追尾装置
【課題】大目標と小目標との観測値の取り合いによる追尾性能の劣化を回避し、高精度の航跡を生成可能な追尾装置を得る。
【解決手段】センサ10と、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部20と、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部30と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用いて相関調停結果を生成する相関調停処理部40と、相関調停結果を用いて観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部50と、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 60と、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部70と、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部80と、遅延処理部90と、表示処理部100と、を備える。
【解決手段】センサ10と、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部20と、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部30と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用いて相関調停結果を生成する相関調停処理部40と、相関調停結果を用いて観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部50と、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 60と、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部70と、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部80と、遅延処理部90と、表示処理部100と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波センサや赤外線センサなどを用いた追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、追尾装置においては、目標の大きさに比べて、センサの分解能が高く、目標が画像または複数の点として観測される場合に、同一目標から観測される複数の観測値のクラスタリングを行い、そのクラスタリング結果であるクラスタの重心位置を用いて追尾を行うことにより、目標航跡の高精度化を図る技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4116898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、大目標と小目標とが近接する環境において、互いの観測値を取り合うので、追尾性能が劣化して目標航跡の精度が劣化するという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成可能な追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る追尾装置は、同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサと、複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部と、複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部と、相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部と、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 と、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部と、観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部と、航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部、セル数相関処理部、位置クラスタリング処理部および統合セル数観測値監視処理部にフィードバック入力する遅延処理部と、位置速度更新予測処理部から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスの結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡について観測値を優先的に割り当て、観測値のクラスタリング結果から得られた観測値クラスタの統合セル数観測値と、統合セル数予測値とを比較して、統合セル数予測値相当の観測値のクラスタリングを行い、統合セル数推定値算出の際に、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき統合セル数推定値を更新することにより、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1内のセンサによる観測結果の一例を示す説明図である。
【図3】図1内の位置相関処理部による位置マトリクスの一例を示す説明図である。
【図4】図1内のセル数相関処理部によるセル数相関マトリクスの一例を示す説明図である。
【図5】図1内のセル数相関処理部により用いられるセル数距離マトリクスの一例を示す説明図である。
【図6】図1内の相関調停処理部による相関調停マトリクスの算出処理を示す説明図である。
【図7】図1内の相関調停処理部による観測値の割当処理を示す説明図である。
【図8】図1内の位置クラスタリング処理部による統合セル数観測値の算出処理を示す説明図である。
【図9】図1内の統合セル数観測値監視処理部および位置クラスタリング処理部の動作を示す説明図である。
【図10】図1内の統合セル数観測値監視処理部および位置クラスタリング処理部の動作を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図12】図11内のセル数相関ゲートしきい値制御処理部の動作を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】図13内の速度ベクトル補正処理部の動作を示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態5に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
図1において、追尾装置は、センサ10と、位置相関処理部20と、セル数相関処理部30と、相関調停処理部40と、位置クラスタリング処理部50と、統合セル数観測値監視処理部60と、統合セル数更新予測処理部70と、位置速度更新予測処理部80と、遅延処理部90とを備えている。
なお、この発明の特徴的な機能は、セル数相関処理部30、相関調停処理部40、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に関連している。
【0010】
センサ10は、高分解能の電波センサや赤外線センサなどからなり、同一目標から複数の検出位置を取得する。
位置相関処理部20は、センサ10からの複数の検出位置を用いて、航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する。
セル数相関処理部30は、センサ10からの複数の検出位置を用いて、セル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成する。
【0011】
相関調停処理部40は、位置相関処理部20からの位置相関マトリクスと、セル数相関処理部30からのセル数相関マトリクスとを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、セル数が少ない小目標に対応した、統合セル数が小さい航跡について、観測値を優先的に割り当てることにより、相関調停結果を生成する。
【0012】
位置クラスタリング処理部50は、相関調停処理部40からの相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する。
統合セル数観測値監視処理部 60は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する。
【0013】
統合セル数更新予測処理部70は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する。
【0014】
位置速度更新予測処理部80は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの重心点を観測値として、統合セル数更新予測処理部70からの統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を用い、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する。
【0015】
遅延処理部90は、位置速度更新予測処理部80からの航跡の位置速度予測値を、1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する。
表示処理部100は、位置速度更新予測処理部80から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する。
【0016】
次に、図2〜図10を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による具体的な動作について説明する。
図2はセンサ10による観測結果の一例を示す説明図であり、小目標(航跡T1)および大目標(航跡T2)に対応した検出位置(検出セル)と、センサ10で算出した検出位置の重心点1〜5(黒丸)と、各目標(T1、T2)の真の形状(1点鎖線枠)とを示している。
【0017】
まず、電波センサ(レーダなど)や赤外線センサなどからなるセンサ10は、図2のように、小目標(航跡T1)および大目標(航跡T2)からの観測結果として、複数の検出位置を取得する。
図2において、小目標および大目標(T1、T2)に対応した各検出位置(検出セル)は、センサ10の分解能により決定される。
【0018】
また、センサ10は、複数の検出位置に対して、所望のクラスタリング手法に基づくクラスタリングを行い、1つ以上のセルからなる各検出位置の重心点1〜5を求める。
図2の例では、複数の検出位置をクラスタリングした5つの点が、センサ10で算出した検出位置の重心点1〜5となる。
【0019】
さらに、センサ10は、観測結果として、検出位置を取得した時刻と、検出位置の重心点1〜5の位置と、重心点1〜5を計算するために要した検出セル数と、を位置相関処理部20およびセル数相関処理部30にそれぞれ入力する。
【0020】
ここで、センサ10の出力情報のうち、検出位置を得た時刻を「時刻」、検出位置の重心点1〜5の位置を「位置観測値」、重心点1〜5を計算するために要した検出セル数を「セル数観測値」と、それぞれ定義すると、センサ10は、時刻、位置観測値およびセル数観測値を、位置相関処理部20およびセル数相関処理部30に入力することになる。
なお、位置観測値は、重心点位置と、重心点位置の観測誤差共分散行列とを含む。
【0021】
次に、位置相関処理部20は、目標航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との相関付けを行い、位置相関マトリクスを算出する。
ここで、センサ10からの入力情報(時刻、位置観測値およびセル数観測値)を、まとめて「観測値」と総称する。
【0022】
図3は位置相関マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、小目標に対応する航跡T1と大目標に対応する航跡T2とについて、各観測値Z1、Z2、Z3、Z4、Z5(相関有り「1」、相関無し「0」)をフラグ値で示している。
【0023】
図3において、観測値Z1〜Z5は、図2内の重心点1〜5にそれぞれ対応する。
また、位置相関フラグの値「1」は、航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との間に相関が有ることを表し、位置相関フラグの値「0」は、航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との間に相関が無いことを表す。
【0024】
以下、図3について、図2と関連させながら説明する。
この場合、図2内の小目標の航跡T1の破線で囲まれた領域内を、航跡T1の位置相関ゲートとし、航跡T1の位置相関ゲートの中心が、航跡T1の航跡位置予測値とする。
