説明

近赤外線遮蔽フィルム及びそれを用いた近赤外線遮蔽体

【課題】粘着層の積層作業後にエイジングを行うことなく短時間で所望の粘着特性を得ることができるとともに耐久性能の良好な近赤外線遮蔽フィルムとこれを用いた近赤外線遮蔽体を提供する。
【解決手段】本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、近赤外線吸収性粘着層が透明基材フィルムに積層されており、近赤外線吸収性粘着層は、変性(メタ)アクリル系重合体80〜99質量部と、重合性不飽和基を有するカルボン酸成分1〜20質量部と、を合計100質量部含み、更に所定構造のジイモニウム塩化合物1.0〜2.5質量部、光重合開始剤0.1〜1.0質量部、及びシラン化合物0.1〜2.0質量部を含むことを特徴とする。また、近赤外線遮蔽体は、前記近赤外線遮蔽フィルムを近赤外線吸収性粘着層を介して基材に貼合することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収性粘着層を備える近赤外線遮蔽フィルム及びそれを用いた近赤外線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会において、電子ディスプレイ等の光エレクトロニクス機器はテレビジョンやパーソナルコンピュータのモニター用等として著しい進歩を遂げ、広く普及している。中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称す)は電子ディスプレイパネルの大型化や薄型化に伴って注目を浴びているが、動作原理上発せられる近赤外線によってリモートコントロール機器等の周辺機器の誤動作を招くといった問題がある。また、薄型化や軽量化のためには種々の機能の複合化や部材点数の削減をしなければならないという課題もある。
【0003】
これらの課題を解決するために、近赤外線遮蔽機能と粘着機能とを兼ね備えた近赤外線吸収粘着層を有する近赤外線遮蔽フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の発明では所望の粘着特性を得るために約7日間のエイジング(養生)が必要な熱硬化系の粘着剤を使用しているため、粘着層の硬化を短時間で行うことができず、粘着層を形成しても長期間にわたるエイジングが終了するまでは所望の粘着特性を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、粘着層の積層作業後にエイジングを行うことなく所望の粘着特性を得ることができるとともに耐久性能の良好な近赤外線遮蔽フィルムとこれを用いた近赤外線遮蔽体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本発明は次の手段を採る。
(1)近赤外線吸収性粘着層が透明基材フィルムに積層された近赤外線遮蔽フィルムであって、近赤外線吸収性粘着層は、変性(メタ)アクリル系重合体80〜99質量部と、重合性不飽和基を有するカルボン酸成分1〜20質量部と、を合計100質量部含み、更に下記一般式(1)のジイモニウム塩化合物1.0〜2.5質量部、光重合開始剤0.1〜1.0質量部、及びシラン化合物0.1〜2.0質量部を含む。
【化1】


(一般式(1)において、Xはヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンであり、R〜Rは、炭素数4〜9の環状アルキル基を有するアルキレン基、またはアルコキシ基を有するアルキレン基であることを特徴とする。)
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル系重合体」の用語は、「アクリル系重合体」及び「メタクリル系重合体」の両方を意味している。また、後述の「(メタ)アクリル系」及び「(メタ)アクリレート」等の用語も同様である。
(2)上記(1)に記載の近赤外線遮蔽フィルムであって、近赤外線吸収性粘着層が紫外線の照射により硬化されていることを特徴とする。
(3)プラズマディスプレイ用近赤外線遮蔽体であって、上記(1)又は(2)に記載の近赤外線遮蔽フィルムの近赤外線吸収性粘着層を介して基材に貼り合わせてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近赤外線吸収性粘着層は紫外線を照射することにより硬化可能であるため、短時間で近赤外線吸収性粘着層の硬化を行うことができる。また、近赤外線吸収性粘着層を形成した後に続けて紫外線の照射を行うことにより、近赤外線吸収性粘着層の形成後にエイジングを行うことなく所望の粘着特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本発明の近赤外線遮蔽フィルムは、テレビやモニター等の電子画像表示装置(電子ディスプレイ)におけるPDPに適用されるものであって、透明基材フィルムに近赤外線吸収性粘着層が積層されてなる。また、本発明の近赤外線遮蔽体は、前記近赤外線遮蔽フィルムが近赤外線吸収性粘着層を介して基材(被着体)に張り合わされている。
【0010】
<透明基材フィルム>
近赤外線遮蔽フィルムに用いられる透明基材フィルムは、透明性を有している限り特に制限されないが、光の反射を抑えるため屈折率(n)が1.55〜1.70の範囲内のものが好ましい。このような透明基材フィルムを形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET、n=1.65)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC、n=1.59)、ポリアリレート(PAR、n=1.60)及びポリエーテルスルフォン(PES、n=1.65)等が好ましい。これらのうち、ポリエステルフィルム特にポリエチレンテレフタレートフィルムが成形の容易性で好ましい。
