説明

近赤外蛍光造影剤

造影力に優れ、生体内に蓄積しにくく、水溶化基を有して下記一般式で表されるシアニン系化合物を含有する近赤外蛍光造影剤及びそれを用いた造影方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はシアニン系化合物および近赤外蛍光造影剤、当該造影剤を用いた蛍光造影方法に関するものである。
【背景技術】
病気を治療する際には、病気の初期段階においてその病気により生体内に引き起こされる器官・組織の形態変化を精密かつ迅速に、さらに簡便な方法で検出することが要求される。特に癌を治療する場合、発癌初期に小さい病変部位を特定しその大きさを確定することが早期治療には必要不可欠である。この目的のために既に知られている診断方法として、内視鏡による生体検査、X線撮影、MRIおよび超音波撮影などの画像診断を挙げることができる。
生体検査は直接病変部を観察できるため診断確定には有効ではあるが、同時に被験者に痛みや苦痛を強いる。X線撮影やMRIは、人体に有害となり得る放射線や磁場を被験者に曝すものであり、病巣・病変部位などを時間経過とともに追跡しようとするとその被爆時間は追跡時間に比例して増大してしまう。MRI診断のための測定は、一般に撮影時間が長く、またMRI撮影装置から発する音は、被験者に対し心理的圧迫感を与える。さらに、これらの設備や装置は大掛かりであるために、その設置や操作、維持には多大の労力と費用が必要とされる。
一方、光は、比較的簡単な装置で生体を非侵襲的に診断できる手段である。たとえば、乳幼児用の体温を鼓膜の発する赤外線を検出することで計測する体温計、新生児の黄疸を皮下組織に沈着したビリルビンの黄色味の度合いを数値化することで診断する黄疸計、動脈血中酸素飽和度(SaO)を光の吸収測定をもとに無侵襲的に計測するパルスオキシメータ、腫瘍細胞の自家蛍光が正常細胞の自家蛍光(450nmで励起、520nmで蛍光発生)よりも小さいことを利用した、内視鏡による自家蛍光観察法などが実用化されている。しかしながら、生体内には、可視光領域に吸収を持つヘモグロビンなどが多く存在するため、生体の極く表面の情報しか計測、収集できないという課題があった。
ところで、可視光の少し長波長領域に属す近赤外領域では、水素結合を有する各置換基の吸収が存在するものの、その吸収は比較的小さいことから、近赤外光は生体組織を透過しやすい。かかる近赤外光の特性を利用すれば、生体内の情報を身体に無用の負荷をかけることなく測定することも可能であると考えられる。しかしながら、光は、生体組織によって強く散乱されるため、検出される光が、生体内のどの部分を通過してきたか、どの部分の情報を伝えてくれるのかを知ることは通常、容易ではない。最近、高感度のセンサーや、極短パルスを発生するレーザー、モンテカルロ法を用いた体内光散乱シミュレーション法などの組み合わせにより体深部の情報も得られるようになってきた。
近赤外光を用いた診断法として、腫瘍部分に近赤外蛍光色素を集め、腫瘍部分をイメージングする近赤外蛍光撮影が注目されている。この方法は、近赤外領域波長の励起光の照射により蛍光を放射する性質を持つ化合物を造影剤として生体内に投与する。次に身体の外側から近赤外の波長である励起光を照射し、腫瘍部分に集まった蛍光造影剤から放射される蛍光を検出して、病変部を確定するものである。
このような蛍光造影剤として、生体内での安全性が確認されているインドシアニングリーンがある。腫瘍部分の血管は、開閉するタイミングがランダムで、血流が滞留している(いわゆる血液プール)といわれており、腫瘍を有する動物にインドシアニングリーンを投与すると、正常部分と腫瘍部分とでは血中滞留時間が異なるため(正常細胞からなる組織からはすぐに排泄される)、近赤外領域の波長の励起光をあてることで腫瘍部分を浮き上がらせることができる(大畑 他、ラット実験腫瘍におけるインドシアニングリーンと近赤外光トポグラフィーを用いた癌診断法の基礎的研究:日本医放会誌.62(6).284−286.2002)。
シアニン系化合物の蛍光造影剤が報告されて以来、親水性、モル吸光係数、量子収率の高い化合物に改変すべく、各種の周辺シアニン系化合物を造影剤とする技術が開示された(たとえば、特開2000−95758号公報、特表2002−526458号公報、特表2003−517025号公報、特開2003−160558号公報、特開2003−261464号公報)。しかしながら、正常な組織と病変組織とを識別できる解像性能(造影力)とともに、生体から造影後に生体内で完全に分解され無害となるか、または完全に排出されること(非蓄積性)が必要であるが、両者を兼ね備え、より安全なシアニン系化合物および該化合物を含有する造影剤はこれまで見つかっていない。
本発明の目的は、病変組織を正常な組織から識別し得る良好な解像度の画像をもたらす造影力に優れるとともに、生体内に蓄積しにくいシアニン系化合物および該シアニン系化合物を含有する近赤外蛍光造影剤を提供することにある。さらに本発明の別の目的は当該蛍光造影剤を用いた蛍光造影法およびそれを用いた診断支援方法を提供することである。
【発明の開示】
本発明の上記目的は下記の構成によって達成される。
(1) 本発明に係る近赤外造影剤は、一般式(I)で表されるシアニン系化合物を含有している。
一般式(I)