同様に、大目標の航跡T2の破線で囲まれた領域内を航跡T2の位置相関ゲートとし、航跡T2の位置相関ゲートの中心が航跡T2の航跡位置予測値とする。
【0025】
航跡T1、T2の位置相関ゲートの大きさは、たとえば、カルマンフィルタを追尾フィルタとして適用した場合には、算出された状態ベクトルの誤差共分散行列から求めた値、または、ユーザが事前に設定した値により決定される。
【0026】
また、位置相関フラグの値「0」、「1」は、航跡位置予測値と位置観測値との差分が位置相関ゲートしきい値以内であることを示す、以下の条件式(1)を、満たすか否かにより決定される。
【0027】
|航跡位置予測値−位置観測値|≦位置相関ゲートしきい値 ・・・(1)
【0028】
条件式(1)において、左辺の「||」は、距離(ノルム)を表している。なお、この距離は、どのようなノルムでもよく、たとえば、距離として、ユークリッド距離やマハラノビス距離(Mahalanobis Distance)で設定してもよい。
【0029】
条件式(1)を満たす場合には、観測値が位置相関ゲート内にあるので、位置相関処理部20は、位置相関フラグを「1」とする。
一方、条件式(1)を満たさない場合には、観測値が位置相関ゲート外なので、位置相関処理部20は、位置相関フラグを「0」とする。
【0030】
図3の位置相関マトリクスにおいては、航跡位置予測値と観測値との対応関係を表している。
小目標(航跡T1)に関しては、観測値Z1(図2内の重心点1に対応)は、航跡T1の位置相関ゲートの中に入っているので、位置相関フラグが「1」となる。
また、観測値Z5(図2内の重心点5に対応)は、航跡T1の位置相関ゲートの中に入っていないので、位置相関フラグが「0」となる。
【0031】
一方、大目標(航跡T2)に関しては、すべての観測値Z1〜Z5(図2内の重心点1〜5に対応)が航跡T2の位置相関ゲートの中に入っているので、位置相関フラグの値がすべて「1」となる。
つまり、観測値Z1は、航跡T2の位置相関ゲートの中にも入っており、位置相関フラグの値が「1」となることから、航跡T1と航跡T2との間で取り合いになる。
【0032】
しかし、位置相関処理部20は、センサ10から観測値を得た時刻kに基づき、遅延処理部90から時刻kの航跡を取得し、センサ10から得られた時刻kの観測値と、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡とから、位置相関マトリクスを生成して、相関調停処理部40に入力する。
【0033】
このとき、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡には、時刻と、位置および速度の予測値と、位置および速度の誤差共分散行列予測値と、統合セル数予測値と、統合セル数予測値の誤差共分散行列と、が含まれている。
なお、統合セル数予測値、および統合セル数予測値の誤差共分散行列は、後述の統合セル数更新予測処理部70により算出される。
【0034】
なお、「統合セル数」とは、航跡が有するべきセル数である。
たとえば、図2の例では、航跡T1の有するべき統合セル数は、重心点1を生成するのに要した検出セル数(1個)であり、航跡T2の有するべき統合セル数は、重心点2〜5を生成するのに要した検出セル数(3+1+11+5=20個)である。
【0035】
そこで、セル数相関処理部30は、位置相関マトリクス(図3)の算出に先立って、目標航跡の統合セル数予測値と、観測値(セル数観測値)との相関付けを行い、セル数相関マトリクスを算出する。
センサ10からの時刻、位置観測値およびセル数観測値は、まとめて「観測値」と総称する。
【0036】
図4はセル数相関マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、図3と同様に、小目標に対応する航跡T1と大目標に対応する航跡T2とについて、各観測値Z1、Z2、Z3、Z4、Z5(相関有り「1」および相関無し「0」)をフラグ値で示している。
【0037】
図4において、セル数相関フラグの値「1」は、統合セル数予測値と観測値(セル数観測値)との間に相関が有ることを表し、セル数相関フラグの値「0」は、統合セル数予測値と観測値(セル数観測値)との間に相関が無いことを表す。
【0038】
セル数相関フラグの値「0」、「1」は、統合セル数予測値とセル数観測値との差分がセル数相関ゲートしきい値以内であることを示す、以下の条件式(2)、を満たすか否かにより決定される。
【0039】
|統合セル数予測値−セル数観測値|≦セル数相関ゲートしきい値 ・・・(2)
【0040】
条件式(2)において、左辺の「||」は、前述の条件式(1)と同様に、距離(ノルム)を表しており、ユークリッド距離やマハラノビス距離で設定してもよい。
条件式(2)を満たす場合には、観測値がセル数相関ゲート内にあるので、セル数相関処理部30は、セル数相関フラグを「1」とする。
一方、条件式(2)を満たさない場合には、観測値がセル数相関ゲート外なので、セル数相関処理部30は、セル数相関フラグを「0」とする。
【0041】
以下、図4について、図2および図3と関連させながら説明する。
図2において、観測値Z1におけるセル数観測値は「1」、観測値Z2におけるセル数観測値は「3」、観測値Z3におけるセル数観測値は「1」、観測値Z4におけるセル数観測値は「11」、観測値Z5におけるセル数観測値は「5」である。
【0042】
ここで、小目標の航跡T1の統合セル数予測値を「1」とし、大目標の航跡T2の統合セル数予測値を「13」と設定し、セル数相関ゲートしきい値を「3」と設定する。
このとき、条件式(2)において、ノルムを「ユークリッド距離」と定義すると、観測値Z1に関する条件式(2)の左辺の値は以下となる。
【0043】
|航跡T1の統合セル数予測値−Z1のセル数観測値|=|1−1|=0
【0044】
つまり、セル数相関ゲートしきい値「3」以下となり、条件式(2)を満たすので、観測値Z1におけるセル数相関フラグの値は「1」となる。
同様に、航跡T1と観測値Z1〜Z5とを組合せ、また、航跡T2と観測値Z1〜Z5とを組合せることにより、条件式(2)の左辺の値をまとめてテーブル形式で表したセル数距離マトリクスを取得することができる。
【0045】
図5はセル数距離マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、各航跡T1、T2のテーブル値は、条件式(2)の左辺の値(距離)を示している。
すなわち、セル数距離マトリクス(図5)の各成分の値が、セル数相関ゲートしきい値「3」以下となる場合、の相関フラグ(「1」、「0」)をまとめた結果が、セル数相関マトリクス(図4)となる。
【0046】
したがって、セル数相関処理部30は、センサ10から観測値を得た時刻kに基づき、遅延処理部90から時刻kの航跡を取得して、センサ10から得られた時刻kの観測値と、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡とから、セル数相関マトリクス(図4)を生成して、相関調停処理部40に入力する。
【0047】
相関調停処理部40は、位置相関処理部20から得られた時刻kの位置相関マトリクス(図3)と、セル数相関処理部30から得られた時刻kのセル数相関マトリクス(図4)とを使用して、統合セル数予測値の大きさと位置観測値とに基づき、航跡と観測値との割当処理を行い、相関調停マトリクスを算出する。
【0048】
図6は相関調停処理部40の動作を示す説明図であり、相関調停マトリクスM3の算出処理を示している。
図6において、一番左の位置相関マトリクスM1は図3に対応し、中央のセル数相関マトリクスM2は図4に対応する。
また、「×」は、位置相関マトリクスM1とセル数相関マトリクスM2とのAND演算(M1とM2との同行同列の成分を乗算すること)を表し、「=」は、AND演算結果が一番右の相関調停マトリクスM3(相関調停結果)であることを表している。
【0049】
相関調停処理部40は、図6のように、位置相関マトリクスM1とセル数相関マトリクスM2とのAND演算結果である相関調停マトリクスM3(相関調停結果)を算出し、続いて、相関調停結果に基づいて、統合セル数予測値が小さい航跡から、順次に観測値の割当を行う。
【0050】
図7は相関調停処理部40の動作を示す説明図であり、統合セル数予測値が小さい航跡T1(小目標相当)と、統合航跡セル数予測値が航跡T1よりも大きい航跡T2(大目標相当)と、についての観測値の割当処理を示している。
【0051】
図7において、相関調停処理部40は、まず、相関調停マトリクスM3から、航跡T1と観測値Z1とが対応付けられた組(破線枠:フラグ値「1」)から、航跡T1向けの位置相関マトリクスM1(T1)を生成する。
【0052】
また、相関調停処理部40は、位置相関マトリクスM1から、航跡T1向けの位置相関マトリクスM1(T1)で使用した成分を除去(1点鎖線参照)したものを、航跡T2向けの位置相関マトリクスM1(T2)を生成し、時刻kの観測値として位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0053】
ここでは、目標数(航跡数)が「2」の場合を例にとっているが、目標数が「3」以上の任意数の航跡に対しても、図7のように相関調停マトリクスM3の結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡の順に観測値の割当処理を行うことにより、航跡ごとの位置相関マトリクスを生成することができる。
【0054】
次に、位置クラスタリング処理部50は、位置に基づき観測値のクラスタリングを行い、観測値のクラスタリング結果を「観測値クラスタ」として求め、観測値クラスタ内のセル数観測値の総和を計算し、最終的な総和値を「統合セル数観測値」として算出する。
【0055】
図8は位置クラスタリング処理部50の動作を示す説明図であり、統合セル数観測値の算出処理を行うための樹形図(ツリー)の一例を示している。
図8内の最下段の数字「11」、「1」、「3」、「5」は、観測値Z4、Z3、Z2、Z5(図2内の重心点4、3、2、5)におけるセル数観測値に対応している。
【0056】
図8において、位置クラスタリング処理部50は、観測値Z3と観測値Z4とから観測値クラスタ(Z3、Z4)を生成し、両者のセル数観測値の総和「12」を算出し、同様に、観測値Z2と観測値Z5とから観測値クラスタ(Z2、Z5)を生成し、両者のセル数観測値の総和「8」を算出する。
また、観測値クラスタ(Z3、Z4)と観測値クラスタ(Z2、Z5)とから、観測値クラスタ(Z2、Z3、Z4、Z5)を生成し、両者のセル数観測値の総和「20」を求める。
【0057】
さらに、位置クラスタリング処理部50は、統合セル数観測値監視処理部60からの再クラスタリングフラグが「0」の場合に、観測値クラスタを、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80にそれぞれ入力する。
【0058】
なお、統合セル数観測値監視処理部60から生成される再クラスタリングフラグの値が「1」の場合は、クラスタリングを再度実行し直す指令を表し、再クラスタリングフラグの値が「0」の場合は、クラスタリングを再度実行しない指令を表す。
【0059】
また、位置クラスタリング処理部50から統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に入力される観測値クラスタは、センサ10から得られた観測値情報(たとえば、時刻、位置観測値、セル数観測値)に加えて、観測値クラスタの重心位置および統合セル数観測値の情報が追加されている。
さらに、位置クラスタリング処理部50は、統合セル数観測値監視処理部60に対し、統合セル数観測値の情報が追加された観測値クラスタを入力する。
【0060】
次に、統合セル数観測値監視処理部60は、位置クラスタリング処理部50から得られた観測値クラスタにおける統合セル数観測値と、遅延処理部90から得られた統合セル数予測値との関係が、以下の条件式(3)を満たすか否かを判定する。
【0061】
|統合セル数観測値−統合セル数予測値|≦セル数クラスタリングしきい値
・・・(3)
【0062】
統合セル数観測値監視処理部60は、上記条件式(3)を満たさない場合には、再クラスタリングフラグを「1」に設定し、条件式(3)を満たす場合には、再クラスタリングフラグを「0」に設定する。
【0063】
以下、図9および図10を参照しながら、統合セル数観測値監視処理部60および位置クラスタリング処理部50の動作の流れについて説明する。
図9は再クラスタリングを行う様子を表す説明図であり、図8のクラスタリング樹形図に基づき、統合セル数予測値と統合セル数観測値とを比較して、再クラスタリングを行う様子を示している。
【0064】
図9においては、統合セル数観測値を「20」、統合セル数予測値を「16」とし、統合セル数観測値「20」と統合セル数予測値「16」とを比較した場合を示している。
ここで、セル数クラスタリングしきい値を「2」に設定して、条件式(3)の左辺を計算すると、|20−16|=4となり、条件式(3)の右辺「セル数クラスタリングしきい値=2」よりも大きくなるので、条件式(3)を満たさない。
