説明

近赤外線阻害剤および近赤外線の阻害効果評価方法

【課題】近赤外線を有効に阻害し得る新規な近赤外線阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明の近赤外線阻害剤は、近赤外線の反射成分を含み、上記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものであるか、および/または近赤外線の吸収成分を含み、上記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線阻害剤、および上記近赤外線を用いた近赤外線の阻害効果評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光線のうち、波長の長い近赤外線(波長域約800〜2,500nm)は、太陽エネルギーの約半分を占めており、皮膚の透過性が高く、皮膚の深部まで透過し、皮膚組織にあるヘモグロビンや水に吸収されることが知られている。このような近赤外線の性質を利用して、近赤外線は、血液循環をよくするための医療用赤外線照射装置や、脳血流測定などの医療用具;静脈の認証;乳房診断機などの光干渉断層画像診断装置などの診断装置;家庭用ヒーターなどの暖房機器;調理器具;果物を選別する選果場での品質検査などに汎用されている。
【0003】
しかしながら、極く最近になって、近赤外線による生体への悪影響が報告されている。例えば特許文献1には、近赤外線の長時間露曝により、皮膚の紅班を始め、水泡、肥厚、筋組織萎縮などの皮膚傷害を発生させることが報告されている。また、これらの皮膚障害は、筋組織の萎縮(非特許文献1)によって生じることも報告されている。太陽光線のうち、日焼けなどの皮膚傷害を招くことが知られている紫外線は、太陽光エネルギーの中でも、僅かに約6〜7%を占めるだけであるのに対し、近赤外線は、太陽光エネルギーの約50%を占めており、しかも、皮膚の深部にまで到達するため、近赤外線の生体への悪影響が強く懸念されている。
【0004】
近赤外線による皮膚障害の一つとして、例えば、光線過敏症が挙げられる。光線過敏症は、日光に肌が露曝することにより、小さなボツボツした湿疹を発症し、痒みを伴うものである。光線過敏症は日光アレルギーとも呼ばれ、1)内因性(遺伝的要因)のポリフィリン症、ぺラグラ、日光蕁麻疹、全身性エリテマトーデス、種痘様水泡症、2)外因性の薬剤性光線過敏症、光接触皮膚炎に加え、3)原因が全く判らない多形日光疹、慢性光線皮膚炎に大別される。
【0005】
これまで光線過敏症は、紫外線依存疾患の一つと考えられており、そのため、光線過敏症の診断は一般に、背中の背部にUVA(波長が、315nm〜400nm)やUVB(波長が、280nm〜315nm)といった紫外線を照射することで行われ、その予防には、紫外線を阻害するサンスクリーン剤が使用されている。しかしながら、波長の短い紫外線は、皮膚の表層にしか到達しないため、紫外線照射により、皮膚が赤く炎症を起こすサンバーン(Sunburn)や皮膚表面にメラニン色素が沈着するサンタン(Suntunning)を発症することはあっても、紫外線照射だけで、紅斑や水泡などの明らかな皮膚傷害が発症するとは到底考え難く、皮膚の深部にまで到達する近赤外線の影響を無視することはできない。
【0006】
事実、神経炎、神経痛、リューマチ、関節炎、打撲、捻挫、筋肉痛や腰痛などの治療に用いられる局所照射型赤外線治療器は、光線過敏症患者への使用が禁忌とされており、この事例をみても、光線過敏症の原因は、紫外線だけではないと考えるべきだろう。
【0007】
いずれにせよ、光線過敏症の作用機作が何であれ、光線が直接の誘発因子であることに変わりなく、近赤外線を阻害し得る有効な阻害剤の開発が切望されている。そこで前述した特許文献1には、酸化チタンと酸化亜鉛粉末とからなる近赤外線損傷の防止剤が開示されているが、近赤外線阻害作用の更なる向上が望まれている。
【0008】
また、前述したように近赤外線は、皮膚の深部まで透過して皮膚傷害を発症することから、紫外線阻害の国際的な評価法であるSPF(Sun Protection Factor;紫外線防御指数)やPA(Protection Grade of UVA;UVA防御指数)といったヒト試験法に代わる、簡便で安全な評価法の確立が臨まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/017104号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tanaka Y, Matsuo K, Yuzuriha S.;Long−Lasting Muscle Thinning Induced by Infrared Irradiation Specialized with Wavelengths and Contact Cooling;A Preliminary Report. ePlasty.;2010;10:e40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、近赤外線を有効に阻害し得る新規な近赤外線阻害剤を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、紫外線阻害の国際的な評価法であるSPFやPAといったヒト試験法のような方法に代わる、簡便且つ安全で、非侵襲的な近赤外線阻害の評価法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成し得た本発明に係る第1の近赤外線阻害剤(以下、第1の阻害剤と略記する場合がある。)は、近赤外線の反射成分を含み、前記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものであるところに要旨を有するものである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記金属粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、およびタルクよりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記疎水性溶媒は、へキサン、塩化メチレン、および酢酸エチルよりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、近赤外線阻害剤中に占める前記金属粒子の質量比率は、0.1%以上10%以下である。
【0017】
また、上記目的を達成し得た本発明に係る第2の近赤外線阻害剤(以下、第2の阻害剤と略記する場合がある。)は、近赤外線の吸収成分を含み、前記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものであるところに要旨を有するものである。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、近赤外線阻害剤中に占める前記吸水性ポリマーの質量比率が、0.1%以上50%以下である。
【0019】
