説明

追尾装置及びコンピュータプログラム及び追尾方法

【課題】正しい相関決定を実施する。
【解決手段】探知データ取得部110は、時刻ごとにセンサから探知データ512を取得する。航跡データ記憶部120は、航跡データ(航跡群521)を格納する。ゲート計算部131は、航跡データから計算した航跡の予測位置に基づくゲートを計算する。ゲート内外判定部132は、探知データが前記ゲート内に入るかどうかを判定する。相関尤度計算部133は、航跡が初探知データのみから構成される場合は、探知データ取得部110によって取得された前記探知データ情報に基づいて第二探知データとの相関尤度を計算し、航跡が初探知データ以降の探知データからも構成される場合は、航跡の予測位置に基づいて、前記ゲート内に入る探知データとの相関尤度を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標を追尾する追尾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサから得られた探知データのうち、いずれが目標でいずれが不要信号であるかを判断することにより、不要信号による誤航跡を排除しながら目標の航跡を推定し、目標を追尾する追尾装置がある。追尾装置は、探知データが「現在追尾中の目標である」か「新たに探知された目標である」か「不要信号である」かを判断する。これを「相関決定」という。追尾装置は、相関決定により同一の目標であると判断した探知データに基づいて、目標の航跡を推定し、目標を追尾する。相関決定では、例えば、それぞれの解釈の相関尤度を算出し、相関尤度が大きい解釈を採用する。
また、探知データが得られてすぐに相関決定をするのではなく、複数の仮説を保持しておき、探知データが蓄積されてから、いずれの仮説を採用するかを判断する追尾装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−168949号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D.B.Reid,「An algorithm for tracking multiple targets」、IEEE Transactions on Automatic Control、vol.24、no.6、843〜854ページ、1979年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
追尾を開始したばかりの目標である場合など、推定した航跡の信頼度が低い場合、正しい相関決定ができない場合がある。これを回避するため、複数の仮説を保持する場合、仮説の数が多くなると、処理負荷が大きくなる。
この発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、正しい相関決定を実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる追尾装置は、
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、信頼度判定部とを有し、
上記探知データ取得部は、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記尤度算出部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる追尾装置によれば、尤度算出部が、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出するので、正しい相関決定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における追尾システム800の全体構成の一例を示すシステム構成図。
【図2】実施の形態1における追尾装置100のハードウェア構成の一例を示すハードウェア図。
【図3】実施の形態1における追尾装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック図。
【図4】実施の形態1における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図。
【図5】探知データの観測状況の一例を示す図。
【図6】実施の形態1における相関尤度計算部133が算出する相関尤度の一例を示すグラフ図。
【図7】実施の形態2における第一尤度計算工程S636の流れの一例を示すフローチャート図。
【図8】実施の形態6における航跡データ更新部134の構成の一例を示す詳細ブロック図。
【図9】実施の形態6における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図。
【図10】探知データの観測状況の一例を示す図。
【図11】実施の形態7における追尾装置100の構成の一例を示すブロック図。
【図12】実施の形態7における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図。
【図13】探知データの観測状況の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1について、図1〜図6を用いて説明する。
【0010】
図1は、この実施の形態における追尾システム800の全体構成の一例を示すシステム構成図である。
追尾システム800は、例えば、センサ801と、追尾装置100と、表示装置802とを有する。
【0011】
センサ801は、例えばレーダや赤外線カメラである。センサ801は、目標を観測し、探知データを出力する。探知データは、センサ801が観測した目標の状態量の観測値と、その観測時刻とを表わすデータである。探知データが表わす目標の状態量は、例えば、目標の位置や速度などである。センサ801の種類によって、観測できる情報が異なり、それに伴って、探知データが表わす目標の状態量も異なる。例えば、ドップラーレーダのように、目標の位置だけでなく、センサ801と目標との距離方向の速度が観測できるセンサ801の場合、探知データは、目標の位置と距離方向の速度とを表わす。また、赤外線カメラのように、目標の三次元的な位置ではなく、目標が見える二次元的な方向だけが観測できるセンサ801の場合、探知データは、センサ801から目標が見える方向を表わす。なお、探知データは、センサ801が観測できる状態量すべてを表わす必要はなく、追尾装置100が目標を追尾するために必要な状態量のみを表わす構成であってもよい。
また、探知データが表わす観測時刻は、センサ801がその状態量を観測した時刻である。例えば、探知データは、所定の時刻を基準として、その時刻からの経過時間を秒単位で表わすデータを含む。あるいは、赤外線カメラのように、一定の周期で繰り返し観測を行うセンサ801の場合、探知データは、例えば、フレーム番号を表わすデータを含む構成であってもよい。また、フレームごとに探知データをひとまとまりにして出力するなどして、観測時刻(フレーム番号)が表わされている場合には、探知データは、フレーム番号などを表わすデータを含まない構成であってもよい。
センサ801は、目標を観測した観測結果に基づいて、探知データを生成する。
【0012】
ただし、観測ノイズなどの影響があるため、探知データは、必ずしも、センサ801が観測した目標を表わすとは限らない。これを「不要信号」と呼ぶ。例えば、センサ801は、観測した信号が、あらかじめ設定された信号強度閾値より強い場合に、目標を観測したものとして、探知データを生成する。しかし、実際に目標が存在しない場合でも、観測ノイズにより、センサ801が観測した信号が信号強度閾値を超える可能性がある。信号強度閾値を高く設定すれば、不要信号の発生を抑えることができるが、その代わり、実際に目標が存在する場合に、見逃す可能性が高くなる。このため、信号強度閾値を比較的低い値に設定しておくことが望ましい。不要信号の発生確率は、信号強度閾値の関数であり、信号強度閾値が低いほど、不要信号の発生確率が高くなる。
また、観測誤差などの影響があるため、探知データが表わす目標の状態量の観測値は、目標の状態量の真の値とは異なる場合がある。
なお、センサ801は、観測した生の観測結果を表わす観測データを出力する構成であってもよい。あるいは、センサ801は、観測データから探知データを生成する途中の中間データを出力する構成であってもよい。
【0013】
追尾装置100は、センサ801が出力した探知データ(または観測データ)を入力する。センサ801と、追尾装置100との間は、直接、もしくは、ネットワークなどを介して接続されている。追尾装置100は、センサ801から直接、もしくは、ネットワークなどを介して、探知データ(または観測データなど)を入力する。追尾装置100は、入力した探知データに基づいて、目標を追尾する。センサ801が観測データや中間データを出力する構成の場合、追尾装置100は、例えば、入力したデータに基づいて探知データを生成し、生成した探知データに基づいて目標を追尾する。あるいは、センサ801と追尾装置100との間に、観測データや中間データから探知データを生成する装置が介在し、追尾装置100は、その装置が生成した探知データを入力する構成であってもよい。
追尾装置100は、例えば、探知データが不要信号であるか否かを判定し、不要信号でないと判定した探知データに基づいて、目標の航跡を推定する。追尾装置100は、異なる観測時刻にセンサ801が観測した観測結果に基づく複数の探知データについて、同一の目標を観測したものであるか、異なる目標を観測したものであるかを判定する。追尾装置100は、同一の目標を観測したと判定した探知データに基づいて、時間的に変化する目標の位置や速度などの状態量を推定する。
追尾装置100は、航跡データを出力する。航跡データは、追尾装置100が算出した目標の状態量の推定値を表わす。
【0014】
表示装置802は、追尾装置100が出力した航跡データを入力する。表示装置802は、入力した航跡データに基づいて、目標の位置や速度などの状態量を、表示画面に表示する。
なお、表示装置802は、追尾装置100が出力する航跡データを利用する装置の一例である。追尾装置100が出力する航跡データは、表示装置802以外にも様々な装置によって利用され得る。追尾システム800は、表示装置802に代えて、もしくは、表示装置802に加えて、追尾装置100が出力する航跡データを入力して利用する他の装置を有する構成であってもよい。
【0015】
図2は、この実施の形態における追尾装置100のハードウェア構成の一例を示すハードウェア図である。
追尾装置100は、例えばコンピュータである。追尾装置100は、例えば、記憶装置914と、処理装置911と、入力装置912と、出力装置913とを有する。
記憶装置914は、処理装置911が実行するコンピュータプログラムや、処理装置911が処理するデータなどを記憶する。記憶装置914は、例えば、揮発性メモリや不揮発性メモリ、半導体メモリや磁気ディスク装置などである。
処理装置911は、記憶装置914が記憶したコンピュータプログラムを実行することにより、データを処理し、追尾装置100全体を制御する。
入力装置912は、追尾装置100の外部からの情報を入力し、処理装置911が処理できるデータに変換する。入力装置912は、例えば、アナログ信号をデジタルデータに変換するアナログデジタル変換装置、センサ801などの他の装置が送信した信号を受信して復調する通信装置(受信装置)、人間による操作を入力するキーボードやマウスなどの操作入力装置などである。入力装置912が変換したデータは、処理装置911が直接処理する構成であってもよいし、記憶装置914が一時的に記憶する構成であってもよい。
出力装置913は、処理装置911が処理したデータや、記憶装置914が記憶したデータを、追尾装置100の外部に出力できる形式に変換して出力する。出力装置913は、例えば、デジタルデータをアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換装置、データを表わす信号を表示装置802など他の装置に対して送信する通信装置(送信装置)、人間に見える映像や人間に聞こえる音声などにデータを変換して出力する装置などである。
【0016】
以下に説明する追尾装置100の機能ブロックは、例えば、記憶装置914が記憶したコンピュータプログラムを、処理装置911が実行することにより実現される。
しかし、これは一例であり、追尾装置100の機能ブロックは、専用の集積回路や、デジタル部品・アナログ部品などによって構成された電気回路、あるいは、機械的構成など他の構成によって実現されるものであってもよい。
また、追尾装置100は、物理的に一つにまとまった形をした装置である必要はなく、各機能ブロックを異なる装置によって実現し、複数の装置が協調して動作することにより、全体として追尾装置100として機能する構成であってもよい。
【0017】
図3は、この実施の形態における追尾装置100の機能ブロックの構成の一例を示すブロック図である。
追尾装置100は、例えば、探知データ取得部110と、航跡データ記憶部120と、ゲート計算部131と、ゲート内外判定部132と、相関尤度計算部133と、航跡データ更新部134と、航跡確立判定部135と、航跡出力部190とを有する。
【0018】
