説明

退色を抑制した製剤

【課題】退色を抑制した製剤の提供。
【解決手段】(1)錠剤または顆粒剤の表面に、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設ける、あるいは(2)有彩色の色素を含有した錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けることによって、製剤の退色を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有彩色の色素を配合し、退色を抑制した製剤、詳しくは有彩色の色素を配合し、かつポリビニルアルコール共重合体で被覆することを特徴とする錠剤または顆粒剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療過誤(メディケーションエラー)を防止するために、様々な対策がとられている。その一つとして、製剤を着色することが考えられる。特に、劇薬等を含有する製剤を赤、青等の有彩色で着色すれば、その製剤が一見して劇薬等と判別できる。
しかしながら、平成9年より公定法が変更となり、屋外の昼光色の光に類似した光を製剤に照射し、製剤の色の変化を観察する必要が生じた。この試験によって、多くの色素、特に、厚生省令で定められた医薬品に使用できるタール色素や医薬品添加物事典に収載されている有彩色(黒、白、灰色以外のすべての色)の色素、たとえば、レーキ化したタール色素、水溶性のタール色素や天然色素の多くは、公定法によって退色することが明らかとなり、製剤を有彩色で着色することは困難となった。
【0003】
一方、カプセル剤の剤皮や製剤のフィルムコート膜として、ポリビニルアルコール、アクリル酸およびメタクリル酸の共重合体が使用されている(例えば、特許文献1、2)。また、錠剤や顆粒剤を上記共重合体で被覆することにより、製剤中の薬物の酸素分解を低減できることが明らかとなっている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】国際公開パンフレット WO02/17848
【特許文献2】国際公開パンフレット WO02/18494
【特許文献3】国際公開パンフレット WO2005/019286
【0004】
本発明者等は、(1)錠剤または顆粒剤の表面に、レーキ化したタール色素、水溶性のタール色素や天然色素等の有彩色の色素およびポリビニルアルコール、特に部分けん化ポリビニルアルコールと重合性ビニル単量体、例えばアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合して得られるポリビニルアルコール共重合体(以下、PVA共重合体と称することがある)を含む被覆層、あるいは(2)上記有彩色の色素を含む錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設ければ、製剤の退色を防止することを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有彩色の色素、例えばレーキ化したタール色素、水溶性のタール色素や天然色素等は、厚生省令で定められた医薬品に使用できるタール色素や医薬品添加物事典に着色剤としての用途が収載され、使用が認められている。しかし、これら色素を製剤中に配合し、昼光色の光を照射した場合には、著しく製剤が退色する例が見られる。また、着色剤を配合した製剤に、汎用されるコーティング剤を被覆しても、退色を防止することは困難であり、実用的に上記色素を配合することはできなくなった。このような実情に鑑み、有彩色製剤の退色防止が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、(1)錠剤または顆粒剤の表面に、レーキ化したタール色素、水溶性のタール色素や天然色素等の有彩色の色素およびポリビニルアルコール、またはその誘導体に重合性ビニル単量体を共重合させて得られるポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層、あるいは(2)上記有彩色の色素を含む錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設ければ、製剤の退色が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)錠剤または顆粒剤の表面に、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤または顆粒剤。
(2)有彩色の色素を含有した錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤または顆粒剤。
(3)当該有彩色の色素が光によって退色しやすい色素である、上記(1)または(2)に記載の錠剤または顆粒剤。
(4)当該有彩色の色素がレーキ化したタール色素である、上記(3)記載の錠剤または顆粒剤。
(5)当該有彩色の色素が水溶性タール色素である、上記(3)記載の錠剤または顆粒剤。
(6)当該有彩色の色素が天然色素である、上記(3)記載の錠剤または顆粒剤。
(7)当該ポリビニルアルコール共重合体が平均重合度100〜2000のポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜300mPa・sである上記(1)から(6)のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
(8)当該ポリビニルアルコール共重合体が平均重合度150〜1000のポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜200mPa・sである上記(7)記載の錠剤または顆粒剤。
