説明

追尾処理装置

【課題】目標に関する状況判断に資する情報が提供される追尾処理装置を提供する。
【解決手段】相関処理部は、監視区域に存在する目標の位置と、追尾中目標の登録予測位置と、登録判定結果に応じて異なる閾値とに基づいて、目標と追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行する。予測処理部は、位置及び登録予測位置に基づいて目標の次回の予測位置を算出する。予測判定部は、位置、目標の種類に対応する斜面移動能力、及び監視区域の地勢情報に基づいて目標が次回に到達し得る目標存在範囲を算出し、予測位置及び目標存在範囲に基づいて目標が予測位置に到達可能かどうかの予測判定を実行し、予測判定の結果で登録判定結果を更新する。目標存在範囲提示部は、目標存在範囲を地図上の領域として提示する。予測変更部は、予測判定の結果が「到達可能」の場合に予測位置で登録予測位置を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾処理装置、追尾処理方法、及び追尾処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、目標が地形上の事情から急に進路変更する場合にも追尾を継続することが可能な追尾処理装置を開示している。追尾処理装置は、予測判定部と、予測変更部と、相関処理部とを備える。予測判定部は、地形標高情報に基づいて、目標の今回平滑化位置から次回予測位置までの間の勾配を求め、この勾配を当該目標が登坂又は降坂可能か否かを判定する。この判定結果が登坂又は降坂不可能のとき、予測変更部は目標の次回予測位置及び今回平滑化速度の更新を行わず、相関処理部は次回の追尾処理時に相関ゲートを拡大して目標の実位置と予測位置との差が所定値以内であるか否かの相関処理を行う。
【0003】
特許文献2は、地勢の拘束による迂回行動が目標の種類に応じて異なることを考慮して目標の種類に応じた追尾処理を行うことで高い追尾性能を実現可能な追尾処理装置を開示している。追尾処理装置は、目標の種類と地勢情報を参照して、目標の予測位置が、目標が到達可能な位置か否かを判定し、判定結果に基づいて相関ゲートを拡大するか否かを決定する。これにより、目標の種類に応じて迂回行動を予測し、目標が河川・湖沼等を渡河する場合と迂回する場合の何れの場合にも、目標の進路変更に追随する追尾処理を可能とする。
【0004】
特許文献3は、簡便な方法で移動可否を判定する追尾処理装置を開示している。追尾処理装置は、目標の現在位置と予測位置との間の等高線密度に基づいて、目標が予測位置に到達し得るか否かを判定する。
【0005】
本発明者は以下のように認識している。上記追尾処理装置は、いずれも、目標が予測位置に到達可能かどうかの判定を行っているものの、目標が到達可能な範囲を算出しておらず、且つ、目標が到達可能な範囲を操作員に対して提示していない。したがって、目標が到達可能な範囲が操作員に対して提示されないため、目標に関する状況判断に資する情報が操作員に提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−14740号公報
【特許文献2】特開2000−147109号公報
【特許文献3】特開2010−203986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、目標に関する状況判断に資する情報が提供される追尾処理装置、追尾処理方法、及び追尾処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点による追尾処理装置は、相関処理部と、予測処理部と、地勢情報提供部と、目標移動能力登録部と、予測判定部と、目標存在範囲提示部と、予測変更部とを具備する。前記相関処理部は、監視区域に存在する目標の入力された位置と、追尾中目標の登録された登録予測位置と、登録された登録判定結果に応じて異なる閾値とに基づいて、前記目標と前記追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行する。前記予測処理部は、前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置及び前記登録予測位置に基づいて前記目標の次回の予測位置を算出する。前記地勢情報発生部は、前記監視区域の地勢情報を提供する。前記目標移動能力登録部は、前記目標の入力された種類に対応する斜面移動能力を登録する。前記予測判定部は、前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置、前記斜面移動能力、及び前記地勢情報に基づいて前記目標が前記次回に到達し得る目標存在範囲を算出し、前記予測位置及び前記目標存在範囲に基づいて前記目標が前記予測位置に到達可能かどうかの予測判定を実行し、前記予測判定の結果で前記登録判定結果を更新する。前記目標存在範囲提示部は、前記目標存在範囲を地図上の領域として提示する。前記予測変更部は、前記予測判定の結果が「到達可能」の場合に前記予測位置で前記登録予測位置を更新する。