探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、探知データ511を取得する。例えば、探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、センサ801などが出力した探知データを入力する。あるいは、探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、センサ801などが出力した観測データなどを入力し、処理装置911を用いて、入力した観測データなどから探知データを生成する。探知データ取得部110は、処理装置911を用いて、取得した探知データ512を出力する。
【0019】
航跡データ記憶部120(航跡記憶部)は、記憶装置914を用いて、航跡群521を記憶している。航跡群521は、1つ以上の航跡データから構成されている。1つの航跡データは、追尾装置100が追尾している1つの目標についての状態量の推定値を表わす。航跡群521は、追尾装置100が追尾している目標の数と同じ数の航跡データを含む。
【0020】
ゲート計算部131(予測部)は、処理装置911を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡群521に基づいて、追尾装置100が追尾している目標それぞれについてのゲートを計算する。ゲートは、航跡データが表わす目標と探知データが表わす目標とが同一の目標である可能性がある目標の状態量の観測値の範囲を表わす。例えば、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、探知データの観測時刻におけるその目標の状態量の予測値を算出する。ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、算出した目標の状態量の予測値に基づいて、その予測値を中心とするゲートを算出する。ゲート計算部131は、算出したゲート531を出力する。
センサ801が、所定の周期で観測を繰り返す構成であって、探知データの観測時刻がフレーム番号などによって表わされる構成である場合など、1つの観測時刻に複数の探知データが存在する場合がある。その場合、ゲート計算部131は、その観測時刻におけるゲートを計算する。また、探知データごとに観測時刻が異なる場合は、ゲート計算部131は、それぞれの探知データごとに、その探知データの観測時刻におけるゲートを算出する。なお、ゲート計算部131は、所定の時刻を、その時刻を中心とする所定の期間内に観測時刻が入る探知データの観測時刻とみなし、その時刻におけるゲートを計算する構成であってもよい。
【0021】
航跡データが、目標の位置と速度とを状態量として含む構成である場合、ゲート計算部131は、例えば、航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、目標の速度が一定であるとの仮定のもと、観測時刻における目標の位置を予測する。実際には、目標の速度は一定ではないし、目標の位置や速度の推定誤差の影響があるので、目標が観測される位置は、ゲート計算部131が予測した位置と異なる場合がある。例えば、この予測誤差をあらかじめ見積もっておき、見積もり結果に基づいて、ゲートの大きさをあらかじめ設定しておく。ゲート計算部131は、予測した位置を中心とする、あらかじめ設定された大きさの範囲を、ゲートとして算出する。
また、センサ801が目標の位置だけを観測する場合など、探知データが、目標の位置を状態量として含み、速度を状態量として含まない構成である場合、追尾を開始したばかりの新しい目標については速度がわからない。目標がどちらの方向へ進むのかわからないので、ゲート計算部131は、その目標が前回観測された位置を中心とするゲートを算出する。また、目標の速度がわからないので、ゲート計算部131は、想定される最大の速度でその目標が進んだときに観測されると考えられる位置まで含む大きさのゲートを算出する。このようなゲートを「初期ゲート」と呼ぶ。
【0022】
ゲート計算部131は、例えば、次の式で表わされるゲート531を算出する。
【0023】
G={z|(z−z−1(z−z)≦d}
【0024】
ただし、Gは、集合であり、ゲート531を表わす。zは、縦ベクトルであり、目標の状態量の観測値を表わす。例えば、探知データ512が、目標の三次元的な位置を状態量とする場合、縦ベクトルzは、三次元直交座標系における目標の座標を要素とする三次元ベクトルである。zは、縦ベクトルzと同じ次元を有する縦ベクトルであり、目標の状態量の予測値を表わす。上付きの「T」は、行列の転置を表わし、(z−zは、縦ベクトル(z−z)を転置した横ベクトルを表わす。Sは、縦ベクトルzと同じ次元を有する正方行列であり、ゲートの大きさ及び形状を表わす。Sの要素の値は、例えば、あらかじめ設定された定数である。上付きの「−1」は、逆行列を表わし、S−1は、正方行列Sの逆行列を表わす。dは、正の実数であり、ゲートの大きさを表わす。dの値は、例えば、あらかじめ設定された定数である。
【0025】
ゲート計算部131は、ゲート531が初期ゲートである場合、例えば、その目標が前回観測された位置の三次元直交座標系における座標を要素とする縦ベクトルzと、次の式で表わされる正方行列Sとを使って、ゲート531を算出する。
【0026】
S=(Vmax・ΔT)/9・I+R
【0027】
ただし、Vmaxは、正の実数であり、目標の想定される最大速度を表わす。ΔTは、正の実数であり、その目標が前回観測された時刻から探知データ512が表わす目標の観測時刻までの経過時間を表わす。Iは、正方行列Sと同じ次元を有する単位行列である。Rは、正方行列Sと同じ次元を有する正方行列であり、センサ801の観測誤差共分散を表わす観測誤差共分散行列である。
【0028】
ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、追尾装置100が追尾している目標それぞれについてゲート計算部131が計算したゲートに基づいて、探知データ取得部110が出力した探知データ512が、そのゲートに入っているか否かを判定する。ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、判定したゲート内外判定結果532を出力する。
【0029】
相関尤度計算部133(尤度算出部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、追尾装置100が追尾している目標それぞれについてゲート内外判定部132が判定したゲート内外判定結果532に基づいて、その目標のゲート531に入る探知データ512について、相関尤度533を計算する。相関尤度533は、航跡データが表わす目標と探知データ512が表わす目標とが同一であるもっともらしさを表わす指数である。相関尤度533が大きいほど、航跡データが表わす目標と探知データ512が表わす目標とが同一である可能性が高いことを表わす。相関尤度計算部133は、航跡群521に含まれる航跡データそれぞれと探知データ取得部110が出力した探知データ512それぞれとの組合せのうち、その探知データ512が表わす目標の観測時刻における、その航跡データが表わす目標のゲート531に探知データ512が入る組合せについて、相関尤度533を算出し、それ以外の組合せについて、相関尤度を算出しない。なお、相関尤度計算部133は、ゲート531に探知データ512が入らない組合せについて、航跡データが表わす目標と探知データ512が表わす目標とが同一である可能性がないことを表わす相関尤度(例えば「0」など)を算出する構成であってもよい。
【0030】
相関尤度計算部133は、航跡データの信頼度が高い場合と、低い場合とで、異なる計算式を用いて、相関尤度533を算出する。例えば、相関尤度計算部133は、航跡データが、追尾を開始したばかりの新しい目標を表わす場合、その航跡データの信頼度が低いと判定し、それ以外の場合、その航跡データの信頼度が高いと判定する。
【0031】
航跡データの信頼度が高いと判定した場合、相関尤度計算部133は、例えば、次の式で表わされる相関尤度533を算出する。
【0032】
g=P/√[det(2πS)]・exp[−1/2・(z−z−1(z−z)]
【0033】
ただし、gは、正の実数であり、相関尤度533を表わす。Pは、0より大きく1より小さい実数であり、目標を探知する目標探知確率を表わす。detは、行列式を表わす。πは、円周率である。expは、ネイピア数eを底とする指数関数を表わす。
【0034】
この式を用いて算出される相関尤度533は、縦ベクトルzと縦ベクトルzとの差が大きいほど、小さくなる。例えば、縦ベクトルz,zが、三次元直交座標系における目標の座標を要素とする三次元ベクトルである場合、相関尤度計算部133は、観測された目標の位置と予測された目標の位置との間の距離が大きいほど、小さい相関尤度533を算出する。相関尤度533は、追尾航跡の予測位置と探知データとの距離を変数とする単調減少関数である。
【0035】
航跡データの信頼度が低いと判定した場合、相関尤度計算部133は、例えば、次の式で表わされる相関尤度533を算出する。
【0036】
g=max{βFT,βNT
【0037】
ただし、maxは、最大値を表わす。βFTは、正の実数であり、探知データ512が不要信号である尤度を表わす。βFTの値は、例えば、あらかじめ定められた定数であり、センサ801に設定された信号強度閾値に基づいて、単位体積当たりで発生する不要信号の数を計算することにより設定される。βNTは、正の実数であり、探知データ512が新たに発生した目標である尤度を表わす。βNTの値は、例えば、あらかじめ定められた定数であり、βFTと同じ値である。なお、探知データ取得部110が取得した探知データ511などから観測されるべき目標の数がわかる場合、相関尤度計算部133は、観測されるべき目標の数と、追尾装置100が追尾している目標の数とに基づいて、βNTを算出する構成であってもよい。
【0038】
この式を用いて算出される相関尤度533は、縦ベクトルzと縦ベクトルzとの差にかかわらず、一定の値である。例えば、縦ベクトルz,zが、三次元直交座標系における目標の座標を要素とする三次元ベクトルである場合、相関尤度計算部133は、観測された目標の位置と予測された目標の位置との間の距離に関わらず、一定の相関尤度533を算出する。
【0039】
航跡データ更新部134(相関部、更新部、新規目標判定部、新規航跡生成部、不要信号判定部)は、処理装置911を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データを更新する。例えば、航跡データ更新部134は、相関尤度計算部133が算出した相関尤度533に基づいて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データが表わす目標と探知データ512が表わす目標とが同一であるか否かを判定する。航跡データ更新部134は、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データを、その航跡データが表わす目標と同一であると判定した目標を表わす探知データに基づいて更新する。航跡データ更新部134は、処理装置911を用いて、更新した航跡データを含む更新航跡群523を出力する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、航跡データ更新部134が出力した更新航跡群523を記憶する。
【0040】
例えば、航跡データ更新部134は、処理装置911を用いて、一つの探知データ512について、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データのなかから、その航跡データとその探知データ512との組について相関尤度計算部133が算出した相関尤度533が最も大きい航跡データを抽出する。航跡データ更新部134は、抽出した航跡データが表わす目標とその探知データ512が表わす目標とが同一であると判定する。ただし、最大の相関尤度533が、βFTやβNTよりも小さい場合は、航跡データ更新部134は、航跡データが表わす目標とその探知データ512が表わす目標とが同一ではないと判定する。βFTが最大である場合は、航跡データ更新部134は、その探知データ512が不要信号であると判定する。βNTが最大である場合は、航跡データ更新部134は、その探知データ512が新たに探知された目標であると判定する。その探知データ512が新たに探知された目標であると判定した場合、航跡データ更新部134は、処理装置911を用いて、その探知データ512に基づいて、新たな航跡データを生成する。例えば、航跡データ更新部134は、目標の位置の推定値に、その探知データ512が表わす目標の位置の観測値を設定し、目標の速度の推定値に「0」を設定した航跡データを生成する。
【0041】
最大の相関尤度533とβFTとが等しい場合、航跡データ更新部134は、抽出した航跡データが表わす目標とその探知データ512が表わす目標とが同一である可能性と、その探知データ512が不要信号である可能性とが同程度であると判定する。また、最大の相関尤度533とβNTとが等しい場合、航跡データ更新部134は、抽出した航跡データが表わす目標とその探知データ512が表わす目標とが同一である可能性と、その探知データ512が新たに探知した目標である可能性とが同程度であると判定する。