また、上記目的を達成し得た本発明に係る第3の近赤外線阻害剤(以下、第3の阻害剤と略記する場合がある。)は、近赤外線の反射成分と、近赤外線の吸収成分と、を含み、前記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものであり、前記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、近赤外線阻害剤中に占める前記吸水性ポリマーの質量比率は、0.1%以上50%以下である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、前記吸水性ポリマーは、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、ジェランガム、トレハロース、ポリアクリル酸ナトリウム、およびヒアルロン酸よりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、前記親水性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、前記油相は、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、およびワックスエステルよりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、前記高分子乳化剤は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である。
【0025】
また、上記課題を解決し得た本発明に係る近赤外線の阻害効果評価方法は、上記のいずれかに記載の近赤外線阻害剤を用いて近赤外線の阻害効果を評価する方法であって、近赤外線阻害剤の塗布部位と非塗布部との温度差をサーモグラフィーで測定するところに要旨を有するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る第1〜第3の近赤外線阻害剤を用いれば、マスキングされていない金属粒子のみから構成されている従来の近赤外線阻害剤に比べ、近赤外線を効率よく阻害することができた。特に、本発明に係る第3の阻害剤のように、所定の吸収成分と所定の反射成分とを含む阻害剤を用いれば、これらを単独で含む第1および第2の阻害剤に比べ、近赤外線を、更に一層効率よく阻害することができた。
【0027】
また、本発明に係る評価方法を用いれば、簡便且つ安全で、非侵襲的に、近赤外線の阻害程度を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明に係る近赤外線阻害剤の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の近赤外線阻害剤を皮膚に塗布したときの阻害作用(反射/吸収)を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施例1において、各試料を用いたときの、酸化チタン濃度と近赤外線阻害率との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2において、吸水コロイドの濃度と近赤外線阻害率との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3において、本発明の近赤外線阻害剤による、皮膚表面から放射される近赤外線の遮断効果をサーモグラフィーで測定した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.本発明の近赤外線阻害剤について
上述したように本発明の近赤外線阻害剤は、第1〜第3の阻害剤を含んでいる。
【0030】
参考のため、図1に、上記近赤外線阻害剤を模式的に説明した図を示す。本発明の近赤外線阻害剤は、要するに、含水基剤(W)、または油成分を含む含水基剤(O/W)中に、近赤外線阻害剤としてマスキングした金属粒子が含まれているか(第1の阻害剤)、または、近赤外線阻害剤として、Water−in−Oil(W/O)型の吸水ポリマーゲルを分散させること(第2または第3の阻害剤)を特徴とするものである。なお、上記(イ)において、吸水性ポリマーの種類によっては油成分でなく、親水性界面活性剤を用いても良い(詳細は後述する。)が、図1および後記する図2では、油相で代表させている。
【0031】
また、図2に、上記近赤外線阻害剤を皮膚に塗布したときの阻害作用(反射/吸収)を模式的に説明した図を示す。このうち本発明に係る第1の近赤外線阻害剤(第1の阻害剤)の特徴部分は、近赤外線の反射作用(すなわち、電子密度が高く、近赤外線を決して透過させず反射させる作用)が知られている酸化チタンや酸化亜鉛などの金属粒子を、そのまま近赤外線阻害剤として使用するのではなく、当該金属粒子をマスキング(水溶性膜で包みこむ)したところにある。その結果、金属粒子のフロックを防止することができ、分散性が向上するため、製剤中に金属粒子を均一に分散させることができる。よって、上記阻害剤を、例えば皮膚に塗布すると、皮膚表面が上記阻害剤によって緻密に覆われるため、皮膚の深部まで透過する近赤外線を効率よく阻害することができる。
【0032】
また、本発明に係る第2の近赤外線阻害剤(第2の阻害剤)は、上記のように近赤外線の反射作用を利用するのではなく、近赤外線が水を吸収する性質をうまく利用したものであり、吸水性ポリマーをマスキング[詳細には、吸収性ポリマーの含水ゲル(吸水性ゲル)を油相などで包み、その周囲を高分子乳化剤(脂溶性界面活性剤)でマスキングする]したところに特徴がある。
【0033】
また、本発明に係る第3の近赤外線阻害剤(第3の阻害剤)は、上述した第1および第2の阻害剤を構成する反射成分と吸収成分を組合わせたものである。すなわち、上記第3の阻害剤の特徴部分は、上述した第1または第2の阻害剤のように、近赤外線の反射作用のみ、または吸収作用のみによって近赤外線の阻害作用を発現させるのではなく、反射と吸収の二段階の作用によって、上記第1または第2の阻害剤に比べ、近赤外線の阻害作用を著しく高めたところにある。上記第3の阻害剤によれば、反射成分の隙間を摺りぬけて透過した近赤外線を、上記吸収成分によって効率良く捕捉することができる。
【0034】
以下、各阻害剤の構成要件について詳しく説明する。
【0035】
(1)本発明に係る第1の近赤外線阻害剤(第1の阻害剤)
本発明に係る第1の近赤外線阻害剤は、近赤外線の反射成分を含み、上記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものである。
【0036】
(金属粒子)
上記反射成分を構成する金属粒子は、近赤外線を反射するものであれば良く、例えば、化粧品などに汎用されている酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、およびタルクよりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの金属粒子は、市販品を使用しても良い。これらのうち、近赤外線の反射作用(すなわち、近赤外線の阻害作用)の観点から好ましいものは、酸化チタンおよび酸化亜鉛であり、より好ましくは酸化チタンである。
【0037】
上記金属粒子の好ましい平均粒子径は、おおむね10nm〜10μmであり、これにより、より高い近赤外線阻害作用が得られる。より好ましい上限は100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。上記範囲に平均粒子径が制御された金属粒子として、市販品を用いても良い。
【0038】
(疎水性溶媒)