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基または芳香族基を表し、
およびRは各々同一でも異なっていてもよく、水溶化基で置換されている脂肪族基を表し、
およびRは各々が同一でも異なっていてもよく、低級アルキル基または芳香族基を示し、あるいはRとRとが結合して炭素環を形成してもよく、nが1または2である場合には、Lと、RまたはRとが結合して炭素環を形成してもよく、nが0の場合には、Lと、RまたはRとが結合して炭素環を形成してもよい非金属原子群を表す。
〜Lは各々、同一または異なるメチン基を表す。
およびZは同一でも異なっていてもよく、複素5員環に結合して5員または6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
Xは分子の電荷を中和するに必要な対イオンを表し、pは分子全体の電荷を中和するに必要なXの数を表す。
mは2〜4の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。]
(2) 前記一般式(I)における水溶化基は、スルホン酸基であることが好ましい。
(3) 前記シアニン系化合物は、分子内に少なくとも2個の水溶化基を有する一般式(II)で表されることが好ましい。
一般式(II)

[式中、JおよびJは各々同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜5であるアルキレン基を表し、R、R、R、L〜L、Z、Z、m、n、pおよびXは一般式(I)における定義に同じである。]
(4) 前記シアニン系化合物は、分子内のスルホン酸基の数が少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個であることが望ましい。
(5) 前記シアニン系化合物は、一般式(III)で表されることが望ましい。
一般式(III)

[式中、R、Rは各々、水溶化基で置換されている炭素原子数が3〜5であるスルホアルキル基を表し、R、R、R、L〜L、m、n、pおよびXは、前記一般式(I)における定義に同じであり、R10〜R17は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはn値が0.3より小さな置換基を表す。]
(6) 前記n値は、下記式;
n=logP(PhX)−logP(PhH)
(式中、Pは化合物のオクタノール/水に対する分配係数を意味し、logP(PhX)は置換基Xを有するベンゼン(PhX)のlogP値を示し、logP(PhH)はベンゼン(PhH)のlogP値を示す。)で表される。
(7) 本発明による造影方法は、上記の近赤外蛍光造影剤を生体内に導入する工程、該生体に励起光を照射する工程、ならびに該近赤外蛍光造影剤からの近赤外蛍光を検出する工程を含む蛍光イメージング方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のシアニン系化合物は、励起光照射によって蛍光を放射し、この近赤外蛍光は生物組織の透過に優れている。したがって、シアニン系化合物を含有する近赤外蛍光造影剤は、病変組織を正常組織から識別できる解像性能を実現する造影力に優れており、生体内の病巣の検出が可能となる。さらに、本発明のシアニン系化合物は水溶性であり、しかも排出性が高いため、安全に使用することができる。
以下、本発明のシアニン系化合物および該化合物を含有してなる近赤外蛍光造影剤について詳細に説明する。本発明に係る近赤外蛍光造影剤とは近赤外領域に蛍光を発する造影剤を意味する。
シアニン系化合物
本発明のシアニン系化合物は、下記一般式(I)で表される。
一般式(I)