このような場合、追尾装置100は、抽出した航跡データが表わす目標とその探知データ512が表わす目標とが同一であるという仮説と、2つの目標が同一ではないという仮説との2つの仮説を並行して検討する。その場合、航跡データ記憶部120は、2つの目標が同一であるという仮説に基づいて航跡データ更新部134が更新した航跡データと、2つの目標が同一でないという仮説に基づいて航跡データ更新部134が更新する前の航跡データとの2つの航跡データを記憶する。2つの航跡データは、同じ目標を表わし、いずれか一方が正しく、いずれか一方が間違っている。追尾装置100は、2つの航跡データの信頼度を判定することにより、2つの航跡データのうち、いずれか一方を採用し、他方を棄却する。2つの航跡データの信頼度の差が小さく、いずれが正しいかすぐには判定できない場合でも、何回か更新を繰り返すことにより、正しいほうの航跡データの信頼度は高くなり、間違っているほうの航跡データの信頼度は低くなる。そこで、2つの航跡データの信頼度の差が大きくなった時点で、どちらが正しいかを判定し、航跡データ記憶部120は、正しくないと判定した航跡データを削除する。
【0042】
また、一つの航跡データに対して、その航跡データが表わす目標と同一の目標を表わすと判定した探知データ512が、複数存在する場合がある。目標の分離を考慮しない場合、一つの航跡データが表わす目標と同一の目標を表わす探知データ512は、同時刻(所定の期間内の時刻を同時刻とみなす場合を含む。以下同じ。)に観測された探知データ512のうち一つだけである。
このような場合も、追尾装置100は、複数の仮説を並行して検討する。航跡データ記憶部120は、異なる探知データ512を用いて航跡データ更新部134が一つの航跡データを更新した複数の航跡データを記憶する。その後、複数の航跡データの信頼度を比較して、正しい航跡データを判定し、航跡データ記憶部120は、正しくないと判定した航跡データを削除する。
この時点において、それぞれの航跡データの信頼度は、その航跡データが表わす目標とそれぞれの探知データ512が表わす目標とが同一である相関尤度533に対応している。すなわち、相関尤度533が大きければ、更新した航跡データの信頼度が高く、相関尤度533が小さければ、更新した航跡データの信頼度は低い。このため、航跡データ記憶部120は、最初から、信頼度が高い航跡データだけを記憶する構成であってもよい。例えば、航跡データ記憶部120は、相関尤度533が最も大きい探知データ512を用いて航跡データ更新部134が更新した航跡データだけを記憶する。あるいは、航跡データ記憶部120は、相関尤度533が比較的大きい探知データ512を用いて航跡データ更新部134が更新した航跡データだけを記憶し、相関尤度533が比較的小さい探知データ512を用いて航跡データ更新部134が更新した航跡データを記憶しない。
【0043】
また、一つの航跡データに対して、その航跡データが表わす目標と同一の目標を表わすと判定した探知データ512が複数存在する場合、その航跡データが表わす目標と同一の目標を表わす探知データ512以外の探知データ512は、異なる航跡データが表わす目標と同一の目標を表わすか、不要信号であるか、新たに探知した目標を表わすかのいずれかである。そのため、航跡データ更新部134は、一つの航跡データに対して、その航跡データが表わす目標と同一の目標を表わすと判定した探知データ512が複数存在する場合、その航跡データとの相関尤度533を除外して、相関尤度計算部133が算出した相関尤度533が二番目に大きい航跡データを抽出する構成であってもよい。その場合、追尾装置100は、一つの探知データ512が表わす目標が、相関尤度533が最大の航跡データが表わす目標と同一の目標であるという仮説と、相関尤度533が二番目に大きい航跡データが表わす目標と同一の目標であるという仮説とを並行して検討する。航跡データ更新部134は、それぞれの航跡データを、同じ探知データ512を用いて更新する。航跡データ記憶部120は、一つの探知データ512を用いて更新した複数の航跡データを記憶する。
その場合、最初の時点では、相関尤度533が最大の航跡データのほうが信頼度が高いが、その後、相関尤度533が二番目に大きい航跡データの信頼度が高くなり、信頼度が逆転する可能性がある。航跡データ記憶部120は、例えば、信頼度が逆転した時点で、相関尤度533が二番目に大きい航跡データが正しいと判定し、相関尤度533が最大の航跡データをその探知データ512を用いて更新した航跡データを削除する。逆に、相関尤度533が最大の航跡データが表わす目標が、他の探知データ512が表わす目標と同一であることが判明して、相関尤度533が最大の航跡データをその探知データ512を用いて更新した航跡データを削除した場合は、相関尤度533が二番目に大きい航跡データが正しいと判定する。また、他の探知データ512との関係により、相関尤度533が最大の航跡データが表わす目標が、その探知データ512が表わす目標と同一であることが判明した場合には、相関尤度533が二番目に大きい航跡データをその探知データ512を用いて更新した航跡データが正しくないと判定し、航跡データ記憶部120は、その航跡データを削除する。
【0044】
なお、一つの航跡データに対して、その航跡データが表わす目標と同一の目標を表わすと判定した探知データ512が複数存在するか否かに関わらず、一つの探知データ512に対して、相関尤度533が比較的大きい航跡データを複数抽出し、抽出した複数の航跡データが表わす目標のうちのいずれかと、その探知データ512が表わす目標とが同一であると判定する構成であってもよい。その場合、航跡データ更新部134は、抽出したそれぞれの航跡データを、一つの探知データ512を用いて更新する。目標の重複を考慮しない場合、一つの探知データ512が表わす目標と同一の目標を表わす航跡データは一つだけである。したがって、追尾装置100は、複数の仮説を並行して検討する。航跡データ記憶部120は、一つの探知データ512を用いて航跡データ更新部134が更新した複数の航跡データを記憶する。その後、航跡データの信頼度を比較して、正しい航跡データを判定し、航跡データ記憶部120は、正しくないと判定した航跡データを削除する。
【0045】
航跡確立判定部135(信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、航跡データ更新部134が出力した更新航跡群523に基づいて、それぞれの航跡データについて、目標を正しく追尾していることがほぼ確実である(確立された)か否かを判定する。航跡確立判定部135は、処理装置911を用いて、判定した判定結果を表わす確立航跡情報534を出力する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、航跡確立判定部135が出力した確立航跡情報534を、航跡データとともに記憶する。
【0046】
航跡出力部190は、出力装置913を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡群521を、追尾装置100の外部に出力する形式に変換し、航跡群522として、表示装置802などに対して出力する。
【0047】
図4は、この実施の形態における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図である。
追尾処理S600において、追尾装置100は、探知データ取得部110が取得した探知データに基づいて、目標を追尾する。追尾処理S600は、例えば、探知データ取得工程S610と、航跡選択工程S631と、ゲート計算工程S632と、探知データ選択工程S633と、ゲート内外判定工程S634と、信頼度判定工程S635と、第一尤度計算工程S636と、第二尤度計算工程S637と、航跡データ更新工程S660と、航跡確立判定工程S670とを有する。追尾装置100は、探知データ取得工程S610から追尾処理S600を開始する。
【0048】
探知データ取得工程S610において、探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、探知データを取得する。なお、同時刻に観測された探知データが複数ある場合、探知データ取得部110は、同時刻に観測された探知データを複数取得する。
【0049】
航跡選択工程S631において、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡群521のなかから、まだ選択していない航跡データを1つ選択する。
すべての航跡データが選択済であり、選択すべき航跡データが存在しない場合、ゲート計算部131は、追尾処理S600を航跡データ更新工程S660へ進める。
まだ選択していない航跡データが存在し、航跡データを選択した場合、ゲート計算部131は、追尾処理S600をゲート計算工程S632へ進める。
【0050】
ゲート計算工程S632において、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631で選択した航跡データが表わす目標について、探知データ取得工程S610で探知データ取得部110が取得した探知データの観測時刻における、目標の状態量の予測値を算出する。
ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、算出した予測値を中心とするゲートを算出する。
【0051】
探知データ選択工程S633において、ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、探知データ取得工程S610で探知データ取得部110が取得した探知データのなかから、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データに対して、まだ選択していない探知データを選択する。
すべての探知データが選択済であり、選択すべき探知データが存在しない場合、ゲート内外判定部132は、追尾処理S600を航跡選択工程S631に戻し、次の航跡データをゲート計算部131が選択する。
まだ選択していない探知データが存在し、探知データを選択した場合、ゲート内外判定部132は、追尾処理S600をゲート内外判定工程S634へ進める。
【0052】
ゲート内外判定工程S634において、ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、探知データ選択工程S633で選択した探知データが、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出したゲートのなかに入っているか否かを判定する。
探知データがゲートのなかにあると判定した場合、ゲート内外判定部132は、追尾処理S600を信頼度判定工程S635へ進める。
探知データがゲートの外にあると判定した場合、ゲート内外判定部132は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データを選択する。
【0053】
信頼度判定工程S635において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データの信頼度を判定する。例えば、その航跡データが、新たに追尾を開始したばかりの目標についての航跡データであり、目標の状態量を推定するもとになった探知データが1つしかない場合、相関尤度計算部133は、その航跡データの信頼度が低いと判定する。逆に、その航跡データが、追尾を開始したばかりの目標についての航跡データではなく、目標の状態量を推定するもとになった探知データが2つ以上ある場合、相関尤度計算部133は、その航跡データの信頼度が高いと判定する。
航跡データの信頼度が高いと判定した場合、相関尤度計算部133は、追尾処理S600を第二尤度計算工程S637へ進める。
航跡データの信頼度が低いと判定した場合、相関尤度計算部133は、追尾処理S600を第一尤度計算工程S636へ進める。
【0054】
第一尤度計算工程S636(初期相関尤度計算工程)において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データが表わす目標と、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データが表わす目標とが同一の目標である相関尤度を算出する。航跡データの信頼度が低いので、相関尤度計算部133は、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出した目標の状態量の予測値と、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の相関尤度を算出する。例えば、相関尤度計算部133は、βFTとβNTとのうち大きいほうの値を、相関尤度とする。相関尤度計算部133は、記憶装置914を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データと、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データとの組に対応づけて、算出した相関尤度を記憶する。
相関尤度計算部133は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データをゲート内外判定部132が選択する。
【0055】
