線乾燥を用いることができる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。
【0149】
本発明の近赤外線吸収組成物は、可視領域の透明性及び近赤外線の吸収能が高い優れた光学フィルターの構成材料となりうる。本発明の近赤外線吸収組成物は、従来の近赤外線吸収材料と比べて耐久性、特に耐熱性と耐湿熱性が高いため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、本発明の近赤外線吸収組成物は、シートやフィルム状にするのが容易なため、薄型ディスプレー用や光半導体素子用に有効である。そのほかに、本発明の近赤外線吸収組成物は、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば農業用フィルム、断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0150】
1−7.[光学フィルター]
本発明の近赤外線吸収材料は光学フィルターに好適である。光学フィルターに係る本発明は、本発明の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用または薄型ディスプレー用光学フィルターである。この光学フィルターにおいて、可視領域の全光線透過率が40%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。この光学フィルターにおいて、波長800〜1100nmの近赤外線の透過率が30%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0151】
本発明の光学フィルターには、上記の近赤外線吸収材料からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、ガラス等の支持体などが設けられていてもよい。
【0152】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよく、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうち少なくともどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせた光学フィルターであり、より好ましくは更に電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0153】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層とされるのが好ましい。近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層相互間の積層順序は任意である。また、3層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0154】
各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の公知の高極性ポリマーをアンカーコート剤として使用してもよい。
【0155】
薄型ディスプレー用光学フィルターには、画面を見やすくするために、反射防止層またはぎらつき防止層を人側の最表層に設けることが好ましい。
【0156】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがある。前者の場合の製造方法として、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に反射防止コーティングを形成させる方法がある。また、後者の場合の製造方法として、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0157】
ぎらつき防止層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。
【0158】
また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤とを有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を用い、この塗布液を、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0159】
反射防止層またはぎらつき防止層と近赤外線吸収層とを有する光学フィルターは、反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に本発明の近赤外線吸収組成物からなる層を積層させることで得られる。積層させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収組成物と反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムとを粘着剤で張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収材料を反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に直接塗布してもよい。また、粘着性を有する近赤外線吸収組成物を用いた場合には、この粘着性を用いて近赤外線吸収層と他の層とを直接貼り付けることができる。反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に近赤外線吸収層を設ける場合には、紫外線による色素の劣化を抑えるために、透明基材として紫外線吸収フィルムを使用するのが好ましい。
【0160】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、パネルから発生する電磁波を除去するために、電磁波遮蔽層を設けることが好ましい。
【0161】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0162】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の2層を有する光学フィルターは電磁波防止材料と近赤外線吸収組成物とを複合化することで得られる。複合化させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収組成物と電磁波遮蔽フィルムを粘着剤で張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収材料を電磁波遮蔽フィルムに直接塗布してもよい。また、近赤外線吸収組成物が粘着性を有している場合、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収組成物と電磁波遮蔽フィルムとが直接張り合わされてもよい。また、フィルム上の金属のメッシュを平滑化する際に本発明の近赤外線吸収組成物を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する際に、本発明の近赤外線吸収組成物を使用することもできる。
【0163】
近赤外線吸収層、反射またはぎらつき防止層および電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収組成物からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム及び電磁波遮蔽フィルムの3枚を粘着剤で張り合わせたものが使用できる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。近赤外線吸収組成物が粘着性を有している場合、近赤外線吸収フィルムを、反射またはぎらつき防止フィルムと電磁波遮蔽フィルムとで挟むように積層してもよい。この場合、近赤外線吸収フィルムの粘着力を利用して3枚のフィルムが接着されるから、粘着剤が不要とされうる。
【0164】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成を簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのがよい。例えば近赤外線吸収層と反射またはぎらつき防止層とを含む複合化フィルムを粘着剤で電磁波遮蔽フィルムに張り合わせた光学フィルターや、近赤外線吸収層および電磁波遮蔽層を含む複合化フィルムを粘着剤で反射またはぎらつき防止フィルムに張り合わせた光学フィルター、電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層を含む複合化フィルムを粘着剤で近赤外線吸収フィルムに張り合わせた光学フィルターが挙げられる。
【0165】
近赤外線吸収層、反射またはぎらつき防止層および電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収組成物からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムの3枚を張り合わせたものが使用できる。近赤外線吸収組成物が粘着性を有している場合、好ましくは、上記近赤外線吸収フィルムが、反射またはぎらつき防止フィルムと、電磁波遮蔽フィルムとで挟まれた構造を有する光学フィルターが好ましい。これら3層のフィルムは、近赤外線吸収フィルムの粘着性を利用して積層されているため、従来フィルム同士の張り合わせのためだけに設けられていた粘着層が省略されうる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。
【0166】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成をさらに簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのが良い。好ましい光学フィルターは、1枚のフィルムに電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層とを含む複合化フィルムに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収粘着層を張り合わせた光学フィルターである。
【0167】
本発明の薄型ディスプレー用光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。表示装置から離して設置する場合は支持体としてガラスを使用するのが好ましい。表示装置に直接張り合わせる場合にはガラスを使用しない光学フィルターが好ましい。
【0168】
1−8.[薄型ディスプレー]
本発明の近赤外線吸収組成物を積層した光学フィルターが薄型ディスプレーに搭載された場合、長期間にわたり良好な画質が維持される。薄型ディスプレーに係る本発明は、本発明の近赤外線吸収材料、本発明の近赤外線吸収材、または本発明の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレーである。表示体に直接、光学フィルターを張り合わせた薄型ディスプレーはより鮮明な画質が得られる。光学フィルターを直接張り合わせる場合は表示体のガラスが強化ガラスとされるか、または衝撃吸収層を設けた光学フィルターとされるかのいすれかが好ましい。
【0169】
本発明の光学フィルターを表示装置に貼り付ける際の粘着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム類やポリアクリル酸メチル、ボリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、さらに粘着付与剤としてピッコライト、ポリベール、ロジンエステル等を添加したものを用いてもよい。また、粘着剤として、特開2004−263084号公報で示されているように衝撃吸収能を有する粘着剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0170】
この粘着剤層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、この剥離フィルムにより、光学フィルターを薄型ディスプレーの表面に張り付けるまでの間、粘着剤層を保護し、粘着剤層にゴミ等が付着しないようにするのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、この非粘着部分を剥離開始部としてもよい。この場合、貼着時の作業がやりやすい。
【0171】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。衝撃吸収層は支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報または特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
以上の項目番号1−1から1−8は、塩に係る本発明についての説明である。次に、以下の項目番号2−1から2−6において、粘着剤組成物に係る本発明についての説明がなされる。
【0173】
2−1.[ジイモニウム色素]
本発明に用いられるジイモニウム色素は、アセトン溶液における最大吸収波長が1000以上1060nm以下であるジイモニウム色素である。好ましくは、ジイモニウム色素のアセトン溶液における最大吸収波長は、1010以上1055nm以下であり、より好ましくは1020nm以上1050nm以下である。このようなジイモニウム色素は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能の持続性とに優れる。
【0174】
ジイモニウム色素の具体的な構造としては、下記式(10)で示されるジイモニウムカチオンと、下記式(11)または(12)で示されるアニオンとからなるジイモニウム色素が例示される。
【0175】
【化25】