上記の金属粒子は、疎水性溶媒に分散している。本発明に用いられる疎水性溶媒としては、へキサン、塩化メチレン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロフォルムなどが挙げられる。このうち好ましいのは、へキサン、塩化メチレン、および酢酸エチルよりなる群から選択される少なくとも一種である。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
(親水性界面活性剤)
そして本発明では、上述した疎水性溶媒に分散された金属粒子を、親水性界面活性剤で被覆(マスキング)したところに特徴がある。金属粒子はフロックを作りやすいため、製剤中に緻密に分散し難いが、本発明によれば、金属粒子が親水性界面活性剤で被覆されているため、金属粒子のフロック生成を防止でき、その結果、金属粒子による近赤外線の阻害作用が有効に発揮されるようになる。
【0040】
マスキングに用いられる親水性界面活性剤は、融点が25℃以上で、HLB値(Hydrophilic Lipophilic Balance)が6.0以上のものが好ましい。
【0041】
このような親水性界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
これらのうち上記アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪酸石けん、ナフテン酸石けん、長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル、脂肪酸モノアルカノールアミド硫酸エステル、アルカリスルホン酸塩、α―スルホ脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどが用いられる。
【0043】
上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型、アルキルアミン塩型、ピリジン環の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、長鎖第1級アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリンが用いられる。
【0044】
上記両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾ―ル型、アミノ酸型、およびアミンオキシド型の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、N−アルキルβ−アミノプロピオン酸塩、N−アルキルβ−イミノジプロピオン酸塩などが用いられる。
【0045】
上記非イオン性界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アリキルグリコシド型、および高級アルコール型の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが用いられる。
【0046】
上述した親水性界面活性剤のなかでも、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
【0047】
このうち、上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S106V,花王(株))やポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S320V,花王(株))などが、より好ましく用いられる。
【0048】
また、上記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、特に、ポリエチレングリコールモノステアレート(例えば商品名:エマノーン3199V、花王(株))、ポリエチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3299V、花王(株))、エチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3199RV、花王(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適であり、中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(例えば商品名:クレモフォールCO40、BASFジャパン(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(例えば商品名:クレモフォールCO60、BASFジャパン(株))などが、より好ましく用いられる。
【0049】
また、上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール共重合体としては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(例えば商品名:エマルゲンPP−290、花王(株))などが、より好ましく用いられる。
【0050】
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖パルミチン酸エステル類(例えば商品名:P−1615,1616、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ミリスチン酸エステル類(例えば商品名:J−1416、三菱化学フーズ(株))ショ糖ステアリン酸エステル類(例えば商品名:J−1809,1811,1811F,1815,1816、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ラウリン酸エステル類(例えば商品名: J−1216、三菱化学フーズ(株)),ショ糖オレイン酸エステル類(例えば商品名: J−1715、三菱化学フーズ(株))などが、より好ましく用いられる。
【0051】
また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび上記ポリアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン123P,花王(株))、ポリオキシエチレンセチルエーテル(例えば商品名:エマルゲン210,花王(株))、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン320P,花王(株))、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(例えば商品名:エマルゲン409V,420,花王(株))などが、より好ましく用いられる。
【0052】
また、上記グリンセリン酸脂肪酸エステルとしては、グリセロールモノステアレート(例えば商品名:レオドールMS−165V,花王(株))などが、より好ましく用いられる。
【0053】
上述した第1の近赤外線阻害剤には、上記成分のほか、化粧品や医薬品などに通常使用される添加剤などを含んでいても良い。
【0054】
上記第1の阻害剤において、近赤外線阻害剤中に占める金属粒子の質量比率は、0.1%以上20%以下であることが好ましい。上記の比率が0.1%未満では、金属粒子による近赤外線反射作用が有効に発揮されず、一方、20%を超えると、塗布した際の延びなどの製剤上のテクスチャーの問題がある。より好ましい金属粒子の質量比率は、0.1%以上10%以下である。
【0055】
(製造方法)
上記第1の近赤外線阻害剤は、金属粒子を上記の疎水性溶媒に分散した後、上記の親水性界面活性剤を加え、おおむね、約60℃以上の温度で加温し、溶解することによって製造することができる。