第二尤度計算工程S637(更新相関尤度計算工程)において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データが表わす目標と、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データが表わす目標とが同一の目標である相関尤度を算出する。航跡データの信頼度が高いので、相関尤度計算部133は、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出した目標の状態量の予測値と、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が大きいほど、小さい相関尤度を算出する。例えば、相関尤度計算部133は、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データが表わす目標の状態量の観測値を表わす縦ベクトルzと、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出した目標の状態量の予測値を表わす縦ベクトルzとの差ベクトル(z−z)を算出する。相関尤度計算部133は、正方行列Sの逆行列S−1に、算出した差ベクトル(z−z)を右から乗じ、算出した差ベクトル(z−z)の転置ベクトル(z−zを左から乗じることによって得られる実数値に−1/2を乗じた実数値を算出する。相関尤度計算部133は、算出した実数値によりネイピア数eを冪乗した実数値を算出する。相関尤度計算部133は、算出した実数値と、目標探知確率Pとの積を、円周率πの2倍により正方行列Sをスカラー倍した正方行列2πSの行列式の平方根で割った商である実数値を算出して、算出した実数値を相関尤度とする。相関尤度計算部133は、記憶装置914を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データと、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データとの組に対応づけて、算出した相関尤度を記憶する。
相関尤度計算部133は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データをゲート内外判定部132が選択する。
【0056】
航跡データ更新工程S660において、航跡データ更新部134は、処理装置911を用いて、第一尤度計算工程S636または第二尤度計算工程S637で相関尤度計算部133が算出した相関尤度に基づいて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データを更新する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、航跡データ更新部134が更新した航跡データを記憶する。
【0057】
航跡確立判定工程S670において、航跡確立判定部135は、処理装置911を用いて、航跡データ更新部134が更新した航跡データが確立されたか否かを判定する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、航跡データ更新部134が更新した航跡データとともに、航跡確立判定部135が判定した判定結果を記憶する。
航跡確立判定部135は、追尾処理S600を探知データ取得工程S610に戻し、次の時刻の探知データを探知データ取得部110が取得する。
【0058】
図5は、探知データの観測状況の一例を示す図である。
この図では、探知データが表わす目標の状態量の観測値を二次元的に表現している。
【0059】
状態量A1は、探知データ取得部110が取得した探知データのうち第一の観測時刻における探知データが表わす目標の状態量の観測値である。状態量A2,B2は、探知データ取得部110が取得した探知データのうち、第一の観測時刻の次の観測時刻である第二の観測時刻における探知データが表わす目標の状態量の観測値である。状態量A3は、探知データ取得部110が取得した探知データのうち第二の観測時刻の次の観測時刻である第三の観測時刻における探知データが表わす目標の状態量の観測値である。
航跡データ記憶部120は、状態量A1の目標が、新たに追尾を開始した新しい目標であるとして生成した航跡データを記憶しているものとする。ゲートG1は、その航跡データに基づいて、ゲート計算部131が算出した初期ゲートである。ゲートG1は、状態量A1を中心とする範囲である。
状態量A2,B2は、いずれもゲートG1のなかに入っている。したがって、第二の観測時刻までの探知データからは、航跡(A1,A2)が正しいのか、航跡(A1,B2)が正しいのか判定できない。
状態量A3は、状態量A1と状態量A2とを結ぶ線の延長上に近い。このため、第三の観測時刻までの探知データがあれば、航跡(A1,A2)が正しく、航跡(A1,B2)が間違っていると判定できる。
【0060】
図6は、この実施の形態における相関尤度計算部133が算出する相関尤度の一例を示すグラフ図である。
横軸は、探知データが表わす目標の状態量の観測値を一次元的に表現したものである。縦軸は、相関尤度を表わす。
細線で示した範囲701は、ゲートG1を表わす。実線で示した相関尤度711は、相関尤度計算部133が算出する相関尤度を表わす。破線で示した相関尤度712は、比較例における相関尤度計算部が算出する相関尤度を表わす。
【0061】
相関尤度計算部133は、状態量の差に関わらず、一定の相関尤度711を算出する。このため、状態量A2と状態量A1との差は、状態量B2と状態量A1との差より大きいが、相関尤度計算部133が状態量A2について算出する相関尤度は、状態量B2について算出する相関尤度と等しい。
これにより、第二の観測時刻までの探知データを探知データ取得部110が取得した時点において、航跡データ更新部134は、航跡(A1,A2)が正しい可能性と、航跡(A1,B2)が正しい可能性とがほぼ等しいと判断し、航跡(A1,A2)を表わす航跡データと、航跡(A1,B2)を表わす航跡データとを生成し、航跡データ記憶部120が、2つの航跡データを記憶する。
その後、第三の観測時刻における探知データを探知データ取得部110が取得して、航跡(A1,A2)が正しく、航跡(A1,B2)が間違っていると判断すると、航跡データ記憶部120は、航跡(A1,B2)を表わす航跡データを削除し、正しい航跡(A1,A2)を表わす航跡データだけが残る。
【0062】
これに対し、比較例における相関尤度計算部は、初期ゲートとそれ以外とを区別せず、初期ゲートに対しても、それ以外の場合と同様の計算式を用いて、相関尤度を算出する。比較例における相関尤度算出部は、状態量の差が大きいほど、小さい相関尤度を算出する。このため、比較例における相関尤度算出部が状態量A2について算出する相関尤度は、状態量B2について算出する相関尤度よりも小さい。状態量A2について算出した相関尤度が、βFTより小さい場合、航跡データ更新部134は、状態量A2の探知データを不要信号であると判断して、航跡(A1,A2)を表わす航跡データを生成せず、航跡(A1,B2)を表わす航跡データだけを生成する。したがって、第三の観測時刻における探知データを取得しても、正しい航跡(A1,A2)を追尾することができない。
【0063】
このように、この実施の形態における追尾装置100は、追尾の開始したばかりの新しい目標についての航跡データについては、状態量の予測値と観測値との差にかかわらず、ゲート内に入るすべての探知データに対して、一定の相関尤度を算出する。これにより、状態量の差が小さい探知データが誤って採用されるのを防ぐ。また、算出する相関尤度は、探知データが不要信号であると判定する尤度βFTより小さくないので、正しい探知データが誤って棄却されるのを防ぐ。また、その後の探知データにおいて相関決定の妥当性を再評価することにより、同一目標からの探知データを正しく解釈し、追尾を開始することができる。
これにより、目標を正しく追尾することができる。
【0064】
以上説明した追尾装置100は、レーダ等のセンサ801から得られた探知データのうち、いずれが目標でいずれが不要信号であるかを判断することにより、不要信号による誤航跡を排除しながら目標の航跡を推定し、目標を追尾する。
追尾装置100は、探知データ取得部110と、航跡データ記憶部120と、ゲート計算部131と、ゲート内外判定部132と、相関尤度計算部133と、航跡データ更新部134と、航跡確立判定部135とを有する。
前記探知データ取得部110は、時刻ごとにセンサ801から探知データを取得し、あるいはネットワークを介して探知データ情報を取得する。
前記航跡データ記憶部120は、航跡データを格納する。
前記ゲート計算部131は、前記航跡データから計算した航跡の予測位置に基づくゲートを計算する。
前記ゲート内外判定部132は、前記探知データが前記ゲート内に入るかどうかを判定する。
前記相関尤度計算部133は、前記航跡が初探知データのみから構成される場合は、前記探知データ取得部110によって取得された前記探知データ情報に基づいて第二探知データとの相関尤度を計算し、前記航跡が初探知データ以降の探知データからも構成される場合は、前記航跡の予測位置に基づいて、前記ゲート内に入る探知データとの相関尤度を計算する。
前記航跡データ更新部134は、前記探知データと航跡との相関尤度と、前記探知データが不要信号であることの相関尤度と、前記探知データが新目標であることの相関尤度を基に、探知データと航跡の組合せである相関を決定するとともに、前記航跡データを更新する。
前記航跡確立判定部135は、前記航跡データ更新部134が更新した航跡データから、目標を正確に追尾している可能性の高い航跡を確立させる。
【0065】
航跡データの信頼度が低い場合、ゲート計算部131が算出する目標の状態量の予測値は、あり得る可能性を平均したものであるから、観測値が予測値に近いほど相関尤度が高いというわけではない。そこで、目標の探知データ(第二探知データ)がゲート(初期ゲート)内に一様に存在すると仮定し、一定の相関尤度を算出する。これにより、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0066】
前記相関尤度計算部133は、前記探知データが不要信号であることの相関尤度と、前記探知データが新目標であることの相関尤度とのうち、いずれか大きい値を第二探知データとの相関尤度として設定する。
【0067】
これにより、探知データが、誤って、不要信号であると判定されて棄却されたり、新目標であると判定されたりするのを防ぎ、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0068】
実施の形態2.
実施の形態2について、図7を用いて説明する。
なお、実施の形態1と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
この実施の形態における追尾システム800及び追尾装置100の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0070】
探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、目標の位置と概略速度とを状態量とする観測値を表わす探知データを取得する。
航跡データ記憶部120(航跡記憶部)は、記憶装置914を用いて、目標の位置と速度とを状態量とする推定値を表わす航跡データを記憶する。
ゲート計算部131(予測部)は、処理装置911を用いて、航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、探知データの観測時刻におけるその目標の位置と速度との予測値を算出する。ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、算出した目標の位置と速度との予測値を中心とするゲートを算出する。例えば、目標の速度が一定であるとの仮定に基づいて、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、航跡データが表わす目標の速度の推定値を、探知データの観測時刻における目標の速度の予測値とする。
相関尤度計算部133(尤度算出部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、ゲート計算部131が算出したゲートに入る探知データについて、相関尤度を算出する。
【0071】
航跡データ更新部134(相関部、更新部、新規目標判定部、新規航跡生成部、不要信号判定部)は、処理装置911を用いて、相関尤度計算部133が算出した相関尤度に基づいて、探知データが、いずれかの航跡データが表わす目標と同じ目標を表わすか、新たに探知された目標を表わすか、不要信号であるかを判定する。
探知データが新たに探知された目標であると判定した場合、航跡データ更新部134は、処理装置911を用いて、新たな目標を表わす航跡データを生成する。例えば、航跡データ更新部134は、探知データが表わす目標の位置と概略速度との観測値を、目標の位置と速度との推定値とする航跡データを生成する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、航跡データ更新部134が生成した航跡データを記憶する。
【0072】