【0065】
したがって、この場合、統合セル数観測値監視処理部60は、再クラスタリングフラグ「1」を位置クラスタリング処理部50に入力する。
これに応答して、位置クラスタリング処理部50は、クラスタリングを再度実行するために、条件式(3)を満たすための最小のセル数観測値を有する観測値を、位置クラスタリングから外す。
【0066】
図9の場合、条件式(3)を満たすために除去される観測値は、セル数観測値「3」を有する観測値Z2が該当する。
したがって、位置クラスタリング処理部50は、図10のように、観測値Z2(セル数観測値「3」)を除いて、クラスタリングを再度実行し、その算出結果である観測値クラスタを、統合セル数観測値監視処理部60に入力する。
再度算出された観測値クラスタの統合セル数観測値は、図10のように「17」となるので、条件式(3)の左辺を計算すると、|17−16|=1となる。
【0067】
したがって、この場合、条件式(3)の右辺「2」以下になることから、条件式(3)を満たすので、統合セル数観測値監視処理部60は、再クラスタリングフラグ「0」を位置クラスタリング処理部50に入力する。
これに応答して、位置クラスタリング処理部50は、クラスタリング結果(時刻kの観測値クラスタ)を、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に入力する。
【0068】
統合セル数更新予測処理部70は、位置クラスタリング処理部50から得られた時刻kの観測値クラスタにおける統合セル数観測値「17」を用いて、目標セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより、時刻kの統合セル数推定値と統合セル数推定値の誤差共分散行列とを生成する。
【0069】
また、統合セル数更新予測処理部70は、目標セル数が一定となる運動モデルに基づき、時刻k+1の統合セル数予測値、および統合セル数予測値の誤差共分散行列を算出し、時刻k+1の統合セル数予測値に関する算出結果と、時刻kの統合セル数推定値に関する算出結果(統合セル数推定値、統合セル数推定値の誤差共分散行列)とを、位置速度更新予測処理部80に入力する。
【0070】
位置速度更新予測処理部80は、位置クラスタリング処理部50から得られた時刻kの観測値クラスタの重心位置を、目標の観測値として、カルマンフィルタにより、時刻kの航跡位置速度の推定値、および航跡位置速度の推定値の誤差共分散行列を算出する。
また、位置速度更新予測処理部80は、時刻k+1の航跡位置速度の予測値、および航跡位置速度の予測値の誤差共分散行列を算出する。
【0071】
また、位置速度更新予測処理部80は、時刻k+1の統合セル数予測値に関する算出結果(統合セル数予測値、統合セル数予測値の誤差共分散行列)と、時刻k+1の航跡位置速度の予測値に関する算出結果(航跡位置速度の予測値、航跡位置速度の予測値の誤差共分散行列)とを、時刻k+1の「航跡予測値」として一括して、遅延処理部90に入力する。
【0072】
さらに、位置速度更新予測処理部80は、時刻kの統合セル数推定値に関する算出結果(統合セル数推定値、統合セル数推定値の誤差共分散行列)と、時刻kの航跡位置速度の推定値に関する算出結果(航跡位置速度の推定値、航跡位置速度の推定値の誤差共分散行列)とを、時刻kの「航跡推定値」として一括して、表示処理部100に入力する。
【0073】
遅延処理部90は、位置速度更新予測処理部80から得られた「時刻k+1の航跡予測値」を1サンプリング分だけ遅延させて「時刻kの航跡予測値」を生成し、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する。
【0074】
表示処理部100は、位置速度更新予測処理部80から得られた時刻kの航跡推定値に基づき、ディスプレイを駆動して、航跡の位置および速度ベクトルをオペレータに表示するとともに、航跡の有する統合セル数推定値を同時に数値として表示する。
【0075】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図10)に係る追尾装置は、同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサ10と、複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部20と、複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部30と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡T1について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部40と、相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部50と、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 60と、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部70と、観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部80と、航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する遅延処理部90と、位置速度更新予測処理部80から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部100と、を備えている。
【0076】
このように、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスの結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡(セル数が少ない小目標の航跡)について観測値を優先的に割り当て、観測値のクラスタリング結果から得られた観測値クラスタの統合セル数観測値と、統合セル数予測値とを比較し、統合セル数予測値相当の観測値のクラスタリングを行い、統合セル数推定値の算出時に、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、統合セル数推定値を更新することにより、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成することができる。
【0077】
実施の形態2.
上記実施の形態1(図1)では、特に言及しなかったが、図11に示すように、セル数相関処理部30にセル数相関ゲートしきい値制御処理部110を設けてもよい。
図11はこの発明の実施の形態2に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0078】
図11において、セル数相関処理部30には、セル数相関ゲートしきい値を制御するためのセル数相関ゲートしきい値制御処理部110が設けられている。
セル数相関ゲートしきい値制御処理部110は、セル数相関処理部30から得られた統合セル数予測値の大きさに応じて、条件式(2)のセル数相関ゲートしきい値を、段階的に可変設定する。
【0079】
これにより、セル数相関処理部30は、セル数相関ゲートしきい値制御処理部110で設定されたセル数相関ゲートしきい値を用いて、前述と同様に、条件式(2)に基づく演算を行い、セル数相関マトリクス(図4)を算出する。
【0080】
図12はセル数相関ゲートしきい値制御処理部110の動作を示す説明図であり、統合セル数予測値A、B、Cに応じたセル数相関ゲートしきい値(以下、単に「しきい値」ともいう)ThA、ThB、ThCの設定例を示している。
【0081】
図12において、セル数相関処理部30は、以下のように、統合セル数予測値の領域に応じて、しきい値を可変設定する。
「0<統合セル数予測値≦A」の領域においては、しきい値ThA、
「A<統合セル数予測値≦B」の領域においては、しきい値ThB、
「B<統合セル数予測値≦C」の領域においては、しきい値ThC。
【0082】
このように、セル数相関ゲートしきい値は、統合セル数予測値の大きさに応じて、3段階に分割して設定される。
なお、図12の例では、説明を簡略化するために、セル数相関ゲートしきい値を3段階に分割した場合を示しているが、ユーザの要求に応じて、任意のN段階(Nは自然数)に設定可能なことは言うまでもない。
【0083】
ここで、統合セル数予測値の領域ごとに、しきい値をN段階に分ける理由は、大目標(図2内の航跡T2)の場合は、条件式(2)の左辺(|統合セル数予測値−セル数観測値|)が、小目標(図2内の航跡T1)の場合よりも大きくなると予想されることから、セル数相関ゲートしきい値も、大目標の場合の方が小目標の場合よりも大きめに設定する必要があり、大目標と小目標とによって、セル数相関ゲートしきい値の最適値が異なると考えられるからである。
【0084】
以上のように、この発明の実施の形態2(図11、図12)に係る追尾装置は、セル数相関処理部30に設けられたセル数相関ゲートしきい値制御処理部110を備えており、セル数相関ゲートしきい値制御処理部110は、統合セル数予測値の大きさに応じて、セル数相関処理部におけるセル数相関ゲートしきい値を制御する。
【0085】
このように、統合セル数予測値の大きさに応じて、セル数相関ゲートしきい値を複数段階に分割設定することにより、セル数相関ゲートしきい値を、大目標および小目標に応じて、ある程度、適切に設定することが可能となる。
また、セル数相関ゲートしきい値を適切に決定した結果、大目標と小目標との観測値の取り合いがさらに軽減されるので、航跡の精度をさらに向上させることができる。
【0086】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2(図1、図11)では、特に言及しなかったが、図13に示すように、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間に速度ベクトル補正処理部120を設けてもよい。
図13はこの発明の実施の形態3に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0087】
図13において、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間には、速度ベクトル補正処理部120が挿入されている。
速度ベクトル補正処理部120は、目標の通路進行方向のセンターラインと一致するように、航跡の速度ベクトルの向きを再計算して補正する。
【0088】
図14は速度ベクトル補正処理部120の動作を示す説明図であり、航跡の速度ベクトルV1の向きを速度ベクトルV2に補正する処理を示している。
図14においては、センターライン210を有する通路200と、通路200上の補正実行領域R内の航跡の位置ベクトルS0(黒丸)と、補正前の航跡の速度ベクトルV1(破線矢印)と、センターライン210の方向に補正後の航跡の速度ベクトルV2(2重線矢印)とが示されている。
【0089】
たとえば、通路200を覆うような大目標の場合、ほぼ通路200の方向に進むことが多いが、航跡の速度ベクトルV1は、検出セルの欠落に起因して、図14のように、通路200の方向とは食い違ってしまう状況となり得る。
このような状況下では、大目標か否かを判定するために、航跡の統合セル数推定値と事前に設定されたしきい値(大目標と判定するための基準値)とを比較し、航跡の統合セル数推定値≧しきい値の場合に大目標と判定して、通路の速度ベクトルV1を通路のセンターライン210の方向に補正することが望ましい。
【0090】
速度ベクトル補正処理部120は、航跡の位置ベクトルS0(位置速度更新予測処理部80から得られた航跡位置推定値)が、通路200内の補正実行領域R内に入り、かつ、航跡の統合セル数推定値が、事前に設定されたしきい値以上の場合に、補正前の航跡の速度ベクトルV1(位置速度更新予測処理部80から得られた航跡速度推定値)の大きさを保存しながら速度ベクトルV1の向きを補正し、補正後の航跡の速度ベクトルV2(補正後航跡速度推定値)のように、センターライン210の方向に一致させる。
【0091】
すなわち、速度ベクトル補正処理部120は、補正前の航跡の速度ベクトルV1から航跡の速度ベクトルV2のように補正して航跡速度推定処理を行い、進行方向の通路200のセンターライン210の方向に一致した補正後航跡速度推定値を算出する。
そして、元の航跡位置速度推定値に、補正後航跡速度推定値を上書きして、新たな補正後航跡位置速度推定値を算出する。
【0092】
また、速度ベクトル補正処理部120は、補正後航跡位置速度推定値を事前に仮定した運動モデルを用いて位置速度予測を行い、補正後航跡位置速度予測値を算出する。
そして、表示処理部100に入力する「時刻kの航跡推定値」として、時刻kの航跡推定値の成分である「時刻kの航跡位置速度推定値」の代わりに、補正後航跡位置速度推定値を生成する。
【0093】