【0009】
本発明の第2の観点による追尾処理方法は、監視区域に存在する目標の位置及び種類の入力を受けることと、前記位置と、追尾中目標の登録された登録予測位置と、登録された登録判定結果に応じて異なる閾値とに基づいて、前記目標と前記追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行することと、前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置及び前記登録予測位置に基づいて前記目標の次回の予測位置を算出することと、前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置、前記種類に対応する斜面移動能力、及び前記監視区域の地勢情報に基づいて前記目標が前記次回に到達し得る目標存在範囲を算出することと、前記予測位置及び前記目標存在範囲に基づいて前記目標が前記予測位置に到達可能かどうかの予測判定を実行することと、前記予測判定の結果で前記登録判定結果を更新することと、前記目標存在範囲を地図上の領域として提示することと、前記予測判定の結果が「到達可能」の場合に前記予測位置で前記登録予測位置を更新することとを具備する。
【0010】
本発明の第3の観点による追尾処理プログラムは、上記追尾処理方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、提示された目標存在範囲に基づいて目標に関する状況判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る追尾処理装置のブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る追尾処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明による追尾処理装置、追尾処理方法及び追尾処理プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る追尾処理装置は、相関処理部2と、平滑化処理部4と、予測処理部5と、地勢情報発生部6と、目標移動能力登録部7と、予測判定部8と、予測変更部9と、目標存在範囲提示部10とを備える。追尾処理装置は、トラックファイル3を格納している。追尾処理装置は、例えば、コンピュータが追尾処理プログラムに基づいて動作することにより実現される。ここで、コンピュータは、CPUのような演算制御装置、半導体メモリやハードディスク装置のような記憶装置、キ−ボードのような入力装置、表示装置やプリンタのような出力装置を備える。
【0015】
追尾処理装置は、監視区域内に存在する目標を追尾し、目標の航跡(移動軌跡)を記録する。トラックファイル3は、追尾処理装置が追尾中の目標としての追尾中目標の時刻tにおける予測位置(Xp,Yp)、時刻ti−1における平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)、及び予測判定部8が追尾中目標について前回行った予測判定の結果としての前回判定結果を、それぞれ、登録予測位置、登録平滑化速度、及び登録判定結果として登録している。ここで、予測位置(Xp,Yp)は、予測処理部5が追尾中目標について前回算出した予測位置、又はその予測位置を予測変更部9が変更したものである。平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)は、平滑化処理部4が追尾中目標について前回算出した平滑化速度、又はその平滑化速度を予測変更部9が変更したものである。目標移動能力登録部7は、目標の複数種類にそれぞれ対応させて互いに異なる複数斜面移動能力を登録している。
【0016】
図2を参照して、追尾処理装置が実行する追尾処理方法を説明する。追尾処理方法は、ステップS200〜S215を備える。
【0017】
ステップS200において、追尾処理装置は、監視区域を監視する観測員1等の情報入力源から目標情報の入力を受ける。目標情報は、監視区域内に存在する目標の種類、観測時刻tにおける目標の位置(X,Y)及び速度(X’,Y’)を含む。
【0018】