航跡データが、追尾を開始したばかりの新しい目標を表わす場合など、航跡データの信頼度が低い場合、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、探知データが表わす目標の位置の観測値と、ゲート計算部131が算出した目標の位置の予測値との間の距離の時間変化率が、概略速度相当であるか否かを判定する。
距離の時間変化率が概略速度相当であると判定した場合、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、観測された目標の位置と予測された目標の位置との間の距離に関わらず、一定の相関尤度を算出する。
距離の時間変化率が概略速度相当でないと判定した場合、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、観測された目標の位置と予測された目標の位置との間の距離に関わらず、距離の時間変化率と概略速度との差を変数とする単調減少関数を用いて、相関尤度を算出する。
【0073】
例えば、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、次の式で表わされる縦ベクトルuを算出する。
【0074】
u=(x−x)/ΔT−(v+v)/2
【0075】
ただし、xは、縦ベクトルであり、探知データが表わす目標の位置の観測値を表わす。xは、縦ベクトルxと同じ次元を有する縦ベクトルであり、追尾データが表わすその目標の位置の推定値を表わす。その目標が追尾を開始したばかりの新しい目標である場合、xは、例えば、前回観測されたその目標の位置の観測値を表わす。ΔTは、正の実数であり、その目標が前回観測された時刻から探知データが表わす目標の観測時刻までの経過時間を表わす。vは、縦ベクトルxと同じ次元を有する縦ベクトルであり、探知データが表わす目標の速度の観測値を表わす。vは、縦ベクトルxと同じ次元を有する縦ベクトルであり、追尾データが表わすその目標の速度の推定値を表わす。その目標が追尾を開始したばかりの新しい目標である場合、vは、例えば、前回観測されたその目標の速度の観測値を表わす。
【0076】
相関尤度計算部133は、算出した縦ベクトルuに基づいて、次の式で表わされる実数値gを算出する。
【0077】
=u−1
【0078】
ただし、Sは、縦ベクトルuと同じ次元を有する正方行列である。
【0079】
算出した実数値gが所定の閾値より小さい場合、相関尤度計算部133は、次の式で表わされる相関尤度を算出する。
【0080】
g=max{βFT,βNT
【0081】
また、算出した実数値gは所定の閾値より大きい場合、相関尤度計算部133は、次の式で表わされる相関尤度を算出する。
【0082】
g=P/√[det(2πS)]・exp(−1/2・g
【0083】
図7は、この実施の形態における第一尤度計算工程S636の流れの一例を示すフローチャート図である。
第一尤度計算工程S636において、相関尤度計算部133は、航跡データの信頼度が低い場合における相関尤度を算出する。第一尤度計算工程S636は、例えば、速度差算出工程S681と、判定値算出工程S682と、2つの尤度算出工程S683,S684とを有する。
【0084】
速度差算出工程S681において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、縦ベクトルuを算出する。例えば、相関尤度計算部133は、探知データが表わす目標の位置の観測値を表わす縦ベクトルxと追尾データが表わす目標の位置の推定値を表わす縦ベクトルxとの差を経過時間ΔTの逆数でスカラー倍した縦ベクトルから、探知データが表わす目標の速度の観測値を表わす縦ベクトルvと追尾データが表わす目標の速度の推定値を表わす縦ベクトルvとの平均を差し引いた差ベクトルを算出して、算出した差ベクトルを縦ベクトルuとする。
【0085】
判定値算出工程S682において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、速度差算出工程S681で算出した縦ベクトルuに基づいて、値gを算出する。例えば、相関尤度計算部133は、正方行列Sの逆行列S−1に、縦ベクトルuを右から乗じ、縦ベクトルuを転置した横ベクトルuを左から乗じた実数値を算出して、算出した実数値を値gとする。
算出した値gが所定の閾値より小さい場合、相関尤度計算部133は、第一尤度計算工程S636を、尤度算出工程S683へ進める。
算出した値gが所定の閾値より大きい場合、相関尤度計算部133は、第一尤度計算工程S636を、尤度算出工程S684へ進める。
【0086】
尤度算出工程S683において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、相関尤度を算出する。例えば、相関尤度計算部133は、βFTとβNTとのうち大きいほうの値を、相関尤度とする。相関尤度計算部133は、第一尤度計算工程S636を終了する。
【0087】
尤度算出工程S684において、相関尤度計算部133は、処理装置911を用いて、相関尤度を算出する。例えば、相関尤度計算部133は、判定値算出工程S682で算出した値gに−1/2を乗じた実数値を算出する。相関尤度計算部133は、算出した実数値によりネイピア数eを冪乗した実数値を算出する。相関尤度計算部133は、算出した実数値と、目標探知確率Pとの積を、円周率πの2倍により正方行列Sをスカラー倍した正方行列2πSの行列式の平方根で割った商である実数値を算出して、算出した実数値を相関尤度とする。
【0088】
この実施の形態における追尾装置100において、
前記相関尤度計算部133は、初探知データと第二探知データとの距離の時間変化率が前記目標の概略速度相当であれば、第二探知データとの相関尤度をある数値として設定し、それ以外であれば、前記距離の時間変化率と前記概略速度との差を変数とする単調減少関数で第二探知データとの相関尤度を計算する。
【0089】
これにより、観測状況によって第二探知データに対する相関尤度を適応的に制御するので、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0090】
実施の形態3.
実施の形態3について、説明する。
なお、実施の形態1または実施の形態2と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0091】
この実施の形態における追尾システム800及び追尾装置100の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0092】
探知データ取得部110は、入力装置912を用いて、目標の位置と概略速度とを状態量とする観測値を表わす探知データを取得する。
航跡データ記憶部120(航跡記憶部)は、記憶装置914を用いて、目標の位置と速度とを状態量とする推定値を表わす航跡データを記憶する。
【0093】
相関尤度計算部133(尤度算出部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、航跡データの信頼度を判定する。相関尤度計算部133は、航跡データが、追尾を開始したばかりの新しい目標を表わし、かつ、推定された目標の速度が所定の閾値より大きい場合に、その航跡データの信頼度が低いと判定する。
相関尤度計算部133は、航跡データの信頼度の判定結果にしたがって、相関尤度を算出する。相関尤度の算出式は、例えば、実施の形態1や実施の形態2で説明した式と同様である。
【0094】
この実施の形態における追尾装置100において、
前記相関尤度計算部133は、前記目標の概略速度が予め定めた閾値以上であれば、第二探知データとの相関尤度をある数値として設定し、それ以外であれば、初探知データと第二探知データとの距離変数とする単調減少関数で第二探知データとの相関尤度を計算する。
【0095】
これにより、観測状況によって第二探知データに対する相関尤度を適応的に制御するので、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0096】
実施の形態4.
実施の形態4について、説明する。
なお、実施の形態1〜実施の形態3と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0097】
この実施の形態における追尾システム800及び追尾装置100の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0098】
相関尤度計算部133(尤度算出部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、航跡データの信頼度を判定する。相関尤度計算部133は、航跡データが、追尾を開始したばかりの新しい目標を表わし、かつ、推定された目標の位置とセンサ801との間の距離が、所定の閾値より大きい場合に、その航跡データの信頼度が低いと判定する。
相関尤度計算部133は、航跡データの信頼度の判定結果にしたがって、相関尤度を算出する。相関尤度の算出式は、例えば、実施の形態1や実施の形態2で説明した式と同様である。
【0099】
この実施の形態における追尾装置100において、
前記相関尤度計算部133は、前記初探知データのセンサ801からの距離が予め定めた閾値以上であれば、第二探知データとの相関尤度をある数値として設定し、それ以外であれば、初探知データと第二探知データとの距離変数とする単調減少関数で第二探知データとの相関尤度を計算する。
【0100】
これにより、観測状況によって第二探知データに対する相関尤度を適応的に制御するので、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0101】
実施の形態5.
実施の形態5について、説明する。
【0102】
なお、実施の形態1〜実施の形態4と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
この実施の形態における追尾システム800及び追尾装置100の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0104】
相関尤度計算部133(尤度算出部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、航跡データの信頼度を判定する。相関尤度計算部133は、航跡データが、追尾を開始したばかりの新しい目標を表わし、かつ、その目標が前回観測された時刻から探知データが表わす目標の観測時刻までの経過時間が、所定の閾値より長い場合に、その航跡データの信頼度が低いと判定する。
相関尤度計算部133は、航跡データの信頼度の判定結果にしたがって、相関尤度を算出する。相関尤度の算出式は、例えば、実施の形態1や実施の形態2で説明した式と同様である。
【0105】
この実施の形態における追尾装置100において、
前記相関尤度計算部133は、前記初探知データと第二探知データとの観測時刻差が予め定めた閾値以上であれば、第二探知データとの相関尤度をある数値として設定し、それ以外であれば、初探知データと第二探知データとの距離変数とする単調減少関数で第二探知データとの相関尤度を計算する。
【0106】
これにより、観測状況によって第二探知データに対する相関尤度を適応的に制御するので、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
【0107】
なお、相関尤度計算部133は、実施の形態1〜実施の形態5で説明した判定基準を複合した判定基準により、航跡データの信頼度を判定する構成であってもよい。
【0108】
前記相関尤度計算部133は、前記航跡が初探知データのみから構成される場合は、前記探知データ取得部110によって取得された前記探知データ情報のうち、目標の概略速度、初探知データのセンサからの距離、初探知データと第二探知データとの観測時刻差の中からいくつかに基づいて、第二探知データとの相関尤度を設定し、あるいは計算する。
【0109】
実施の形態6.
実施の形態6について、図8〜図10を用いて、説明する。
なお、実施の形態1〜実施の形態5と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0110】
この実施の形態における追尾システム800及び追尾装置100の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0111】
図8は、この実施の形態における航跡データ更新部134の構成の一例を示す詳細ブロック図である。
航跡データ更新部134は、例えば、相関部141と、更新部142と、新目標選択部143と、新規航跡生成部144とを有する。
【0112】
相関部141は、処理装置911を用いて、相関尤度計算部133が算出した相関尤度に基づいて、探知データが表わす目標と、追尾データが表わす目標とが同一の目標であるか否かを判定する。
更新部142は、処理装置911を用いて、相関部141の判定結果に基づいて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データを更新する。
新目標選択部143(新規目標判定部、信頼度判定部)は、処理装置911を用いて、相関尤度計算部133が算出した相関尤度などに基づいて、探知データ取得部110が取得した探知データが、新たに探知した目標であるか否かを判定する。