【0011】
透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。透明基材フィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、近赤外線遮蔽フィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下して好ましくない。なお、透明基材フィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0012】
透明基材フィルムはその他の機能を有していても良い。その他の機能としては、防眩機能、ハードコート機能、反射防止機能、防汚機能等が挙げられ、これらの機能はグラビアコート法に代表されるウェットコーティング法や化学蒸着に代表されるドライ製膜法等の従来公知の方法で付与される。
【0013】
<近赤外線吸収性粘着層>
近赤外線吸収性粘着層は、近赤外線吸収機能と粘着機能を併せ持った機能層であり、変性(メタ)アクリル系重合体、重合性不飽和基を有するカルボン酸成分、光重合開始剤、シラン化合物、及びジイモニウム塩化合物を含む。近赤外線吸収性粘着層は、前記各成分を含む粘着剤組成物に紫外線を照射して硬化することにより形成される。
【0014】
近赤外線吸収性粘着層の膜厚は10〜30μmが好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。膜厚が10μm未満であると、近赤外線吸収性粘着層を介して近赤外線遮蔽フィルムを基材に貼合する際に異物等を埋め込むことができないため好ましくない。一方、30μmより厚いとハンドリング性が悪くなるため好ましくない。
【0015】
近赤外線吸収性粘着層を透明基材フィルム上に設ける方法としては、粘着剤組成物をウェットコート法により塗布する方法であれば特に制限されず、例えばグラビアコート法、スピンコート法、ダイコート法等の従来公知の塗工方法を採用することができる。
【0016】
近赤外線吸収性粘着層は、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、紫外線吸収剤、色補正色素、酸化防止剤等のその他の成分を有していても良い。
【0017】
<変性(メタ)アクリル系重合体>
変性(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系モノマーの繰り返し単位を含んでなる。(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸の他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩類;(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;等が挙げられるが、中でもエチルアクリレート、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが好ましく、エチルアクリレートまたはブチルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが更に好ましく、エチルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが特に好ましい。これらの繰り返し単位を含ませることによって、良好な粘着性能を発揮させることが可能となるからである。
【0018】
また、変性(メタ)アクリル系重合体は、主鎖が1種の(メタ)アクリル系モノマー単位のみを含む単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリル系モノマー単位を含む共重合体であってもよいが、形成される近赤外線吸収性粘着層の物性を精密に調整することが容易であるという理由から、2種以上の(メタ)アクリル系モノマー単位を含む共重合体であることが好ましい。また、変性(メタ)アクリル系重合体の主鎖は好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、最も好ましくは全てが(メタ)アクリルモノマー単位によって構成されていることが最も好ましい。(メタ)アクリル系モノマー単位の含有率が50質量%未満であると、近赤外線吸収性粘着層の粘着性能が低下する傾向があるため好ましくない。
【0019】
また、変性(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に(メタ)アクリロイル骨格を含む官能基を有するものである。これにより、紫外線照射によってその重合体同士が架橋されるため、紫外線硬化性が発現されるとともに、近赤外線吸収性粘着層を剥離した際に被着体への糊残りが少なく被着体を汚染し難いという好ましい効果が発揮される。
【0020】