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基または芳香族基を表し、
およびRは各々同一でも異なっていてもよく、水溶化基で置換されている脂肪族基を表し、
およびRは各々が同一でも異なっていてもよく、低級アルキル基または芳香族基を示し、あるいはRとRの間で結合して炭素環を形成してもよく、nが1もしくは2である場合には、Lと、RまたはRとの間で結合して炭素環を形成してもよく、nが0の場合には、Lと、RまたはRとの間で結合して炭素環を形成してもよい非金属原子群を表す。
〜Lは各々、同一または異なるメチン基を表す。
およびZは同一でも異なっていてもよく、複素5員環に結合して5員または6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
Xは分子の電荷を中和するに必要な対イオンを表し、pは分子全体の電荷を中和するに必要なXの数を表す。
mは2〜4の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。]
一般式(I)において、Rは水素原子、低級アルキル基または芳香族基を表す。
低級アルキル基は、炭素数が1〜5の直鎖状または分岐のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有している低級アルキル基としては、たとえば2−ヒドキシエチル、3−スルファモイルプロピル、3−カルボキシプロピルなどが挙げられる。
芳香族基は、置換、無置換の炭素芳香族環基と複素芳香環基を含むものであり、たとえばフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基などが挙げられる。
一般式(I)において、RおよびRは各々が同一でも異なっていてもよく、水溶化基で置換されている脂肪族基を表す。この脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、環状アルキル基、アルキニル基などが例示される。
アルキル基として好ましくは炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状の低級アルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基などが挙げられる。
アルケニル基は炭素数3〜5の直鎖状または分岐鎖状の低級アルケニル基が好ましく、具体的にはアリル基、2−ブテニル基、イソブテニル基などが挙げられる。
環状アルキル基として好ましくは炭素数3〜6の低級環状アルキル基であり、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
アルキニル基として好ましくは炭素数3〜5の直鎖状または分岐鎖状の低級アルキニル基であり、具体的には2−プロピニル基、2−ブチニル基などが挙げられる。
また、水溶化基として、たとえばカルバモイル基、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、リン酸基などを挙げることができる。
「水溶化基で置換されている脂肪族基」は、たとえば2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシブチル基、2−ホスフォノエチル基、3−ホスフォノプロピル基、スルホメチル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルホブチル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基などが挙げられる。この中でも、RおよびRはスルホン酸基で置換されている炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、たとえば2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルホブチル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基などが好ましく用いられる。
一般式(I)において、RおよびRは各々が同一でも異なっていてもよく、低級アルキル基または芳香族基を示す。低級アルキル基、芳香族基としては、前記の低級アルキル基、前記芳香族基と同一のものを例示することができる。
あるいはRおよびRは、RとRの間で結合して炭素環を形成してもよく、nが1または2である場合には、LとRまたはRとの間で結合して炭素環を形成してもよく、nが0の場合には、LとRまたはRとの間で結合して炭素環を形成してもよい非金属原子群を表す。
とRとが結合して形成される炭素環としてはたとえば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などが挙げられる。