(9)当該ポリビニルアルコールが部分けん化ポリビニルアルコールである上記(7)または(8)に記載の錠剤または顆粒剤。
(10)当該重合性ビニル単量体が、不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸類のエステル類及びそれらの塩から選択される1または2以上である上記(7)から(9)のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
(11)当該重合性ビニル単量体が、アクリル酸又はその塩及びメチルメタクリレートであり、共重合する際におけるアクリル酸又はその塩とメチルメタクリレートの重量比が3:7〜0.5:9.5である上記(10)記載の錠剤または顆粒剤。
(12)平均重合度100〜2000の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を共重合する際における重量比が60〜90:7〜38:0.5〜12であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜300mPa・sである上記(7)記載の錠剤または顆粒剤。
(13)公定法において、累積照射量が120万ルクス・時間の光を照射した場合、錠剤または顆粒剤の変色度(ΔE)が5以下である上記(1)から(12)のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
(14)上記(1)から(13)のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤を製造することを目的とした、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含有することを特徴とするコーティング剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、(1)錠剤または顆粒剤の表面に、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けることにより、あるいは(2)有彩色の色素を含有した錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けることにより、当該錠剤または顆粒剤の退色を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用される有彩色の色素としては、医薬分野で使用できるものであればよい。例えば、レーキ化したタール色素、水溶性のタール色素や天然色素等がある。具体的には、レーキ化したタール色素として、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ等がある。水溶性のタール色素として、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色102号、食用赤色2号、食用赤色3号等がある。天然色素として、ウコン抽出液、β−カロチン、カロチン液、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦緑葉青汁乾燥粉末、裸麦緑葉抽出エキス等がある。また、その他の有彩色の色素として、塩化メチルロザニリン、カルミン、感光素201号、パーマネントバイオレット−R−スペシャル、メチレンブルー、酪酸リボフラビン、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム等がある。なお、ここで有彩色とは、上述したように黒、白、灰色以外のすべての色を指す。
【0010】
本発明で使用される有彩色の色素の製剤全量に対する配合量は、水溶性色素の場合、微量でよく、レーキ化した色素の場合、相当量の配合が必要なため、特に定めるものではないが、製剤全量に対し、0.001〜2重量%、好ましくは0.05〜0.75重量%、より好ましくは0.075〜0.5重量%である。製剤全量に対し、0.001重量%よりも少なければ、十分に発色できない恐れがあり、2重量%よりも多ければ、最大投与量を超え、製剤中に配合することができない可能性がある。
【0011】
本発明製剤において、コーティング組成物で主剤として使用されるポリビニルアルコール共重合体は、ポリビニルアルコールまたはその誘導体と少なくとも1種の重合性ビニル単量体とをそれ自体公知の方法で共重合させることにより製造することができる。そのようなポリビニルアルコール共重合体の製造法としては、WO2005/019286やWO02/17848に記載されている。その一例として、ラジカル重合、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法および塊状重合などのそれ自体公知の方法をあげることができる。この重合反応は、通常、重合開始剤の存在下、必要に応じて還元剤(例えば、エリソルビン酸ナトリウム、メタ2重亜硫酸ナトリウム、アスコロビン酸)、連鎖移動剤(例えば2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ラウリルメルカプタン)あるいは分散剤(例えばソルビタンエステル、ラウリルアルコールなどの界面活性剤)等の存在下、水、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、セロソルブ、カルビトール)あるいはそれらの混合物中で実施される。また、未反応の単量体の除去方法、乾燥、粉砕方法等も公知の方法でよく、特に制限はない。
【0012】