新規航跡生成部144は、処理装置911を用いて、新目標選択部143の判定結果に基づいて、新たな航跡データを生成する。航跡データ記憶部120は、記憶装置914を用いて、新規航跡生成部144が生成した航跡データを記憶する。
【0113】
新目標選択部143は、処理装置911を用いて、航跡データの信頼度(確度)を判定する。あるいは、新目標選択部143は、相関尤度計算部133が判定した航跡データの信頼度を取得して利用する構成であってもよい。逆に、新目標選択部143が判定した航跡データの信頼度を、相関尤度計算部133が取得して利用する構成であってもよい。
新目標選択部143は、処理装置911を用いて、航跡データの信頼度が高いと判定した場合、その航跡データが表わす目標と探知データが表わす目標とが同一の目標である相関尤度が高いか低いかを判定する。例えば、新目標選択部143は、相関尤度計算部133が算出した相関尤度を所定の閾値と比較する。相関尤度が閾値より大きい場合、新目標選択部143は、その相関尤度が高いと判定する。相関尤度が閾値より小さい場合、新目標選択部143は、その相関尤度が低いと判定する。
相関尤度が高いと判定した場合、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、その探知データが表わす目標が、新たに探知した目標ではないと判定する。新目標選択部143は、相関尤度が高いと判定した航跡データがある場合に、その探知データが、新たに探知した目標を表わすものではないと判定する。
新目標選択部143は、処理装置911を用いて、相関尤度が高いと判定した航跡データが一つもない場合に、その探知データが、新たに探知した目標を表わす可能性があると判定する。新目標選択部143は、新たに探知した目標を表わす可能性があると判定した探知データについて、更に、その探知データが、新たに探知した目標を表わすか否かを判定する。
【0114】
目標を追尾している可能性が高いと判断できる航跡は、その航跡のゲートに含まれる探知データのうち高々1個が目標である可能性が高い。このとき、その航跡との相関尤度の高い探知データは、目標が途中で分離することを考えないものとすると、その探知データはその航跡により追尾中の目標であるか、不要信号であり、新目標ではない。そこで、探知データのうちいくつかを新目標ではないと判定することにより、正解と異なる無駄な相関の可能性を排除する。
【0115】
図9は、この実施の形態における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図である。
追尾処理S600は、実施の形態1で説明した工程に加えて、更に、初期化工程S620と、信頼度判定工程S641と、尤度判定工程S642と、判定記憶工程S643とを有する。
【0116】
探知データ取得工程S610の終了後、探知データ取得部110は、追尾処理S600を初期化工程S620へ進める。
【0117】
初期化工程S620において、新目標選択部143は、記憶装置914を用いて、探知データ取得工程S610で探知データ取得部110が取得したそれぞれの探知データについて、その探知データが、新たに探知した目標を表わす可能性があることを表わすデータ(「新目標の可能性あり」データ)を記憶する。
新目標選択部143は、追尾処理S600を航跡選択工程S631へ進める。
【0118】
第一尤度計算工程S636の終了後、または、第二尤度計算工程S637の終了後、相関尤度計算部133は、追尾処理S600を信頼度判定工程S641へ進める。
【0119】
信頼度判定工程S641において、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データの信頼度が高いか低いかを判定する。
航跡データの信頼度が高いと判定した場合、新目標選択部143は、追尾処理S600を尤度判定工程S642へ進める。
航跡データの信頼度が低いと判定した場合、新目標選択部143は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データをゲート内外判定部132が選択する。
【0120】
尤度判定工程S642において、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、第一尤度計算工程S636または第二尤度計算工程S637で相関尤度計算部133が算出した相関尤度が大きいか小さいかを判定する。
相関尤度が大きいと判定した場合、新目標選択部143は、追尾処理S600を判定記憶工程S643へ進める。
相関尤度が小さいと判定した場合、新目標選択部143は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データをゲート内外判定部132が選択する。
【0121】
判定記憶工程S643において、新目標選択部143は、初期化工程S620で記憶したデータのうち、探知データ選択工程S633でゲート内外判定部132が選択した探知データについてのデータを書き換えて、その探知データが、新たに探知した目標を表わすものではないことを表わすデータ(「新目標の可能性なし」データ)を記憶する。
新目標選択部143は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻し、次の探知データをゲート内外判定部132が選択する。
【0122】
航跡データ更新工程S660において、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、探知データ取得工程S610で探知データ取得部110が取得したそれぞれの探知データについて、その探知データについて記憶したデータが、初期化工程S620で記憶した「新目標の可能性あり」データのままか、判定記憶工程S643で記憶した「新目標の可能性なし」データに書き換えられているかを判定する。「新目標の可能性なし」データに書き換えられている場合、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、その探知データが、新たに探知した目標ではないと判定する。「新目標の可能性あり」データのままである場合、新目標選択部143は、処理装置911を用いて、その探知データについて、新たに探知した目標を表わすか否かを判定する。
【0123】
なお、信頼度判定工程S641において信頼度が高いか低いかを判定する基準は、信頼度判定工程S635において信頼度が高いか低いかを判定する基準と同じであってもよいし、異なっていてもよい。信頼度の判定基準が同じである場合、信頼度判定工程S641は、なくてもよい。その場合、第一尤度計算工程S636の終了後、相関尤度計算部133は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633に戻す。また、第二尤度計算工程S637の終了後、相関尤度計算部133は、追尾処理S600を尤度判定工程S642へ進める。
【0124】
信頼度判定工程S641における信頼度の判定基準には、実施の形態1〜実施の形態5で説明した相関尤度計算部133における判定基準のほか、例えば、次のような判定基準がある。
【0125】
複数の仮説に基づく航跡データを航跡データ記憶部120が記憶している場合において、その時点で一番信頼度が高い仮説に基づく航跡データを、信頼度が高いと判定し、それ以外の航跡データを、信頼度が低いと判定する。
【0126】
その航跡データを構成する探知データの数(更新部142が探知データを用いて航跡データを更新した回数)が所定の閾値(例えば3個)より大きい場合に、信頼度が高いと判定し、探知データの数(更新回数)が所定の閾値より小さい場合に、信頼度が低いと判定する。
【0127】
航跡確立判定部135が確立していると判定した航跡データを、信頼度が高いと判定し、それ以外の航跡データを、信頼度が低いと判定する。
【0128】
なお、相関尤度計算部133が、これらの判定基準に基づいて、航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、判定した結果に基づいて、相関尤度を算出する構成であってもよい。
【0129】
また、尤度判定工程S642において相関尤度が大きいか小さいかを判定する基準は、所定の閾値より大きいか小さいかによって判定する判定基準のほか、例えば、次のような判定基準がある。
【0130】
1つの航跡データに対して、相関尤度を算出した探知データのなかで、相関尤度が最大である場合に、その航跡データが表わす目標とその探知データが表わす目標とが同一の目標である相関尤度が高いと判定し、それ以外の場合に、相関尤度が低いと判定する。
【0131】
1つの航跡データに対して、相関尤度を算出した探知データのなかで、相関尤度が大きい順に並べて、上位第N位(例えば第2位)以内に入る場合に、その航跡データが表わす目標とその探知データが表わす目標とが同一の目標である相関尤度が高いと判定し、それ以外の場合に、相関尤度が低いと判定する。
【0132】
図10は、探知データの観測状況の一例を示す図である。
【0133】
探知データA,B,C,Dは、同時刻に観測された探知データである。
航跡T1は、探知データ数が5個である。ゲート計算部131は、航跡T1のゲートを算出する。ゲート内外判定部132は、そのゲートに、3つの探知データA,B,Cが入っていると判定する。相関尤度計算部133は、航跡T1と探知データAとの相関尤度を「1.0」、航跡T1と探知データBとの相関尤度を「0.5」、航跡T1と探知データCとの相関尤度を「0.2」と算出する。
航跡T2は、探知データ数が2個である。ゲート計算部131は、航跡T2のゲートを算出する。ゲート内外判定部132は、そのゲートに、3つの探知データB,C,Dが入っていると判定する。相関尤度計算部133は、航跡T2と探知データBとの相関尤度を「0.3」、航跡T2と探知データCとの相関尤度を「0.1」、航跡T2と探知データDとの相関尤度を「0.5」と算出する。
【0134】
このような状況において、航跡データの信頼度判定基準が「探知データ数3個以上のとき、信頼度が高いと判定」であるとすると、新目標選択部143は、航跡T1の信頼度が高いと判定し、航跡T2の信頼度が低いと判定する。
また、相関尤度の大小判定基準が「上位第2位までを、相関尤度が大きいと判定」であるとすると、新目標選択部143は、航跡T1について、2つの探知データA,Bの相関尤度が大きいと判定し、航跡T2について、2つの探知データB,Dの相関尤度が大きいと判定する。
この場合、新目標選択部143は、信頼度が高いと判定した航跡T1について、相関尤度が大きいと判定した2つの探知データA,Bを「新目標の可能性なし」と判定し、それ以外の2つの探知データC,Dを「新目標の可能性あり」と判定する。
【0135】
このようにして、探知データが新目標である可能性があるか否かを判定することにより、探知データが新目標であるか否かを判定するのに必要な処理を減らし、判定にかかる時間を短縮することができる。また、これにより、仮説の数が減るので、どの仮説が正しいかを判定するのに必要な処理を減らし、判定にかかる時間を短縮することができる。
【0136】
この実施の形態における追尾装置100は、新目標選択部143を有する。
前記新目標選択部143は、前記航跡データ記憶部に格納された航跡から目標を追尾している確度の高い航跡を選択し、選択した航跡のゲート内に入る探知データのうち、新目標である可能性を排除する探知データを選択する。
前記航跡データ更新部134は、前記新目標選択部が前記探知データを選択した結果に基づいて相関を決定する。
【0137】
前記新目標選択部143は、前記確度の高い航跡として、前記相関の可能性である仮説のうち、信頼度が最上位の仮説に含まれている航跡を選択する。
【0138】
前記新目標選択部143は、前記確度の高い航跡として、構成する探知データの個数が、予め定めた閾値以上である航跡を選択する。
【0139】
前記新目標選択部143は、前記確度の高い航跡として、前記航跡確立判定部135で確立航跡と判定されている航跡を選択する。
【0140】
前記新目標選択部143は、前記新目標である可能性を排除する探知データとして、相関尤度が最大である探知データを選択する。
【0141】
前記新目標選択部143は、前記新目標である可能性を排除する探知データとして、予め定めた自然数Nについて、相関尤度の上位第N位までに含まれる探知データを選択する。
【0142】
このように、確度の高い航跡のゲートに含まれる探知データのうちいくつかを新目標とみなさないことにより、正解と異なる無駄な相関の可能性を排除する。これにより、正しい相関決定を実施するための追尾装置100の処理負荷を低減することができる。
【0143】
なお、探知データ取得部110が取得した探知データから、目標が途中で分離したか否かを判定できる場合、追尾装置100は、その判定結果に基づいて、目標が途中で分離したことを仮定する構成であってもよい。例えば、目標が分離している観測状況であれば、確度の高い航跡のゲートに含まれる探知データのうち、相関尤度が高いものを既追尾目標、もしくは新目標とみなし、不要信号とみなさないような構成であってもよい。
【0144】
前記航跡データ更新部134は、前記航跡データ記憶部120に格納された航跡のうちいくつかを選択し、前記選択した航跡のゲート内に入る探知データのいくつかについて、既追尾目標である可能性、不要信号である可能性、新目標である可能性のうちいずれかを予め排除した上で相関を決定する。
【0145】
実施の形態7.