とRまたはRとの間で結合して形成される炭素環、またはLとRまたはRとの間で結合して形成される炭素環としては、たとえばシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環などが挙げられる。これらの炭素環は、置換または無置換の低級アルキル基、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、シアノ基、アミノ基または置換アミノ基(たとえばジメチルアミノ基、エチル−4−スルホブチルアミノ基、ジ(3−スルホプロピル)アミノ基など)などの置換基で置換されていてもよい。非金属原子群Zが結合するピロール環でも、RまたはRが、LまたはLと結合して炭素環を形成するような炭素環を形成している。このような炭素環の形成は、化合物構造を不安定化させることなく、あるいは組織への親和性を高める望ましくない疎水的な共役構造を導入することなく、吸収の長波長化を図ることができるという利点がある。さらにかかる炭素環の導入は、生体系で不活性であり、かつ蛍光特性の良好な化合物の実現に寄与している。
一般式(I)において、ZおよびZは同一でも異なっていてもよく、含窒素複素5員環に結合して5員または6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
かかる非金属原子群によって形成される環としては、5員環、6員環、2以上の環から構成される縮合環、複素5員環、複素6員環、2以上の環から構成される複素縮合環などが挙げられる。これらの環において任意の位置が置換基で置換されていてもよい。
そのような置換基として、たとえばスルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、シアノ基、置換アミノ基(たとえばジメチルアミノ基、エチル−4−スルホブチルアミノ基、ジ(3−スルホプロピル)アミノ基など)、あるいは直接もしくは2価の連結基を介して環に結合した置換または無置換のアルキル基などが挙げられる。2価の連結基としては、たとえば−O−、−NHCO−、−NHSO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−COO−、−CO−、−SO−などが好ましい。直接または2価の連結基を介して環に結合した無置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。また、置換されたアルキル基は、前記アルキル基の任意の位置が置換基で置換されており、置換基として好ましくはスルホン酸基、カルボキシル基、水酸基が挙げられ、中でもスルホン酸基が好ましい。
前記非金属原子群によって形成される環としては、親水性の基で置換された炭素環または含窒素複素環が特に好ましい。
一般式(I)において、L〜Lは各々、同一または異なるメチン基を表し、メチン基は任意の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−フェノキシエチル、2−スルホエチルなどの置換または無置換のアルキル基;
塩素、フッ素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;
フェニル基、スルホン酸基置換フェニル基、メトキシ基置換フェニル基、ナフチル基などの置換または無置換のアリール基;
フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピロリジノ基、モルホリノ基などの複素環基;
メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基;
ジメチルアミノ基、2−スルホエチルアミノ基などの置換アミノ基およびアミノ基などが挙げられる。L〜Lで表されるメチン基の上記置換基のうち好ましいものは、アルキル基、アミノ基、複素環基である。
また、L〜Lで表されるメチン基の置換基同士が結合して3つのメチン基を含む環を形成してもよく、この環はさらに他のメチン基を含む環と縮合環を形成してもよい。
〜Lで表されるメチン基の置換基同士が結合して形成される3つのメチン基を含む環としては、具体的には4−オキソ−2−ヒドロキシシクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環および4,4−ジメチルシクロヘキセン環などを挙げることができ、本発明において特にシクロペンテン環が好ましい。
一般式(I)におけるpXのうち、Xは分子の電荷を中和するに必要な対イオンを表し、pは分子全体の電荷を中和するに必要なXの数を表す。pの値は、分子全体の電荷を中和することができれば特に限定されないが、通常1〜10である。
対イオンとしては、カチオン、アニオンが挙げられ、無毒性の塩を形成するものであれば任意のものであってもよい。カチオンの具体例としてはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属のイオン;アンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ピリジニウムなどの有機アンモニウムのイオン;リジン塩、アルギニン塩などのアミノ酸のアンモニウムイオンなどを挙げることができる。アニオンの具体例としては、塩素、臭素、沃素などのハロゲンのイオン;硫酸イオン;酢酸、クエン酸などの有機カルボン酸のイオン;トルエンスルホン酸イオンなどを挙げることができる。
対イオンとして特に好ましくは、生体に対してより毒性を軽減することができるナトリウムイオンやクロルイオンである。
このような一般式(I)で表されるシアニン系化合物としては、下記一般式(II)で表され、分子内に少なくとも2個の水溶化基を有するシアニン系化合物が好ましい。
一般式(II)