本発明のポリビニルアルコール共重合体の原料となるポリビニルアルコールとしては、平均重合度約100〜2000、好ましくは約200〜1300未満、より好ましくは平均重合度約200〜900、さらに好ましくは平均重合度約200〜600、最も好ましいのは平均重合度約300〜500である。また、ポリビニルアルコールのけん化度、すなわち、ポリ酢酸ビニルの酢酸基を水酸基に置換して、ポリビニルアルコールにする工程で置換された水酸基の量をいい、通常けん化度は約96モル%以下、好ましくは78〜96モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用する。このような部分けん化ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルをラジカル重合し、得られたポリ酢酸ビニルを適宜、けん化することによって製造することができ、所望のポリビニルアルコールを製造するためには、適宜、重合度、けん化度をそれ自体公知の方法で制御することによって達成される。
【0013】
なお、こうした部分けん化ポリビニルアルコールは、市販品を使用することも可能であり、例えば、ゴーセノールEG05(日本合成化学製)、EG25(日本合成化学製)、PVA203(クラレ社製)、PVA204(クラレ社製)、PVA205(クラレ社製)、JP−04(日本酢ビ・ポバール社製)、JP−05(日本酢ビ・ポバール社製)等が挙げられる。なお、本発明組成物の主成分のポリビニルアルコールの共重合体の製造においては、原料としてポリビニルアルコールを単独で使用するのみならず、重合度、けん化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを目的に応じて適宜併用することができる。例えば、平均重合度300のポリビニルアルコールと平均重合度1500のポリビニルアルコールとを混合して使用することが可能である。
【0014】
本発明においては、原料としてのポリビニルアルコールは各種変性ポリビニルアルコールを使用することができ、例えばアミン変性ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、チオール変性ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの変性ポリビニルアルコールは、市販品を使用してもよく、あるいは当該分野で公知の方法で製造したものを使用することができる。
【0015】
原料のポリビニルアルコールと重合させるビニル単量体としては、重合性ビニル単量体が好ましく、具体的には不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸のエステル類、不飽和二トリル類、不飽和アミド類、芳香族ビニル類、脂肪族ビニル類、不飽和結合含有複素環類およびそれらの塩である。好ましくは2以上の重合性ビニル単量体を共重合させたものであり、少なくとも1つが不飽和カルボン酸類又はそれらの塩であり、少なくとも1つが不飽和カルボン酸のエステル類である。
【0016】
不飽和カルボン酸類又はそれらの塩類として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸またはそれらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩)、それらのエステル類(例えば置換又は非置換のアルキル、環状アルキルエステル、ポリアルキレングリコールエステル)、不飽和ニトリル類、不飽和アミド類、芳香族ビニル類、脂肪族ビニル類、不飽和結合含有複素環類等を挙げることができる。具体的には、アクリル酸エステル類としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリルレート、ポリプロピレングリコールアクリルレートなどが、メタクリル酸エステル類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリエチレングリコールメタアクリルレートなどが、不飽和ニトリル類としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが、不飽和アミド類としては、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどが、芳香族ビニル類としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが、脂肪族ビニル類としては、酢酸ビニルなどが、不飽和結合含有複素環類としては、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリンなどが例示される。
【0017】
これらの重合性ビニル単量体は、1種または2種以上を組み合わせて部分けん化ポリビニルアルコールと共重合させることができるが、好ましい組合せは、アクリル酸とメタクリル酸エステル(例えばメチルメタクリレート)との混合物を部分けん化ポリビニルアルコールと共重合させるのがよい。ここに部分けん化ポリビニルアルコールと重合性ビニル単量体との重合比は、約6:4〜9:1、好ましくは約8:2である。また、重合性ビニル単量体としてアクリル酸とメチルメタクリレートを使用する場合には、その混合比は約3:7〜0.5:9.5、好ましくは約1.25:8.75である。本発明でコーティング組成物の主成分として使用する好ましいポリビニルアルコール共重合体は、部分けん化ポリビニルアルコール(平均重合度約100〜2000)、メチルメタクリレートおよびアクリル酸の共重合する際における重量比は約60〜90:7〜38:0.5〜12、特に好ましくは、当該重量比が約80:17.5:2.5であるポリビニルアルコール共重合体である。
【0018】
なお、共重合する際における部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸のそれぞれの重量比は、共重合体中の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸の重合比と同じであり、それぞれ約60〜90:7〜38:0.5〜12である。この重合比は、NMRで測定可能である。