実施の形態7について、図11〜図13を用いて、説明する。
なお、実施の形態1〜実施の形態6と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0146】
この実施の形態における追尾システム800の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0147】
図11は、この実施の形態における追尾装置100の構成の一例を示すブロック図である。
追尾装置100は、実施の形態1で説明した構成に加えて、更に、航跡優先度設定部136と、ゲート領域記憶部137とを有する。
【0148】
航跡優先度設定部136(信頼度算出部)は、処理装置911を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡群521に基づいて、航跡群521に含まれる航跡データそれぞれの優先度(信頼度)を算出する。航跡優先度設定部136は、処理装置911を用いて、算出した航跡優先度535を出力する。
【0149】
ゲート計算部131(予測部)は、処理装置911を用いて、航跡優先度設定部136が算出した航跡優先度535に基づいて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡群521に含まれる航跡データについて、航跡優先度535が高い順に、ゲートを計算する。
【0150】
ゲート領域記憶部137は、記憶装置914を用いて、ゲート計算部131が計算したゲートを記憶する。
【0151】
ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、ゲート計算部131が計算したゲートに基づいて、探知データ512がそのゲートに入っているか否かを判定する。ただし、ゲート内外判定部132は、ゲート領域記憶部137が記憶したゲートに基づいて、航跡優先度設定部136が算出した優先度がその航跡データよりも高い航跡データについてゲート計算部131が計算したゲートに入っている探知データ512については、ゲートに入っていないと判定する。すなわち、ゲート内外判定部132は、ある航跡データのゲートに入っていると判定した探知データについて、その航跡データよりも優先度が低い航跡データのゲートには入っていないと判定する。なお、ゲート内外判定部132は、1つの探知データが、優先度が同じ複数の航跡データのゲートに入っていると判定する場合がある。
【0152】
初探知データのみから構成される航跡など、目標を追尾していることを判断できない航跡は、ゲートを拡大することで、ゲート内に目標の探知データを確実に捕捉し、目標追尾を開始できる。しかし、ゲートを拡大すると、目標を追尾している可能性が高い航跡の探知データもゲート内に含まれてしまう。目標を追尾している可能性の高い航跡のゲートに含まれる探知データは、その航跡により追尾中の目標である可能性が高いため、目標を追尾していることを判断できない航跡との相関の可能性を考えることは無駄である。そこで、ゲート内外判定処理を優先度の高い順に実行することで、正解と異なる無駄な相関の可能性を排除する。
【0153】
図12は、この実施の形態における追尾処理S600の流れの一例を示すフローチャート図である。
追尾処理S600は、実施の形態1で説明した工程に加えて、更に、航跡優先度設定工程S615と、初期化工程S625と、優先度判定工程S651と、領域更新工程S652と、領域記憶工程S653とを有する。
【0154】
探知データ取得工程S610の終了後、探知データ取得部110は、追尾処理S600を航跡優先度設定工程S615へ進める。
【0155】
航跡優先度設定工程S615において、航跡優先度設定部136は、処理装置911を用いて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データそれぞれについて、その航跡データの優先度を算出する。航跡優先度設定部136は、記憶装置914を用いて、算出した優先度を記憶する。
【0156】
初期化工程S625において、ゲート領域記憶部137は、処理装置911を用いて、ゲート領域として設定済の設定済領域と、ゲート領域から除外する除外領域とを初期化し、記憶装置914を用いて、設定済領域及び除外領域がないことを記憶する。
ゲート領域記憶部137は、追尾処理S600を航跡選択工程S631へ進める。
【0157】
航跡選択工程S631において、ゲート計算部131は、処理装置911を用いて、航跡優先度設定工程S615で航跡優先度設定部136が算出した優先度に基づいて、航跡データ記憶部120が記憶した航跡データのうち、まだ選択していない航跡データのなかから、優先度が最も高い航跡データを選択する。
すべての航跡データが選択済であり、選択すべき航跡データが存在しない場合、ゲート計算部131は、追尾処理S600を航跡データ更新工程S660へ進める。
まだ選択していない航跡データが存在する場合、ゲート計算部131は、まだ選択していない航跡データのなかから、優先度が最も高い航跡データを1つ選択する。優先度が最も高い航跡データが複数存在する場合、ゲート計算部131は、そのなかから1つの航跡データを選択する。ゲート計算部131は、追尾処理S600を優先度判定工程S651へ進める。
【0158】
優先度判定工程S651において、ゲート領域記憶部137は、処理装置911を用いて、航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データについて航跡優先度設定工程S615で航跡優先度設定部136が算出した優先度が、前回の航跡選択工程S631でゲート計算部131が選択した航跡データについて航跡優先度設定工程S615で航跡優先度設定部136が算出した優先度よりも低いか否かを判定する。
優先度が低くなったと判定した場合、ゲート領域記憶部137は、追尾処理S600を領域更新工程S652へ進める。
優先度が変わらず、同じであると判定した場合、ゲート領域記憶部137は、追尾処理S600をゲート計算工程S632へ進める。
【0159】
領域更新工程S652において、ゲート領域記憶部137は、記憶装置914を用いて、除外領域を更新する。ゲート領域記憶部137は、後述する領域記憶工程S653で記憶した設定済領域を除外領域として記憶する。
ゲート領域記憶部137は、追尾処理S600をゲート計算工程S632へ進める。
【0160】
ゲート計算工程S632の終了後、ゲート計算部131は、追尾処理S600を領域記憶工程S653へ進める。
【0161】
領域記憶工程S653において、ゲート領域記憶部137は、記憶装置914を用いて、記憶している設定済領域に、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出したゲートに含まれる領域を追加して記憶する。ゲート領域記憶部137は、追尾処理S600を探知データ選択工程S633へ進める。
【0162】
ゲート内外判定工程S634において、ゲート内外判定部132は、処理装置911を用いて、探知データ選択工程S633で選択した探知データが、ゲート計算工程S632でゲート計算部131が算出したゲートのなかに入っているか否かを判定する。ただし、領域更新工程S652でゲート領域記憶部137が記憶した除外領域のなかに探知データが入っている場合、ゲート内外判定部132は、探知データがゲートのなかに入っていないと判定する。
【0163】
なお、航跡優先度設定工程S615における優先度が高いか低いかを判定する基準は、例えば、実施の形態1〜実施の形態6で説明した信頼度の判定基準と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
航跡優先度設定工程S615における優先度の判定基準には、例えば、次のようなものがある。
【0164】
複数の仮説に基づく航跡データを航跡データ記憶部120が記憶している場合において、その時点における仮説の信頼度にしたがって、仮説の信頼度の高いほど、その仮説に基づく航跡データには、高い優先度を算出し、仮説の信頼度の低いほど、その仮説に基づく航跡データには、低い優先度を算出する。なお、1つの航跡データが複数の仮説に含まれる場合、例えば、複数の仮説のなかで最も信頼度が高い仮説にしたがって、優先度を算出する。
【0165】
その航跡データを構成する探知データの数(航跡データ更新部134が探知データを用いて航跡データを更新した回数)にしたがって、探知データの数が多いほど、その航跡データには、高い優先度を算出し、探知データの数が少ないほど、その航跡データには、低い優先度を算出する。
【0166】
航跡確立判定部135が確立していると判定した航跡データには、高い優先度を算出する。
【0167】
追尾を開始したばかりの新しい目標を表わす航跡データには、低い優先度を算出する。
【0168】
航跡において目標が探知されなかったと解釈された回数にしたがって、その回数が少ない航跡データには、高い優先度を算出し、その回数が多い航跡データには、低い優先度を算出する。例えば、センサ801の観測周期を1つの期間とし、その期間内に観測時刻が入る探知データのなかに、航跡データ更新部134が航跡データの更新に使った探知データがなければ、航跡優先度設定部136は、その期間において目標が探知されたなかったと判定する。航跡優先度設定部136は、目標が探知されなかったと判定した期間の数を数えて、目標が探知されなかった回数とする。
【0169】
なお、相関尤度計算部133が、これらの判定基準に基づいて、航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、判定した結果に基づいて、相関尤度を算出する構成であってもよい。
また、実施の形態6で説明した新目標選択部143が、これらの判定基準に基づいて、航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、判定した結果に基づいて、新目標の可能性があるか否かを判定する構成であってもよい。
【0170】
図13は、探知データの観測状況の一例を示す図である。
探知データA,B,C,Dは、同時刻に観測された探知データである。
航跡T1は、探知データ数が5個である。航跡T2は、探知データ数が2個である。
【0171】
航跡データの優先度判定基準が「探知データ数が多いほうが優先度が高い」であるとすると、航跡優先度設定部136は、航跡T1のほうが航跡T2よりも優先度が高いと判定する。
ゲート計算部131は、航跡T1のゲートを算出する。ゲート内外判定部132は、そのゲートに、3つの探知データA,B,Cが入っていると判定する。
ゲート計算部131は、航跡T2のゲートを算出する。そのゲートは、航跡T2より優先度が高い航跡T1のゲートと重なっているので、ゲート内外判定部132は、そのゲートから航跡T1のゲートを除外した領域(斜線の領域)に入っている探知データDを、ゲートに入っていると判定し、探知データB,Cは、ゲートに入っていないと判定する。
【0172】
この実施の形態における追尾装置100は、航跡優先度設定部136と、ゲート領域記憶部137とを有する。
前記ゲート領域記憶部137は、ゲート設定領域を格納する。
前記航跡優先度設定部136は、前記航跡データ記憶部120に格納された航跡に優先度を設定する。
前記ゲート計算部131は、前記ゲート領域記憶部137に格納されているゲート設定領域の範囲で、前記優先度の高い順に航跡のゲートを計算し、前記ゲート領域記憶部137に格納されている前記ゲート設定領域から、同じ優先度を持つ航跡のゲート領域を削除する。
【0173】
前記航跡優先度設定部136は、前記優先度として、前記相関の可能性である仮説のうち、仮説信頼度の高い順に航跡優先度を設定する。
【0174】
前記航跡優先度設定部136は、前記優先度として、前記航跡を構成する探知データの個数の多い順に航跡優先度を設定する。
【0175】
前記航跡優先度設定部136は、前記優先度の高い順に、前記航跡確立判定部135で確立航跡と判定されている航跡群、確立航跡ではないが2個以上の探知データから構成される航跡群、初探知データのみから構成させる航跡群、となるように航跡優先度を設定する。
【0176】
前記航跡優先度設定部136は、前記優先度として、前記航跡において目標が探知されなかったと解釈された回数の少ない順に航跡優先度を設定する。
【0177】
このように、確度の高い航跡を優先してゲート内外判定処理を実行することで、確度の低い航跡の相関の可能性を限定し、正解と異なる無駄な相関の可能性を排除する。これにより、正しい相関決定を実施するための追尾装置の処理負荷を低減することができる。
【0178】
以上各実施の形態で説明した構成は一例であり、追尾装置100は、これと異なる構成であってもよい。例えば、異なる実施の形態で説明した構成を組み合わせた構成であってもよいし、本質的でない部分の構成を他の構成で置き換えた構成であってもよい。
【0179】
以上説明した追尾装置(100)は、探知データ取得部(110)と、航跡記憶部(航跡データ記憶部120)と、予測部(ゲート計算部131)と、尤度算出部(相関尤度計算部133)と、相関部(141;航跡データ更新部134)と、更新部(142;航跡データ更新部134)と、信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)とを有する。
上記探知データ取得部は、センサ(801)が観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得する。
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶する。
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出する。
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出する。
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定する。
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新する。
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定する。
上記尤度算出部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出する。
【0180】
上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶する航跡データは、目標の位置と速度とを含む状態量の推定値を表わす。
上記探知データ取得部(110)が取得する探知データは、目標の位置を含む状態量の観測値を表わす。
上記予測部(ゲート計算部131)は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の位置の予測値を算出する。
上記更新部(142;航跡データ更新部134)は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部(141;航跡データ更新部134)が判定した場合に、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値とに基づいて、上記航跡データを更新する。
上記尤度算出部(相関尤度計算部133)は、信頼度が高いと上記信頼度判定部(相関尤度計算部133)が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が予測した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出する。
【0181】
上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶する航跡データは、目標の位置と速度とを含む状態量の推定値を表わす。
上記探知データ取得部(110)が取得する探知データは、目標の位置と速度とを含む状態量の観測値を表わす。
上記予測部(ゲート計算部131)は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の位置の予測値を算出する。
上記更新部(142;航跡データ更新部134)は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部(141;航跡データ更新部134)が判定した場合に、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値と、上記探知データが表わす目標の位置と速度との観測値とに基づいて、上記航跡データを更新する。
上記尤度算出部(相関尤度計算部133)は、信頼度が高いと上記信頼度判定部(相関尤度計算部133)が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置の推定値と上記探知データが表わす目標の位置の観測値とに基づいて上記目標の速度を算出し、算出した速度と上記探知データが表わす目標の速度の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出する。
【0182】
追尾装置100は、探知データ取得部(110)と、航跡記憶部(航跡データ記憶部120)と、予測部(ゲート計算部131)と、尤度算出部(相関尤度計算部133)と、相関部(141;航跡データ更新部134)と、更新部(142;航跡データ更新部134)と、新規目標判定部(新目標選択部143;航跡データ更新部134)と、新規航跡生成部(144;航跡データ更新部134)と、信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)とを有する。
上記探知データ取得部は、センサ(801)が観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得する。
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶する。
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出する。
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出する。
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定する。
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新する。
上記新規目標判定部は、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であるか否かを判定する。
上記新規航跡生成部は、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であると上記新規目標判定部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、新たな目標を表わす航跡データを生成する。
上記航跡記憶部は、上記新規航跡生成部が生成した航跡データを記憶する。
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定する。
上記新規目標判定部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度が高いか低いかを判定し、上記尤度が高いと判定した場合、上記探知データが表わす目標が新たな目標ではないと判定する。
【0183】
上記新規目標判定部(新目標選択部143)は、信頼度が高いと上記信頼度判定部(新目標選択部143)が判定した航跡データと上記探知データ取得部(探知データ取得部110)が取得した探知データとの組について上記尤度算出部(相関尤度計算部133)が算出した尤度が、上記航跡データと上記探知データ取得部が取得した他の探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度のなかで、高いほうから所定の順位までに入る場合に、上記尤度が高いと判定する。
【0184】
追尾装置100は、探知データ取得部(110)と、航跡記憶部(航跡データ記憶部120)と、予測部(ゲート計算部131)と、尤度算出部(相関尤度計算部133)と、相関部(141;航跡データ更新部134)と、更新部(142;航跡データ更新部134)と、信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)とを有する。