ステップS201において、相関処理部2は、トラックファイル3に登録された追尾中目標についての登録判定結果が「到達可能」又は「到達不可能」のどちらであるか判断する。「到達可能」の場合、ステップS202に進む。「到達不可能」の場合、ステップS203に進む。
【0019】
ステップS202において、相関処理部2は、目標の位置(X,Y)及びトラックファイル3に登録された追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)に基づいて、目標と追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行する。相関処理部2は、目標の位置(X,Yi)と追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)との距離が所定の相関ゲートG以下の場合に「相関あり(同一)」と判定し、それ以外の場合に「相関なし(同一でない)」と判定する。すなわち、相関処理部2は、下記式が成立する場合に「相関あり」と判定し、それ以外の場合に「相関なし」と判定する。
【数1】

ここで、相関ゲートGは、追尾処理装置の特性を考慮して予め設定され、相関評価尺度としての目標の予測存在領域を示す。「相関あり」の場合、ステップS205に進む。「相関なし」の場合、ステップS204に進む。
【0020】
ステップS203において、相関処理部2は、目標の位置(X,Y)及びトラックファイル3に登録された追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)に基づいて、目標と追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行する。相関処理部2は、目標の位置(X,Y)と追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)との距離が拡大相関ゲートG’以下の場合に「相関あり(同一)」と判定し、それ以外の場合に「相関なし(同一でない)」と判定する。すなわち、相関処理部2は、下記式が成立する場合に「相関あり」と判定し、それ以外の場合に「相関なし」と判定する。
【数2】

ここで、拡大相関ゲートG’は下記式のように、トラックファイル3に登録された追尾中目票の登録平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)の大きさと時刻ti−1から時刻tまでの時間差との積と、相関ゲートGとの和で表される。
【数3】

「相関あり」の場合、ステップS206に進む。「相関なし」の場合、ステップS204に進む。
【0021】
すなわち、相関処理において、登録判定結果に応じて異なる閾値(相関ゲートG、拡大相関ゲートG’)が用いられる。相関処理部2は、予測判定部8が追尾中目標について前回行った予測判定の結果としての前回判定結果が「到達不可能」の場合、相関ゲートGを拡大相関ゲートG’に拡大して相関処理を実行する。
【0022】
ステップS204において、相関処理部2は、位置(X,Y)及び速度(X’,Y’)をそれぞれ、追尾処理装置が新規に追尾を開始する目標としての新規追尾目標の登録予測位置及び登録平滑化速度としてトラックファイル3に登録する。
【0023】
ステップS205において、平滑化処理部4は、目標の今回(時刻t)における平滑化位置(Xs,Ys)を目標の位置(X,Y)及び追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)に基づいて算出する。平滑化処理部4は、下記式に基づいて平滑化位置(Xs,Ys)を算出する。
【数4】

ここで、αは所定の平滑化定数である。
【0024】
ステップS205において、平滑化処理部4は、目標の今回(時刻t)における平滑化速度(X’s,Y’s)を目標の位置(X,Y)、追尾中目標の登録予測位置(Xp,Yp)、追尾中目標の登録平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)、時刻t、及び時刻ti−1に基づいて算出する。平滑化処理部4は、下記式に基づいて平滑化速度(X’s,Y’s)を算出する。
【数5】

ここで、βは所定の平滑化定数である。
【0025】
ステップS205の後ステップS207に進む。
【0026】
ステップS206において、平滑化処理部4は、目標の今回(時刻t)における平滑化位置(Xs,Ys)を目標の位置(X,Y)に基づいて求める。平滑化処理部4は、下記式のように位置(X,Y)を平滑化位置(Xs,Ys)として設定する。
【数6】

【0027】
