説明

近赤外線遮断用部材

【課題】 近赤外線を遮断する部微粒子が薄膜で、且つ、基体の風合いや光透過性を損なわずに、強固に安定に固定された近赤外線遮断効果に優れた近赤外線遮断用部材を提供する。
【解決手段】 近赤外線を遮断する微粒子が、樹脂からなる基体表面に固定されてなる近赤外線遮断材であって、微粒子の表面が不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が形成され、隣接した前記微粒子の表面に形成された不飽和結合を有するシランモノマーの一部と化学結合し、且つ、基体表面の樹脂と、微粒子の表面に形成された薄膜との一部が化学結合して、基体表面に前記微粒子が積層して化学結合してなる近赤外線遮断用部材であって、無機微粒子の表面に不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が形成され、基体表面の樹脂と微粒子表面に形成された薄膜との一部が化学結合して、樹脂表面と前記薄膜に存在する不飽和結合とを、グラフト重合により化学結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線である近赤外線を有効に遮断する、基材が樹脂からなる近赤外線遮断用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスや家屋あるいは車等には、太陽光などの自然光を利用する為の透明性に優れたフィルムや窓などが設けられている。効率良く太陽光を利用することが、省エネルギー対策の為には有効であり、その為に様々な工夫がなされている。ここで、入射する自然光には紫外線や近赤外線、赤外線が含まれており、特に、熱線である近赤外線はハウス内や室内の温度上昇を招くことから、冷房負荷および熱損失を著しく増大させる。そして、夏場には、ビニールハウス内の温度上昇による食物生産品の品質への影響や室内の温度上昇を抑制するために冷房装置の使用が増加することから電力不足などが問題になってきている。
【0003】
また、プラズマディスプレイパネルから発生する近赤外線により、リモートコントロール装置などの周辺機器が誤動作を引き起こす可能性が高くなる。この誤動作を防止するために、近赤外線を遮断する透明性に優れた樹脂からなるフィルム状遮断材が、プラズマディスプレイパネルに用いられている。
【0004】
これらの問題を解決するために、近赤外線を遮断するための様々な材料が提案されている。例えば、アンチモンドープ酸化スズやスズドープ酸化インジウムなどの微粒子をアクリル樹脂やポリエステル樹脂などのバインダーに分散してフィルムや繊維布帛表面に固定する方法(例えば、特許文献1と特許文献を参照)や、金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングにより形成する方法(例えば、特許文献3と特許文献4を参照)や、近赤外線を吸収する有機化合物を樹脂に充填する方法(例えば、特許文献5を参照)など、様々な方法が提案されている。
【特許文献1】特開平6−262717号公報
【特許文献2】特開2002−370319号公報
【特許文献3】特開平9−252931号公報
【特許文献4】特開2000−141534号公報
【特許文献5】特開平11−249576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の近赤外線遮断用部材では、以下のような様々な問題がある。例えば、特開平6−262717号公報や特開2002−370319号公報に記載の技術では、バインダーに近赤外線を遮断する微粒子を分散してフィルムや繊維布帛表面に塗布して固定するために、バインダーの種類や基材樹脂によっては密着性に問題があり、耐久性に優れた近赤外線遮断が得られない場合がある。また、近赤外線の遮断効果を高める為には、近赤外線を遮断する微粒子のバインダーへの充填量を高めることが必要となり、そのためにバインダーの基材への密着性の低下や繊維布帛では風合いの低下につながるなどの問題がある。
【0006】
また、特開平9−252931号公報や特開2000−141534号公報に記載の技術では、フィルムや繊維表面に真空蒸着やスパッタリングなどにより近赤外線を遮断する材料の薄膜を形成することから、基材樹脂が加工時に発生する熱により変形したり、得られた近赤外線を遮断する薄膜の耐久性が低いなどの問題があり、実用性の点で改善が必要である。
【0007】
さらに、特開平11−249576号公報の技術では、ジイモニウム系化合粒である有機物をフィルム内に充填しているため、耐候性が低いなど、実用面において問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、薄膜で基材の風合いや外観、透明性などを損なわないで近紫外線を効率良く遮断することができる近赤外線遮断用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、反応性に優れた不飽和結合を有するシランカップリング剤を用いることにより、近赤外線を遮断する微粒子を、その微粒子が有する機能や特性を極力損なわずに、薄膜で基材の表面に強固に、且つ、風合いや光透過性を損ねない程度の量として結合させる方法を見出し、これにより近赤外線の遮断効果を最大限発揮できることが可能となる知見を得るに至り、新規な近赤外線遮断用部材を創出した。
【0010】
