説明

追尾及び距離制御を改善する方法

追尾及び距離制御を改善するための方法では、能動的な追尾及び距離制御において、近い将来における車両の運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出するとともに、運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検知した場合に、近い将来に引継ぎが差し迫っていることを運転者に知らせるか、或いは運転者の注意を高揚させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、追尾及び距離制御を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に支援システムを採用することが、益々多くなるにつれて、ACC、AICC又はICCとしても知られている、追尾及び距離制御を意味する能動的な速度制御システムが、益々市場に受け入れられて来ている。それは、これらのシステムが、車両走行時に、運転者の負担を大きく軽減することができるからである。この運転者の負担軽減により、これらのシステムは、走行の快適性に大きく寄与することができる。しかし、その結果、これらのシステムの制御の快適性に対する要求が特に高くなっている。
【0003】
今日では、特に最新の高級クラスの車両は、大抵既に支援システムとしてナビゲーションシステムを備えている。同様に、多くの場合、これらの車両には、「クルーズ制御」としても知られている、従来の速度制御設備が、既に存在する。この車両クラスでは、ACCシステムも、益々普及することが期待される。
【0004】
ナビゲーションシステムと速度制御設備の両方の支援システムは、一方では、運転者の負担を軽減するが、他方では、運転者の交通事故に対する注意及び車両を走行させるための注意を低下させる可能性が有る。それは、ナビゲーション及び速度制御が、もはや車両を運転することの「直接的な関心事」に該当しなくなったためである。このことは、実際には、ほとんど防止されて来ていないが、そのようなシステムの大きな欠点である。
【0005】
非常に高度に開発された支援システム、特に、ACC、AICC又はICCシステムなどの追尾制御機能と距離制御機能の両方又は一方を備えた速度制御も、運転者の責務を引き受けることはできない。むしろ、これらのシステムは、運転者による持続的な監視を必要としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、追尾及び距離制御の快適性と安全性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項によって解決される。有利な実施構成は、従属請求項に記載されている。
【0008】
これ以降において、追尾制御機能と距離制御機能の両方又は一方を備えた周知の追尾及び距離制御又は速度制御は、すべて「追尾及び距離制御」又は短く「ACC」と称する。そのため、この発明の意味において、ACC、AICC又はICCなどのすべての考え得る追尾及び距離制御、そして又すべての下位の速度制御設備も、これに含まれるものとする。
【0009】
この課題は、能動的な追尾及び距離制御において、近い将来における車両の運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出することと、運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検知した場合に、引継ぎが近い将来に迫っていることを運転者に知らせるか、或いは運転者の注意を高揚させることとによって解決される。
【0010】
言い換えると、必要な、或いは望ましい走行状況を予測することが可能な場合に、運転者による引継ぎが近い将来に差し迫っていることを出来る限り快適な形で運転者に知らせるか、或いは場合によっては(より長い)ACC走行によって、限定的にしか存在しない運転者の注意を高揚させるものである。
【0011】
この運転者が速度制御を引継ぐための「穏やかな」告知は、車両の運転時において、運転者に快適な感覚と、そして又より安全な感覚を伝えることとなる。
【0012】
この発明では、近い将来に、運転者による車両制御の引継ぎ又は運転者の注意の高揚を見込む、或いは必要とする走行状況を検出又は予測するものと規定する。
【0013】
この発明では、運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出するために、車両のナビゲーションシステムのデータ又は信号を考慮するものと規定する。
【0014】
この発明では、車両のナビゲーションシステムと追尾及び距離制御とのネットワーク接続を行うものと規定する。
【0015】
この発明では、運転者の注意を必要とする方向転換(ターンプロセス)が差し迫っている場合には、車両速度を含めて、運転者が設定する速度を、エンジントルク要求と制動トルク要求の両方又は一方に関する設定変量として考慮しないものと規定する。
【0016】
この発明では、運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、ゆっくりとしたエンジントルクの低減によって速度を低下させる特別な制御モードを始動するものと規定する。
【0017】
この発明では、運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、有利には、車両速度と有意な方向転換を採るべき地点までの距離に依存して、自動的なブレーキ操作を行い、このブレーキ操作は、有利には、約−0.1gの値を上回らないものと規定する。
【0018】
この発明では、運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、有利には、車両速度と有意な方向転換を採るべき地点までの距離に依存して、自動的なブレーキ操作を行い、このブレーキ操作は、高速道路や地方道などのその時点の走行路に指定された速度に車両を減速させるか、運転者にとって感知できる車両速度の低下を生成させるかのどちらか、或いは両方であるものと規定する。
【0019】
この発明では、直近の15秒〜140秒の時間範囲内に引継ぎの実現性又は必要性が差し迫っている場合に、近い将来における車両の運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出するものと規定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ここで、実施例にもとづき、この発明を詳しく説明する。
【0021】
車両は、ナビゲーションシステム、ACCシステム及び運転者の注意を高揚させる必要が有る状況を検知又は予測することを可能とする手段を備えている。更に、そのような状況を運転者に快適に知らせることができる手段を配備している。このことを可能とするために、この発明では、ナビゲーションシステムとACCは、互いにネットワークで接続される。
【0022】
この場合、例えば、大画面のディスプレイを使用した高級なナビゲーションシステムを採用する。このディスプレイは、車両に存在するCAN端子を介して駆動される。
【0023】