ステップS206において、平滑化処理部4は、目標の今回(時刻t)における平滑化速度(X’s,Y’s)を目標の位置(X,Y)、追尾注目標の登録予測位置(Xp,Yp)、時刻t、及び時刻ti−1に基づいて算出する。平滑化処理部4は、下記式に基づいて平滑化速度(X’s,Y’s)を算出する。
【数7】

【0028】
ステップS206の後ステップS207に進む。
【0029】
平滑化処理部4は、上述のように平滑化位置及び平滑化速度を算出することで、前回算出された予測位置及び平滑化速度と今回入力された目標の位置及び速度との分散を抑圧する。
【0030】
ステップS207において、予測処理部5は、平滑化位置(Xs,Ys)、平滑化速度(X’s,Y’s)、時刻t、及び時刻ti+1に基づいて、下記式を用いて、目標の次回(時刻ti+1)における予測位置(Xpi+1,Ypi+1)を算出する。
【数8】

すなわち、予測処理部5は、ステップS201において登録判定結果が「到達可能」又は「到達不可能」のいずれの場合も、位置(X,Y)及び登録予測位置(Xp,Yp)に基づいて、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)を算出する。
【0031】
ステップS208において、予測判定部8は、目標が次回(時刻ti+1)において到達し得る目標存在範囲を算出する。目標存在範囲提示部10は、目標存在範囲を地図上の領域として操作員に提示する。
【0032】
ここで、ステップS209において、地勢情報発生部6は、監視区域の地勢情報を目標存在範囲の算出のために提供する。地勢情報は、例えば監視区域内の高度情報を含む。ステップS210において、目標移動能力登録部7は、登録している複数斜面移動能力から入力された目標情報に含まれる目標の種類に対応する斜面移動能力を選択し、その斜面移動能力を目標存在範囲の算出のために提供する。
【0033】
ステップS208を詳しく説明する。予測判定部8は、地勢情報に基づいて平滑化位置(Xs,Ys)を中心とする放射方向に沿う勾配の見通しを全周について探索し、勾配が斜面移動能力を超える場所以遠が目標存在範囲に含まれないように目標存在範囲を算出する。例えば、平滑化位置(Xs,Ys)における高度Hと平滑化位置(Xs,Ys)から北に所定の距離Lだけ離れた位置Nにおける高度Hとから平滑化位置(Xs,Ys)と位置Nとの間の第1区間の勾配(H−H)/Lを求め、勾配(H−H)/Lに基づいて目標が第1区間を移動可能であるか判定する。移動不可能と判定した場合、平滑化位置(Xs,Ys)の北側に目標存在範囲なしとする。移動可能と判定した場合、第1区間を目標存在範囲に含め、位置Nから北に距離Lだけ離れた位置Nにおける高度Hに基づいて位置Nから位置Nまでの第2区間の勾配(H−H)/Lを求め、勾配(H−H)/Lに基づいて目標が第2区間を移動可能であるか判定する。移動不可能と判定した場合、平滑化位置(Xs,Ys)の北側に関して位置N以遠を目標存在範囲に含めない。移動可能と判定した場合、第2区間を目標存在範囲に含め、位置Nから北に距離Lだけ離れた位置Nにおける高度Hに基づいて位置Nから位置Nまでの第3区間の勾配(H−H)/Lを求め、勾配(H−H)/Lに基づいて目標が第3区間を移動可能であるか判定する。このような処理を、移動不可能と判定するか他の終了条件を満たすまで実行する。上記処理を、平滑化位置(Xs,Ys)を中心とする全周の残りの方位についてそれぞれ実行する。このように、予測判定部8は、位置(X,Y)に基づく平滑化位置(Xs,Ys)と、斜面移動能力と、地勢情報とに基づいて、目標存在範囲を算出する。
【0034】
ここで、区間の両端の高度に基づいて区間の勾配を求めるかわりに、区間を横切る等高線の数に基づいて区間の勾配を求めてもよい。
【0035】
また、目標が区間を移動可能であるかの判定方法は下記の3つの方法のどれでもよい。
【0036】
(第1の方法)
区間の勾配を目標の種類に対応した登坂限界勾配(プラスの値)だけと比較し、区間の勾配が登坂限界勾配以下であれば移動可能と判定し、区間の勾配が登坂限界勾配より大きければ移動不可能と判定する。この場合、斜面移動能力は登坂限界勾配を含む。
【0037】
(第2の方法)
区間の勾配を目標の種類に対応した降坂限界勾配(マイナスの値)だけと比較し、区間の勾配が降坂限界勾配以上であれば移動可能と判定し、区間の勾配が降坂限界勾配より小さければ移動不可能と判定する。この場合、斜面移動能力は降坂限界勾配を含む。
【0038】
(第3の方法)