(メタ)アクリロイル系官能基の好ましい含有量は、主鎖の構造、重量平均分子量、ガラス転移温度、粘着物性等によっても異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体100g当たり0.1〜100mmolであることが好ましく、0.3〜50mmolであることが更に好ましく、1〜40mmolであることが特に好ましい。例えば、重量平均分子量が30万程度の変性(メタ)アクリル系重合体であれば、(メタ)アクリロイル系官能基を重合体1分子当たり0.33〜330個有しているものが好ましく、1.0〜165個有しているものが更に好ましく、3.3〜132個有しているものが特に好ましい。この含有量が0.1mmol/100gより少ない場合には、(メタ)アクリロイル系官能基による変性効果(具体的には、紫外線硬化性、高耐候性、被着体への糊残りが少ない等の効果)が十分に得られなくなるおそれがある。その一方、(メタ)アクリロイル系官能基の含有量が100mmol/100gより多い場合には、重合体組成等によっても異なるが、高粘度とそれに伴う塗工不良を招く傾向がある。
【0021】
変性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万〜100万であり、30万〜80万であることが好ましい。重量平均分子量を20万〜100万の範囲内に設定することにより、光重合開始剤との混和性が良好で且つ均一な組成物となって近赤外線吸収性粘着層が良好な粘着特性とその持続性を発現することができると共に、被着体への糊残りが少なく被着体を汚染し難くなる。重量平均分子量が20万を下回る場合には、近赤外線吸収性粘着層を剥離した際に被着体への糊残りが増加し、被着体を汚染する結果を招く。その一方、100万を上回る場合には光重合開始剤との混和性が不良となって近赤外線吸収性粘着層の良好な粘着特性を発揮することができなくなる。なお、本明細書において「重量平均分子量」というときは、GPC−LS法(Gel Permeation Chromatography−Light Scattering Method:GPC−光散乱法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味するものとする。
【0022】
変性(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、−55〜0℃である。ガラス転移温度をこの範囲内に設定することによって、近赤外線吸収性粘着層を形成した際に良好な粘着性能を発現することができる。ガラス転移温度が0℃より高くなると、近赤外線吸収性粘着層を形成した際に粘着強度が低下する傾向を示す。一方、−55℃より低くなると、近赤外線吸収性粘着層を形成した際に被着体への糊残りが増加し、被着体を汚染する傾向がある。なお、本明細書において「ガラス転移温度」というときは、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定されたガラス転移温度を意味するものとする。
【0023】
変性(メタ)アクリル系重合体の製造方法は特に限定されず、例えば基本骨格となる(メタ)アクリル系重合体に対して化学修飾によって(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法(化学修飾法)等の従来公知の方法を用いることができる。
【0024】
変性(メタ)アクリル系重合体の好ましい含有量は、変性(メタ)アクリル系重合体の構造、光重合開始剤の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によっても異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体と重合性不飽和基を有するカルボン酸成分の合計を100質量部とした場合に80〜99質量部であり、85〜98質量部であることが好ましく、90〜97質量部であることが特に好ましい。この含有量が80質量部より少ないと、近赤外線吸収性粘着層の粘着力が低下する傾向がある。一方、変性(メタ)アクリル系重合体の含有量が99質量部より多いと、重合性不飽和基を有するカルボン酸成分やその他のモノマーを用いる際にそれらの単量体との混和性が低下する傾向がある。なお、粘着剤組成物及び近赤外線吸収性粘着層を構成する各成分の含有量は、固形分に基づくものである。
【0025】
<重合性不飽和基を有するカルボン酸>
重合性不飽和基を有するカルボン酸とは、重合性二重結合または重合性三重結合を有するカルボン酸を意味する。重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマーを含有させることにより、被着体に対する近赤外線吸収性粘着層の密着性が向上するとともに、熱架橋剤を使用しなくとも(粘着物性の発現にエイジングが不要)、高温又は高温高湿度条件下においても粘着特性が低下し難い粘着剤組成物を得ることができる。重合性不飽和基を有するカルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等を挙げることができる。
【0026】
重合性不飽和基を有するカルボン酸の好ましい含有量は、変性(メタ)アクリル系重合体の構造、光重合開始剤の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によって異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体と重合性不飽和基を有するカルボン酸の合計を100質量部とした場合に、1〜20質量部であり、2〜15質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることが特に好ましい。この含有量が1質量部未満であると、近赤外線吸収性粘着層の粘着耐久性が低下する傾向がある。一方、重合性不飽和基を有するカルボン酸の含有量が20質量部を超えると、近赤外線吸収性粘着層を剥離した際の糊残りが多くなる傾向がある。また、光学特性に大きな影響を与えない範囲であれば、重合性不飽和基を有するカルボン酸以外の重合性不飽和基を有する化合物を加えてもよい。