こうすることによって、(A=高速道路、B=国道、L=地方道などのルートの特徴を見分けられる)ルート表示又はルートタイプに関する情報が、CAN上に存在することとなり、ACCが、読み取ることができるようになる。これに代わって、或いはこれに追加して、これらの情報を、別のデータ伝送によって、ディスプレイに伝え、そしてデータ用のソースとして機能させることもできる。
【0024】
同様に、方向転換の指示を表示するものとし、そのために、CAN(又は別のデータ伝送)上でも利用可能なようにする。
【0025】
更に、方向転換の表示は、実際の道路の推移を反映したものとし、そのために、それに対応する角度情報も含むようにする。この角度情報は、道路の推移に精確に対応する必要はなく、「急な」カーブやほんの「僅かな」方向転換などの傾向の情報「だけ」を含むものとする。
【0026】
同様に、運転者が、次にターンプロセスを採るべき地点までの距離が示される。
【0027】
この発明では、これらの情報は、単独で、或いはACCシステム又は一般的に速度制御設備と組み合わせて利用可能である。更に、これらの情報は、電子ブレーキ制御システム、特に走行ダイナミックスコントローラ(ESP)に供給することもできる。
【0028】
この発明では、運転者の注意を必要とする方向転換(ターンプロセス)が差し迫っている場合には、車両のその時点の車両速度を含めて、運転者が設定する速度を、エンジントルク要求と制動トルク要求の両方又は一方に関する設定変量として考慮せず、特別な制御モードを始動させる。この場合、有利には、ゆっくりとしたエンジントルクの低減によって速度を低下させる。
【0029】
この場合、「方向転換」という概念は、通常の道路の推移に沿ってカーブ走行することではなく、その時に走っている道路から分かれることであると解釈する。
【0030】
ここでは、特に典型的な例として、車両が、高速道路の出口に接近したことが挙げられる。更に、高速道路走行は、能動的なACC制御に関しても有利である。
【0031】
この場合、この発明では、ゆっくりとしたACC走行にもとづき、ナビゲーションシステムの情報によって、差し迫ったターン運転操作が予測可能である場合、全体的な道路の推移に対する自動的な速度調整を行うのではなく、運転者の注意を高揚させるだけである。
【0032】
この発明では、車両速度と有意な方向転換を採るべき地点までの距離情報に依存して、ACCシステムによる穏やかなブレーキ操作を行うこともできる。この「穏やかな」自動的な制動プロセスは、有利には、約−0.1gの減速を意味する、快適な範囲内での車両の減速を上回るべきではない。
【0033】
この発明では、速度の低下は、例えば、高速道路での100km/hなどのコースに標準的に指定された速度に従うか、さもなければ運転者が設定した速度との感知できる差分(例えば、20km/h)を生成させることができる。
【0034】
この特別な制御モードは、均一な速度制御から逸れて、この発明にもとづき、運転者の注意を喚起し、それによって走行安全性に寄与するものである。
【0035】
特別な用途では、運転者の注意を高揚させるために、ナビゲーションシステムの音声出力を実行することもできる。
【0036】
この発明では、特別な制御モードは、当該の情報(曲がる地点までの道程)が有る場合、ディスプレイ上にターンプロセスを表示する前に始動することもできる。
【0037】
特別な制御モードは、予測を行っている運転者にとって快適性を向上させて、納得できる運転形態に修正するので、運転者は、この情報を誤った機能又は干渉と看做すことはない。それは、大抵有意な方向転換と関連して、車両速度も同時に相応に低下されるためである。
【0038】
特別な制御モードは、そのようにして「標準的な」運転方式に統合されて、妨害を与えない形で作用する。それは、運転者が、(場合によっては、短いブレーキ操作によって)ACCシステムを停止することによって、同じ運転形態を始動させたからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾及び距離制御を改善するための方法において、
能動的な追尾及び距離制御で、近い将来における車両の運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出することと、
運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検知した場合、近い将来に引継ぎが差し迫っていることを運転者に知らせるか、或いは運転者の注意を高揚させることとを特徴とする方法。
【請求項2】
追尾及び距離制御を改善するための方法において、
近い将来に運転者による車両制御の引継ぎ又は運転者の注意の高揚を見込む、或いは必要とする走行状況を検出又は予測することを特徴とする方法。
【請求項3】
運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性を検出するために、車両のナビゲーションシステムのデータ又は信号を考慮することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
車両のナビゲーションシステムと追尾及び距離制御とのネットワーク接続を行うことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
運転者の注意を必要とする方向転換(ターンプロセス)が差し迫っている場合、エンジントルク要求と制動トルク要求の両方又は一方に関する設定変量としては、車両速度を含めて、運転者が設定した速度を考慮しないことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、ゆっくりとしたエンジントルクの低減によって、速度を低下させる特別な制御モードを始動することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、有利には、車両速度と有意な方向転換を採るべき地点までの距離とに応じて、自動的なブレーキ操作を実行し、このブレーキ操作は、有利には、約−0.1gの値を上回らないことを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
運転者の注意を必要とする差し迫った方向転換(ターンプロセス)を検知した場合、有利には、車両速度と有意な方向転換を採るべき地点までの距離とに応じて、自動的なブレーキ操作を実行し、このブレーキ操作は、高速道路や地方道などのその時点の走行路に指定された速度に車両を減速させるものであるか、運転者が感知可能な車両速度の低下を引き起こすものであるか、或いはその両方であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
近い将来における車両の運転者による車両制御の引継ぎの実現性又は必要性は、この引継ぎの実現性又は可能性が、直近の15秒から140秒の時間範囲以内に差し迫っている場合に検知されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2007−513821(P2007−513821A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538864(P2006−538864)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052934
【国際公開番号】WO2005/047046
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】