すなわち、第一の発明は、表面が樹脂からなる基体と、不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、近赤外線を遮断する第1の微粒子からなり、該第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第1の微粒子同士が結合してなる、第1の微粒子層とを備え、該第1の微粒子層は、前記第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記基体の表面の樹脂とが化学結合して、前記基体に積層して固定されてなることを特徴とする近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【0011】
また、第二の発明は、前記近赤外線遮断用部材において、不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、前記第1の微粒子と近赤外線吸収特性が異なる、近赤外線を遮断する第2の微粒子からなり、該第2の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第2の微粒子同士が結合してなる第2の微粒子層をさらに備え該第2の微粒子層は、前記第1の微粒子層の前記第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記第2の微粒子層の前記第2の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜とが化学結合して、前記第1の微粒子層に積層して固定されてなる近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【0012】
さらに、第三の発明は、上記第一または第二のいずれかにおいて、不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、紫外線を遮断する第3の微粒子からなり、
該第3の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第3の微粒子同士が結合してなる第3の微粒子層をさらに備え、該第3の微粒子層は、前記近赤外線遮断用部材の表面に積層した微粒子層の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記第3の微粒子層の前記第3の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜とが化学結合し、前記表面に積層した微粒子層に積層して固定される近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【0013】
さらにまた、第四の発明は、上記第一乃至第三のいずれかにおいて、前記紫外線を遮断する第3の微粒子は、光触媒機能を有する微粒子である近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【0014】
さらにまた、第五の発明は、上記第一乃至第四のいずれかにおいて、化学結合がグラフト重合であることを特徴とする近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【0015】
さらにまた、第六の発明は、上記第第五の発明において、グラフト重合が、放射線グラフト重合であることを特徴とする近赤外線遮断用部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基体の表面に対して、近赤外線を遮断する微粒子が、シラン化合物を介した化学結合によって、強固に結合された状態となっている。このため、基体に対する微粒子は、充分な耐久性を保持している。
【0017】
したがって、本発明によれば、近赤外線を遮断する微粒子が各種の基材の表面に強固に結合された耐久性に優れた部材を提供することが可能となる。また、近赤外線を遮断する微粒子は、少ない量のシラン化合物で基材の表面に固定されていることから、近赤外線を遮断する層は薄膜でも効率よく近赤外線を遮断することが可能となるため、繊維やフィルム、布などからなる基材の風合いや透過性を損なわずに、近赤外線遮断用部材を提供することが可能となる。
【0018】
したがって、本発明によれば、近赤外線を遮断する微粒子が、不飽和結合を有するシランカップリング剤で結合されていることから、耐久性に優れた近赤外線遮断用部材が提供することが可能となり、さらに、少ない量のシランモノマーで微粒子が基材の表面に配置されるので、近赤外線を遮断する層を薄膜にすることが可能となり、繊維やフィルム、布などからなる基材の風合いや透過性を損なわないことから、様々な分野で近赤外線遮断用部材として応用が可能となる。
【0019】
なお、基体の形態としては、例えば、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状などの、使用目的に合った様々な形態が取れることから、例えば、トンネルハウスや遮光ネットなどの農業用資材や、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ、あるいは有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、或いは、炬燵、ホットカーペット、電気毛布、カーテン、ブラインド、壁装材、車両内装材、絨毯、座布団、ハンカチ、テーブルクロス、傘、ブックカバー、靴敷、寝具(例えば、枕、布団、シーツなど)、ネックレスやブレスレッド、指輪、ブローチ、ピアスなどの各種装飾用装身具、ベルトや腕時計バンド、衣類、レインコート、帽子、眼鏡、などの各種実用装身具、さらには、裁断可能な多目的シートや、インテリア材、防虫網、など、様々な分野に近赤外線遮断用部材を付加した素材製品及び応用製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態の近赤外線遮断用部材について詳述する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の近赤外線遮断用部材100の断面の一部を拡大した図である。本実施形態の近赤外線遮断用部材100は、基体1に近赤外線を遮断する微粒子2が固定されることにより構成されている。