上記探知データ取得部は、センサ(801)が観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得する。
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶する。
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出する。
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出する。
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定する。
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新する。
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定する。
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が所定の範囲内である場合に、上記尤度を算出し、上記航跡データよりも信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データとの組について、上記尤度を算出しない。
【0185】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶した航跡データについて、上記更新部(142;航跡データ更新部134)が上記航跡データを更新したことがある場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新部が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0186】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、上記更新部(142;航跡データ更新部134)が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データが表わす目標の速度が速いか遅いかを判定し、上記航跡データが表わす目標の速度が速いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0187】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶した航跡データについて、上記更新部(142;航跡データ更新部134)が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データが表わす目標と上記センサ(801)との間の距離が遠いか近いかを判定し、上記距離が遠いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0188】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶した航跡データについて、上記更新部(142;航跡データ更新部134)が上記航跡データを更新したことがある場合に、上記更新部が上記航跡データの更新に用いた探知データが表わす目標の観測時刻から上記探知データ取得部(110)が取得した探知データが表わす目標の観測時刻までの経過時間が長いか短いかを判定し、上記経過時間が長いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0189】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶した航跡データについて、上記更新部(142;航跡データ更新部134)が上記航跡データを更新した更新回数が多いか少ないかを判定し、上記更新回数が多いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新回数が少ないと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0190】
上記信頼度判定部(相関尤度計算部133;航跡確立判定部135;航跡優先度設定部136;新目標選択部143)は、複数の期間それぞれについて、上記航跡記憶部(航跡データ記憶部120)が記憶した航跡データを上記期間内に目標の観測時刻が入る探知データを用いて上記更新部(142;航跡データ更新部134)が更新したか否かを判定し、上記航跡データについて、上記更新部が更新しなかった期間の数が多いか少ないかを判定し、上記更新部が更新しなかった期間の数が少ないと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新部が更新しなかった期間の数が多いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定する。
【0191】
以上説明した追尾装置100によれば、観測状況によって第二探知データに対する相関尤度を適応的に制御することにより、正しい相関決定を実施し、確実に目標追尾を開始することができる。
また、確度の高い航跡に対する相関の可能性を絞り込んで仮説を限定することにより、正しい相関決定を実施するための追尾装置の処理負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0192】
100 追尾装置、110 探知データ取得部、120 航跡データ記憶部、131 ゲート計算部、132 ゲート内外判定部、133 相関尤度計算部、134 航跡データ更新部、135 航跡確立判定部、136 航跡優先度設定部、137 ゲート領域記憶部、141 相関部、142 更新部、143 新目標選択部、144 新規航跡生成部、190 航跡出力部、511,512 探知データ、521,522 航跡群、523 更新航跡群、531 ゲート、532 ゲート内外判定結果、533 相関尤度、534 確立航跡情報、535 航跡優先度、536 ゲート設定領域、701 範囲、711,712 相関尤度、800 追尾システム、801 センサ、802 表示装置、911 処理装置、912 入力装置、913 出力装置、914 記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、信頼度判定部とを有し、
上記探知データ取得部は、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記尤度算出部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出することを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
上記航跡記憶部が記憶する航跡データは、目標の位置と速度とを含む状態量の推定値を表わし、
上記探知データ取得部が取得する探知データは、目標の位置を含む状態量の観測値を表わし、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の位置の予測値を算出し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値とに基づいて、上記航跡データを更新し、
上記尤度算出部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が予測した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出することを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項3】
上記航跡記憶部が記憶する航跡データは、目標の位置と速度とを含む状態量の推定値を表わし、
上記探知データ取得部が取得する探知データは、目標の位置と速度とを含む状態量の観測値を表わし、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の位置の予測値を算出し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記航跡データが表わす目標の位置と速度との推定値と、上記探知データが表わす目標の位置と速度との観測値とに基づいて、上記航跡データを更新し、
上記尤度算出部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の位置の予測値と、上記探知データが表わす目標の位置の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の位置の推定値と上記探知データが表わす目標の位置の観測値とに基づいて上記目標の速度を算出し、算出した速度と上記探知データが表わす目標の速度の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の追尾装置。
【請求項4】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、新規目標判定部と、新規航跡生成部と、信頼度判定部とを有し、
上記探知データ取得部は、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記新規目標判定部は、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であるか否かを判定し、
上記新規航跡生成部は、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であると上記新規目標判定部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、新たな目標を表わす航跡データを生成し、
上記航跡記憶部は、上記新規航跡生成部が生成した航跡データを記憶し、
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記新規目標判定部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度が高いか低いかを判定し、上記尤度が高いと判定した場合、上記探知データが表わす目標が新たな目標ではないと判定することを特徴とする追尾装置。
【請求項5】
上記新規目標判定部は、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度が、上記航跡データと上記探知データ取得部が取得した他の探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度のなかで、高いほうから所定の順位までに入る場合に、上記尤度が高いと判定することを特徴とする請求項4に記載の追尾装置。
【請求項6】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、信頼度判定部とを有し、
上記探知データ取得部は、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記尤度算出部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が所定の範囲内である場合に、上記尤度を算出し、上記航跡データよりも信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データとの組について、上記尤度を算出しないことを特徴とする追尾装置。
【請求項7】
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記更新部が上記航跡データを更新したことがある場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新部が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項8】
上記信頼度判定部は、上記更新部が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データが表わす目標の速度が速いか遅いかを判定し、上記航跡データが表わす目標の速度が速いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項9】
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記更新部が上記航跡データを更新したことがない場合に、上記航跡データが表わす目標と上記センサとの間の距離が遠いか近いかを判定し、上記距離が遠いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項10】
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記更新部が上記航跡データを更新したことがある場合に、上記更新部が上記航跡データの更新に用いた探知データが表わす目標の観測時刻から上記探知データ取得部が取得した探知データが表わす目標の観測時刻までの経過時間が長いか短いかを判定し、上記経過時間が長いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項11】
上記信頼度判定部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記更新部が上記航跡データを更新した更新回数が多いか少ないかを判定し、上記更新回数が多いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新回数が少ないと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項12】
上記信頼度判定部は、複数の期間それぞれについて、上記航跡記憶部が記憶した航跡データを上記期間内に目標の観測時刻が入る探知データを用いて上記更新部が更新したか否かを判定し、上記航跡データについて、上記更新部が更新しなかった期間の数が多いか少ないかを判定し、上記更新部が更新しなかった期間の数が少ないと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が高いと判定し、上記更新部が更新しなかった期間の数が多いと判定した場合に、上記航跡データの信頼度が低いと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の追尾装置。
【請求項13】
コンピュータが実行することにより、上記コンピュータを請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の追尾装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、信頼度判定部とを有する追尾装置が、目標を追尾する追尾方法において、
上記探知データ取得部が、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部が、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記信頼度判定部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記尤度算出部が、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと、上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が大きいほど、小さい尤度を算出し、信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと、上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差にかかわらず、一定の尤度を算出することを特徴とする追尾方法。
【請求項15】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、新規目標判定部と、新規航跡生成部と、信頼度判定部とを有する追尾装置が、目標を追尾する追尾方法において、
上記探知データ取得部が、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部は、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記新規目標判定部が、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であるか否かを判定し、
上記新規航跡生成部が、上記探知データ取得部が取得した探知データについて、上記探知データが表わす目標が新たな目標であると上記新規目標判定部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、新たな目標を表わす航跡データを生成し、
上記航跡記憶部が、上記新規航跡生成部が生成した航跡データを記憶し、
上記信頼度判定部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記新規目標判定部が、信頼度が高いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと、上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について上記尤度算出部が算出した尤度が高いか低いかを判定し、上記尤度が高いと判定した場合、上記探知データが表わす目標が新たな目標ではないと判定することを特徴とする追尾方法。
【請求項16】
探知データ取得部と、航跡記憶部と、予測部と、尤度算出部と、相関部と、更新部と、信頼度判定部とを有する追尾装置が、目標を追尾する追尾方法において、
上記探知データ取得部が、センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の観測値と上記センサが上記目標を観測した観測時刻とを表わす探知データを取得し、
上記航跡記憶部が、上記センサが観測したと推定される目標について、上記目標の状態量の推定値を表わす航跡データを記憶し、
上記予測部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標の状態量の推定値に基づいて、上記探知データが表わす目標の観測時刻における上記航跡データが表わす目標の状態量の予測値を算出し、
上記尤度算出部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値とに基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一である尤度を算出し、
上記相関部は、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記尤度算出部が算出した尤度に基づいて、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であるか否かを判定し、
上記更新部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記航跡データが表わす目標と上記探知データが表わす目標とが同一であると上記相関部が判定した場合に、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値に基づいて、上記航跡データを更新し、
上記信頼度判定部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データについて、上記航跡データの信頼度が高いか低いかを判定し、
上記尤度算出部が、上記航跡記憶部が記憶した航跡データと上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について、上記予測部が算出した目標の状態量の予測値と、上記探知データが表わす目標の状態量の観測値との差が所定の範囲内である場合に、上記尤度を算出し、上記航跡記憶部が記憶した航跡データのうちの一つと、上記探知データ取得部が取得した探知データとの組について尤度を算出した場合に、上記航跡データよりも信頼度が低いと上記信頼度判定部が判定した航跡データと上記探知データとの組について、上記尤度を算出しないことを特徴とする追尾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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