[式中、JおよびJは各々同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜5であるアルキレン基を表し、R、R、R、L〜L、Z、Z、m、n、pおよびXは各々、前記一般式(I)における定義と同じである。]
上記JおよびJで表される炭素原子数がとりうる1〜5のアルキレン基としては、たとえばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、2−メチルプロピレン基などが挙げられ、とりわけエチレン基が好ましい。
さらに、一般式(II)で表されるシアニン系化合物としては、下記一般式(III)で表わされるシアニン系化合物も好ましい。
一般式(III)

[式中、R、Rは各々、水溶化基で置換されている炭素原子数が3〜5であるスルホアルキル基を表し、R、R、R、L〜L、m、n、pおよびXは、前記一般式(I)における定義に同じであり、R10〜R17は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはn値が0.3より小さな置換基を表す。]
上記R、Rがとり得る基は、「水溶化基で置換されている炭素原子数が3〜5であるスルホアルキル基」であり、その水溶化基としては、上記一般式(I)において定義した基に加えて、親水性の非イオン性基も示される。親水性の非イオン性基として、たとえば、カルバモイル基、スルファモイル基、アセトアミド基、スルホンアミド基、メタンスルホンアミド基などが挙げられる。
「水溶化基で置換されている炭素原子数が3〜5であるスルホアルキル基」としては、具体的には2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、2−カルバモイルメチル−4−スルホブチル基、2−アセトアミド−4−スルホブチル基、2−スルファモイル−3−スルホプロピル基、3−メタンスルホンアミド−5−スルホペンチル基、3−メタンスルホニル−4−スルホブチル基、2−カルボキシ−4−スルホブチル基、3−ホスフォノオキシ−5−スルホブチル基などが挙げられ、特に2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基が好ましい。
一般式(III)において、R10〜R17は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはn値が0.3より小さな置換基を表す。R10〜R17の置換基の定義に用いられるn値の定義について説明する。
n値は、化合物分子の親水性・疎水性に及ぼす置換基の影響を示すパラメータであり、下記の式で定義される。
式:n=logP(PhX)−logP(PhH)
上記の式で、Pは化合物のオクタノール/水系に対する分配係数を意味し、置換基Xを有するベンゼン(PhX)のlogP値と、ベンゼン(PhH)のlogP値との差が置換基Xのn値として割り当てられる。
logP値は下記文献(a)の方法で実測して求めることができ、また文献(a)記載のフラグメント法または文献(b)記載のソフトウェアパッケージを用いて計算により求めることもできる。実測値と計算値が一致しない場合は原則として実測のn値を用いることとする。
(a)C.Hansch,A.J.Leo著、”Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”、John Wiley & Sons社、New York、1979年刊
(b)Medichemソフトウェア−パッケージ(Pomona College,Claremont,Californiaから開発、販売されている第3.54版)
このようにして求められた置換基ごとのn値は文献(a)に一覧表としてまとめられている。n値が0.3以下である主な置換基を抜粋すると以下の通りである。
置換基 n値
OSOH −4.76
OH −0.67
CN −0.57
COCH −0.55
COOH −0.32
OCH −0.02
COOCH −0.01
H 0.00
F 0.14
N(CH 0.18
n値が0.3より小さな好ましい置換基としては、ホスフォノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、シアノ基、置換アミノ基(たとえば、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基など)、またはn値が0.3より小さな2価の連結基を介して環に結合したn値が0.3以下となる置換または無置換のメチル基またはエチル基などが挙げられる。
n値が0.3より小さな2価の連結基としては、たとえばO−、−NHCO−、−NHSO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−COO−、−CO−、−SO−などが挙げられる。
n値が0.3以下となる置換または無置換のメチル基またはエチル基としては、たとえば、メトキシ基、2−スルホエチル基、2−ヒドロキシエチル基、メチルアミノカルボニル基、メトキシカルボニル基、アセチル基、アセトアミド基、ポロピオニルアミノ基、ウレイド基、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、エチルアミノカルボニルオキシ基、メタンスルホニル基などが挙げられる。n値が0.3より小さな置換基として好ましい基は、スルホン酸基である。
シアニン系化合物を蛍光造影剤として生体内で使用するために特に必要とされる性質は、水溶性であることである。本発明の近赤外蛍光造影剤においては、シアニン系化合物中にスルホン酸基を少なくとも3個導入することにより当該化合物の水溶性に関して顕著な改善効果がみられる。シアニン系化合物が水溶性であるためにスルホン酸基の好ましい数は4個以上である。
スルホン酸基は、一般式(I)においてR、R、Zおよび/またはZの位置に、一般式(II)においてはZおよび/またはZの位置に、一般式(III)においてはR、RおよびR10〜R17のいずれかの位置に導入されることが好ましい。さらに、当該スルホン酸基は、共役メチン鎖のLにアルキレン基などの2価の基を介して導入することも好適に行われる。
一般式(I)、一般式(II)および一般式(III)において、mは2〜4の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。特にnは1のものが好ましい。
本発明に係るシアニン系化合物は、一般式(I)〜一般式(III)で表される化合物であって、その分子中にスルホン酸基を少なくとも3個以上、好ましくは4個以上有するものであることが望ましい。本発明のシアニン系化合物として、前記一般式(III)で表され、RおよびRが、非イオン性の水溶化基とスルホン酸基とにより置換されている炭素数3〜5の低級アルキル基で、かつスルホン酸基を分子内に3個以上有する化合物のナトリウム塩が特に好ましい。
本発明において用いられる前記一般式(I)で表される化合物(一般式(II)および一般式(III)で表される化合物を含む)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。








本発明に係るシアニン系化合物当該化合物は、F.M.Hamer in The Cyanine Dyes and Related Compounds,John Wiley and Sons,New York,1964、Cytometry,10(1989)3−10、Cytometry,11(1990)418−430、Cytometry,12(1990)723−730、Bioconjugate Chem.4(1993)105−111、Anal.Biochem.217(1994)197−204、Tetrahedron 45(1989)4845−4866、欧州特許出願明細書0591820A1、欧州特許出願明細書0580145A1、日本公開特許平4−147131号、同2003−48891号、同2003−64063号、同2003−261464号などに記載されている公知のシアニン系化合物の製造方法に準じて合成することができ、さらに、市販のシアニン系化合物から適宜公知の手法により合成することもできる。より具体的には、ジアニル化合物とヘテロ環4級塩との反応により合成することができる。
本発明の一般式(I)で表されるシアニン系化合物の製造方法について、例えば化合物(11)は、以下のスキームに示す方法により合成される。その他の化合物も同様にして合成することができる。