【0176】
【化26】

【0177】
【化27】

【0178】
ただし、式(10)中、R〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表わす。また、式(11)中、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示す。また、式(12)中、Rはフルオロアルキレン基を示す。
【0179】
〜R16を構成する炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖、分岐状又は脂環式アルキル基等が挙げられる。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。
【0180】
また、R〜R16のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。
【0181】
ジイモニウム色素におけるアニオンの種類は特に限定されない。好ましいアニオンは、イミドアニオンである。より好ましいアニオンは、上記式(11)または式(12)で表されるアニオンである。
【0182】
上記式(11)に関し、RまたはRで示されるフルオロアルキル基として、CF、C、C、C等のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。RとRとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記式(12)に関し、Rで示されるフルオロアルキレン基として、(CF(ただし、nは2から12の整数)等が挙げられる。
【0183】
好ましいイミドアニオンとして、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド、ペンタフルオロエタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミドイオン、ノナフルオロブタンスルホニルトリフルオロメタンスルホニルイミドイオン等が挙げられる。さらに、ジイモニウム色素のアニオンとして、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロ燐酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオンおよび過塩素酸アニオンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のアニオンも使用されうる。
【0184】
ジイモニウム色素の具体的な構造として、特開2005−325292記載のものが挙げられる。
【0185】
ジイモニウム色素の化合物名としては、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、 ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレン)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1048nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレン)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1020nm)、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレン)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1032nm)およびビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレン)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス−{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム(1049nm)が挙げられる。なお、括弧内の数値は、アセトン溶液中での最大吸収波長を示す。
【0186】
本発明に係るジイモニウム色素の具体的な製品としては、CIR−1085F(日本カーリット社製)が挙げられる。このCIR−1085Fは、アセトン溶液中での最大吸収波長が1049nmである。
【0187】
アセトン溶液における最大吸収波長の測定方法は、前述した通りである。
【0188】
2−2.[樹脂]
本発明に係る樹脂は、計算ガラス転移温度が−20℃以下のものであれば特に限定されない。本発明に係る樹脂は、粘着性を有している。この粘着性は、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体との直接的な接着を可能とする。接着剤を介在させることなく、近赤外線吸収粘着剤組成物と被着体とが接着されうる。以下において、この樹脂を粘着剤樹脂ともいう。
【0189】
2−2−1.計算ガラス転移温度
被着体への粘着性を付与する観点から、粘着剤樹脂の計算ガラス転移温度は、−20℃以下が好ましく、さらに好ましくは−30℃以下である。−20℃よりも高い場合、粘着性が不足することがある。計算ガラス転移温度Tgは、前述したFoxの式により求められる。樹脂の重合に使用される単量体は、前述したFoxの式を用いて計算されたガラス転移温度(計算ガラス転移温度)Tgが所定の値を満足していれば特に限定されない。
【0190】
2−2−2.酸価
粘着剤樹脂には、被着体との密着性向上および粘着力アップを目的として、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体が共重合されるのが一般的である。ただし、カルボキシル基等の官能基はジイモニウム色素を劣化させるため、粘着剤の酸価は25以下が好ましく、好ましくは0以上20以下、より好ましくは0以上10以下、最も好ましくは0である。「酸価」とは、粘着剤樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg量を言う。
【0191】
2−2−3.計算溶解性パラメータ
粘着剤樹脂の計算溶解性パラメータが高い場合にはジイモニウム色素の耐久性が劣る場合があるため、溶解性パラメータは9.80以下であることが好ましい。計算溶解性パラメータの内容及び計算方法は前述の通りである。共重合体の溶解性パラメータの算出方法についても前述の通りである。
【0192】
2−2−4.共重合体組成
粘着剤樹脂は、共重合体でもよい。本発明に係る粘着剤樹脂として、脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを好ましくは0.05〜40重量%、より好ましくは0.5〜40重量%、特に好ましくは5〜40重量%共重合した粘着剤樹脂は、ジイモニウム色素の耐久性がよく好ましい。その理由は不明であるが、これら脂環式、多環性脂環式、芳香環式、多環性芳香環式のアルキル基部分とジイモニウム色素がスタッキング構造を採ることにより、耐熱性や耐湿熱性を向上させるものと考えられる。好ましい粘着剤樹脂は、芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とが共重合されてなる。特に、(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とが共重合されてなる粘着剤樹脂であって、この(メタ)アクリル酸エステルが芳香環を含有するアルキル基を有している場合、ジイモニウム色素の耐久性と粘着物性とのバランスが良好である。
【0193】
より好ましい粘着剤樹脂は、下記(m4)および(m5)を共重合してなる樹脂、または、下記(m4)〜(m6)を共重合してなる樹脂である。
(m4)脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。
(m5)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル。ただし、このアルキル基は、直鎖型または分岐型であり、このアルキル基の炭素数は1〜10である。
(m6)その他共重合可能な単量体。
【0194】
共重合体の樹脂において、単量体の好ましい比率は、(m4)の(メタ)アクリル酸エステルが5〜40重量%であり、(m5)の(メタ)アクリル酸エステルが60〜95重量%であり、(m6)のその他の単量体が0〜30重量%である。
【0195】
上記(m4)の(メタ)アクリル酸エステルの例は、前述した(m1)と同じである。上記(m5)の(メタ)アクリル酸エステルの例は、前述した(m2)と同じである。上記(m6)の単量体の例は、前述した(m3)と同じである。
【0196】
粘着剤樹脂の重合に使用される開始剤として、過酸化物系、アゾ系等、市販のものが使用できる。過酸化物系の開始剤としては、パーブチルO、パーヘキシルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシエステル系;パーロイルL、パーロイルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシジカーボネート系;ナイパーBW、ナイパーBMT(いずれも日本油脂製)などのジアシルパーオキサイド系;パーヘキサ3M、パーヘキサMC(いずれも日本油脂製)などのパーオキシケタール系;パーブチルP、パークミルD(いずれも日本油脂製)などのジアルキルパーオキサイド系;パークミルP、パーメンタH(いずれも日本油脂製)などのハイドロパーオキサイド系等が挙げられる。アゾ系の開始剤としてはABN−E、ABN−R、ABN−V(いずれも日本ヒドラジン工業製)等が挙げられる。
【0197】
粘着剤樹脂の重合の際には必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤は特に制約されず、ノルマルドデシルメルカプタン、ジチオグリコール、チオグリコール酸オクチル、メルカプトエタノール等のチオール化合物等が使用できる。
【0198】
また、粘着剤樹脂の重合は無溶媒で行ってもよいし、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒中で重合する際には、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;その他の公知の有機溶剤が使用できる。使用する有機溶媒の種類は得られる樹脂の溶解性、重合温度を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶媒の残りにくさの点からトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましい。
【0199】
また、粘着剤樹脂は単一の組成からなるものでもよいし、異なる組成のポリマーを複合化したポリマーアロイやポリマーブレンドであってもよい。
【0200】
分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエステルEG、ライトエステル1・4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が使用できる。
【0201】
2−3.[近赤外線吸収粘着剤組成物]
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、アセトン溶液における最大吸収波長が1000nm以上1060nm以下であるジイモニウム色素を含有するので、可視領域の透明性と近赤外線吸収能とに優れる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、粘着性を有する樹脂を含有するので、被着体に対して容易に接着されうる。
【0202】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、他の近赤外線吸収色素が添加されてもよい。併用されうる他の近赤外線吸収色素としては、公知のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等が挙げられる。
【0203】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を薄型ディスプレイ用光学フィルターとして使用する場合には、上記のジイモニウム色素とともに最大吸収波長が800〜950nmのフタロシアニン系色素、最大吸収波長が800〜950nmのシアニン系色素または最大吸収波長が800〜950nmの金属ジチオール錯体系色素が併用されるのが好ましい。この併用により、800〜1100nmの近赤外線が効果的に吸収されうる。耐久性の良好な近赤外線吸収粘着剤組成物を得る観点から、フタロシアニン色素が併用されるのが特に好ましい。
【0204】
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物としては、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されず、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、前述された式(X)で表される化合物又は式(Y)で表される化合物が挙げられる。これらの式(X)及び式(Y)に関するあらゆる説明は、塩に係る本発明において前述した上記説明と同じである。
【0205】
粘着剤組成物に係る本発明に用いられうる具体的なフタロシアニン系化合物として、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14やTX−EX−906B、TX−EX−910B、TX−EX−902K(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0206】