【0019】
ポリビニルアルコールおよび重合性ビニル単量体の重合を開始する重合開始剤としては、当該分野で用いられているものを使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物、過酢酸やtert-ブチルハイドロキシパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
【0020】
上述したポリビニルアルコール共重合体は、国際公開パンフレットWO02/18494号公報、WO2005/019286号公報に基づき、製造することが可能である。
【0021】
上記ポリビニルアルコール共重合体において、20℃における2重量%溶液の粘度(B型粘度計で測定、以下粘度はB型粘度計の測定値)が10〜300mPa・s、好ましくは当該溶液の粘度が10〜250mPa・s、より好ましくは当該溶液の粘度が10〜200mPa・sである。
【0022】
従って、ポリビニルアルコール共重合体として適しているのは、平均重合度100〜2000の部分けん化ポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の20℃における2重量%溶液の粘度が10〜300mPa・sであるポリビニルアルコール共重合体、好ましくは平均重合度150〜1000の部分けん化ポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の20℃における2重量%溶液の粘度が10〜250mPa・sであるポリビニルアルコール共重合体である。
【0023】
重合性ビニル単量体として、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を使用する場合、ポリビニルアルコール共重合体としては、平均重合度100〜2000の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を共重合する際における重量比が60〜90:7〜38:0.5〜12であり、当該コポリマーの20℃における2重量%溶液の粘度が10〜300mPa・sであるPVAコポリマー、好ましくは平均重合度150〜1000の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を共重合する際における重量比が60〜90:7〜38:0.5〜12であり、当該コポリマーの20℃における2重量%溶液の粘度が10〜250mPa・sであるPVAコポリマー、より好ましくは平均重合度200〜800の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を共重合する際における重量比が60〜90:7〜38:0.5〜12であり、当該コポリマーの20℃における2重量%溶液の粘度が10〜200mPa・sであるポリビニルアルコール共重合体である。
【0024】
本願発明の製剤中に充填される医薬品としては、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
【0025】
滋養強壮保健薬には、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d−α−トコフェロール)などのビタミンが挙げられる。解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、ノスカピン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。
【0026】
向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが挙げられる。抗うつ薬としては、例えばイミプラミンなどが挙げられる。催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ペルラピンなどが挙げられる。中枢神経作用薬としては、例えばシチコリンなどが挙げられる。脳循環改善剤としては、例えばビンポセチンなどが挙げられる。抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが挙げられる。
【0027】
制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。抗潰瘍剤としては、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジンなどが挙げられる。鎮咳去痰剤としては、例えばテオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシンなどが挙げられる。鎮吐剤としては、例えばメトクロプラミドなどが挙げられる。気管支拡張剤としては、例えばテオフィリンなどが挙げられる。アレルギー用薬としては、アンレキサノクス、セラトロダストなどが挙げられる。歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニドなどが挙げられる。
【0028】
強心剤としては、例えばジゴキシンなどが挙げられる。不整脈用剤としては、例えばピンドロールなどが挙げられる。利尿薬としては、例えばフロセミド、ヒドロクロロチアジドなどが挙げられる。血圧降下剤としては、例えばカンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ペリンドプリルエルブミンなどが挙げられる。
【0029】