【0027】
<光重合開始剤>
光重合開始剤とは、重合反応系に添加しておくことにより光照射によって重合反応を惹起する触媒作用を示す添加剤を意味する。光重合開始剤は、一般に光の波長220〜450nmに吸収域を有し、当該吸収域の光、例えば波長220〜400nmの紫外線の照射によりその機能を発現することができる。
【0028】
前記光重合開始剤としては、例えばα−ヒドロキシアセトフェノン〔チバスペシャルティケミカルズ(株)の商品名:イルガキュア184〕、α−アミノアセトフェノン、ベンゾイン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物〔チバスペシャルティケミカルズ(株)の商品名:イルガキュア819、BASF社の商品名:LucirinTPO〕等の光重合開始剤が挙げられる。中でも、反応性が高いという理由から、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンおよびアシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が特に好ましい。
【0029】
光重合開始剤の好ましい含有量は、変性(メタ)アクリル系重合体の構造、光重合開始剤の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によって異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体と重合性不飽和基を有するカルボン酸成分の合計を100質量部とした場合に0.1〜1.0質量部であり、0.1〜0.7質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部より少ないと、光重合開始剤としての作用が十分に発揮されなくなるおそれがある。一方、光重合開始剤の含有量が1.0質量部より多いと、光重合開始剤の残留により色素の退色を招き、色補正の性能が低下する傾向があると共に、高温又は高温高湿度条件における耐久性能が低下する傾向がある。
【0030】
<シラン化合物>
シラン化合物を配合することにより、ガラス等の被着体との接合用途において近赤外線吸収性粘着層に良好な粘着性を発揮させることができる。また、シラン化合物を含有することにより、重合性不飽和基含有カルボン酸の量が少ない場合でも、高温又は高温高湿度条件下においても粘着特性が低下し難い近赤外線吸収性粘着層を得ることができる。
【0031】
シラン化合物としては、一般的に「シランカップリング剤」と称されているものを広く用いることができる。具体的な化合物としては、アルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。プラズマディスプレイの前面板等、ガラス基材に対する密着性を向上させるという理由から、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基等の官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0032】
シラン化合物の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)の商品名:KBM−403等〕、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびβ−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
シラン化合物の含有量は、変性(メタ)アクリル系重合体の重合体の構造、被着体の種類、要求される粘着特性等によっても異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体および重合性不飽和基を有するカルボン酸の総量を100質量部とした場合に、0.1〜2.0質量部である。この含有量が0.1質量部未満であると、ガラス等の被着体への近赤外線吸収性粘着層の接合において粘着性が不十分となる場合があると共に、高温又は高温高湿度条件における耐久性能が低下する傾向がある。一方、シラン化合物の含有量が2.0質量部を超えると、近赤外線吸収性粘着層の剥離時に糊残りが発生するおそれがある。前記の効果をより確実に得るためには、シラン化合物の含有量を0.5〜1.5質量部とすることが好ましい。
【0034】
<ジイモニウム塩化合物>
本実施形態におけるジイモニウム塩化合物は下記一般式(1)で表される。
【化2】


一般式(1)において、Xはヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンである。これらは高温又は高温高湿度条件における耐久性能を高められるので好ましい。R〜Rは、炭素数4〜9の環状アルキル基を有するアルキレン基、またはアルコキシ基を有するアルキレン基を表す。これらのアルキレン基は微粒子を形成しやすくして耐熱性能を向上させることができる点で好ましい。このような環状アルキル基を有するアルキレン基としては、例えばシクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、ベンジル基、フェニルプロピル基等が挙げられるが、これらの中では耐熱性能を向上させられる点でシクロヘキシルメチル基とシクロヘキシルエチル基が好ましい。一方、アルコキシ基を有するアルキレン基としては、例えばn−プロピルオキシメチル基、n−プロピルオキシエチル基、イソプロピルオキシメチル基、イソプロピルオキシエチル基、sec−ブトキシメチル基、sec−ブトキシエチル基、sec‐ブトキシプロピル基、tert−ブトキシメチル基、tert−ブトキシエチル基、tert‐ブトキシプロピル基等が挙げられるが、これらの中では耐熱性能の観点からイソプロピルオキシメチル基、イソプロピルオキシエチル基が好ましい。