さらに、速度ベクトル補正処理部120は、遅延処理部90に入力する「時刻k+1の航跡予測値」として、時刻k+1の航跡予測値の成分である「時刻k+1の航跡位置速度予測値」の代わりに、補正後航跡位置速度予測値を生成する。
【0094】
以上のように、この発明の実施の形態3(図13、図14)に係る追尾装置は、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間に挿入された速度ベクトル補正処理部120を備えており、速度ベクトル補正処理部120は、目標の通路進行方向のセンターライン210と一致するように、航跡の速度ベクトルV1の向きを再計算して補正し、補正後の航跡の速度ベクトルV2を算出する。
【0095】
すなわち、目標が通路200を覆うような大目標であって、航跡の速度ベクトルV1が通路200の方向と食い違うような場合でも、航跡の統合セル数推定値がしきい値以上の場合には大目標と判定して、航跡の速度ベクトルV1を通路200のセンターライン210の方向に補正する。
これにより、航跡の速度精度の高精度化を図ることが可能となる。
【0096】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3(図1、図11、図13)では、特に言及しなかったが、図15に示すように、位置クラスタリング処理部50にクラスタリング調整処理部130を設けてもよい。
【0097】
図15はこの発明の実施の形態4に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図15において、位置クラスタリング処理部50には、クラスタリング調整処理部130が設けられている。
【0098】
クラスタリング調整処理部130は、観測値クラスタを生成する際に、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大となり、かつセル数が最小の観測値が複数存在した場合に、観測値クラスタ内におけるセル数が最大の観測値から最も離れた、セル数が最小の観測値を観測値クラスタから除去する。
【0099】
具体的には、クラスタリング調整処理部130は、位置クラスタリング処理部50が、統合セル数観測値監視処理部60からの再クラスタリングフラグ「1」に応答して、観測値クラスタを再度生成する際に、条件式(3)を満たすような、最小のセル数観測値が複数存在する場合に、位置クラスタリング処理部50から観測値クラスタを取得する。
【0100】
続いて、クラスタリング調整処理部130は、位置クラスタリング処理部50から取得した観測値クラスタにおいて、最小の(セル数が最大の観測値から最も遠い)セル数観測値を観測値クラスタから除去し、除去後の観測値クラスタを、位置クラスタリング処理部50に再度入力する。
【0101】
以上のように、この発明の実施の形態4(図15)に係る追尾装置によれば、位置クラスタリング処理部50にクラスタリング調整処理部130を設け、位置クラスタリングを行う際の最小のセル数観測値を、セル数が最大の観測値から最も遠い観測値として、位置クラスタリング処理から除去することにより、位置クラスタリング処理部50の処理を継続することが可能となる。
また、セル数が最大の観測値から最も遠い観測値は、他目標からの観測値である可能性が高いことから、他目標への誤追尾を軽減することもできる。
【0102】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4(図1、図11、図13、図15)では、特に言及しなかったが、図16に示すように、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を除去してもよい。
【0103】
図16はこの発明の実施の形態5に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図16において、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間には、クラスタリング開始判定処理部140が挿入されている。
【0104】
クラスタリング開始判定処理部140は、事前に設定されたサンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、位置クラスタリングの開始時期と判定し、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングの開始指令を位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0105】
すなわち、クラスタリング開始判定処理部140は、遅延処理部90から得られた同一航跡番号に対する航跡予測値がMサンプル以上入力された場合に、位置クラスタリング処理部50による統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理を開始させ、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を除去する。
【0106】
以上のように、この発明の実施の形態5(図16)に係る追尾装置によれば、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、航跡予測値の取得数がサンプリングしきい値を超えた場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング開始時期と判定し、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を位置クラスタリング処理の対象から除去するように構成したので、初期時間帯の航跡精度の安定化を図ることが可能となる。
【0107】
実施の形態6.
上記実施の形態5(図16)では、クラスタリング開始判定処理部140において、サンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、位置クラスタリングの開始時期と判定したが、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内である場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理の開始時期と判定してもよい。
【0108】
この場合、図16内のクラスタリング開始判定処理部140は、遅延処理部90から得られた航跡予測値における統合セル数予測値について、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内であれば、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理を実行させる。
【0109】
一方、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値を超えた場合には、図16内のクラスタリング開始判定処理部140は、観測値クラスタの重心点から最も離れた観測値を除去した位置クラスタリングを実行させるための制御信号を、位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0110】
以上のように、この発明の実施の形態6(図16)に係る追尾装置によれば、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、クラスタリング開始判定処理部140は、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値がしきい値以内である場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理の開始時期と判定し、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を位置クラスタリング処理の対象から除去するように構成したので、初期時間帯の航跡精度の安定化を図ることが可能となる。
【0111】
なお、上記実施の形態3〜6においては、前述の実施の形態1(図1)の構成に適用した場合について説明したが、他の実施の形態への適用も可能であり、また、任意に重複して適用することも可能であり、それぞれの相乗作用効果を奏することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0112】
1〜5 重心点、10 センサ、20 位置相関処理部、30 セル数相関処理部、40 相関調停処理部、50 位置クラスタリング処理部、60 統合セル数観測値監視処理部、70 統合セル数更新予測処理部、80 位置速度更新予測処理部、90 遅延処理部、100 表示処理部、110 しきい値制御処理部、120 速度ベクトル補正処理部、130 クラスタリング調整処理部、140 クラスタリング開始判定処理部、200 通路、210 センターライン、M1 位置相関マトリクス、M2 セル数相関マトリクス、M3 相関調停マトリクス、R 補正実行領域、S0 位置ベクトル、T1、T2 航跡、ThA〜ThC しきい値、V1、V2 速度ベクトル、Z1〜Z5 観測値。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波センサや赤外線センサなどを用いた追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、追尾装置においては、目標の大きさに比べて、センサの分解能が高く、目標が画像または複数の点として観測される場合に、同一目標から観測される複数の観測値のクラスタリングを行い、そのクラスタリング結果であるクラスタの重心位置を用いて追尾を行うことにより、目標航跡の高精度化を図る技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4116898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、大目標と小目標とが近接する環境において、互いの観測値を取り合うので、追尾性能が劣化して目標航跡の精度が劣化するという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成可能な追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る追尾装置は、同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサと、複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部と、複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部と、相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部と、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 と、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部と、観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部と、航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部、セル数相関処理部、位置クラスタリング処理部および統合セル数観測値監視処理部にフィードバック入力する遅延処理部と、位置速度更新予測処理部から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスの結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡について観測値を優先的に割り当て、観測値のクラスタリング結果から得られた観測値クラスタの統合セル数観測値と、統合セル数予測値とを比較して、統合セル数予測値相当の観測値のクラスタリングを行い、統合セル数推定値算出の際に、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき統合セル数推定値を更新することにより、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1内のセンサによる観測結果の一例を示す説明図である。
【図3】図1内の位置相関処理部による位置マトリクスの一例を示す説明図である。
【図4】図1内のセル数相関処理部によるセル数相関マトリクスの一例を示す説明図である。
【図5】図1内のセル数相関処理部により用いられるセル数距離マトリクスの一例を示す説明図である。
【図6】図1内の相関調停処理部による相関調停マトリクスの算出処理を示す説明図である。
【図7】図1内の相関調停処理部による観測値の割当処理を示す説明図である。
【図8】図1内の位置クラスタリング処理部による統合セル数観測値の算出処理を示す説明図である。
【図9】図1内の統合セル数観測値監視処理部および位置クラスタリング処理部の動作を示す説明図である。