【0022】
なお、図1では本発明の第1実施形態の一例を判りやすく模式的に示すため、微粒子が2層で形成された図であらわしたが、これに限られず、微粒子が1層で形成されていてもよく、また複数重なって微粒子の層を形成してあってもよい。
【0023】
本実施形態の近赤外線遮断用部材100で用いられる近赤外線を遮断する微粒子2としては、酸化ルテニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化バナジウム、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウムなどの金属酸化物、LaB、CeB、PrB、NdB、GdB、SmB、EuB、ErB、YbB、SrBなどの六ホウ化物などが挙げられる。これらの微粒子は1種類で用いてもよく、また近赤外線を遮断する微粒子の近赤外線に対する吸収特性が異なる2種以上を混合して用いることもできる。
【0024】
これらの材料は微粒子として用いられ、それらの粒子径は0.001μmから0.5μmの間であれば良い。これは、粒子径が0.5μmよりも大きくなると、これらの微粒子の固定能が低下して基材1の樹脂表面から脱離し易くなると共に、基体1が繊維や布帛の場合には、固定に必要なシラン化合物量も多くなることから、繊維や布帛の風合いを損なうからである。一方、粒子径を0.001μmよりも小さくするには技術的困難が伴い、また製造コスト上の観点からも好ましくないからである。
【0025】
本実施形態では、近赤外線を遮断する微粒子2を、不飽和結合を有するシランモノマー、具体的にはシランカップリング剤3により、樹脂基体1上に化学結合5(図中の黒丸部)により固定するものである。具体的なシランカップリング剤3が有する不飽和結合としては、ビニル基や、エポキシ基や、スチリル基や、メタクリロ基や、アクリロキシ基や、イソシアネート基などが挙げられる。
【0026】
本実施形態は、反応性に優れたシランカップリング剤3を用いることで、様々な機能を有する微粒子を、シランカップリング剤3が有するシラノール基の脱水縮合反応による微粒子の化学結合5と前記官能基の基体樹脂表面へのグラフト重合による化学結合5により、基体1の表面に結合せしめた近赤外線遮断用部材100である。
【0027】
本実施形態で用いられるシランカップリング剤3の一例としては、ニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシランや、ビニルトリアセトキシシランや、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩や、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランや、p−スチリルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランや、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0028】
これらのシランカップリング剤3は、一種もしくは二種以上混合して用いられる。その使用形態としては、必要量のシランカップリング剤3をメタノールやエタノールや、アセトンや、トルエンや、キシレンなどの有機溶剤に溶解し、必要に応じて加水分解に必要な水を加えて用いられる。また、分散性を改善するために塩酸、硝酸などの鉱酸などが加えられる。用いられる溶剤としては、エタノールや、メタノールや、プロパノールやブタノールなどの低級アルコール類や、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類や、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物や、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類や、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセロソルブ類を単独または複数組み合わせて用いても良い。
【0029】
本実施形態に用いられる近赤外線を遮断する微粒子2は、前述したシランカップリング剤3の溶液に分散した状態で製造に用いられる。近赤外線を遮断する微粒子2の分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散や、ボールミルや、サンドミルや、高速回転ミルや、ジェットミルなどを用いた粉砕・分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
【0030】
また、近赤外線を遮断する微粒子2は、分散したコロイド状分散液や、粉砕により微粒子化して得られた分散液の状態で微粒子固定体の製造に用いられる。近赤外線を遮断する微粒子の分散液は、コロイド状分散液や粉砕して得られた分散液にシランカップリング剤3を加え、その後、還流下で加熱させながら微粒子2の表面にシランカップリング剤3を脱水縮合反応により結合させてシランカップリング剤3からなる薄膜を形成する。
【0031】
還流下で微粒子2に反応結合させるシランカップリング剤3の量は、微粒子2の平均粒子径にもよるが、反応結合させる微粒子の重量に対して0.01%重量から5.0重量%であれば微粒子の結合強度は実用上問題ない。また、結合に預からない余剰のシランカップリング剤3があっても良い。
【0032】