【0035】
本実施形態におけるジイモニウム塩化合物としては、ビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロアルキル)アルキルアミノフェニル]−p−フェニレンジアミンとビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(アルコキシアルキル)アルキルアミノフェニル]−p−フェニレンジアミンが合成の容易性や耐久性能を高めることができる点で好ましい。ビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロアルキル)アルキルアミノフェニル]−p−フェニレンジアミンの具体例としては、例えばビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン、ビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン、ビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロヘキシルエチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン等が挙げられるが、これらの中ではビス(ヘキサフルオロリン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(シクロヘキシルエチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミンが耐久性能を最も高めることができるため好ましい。一方、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(アルコキシアルキル)アルキルアミノフェニル]−p−フェニレンジアミンの具体例としては、例えばビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(イソプロピルオキシエチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(イソプロピルオキシメチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(tert‐ブトキシメチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの中ではビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(イソプロピルオキシエチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミンが耐久性能を最も向上させることができるため好ましい。
【0036】
本実施形態においては、ジイモニウム塩化合物は近赤外線吸収性粘着層中において微粒子の状態で分散して存在することが好ましい。これにより耐久性能を格段に高めることができる。近赤外線吸収性粘着層に含まれるジイモニウム塩化合物は、平均粒子径が0.001〜0.1μmの微粒子であり、平均粒子径が0.005〜0.030μmの微粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.1μmを超えると光の散乱により白ボケを生ずるため不適当であり、平均粒子径が0.001μm未満であると溶解により耐久性能を十分に発現することができないという弊害がある。尚、ここでの平均粒子径とは、nanotracUPA−EX150〔日機装(株)製の粒度分布測定機〕を用いて動的光散乱理論/周波数マトリックス解析法(FFT法)により測定した値のことをいう。
【0037】
ジイモニウム塩化合物の分散方法は特に限定されず、従来公知の分散方法を用いることができる。例えば、有機溶剤にジイモニウム塩化合物を少量ずつ撹拌しながら添加してゆき、ガラスビーズを加えてペイントシェイカーで物理的に粉砕する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
ジイモニウム塩化合物の含有量は、前記近赤外線吸収性粘着層を構成する変性(メタ)アクリル系重合体及び重合性不飽和基を有するカルボン酸成分の総量100質量部に対して、1.0〜2.5質量部である。ジイモニウム塩化合物の含有量が1.0〜2.5質量部であれば、近赤外線吸収能と可視光線の透過率が実用上十分な近赤外線吸収性粘着層を得ることができる。ジイモニウム塩化合物の含有量が1.0質量部より少ない場合には、近赤外線吸収性粘着層が近赤外線吸収能を十分に発揮することができないため不適当であり、含有量が2.5質量部より多い場合には、近赤外線吸収性粘着層の粘着性能が低下する等の弊害がある。
【0039】
<近赤外線遮蔽体>