また、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には近赤外線吸収色素としてシアニン系色素が併用されてもよい。シアニン系色素は近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されないが、インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンと、対アニオンからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオンまたはベンゾチアゾリウム系カチオンとしては、前述した式(a)、式(b)、式(c)、式(d)、式(e)、式(f)、式(g)、式(h)及び式(i)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。式(a)、式(b)、式(c)、式(d)、式(e)、式(f)、式(g)、式(h)及び式(i)に関して前述したあらゆる説明は、粘着剤組成物に係る本発明にも適用される。シアニン系色素を使用することにより可視領域の透明性が高い近赤外線吸収粘着剤組成物が得られる。
【0207】
本発明のジイモニウム色素の配合量、または本発明のジイモニウム色素とその他の近赤外線吸収色素とを合計した配合量は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を10〜30μmの薄膜として使用する場合、配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。例えば、ジイモニウム色素とフタロシアニン系色素とを併用する場合、これらの色素を合計した配合量は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10重量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0208】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は可視領域の透明性、近赤外線吸収能の持続性、良好な粘着性を特徴とする。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、必要に応じて可視光を吸収する色素が添加されてもよい。可視光を吸収する色素の例は、塩に係る本発明において前述した通りである。
【0209】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物をPDP用の光学フィルターとして使用する場合は、不要なネオン発光を吸収するために最大吸収波長が550〜650nmの可視吸収色素を併用するのが好ましい。ネオン発光を吸収する色素の種類は特に限定されず、例えば塩に係る本発明において前述した色素が挙げられる。ネオン発光を吸収するための色素の添加量は、色素の種類によって異なるが、最大吸収波長での透過率が20〜80%程度になるように添加するのが好ましい。
【0210】
また、近赤外線吸収粘着剤組成物からなる薄膜の色調を調整するために、調色用の可視光吸収色素を添加してもよい。調色用の色素の種類は特に限定されず、例えば塩に係る本発明において前述した色素が挙げられる。
【0211】
更に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、必要に応じて、その性能を失わない範囲で溶剤や添加剤、硬化剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0212】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、近赤外線吸収色素が樹脂中に固体(例えば、粉末)の形態で混合されたものであってもよい。近赤外線吸収粘着剤組成物がフィルム上にコーティングされる場合は、近赤外線吸収色素が溶剤中に溶解、分散または懸濁した形態であることが好ましい。
【0213】
コーティングの際に使用できる溶剤としては、塩に係る本発明において前述した溶剤が挙げられ、これらを単独で使用しても混合して使用してもよい。色素の耐久性を向上させるためにはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためにはトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等の沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるにはブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
【0214】
コーティング剤の粘度は塗工機の種類によって適宜選択され、塩に係る本発明において前述した通りである。コーティング剤の固形分は塗料粘度に合わせて調整される。
【0215】
また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に使用される従来公知の添加剤が用いられうる。この添加剤として、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。なお、硬化剤としてはイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等を使用することができる。
【0216】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、光学用、農業用、建築用または車両用の近赤外線吸収材料、感光紙などの画像記録材料、光ディスク用などの情報記録用材料、色素増感型太陽電池などの太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料、眼精疲労防止材に使用されうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、特にフィルムやシート状での使用が好ましい。
【0217】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物には、塩に係る本発明において前述された塩が添加されてもよい。この塩が添加されることにより、粘着物性と耐久性とのバランスが更に良好となる。
【0218】
2−4.[近赤外線吸収材]
本発明に係る近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む。本発明の近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収粘着剤組成物をフィルム状に成形したものであってもよいし、透明基材上に前記近赤外線吸収粘着剤組成物を含む塗膜を積層したものであってもよい。
【0219】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としては、ガラス;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー;酢酸ビニルやハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー;PET等のポリエステル;ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。更に、該透明基材には、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングが施されてもよい。また、上記透明基材を構成する基材樹脂には、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等の配合が可能である。上記透明基材は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基材を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0220】
コーティング法で近赤外線吸収フィルムを得る場合の透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。また、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、紫外線吸収フィルムなどの機能性フィルムも透明基材として使用できる。これにより、簡便に薄型ディスプレー用や光半導体素子用の光学フィルターを作製することができる。透明基材は、フィルムであることが好ましい。
【0221】
これらのうち、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが透明基材として好ましく使用される。透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合には、アルカリ成分が少ないものが近赤外線吸収色素の耐久性の観点から好ましい。
【0222】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは、一般に0.1μmから10mm程度とされるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0223】
本発明の近赤外線吸収材を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次の方法が利用できる。例えば、(I)樹脂と本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とを混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法;(II)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法;(III)本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を上記の透明基材上にコーティングする方法等である。
【0224】
(I)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物を樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。
【0225】
(II)の作製方法としては、本発明に係る近赤外線吸収粘着剤組成物とモノマー又はオリゴマーとを重合触媒の存在下にキャスト重合し、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又は金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する方法が挙げられる。多くの樹脂がこの過程で成形可能である。その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、硬度、耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルシートが得られるメタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。
【0226】
重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5重量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0227】
(III)の方法としては、本発明の近赤外吸収材料を透明基材上にコーティングする方法、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を透明基材上にコーティングする方法等がある。
【0228】
基材に近赤外線吸収粘着剤組成物を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。この塗工機として、例えば、塩に係る本発明において前述されたコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥・硬化方法としては、熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥・硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0229】
塗膜の乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥や遠赤外線乾燥を用いることができる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。
【0230】
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、可視領域の透明性及び近赤外線の吸収能が高い優れた光学フィルターの構成材料となりうる。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、従来の近赤外線吸収材料と比べて耐久性、特に耐熱性と耐湿熱性が高いため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、シートやフィルム状にするのが容易なため、薄型ディスプレー用や光半導体素子用に有効である。そのほかに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば農業用フィルム、断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0231】
2−5.[光学フィルター]
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は光学フィルターに好適である。この光学フィルターは、前記近赤外線吸収材を用いてなる。この光学フィルターは、光半導体素子用光学フィルターまたは薄型ディスプレー用光学フィルターとして好適である。このような光学フィルターは、可視領域の全光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、波長800〜1100nmの近赤外線の透過率が30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0232】