区間の勾配を目標の種類に対応した登坂限界勾配及び降坂限界勾配の両方と比較し、区間の勾配が降坂限界勾配以上且つ登坂限界勾配以下であれば移動可能と判定し、区間の勾配が登坂限界勾配より大きいか降坂限界勾配より小さければ移動不可能と判定する。この場合、斜面移動能力は登坂限界勾配及び降坂限界勾配の両方を含む。
【0039】
ステップS211において、予測判定部8は、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)及び目標存在範囲に基づいて目標が予測位置(Xpi+1,Ypi+1)に到達可能かどうかの予測判定を実行する。予測判定部8は、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)が目標存在範囲に含まれる場合に「到達可能」と判定し、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)が目標存在範囲に含まれない場合に「到達不可能」と判定する。
【0040】
ステップS212において、ステップS211における判定結果に応じた分岐処理を実行する。「到達可能」の場合、ステップS214に進む。「到達不可能」の場合、ステップS213に進む。
【0041】
ステップS213において、予測変更部9は、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)を平滑化位置(Xs,Ys)に変更し、平滑化速度(X’s,Y’s)を平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)に変更する。ステップS213の後にステップS214に進む。
【0042】
ステップS214において、予測判定部8はトラックファイル3に登録された追尾中目標についての登録判定結果をステップS211で得られた判定結果で更新し、予測変更部9はトラックファイル3に登録された追尾中目標についての登録予測位置及び登録平滑化速度をそれぞれ予測位置及び平滑化速度で更新する。すなわち、予測変更部9は、ステップS211における判定結果が「到達可能」の場合に登録予測位置及び登録平滑化速度をそれぞれ予測位置(Xpi+1,Ypi+1)及び平滑化速度(X’s,Y’s)で更新し、ステップS211における判定結果が「到達不可能」の場合に登録予測位置及び登録平滑化速度をそれぞれ平滑化位置(Xs,Ys)及び平滑化速度(X’si−1,Y’si−1)で更新する。ステップS211における判定結果が「到達不可能」の場合、登録予測位置は予測位置(Xpi+1,Ypi+1)で更新されずに平滑化位置(Xs,Ys)で更新され、登録平滑化速度は実質的に更新されない。ステップS214の後ステップS215に進む。
【0043】
ステップS215において、追尾処理装置は次回の目標情報の入力待ちを実行する。次回の目標情報が入力されると、ステップS200に進む。
【0044】
本実施形態によれば、予測位置(Xpi+1,Ypi+1)が目標存在範囲に含まれない「到達不可能」の場合、登録予測位置及び登録平滑化速度をそれぞれ予測位置(Xpi+1,Ypi+1)及び平滑化速度(X’s,Y’s)で更新しないで次回の相関処理時に相関ゲートを拡大して相関処理を行うため、目標が険しい地形を迂回した場合であっても追尾を継続することができる。
【0045】
更に、本実施形態によれば、目標情報に含まれる目標の種類に対応する斜面移動能力が複数斜面移動能力から選択され、選択された斜面移動能力に基づいて目標存在範囲が算出されるため、目標の種類に応じて斜面移動能力が異なることを考慮して目標存在範囲が算出される。
【0046】
例えば急傾斜を移動可能な目標に対しては目標存在範囲が拡大されるため、相関ゲートが不必要に拡大されることが防止され、その結果、追尾中目標とは異なる目標を誤って同一の目標と判定することが防止される。したがって、迂回行動が目標の種類により異なることを考慮して追尾を行うことができ、より確実な追尾が可能となる。
【0047】
更に、本実施形態によれば、目標存在範囲提示部10が目標存在範囲を地図上の領域として操作員に提示するため、操作員は提示された目標存在範囲に基づいて目標に関する状況判断を行うことができる。
【0048】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、上記実施形態に様々な変更を行ったものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 観測員
2 相関処理部
3 トラックファイル
4 平滑化処理部
5 予測処理部
6 地勢情報発生部
7 目標移動能力登録部
8 予測判定部
9 予測変更部