【図10】図1内の統合セル数観測値監視処理部および位置クラスタリング処理部の動作を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図12】図11内のセル数相関ゲートしきい値制御処理部の動作を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】図13内の速度ベクトル補正処理部の動作を示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態5に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図である。
図1において、追尾装置は、センサ10と、位置相関処理部20と、セル数相関処理部30と、相関調停処理部40と、位置クラスタリング処理部50と、統合セル数観測値監視処理部60と、統合セル数更新予測処理部70と、位置速度更新予測処理部80と、遅延処理部90とを備えている。
なお、この発明の特徴的な機能は、セル数相関処理部30、相関調停処理部40、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に関連している。
【0010】
センサ10は、高分解能の電波センサや赤外線センサなどからなり、同一目標から複数の検出位置を取得する。
位置相関処理部20は、センサ10からの複数の検出位置を用いて、航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する。
セル数相関処理部30は、センサ10からの複数の検出位置を用いて、セル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成する。
【0011】
相関調停処理部40は、位置相関処理部20からの位置相関マトリクスと、セル数相関処理部30からのセル数相関マトリクスとを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、セル数が少ない小目標に対応した、統合セル数が小さい航跡について、観測値を優先的に割り当てることにより、相関調停結果を生成する。
【0012】
位置クラスタリング処理部50は、相関調停処理部40からの相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する。
統合セル数観測値監視処理部 60は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する。
【0013】
統合セル数更新予測処理部70は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する。
【0014】
位置速度更新予測処理部80は、位置クラスタリング処理部50からの観測値クラスタの重心点を観測値として、統合セル数更新予測処理部70からの統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を用い、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する。
【0015】
遅延処理部90は、位置速度更新予測処理部80からの航跡の位置速度予測値を、1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する。
表示処理部100は、位置速度更新予測処理部80から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する。
【0016】
次に、図2〜図10を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による具体的な動作について説明する。
図2はセンサ10による観測結果の一例を示す説明図であり、小目標(航跡T1)および大目標(航跡T2)に対応した検出位置(検出セル)と、センサ10で算出した検出位置の重心点1〜5(黒丸)と、各目標(T1、T2)の真の形状(1点鎖線枠)とを示している。
【0017】
まず、電波センサ(レーダなど)や赤外線センサなどからなるセンサ10は、図2のように、小目標(航跡T1)および大目標(航跡T2)からの観測結果として、複数の検出位置を取得する。
図2において、小目標および大目標(T1、T2)に対応した各検出位置(検出セル)は、センサ10の分解能により決定される。
【0018】
また、センサ10は、複数の検出位置に対して、所望のクラスタリング手法に基づくクラスタリングを行い、1つ以上のセルからなる各検出位置の重心点1〜5を求める。
図2の例では、複数の検出位置をクラスタリングした5つの点が、センサ10で算出した検出位置の重心点1〜5となる。
【0019】
さらに、センサ10は、観測結果として、検出位置を取得した時刻と、検出位置の重心点1〜5の位置と、重心点1〜5を計算するために要した検出セル数と、を位置相関処理部20およびセル数相関処理部30にそれぞれ入力する。
【0020】
ここで、センサ10の出力情報のうち、検出位置を得た時刻を「時刻」、検出位置の重心点1〜5の位置を「位置観測値」、重心点1〜5を計算するために要した検出セル数を「セル数観測値」と、それぞれ定義すると、センサ10は、時刻、位置観測値およびセル数観測値を、位置相関処理部20およびセル数相関処理部30に入力することになる。
なお、位置観測値は、重心点位置と、重心点位置の観測誤差共分散行列とを含む。
【0021】
次に、位置相関処理部20は、目標航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との相関付けを行い、位置相関マトリクスを算出する。
ここで、センサ10からの入力情報(時刻、位置観測値およびセル数観測値)を、まとめて「観測値」と総称する。
【0022】
図3は位置相関マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、小目標に対応する航跡T1と大目標に対応する航跡T2とについて、各観測値Z1、Z2、Z3、Z4、Z5(相関有り「1」、相関無し「0」)をフラグ値で示している。
【0023】
図3において、観測値Z1〜Z5は、図2内の重心点1〜5にそれぞれ対応する。
また、位置相関フラグの値「1」は、航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との間に相関が有ることを表し、位置相関フラグの値「0」は、航跡位置予測値と観測値(位置観測値)との間に相関が無いことを表す。
【0024】
以下、図3について、図2と関連させながら説明する。
この場合、図2内の小目標の航跡T1の破線で囲まれた領域内を、航跡T1の位置相関ゲートとし、航跡T1の位置相関ゲートの中心が、航跡T1の航跡位置予測値とする。
同様に、大目標の航跡T2の破線で囲まれた領域内を航跡T2の位置相関ゲートとし、航跡T2の位置相関ゲートの中心が航跡T2の航跡位置予測値とする。
【0025】
航跡T1、T2の位置相関ゲートの大きさは、たとえば、カルマンフィルタを追尾フィルタとして適用した場合には、算出された状態ベクトルの誤差共分散行列から求めた値、または、ユーザが事前に設定した値により決定される。
【0026】
また、位置相関フラグの値「0」、「1」は、航跡位置予測値と位置観測値との差分が位置相関ゲートしきい値以内であることを示す、以下の条件式(1)を、満たすか否かにより決定される。
【0027】
|航跡位置予測値−位置観測値|≦位置相関ゲートしきい値 ・・・(1)
【0028】
条件式(1)において、左辺の「||」は、距離(ノルム)を表している。なお、この距離は、どのようなノルムでもよく、たとえば、距離として、ユークリッド距離やマハラノビス距離(Mahalanobis Distance)で設定してもよい。
【0029】
条件式(1)を満たす場合には、観測値が位置相関ゲート内にあるので、位置相関処理部20は、位置相関フラグを「1」とする。
一方、条件式(1)を満たさない場合には、観測値が位置相関ゲート外なので、位置相関処理部20は、位置相関フラグを「0」とする。
【0030】
図3の位置相関マトリクスにおいては、航跡位置予測値と観測値との対応関係を表している。
小目標(航跡T1)に関しては、観測値Z1(図2内の重心点1に対応)は、航跡T1の位置相関ゲートの中に入っているので、位置相関フラグが「1」となる。
また、観測値Z5(図2内の重心点5に対応)は、航跡T1の位置相関ゲートの中に入っていないので、位置相関フラグが「0」となる。
【0031】
一方、大目標(航跡T2)に関しては、すべての観測値Z1〜Z5(図2内の重心点1〜5に対応)が航跡T2の位置相関ゲートの中に入っているので、位置相関フラグの値がすべて「1」となる。
つまり、観測値Z1は、航跡T2の位置相関ゲートの中にも入っており、位置相関フラグの値が「1」となることから、航跡T1と航跡T2との間で取り合いになる。
【0032】
しかし、位置相関処理部20は、センサ10から観測値を得た時刻kに基づき、遅延処理部90から時刻kの航跡を取得し、センサ10から得られた時刻kの観測値と、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡とから、位置相関マトリクスを生成して、相関調停処理部40に入力する。
【0033】
このとき、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡には、時刻と、位置および速度の予測値と、位置および速度の誤差共分散行列予測値と、統合セル数予測値と、統合セル数予測値の誤差共分散行列と、が含まれている。
なお、統合セル数予測値、および統合セル数予測値の誤差共分散行列は、後述の統合セル数更新予測処理部70により算出される。
【0034】
なお、「統合セル数」とは、航跡が有するべきセル数である。
たとえば、図2の例では、航跡T1の有するべき統合セル数は、重心点1を生成するのに要した検出セル数(1個)であり、航跡T2の有するべき統合セル数は、重心点2〜5を生成するのに要した検出セル数(3+1+11+5=20個)である。
【0035】
そこで、セル数相関処理部30は、位置相関マトリクス(図3)の算出に先立って、目標航跡の統合セル数予測値と、観測値(セル数観測値)との相関付けを行い、セル数相関マトリクスを算出する。
センサ10からの時刻、位置観測値およびセル数観測値は、まとめて「観測値」と総称する。
【0036】
図4はセル数相関マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、図3と同様に、小目標に対応する航跡T1と大目標に対応する航跡T2とについて、各観測値Z1、Z2、Z3、Z4、Z5(相関有り「1」および相関無し「0」)をフラグ値で示している。
【0037】
図4において、セル数相関フラグの値「1」は、統合セル数予測値と観測値(セル数観測値)との間に相関が有ることを表し、セル数相関フラグの値「0」は、統合セル数予測値と観測値(セル数観測値)との間に相関が無いことを表す。
【0038】
セル数相関フラグの値「0」、「1」は、統合セル数予測値とセル数観測値との差分がセル数相関ゲートしきい値以内であることを示す、以下の条件式(2)、を満たすか否かにより決定される。
【0039】
|統合セル数予測値−セル数観測値|≦セル数相関ゲートしきい値 ・・・(2)
【0040】
条件式(2)において、左辺の「||」は、前述の条件式(1)と同様に、距離(ノルム)を表しており、ユークリッド距離やマハラノビス距離で設定してもよい。
条件式(2)を満たす場合には、観測値がセル数相関ゲート内にあるので、セル数相関処理部30は、セル数相関フラグを「1」とする。
一方、条件式(2)を満たさない場合には、観測値がセル数相関ゲート外なので、セル数相関処理部30は、セル数相関フラグを「0」とする。
【0041】
以下、図4について、図2および図3と関連させながら説明する。
図2において、観測値Z1におけるセル数観測値は「1」、観測値Z2におけるセル数観測値は「3」、観測値Z3におけるセル数観測値は「1」、観測値Z4におけるセル数観測値は「11」、観測値Z5におけるセル数観測値は「5」である。
【0042】
ここで、小目標の航跡T1の統合セル数予測値を「1」とし、大目標の航跡T2の統合セル数予測値を「13」と設定し、セル数相関ゲートしきい値を「3」と設定する。
このとき、条件式(2)において、ノルムを「ユークリッド距離」と定義すると、観測値Z1に関する条件式(2)の左辺の値は以下となる。
【0043】
|航跡T1の統合セル数予測値−Z1のセル数観測値|=|1−1|=0
【0044】
つまり、セル数相関ゲートしきい値「3」以下となり、条件式(2)を満たすので、観測値Z1におけるセル数相関フラグの値は「1」となる。
同様に、航跡T1と観測値Z1〜Z5とを組合せ、また、航跡T2と観測値Z1〜Z5とを組合せることにより、条件式(2)の左辺の値をまとめてテーブル形式で表したセル数距離マトリクスを取得することができる。
【0045】
図5はセル数距離マトリクスの算出結果の一例を示す説明図であり、各航跡T1、T2のテーブル値は、条件式(2)の左辺の値(距離)を示している。
すなわち、セル数距離マトリクス(図5)の各成分の値が、セル数相関ゲートしきい値「3」以下となる場合、の相関フラグ(「1」、「0」)をまとめた結果が、セル数相関マトリクス(図4)となる。