【0056】
ここで、金属粒子と疎水性溶媒の質量比率は、使用する成分の種類などによっても相違し、成分などに応じて適宜適切に調整すれば良いが、概して、金属粒子1質量部に対し、疎水性溶媒を、おおむね、等量から50倍量の比率で加え、分散させることが好ましい。
【0057】
また、このようにして分散された金属粒子と、親水性界面活性剤の比率は、使用する成分の種類などによっても相違し、成分などに応じて適宜適切に調整すれば良いが、概して、金属粒子1質量部に対し、親水性界面活性剤を、おおむね、4倍量から50倍量の比率で加え、マスキングすることが好ましい。
【0058】
マスキングに当たっては、親水性界面活性剤を、約60℃以上の温度で溶解することが好ましい。その上限は特に限定されないが、界面活性剤の安定性などを考慮すると、おおむね、150℃以下であることが好ましい。また、加温時間は、阻害剤を構成する金属粒子や溶媒などの比率、温度などによっても相違するが、おおむね、30分〜3時間に制御することが好ましい。
【0059】
(2)本発明に係る第2の近赤外線阻害剤(第2の阻害剤)
本発明に係る第2の近赤外線阻害剤は、近赤外線の吸収成分を含み、上記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものである。
【0060】
(吸水性ポリマー)
本発明に用いられる吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系、デンプン系、セルロース系などの合成ポリマー;水溶性高分子;水溶性多糖類など挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらは、市販品を用いることもできる。
【0061】
ポリアクリル酸塩系ポリマーのなかでも、架橋構造を有し、自重の10倍以上の吸水力があり、圧力をかけても離水しにくい高吸収性ポリマー(Superabsorbant Polymer;以下SAP)などが好適に用いられる。
【0062】
具体的には、上記合成系ポリマーとして、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩系高分子化合物;ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体などのビニルピロリドン系高分子化合物;カルボキシポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチルなどの酸性ビニルエーテル系高分子化合物;アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸共重合体液、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸系高分子化合物;N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル共重合体、アクリルオクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性アクリル酸系高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体;ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン・N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液、ジメチルアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体などの含窒素陽イオン性高分子化合物などが挙げられる。
【0063】
特に、カルボキシポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど好適である。
【0064】
水溶性高分子として、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、ペクチン、ジェランガム、アラビアガム、ヒアルロン酸、へパリン、デルマタン硫酸やコンドロイチン硫酸ポリグルタミン酸やコラーゲンなどが挙げられるが、吸水性ポリマーは、ここに挙げられたものに限定されるものではなく、保水力があり、医薬品や化粧品、食品などに使用できるものであれば、自由に選択することができる。
【0065】
更に、これらの水溶性高分子に糖類を加えて使用してもよく、トレハロースやスクロースなどの二糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコールなど挙げられるが、使用方法において水溶性高分子への添加に何ら制限されるものではなく、糖類そのものを使用することも選択できる。
【0066】
上述した吸水性ポリマーのうち、特に好ましいのは、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、ジェランガム、トレハロース、ポリアクリル酸ナトリウム、およびヒアルロン酸よりなる群から選択される少なくとも一種である。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0067】
上記吸水性ポリマーは、油相または親水性界面活性剤によって被覆されている。
【0068】
(親水性界面活性剤)
ここで、上記親水性界面活性剤は、前述した第1の阻害剤において説明したとおりである。
【0069】
(油相)
上記油相としては、例えば油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、およびワックスエステル(ロウ類)よりなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらは市販品を用いることもできる。
【0070】
このうち上記油脂としては、天然油脂および/または合成グリセライドが挙げられる。これらは、融点が25℃以上のものを用いることが好ましい。
【0071】
具体的には、本発明に用いられる天然油脂として、植物油(パーム油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、シソ油、シアバターなど)、鉱物油、動物油(牛脂、豚油、馬脂、魚油など)のいずれも用いることができる。また、本発明に用いられる合成グリセライドとして、例えば、融点が60℃以上の硬化ヒマシ油、硬化綿実油、硬化ダイズ油などのような水素添加植物油や、トリアシルグリセロールなどのグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0072】
本発明に用いられる高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
【0073】
本発明に用いられる高級アルコールとしては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコールのほか、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコールなどのアルキルグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0074】
本発明に用いられるワックスエステルとしては、例えば、ミツロウ、白蝋、カルナウバロウ、パルミチン酸セチルなどが挙げられる。
【0075】