特に、近赤外線を遮断する微粒子2からなる微粒子層10が厚くなると、微粒子層10の応力や使用環境によっては凝集破壊により微粒子層10が劣化することもあるので、還流処理後必要に応じて不飽和結合を有するシランカップリング剤や、Si(OR1)4(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシランなどや、R2nSi(OR3)4-n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランや、フェニルトリエトキシシランや、ヘキサメチルジシラザンや、ヘキシルトリメトキシシランなど、他にアルコキシオリゴマーなどが添加されて用いられる。
【0033】
本実施形態の近赤外線遮断用部材100に用いられる基体1を構成する材料としては、不飽和結合を有するシランカップリング剤3による化学結合5が可能なものであれば良く、このような材料としては、例えば、各種樹脂や、合成繊維や、天然繊維などが挙げられる。また、本実施形態の近赤外線遮断用部材の製造に用いられる基体1は、少なくともその表面が樹脂からなるものであれば良い。
【0034】
ここで、基体1の表面ないし全体を構成する樹脂としては、合成樹脂や天然樹脂が用いられ、その一例としては、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂や、ポリスチレン樹脂や、ABS樹脂や、AS樹脂や、EVA樹脂や、ポリメチルペンテン樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂や、ポリ塩化ビニリデン樹脂や、ポリアクリル酸メチル樹脂や、ポリ酢酸ビニル樹脂や、ポリアミド樹脂や、ポリイミド樹脂や、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂や、ポリアセタール樹脂や、ポリアリレート樹脂や、ポリスルホン樹脂や、ポリフッ化ビニリデン樹脂や、PTFEなどの熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸樹脂や、ポリヒドロキシブチレート樹脂や、修飾でんぷん樹脂や、ポリカプロラクト樹脂や、ポリブチレンサクシネート樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂や、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂や、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂や、フェノール樹脂や、ユリア樹脂や、メラミン樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂や、ジアリルフタレート樹脂や、エポキシ樹脂や、エポキシアクリレート樹脂や、ケイ素樹脂や、アクリルウレタン樹脂や、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、シリコーン樹脂や、ポリスチレンエラストマーや、ポリエチレンエラストマーや、ポリプロピレンエラストマーや、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーや、漆などの天然樹脂などが挙げられる。
【0035】
本実施形態では、これらの樹脂の形態は、板状や、フィルム状や、繊維状や、布状や、メッシュ状や、ハニカム状など、使用目的に合った種々の形状及びサイズ等のものが適用でき、特に制限されるものではない。また、これらの樹脂は、基体の主要部がアルミニウムや、マグネシウムや、鉄などの金属材料や、ガラスや、セラミックスなどの無機材料である場合には、これら各材料の表面に、フィルム状に積層されたり、吹き付け塗装や浸漬塗装、静電塗装などの塗装法や、スクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷法により薄膜として形成されたものであっても良い。さらに、これらの樹脂は、顔料や染料などにより着色されてあっても良く、シリカや、アルミナや、珪藻土や、マイカなどの無機材料が充填されてあっても良い。
【0036】
また、基体1は、合成樹脂からなる繊維(合成繊維、化学繊維)であっても良く、基体1を構成する合成繊維の例としては、ポリエステル繊維や、ポリアミド繊維や、ポリビニルアルコール繊維や、アクリル繊維や、塩化ビニル繊維や、塩化ビニリデン繊維や、ポリオレフィン繊維や、ポリカーボネート繊維や、フッソ繊維や、ポリ尿素繊維や、エラストマー繊維や、また、これら繊維を構成する材料と前記樹脂材料との複合繊維などが挙げられる。
【0037】
なお、本実施形態においては、上述のように基体1の表面が樹脂であれば良いので、基体材料に合成樹脂以外の繊維を用いる場合には、樹脂を上述した各種塗装法で繊維表面に塗装することで、樹脂を薄膜として形成しておけば良い。したがって、天然繊維の例として、綿、麻、絹、天然繊維から得られた和紙なども、基体1の材料として用いることが可能である。
【0038】
本実施形態におけるグラフト重合としては、例えばパーオキサイド触媒を用いるグラフト重合や、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合や、放射線によるグラフト重合などが挙げられる。このうち、重合プロセスの簡便性や、生産スピード等の観点より、放射線グラフト重合が特に適している。ここで、グラフト重合において用いられる放射線としては、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線などを挙げることができるが、本実施形態において用いるのには、γ線や、電子線や、紫外線が特に適している。
【0039】