本発明のシアニン系化合物は生体内で使用されるため、最終的に体内に蓄積されず、速やかに体外に排出されることが重要であり、実質的に水溶性であることが求められる。シアニン系化合物の水溶性を向上させる手段としては、アニオン系のカルボン酸やスルホン酸の塩類であることが好ましい。本発明のシアニン系化合物は、3個のスルホン酸基が導入されることにより水溶性が顕著に改善されている。このように優れた水溶性を得るには、スルホン酸基の数を3個以上、好ましくは4個以上とすることが望ましい。しかしながら、シアニン系化合物の合成を容易にするには、スルホン酸基の数は10個以下、好ましくは8個以下であることが望ましい。
シアニン系化合物について、その水溶性の尺度は、各化合物の分配係数の測定、たとえば分配係数を、ブタノールなどの脂肪族アルコールと水との二相系で測定することにより調べることができる。たとえば、3個以上のスルホン酸基が導入されたシアニン系化合物においては、n−ブタノール/水の分配係数log Po/wは、−1.00以下となる。生体内においても水溶性であることは、シアニン系化合物を生理的食塩水に溶解し、36℃に置いて時間経過後も沈殿や析出のないことを調べることにより判断される。
生体内に投与されて許容される塩は式(I)の化合物と非毒性の塩を形成するものであればよい。それらの例としては、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのようなアルカリ土類金属塩;トリプトファン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、アルギニンなどの塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。シアニン系化合物は、生体内での毒性が低いナトリウム塩であることが特に好ましい。
近赤外蛍光造影剤
本発明の近赤外蛍光造影剤は、上記シアニン系化合物を含有してなる。本発明のシアニン系化合物は毒性が低く優れた水溶性を示し、生体組織中を透過できる近赤外領域の蛍光を放射するため、該化合物を含有する造影剤は、腫瘍および/または血管の非侵襲的な造影を可能にする。近赤外蛍光造影剤は、本発明のシアニン系化合物を、注射用蒸留水、生理食塩水、リンゲル液などの溶媒に溶解して調製することができる。近赤外蛍光造影剤には、そのほかの成分として製剤技術に基づく各種の製剤用助剤が溶解していてもよい。具体的には生理学的に許容される各種の緩衝剤、電解質、キレート化剤、さらに必要に応じて、浸透圧調節剤、安定化剤、粘度調節剤、α−トコフェロールなどの抗酸化剤、パラオキシ安息香酸メチルといった保存剤などが挙げられる。
各種の緩衝剤には、水溶性アミン系緩衝剤、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などが含まれる。キレート化剤として、製剤学的に使用が認められるEDTA、EDTA Na−Ca(エデト酸二ナトリウムカルシウム)、ヘキサメタリン酸などが挙げられる。
等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、造影剤を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。等張の溶液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、たとえば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を水性媒体中に添加してもよい。
本発明の近赤外蛍光造影剤は、血管(静脈、動脈)内、経口内、腹腔内、皮下、皮内、膀胱内、気管(支)内などへ注射、注入、噴霧もしくは塗布などの手段により生体内に投与することができる。本発明の蛍光造影剤の投与量は、最終的に診断する部位を検出できる量であれば特に限定されず、使用する近赤外蛍光を発するシアニン系化合物の種類、投与される対象の年齡や身体の大きさおよび標的とする臓器などによって適宜増減できるが、通常、シアニン系化合物が0.1〜100mg/kg(体重)、好ましくは0.5〜20mg/kg(体重)となる範囲で投与される。
本発明の近赤外蛍光造影剤は動物用の造影剤としても好適に用いることができ、その投与形態、投与経路、投与量などは対象となる動物の体重や状態によって適宜選択する。
本発明の近赤外造影剤は、ある濃度を超えると腫瘍組織に集積し、ある濃度以下になると体外に排出されやすくなる性質を有している。その特性を利用して腫瘍組織を、選択的に、しかも特異的に造影することを可能とする蛍光造影剤として使用できる。また、本発明の化合物は、血管内に一旦注入されると血管壁外に拡散しにくく、血管内に留まる性質が高く、血管造影剤としても使用できる。本発明による蛍光造影方法は、上記蛍光造影剤を用いることを特徴とする。その測定方法は当業者には公知の方法を用いて行われ、励起波長、検出のための蛍光波長などの最適な条件は、最高の解像能を獲得するために、投与するシアニン系化合物の種類、投与する対象などに応じて適宜決定される。本発明の蛍光造影剤を測定対象体に投与してから、本発明の蛍光造影方法を用いて測定を開始するのに要する時間も、投与する蛍光造影剤の種類、投与する対象などによって異なるが、たとえば腫瘍や癌造影を目的として投与する場合には投与後10分〜6時間程度の経過時間を選択することが好ましい。経過時間が短すぎると全体に蛍光が散在して目的とする部位とそれ以外の部位との識別が困難であり、長すぎると当該造影剤が体外に排泄されてしまう。血管造影を目的とする場合には投与直後〜1時間の経過時間で測定することが好ましい。
本発明の蛍光造影剤を測定対象体に投与した後、励起光源により励起光を測定対象物へ照射し、該励起光により生じる蛍光造影剤(シアニン系化合物)からの蛍光を蛍光検出器で検出する。励起波長は、使用するシアニン系化合物によって異なり、本発明の化合物が効率よく蛍光を発すればとくに限定されないが、好ましくは生体透過性に優れた近赤外光が用いられる。通常600〜1000nm、好ましくは700〜850nmの波長の励起光で励起し、蛍光を高感度蛍光検出器にて検出する。この場合、蛍光励起光源としては、各種レーザー光源、たとえば、イオンレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど、或いはハロゲン光源、キセノン光源などの通常の励起光源を使用してもよく、更に最適な励起波長を得るために各種光学フィルターを使用することができる。同様に、蛍光の検出に際しても、蛍光造影剤からの蛍光のみを選択する各種光学フィルターを通して、蛍光の検出感度を高めることができる。
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
化合物(11)の合成
Tetrahedron27,pp5631−5639,1971を参照して合成した4.0gのヘテロ環4級塩化合物Q−1に、酢酸20ml、トリエチルアミン3g、ジアニル化合物D−1を1.5g、および無水酢酸3gを加えて室温で6時間攪拌した。反応溶液を濾過して不溶物を除き、さらに室温下にて濾液を減圧留去して濃縮した。濃縮された前記濾液に、酢酸ナトリウム2gを溶解したメタノール溶液15mlを加え、室温で1時間攪拌した後、生じた結晶を濾取し、少量のメタノールで洗浄した。得られた粗結晶3.2gを15mlの水に溶かし、酢酸ナトリウム1gを加えた後、メタノール30mlを加え、1時間攪拌した。生じた結晶を濾取し、少量のメタノールで洗浄し、乾燥して2.4gの化合物(11)を得た。化合物(11)の吸収極大波長(MeOH)は792nm、モル吸光係数(MeOH)は257,000であった。