(高分子乳化剤)
上述した油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層(すなわち、油相または親水性界面活性剤の周囲)は、図1に示すように、高分子乳化剤によって被覆されている。
【0076】
上記高分子乳化剤としては、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸Na、ポリアクリル酸アルキル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、(メチルビニルエーテル/マレイン酸)クロスポリマー、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらは市販品を用いても良い。これらのうち好ましいのは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である。
【0077】
上述した第2の近赤外線阻害剤には、上記成分のほか、化粧品や医薬品などに通常使用される添加剤などを含んでいても良い。
【0078】
また、上記第2の近赤外線阻害剤において、近赤外線阻害剤中に占める吸水性ポリマーの質量比率は、0.1%以上50%以下であることが好ましい。上記の比率が0.1%未満では、吸水性ポリマーによる近赤外線の吸収作用が有効に発揮されず、一方、50%を超えると、ポリマーのゲル化などの製剤上の問題がある。より好ましい吸水性ポリマーの質量比率は、0.1%以上20%以下である。
【0079】
(製造方法)
上記第2の近赤外線阻害剤は、以下のようにして製造することができる。まず、吸水性ポリマーを充分含水させた吸水コロイドに、上記の油相または親水性界面活性剤を加えて分散させ、適宜、ゲル基材(油性基材)などを加えて混合することによって上記吸水性ポリマーを封入する(マスキング)。次いで、上記の高分子乳化剤を加えて乳化させることによって所望とする阻害剤が得られる。
【0080】
以下、各工程について詳しく説明する。
【0081】
まず、吸水性ポリマーを水に含水させ、吸水コロイド(含水ゲル)を得る。含水条件は、使用する吸水性ポリマーなどの種類によっても相違し、一義的に記載することは困難であるが、おおむね、吸水性ポリマー1質量部に対し、水を約2〜10質量部加え、おおむね、1〜24時間放置することが好ましい。
【0082】
次に、上記の吸水コロイドに親水性界面活性剤を加えるか、または油相を加えて分散させる。油相を加える場合は、予め加温して溶解しておくことが好ましい。例えば、約60℃以上(種類によっては、約85℃以上)の温度に加温して溶解した後、約40〜60℃の温度まで低下させ、溶解液を得ることが好ましい。
【0083】
ここで、吸水コロイド(吸水性ポリマーに水を加えて含水させたもの)と、親水性界面活性剤または油相との質量比率は、使用する成分の種類などによっても相違するが、概して、吸水コロイド1質量部に対し、親水性界面活性剤または油相を、おおむね、4〜50質量部の範囲で加えることが好ましい。
【0084】
例えば、上記の吸水コロイドに油相を加えて分散させる態様は、以下のとおりである。ただし、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
【0085】
例えば一態様として、融点が60℃以上の硬化ヒマシ油、硬化綿実油、硬化ダイズ油などの水素添加植物油;ミツロウ、カルナウバロウなどのワックスエステルなどの油相を、一旦、約85℃程度まで昇温した後、撹拌し、完全に溶解した後、当該油相100質量部に対し、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および/または脂溶性界面活性剤を、約0.1〜20質量部の比率で加え、澄明性を確認しながら、約40〜60℃の温度まで低下させて溶解液を得る。
【0086】
また、別の態様として、疎水性基材(油性基材)を用いて所定の溶解液を得ても良い。例えば、疎水性基材である高級脂肪酸エステルトリグリセリド/ジグリセリド/モノグリセリドの混合物(Sasol Germany GmbH社;ウイテプゾールW−35、ウイテプゾールE85)を約85℃まで昇温して溶解した後、この100質量部に対し、約1〜30質量部のミツロウを加えて溶解した後、約40〜60℃の温度まで低下させて油脂溶解液を得ても良い。
【0087】
ここで、上記油性基材は、硬化油やミツロウなどのハードファットを用いた混合油脂の融点を調製するために好ましく用いられる。上記油性基材としては、医薬品、化粧品、食品などに通常用いられる低融点の油成分であれば特に限定されず、例えば、植物油、動物油、中性脂質(モノ置換、ジ置換、又はトリ置換のグリセライド)、合成油脂、ステロール誘導体などが挙げられる。
【0088】
上記油性基材に用いられる油成分としては、例えば、植物油、鉱物油、ワセリン、パラフィン類、中鎖飽和脂肪酸などの飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸からなる油脂、ワックス類、ラノリン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、グリセリン、エタノールなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0089】
上記油成分のうち、好ましくは、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
【0090】
また、上記油性基材に用いられる植物油としては、例えば、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、シソ油などが挙げられる。
【0091】
また、上記油性基材に用いられる動物油としては、例えば、動物油として牛脂、豚油、魚油などが挙げられる。
【0092】
また、上記油性基材に用いられる中性脂質としては、例えば、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン、スクワランやスクワレンなどが挙げられる。
【0093】
また、上記油性基材に用いられる合成油脂としては、例えば、アゾンなどが挙げられる。
【0094】
また、上記油性基材に用いられるステロール誘導体としては、例えば、コレステリルオレエート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミデート、コレスレリルアラキデートなどが挙げられる。
【0095】
上記のうち、ハードファットを用いた混合油の融点調製に好ましい油成分としては、中鎖脂肪酸トリグリセライドや、これを主成分とする植物油などが挙げられる。
【0096】
次に、このようにして得られた、マスキングされた吸水性コロイド(上記の油相または親水性界面活性剤で被覆された吸水性ポリマー)を、上記の親油性乳化剤に加え、乳化させて所望とする第2の阻害剤を得る。
【0097】
ここで、被覆後の吸水性コロイドと親油性乳化剤の好ましい質量比率は、使用する成分などの種類によっても相違するが、概して、上記吸水性コロイド1質量部に対し、親油性乳化剤をおおむね、等量〜10倍量の範囲で添加することが好ましい。
【0098】
(3)本発明に係る第3の近赤外線阻害剤(第3の阻害剤)
本発明に係る第3の近赤外線阻害剤は、上述した第1の阻害剤(近赤外線の反射成分)と、第2の阻害剤(近赤外線の吸収成分)を含んでいる。各阻害剤を構成する成分の詳細は、前述したとおりである。