10 目標存在範囲提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域に存在する目標の入力された位置と、追尾中目標の登録された登録予測位置と、登録された登録判定結果に応じて異なる閾値とに基づいて、前記目標と前記追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行する相関処理部と、
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置及び前記登録予測位置に基づいて前記目標の次回の予測位置を算出する予測処理部と、
前記監視区域の地勢情報を提供する地勢情報発生部と、
前記目標の入力された種類に対応する斜面移動能力を登録した目標移動能力登録部と、
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置、前記斜面移動能力、及び前記地勢情報に基づいて前記目標が前記次回に到達し得る目標存在範囲を算出し、前記予測位置及び前記目標存在範囲に基づいて前記目標が前記予測位置に到達可能かどうかの予測判定を実行し、前記予測判定の結果で前記登録判定結果を更新する予測判定部と、
前記目標存在範囲を地図上の領域として提示する目標存在範囲提示部と、
前記予測判定の結果が「到達可能」の場合に前記予測位置で前記登録予測位置を更新する予測変更部と
を具備する
追尾処理装置。
【請求項2】
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置に基づいて前記目標の平滑化位置を求める平滑化処理部を更に具備し、
前記予測処理部は、前記平滑化位置に基づいて前記予測位置を算出し、
前記予測判定部は、前記地勢情報に基づいて前記平滑化位置を中心とする放射方向に沿う勾配の見通しを全周について探索し、前記勾配が前記斜面移動能力を超える場所以遠が前記目標存在範囲に含まれないように前記目標存在範囲を算出する
請求項1の追尾処理装置。
【請求項3】
前記目標移動能力登録部は、複数種類にそれぞれ対応させて互いに異なる複数斜面移動能力を登録し、前記複数斜面移動能力から前記斜面移動能力を選択して提供する
請求項1又は2の追尾処理装置。
【請求項4】
監視区域に存在する目標の位置及び種類の入力を受けることと、
前記位置と、追尾中目標の登録された登録予測位置と、登録された登録判定結果に応じて異なる閾値とに基づいて、前記目標と前記追尾中目標とが同一かどうか判定する相関処理を実行することと、
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置及び前記登録予測位置に基づいて前記目標の次回の予測位置を算出することと、
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置、前記種類に対応する斜面移動能力、及び前記監視区域の地勢情報に基づいて前記目標が前記次回に到達し得る目標存在範囲を算出することと、
前記予測位置及び前記目標存在範囲に基づいて前記目標が前記予測位置に到達可能かどうかの予測判定を実行することと、
前記予測判定の結果で前記登録判定結果を更新することと、
前記目標存在範囲を地図上の領域として提示することと、
前記予測判定の結果が「到達可能」の場合に前記予測位置で前記登録予測位置を更新することと
を具備する
追尾処理方法。
【請求項5】
前記相関処理の結果が「同一」の場合、前記位置に基づいて前記目標の平滑化位置を求めることを更に具備し、
前記予測位置を算出することにおいて、前記平滑化位置に基づいて前記予測位置を算出し、
前記目標存在範囲を算出することは、
前記地勢情報に基づいて前記平滑化位置を中心とする放射方向に沿う勾配の見通しを全周について探索することと、
前記勾配が前記斜面移動能力を超える場所以遠が前記目標存在範囲に含まれないように前記目標存在範囲を算出することと
を含む
請求項4の追尾処理方法。
【請求項6】
複数種類にそれぞれ対応させて登録された互いに異なる複数斜面移動能力から前記斜面移動能力を選択することを更に具備する
請求項4又は5の追尾処理方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の追尾処理方法をコンピュータに実行させる追尾処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−163373(P2012−163373A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22145(P2011−22145)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】