[実施例2]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物2を合成した。
[実施例3]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物4を合成した。
[実施例4]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物5を合成した。
[実施例5]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物6を合成した。
[実施例6]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物12を合成した。
[実施例7]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物20を合成した。
[実施例8]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物32を合成した。
[実施例9]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物37を合成した。
[実施例10]
実施例1と同様にして一般式(I)の化合物39を合成した。
[実施例11]
<化合物の水溶性試験>
局方グレードの生理食塩水1mlに染料(すなわち、試験化合物であるシアニン系化合物)0.5mgを溶解して溶液とし、その溶液を42℃で1週間、静置放置し、析出や沈殿物の発生を確認した。析出や沈殿物の発生が全く認められないレベルを◎、わずかヘイズがかかって見られるが、攪拌により消失してしまうレベルを○、ヘイズがかかっているが、攪拌では消失しないレベルを△、析出や沈殿物の発生が認められるレベルを×として評価した。
<乳癌発癌モデルマウスの作成>
老化促進マウス、いわゆるSAM系の1系統であるSAMP6/Ta系マウスに乳癌を発症させるために、発癌物質7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)を投与して乳癌発癌モデルマウスを作出した。マウスの発癌方法は、特開2003−033125号の記載に準じて行った。SAMP6/Ta系マウス各20匹に、DMBAを0.5mg/マウス/週で計6回投与した。飼料としては高タンパク質高カロリーのCA−1固形(日本クレア社製)を与えた。当該発癌物質の第6回目投与をした後、第1回目投与から起算して第20週までを休薬期間とした。乳癌および乳癌の肺転移を病理組織学的に検索した。このようにして乳癌発生したマウス(乳癌発生率75%)を以下の蛍光造影試験に使用した。
<蛍光造影試験>
前記乳癌マウスの腫瘍組織切片(2mm×2mm角辺)をBALB/cヌードマウス(5週齢、クレアジャパン社)の左胸部の乳房部皮下に移植した。10日後、腫瘍が直径約5mmに成長した時点で上記マウスを蛍光造影試験に供した。蛍光励起光源としてチタン・サファイアレーザーを使用した。照射の分散が2%以内になるようにリングタイプの光ガイド(住田光学グラス社)を用いて、暗箱に入れた試験用マウスにレーザー光を均一に照射した。照射出力はマウスの皮膚表面付近で約38μw/cmになるように調整した。蛍光は各化合物の最大励起波長で励起させ、マウスからの蛍光放射をCCDカメラ(C4880,浜松フォトニクス社)を用いて、入射光の反射を短波長カットフィルターでカットして検出および造影した。また、照射時間は各化合物の蛍光強度によって調整した。なお、腫瘍部分は、あらかじめ、皮膚の表面にマーカーをつけた後、白色光で観察した画像と、マーカーを取り除いた後、暗闇でレーザーを当てて得られた画像を重ね合わせ、腫瘍部分で蛍光が発するかどうか評価した。
表1に記載の各試験化合物を生理食塩水に溶解し(0.5mg/ml)、マウスに乳管および線葉から投与した。用量は各試験化合物が3mg/kgとなるように用いた。化合物投与の30分後、12時間後、24時間後にそれぞれマウスをジエチルエーテルで麻酔し、マウス全身の蛍光イメージを造影し、腫瘍部分の蛍光を以下の規準で評価した。
A.腫瘍部分にはっきりした蛍光が観察される。
B.正常部にも蛍光が見られるが、腫瘍部分が判別できる。
C.正常部分と腫瘍部分とがわずかに蛍光を発しているが、腫瘍部をかろうじて判別できる。
D.全体にわずかに蛍光を発しており、腫瘍部と、正常部が判別できない。
E.蛍光が認められない。
造影剤物質のシアニン系化合物の体外排出量は、造影剤投与後のシアニン系化合物の体内量を100とし、マウスの尿道にカテーテルを取り付け、投与後1週間の排出量を合算しその比から求めた。なお、シアニン系化合物の排出量は、液体クロマトグラフ2010A(島津製作所社製)を用いて算出した。
結果を表1に示す。なお、比較用造影剤として、特開2000−95758に記載された下記のインドシアニングリーン(C−1)と例示化合物NO.29(C−2)を、それぞれ生理食塩水に溶解したもの(0.5mg/ml)を使用した。