本発明の光学フィルターには、上記の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、ガラス等の支持体などが設けられていてもよい。
【0233】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよい。例えば、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうち少なくともどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせた光学フィルターが好適であり、より好ましくは更に電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0234】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層とされるのが好ましい。近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層相互間の積層順序は任意である。また、3層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0235】
各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の公知の高極性ポリマーをアンカーコート剤として使用してもよい。
【0236】
薄型ディスプレー用光学フィルターには、画面を見やすくするために、反射防止層またはぎらつき防止層を人側の最表層に設けることが好ましい。
【0237】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合の製造方法として、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に反射防止コーティングを形成させる方法がある。また、後者の場合の製造方法として、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0238】
ぎらつき防止層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。
【0239】
また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤を有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0240】
反射防止層またはぎらつき防止層と近赤外線吸収層とを有する光学フィルターは、反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物又は近赤外線吸収材からなる層を積層させることで得られる。積層させる方法としては、フィルム状にした本発明に係る近赤外線吸収層と反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムとを直接張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に直接塗布してもよい。反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に近赤外線吸収層を設ける場合には、紫外線による色素の劣化を抑えるために、透明基材として紫外線吸収フィルムを使用するのが好ましい。本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は粘着性を有している。よって、近赤外線吸収層と、他の層とが接着される場合、粘着剤や接着剤が不要とされうる。近赤外線吸収層は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む層である。
【0241】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、パネルから発生する電磁波を除去するために、電磁波遮蔽層を設けることが好ましい。
【0242】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0243】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の2層を有する光学フィルターは電磁波防止材料と近赤外線吸収粘着剤組成物とを複合化することで得られる。複合化させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物と電磁波遮蔽フィルムを張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を電磁波遮蔽フィルムに直接塗布してもよい。また、フィルム上の金属のメッシュを平滑化する際に本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する際に、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を使用することもできる。
【0244】
近赤外線吸収層、反射またはぎらつき防止層および電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムの3枚を張り合わせたものが使用できる。好ましくは、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収フィルムが、反射またはぎらつき防止フィルムと、電磁波遮蔽フィルムとで挟まれた構造を有する光学フィルターが好ましい。この光学フィルターは、近赤外線吸収フィルムの粘着性を利用して積層されているため、従来フィルム同士の張り合わせのためだけに設けられていた粘着層を省略して製造されうる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。
【0245】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成をさらに簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのが良い。好ましい光学フィルターは、1枚のフィルムに電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層とを含む複合化フィルムに、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物からなる近赤外線吸収粘着層を張り合わせた光学フィルターである。
【0246】
本発明の薄型ディスプレー用光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。表示装置から離して設置する場合は支持体としてガラスを使用するのが好ましい。表示装置に直接張り合わせる場合にはガラスを使用しない光学フィルターが好ましい。
【0247】
2−6.[薄型ディスプレー]
本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物を積層した光学フィルターを薄型ディスプレーに搭載すると、長期間にわたり良好な画質が維持される。薄型ディスプレーに係る本発明は、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物、本発明の近赤外線吸収材、または本発明の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレーである。表示体に直接、光学フィルターを張り合わせた薄型ディスプレーはより鮮明な画質が得られる。光学フィルターを直接張り合わせる場合は表示体のガラスが強化ガラスを使用するか、衝撃吸収層を設けた光学フィルターを使用するのが好ましい。
【0248】
本発明の光学フィルターを表示装置に貼り付ける際の粘着剤及び粘着付与剤として、塩に係る本発明において前述した物質が使用されうる。粘着剤を用いることなく、近赤外線吸収層の粘着性を利用して、本発明の光学フィルターが表示装置に貼り付けられても良い。
【0249】
この粘着層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、この剥離フィルムにより、光学フィルターを薄型ディスプレーの表面に張り付けるまでの間、粘着剤層を保護し、粘着剤層にゴミ等が付着しないようにするのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、この非粘着部分を剥離開始部とすれば、貼着時の作業がやりやすい。
【0250】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0251】
以上、塩に係る本発明と、粘着剤組成物に係る本発明とについて述べた。塩に係る本発明と粘着剤組成物に係る本発明とが組み合わされてもよい。粘着剤組成物に係る本発明が、塩に係る本発明を含んでいてもよい。塩に係る本発明が、粘着剤組成物に係る本発明を含んでいてもよい。塩に係る本発明についてのあらゆる記載と、粘着剤組成物に係る本発明についてのあらゆる記載とが組み合わされうる。
【実施例】
【0252】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、以下の成分比率に関し、特に説明した場合を除き、「部」は重量部を意味し、「%」は重量%を意味する。
【0253】
以下において、合成例1、合成例2、実施例1から8及び比較例1から3は、塩に係る本発明に関する。一方、製造例1から16、実施例9から26及び比較例4、5は、粘着剤組成物に係る本発明に関する。以下の表1は、塩に係る本発明の効果を示している。以下の表2及び表3は、粘着剤組成物に係る本発明の効果を示している。
【0254】
合成例1、合成例2、実施例1から8及び比較例1から3は、以下の(評価1)から(評価3)により評価された。
【0255】
(評価1)近赤外線吸収能の評価(近赤外線透過率)
UV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。波長850nm及び波長1000nmでの透過率により近赤外線吸収能を評価した。下記の表1において、耐熱性試験又は耐湿熱性試験を行う前の段階における透過率(%)が、「初期における透過率(%)」と表記されている。
【0256】
(評価2)耐熱性の評価
試験体を100℃の恒温恒湿器中に120時間静置し、試験前後での350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。この透過スペクトルに基づき、耐熱性試験による透過率の変化を求めた。耐熱性試験後の透過率(%)から同試験前の透過率(%)を引いた値(%)が、「ΔT1」として下記の表1で示される。波長850nm及び波長1000nmにおける透過率の変化ΔT1が下記の表1で示される。
【0257】
(評価3)耐湿熱性の評価
試験体を80℃95%RHの恒温恒湿器中に120時間静置し、試験前後での350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。この透過スペクトルに基づき、耐湿熱性試験による透過率の変化を求めた。耐湿熱性試験後の透過率(%)から同試験前の透過率(%)を引いた値が、「ΔT2」として下記の表1で示される。波長850nm及び波長1000nmにおける透過率の変化ΔT2が下記の表1で示される。
【0258】
[合成例1]
モノマーとしてメチルメタクリレート371.5g、ノルマルブチルメタクリレート59gおよびブチルアクリレート69.5gを混合し、重合性モノマー混合物(1)を得た。パーカドックス12XL25(火薬アクゾ製)6gとトルエン100gとを混合し、開始剤溶液1を得た。350gの重合性モノマー混合物(1)と、トルエン225gとをフラスコに入れ、このフラスコに、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管、還流冷却機および滴下漏斗をセットした。150gの重合性モノマー混合物(1)と31.8gの開始剤溶液1とを混合し、上記滴下漏斗に入れた。窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコ内を加熱して内温を100℃とした。74.2gの開始剤溶液1をフラスコに添加し、重合反応を開始させた。この開始剤溶液1の投入から10分後に、上記滴下漏斗内の混合物(重合性モノマー混合物(1)と開始剤溶液1との混合物)を60分かけてフラスコ内に添加した。上記滴下漏斗内の混合物を全て添加した後、75gのトルエンで滴下漏斗を洗浄し、フラスコ内に洗浄液を添加した。その後、60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエン150gをフラスコ内に添加した。さらに60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエン150gをフラスコ内に添加した。さらに60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエン150gをフラスコ内に添加した。さらに60分間熟成した。その後、108℃まで昇温し、300分熟成した。さらに、希釈溶剤185.7gを添加後、室温まで冷却し、樹脂(1a)の溶液を得た。この溶液の固形分は32.4%であった。樹脂(1a)のTgは75℃であり、ポリスチレン換算での樹脂(1a)の重量平均分子量は22万であった。
【0259】
[合成例2]
モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(264.6g)、ブチルアクリレート(150g)、シクロヘキシルメタクリレート(180g)及びヒドロキシエチルアクリレート(5.4g)を秤量し、十分に混合し、重合性モノマー混合物(2)を得た。
【0260】