本発明の近赤外線遮蔽体は、上記近赤外線遮蔽フィルムを、近赤外線吸収性粘着層を介して基材に貼り合わせてなる。ここでの基材としては特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の透明樹脂フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム、電磁波遮蔽フィルム等の機能フィルム、ガラス板やアクリル板等の基材を用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
<変性(メタ)アクリル系重合体A1の調製>
2Lフラスコにアクリル系共重合体〔根上工業(株)製の商品名:パラクロンAW4500H、固形分濃度40%/トルエン、ブチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位、ヒドロキシブチルアクリレート単位、及びヒドロキシエチルアクリレート単位を含む。重量平均分子量は330,000、ガラス転移温度は−8℃。水酸基含有量はアクリル系共重合体100質量部当たり15mmol(アクリル系共重合体1分子当たり50個)。〕586質量部、酢酸エチル890質量部、反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.3質量部を加え、撹拌しながら40℃に加熱した。続いて、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製の商品名:カレンズMOI)1.8質量部を酢酸エチル120質量部に溶解し、前記フラスコ内の温度を40℃に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液の滴定分析によりイソシアネート基の消失を確認するまで40℃で5時間反応を継続することにより変性(メタ)アクリル系重合体A1を得た(重量平均分子量は331,000、ガラス転移温度は−8℃)。
【0041】
<アクリル樹脂組成物A2の調製>
n‐ブチルアクリレート95.0質量部、アクリル酸4.5質量部、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート1・0質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部、酢酸エチル90質量部、トルエン60質量部を混合し、窒素雰囲気下で混合物を65℃に加温して10時間重合反応を行い、アクリル樹脂組成物A2を調製した。
【0042】
(実施例1)
変性(メタ)アクリル系重合体A1を固形分換算で85.0質量部、アクリル酸〔大阪有機化学工業(株)の商品名:98%アクリル酸〕15.0質量部、光重合開始剤〔チバスペシャルティケミカルズ(株)の商品名:イルガキュア819〕0.7質量部、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)の商品名:KBE‐9007〕1.5質量部、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(イソプロピルオキシエチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.015μm)43.0質量部(固形分換算で2.2質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山本化成(株)の商品名:PD‐320〕0.18質量部、及び固形分濃度が27質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を加え攪拌して、粘着剤組成物を得た。
【0043】
前記粘着剤組成物をセパレートフィルム〔東洋紡績(株)の商品名:E7002〕上に乾燥膜厚が15μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した後、65℃で2分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプにより80mJ/cmの紫外線を照射して近赤外線吸収性粘着層を形成した。反射防止フィルム〔日油(株)の商品名:リアルック7800〕の反射防止層とは反対側の面に、セパレートフィルム上に形成された近赤外線吸収性粘着層が接するように貼合することにより、近赤外線遮蔽フィルムを得た。
【0044】
前記近赤外線遮蔽フィルムのセパレートフィルムを剥離した後、基材である板状のガラスに、近赤外線遮蔽フィルムの近赤外線吸収性粘着層が接するように貼合することにより、近赤外線遮蔽体を得た。
【0045】
(実施例2)
変性(メタ)アクリル系重合体A1を固形分換算で93.0質量部、アクリル酸〔大阪有機化学工業(株)の商品名:98%アクリル酸〕7.0質量部、光重合開始剤〔BASF(株)の商品名:ルシリンTPO〕0.2質量部、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)の商品名:KBM‐403〕0.7質量部、ビス(ヘキサフルオロリン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(シクロヘキシルエチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.012μm)40.0質量部(固形分換算で2.0質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山田化学工業(株)の商品名:TAP‐2〕0.34質量部とした以外は実施例1と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0046】