本実施形態でのグラフト重合を用いて得られた近赤外線遮断用部材100は、以下に記した方法により好適に製造される。第一の好適な方法としては、シランカップリング剤3が結合された前述した近赤外線を遮断する微粒子2が分散した溶液を、結合しようとする基体1の表面(樹脂面)に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去した後、γ線や、電子線や、紫外線などの放射線を、シランカップリング剤3が結合した微粒子2が塗布された基体1の表面に照射することで、シランカップリング剤3を基体1の表面にグラフト重合させると同時に微粒子2を結合させる、所謂同時照射グラフト重合により製造される。
【0040】
また第二の好適な方法としては、予め基体1の表面にγ線や、電子線や、紫外線などの放射線を照射した後に、シランカップリング剤3が結合された微粒子2が分散した溶液を塗布して、シランカップリング剤3と基体1とを反応させると同時に微粒子2を結合させる所謂前照射グラフト重合により製造される。
【0041】
本実施形態では、上述したように、固定化する微粒子2が分散した溶液を、固定化する基体1の表面に塗布して近赤外線を遮断する微粒子2を固定化して製造するが、具体的な微粒子2の分散液の塗布方法としては、一般に行われているスピンコート法や、ディップコート法や、スプレーコート法や、キャストコート法や、バーコート法や、マイクログラビアコート法や、グラビアコート法や、または部分的に塗布する方法として、スクリーン印刷法や、パッド印刷法や、オフセット印刷法や、ドライオフセット印刷法や、フレキソ印刷法や、インクジェット印刷法などの様々な方法が用いられ、目的に合った塗布ができれば特に限定されない。
【0042】
また、シランカップリング剤3のグラフト重合を効率良く、かつ、均一に行わせるためには、予め、基体1の樹脂表面がコロナ放電処理やプラズマ放電処理や、火炎処理や、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理などにより親水化処理されてあっても良い。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の近赤外線遮断用部材について詳述する。
【0044】
図2は、本発明の第2実施形態の近赤外線遮断用部材200の断面の一部を拡大した図である。本実施形態の近赤外線遮断用部材200は、微粒子2aで形成されたコーティング膜20(第1の微粒子層)上に、新たな微粒子2bからなる微粒子層30(第2の微粒子層)が形成されている点が、第1実施形態の部材と相違する。すなわち、第1の実施形態にて形成した微粒子層の表面に、さらに微粒子層30を化学反応5により複数層形成した積層構造の形態を有するものである。
【0045】
なお、図2では本発明の第2実施形態の一例を判りやすく模式的に示すため、各微粒子層を微粒子が2層で形成された図で表したが、これに限られず、微粒子が1層で形成されていてもよく、また複数重なって微粒子の層を形成してあってもよい。
【0046】
第1実施形態の近赤外線遮断用部材100との相違点は、近赤外線を遮断する微粒子の層が第一の微粒子層20と第二の微粒子層30から構成され、それぞれの微粒子層に用いられる、近赤外線を遮断する微粒子の近赤外線に対する吸収特性が異なる点にある。この構成では、より広範囲に近赤外線を遮断する効果が得られる。以下に製法及び部材の構成について説明をするが、基体や微粒子の素材や製法に関して、第1実施形態の近赤外線遮断用部材100と共通する点については、説明を省略する。
【0047】
本実施形態の近赤外線遮断用部材200における、コーティング膜20と微粒子層30に用いられる近赤外線を遮断する微粒子は、近赤外線を吸収する波長が異なるものが用いられる。前述したように、本発明では、金属酸化物系と六ホウ化物系が用いられるが、金属酸化物系は1600nm以降に吸収特性を示し、六ホウ化物系は700〜1600nm付近に吸収特性を示すことが知られている。よって、金属酸化物系と六ホウ化物系からなる近赤外線を遮断する微粒子をコーティング膜20と微粒子層30に用いることで、広範囲に近赤外線が遮断でき、効率のよい近赤外線遮断用部材が提供できる。
【0048】
基体1と、微粒子2aからなるコーティング膜20と微粒子2bからなる微粒子層30とを結合させる好適な方法としては、シランカップリング剤3が結合した微粒子2aが分散した溶液を基体1の表面(樹脂面)に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去して微粒子2aからなるコーティング薄膜20を形成する。その後に、微粒子2aと異なる近赤外線の吸収特性を有する微粒子2bにシランカップリング剤3の薄膜を形成させるために、この微粒子2bが分散した溶液を、コーティング膜20の表面上に塗布して新たな微粒子層30を形成し、放射線を照射することにより、微粒子2aで形成されたコーティング膜20と基材1および微粒子2aと異なる近赤外線の吸収特性を有する微粒子2bに形成したシランカップリング剤3とを一度にグラフト重合させることにより結合させる方法により製造される。
【0049】
この場合でも、コーティング膜20を基体1の表面に塗布した後に基体1の表面に放射線を照射することで、グラフト重合により基体1の表面にシランカップリング剤3を介してコーティング膜20を結合させてから、微粒子2aと異なる近赤外線の吸収特性を有する微粒子2bで微粒子層30を形成することで、より強固な積層された微粒子固定化体を製造することが可能である。また、コーティング膜20を形成する方法として、本発明の第1実施形態における第二法で用いた前照射を採用することも可能である。
【0050】