【0046】
したがって、セル数相関処理部30は、センサ10から観測値を得た時刻kに基づき、遅延処理部90から時刻kの航跡を取得して、センサ10から得られた時刻kの観測値と、遅延処理部90から得られた時刻kの航跡とから、セル数相関マトリクス(図4)を生成して、相関調停処理部40に入力する。
【0047】
相関調停処理部40は、位置相関処理部20から得られた時刻kの位置相関マトリクス(図3)と、セル数相関処理部30から得られた時刻kのセル数相関マトリクス(図4)とを使用して、統合セル数予測値の大きさと位置観測値とに基づき、航跡と観測値との割当処理を行い、相関調停マトリクスを算出する。
【0048】
図6は相関調停処理部40の動作を示す説明図であり、相関調停マトリクスM3の算出処理を示している。
図6において、一番左の位置相関マトリクスM1は図3に対応し、中央のセル数相関マトリクスM2は図4に対応する。
また、「×」は、位置相関マトリクスM1とセル数相関マトリクスM2とのAND演算(M1とM2との同行同列の成分を乗算すること)を表し、「=」は、AND演算結果が一番右の相関調停マトリクスM3(相関調停結果)であることを表している。
【0049】
相関調停処理部40は、図6のように、位置相関マトリクスM1とセル数相関マトリクスM2とのAND演算結果である相関調停マトリクスM3(相関調停結果)を算出し、続いて、相関調停結果に基づいて、統合セル数予測値が小さい航跡から、順次に観測値の割当を行う。
【0050】
図7は相関調停処理部40の動作を示す説明図であり、統合セル数予測値が小さい航跡T1(小目標相当)と、統合航跡セル数予測値が航跡T1よりも大きい航跡T2(大目標相当)と、についての観測値の割当処理を示している。
【0051】
図7において、相関調停処理部40は、まず、相関調停マトリクスM3から、航跡T1と観測値Z1とが対応付けられた組(破線枠:フラグ値「1」)から、航跡T1向けの位置相関マトリクスM1(T1)を生成する。
【0052】
また、相関調停処理部40は、位置相関マトリクスM1から、航跡T1向けの位置相関マトリクスM1(T1)で使用した成分を除去(1点鎖線参照)したものを、航跡T2向けの位置相関マトリクスM1(T2)を生成し、時刻kの観測値として位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0053】
ここでは、目標数(航跡数)が「2」の場合を例にとっているが、目標数が「3」以上の任意数の航跡に対しても、図7のように相関調停マトリクスM3の結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡の順に観測値の割当処理を行うことにより、航跡ごとの位置相関マトリクスを生成することができる。
【0054】
次に、位置クラスタリング処理部50は、位置に基づき観測値のクラスタリングを行い、観測値のクラスタリング結果を「観測値クラスタ」として求め、観測値クラスタ内のセル数観測値の総和を計算し、最終的な総和値を「統合セル数観測値」として算出する。
【0055】
図8は位置クラスタリング処理部50の動作を示す説明図であり、統合セル数観測値の算出処理を行うための樹形図(ツリー)の一例を示している。
図8内の最下段の数字「11」、「1」、「3」、「5」は、観測値Z4、Z3、Z2、Z5(図2内の重心点4、3、2、5)におけるセル数観測値に対応している。
【0056】
図8において、位置クラスタリング処理部50は、観測値Z3と観測値Z4とから観測値クラスタ(Z3、Z4)を生成し、両者のセル数観測値の総和「12」を算出し、同様に、観測値Z2と観測値Z5とから観測値クラスタ(Z2、Z5)を生成し、両者のセル数観測値の総和「8」を算出する。
また、観測値クラスタ(Z3、Z4)と観測値クラスタ(Z2、Z5)とから、観測値クラスタ(Z2、Z3、Z4、Z5)を生成し、両者のセル数観測値の総和「20」を求める。
【0057】
さらに、位置クラスタリング処理部50は、統合セル数観測値監視処理部60からの再クラスタリングフラグが「0」の場合に、観測値クラスタを、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80にそれぞれ入力する。
【0058】
なお、統合セル数観測値監視処理部60から生成される再クラスタリングフラグの値が「1」の場合は、クラスタリングを再度実行し直す指令を表し、再クラスタリングフラグの値が「0」の場合は、クラスタリングを再度実行しない指令を表す。
【0059】
また、位置クラスタリング処理部50から統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に入力される観測値クラスタは、センサ10から得られた観測値情報(たとえば、時刻、位置観測値、セル数観測値)に加えて、観測値クラスタの重心位置および統合セル数観測値の情報が追加されている。
さらに、位置クラスタリング処理部50は、統合セル数観測値監視処理部60に対し、統合セル数観測値の情報が追加された観測値クラスタを入力する。
【0060】
次に、統合セル数観測値監視処理部60は、位置クラスタリング処理部50から得られた観測値クラスタにおける統合セル数観測値と、遅延処理部90から得られた統合セル数予測値との関係が、以下の条件式(3)を満たすか否かを判定する。
【0061】
|統合セル数観測値−統合セル数予測値|≦セル数クラスタリングしきい値
・・・(3)
【0062】
統合セル数観測値監視処理部60は、上記条件式(3)を満たさない場合には、再クラスタリングフラグを「1」に設定し、条件式(3)を満たす場合には、再クラスタリングフラグを「0」に設定する。
【0063】
以下、図9および図10を参照しながら、統合セル数観測値監視処理部60および位置クラスタリング処理部50の動作の流れについて説明する。
図9は再クラスタリングを行う様子を表す説明図であり、図8のクラスタリング樹形図に基づき、統合セル数予測値と統合セル数観測値とを比較して、再クラスタリングを行う様子を示している。
【0064】
図9においては、統合セル数観測値を「20」、統合セル数予測値を「16」とし、統合セル数観測値「20」と統合セル数予測値「16」とを比較した場合を示している。
ここで、セル数クラスタリングしきい値を「2」に設定して、条件式(3)の左辺を計算すると、|20−16|=4となり、条件式(3)の右辺「セル数クラスタリングしきい値=2」よりも大きくなるので、条件式(3)を満たさない。
【0065】
したがって、この場合、統合セル数観測値監視処理部60は、再クラスタリングフラグ「1」を位置クラスタリング処理部50に入力する。
これに応答して、位置クラスタリング処理部50は、クラスタリングを再度実行するために、条件式(3)を満たすための最小のセル数観測値を有する観測値を、位置クラスタリングから外す。
【0066】
図9の場合、条件式(3)を満たすために除去される観測値は、セル数観測値「3」を有する観測値Z2が該当する。
したがって、位置クラスタリング処理部50は、図10のように、観測値Z2(セル数観測値「3」)を除いて、クラスタリングを再度実行し、その算出結果である観測値クラスタを、統合セル数観測値監視処理部60に入力する。
再度算出された観測値クラスタの統合セル数観測値は、図10のように「17」となるので、条件式(3)の左辺を計算すると、|17−16|=1となる。
【0067】
したがって、この場合、条件式(3)の右辺「2」以下になることから、条件式(3)を満たすので、統合セル数観測値監視処理部60は、再クラスタリングフラグ「0」を位置クラスタリング処理部50に入力する。
これに応答して、位置クラスタリング処理部50は、クラスタリング結果(時刻kの観測値クラスタ)を、統合セル数更新予測処理部70および位置速度更新予測処理部80に入力する。
【0068】
統合セル数更新予測処理部70は、位置クラスタリング処理部50から得られた時刻kの観測値クラスタにおける統合セル数観測値「17」を用いて、目標セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより、時刻kの統合セル数推定値と統合セル数推定値の誤差共分散行列とを生成する。
【0069】
また、統合セル数更新予測処理部70は、目標セル数が一定となる運動モデルに基づき、時刻k+1の統合セル数予測値、および統合セル数予測値の誤差共分散行列を算出し、時刻k+1の統合セル数予測値に関する算出結果と、時刻kの統合セル数推定値に関する算出結果(統合セル数推定値、統合セル数推定値の誤差共分散行列)とを、位置速度更新予測処理部80に入力する。
【0070】
位置速度更新予測処理部80は、位置クラスタリング処理部50から得られた時刻kの観測値クラスタの重心位置を、目標の観測値として、カルマンフィルタにより、時刻kの航跡位置速度の推定値、および航跡位置速度の推定値の誤差共分散行列を算出する。
また、位置速度更新予測処理部80は、時刻k+1の航跡位置速度の予測値、および航跡位置速度の予測値の誤差共分散行列を算出する。
【0071】
また、位置速度更新予測処理部80は、時刻k+1の統合セル数予測値に関する算出結果(統合セル数予測値、統合セル数予測値の誤差共分散行列)と、時刻k+1の航跡位置速度の予測値に関する算出結果(航跡位置速度の予測値、航跡位置速度の予測値の誤差共分散行列)とを、時刻k+1の「航跡予測値」として一括して、遅延処理部90に入力する。
【0072】
さらに、位置速度更新予測処理部80は、時刻kの統合セル数推定値に関する算出結果(統合セル数推定値、統合セル数推定値の誤差共分散行列)と、時刻kの航跡位置速度の推定値に関する算出結果(航跡位置速度の推定値、航跡位置速度の推定値の誤差共分散行列)とを、時刻kの「航跡推定値」として一括して、表示処理部100に入力する。
【0073】
遅延処理部90は、位置速度更新予測処理部80から得られた「時刻k+1の航跡予測値」を1サンプリング分だけ遅延させて「時刻kの航跡予測値」を生成し、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する。
【0074】
表示処理部100は、位置速度更新予測処理部80から得られた時刻kの航跡推定値に基づき、ディスプレイを駆動して、航跡の位置および速度ベクトルをオペレータに表示するとともに、航跡の有する統合セル数推定値を同時に数値として表示する。
【0075】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図10)に係る追尾装置は、同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサ10と、複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部20と、複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部30と、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスを用い、航跡位置および統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡T1について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部40と、相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部50と、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 60と、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部70と、観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部80と、航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、位置相関処理部20、セル数相関処理部30、位置クラスタリング処理部50および統合セル数観測値監視処理部60にフィードバック入力する遅延処理部90と、位置速度更新予測処理部80から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部100と、を備えている。
【0076】
このように、位置相関マトリクスおよびセル数相関マトリクスの結果を用いて、統合セル数予測値が小さい航跡(セル数が少ない小目標の航跡)について観測値を優先的に割り当て、観測値のクラスタリング結果から得られた観測値クラスタの統合セル数観測値と、統合セル数予測値とを比較し、統合セル数予測値相当の観測値のクラスタリングを行い、統合セル数推定値の算出時に、観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、統合セル数推定値を更新することにより、大目標と小目標とが近接する環境においても、互いの観測値を取り合うことによる追尾性能の劣化を回避して、高精度の航跡を生成することができる。
【0077】
実施の形態2.