(実施例3)
変性(メタ)アクリル系重合体A1を固形分換算で90.0質量部、アクリル酸〔大阪有機化学工業(株)の商品名:98%アクリル酸〕10.0質量部、光重合開始剤〔BASF(株)の商品名:ルシリンTPO〕0.4質量部、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)の商品名:KBM‐403〕1.0質量部、ビス(ヘキサフルオロリン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(シクロヘキシルメチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.012μm)26.0質量部(固形分換算で1.3質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山田化学工業(株)の商品名:TAP‐2〕0.21質量部、及び固形分濃度が27質量%となるようにMEKを加え攪拌し、粘着剤組成物を得た。前記粘着剤組成物をセパレートフィルム〔東洋紡績(株)の商品名:E7002〕上に乾燥膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した後、65℃で2分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプにより160mJ/cmの紫外線を照射して近赤外線吸収性粘着層を形成した。反射防止フィルム〔日油(株)の商品名:リアルック7800〕の反射防止層とは反対側の面に、セパレートフィルム上に形成された近赤外線吸収性粘着層が接するように貼合することにより、近赤外線遮蔽フィルムを得た。前記近赤外線遮蔽フィルムを実施例1と同様にしてガラスに貼合することにより、近赤外線遮蔽体を得た。
【0047】
(実施例4)
二軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)のの表面に銅のパターンが20μm線幅、250μmピッチ、平均高さ7μmの銅メッキのメッシュパターンを形成し、亜鉛-ニッケル合金メッキにて表面を被覆して電磁波遮蔽フィルムを得た。実施例3で作製した近赤外線遮蔽フィルムのセパレートフィルムを剥離した後、近赤外線吸収性粘着層と金属メッシュ層が接するように圧着し、ラミネートにより近赤外線遮蔽体を得た。なお、ラミネートは、圧力0.5MPa、速度10m/分の条件下で行った。
【0048】
(比較例1)
実施例1において、アクリル酸の代わりにテトラヒドロフルフリルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)の商品名:ビスコート#150〕10.0質量部、4‐ヒドロキシブチルアクリレート〔日本化成(株)の商品名:4HBA〕5.0質量部を使用した以外は実施例1と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0049】
(比較例2)
実施例2において、開始剤量を1.2質量部へ変更した以外は実施例2と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0050】
(比較例3)
実施例2において、シラン化合物を使用しなかった以外は実施例2と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0051】
(比較例4)
実施例2において、ビス(ヘキサフルオロリン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(シクロヘキシルエチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンの代わりにビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸]‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(n‐ブチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミン2.1質量部を使用した以外は実施例2と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0052】
(比較例5)
アクリル樹脂組成物A2を固形分換算で100質量部、ポリイソシアネート〔日本ポリウレタン(株)の商品名:コロネートL〕1.0質量部、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(イソプロピルオキシ)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.012μm)25.5質量部(固形分換算で1.3質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山田化学工業(株)の商品名:TAP‐2〕0.20質量部、及び固形分濃度が23質量%となるようにトルエンを加え攪拌し、粘着剤組成物を得た。前記粘着剤組成物をセパレートフィルム〔東洋紡績(株)の商品名:E7002〕に乾燥膜厚が25μmとなるようにアプリケーターにより塗布した後、90℃で2分間乾燥して近赤外線吸収性粘着層を形成した。反射防止フィルム〔日油(株)の商品名:リアルック7800〕の反射防止層とは反対面に、セパレートフィルム上に形成された前記近赤外線吸収粘着層が接するように貼合することにより、比較例5の近赤外線遮蔽体を得た。