以上説明したように、本発明の第2実施形態の近赤外線遮断用部材200によれば、第1実施形態の部材100の有する効果に加えて、基体1の表面にコーティング膜20を結合させてから、前記微粒子2aと異なる近赤外線の吸収特性を有する微粒子層30を形成することで、近赤外線の広範囲の波長を遮断することが可能な近赤外線遮断用部材を製造することが可能となる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の近赤外線遮断用部材について詳述する。
【0052】
図3は、本発明の第3実施形態の近赤外線遮断用部材300の断面の一部を拡大した図である。本実施形態の近赤外線遮断用部材300は、近赤外線を遮断する微粒子2cが積層して設けられた近赤外線微粒子層40の表面に、紫外線を遮断する微粒子2dからなる微粒子層50が固定されている点が、第1実施形態の部材と相違する。
【0053】
なお、図3では本発明の第3実施形態の一例を判りやすく模式的に示すため、微粒子が2層で形成された図であらわしたが、これに限られず、微粒子が1層で形成されていてもよく、また複数重なって微粒子の層を形成してあってもよい。
【0054】
以下、第1実施形態の近赤外線遮断用部材100との相違点である、製法及び部材の構成について説明をする。また、基体や微粒子の素材や製法に関して、第1実施形態の近赤外線遮断用部材100と共通する点については、説明を省略する。
【0055】
本実施形態の近赤外線遮断用部材300として近赤外線を遮断する微粒子2cが複数重なって形成された微粒子層40の表面に形成された紫外線を遮断する微粒子2dからなる微粒子層50は、紫外線を遮断する効果を有する微粒子であれば良い。
【0056】
一例としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、BaTiOや、PbZrOや、Pb(Zr,Ti)Oや、KTaOや、K(Ta,Nb)Oや、LiNbOや、TiO2−WO3や、AlO−SiOや、WO−ZrOや、WO−SnOなどの複合酸化物や、金、銀、白金などの貴金属、TiN、CrN、TaNなどの金属窒化物が挙げられる。
【0057】
さらに、本実施形態の近赤外線遮断用部材300で用いられた紫外線を吸収する微粒子2dとして、光触媒微粒子が好適に用いられる。
【0058】
光触媒微粒子としては、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射することで、光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタンや、酸化亜鉛や、酸化タングステンや、酸化鉄や、チタン酸ストロンチウムや、硫化カドミウムや、セレン化カドミウムなどの公知の金属化合物半導体を、単一または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの光触媒微粒子のうち、透明性、耐久性に優れ、無害である酸化チタンが、特に好ましく用いられる。
【0059】
酸化チタンの結晶構造はルチル型や、アナダーセ型や、ブルーカイト型や、その他、無定形であっても本実施形態では問わない。また、酸化チタンの一部の酸素原子がアニオンである窒素原子で置換されたTiO2-xxや酸素原子が欠落して化学量論比から著しく外れたTiO2-x(Xは1.0以下)なども用いられる。
【0060】
光触媒微粒子の内部やその表面には、光触媒機能を増す目的で、バナジウムや、銅や、ニッケルや、コバルトや、クロムや、パラジウムや、銀や、白金や、金などの金属や金属化合物を含有させても良い。
【0061】
以上説明したように、本発明の第3実施形態の近赤外線遮断用部材300によれば、第1実施形態の部材100の有する効果に加えて、紫外線の遮断や光触媒による防汚などの機能を付加することができることから、様々な目的にあった近赤外線遮断用部材を製造することが可能である。
【0062】
本発明の各実施形態によれば、前述したように、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った様々な形態が取れることから、例えば、トンネルハウスや遮光ネットなどの農業用資材や、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ、あるいは有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、或いは、炬燵、ホットカーペット、電気毛布、カーテン、ブラインド、壁装材、車両内装材、絨毯、座布団、ハンカチ、テーブルクロス、傘、ブックカバー、靴敷、寝具(例えば、枕、布団、シーツなど)、ネックレスやブレスレッド、指輪、ブローチ、ピアスなどの各種装飾用装身具、ベルトや腕時計バンド、衣類、レインコート、帽子、眼鏡、などの各種実用装身具、さらには、裁断可能な多目的シートや、インテリア材、防虫網など、様々な分野に近赤外線遮断材を付加した素材製品及び応用製品を提供できる。
【0063】
また、本発明の各実施形態によれば、近赤外線を遮断する微粒子を化学結合により基体上に強固に固定できることから、紡糸後に製品形状とした後で、または、製品化の過程で行うことが可能であり、このため、近赤外線を遮断する微粒子の存在が紡糸性に影響しない、というメリットがある。
【実施例】
【0064】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
本発明の方法による下記実施例1〜実施例3の微粒子固定化体の製造にあたっては、岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型電子線照射装置、CB250/15/180L、を用い、電子線グラフト重合により実施した。
【0066】
(実施例1)