【0099】
上記第3の阻害剤において、近赤外線阻害剤中に占める金属粒子の質量比率は、0.1%以上20%以下であることが好ましい。上記の比率が0.1%未満では、金属粒子による近赤外線反射作用が有効に発揮されず、一方、20%を超えると、塗布した際の延びなどの製剤上のテクスチャーの問題がある。より好ましい金属粒子の質量比率は、0.1%以上10%以下である。
【0100】
上記第3の阻害剤において、近赤外線阻害剤中に占める吸水性ポリマーの質量比率は、0.1%以上50%以下であることが好ましい。上記の比率が0.1%未満では、吸水性ポリマーによる近赤外線の吸収作用が有効に発揮されず、一方、50%を超えるとポリマーのゲル化など製剤上の問題がある。より好ましい吸水性ポリマーの質量比率は、0.1%以上20%以下である。
【0101】
また、上記第3の阻害剤において、上述した反射成分(要約すれば、マスキングされた金属粒子)と、上述した吸収成分(要約すれば、吸水性ポリマーの外層を親水性界面活性剤によって被覆し、その周囲を高分子乳化剤で被覆したもの)の混合比率(質量換算)は、おおむね、反射成分:吸収成分=0.1〜20:0.1〜50であることが好ましく、0.1〜10:0.1〜20であることがより好ましい。
【0102】
(製造方法)
上記第3の近赤外線阻害剤は、前述した方法により、第1および第2の阻害剤をそれぞれ調製した後、これらを基材に加えて混合し、撹拌などして練合することによって製造することができる。
【0103】
上記基材としては、化粧品のゲル、クリーム、ローション、油製剤の基材や医薬品などに通常用いられるものであれば特に限定されない。
【0104】
ここで、上記第3の阻害剤(更には、第1および第2の阻害剤)の調製に当たり、混合および撹拌に用いられる装置としては、微小な乳化状態が得られるものであれば特に限定されず、化粧品や医薬などの分布やで通常用いられるものを使用することができる。例えば、薄膜旋回型高速撹拌機、ハイドロマックスミキサー、インペラー攪拌機、アジホモミキサーなどが挙げられる。具体的には、例えば、上記の混合および撹拌の工程を、超高圧乳化装置であるナノマイザーマシンを用いて行なうことができる。あるいは、このような機械的撹拌に代わり、液相レーザーアブレーション装置や超音波を使った乳化装置を用いて行なっても良い。
【0105】
本発明に係る第1〜第3の阻害剤の剤型は特に限定されず、例えば、ゲル剤、クリーム剤、油製剤、ローションなど、使用目的に応じて適宜適切な剤型を選択することができる。
【0106】
2.本発明の近赤外線阻害効果評価方法について
次に、近赤外線の阻害効果を評価する方法について説明する。本発明の評価方法は、上記のいずれかに記載の近赤外線阻害剤を用いて近赤外線の阻害効果を評価する方法であって、近赤外線阻害剤の塗布部位と非塗布部との温度差をサーモグラフィーで測定するところに特徴がある。
【0107】
この評価方法は、上記阻害剤をヒトの手背などに塗布したとき、塗布した部位(塗布部位)と塗布しなかった周辺部位(非塗布部位)の夫々について、体表から放射される近赤外線の程度が異なることに基づいてなされたものであり、各部位の温度をサーモグラフィーで測定し、両者の温度差を、本発明の阻害剤による近赤外線阻害効果として評価するというものである。ここで、サーモグラフィーは、物体から放射される近赤外線を、赤外線受光器を用いて測定し、物体の温度分布を画像化する方法であり、測定対象物の温度分布を、非接触で且つ簡易に測定できる方法として汎用されている。
【0108】
後記する実施例に示すように、本発明阻害剤の塗布部位と非塗布部位の温度差をサーモグラフィーで測定したところ、両者の間で明らかな差異が認められた。よって、近赤外線照射による体表温度の変化を指標としてサーモグラフィーフで判定する本発明の評価方法は、簡便且つ安全で、非侵襲的に、近赤外線の阻害程度を評価できるものとして極めて有用である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0110】
製造例1・・・第1の阻害剤の調製その(1)
平均粒子径が25nmの酸化チタン(石原産業(株)、TTO−51(C))50gを、80gのへキサンに分散した後、これを、85℃に加温して溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)100gの溶液に加えて撹拌し、エバポレーターを使った減圧乾燥により脱溶媒することによって製造例1の阻害剤(反射成分のみ)を得た。
【0111】
製造例2・・・第1の阻害剤の調製その(2)
平均粒子径が21nmの酸化亜鉛(石原産業(株)FZO―50)20gを、85℃に加温して溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)180gの溶液に加えて撹拌し、エバポレーターを使った減圧乾燥により脱溶媒することによって製造例2の阻害剤(反射成分のみ)を得た。
【0112】
製造例3・・・第2の阻害剤の調製その(1)
カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)1gに精製水19gを加え、一晩浸漬して膨潤させた後、これを、85℃に加温して溶解したシアバターRF(高級アルコール工業(株))80gに加えて撹拌し、分散させた。この分散液(吸水コロイド)を、85℃に加温溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて(すなわち、吸水コロイドの含有率10%)撹拌し、分散させることによって製造例3の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0113】
製造例4・・・第2の阻害剤の調製その(2)
ルビスコールK30(BASFジャパン(株)、ポリビニルピロリドンの一種)1gに精製水19gを加え、一晩浸漬して膨潤させた後、これを、85℃に加温して溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)80gの溶液に加えて撹拌し、分散させた。この分散液を、85℃に加温して溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて撹拌し、分散させることによって製造例4の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0114】
製造例5・・・第2の阻害剤の調製その(3)
キサンタンガム(大日本製薬社製;商品名エコーガム/ケルトロール)0.5g、および精製ローカストビーンガム(三晶株式会社製;商品名GENUGUM type RL−200−J)0.25gに精製水19gを加え、一晩浸漬して水膨潤させた後、これを、85℃で加温溶解したシアバターRF(高級アルコール工業(株))80gに加えて撹拌し、分散させた。この分散液を、85℃に加温して溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて撹拌し、分散させることによって製造例5の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0115】
製造例6・・・第2の阻害剤の調製その(4)