【0053】
(比較例6)
比較例5において、ビス(ヘキサフルオロリン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(シクロヘキシルエチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.012μm)25.5質量部(固形分換算で1.3質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山本化成(株)の商品名:PD‐320〕0.11質量部とした以外は比較例5と同様にして近赤外線遮蔽体を得た。
【0054】
(評価方法)
<粘着特性(糊残り)>
実施例1〜4及び比較例1〜6において得られた近赤外線遮蔽体を用いて、180°ピール力試験(JIS Z0237‐1980に準拠)を行った後の糊残りの有無を評価した。ここで、実施例4の近赤外線遮蔽体は、二軸延伸ポリエステルフィルムの金属メッシュ層とは反対面に透明粘着シート((株)巴川製紙所の商品名:TD43A)を介してガラスと貼合して試験を行った。
【0055】
<耐久性能(耐熱性及び耐湿熱性)>
実施例1〜4及び比較例1〜6において得られた近赤外線遮蔽体に加熱処理(80℃、500時間)又は加湿熱処理(60℃、95%RH、500時間)を行う前と後に、分光光度計〔日本分光(株)の商品名:V570〕を用いて近赤外線遮蔽体に対する波長900nmの光の透過率を測定し、その変化量を評価した。変化量が3%未満の場合には○、3%以上5%未満の場合には△、5%以上の場合には×とした。
【0056】
実施例1〜4についての試験結果を表1に、比較例1〜6についての試験結果を表2にそれぞれ示す。
【表1】


【表2】


なお、上記表1及び2に記載される各成分の配合量は、固形分に換算した場合の質量部である。また、表1及び2において使用される略称、記号は以下の通りである。
A1:パラクロンAW4500(アクリル共重合体)/カレンズMOI(2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)
A2:n−ブチルアクリレート/アクリル酸/2−エチルヘキシルメタクリレート/AIBN
B1:ビスコート#150(テトラヒドロフルフリルアクリレート)
B2:4−ヒドロキシブチルアクリレート
B3:アクリル酸
C1:イルガキュア819
C2:ルシリンTPO
D1:KBE−9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)
D2:KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
E1:コロネートL(ポリイソシアネート)
リアルック:リアルック7800
金属メッシュ/PET:金属メッシュ層/ポリエチレンテレフタレートフィルム
【0057】
表1に示したとおり、実施例1〜4の近赤外線遮蔽体はエイジング無しでも良好な粘着特性を示した。更には耐久性能も良好であった。
一方、表2に示したとおり、比較例1の近赤外線遮蔽体は重合性不飽和基を有するカルボン酸を有していないため、エイジングを行っていない近赤外線吸収性粘着層の粘着特性が良好ではなかった。
また、比較例2〜4の近赤外線遮蔽体は紫外線硬化性の粘着剤を使用したためエイジング無しでも粘着特性は良好であったが、比較例2においては光重合開始剤量が多すぎるため、また比較例3においてはシラン化合物を含んでいないため、比較例4においてはジイモニウム塩化合物が所定の構造を有しないために、それぞれ耐久性能が良好ではなかった。
更には、比較例5及び6の近赤外線遮蔽体は熱硬化系の粘着剤を使用したためエイジング無しでは近赤外線吸収性粘着層の凝集力が高まりきらず、糊残りが発生する結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収性粘着層が透明基材フィルムに積層された近赤外線遮蔽フィルムであって、近赤外線吸収性粘着層は、
変性(メタ)アクリル系重合体80〜99質量部、及び
重合性不飽和基を有するカルボン酸成分1〜20質量部、
を合計100質量部含み、更に
一般式(1)で表されるジイモニウム塩化合物1.0〜2.5質量部、
光重合開始剤0.1〜1.0質量部、及び
シラン化合物0.1〜2.0質量部
を含む近赤外線遮蔽フィルム。
【化1】


(Xはヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はヘキサフルオロリン酸イオンであり、R〜Rは、炭素数4〜9の環状アルキル基を有するアルキレン基、またはアルコキシ基を有するアルキレン基を表わす。)
【請求項2】
近赤外線吸収性粘着層が紫外線の照射により硬化されている請求項1に記載の近赤外線遮蔽フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の近赤外線遮蔽フィルムを、前記近赤外線吸収性粘着層を介して基材に貼り合わせてなるプラズマディスプレイ用近赤外線遮蔽体。






【公開番号】特開2012−118433(P2012−118433A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270067(P2010−270067)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】