上記実施の形態1(図1)では、特に言及しなかったが、図11に示すように、セル数相関処理部30にセル数相関ゲートしきい値制御処理部110を設けてもよい。
図11はこの発明の実施の形態2に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0078】
図11において、セル数相関処理部30には、セル数相関ゲートしきい値を制御するためのセル数相関ゲートしきい値制御処理部110が設けられている。
セル数相関ゲートしきい値制御処理部110は、セル数相関処理部30から得られた統合セル数予測値の大きさに応じて、条件式(2)のセル数相関ゲートしきい値を、段階的に可変設定する。
【0079】
これにより、セル数相関処理部30は、セル数相関ゲートしきい値制御処理部110で設定されたセル数相関ゲートしきい値を用いて、前述と同様に、条件式(2)に基づく演算を行い、セル数相関マトリクス(図4)を算出する。
【0080】
図12はセル数相関ゲートしきい値制御処理部110の動作を示す説明図であり、統合セル数予測値A、B、Cに応じたセル数相関ゲートしきい値(以下、単に「しきい値」ともいう)ThA、ThB、ThCの設定例を示している。
【0081】
図12において、セル数相関処理部30は、以下のように、統合セル数予測値の領域に応じて、しきい値を可変設定する。
「0<統合セル数予測値≦A」の領域においては、しきい値ThA、
「A<統合セル数予測値≦B」の領域においては、しきい値ThB、
「B<統合セル数予測値≦C」の領域においては、しきい値ThC。
【0082】
このように、セル数相関ゲートしきい値は、統合セル数予測値の大きさに応じて、3段階に分割して設定される。
なお、図12の例では、説明を簡略化するために、セル数相関ゲートしきい値を3段階に分割した場合を示しているが、ユーザの要求に応じて、任意のN段階(Nは自然数)に設定可能なことは言うまでもない。
【0083】
ここで、統合セル数予測値の領域ごとに、しきい値をN段階に分ける理由は、大目標(図2内の航跡T2)の場合は、条件式(2)の左辺(|統合セル数予測値−セル数観測値|)が、小目標(図2内の航跡T1)の場合よりも大きくなると予想されることから、セル数相関ゲートしきい値も、大目標の場合の方が小目標の場合よりも大きめに設定する必要があり、大目標と小目標とによって、セル数相関ゲートしきい値の最適値が異なると考えられるからである。
【0084】
以上のように、この発明の実施の形態2(図11、図12)に係る追尾装置は、セル数相関処理部30に設けられたセル数相関ゲートしきい値制御処理部110を備えており、セル数相関ゲートしきい値制御処理部110は、統合セル数予測値の大きさに応じて、セル数相関処理部におけるセル数相関ゲートしきい値を制御する。
【0085】
このように、統合セル数予測値の大きさに応じて、セル数相関ゲートしきい値を複数段階に分割設定することにより、セル数相関ゲートしきい値を、大目標および小目標に応じて、ある程度、適切に設定することが可能となる。
また、セル数相関ゲートしきい値を適切に決定した結果、大目標と小目標との観測値の取り合いがさらに軽減されるので、航跡の精度をさらに向上させることができる。
【0086】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2(図1、図11)では、特に言及しなかったが、図13に示すように、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間に速度ベクトル補正処理部120を設けてもよい。
図13はこの発明の実施の形態3に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0087】
図13において、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間には、速度ベクトル補正処理部120が挿入されている。
速度ベクトル補正処理部120は、目標の通路進行方向のセンターラインと一致するように、航跡の速度ベクトルの向きを再計算して補正する。
【0088】
図14は速度ベクトル補正処理部120の動作を示す説明図であり、航跡の速度ベクトルV1の向きを速度ベクトルV2に補正する処理を示している。
図14においては、センターライン210を有する通路200と、通路200上の補正実行領域R内の航跡の位置ベクトルS0(黒丸)と、補正前の航跡の速度ベクトルV1(破線矢印)と、センターライン210の方向に補正後の航跡の速度ベクトルV2(2重線矢印)とが示されている。
【0089】
たとえば、通路200を覆うような大目標の場合、ほぼ通路200の方向に進むことが多いが、航跡の速度ベクトルV1は、検出セルの欠落に起因して、図14のように、通路200の方向とは食い違ってしまう状況となり得る。
このような状況下では、大目標か否かを判定するために、航跡の統合セル数推定値と事前に設定されたしきい値(大目標と判定するための基準値)とを比較し、航跡の統合セル数推定値≧しきい値の場合に大目標と判定して、通路の速度ベクトルV1を通路のセンターライン210の方向に補正することが望ましい。
【0090】
速度ベクトル補正処理部120は、航跡の位置ベクトルS0(位置速度更新予測処理部80から得られた航跡位置推定値)が、通路200内の補正実行領域R内に入り、かつ、航跡の統合セル数推定値が、事前に設定されたしきい値以上の場合に、補正前の航跡の速度ベクトルV1(位置速度更新予測処理部80から得られた航跡速度推定値)の大きさを保存しながら速度ベクトルV1の向きを補正し、補正後の航跡の速度ベクトルV2(補正後航跡速度推定値)のように、センターライン210の方向に一致させる。
【0091】
すなわち、速度ベクトル補正処理部120は、補正前の航跡の速度ベクトルV1から航跡の速度ベクトルV2のように補正して航跡速度推定処理を行い、進行方向の通路200のセンターライン210の方向に一致した補正後航跡速度推定値を算出する。
そして、元の航跡位置速度推定値に、補正後航跡速度推定値を上書きして、新たな補正後航跡位置速度推定値を算出する。
【0092】
また、速度ベクトル補正処理部120は、補正後航跡位置速度推定値を事前に仮定した運動モデルを用いて位置速度予測を行い、補正後航跡位置速度予測値を算出する。
そして、表示処理部100に入力する「時刻kの航跡推定値」として、時刻kの航跡推定値の成分である「時刻kの航跡位置速度推定値」の代わりに、補正後航跡位置速度推定値を生成する。
【0093】
さらに、速度ベクトル補正処理部120は、遅延処理部90に入力する「時刻k+1の航跡予測値」として、時刻k+1の航跡予測値の成分である「時刻k+1の航跡位置速度予測値」の代わりに、補正後航跡位置速度予測値を生成する。
【0094】
以上のように、この発明の実施の形態3(図13、図14)に係る追尾装置は、位置速度更新予測処理部80と遅延処理部90との間に挿入された速度ベクトル補正処理部120を備えており、速度ベクトル補正処理部120は、目標の通路進行方向のセンターライン210と一致するように、航跡の速度ベクトルV1の向きを再計算して補正し、補正後の航跡の速度ベクトルV2を算出する。
【0095】
すなわち、目標が通路200を覆うような大目標であって、航跡の速度ベクトルV1が通路200の方向と食い違うような場合でも、航跡の統合セル数推定値がしきい値以上の場合には大目標と判定して、航跡の速度ベクトルV1を通路200のセンターライン210の方向に補正する。
これにより、航跡の速度精度の高精度化を図ることが可能となる。
【0096】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3(図1、図11、図13)では、特に言及しなかったが、図15に示すように、位置クラスタリング処理部50にクラスタリング調整処理部130を設けてもよい。
【0097】
図15はこの発明の実施の形態4に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図15において、位置クラスタリング処理部50には、クラスタリング調整処理部130が設けられている。
【0098】
クラスタリング調整処理部130は、観測値クラスタを生成する際に、観測値クラスタの統合セル数観測値が過大となり、かつセル数が最小の観測値が複数存在した場合に、観測値クラスタ内におけるセル数が最大の観測値から最も離れた、セル数が最小の観測値を観測値クラスタから除去する。
【0099】
具体的には、クラスタリング調整処理部130は、位置クラスタリング処理部50が、統合セル数観測値監視処理部60からの再クラスタリングフラグ「1」に応答して、観測値クラスタを再度生成する際に、条件式(3)を満たすような、最小のセル数観測値が複数存在する場合に、位置クラスタリング処理部50から観測値クラスタを取得する。
【0100】
続いて、クラスタリング調整処理部130は、位置クラスタリング処理部50から取得した観測値クラスタにおいて、最小の(セル数が最大の観測値から最も遠い)セル数観測値を観測値クラスタから除去し、除去後の観測値クラスタを、位置クラスタリング処理部50に再度入力する。
【0101】
以上のように、この発明の実施の形態4(図15)に係る追尾装置によれば、位置クラスタリング処理部50にクラスタリング調整処理部130を設け、位置クラスタリングを行う際の最小のセル数観測値を、セル数が最大の観測値から最も遠い観測値として、位置クラスタリング処理から除去することにより、位置クラスタリング処理部50の処理を継続することが可能となる。
また、セル数が最大の観測値から最も遠い観測値は、他目標からの観測値である可能性が高いことから、他目標への誤追尾を軽減することもできる。
【0102】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4(図1、図11、図13、図15)では、特に言及しなかったが、図16に示すように、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を除去してもよい。
【0103】
図16はこの発明の実施の形態5に係る追尾装置の機能構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図16において、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間には、クラスタリング開始判定処理部140が挿入されている。
【0104】
クラスタリング開始判定処理部140は、事前に設定されたサンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、位置クラスタリングの開始時期と判定し、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングの開始指令を位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0105】
すなわち、クラスタリング開始判定処理部140は、遅延処理部90から得られた同一航跡番号に対する航跡予測値がMサンプル以上入力された場合に、位置クラスタリング処理部50による統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理を開始させ、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を除去する。
【0106】
以上のように、この発明の実施の形態5(図16)に係る追尾装置によれば、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、航跡予測値の取得数がサンプリングしきい値を超えた場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング開始時期と判定し、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を位置クラスタリング処理の対象から除去するように構成したので、初期時間帯の航跡精度の安定化を図ることが可能となる。
【0107】
実施の形態6.