カラギーナン(三晶株式会社製;商品名GENUGEL carrageenan type SWG−J)0.5g、および精製ローカストビーンガム(三晶株式会社製;商品名GENUGUM type RL−200−J)0.25gに精製水19gを加え、一晩浸漬して水膨潤させた後、これを、85℃で加温溶解したシアバターRF(高級アルコール工業(株))80gに加えて攪拌し、分散させた。この分散液を、85℃に加温溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて撹拌し、分散させることによって製造例6の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0116】
製造例7・・・第2の阻害剤の調製その(5)
ペクチン(三晶株式会社製;商品名GENU pectin type 121−J Slow Set)0.5gをグリセリン10gに分散させ、煮沸したショ糖80%液を10g加え溶解させた。この溶液を85℃に保ったまま、加温溶解したシアバターRF(高級アルコール工業(株))80gに加えて攪拌し、分散させた。この分散液を、85℃に加温溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて撹拌し、分散させることによって製造例7の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0117】
製造例8・・・第2の阻害剤の調製その(7)
アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ社製;キミカアルギンIL−6g)0.3gをグリセリン2gに分散させ、煮沸した水を14g加えて溶解させた。この溶液を85℃に保ったまま、加温溶解したシアバターRF(高級アルコール工業株式会社)80gに加えて攪拌、分散する。分散させながら、1%の塩化カルシウム水溶液を毎分1mLでゆっくりと3g添加する。この分散液を、85℃に加温溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液に10質量%となるように加え、攪拌、分散し、製造例8の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0118】
製造例9・・・第2の阻害剤の調製その(8)
ジェランガム(三晶株式会社製;ケルコゲルAFT)0.7gをグリセリン2gに分散させ、煮沸した水を16.3g加えて溶解させた。この溶液を85℃に保ったまま、85℃に加温して溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)80gの溶液に加えて撹拌し、分散させた。この分散液を、85℃に加温して溶解したアクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体(ニッコーケミカルズ(株)、PEMULEN TR−1)3質量%水溶液中に、全溶液中に占める比率が10質量%となるように加えて撹拌し、分散させることによって製造例9の阻害剤(吸収成分のみ)を得た。
【0119】
製造例10・・・第3の阻害剤の調製その(1)
精製水3450gにグリセリン150g、カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)20gを加え、85℃に加温しながら撹拌し、溶解させた。65℃まで温度を下げた後、オリーブスクワラン200g、ホホバ油150g、フェノキシエタノール30gを加えて混合した。更に温度を40℃まで下げた後、10%NaOHを50g加えて撹拌した後、25℃まで温度を下げた。そこに、上記製造例1の阻害剤(第1の阻害剤)450g、および上記製造例3の阻害剤(第2の阻害剤)500gを加えた後、撹拌し、分散させることによって製造例10の阻害剤(反射成分+吸収成分)を得た。
【0120】
製造例11・・・第1の阻害剤の調製その(2)
精製水3950gにグリセリン150g、カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)20gを加え、85℃に加温しながら撹拌し、溶解させた。65℃まで温度を下げた後、オリーブスクワラン200g、ホホバ油150g、フェノキシエタノール30gを加えて混合した。更に温度を40℃まで下げた後、10%NaOHを50g加えて撹拌した後、25℃まで温度を下げた。そこに、上記製造例1の阻害剤(第1の阻害剤)450gを加えた後、撹拌し、分散させることによって製造例11(反射成分のみ)の阻害剤を得た。
【0121】
製造例12・・・金属粒子(マスキングなし)の調製(比較例)
精製水4250gにグリセリン150g、カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)20gを加え、85℃に加温しながら撹拌し、溶解させた。65℃まで温度を下げた後、オリーブスクワラン200g、ホホバ油150g、フェノキシエタノール30gを加えて混合した。更に温度を40℃まで下げた後、10%NaOHを50g加えて撹拌した後、25℃まで温度を下げた。そこに、平均粒子径が25nmの酸化チタン(石原産業(株)、TTO−51(C))150gを加え、撹拌し、分散させることによって製造例12(比較例)を得た。
【0122】
製造例13・・・第1の阻害剤について油相(基剤)のみの調製(対照例)
精製水4100gにグリセリン150g、カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)20gを加え、85℃に加温しながら撹拌し、溶解させた。65℃まで温度を下げた後、オリーブスクワラン200g、ホホバ油150g、フェノキシエタノール30gを加えて混合した。更に温度を40℃まで下げた後、10%NaOHを50g加えて撹拌した後、25℃まで温度を下げた。そこに、ポリオキシエチレ硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)300gを入れ、撹拌し、分散させることによって製造例13(比較例)を得た。
【0123】
製造例14・・・第2の阻害剤について(基剤)のみの調製(対照例)
精製水3600gにグリセリン150g、カルボマー980(ニッコーケミカルズ(株)、カルボキシビニルポリマーの一種)20gを加え、85℃に加温しながら撹拌し、溶解させた。65℃まで温度を下げた後、オリーブスクワラン200g、ホホバ油150g、フェノキシエタノール30gを加えて混合した。更に温度を40℃まで下げた後、10%NaOHを50g加えて撹拌した後、25℃まで温度を下げた。そこに、ポリオキシエチレ硬化ヒマシ油(ニッコーケミカルズ(株)、HCO−60)300gを入れ、撹拌し、分散させることによって製造例14を得た。
【0124】
製造例15・・・第2の阻害剤の調製
上記製造例14の基剤中に、上記製造例3の阻害剤(第2の阻害剤)500gを加えた後撹拌し、分散させることによって製造例15(第2の阻害剤)を得た。
【0125】
実施例1・・・近赤外線阻害作用の評価その(1)
上記の製造例10(第3の阻害剤)および製造例11(第2の阻害剤)を試験試料として用い、上記の製造例12を比較試料として用い、島津製作所(株)製の紫外・可視・近赤外分光光度計UV−3600にて、近赤外線域(800nm〜2,500nm)を2nmのピッチでスキャンし、上記分光光度計に附属の積分球付き大形試料室を用いて受光し、各試料の透過量を求めた。上記の製造例13を標準試料として用い、上記と同様にして透過量を測定し、上述した試験試料および比較試料の透過量を補正した。
【0126】