【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるシアニン系化合物を含有してなる近赤外造影剤;
一般式(I)

[式中、Rは水素原子、低級アルキル基または芳香族基を表し、
およびRは各々同一でも異なっていてもよく、水溶化基で置換されている脂肪族基を表し、
およびRは、各々が同一でも異なっていてもよく、低級アルキル基または芳香族基を示し、あるいはRとRとが結合して炭素環を形成してもよく、nが1もしくは2である場合には、Lと、RまたはRとが結合して炭素環を形成してもよく、nが0の場合には、Lと、RまたはRとが結合して炭素環を形成してもよい非金属原子群を表す。
〜Lは各々、同一または異なるメチン基を表す。
およびZは同一でも異なっていてもよく、複素5員環に結合して5員または6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
Xは分子の電荷を中和するに必要な対イオンを表し、pは分子全体の電荷を中和するに必要なXの数を表す。
mは2〜4の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。]。
【請求項2】
前記一般式(I)における水溶化基がスルホン酸基である請求の範囲第1項に記載のシアニン系化合物。
【請求項3】
一般式(II)で表され、分子内に少なくとも2個の水溶化基を有する請求の範囲第1項に記載のシアニン系化合物:
一般式(II)

[式中、JおよびJは各々同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜5であるアルキレン基を表し、R、R、R、L〜L、Z、Z、m、n、pおよびXは一般式(I)における定義に同じである。]。
【請求項4】
分子内のスルホン酸基の数が少なくとも4個である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のシアニン系化合物。
【請求項5】
一般式(III)で表される請求の範囲第3項に記載のシアニン系化合物:
一般式(III)

[式中、R、Rは各々、水溶化基で置換されている炭素原子数が3〜5であるスルホアルキル基を表し、R、R、R、L〜L、m、n、pおよびXは、前記一般式(I)における定義に同じであり、R10〜R17は各々同一でも異なっていてもよく、水素原子またはn値が0.3より小さな置換基を表す。]。
【請求項6】
前記n値は、下記式;
n=logP(PhX)−logP(PhH)
(式中、Pは化合物のオクタノール/水に対する分配係数を意味し、logP(PhX)は置換基Xを有するベンゼン(PhX)のlogP値を示し、logP(PhH)はベンゼン(PhH)のlogP値を示す。)
で表される請求の範囲第5項に記載のシアニン系化合物。
【請求項7】
請求の範囲第1項に記載の近赤外蛍光造影剤を生体内に導入する工程、該生体に励起光を照射する工程、ならびに該近赤外蛍光造影剤からの近赤外蛍光を検出する工程を含む蛍光造影方法。

【国際公開番号】WO2005/061456
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516499(P2005−516499)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019142
【国際出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】