近赤外線を遮断する微粒子でアンチモンドープ酸化スズの微粒子(触媒化成工業株式会社製、P−30)が10重量%分散したメタノール溶液をビーズミルで4時間、粉砕分散処理した。次に、不飽和結合を持つ3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−502)を粉砕分散したアンチモンドープ酸化スズ分散メタノール溶液の固形分に対して0.5重量%加えた後、冷却管を備えたフラスコに移し、その後フラスコをオイルバスで加熱し、3時間還流下で処理することにより、粉砕分散したアンチモンドープ酸化スズ微粒子の表面にシランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させた。
【0067】
また、125μmのポリエステルフィルム(パナック株式会社製、ルミラー)の表面に、前記処理液をバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、前記処理液を塗布して乾燥したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で3Mrad照射することで、近赤外線遮断用部材を得た。
【0068】
(実施例2)
実施例1で用いたアンチモンドープ酸化スズの微粒子の代わりに、酸化スズドープ酸化インジウム微粒子(住友金属鉱山株式会社製、SUFP)を用いた以外は実施例1と同様の条件で光触媒微粒子を含む環境浄化用部材を得た。
【0069】
(実施例3)
実施例1で用いたアンチモンドープ酸化スズの微粒子の代わりに、六ホウ化ランタンと酸化ジルコニウムの微粒子が分散した熱線遮断材料(住友金属鉱山株式会社製、KHF−7A)に不飽和結合を持つ3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE−503)固形分に対して1.0重量%加えた後、冷却管を備えたフラスコに移し、その後フラスコをオイルバスで加熱し、3時間還流下で処理することにより、六ホウ化ランタンと酸化ジルコニウムの微粒子の表面にシランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させた。
【0070】
実施例1で用いたポリエステルフィルムの表面に、前記処理液をバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、前記処理液を塗布して乾燥したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で3Mrad照射することで、近赤外線遮断用部材を得た。
【0071】
(実施例4)
実施例1で得た近赤外線遮断用部材の表面に、実施例3で用いたシランカップリング剤が縮合反応で結合させた六ホウ化ランタンと酸化ジルコニウムの微粒子が分散した溶液をバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、前記処理液を塗布して乾燥したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で3Mrad照射することで、アンチモンドープ酸化スズ微粒子が複数重なった層と六ホウ化ランタンと酸化ジルコニウムの微粒子が混合して複数重なった層の2層からなる近赤外線遮断用部材を得た。
【0072】
(実施例5)
紫外線を遮断する超微粒子酸化チタン(石原産業株式会社製、TTO−S−1)が10重量%分散したメタノール溶液をビーズミルで3時間、粉砕分散処理した。次に、不飽和結合を持つ3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE−503)を粉砕分散したイルメナイト分散メタノール溶液、固形分に対して0.1重量%加えた後、冷却管を備えたフラスコに移し、その後フラスコをオイルバスで加熱し、3時間還流下で処理することにより、粉砕分散した超微粒子酸化チタンの表面にシランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させ、処理液Aとした。
【0073】
実施例4で得られた近赤外線遮断用部材の表面に、前記処理液Aをバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、前記処理液を塗布して乾燥したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で2Mrad照射することで、紫外線を遮断する微粒子の層が最表面に形成された近赤外線遮断用部材を得た。
【0074】
(実施例6)
実施例5で用いた超微粒子酸化チタンの代わりに、可視光応答型光触媒(エコデバイス株式会社製、ブルーアクティブBA−PW25)を用いた以外は実施例5と同様の条件で光触媒微粒子層が表面に形成された近赤外線遮断用部材を得た。
【0075】
(比較例1)
実施例1で用いたポリエステルフィルムを処理せずにそのまま近赤外線透過率と可視光透過率、紫外線透過率の測定に用いた。
【0076】
(比較例2)
実施例1で用いたアンチモンドープ酸化スズの微粒子が10重量%分散したメタノール溶液をビーズミルで3時間、粉砕分散処理し、不飽和ポリエステル樹脂水分散溶液(東洋紡績株式会社、バイロナールMD−1200)と1:1の重量比で混合した後、水を加えて固形分を5重量%に調整した。調整して得た水溶液を実施例1で用いたポリエステルフィルム表面にスプレーで塗布し、120℃、30分乾燥することでアンチモンドープ酸化スズの微粒子を含んだ塗膜が形成された近赤外線遮断用部材を得た。
【0077】
<近赤外線遮断用部材の評価>