温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、160gの酢酸エチルと、300gの重合性モノマー混合物(2)とを入れた。また、上記滴下ロートに、300gの重合性モノマー混合物(2)、16gの酢酸エチル、および0.15gのナイパーBMT−K40(重合開始剤、日本油脂社製)を入れ、良く混合して、滴下用混合物(2)とした。
【0261】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から30分後に、滴下ロートからの滴下用混合物(2)の滴下を開始した。滴下用混合物(2)は、90分かけて、均等に滴下された。滴下用混合物(2)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0262】
反応終了後、不揮発分が約40%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−35℃、計算溶解性パラメータが9.57である樹脂(2a)を得た。この樹脂(2a)は、粘着剤樹脂であった。樹脂(2a)の重量平均分子量(Mw)及び酸価は、それぞれ、44万及び0であった。
【0263】
[実施例1]
ジイモニウム色素としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有する「CIR−1085」(日本カーリット社製)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のジイモニウム色素溶液1を調整した。次に、フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のフタロシアニン色素溶液1を調整した。次に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムをメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%の添加剤溶液1を調整した。合成例1で得られた樹脂(1a)、ジイモニウム色素溶液1、フタロシアニン色素溶液1、添加剤溶液1を固形分重量比で100/2.8/2.5/0.63となるように混合し、近赤外線吸収組成物A1を得た。この重量比は、[樹脂(1a)/ジイモニウム色素溶液1/フタロシアニン色素溶液1/添加剤溶液1]の順で表記されている。
【0264】
近赤外線吸収組成物A1をバーコーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績製コスモシャインA4300)上に塗工し120℃の熱風乾燥器中で3分間乾燥させ、近赤外線吸収材A1を得た。この近赤外線吸収材A1が、試験体とされた。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐湿熱性の評価を行った。実施例1に係る試験体の評価結果が下記の表1で示される。表1において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが、「TFSILi」と表記されている。
【0265】
[実施例2]
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムをメチルエチルケトン溶液に溶解し、固形分5%の添加剤溶液2を得た。樹脂(1a)、ジイモニウム色素溶液1、フタロシアニン色素溶液1、添加剤溶液2を固形分重量比で100/2.8/2.5/0.63となるように混合し、近赤外線吸収組成物A2を得た。この重量比は、樹脂(1a)/ジイモニウム色素溶液1/フタロシアニン色素溶液1/添加剤溶液2の順で表記されている。近赤外線吸収組成物A1の代わりに近赤外線吸収組成物A2を用いた以外は、実施例1と同様にして、近赤外線吸収材A2を得た。この近赤外線吸収材A2が試験体とされた。この試験体における、耐熱性試験前後の可視−近赤外線吸収スペクトルが図1で示される。また、実施例2に係る試験体の評価結果が下記の表1で示される。表1において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムが、「TFSINa」と表記されている。
【0266】
[実施例3]
ジイモニウム色素としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有し、アセトンに溶液における最大吸収波長が1049nmである「CIR−1085F」(日本カーリット社製)を用いた。この「CIR−1085F」をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のジイモニウム色素溶液2を調整した。合成例2で得られた樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2及び添加剤溶液2を固形分重量比で100/1.88/2.0となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物A3を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/添加剤溶液2の順で表記されている。
【0267】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この上に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で1日間養生させて近赤外線吸収材A3を得た。近赤外線吸収材A3から離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材A3をガラス板に貼り付け、試験体とした。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性及び耐湿熱性の評価を行った。この評価結果が下記の表1で示される。
【0268】
[実施例4]
ヘキサフルオロリン酸リチウム(PFLi)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%の添加剤溶液3を調整した。樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2及び添加剤溶液3を固形分重量比で100/1.88/0.33となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物A4を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/添加剤溶液3の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収粘着剤組成物A4を用いた以外は実施例3と同様にして、近赤外線吸収材A4及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果が下記の表1で示される。
【0269】
[実施例5]
トリフルオロメタンスルホン酸リチウムをメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%の添加剤溶液4を調整した。架橋剤であるコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)をメチルケトン溶液に溶解し、固形分2.75%の架橋剤溶液1を調整した。架橋促進剤であるジラウリル酸ジ−n−ブチルスズをメチルケトン溶液に溶解し、固形分1%の架橋促進剤溶液1を調整した。樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2、フタロシアニン色素溶液1、添加剤溶液4、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.88/1.1/0.34/0.25/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物A5を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/フタロシアニン色素溶液1/添加剤溶液4/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1の順で表記されている。
【0270】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収粘着剤組成物A5を用いた以外は実施例3と同様にして、近赤外線吸収材A5及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果が下記の表1で示される。表1において、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが「TFSLi」と表記されている。
【0271】
[実施例6]
樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2、フタロシアニン色素1、添加剤溶液1、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.88/1.1/0.63/0.25/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物A6を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/フタロシアニン色素1/添加剤溶液1/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1の順で表記されている。
【0272】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収粘着剤組成物A6を用いた以外は実施例3と同様にして、近赤外線吸収材A6及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。試験体の耐熱性試験前後の可視−近赤外線吸収スペクトルが図2で示される。試験体の評価結果が下記の表1で示される。
【0273】
[実施例7]
ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(SbFNa)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%の添加剤溶液5を調整した。樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2、フタロシアニン色素1、添加剤溶液5、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.88/1.1/0.56/0.25/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物A7を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/フタロシアニン色素1/添加剤溶液5/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1の順で表記されている。
【0274】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収粘着剤組成物A7を用いた以外は実施例3と同様にして、近赤外線吸収材A7及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。この試験体の評価結果が下記の表1で示される。
【0275】
[比較例1]
樹脂(1a)、ジイモニウム色素溶液1、フタロシアニン色素溶液1を固形分重量比で100/2.8/2.5となるように混合し、近赤外線吸収組成物B1を得た。この重量比は、樹脂(1a)/ジイモニウム色素溶液1/フタロシアニン色素溶液1の順で表記されている。
【0276】
近赤外線吸収組成物A1の代わりに近赤外線吸収組成物B1が用いられた以外は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材B1を得た。この近赤外線吸収材B1が、試験体とされた。この試験体について、実施例1と同様の評価がなされた。評価結果が下記の表1で示される。
【0277】
[比較例2]
樹脂(2a)及びジイモニウム色素溶液2を固形分重量比で100/1.88となるように混合し、近赤外線吸収組成物B2を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2の順で表記されている。
【0278】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収組成物B2が用いられた以外は、実施例3と同様にして、近赤外線吸収材B2及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。評価結果が下記の表1で示される。
【0279】
[比較例3]
樹脂(2a)、ジイモニウム色素溶液2、フタロシアニン色素1、架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.88/1.1/0.25/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物B3を得た。この重量比は、樹脂(2a)/ジイモニウム色素溶液2/フタロシアニン色素1/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1の順で表記されている。
【0280】
近赤外線吸収粘着剤組成物A3の代わりに近赤外線吸収粘着剤組成物B3が用いられた以外は、実施例3と同様にして、近赤外線吸収材B3及び試験体を得た。この試験体について、実施例3と同様の評価を行った。この試験体の耐熱性試験前後のの可視−近赤外線吸収スペクトルが図3で示される。また評価結果が下記の表1で示される。
【0281】
各例において添加された近赤外線吸収組成物用塩が、下記の表1において、「添加剤溶液に溶解している塩」の欄に記載されている。
【0282】
【表1】