冠血管拡張剤としては、例えばモルシドミンなどが挙げられる。末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジンなどが挙げられる。利胆剤としては、例えばトレピプトンなどが挙げられる。抗生物質には、例えばセファドロキシル、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチルなどのセフェム系、アンピシリン、シクラシン、ナリジクス酸、エノキサシンなどの合成抗菌剤、カルモナムナトリウムなどのモノバクタム系、ペネム系及びカルバペネム系抗生物質などが挙げられる。
【0030】
化学療法剤としては、例えばスルファメチゾールなどが挙げられる。糖尿病用剤としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、グリベンクラミド、トログリダゾンなどが挙げられる。骨粗しょう症用剤としては、例えばイプリフラボンなどが挙げられる。骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。鎮けい剤としては、ジメンヒドリナートなどが挙げられる。抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミンなどが挙げられる。ホルモン剤としては、例えばリオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン、酢酸リュープロレリンなどが挙げられる。アルカロイド系麻薬として、アヘン、トコンなどが挙げられる。サルファ剤としては、例えばスルフィソミジン、スルファメチゾールなどが挙げられる。痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチンなどが挙げられる。血液凝固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。抗悪性腫瘍剤としては、例えば5−フルオロウラシル、ウラシル、マイトマイシンなどが挙げられる。
【0031】
これらの医薬は単独または他の医薬との合剤として使用することができる。また、これらの医薬は、患者の疾患、年齢等に応じて適宜、定められた公知の適量が充填される。
【0032】
本発明製剤は、上述したポリビニルアルコール共重合体および薬物を含む製剤であればよいが、要すれば賦形剤を添加することもできる。賦形剤としては、生理学的に使用することができるものを用いることができる。具体的には水溶性賦形剤、水不溶性賦形剤をいずれも使用することができる。より具体的にはぶどう糖、果糖、乳糖、蔗糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ソルビトール、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、結晶セルロース、微結晶セルロース、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素等がある。好ましくは、白糖、結晶セルロース,無水リン酸水素カルシウムである。
【0033】
本願発明の製剤中に配合されるのは、医薬品のみならず動物薬、農薬、食品等ついても配合することができる。
【0034】
当該ポリビニルアルコール共重合体の組成物は、種々の形態をとりうるが、一般に医薬、動物薬、農薬、食品等への実際の適用にあたっては、水性溶液、水性分散液、有機溶媒溶液あるいは有機溶媒分散液の形態で散布、噴霧等の手段で実施するのが好ましい。
【0035】
有彩色の色素を製剤に適用する場合、(1)当該ポリビニルアルコール共重合体の組成物に有彩色の色素を懸濁または溶解し、当該組成物の液を製剤に噴霧してもよいし、(2)有彩色の色素を製剤中に配合し、その製剤にポリビニルアルコール共重合体の溶液を噴霧してもよい。さらに、(3)有彩色の色素を配合した製剤に、有彩色の色素を懸濁または溶解したポリビニルアルコール共重合体の溶液を噴霧してもよい。この中で、特に(1)の方法が好ましい。
【0036】
本発明の製剤としては、日本薬局方第14改正製剤総則記載の固形製剤であればよいが、特に製剤表面にポリビニルアルコール共重合体を被覆できる錠剤または顆粒剤であれば好ましい。
【0037】
製剤が錠剤、顆粒剤の場合、製剤学上通常用いられる方法で製造することができる。例えば、錠剤の場合、直接粉末圧縮法、乾式顆粒圧縮法、半乾式顆粒圧縮法または湿式顆粒圧縮法等がある。顆粒剤の場合、押し出し造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法等がある。
【0038】
錠剤、顆粒剤をポリビニルアルコール共重合体で被覆する方法としては、製剤学上通常用いられる方法で被覆することができる。例えば、パンコーティング法、流動層コーティング法、転動流動層コーティング法等がある。
【実施例】
【0039】
以下に製造例、実施例および比較例を記載して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。
【実施例1】
【0040】
(実験方法)
部分けん化ポリビニルアルコール[平均重合度500、けん化度88%]にアクリル酸およびメチルメタクリレートを共重合させたポリビニルアルコール共重合体(重量比 部分けん化ポリビニルアルコール:メチルメタクリレート:アクリル酸=80:17.5:2.5)70gを精製水900gに溶解した。この溶液に酸化チタン20g、タルク10g、青色1号アルミニュームレーキ色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1gを3000回転、10分間の条件でホモジナイザーを用いて混合分散し、フィルムコーティング用液を調製した。調製したフィルムコーティング用液を直径9mm、重量290mgの白色錠剤に自動コーティング装置(ハイコーターHTC48 フロイント産業)を用いて、12mg/錠の被覆を行い、濃い青色のフィルムコーティング錠を得た。自動コーティング装置における被覆条件は、下記のとおりである。