上記実施の形態5(図16)では、クラスタリング開始判定処理部140において、サンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、位置クラスタリングの開始時期と判定したが、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内である場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理の開始時期と判定してもよい。
【0108】
この場合、図16内のクラスタリング開始判定処理部140は、遅延処理部90から得られた航跡予測値における統合セル数予測値について、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内であれば、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理を実行させる。
【0109】
一方、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値を超えた場合には、図16内のクラスタリング開始判定処理部140は、観測値クラスタの重心点から最も離れた観測値を除去した位置クラスタリングを実行させるための制御信号を、位置クラスタリング処理部50に入力する。
【0110】
以上のように、この発明の実施の形態6(図16)に係る追尾装置によれば、遅延処理部90と位置クラスタリング処理部50との間にクラスタリング開始判定処理部140を設け、クラスタリング開始判定処理部140は、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値がしきい値以内である場合に、統合セル数予測値に基づく位置クラスタリング処理の開始時期と判定し、初期時間帯の不安定な統合セル数予測値を位置クラスタリング処理の対象から除去するように構成したので、初期時間帯の航跡精度の安定化を図ることが可能となる。
【0111】
なお、上記実施の形態3〜6においては、前述の実施の形態1(図1)の構成に適用した場合について説明したが、他の実施の形態への適用も可能であり、また、任意に重複して適用することも可能であり、それぞれの相乗作用効果を奏することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0112】
1〜5 重心点、10 センサ、20 位置相関処理部、30 セル数相関処理部、40 相関調停処理部、50 位置クラスタリング処理部、60 統合セル数観測値監視処理部、70 統合セル数更新予測処理部、80 位置速度更新予測処理部、90 遅延処理部、100 表示処理部、110 しきい値制御処理部、120 速度ベクトル補正処理部、130 クラスタリング調整処理部、140 クラスタリング開始判定処理部、200 通路、210 センターライン、M1 位置相関マトリクス、M2 セル数相関マトリクス、M3 相関調停マトリクス、R 補正実行領域、S0 位置ベクトル、T1、T2 航跡、ThA〜ThC しきい値、V1、V2 速度ベクトル、Z1〜Z5 観測値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサと、
前記複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部と、
前記複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部と、
前記位置相関マトリクスおよび前記セル数相関マトリクスを用い、前記航跡位置および前記統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部と、
前記相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部と、
前記観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、前記統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 と、
前記観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部と、
前記観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部と、
前記航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、前記位置相関処理部、前記セル数相関処理部、前記位置クラスタリング処理部および前記統合セル数観測値監視処理部にフィードバック入力する遅延処理部と、
前記位置速度更新予測処理部から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
前記セル数相関処理部に設けられたセル数相関ゲートしきい値制御処理部を備え、
前記セル数相関ゲートしきい値制御処理部は、前記統合セル数予測値の大きさに応じて、前記セル数相関処理部におけるセル数相関ゲートしきい値を制御することを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項3】
前記位置速度更新予測処理部と前記遅延処理部との間に挿入された速度ベクトル補正処理部を備え、
前記速度ベクトル補正処理部は、目標の通路進行方向のセンターラインと一致するように、航跡の速度ベクトルの向きを再計算して補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の追尾装置。
【請求項4】
前記位置クラスタリング処理部に設けられたクラスタリング調整処理部を備え、
前記クラスタリング調整処理部は、前記観測値クラスタを生成する際に、前記観測値クラスタの統合セル数観測値が過大となり、かつセル数が最小の観測値が複数存在した場合に、前記観測値クラスタ内におけるセル数が最大の観測値から最も離れた、セル数が最小の観測値を観測値クラスタから除去することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【請求項5】
前記遅延処理部と前記位置クラスタリング処理部との間に挿入されたクラスタリング開始判定処理部を備え、
前記クラスタリング開始判定処理部は、事前に設定されたサンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、前記統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングを開始と判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【請求項6】
前記遅延処理部と前記位置クラスタリング処理部との間に挿入されたクラスタリング開始判定処理部を備え、
前記クラスタリング開始判定処理部は、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内である場合に、前記統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングを開始と判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【請求項1】
同一目標から複数の検出位置を得る高分解能のセンサと、
前記複数の検出位置を用いて航跡位置予測値と位置観測値とを対応付けることにより、位置相関マトリクスを生成する位置相関処理部と、
前記複数の検出位置を用いてセル数観測値と統合セル数予測値とを対応付けることにより、セル数相関マトリクスを生成するセル数相関処理部と、
前記位置相関マトリクスおよび前記セル数相関マトリクスを用い、前記航跡位置および前記統合セル数予測値を考慮して、統合セル数が小さい航跡について観測値を優先的に割り当てることにより相関調停結果を生成する相関調停処理部と、
前記相関調停結果を用いて、統合セル数予測値に基づき観測値クラスタを生成する位置クラスタリング処理部と、
前記観測値クラスタの統合セル数観測値が過大にならないように、前記統合セル数観測値を監視する統合セル数観測値監視処理部 と、
前記観測値クラスタの統合セル数が一定となる運動モデルに基づき、カルマンフィルタにより統合セル数推定値および更新後の統合セル数予測値を生成する統合セル数更新予測処理部と、
前記観測値クラスタの重心点を観測値として、カルマンフィルタにより航跡の位置速度予測値および位置速度推定値を生成する位置速度更新予測処理部と、
前記航跡の位置速度予測値を1サンプリング分だけ遅延させて、前記位置相関処理部、前記セル数相関処理部、前記位置クラスタリング処理部および前記統合セル数観測値監視処理部にフィードバック入力する遅延処理部と、
前記位置速度更新予測処理部から最終的に生成される航跡の位置速度推定値および統合セル数推定値をオペレータに表示する表示処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
前記セル数相関処理部に設けられたセル数相関ゲートしきい値制御処理部を備え、
前記セル数相関ゲートしきい値制御処理部は、前記統合セル数予測値の大きさに応じて、前記セル数相関処理部におけるセル数相関ゲートしきい値を制御することを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項3】
前記位置速度更新予測処理部と前記遅延処理部との間に挿入された速度ベクトル補正処理部を備え、
前記速度ベクトル補正処理部は、目標の通路進行方向のセンターラインと一致するように、航跡の速度ベクトルの向きを再計算して補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の追尾装置。
【請求項4】
前記位置クラスタリング処理部に設けられたクラスタリング調整処理部を備え、
前記クラスタリング調整処理部は、前記観測値クラスタを生成する際に、前記観測値クラスタの統合セル数観測値が過大となり、かつセル数が最小の観測値が複数存在した場合に、前記観測値クラスタ内におけるセル数が最大の観測値から最も離れた、セル数が最小の観測値を観測値クラスタから除去することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【請求項5】
前記遅延処理部と前記位置クラスタリング処理部との間に挿入されたクラスタリング開始判定処理部を備え、
前記クラスタリング開始判定処理部は、事前に設定されたサンプリングしきい値を超えて航跡予測値が得られた場合に、前記統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングを開始と判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【請求項6】
前記遅延処理部と前記位置クラスタリング処理部との間に挿入されたクラスタリング開始判定処理部を備え、
前記クラスタリング開始判定処理部は、過去Mサンプル分の統合セル数予測値の平均値と現時刻の統合セル数予測値との差分の絶対値が、事前に設定されたしきい値以内である場合に、前記統合セル数予測値に基づく位置クラスタリングを開始と判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の追尾装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−226924(P2011−226924A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97063(P2010−97063)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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