【0283】
[実施例8]
1.重合性ポリシロキサン(M−1)の合成
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6部、水19.0部、メタノール30.0部およびアンバーリスト15(商品名:オルガノ社製の陽イオン交換樹脂)5.0部を入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔及びこの蒸留塔に接続した冷却管および流出口を設けた。常圧下でフラスコ内温が約80℃となるまで2時間かけて昇温し、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。さらに、2.67×10kPaの圧力及び90℃の温度を、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾過させ、数平均分子量が1,800の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
【0284】
2.有機ポリマー(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管およびNガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤として酢酸n−ブチル260部を入れ、Nガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を110℃まで加熱した。ついで重合性ポリシロキサン(M−1)12部、tert−ブチルメタクリレート19部、ブチルアクリレート94部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート67部、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート(ライトエステルFM−108、共栄社化学社製)48部および2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2.5部を混合した溶液が、滴下口より3時間かけて滴下された。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部を30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行なった。この共重合により、有機ポリマー(P−1)が酢酸n−ブチルに溶解した溶液を得た。得られた溶液の固形分は48.2%であった。この有機ポリマー(P−1)は、数平均分子量が12,000であり、重量平均分子量が27,000である。
【0285】
3.有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)の合成
攪拌機、2つの滴下口(滴下口αと滴下口β)及び温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸n−ブチル200部およびメタノール500部を入れ、内温を40℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、原料液Aを滴下口αから2時間かけて滴下すると同時に、原料液Bを滴下口βから2時間かけて滴下した。原料液Aは、有機ポリマー(P−1)の酢酸n−ブチル溶液10部、テトラメトキシシラン30部および酢酸n−ブチル5部からなる混合液である。原料液Bは、25%アンモニア水5部、脱イオン水10部およびメタノール15部からなる混合液である。
【0286】
原料液A及び原料液Bの滴下後、冷却管に代えて蒸留塔及びこの蒸留塔に接続した冷却管および流出口を設けた。40kPaの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、固形分が30%となるまでアンモニア、メタノールおよび酢酸n−ブチルを留去した。この留去により、有機ポリマー複合無機微粒子が酢酸n−ブチルに分散した分散体(S−1)を得た。この分散体(S−1)において、上記有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーとの比率(無機微粒子/有機ポリマー)は、70/30であった。この比率は、質量比である。得られた有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は23.9nmであった。なお、有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーの比率は、有機ポリマー複合微粒子分散体を1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行ない、灰分を有機ポリマー複合無機微粒子含有量として求めた。また、平均粒子径は、有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)1部を酢酸n−ブチル99部で希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。
【0287】
4.反射フィルム
ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE−6A、共栄社化学社製)8部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(PE−3A、共栄社化学社製)2部を混合し、この混合物をメチルエチルケトン40部に溶解させ溶液F1を得た。この溶液F1に、溶液F2を加え、ハードコート層塗布液H1を調製した。溶液F2は、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)0.5部をメチルエチルケトン2部に溶解した溶液である。
【0288】
有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)9部、デスモジュールN3200(商品名、住化バイエルウレタン社製のイソシアネート硬化剤)0.3部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.003部およびメチルイソブチルケトン110部を混合し、低屈折率層塗布液T1を調製した。
【0289】
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡績社製)に上記ハードコート層塗布液H1を、バーコーターを用いて塗布し、塗布層hを得た。100℃で15分乾燥した後の塗布層hに、高圧水銀灯で200mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。この硬化により、膜厚5μmのハードコート層が形成された。このハードコート層の上に低屈折率塗布液T1をバーコーターを用いて塗布した。この塗布により、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に反射防止膜を備えた反射防止フィルムR1を得た。この反射防止膜は、上記塗布層hと、この塗布層hに隣接して形成された低屈折率層とにより構成されている。この低屈折率層は、低屈折率塗布液T1を硬化させることにより形成される。
【0290】
フィルムR1の反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化し、さらにこの粗面化された面に黒インキを塗布した。次いで、反射防止膜側の面の入射角5°における鏡面反射スペクトルを紫外可視分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定した。この測定により、反射率が最小となる波長及びその波長における反射率を求めた。反射率が最小となる波長は550nmであり、その波長における反射率は0.45%であった。
【0291】
5.光学フィルター
上記反射防止フィルムR1の裏面側に、実施例6で得られた近赤外線吸収組成物A6を、実施例6と同様に塗工、乾燥し、光学フィルター1を得た。光学フィルター1の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐クラック性、耐溶剤性は良好だった。
【0292】
製造例1から16、実施例9から26及び比較例4、5において、近赤外線吸収能、耐熱性、耐湿熱性及び酸価の評価方法は以下の通りである。
【0293】
(評価4)近赤外線吸収能(近赤外線透過率)の評価
試験体をUV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。近赤外線吸収能は、波長1000nmでの透過率により評価した。下記の表3において、波長1000nmでの透過率は、「1000nm透過率」と表記されている。下記の表3において、耐熱性試験及び耐湿熱性試験を行う前における評価結果は、「初期」と表記されている。
【0294】
(評価5)耐熱性の評価
試験体を100℃の恒温恒湿器中に120時間静置し、試験前後での350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、波長1000nmでの透過率の変化を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。
【0295】
(評価6)耐湿熱性の評価
試験体を80℃95%RHの恒温恒湿器中に120時間静置し、試験前後での350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの測定にはUV−3700(島津製作所製)を使用した。得られた試験前後の透過スペクトルから、波長1000nmでの透過率の変化を評価した。また、得られた試験前後の透過スペクトルから色差を計算し、b*の変化を評価した。
【0296】