得られた近赤外線遮断用部材は、近赤外線の透過率を株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV-3100PC)を使用して測定し、波長960nmと2000nmにおける透過率を読み取り、近赤外線透過率とした。また、350nmと500nmにおける透過率を読み取り、それぞれを紫外線透過率と可視光透過率とした。
【0078】
さらに、微粒子層の厚さは走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4700)を使用して、フィルム断面を観察することで評価した。それらの結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

本発明で得られた近赤外線遮断用部材は、実施例1〜6の結果が示すように、近赤外線を遮断する微粒子からなる膜は非常に薄いものであり、また、可視光透過率も高く、透明性に優れていることが確認された。また、近赤外線を遮断する効果も金属酸化物系は2000nmにおいて高い遮断効果を示し、さらに、六ホウ化ランタン系では960nm付近において高い遮断効果を示した。また、金属酸化物系と六ホウ化ランタン系を積層することで広範囲の波長領域の近赤外線を遮断する効果を有することも示された。さらに、酸化チタン微粒子を積層することで、紫外線も効果的に遮断することが示された。これに対し無処理では近赤外線を遮断する効果は認められず、比較例の2のバインダー仕様では、近赤外線を遮断する微粒子を分散した膜は厚く、透明性、近赤外線遮断効果も低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態の近赤外線遮断用部材の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の近赤外線遮断用部材の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の近赤外線遮断用部材の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1:基体
2:近赤外線を遮断する微粒子
3:シランカップリング剤
5:化学結合
10:近赤外線を遮断する微粒子層
100:近赤外線遮断用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が樹脂からなる基体と、
不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、近赤外線を遮断する第1の微粒子からなり、
該第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第1の微粒子同士が互いに結合してなる、第1の微粒子層と、
を備え、
該第1の微粒子層は、前記第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記基体の表面の樹脂とが化学結合して、前記基体に積層して固定してなる
ことを特徴とする近赤外線遮断用部材。
【請求項2】
不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、前記第1の微粒子と近赤外線吸収特性が異なる、近赤外線を遮断する第2の微粒子からなり、
該第2の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第2の微粒子同士が互いに結合してなる第2の微粒子層をさらに備え、
該第2の微粒子層は、前記第1の微粒子層の前記第1の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記第2の微粒子層の前記第2の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜とが化学結合して、前記第1の微粒子層に積層して固定してなる
ことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線遮断用部材。
【請求項3】
不飽和結合を有するシランモノマーの薄膜が表面に形成された、紫外線を遮断する第3の微粒子からなり、
該第3の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜が化学結合して、前記第3の微粒子同士が互いに結合してなる第3の微粒子層をさらに備え、
該第3の微粒子層は、前記近赤外線遮断用部材の表面に積層した微粒子層の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜と前記第3の微粒子層の前記第3の微粒子の表面に形成されたシランモノマーの薄膜とが化学結合し、前記表面に積層した微粒子層に積層して固定してなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線遮断用部材。
【請求項4】
前記紫外線を遮断する第3の微粒子は、光触媒機能を有する微粒子である
ことを特徴とする請求項3に記載の近赤外線遮断用部材。
【請求項5】
前記化学結合は、グラフト重合である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の近赤外線遮断用部材。
【請求項6】
前記グラフト重合は、放射線グラフト重合である
ことを特徴とする請求項5に記載の近赤外線遮断用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−68964(P2006−68964A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253293(P2004−253293)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(391018341)NBC株式会社 (59)
【Fターム(参考)】