近赤外線(nIR、800nm〜2,500nm)の阻害率は、以下のようにして算出した。
nIRの阻害率(%)
=[試験試料の透過量(At)/標準試料の透過量(As)]×100
【0127】
これらの結果を図3に示す。図3の縦軸は近赤外線阻害率(%)を、横軸は酸化チタン濃度(%)を、それぞれ示す。図3には、各試料について、酸化チタン濃度を種々変化させたときの結果も併記している。
【0128】
図3より、本発明に係る第3の阻害剤(製造例10、図中、◆)および第1の阻害剤(製造例11、図中、■)を用いると、酸化チタン濃度に依存して近赤外線の阻害率が向上することが分かる。これに対し、マスキング処理を行なっていない未処理の酸化チタンを用いた製造例12(図中、▲)では、酸化チタン濃度を変化させても、殆ど阻害効果は得られなかった。よって、酸化チタンをマスキングすることにより、近赤外線の阻害効果が向上することが実証された。
【0129】
更に上記第3の阻害剤(製造例10)と第1の阻害剤(製造例11)を対比すると、第3の阻害剤のように吸収成分(吸水コロイド)を添加すると、第1の阻害剤に比べて、阻害効果が更に向上することが分かった。よって、マスキングされた酸化チタンによる反射と、吸水性ゲルを用いた吸水コロイドによる吸収により、近赤外線を極めて有効に阻害できることが実証された。
【0130】
実施例2・・・近赤外線阻害剤の評価その(2)
上記の製造例15(第2の阻害剤)を試験試料として用い、上記の製造例14を標準試料として用い、実施例1と同様にして阻害率を求めた。
【0131】
この結果を図4に示す。図4には、吸水コロイドの含有率を種々変化させたときの結果も併記している。
【0132】
図4より、本発明に係る第2の阻害剤(図中、◆)を用いると、吸水コロイドの含有率(%)に依存して近赤外線の阻害率が向上することが分かった。
【0133】
実施例3・・サーモグラフィーによる評価
ここでは、皮膚表面から放散される赤外線を本発明阻害剤によってどれほど遮断できるかを測定した。
【0134】
詳細には、製造例10の阻害剤(第1の阻害剤)を健常成人の左手背に、25mm×25mmの範囲に0.5g塗布し、塗布後の皮膚温度を、塗布表面から30cm離してサーモグラフィー(CHINO社製のFLIR systemsのCPA−B0306)を用いて撮影した。比較のため、塗布部周辺の非塗布部の皮膚温度を同様にして撮影した。
【0135】
これらの結果を図5に示す。図5には、塗布前、塗布直後、塗布10分後、塗布20分後のサーモグラフィーの写真を示している。
【0136】
図5に示すように、本発明の阻害剤(製造例5)を塗布する前は、左手背中側が全体に均一な温度であったのに対し、塗布後は、上記阻害剤によって皮膚表面から放散される赤外線が遮断されるため、塗布部の温度が低くなった。よって、本発明の方法を用いれば、近赤外線阻害剤による阻害効果を、非侵襲的に評価できることが分かる。
【0137】
前述したように、ヒト皮膚に近赤外線を長時間露曝すると、紅斑や水泡などを発症するが、換言すれば、このような皮膚傷害の発症により、近赤外線の影響を確認することができる。しかしながら、ヒト皮膚の傷害の抑制の有無を前提にした評価方法はこれまでなく、非侵襲の評価方法が求められていた。本発明による評価方法は、このような要請に見事に応えるものであり、簡便で再現性があり、近赤外線の影響を評価・判定し得るヒト試験の極めて有効な方法ということができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線の反射成分を含み、
前記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものであることを特徴とする近赤外線阻害剤。
【請求項2】
前記金属粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、およびタルクよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の近赤外線阻害剤。
【請求項3】
前記疎水性溶媒が、へキサン、塩化メチレン、および酢酸エチルよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の近赤外線阻害剤。
【請求項4】
近赤外線阻害剤中に占める前記金属粒子の質量比率が、0.1%以上20%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線阻害剤。
【請求項5】
近赤外線の吸収成分を含み、
前記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものであることを特徴とする近赤外線阻害剤。
【請求項6】
近赤外線阻害剤中に占める前記吸水性ポリマーの質量比率が、0.1%以上50%以下である請求項5に記載の近赤外線阻害剤。
【請求項7】
近赤外線の反射成分と、近赤外線の吸収成分と、を含み、
前記反射成分は、疎水性溶媒に分散した金属粒子が、親水性界面活性剤によって被覆されたものであり、
前記吸収成分は、油相または親水性界面活性剤によって被覆された吸水性ポリマーの外層が、高分子乳化剤によって被覆されたものであることを特徴とする近赤外線阻害剤。
【請求項8】
近赤外線阻害剤中に占める前記吸水性ポリマーの質量比率が、0.1%以上50%以下である請求項7に記載の近赤外線阻害剤。
【請求項9】
前記吸水性ポリマーが、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、ジェランガム、トレハロース、ポリアクリル酸ナトリウム、およびヒアルロン酸よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項5〜8のいずれかに記載の近赤外線阻害剤。
【請求項10】
前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜9のいずれかに記載の金属化合物から成る近赤外線阻害剤。
【請求項11】
前記油相が、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、およびワックスエステルよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項5〜10のいずれかに記載の近赤外線阻害剤。
【請求項12】
前記高分子乳化剤が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である請求項5〜11のいずれかに記載の近赤外線阻害剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の近赤外線阻害剤を用いて近赤外線の阻害効果を評価する方法であって、
近赤外線阻害剤の塗布部位と非塗布部との温度差サーモグラフィーで測定することを特徴とする近赤外線の阻害効果評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158546(P2012−158546A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18907(P2011−18907)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(511027563)株式会社バイオデザイン (2)
【出願人】(511027574)株式会社アンティエイジングリサーチセンター (3)
【Fターム(参考)】