(評価7)酸価の測定
粘着剤樹脂溶液0.5gを精秤し、トルエン50gを加えて均一に溶解させた。指示薬としてフェノールフタレイン/アルコール溶液を2〜3滴加え、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、液の赤みが約30秒で消えなくなったときを終点とした。このときの滴定量と樹脂の固形分から酸価を求めた。酸価は、樹脂固形分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表される。
【0297】
製造例1:
重合性単量体として、2−エチルヘキシルアクリレート(458.5g)、エチルアクリレート(40g)およびヒドロキシエチルアクリレート(1.5g)を秤量し、十分に混合し、重合性単量体混合物を得た。
【0298】
この重合性単量体混合物の50重量%と、酢酸エチル(162g)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えたフラスコに添加した。重合性単量体混合物の50重量%、酢酸エチル(13g)、および重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.13g、日本油脂社製)からなる滴下用重合性単量体混合物を滴下ロートに入れ、良く混合した。
【0299】
窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を90℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.13g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から10分後に、滴下ロートに入れた滴下用重合性単量体混合物の滴下を開始した。滴下用重合性単量体混合物は、90分かけて、均等に滴下した。滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を適宜行いながら、還流温度を維持しながら6時間熟成を行った。
【0300】
反応終了後、不揮発分が約40%になるように酢酸エチルで反応液を希釈し、計算ガラス転移温度(Tg)が−66.7℃、計算溶解性パラメータが9.30である粘着剤樹脂(1)を得た。なお、このようにして得られた粘着剤樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)及び酸価は、それぞれ、60万及び0であった。製造例1の仕様及び評価結果が下記の表2で示される。
【0301】
製造例2から16:
重合性単量体混合物の組成が表2で示した通りとされた以外は、製造例1と同様にして、製造例2から16を行った。これらの製造例2から16により、粘着剤樹脂(2)から(16)を得た。得られた粘着剤樹脂の計算Tg、計算溶解性パラメータ、Mw及び酸価が下記の表2で示される。
【0302】
表2における「組成」は、単量体混合物全体の重量に対する各単量体の重量%を示す。なお、表2において、2EHAは2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)を示し、BAはn−ブチルアクリレート(Tg:−55℃)を示し、EAはエチルアクリレート(Tg:−22℃)を示し、MAはメチルアクリレート(Tg:−9℃)を示し、MMAはメチルメタクリレート(Tg:105℃)を示し、CHMAはシクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)を示し、CHAは、シクロヘキシルアクリレート(Tg:19℃)を示し、BzAはベンジルアクリレート(Tg:6℃)を示し、IBAはイソボルニルアクリレート(Tg:94℃)を示し、HEAはヒドロキシエチルアクリレート(Tg:−15℃)を示し、AAはアクリル酸(Tg:106℃)を示す。
【0303】
実施例9:
ジイモニウム色素として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有し、アセトン溶液における最大吸収波長が1049nmである「CIR−1085F」(日本カーリット社製)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のジイモニウム溶液1を調整した。また、架橋剤としてコロネートL−55E(日本ポリウレタン社製)、架橋促進剤としてジラウリン酸ジーn−ブチルスズをそれぞれメチルエチルケトンに溶解し、固形分1%の架橋剤溶液1aと、固形分1%の架橋促進剤溶液1aとを調整した。製造例1で得られた粘着剤樹脂(1)、ジイモニウム溶液1、架橋剤溶液1aおよび架橋促進剤溶液1aを、固形分重量比で100/1.88/0.3/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物C1を得た。なお、この固形分重量比は、(粘着剤樹脂(1)/ジイモニウム溶液1/架橋剤溶液1a/架橋促進剤溶液1a)の順で表記されている。
【0304】
近赤外線吸収粘着剤組成物C1をアプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に塗工した。塗工厚みは、乾燥後の厚みが25μmとなるように設定した。次いで、100℃の熱風循環オーブン中にて2分間乾燥させた。この近赤外線吸収粘着剤組成物C1からなる層に離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)を張り合わせた後、23℃で2日間養生させて近赤外線吸収材C1を得た。離型フィルムを剥がした後、この近赤外線吸収材C1をガラス板に貼り付けて、実施例9に係る試験体を得た。この試験体について、近赤外線透過率、耐熱性および耐湿熱性の評価を行った。この試験体の可視−近赤外吸収スペクトルを図4に示し、この試験体の近赤外線透過率、耐熱性及び耐湿熱性の評価結果を表3に示した。
【0305】
実施例10から24:
上記粘着剤樹脂(1)を、粘着剤樹脂(2)から(16)に変更した以外は、実施例9と同様にして、近赤外線吸収粘着剤組成物C2からC16、近赤外線吸収材C2からC16および実施例10から24に係る試験体を得た。これらの試験体について、実施例9と同様の評価を行った。実施例10から24の仕様と評価結果が下記の表3で示される。
【0306】
実施例25:
フタロシアニン色素である「イーエクスカラーIR−10A」(日本触媒製)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のフタロシアニン溶液1を調整した。製造例11で得られた粘着剤樹脂(11)、ジイモニウム溶液1、フタロシアニン溶液1、架橋剤溶液1aおよび架橋促進剤溶液1aを固形分重量比で100/1.88/1.1/0.3/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物C17を得た。なお、この固形分重量比は、(粘着剤樹脂(11)/ジイモニウム溶液1/フタロシアニン溶液1/架橋剤溶液1a/架橋促進剤溶液1a)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物C1に代えて近赤外線吸収粘着剤組成物C17を用いた以外は、実施例9と同様にして、実施例25に係る試験体を得た。この試験体について、実施例9と同様の評価を行った。実施例25に係る試験体の可視−近赤外吸収スペクトルが下記の図5で示される。実施例25に係る試験体の近赤外線透過率、耐熱性および耐湿熱性の評価結果が下記の表3で示される。
【0307】
比較例4:
ジイモニウム色素として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを有し、アセトン溶液における最大吸収波長が1073nmである「CIR−1085」(日本カーリット社製)を用いた。この「CIR−1085」をメチルエチルケトンに溶解し、固形分5%のジイモニウム溶液2を調整した。製造例8で得られた粘着剤樹脂(8)、ジイモニウム溶液2、架橋剤溶液1aおよび架橋促進剤溶液1aを、固形分重量比で100/1.1/0.3/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物D1を得た。なお、この固形分重量比は、(粘着剤樹脂(8)/ジイモニウム溶液2/架橋剤溶液1a/架橋促進剤溶液1a)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物C1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物D1を用いた以外は、実施例9と同様にして、近赤外線吸収材D1および比較例4に係る試験体を得た。この試験体について、実施例9と同様の評価を行った。比較例4に係る試験体の可視−近赤外吸収スペクトルが図6で示される。比較例4に係る試験体の近赤外線透過率、耐熱性および耐湿熱性の評価結果が下記の表3で示される。
【0308】
比較例5:
製造例8で得られた粘着剤樹脂(8)、ジイモニウム溶液2、フタロシアニン溶液1、架橋剤溶液1aおよび架橋促進剤溶液1aを、固形分重量比で100/1.1/1.1/0.3/0.05となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物D2を得た。なお、この固形分重量比は、(粘着剤樹脂(8)/ジイモニウム溶液2/フタロシアニン溶液1/架橋剤溶液1a/架橋促進剤溶液1a)の順で表記されている。近赤外線吸収粘着剤組成物C1に代えて、この近赤外線吸収粘着剤組成物D2を用いた以外は、実施例9と同様にして、近赤外線吸収材D2および比較例5に係る試験体を得た。この試験体について、実施例9と同様の評価を行った。試験体の近赤外線透過率、耐熱性および耐湿熱性の評価結果が、下記の表3で示される。
【0309】
【表2】