給気温度:65℃
給気風量:3m3/min
液供給量:8g/min
排気温度:40℃

得られたフィルムコーティング錠を未包装の状態でISO10977(公定法)に規定されている、屋外の昼光の標準である光源を備えた光安定性試験装置(ナガノ科学機械製作所 型式LTL400−D50)中で最大累積積算量が30万ルクス・時間(3000ルクス×100時間)、60万ルクス・時間(3000ルクス×200時間)、120万ルクス・時間(3000ルクス×400時間)光照射をおこなった。得られた試料の変色度(ΔE)を分光色差計(日本電色製 型式SE−2000)をもちいて測定し、未照射品に対しての変色度を算出した。
錠剤の外観は、変色の度合いを3段階にスコアー化し、これを集計して順序化する方法によっておこなった。すなわち、未照射錠剤と光照射錠剤の外観を蛍光燈下および室内散光下に並べて観察を行った。照射後の錠剤の外観を「変化なし」、「ごく僅かに変色」、「退色」の3段階にわけた。

(比較例1)
【0041】
(実験方法)
ポリビニルアルコール共重合体をヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様である。
【0042】
(実験結果)
未照射品と比較した錠剤の変色度を表1に、錠剤の外観を表2に示す。
【表1】


【表2】


ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤の変色度は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤の変色度よりも小さかった。また、ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤の外観は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤に比べ変化は少なかった。なお、ポリビニルアルコール共重合体およびヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤の外観を図1に示す。
【実施例2】
【0043】
(実験方法)
青色1号アルミニュームレーキ色素を赤色3号アルミニュームレーキ色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製)に変更した以外は、実施例1と同様である。

(比較例2)
【0044】
(実験方法)
青色1号アルミニュームレーキ色素を赤色3号アルミニュームレーキ色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製)に変更し、ポリビニルアルコール共重合体をヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R、信越化学株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様である
【0045】
(実験結果)
未照射品と比較した錠剤の変色度を表3に、錠剤の外観を表4に示す。

【表3】


【表4】


ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤の変色度は、実施例1と同様、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤の変色度よりも小さかった。また、ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤の外観は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤に比べ変化は少なかった。なお、ポリビニルアルコール共重合体およびヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤の外観を図2に示す。
【実施例3】
【0046】
(実験方法)
実施例1で用いたフィルムコーティング液中の青色1号アルミニュームレーキ色素を青色1号水溶性色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.15gに変更した以外は、実施例1と同様である。
【0047】
(実験結果)
【表5】


ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤の変色度は小さく、未照射品にくらべ、錠剤の外観も変化は少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
ポリビニルアルコール共重合体で錠剤または顆粒剤を被覆することによって、製剤の退色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】青色1号アルミニュームレーキ色素を配合した錠剤の外観(ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤)
【図2】赤色3号アルミニュームレーキ色素を配合した錠剤の外観(ポリビニルアルコール共重合体で被覆した錠剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースで被覆した錠剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤または顆粒剤の表面に、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤または顆粒剤。
【請求項2】
有彩色の色素を含有した錠剤または顆粒剤の表面に、ポリビニルアルコール共重合体を含む被覆層を設けたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤または顆粒剤。
【請求項3】
当該有彩色の色素が光によって退色しやすい色素である、請求項1または2記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項4】
当該有彩色の色素がレーキ化したタール色素である、請求項3記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項5】
当該有彩色の色素が水溶性タール色素である、請求項3記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項6】
当該有彩色の色素が天然色素である、請求項3記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項7】
当該ポリビニルアルコール共重合体が平均重合度100〜2000のポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜300mPa・sである請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項8】
当該ポリビニルアルコール共重合体が平均重合度150〜1000のポリビニルアルコールと少なくとも1以上の重合性ビニル単量体とを重量比6:4〜9:1の割合で共重合させて得られる共重合体であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜250mPa・sである請求項7記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項9】
当該ポリビニルアルコールが部分けん化ポリビニルアルコールである請求項7または8に記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項10】
当該重合性ビニル単量体が、不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸類のエステル類及びそれらの塩から選択される1または2以上である請求項7〜9のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項11】
当該重合性ビニル単量体が、アクリル酸又はその塩及びメチルメタクリレートであり、共重合する際におけるアクリル酸又はその塩とメチルメタクリレートの重量比が3:7〜0.5:9.5である請求項10記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項12】
平均重合度100〜2000の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレートおよびアクリル酸を共重合する際における重量比が60〜90:7〜38:0.5〜12であり、当該共重合体の溶液の粘度が10〜300mPa・sである請求項7記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項13】
公定法において、累積照射量が120万ルクス・時間の光を照射した場合、錠剤または顆粒剤の変色度(ΔE)が5以下である請求項1〜12のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の錠剤または顆粒剤を製造することを目的とした、有彩色の色素およびポリビニルアルコール共重合体を含有することを特徴とするコーティング剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−28634(P2013−28634A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214016(P2012−214016)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2005−204241(P2005−204241)の分割
【原出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】