【0310】
【表3】

【0311】
表3より、実施例9から25に係る本発明の近赤外線吸収材C1〜C17は耐熱および耐湿熱試験における1000nm透過率変化とb*変化が少なく、耐久性に優れていることが判る。一方、ジイモニウム色素として、アセトン溶液における最大吸収波長が1060nmを超える色素を使用した比較例4、5の近赤外線吸収材D1、D2は、耐熱および耐湿熱試験における1000nm透過率変化とb*変化が大きく耐久性に劣っている。
【0312】
実施例26:
上記実施例8で得られた反射防止フィルムR1の裏面側に、実施例9で得られた近赤外線吸収粘着剤組成物C1を、実施例9と同様に塗工および乾燥し、光学フィルター2を得た。光学フィルター2の近赤外線透過率、全光線透過率、耐熱性、耐クラック性および耐溶剤性は良好だった。
【0313】
実施例27:
粘着剤組成物に係る本発明の上記製造例14で得られた粘着剤樹脂(14)に、塩に係る本発明の実施例3で得られたジイモニウム色素溶液2、実施例1で得られたフタロシアニン色素溶液1、実施例1で得られた添加剤溶液1、実施例5で得られた架橋剤溶液1及び架橋促進剤溶液1を固形分重量比で100/1.88/0.7/0.3/0.27/0.14となるように混合し、近赤外線吸収粘着剤組成物E1を得た。この重量比は、粘着剤樹脂(14)/ジイモニウム色素溶液2/フタロシアニン色素溶液1/添加剤溶液1/架橋剤溶液1/架橋促進剤溶液1の順で表記されている。この近赤外線吸収粘着剤組成物E1を用いて、実施例9と同様にして、実施例27に係る近赤外線吸収材及び試験体を得た。この試験体について、実施例9と同様の評価を行った。実施例27に係る試験体の耐熱試験前後における可視−近赤外吸収スペクトルが図7で示される。この試験体の耐熱性及び耐湿熱性の評価結果が下記の表4で示される。
【0314】
【表4】

【0315】
表4より、実施例27に係る近赤外線吸収材は耐熱および耐湿熱試験における1000nm透過率変化とb*変化が少なく、耐久性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0316】
本発明の近赤外線吸収組成物は、近赤外線吸収能と可視領域の透明性が高く、耐熱性、耐湿熱性に優れることから、薄型ディスプレー用の光学フィルターとして有用である。また、光情報記録材料としても使用することがきる。また、本発明の近赤外線吸収粘着剤組成物は、近赤外線吸収能と可視領域の透明性が高く、耐熱性、耐湿熱性に優れることから、薄型ディスプレー用の光学フィルターとして有用である。また、光情報記録材料としても使用することがきる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)、式(2)、式(3)又は式(4)で示されるアニオンを有し、それ自身が実質的に近赤外線吸収能を有さない近赤外線吸収組成物用塩。
【化28】


【化29】


【化30】


【化31】


ただし、式(1)及び式(3)においてR、R及びRは、それぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示し、式(2)においてRはフルオロアルキレン基を示し、式(4)においてmは1以上6以下の整数を示す。
【請求項2】
上記アニオンが、次の(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の近赤外線吸収組成物用塩。
(a1)上記式(1)におけるR及びRが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるアニオン。
(a2)上記式(2)におけるRが炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基であるアニオン。
(a3)上記式(3)におけるRが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるアニオン。
(a4)上記式(4)におけるRがリン、アンチモン、ヒ素、ホウ素及びスズからなる群から選択されたアニオン。
【請求項3】
式(1)、式(2)、式(3)又は式(4)で示される上記アニオンを有する塩のカウンターカチオンが、アルカリ金属カチオンである請求項1又は2に記載の近赤外線吸収組成物用塩。
【請求項4】
近赤外線吸収色素と、樹脂と、請求項1から3のいずれかに記載された上記塩とを含む近赤外線吸収組成物。
【請求項5】
上記近赤外線吸収色素がジイモニウム系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素及び金属ジチオール系色素からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項6】
上記近赤外線吸収色素のうち少なくとも一種が、下記式(5)で表されるジイモニウムカチオンと、下記式(6)、式(7)、式(8)及び式(9)からなる群から選択される少なくとも一種のアニオンとからなるジイモニウム色素である請求項5に記載の近赤外線吸収組成物。
【化32】


【化33】


【化34】


【化35】


【化36】


ただし、式(5)においてRからRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表わす。また式(6)においてR及びRはそれぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示し、式(7)においてRはフルオロアルキレン基を示す。式(8)において、Rは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を示す。式(9)において、Rはリン、アンチモン、ヒ素、ホウ素及びスズからなる群から選択される少なくとも1種を示し、nは1以上6以下の整数を示す。
【請求項7】
上記ジイモニウム色素の、アセトン溶液における最大吸収波長が1000〜1060nmである請求項4から6のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項8】
上記樹脂のガラス転移温度が85℃以下である請求項4から7のいずれか一項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項9】
上記樹脂のガラス転移温度が−20℃以下である請求項4〜8いずれか一項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項10】
上記樹脂の計算溶解性パラメータが9.80以下である請求項9に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項11】
請求項4から10のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物を含む近赤外線吸収材。
【請求項12】
透明基材に請求項4から10のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物が積層されてなる近赤外線吸収材。
【請求項13】
上記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着層PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである、請求項12に記載の近赤外線吸収材。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の近赤外線吸収材を用いてなる、薄型ディスプレイ用光学フィルター。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用光学フィルター。
【請求項16】
請求項4から10のいずれかに記載の近赤外線吸収組成物、請求項11から13のいずれかに記載の近赤外線吸収材又は請求項14に記載の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレー。
【請求項17】
アセトン溶液における最大吸収波長が1000〜1060nmであるジイモニウム色素(A)及び
計算ガラス転移温度が−20℃以下である樹脂(B)
を含有する近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項18】
前記ジイモニウム色素が、下記式(10)で示されるジイモニウムカチオンと、下記式(11)または(12)で示されるアニオンとからなる請求項17記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。

【化37】


【化38】


【化39】


ただし、式(10)中、R〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表わす。また、式(11)中、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていてもよいフルオロアルキル基を示す。また、式(12)中、Rはフルオロアルキレン基を示す。
【請求項19】
前記樹脂(B)の酸価が25以下である請求項17または18のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項20】
前記樹脂(B)の計算溶解性パラメータが9.80以下である請求項17から19のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項21】
前記樹脂(B)が、下記単量体(1)〜(3)を下記の比率で共重合してなるポリマーである請求項17から20のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
(1)脂環式、多環性脂環式、芳香環式または多環性芳香環式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:0.05〜40重量%
(2)炭素数が1〜10であり且つ直鎖型または分岐型であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル:60〜95重量%
(3)その他共重合可能な単量体:0〜30重量%
【請求項22】
前記樹脂(B)が、(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合してなるポリマーであり、この(メタ)アクリル酸エステルが、芳香環を含有するアルキル基を有している請求項17から21のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項23】
さらに、フタロシアニン系色素を含む請求項17から22のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物。
【請求項24】
請求項17から23のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物を含む近赤外線吸収材。
【請求項25】
請求項17から23のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物が透明基材に積層されてなる請求項24に記載の近赤外線吸収材。
【請求項26】
前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである、請求項25に記載の近赤外線吸収材。
【請求項27】
請求項24から26のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、薄型ディスプレー用光学フィルター。
【請求項28】
請求項24から26のいずれかに記載の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用光学フィルター。
【請求項29】
請求項17から23のいずれかに記載の近赤外線吸収粘着剤組成物、請求項24から26のいずれかに記載の近赤外線吸収材または請求項27に記載の光学フィルターを用いてなる、薄型ディスプレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−502563(P2010−502563A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506854(P2009−506854)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/JP2007/067544
【国際公開番号】WO2008/026786
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】