説明

退色性プライマー組成物

【課題】塗布状態の目視による確認が可能であり、かつ、塗布した後、光によって十分に退色し得る、シーリング材用プライマー組成物を提供する。
【解決手段】(A)難黄変樹脂よりなるバインダー樹脂と、(B)クルクミン色素、紅麹色素、クロロフィル、トウガラシ色素、マリーゴールド色素およびカラメル色素から選ばれる1種または2種以上の退色性色素とを組成物全体に基づいて0.001〜10重量%含んでなる、シーリング材用プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材用のプライマー組成物、より詳細には、光によって退色し得る着色プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用などのシーリング材の施工において、プライマーの塗布は必須の工程である。しかしながら、プライマーの性状や被着体の種類(サイディングボードなどの多孔質部材)によっては、目視による塗布状態の確認が困難であり、塗り落としや塗りむらの原因となる。このようなプライマーの塗布不良は、シーリング材の剥離につながる。
【0003】
その一方、プライマーの塗布状態を目視で確認できるように、着色料でプライマーを着色することも行われているが、このような着色プライマーが被着体表面(外壁面)にはみ出した場合や付着した場合、意匠上問題となる。
【0004】
そこで、食用青色1号などの所定の食用合成色素をプライマーに配合した水性の光退色性プライマーが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この退色性プライマーに使用されている色素は、溶解性や退色性の点で溶剤系プライマーへの適用には制限がある。さらに、水性プライマーは、低温時の凍結や作業効率の低下が避けられないなど建築現場においては課題が多い。また、使用される色素によっては、退色性も十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−285098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗布状態の目視による確認が可能であり、かつ、塗布した後、光によって十分に退色し得る、特に溶剤系の、シーリング材用プライマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を進めたところ、シーリング材用プライマー組成物において、退色性色素として所定の色素を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の好適な実施態様を含む。
〔1〕 (A)バインダー樹脂と、(B)クルクミン色素、紅麹色素、クロロフィル、トウガラシ色素、マリーゴールド色素およびカラメル色素から選ばれる1種または2種以上の色素とを含んでなる、シーリング材用プライマー組成物。
〔2〕 上記色素(B)を、組成物全体に基づいて0.001〜10重量%含んでなる、上記〔1〕に記載のプライマー組成物。
〔3〕 色素(B)はクルクミン色素を含んでなる、上記〔1〕または〔2〕に記載のプライマー組成物。
〔4〕 色素(B)は紅麹色素を含んでなる、上記〔1〕または〔2〕に記載のプライマー組成物。
〔5〕 色素(B)はクロロフィルを含んでなる、上記〔1〕または〔2〕に記載のプライマー組成物。
〔6〕 バインダー樹脂(A)は難黄変性樹脂を含んでなる、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のプライマー組成物。
〔7〕 難黄変性樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ウレタン樹脂、脂環族ポリイソシアネート、脂環族ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選択される、上記〔6〕に記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプライマー組成物は、所定の退色性色素により着色されているので、塗布状態の目視による確認が可能であり、かつ、塗布した後、光によって十分に退色し得る。したがって、本発明のプライマー組成物によれば、塗り落としや塗りむらによる不具合、および、はみ出しや付着時の意匠上の不具合を回避することができる。
また、本発明のプライマー組成物は、特に溶剤系であるので、水系プライマー組成物が適用困難である作業環境、用途にも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプライマー組成物におけるバインダー樹脂(A)としては、例えば、ポリイソシアネート、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
これらのバインダー樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のプライマー組成物におけるバインダー樹脂の量は、特に限定されないが、作業性、接着性の観点から、組成物全体に基づいて、好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜45重量%である。0.5重量%未満では、特に多孔質被着体における接着性が低下し、50重量%を超えると作業性が著しく低下し、塗り斑などの原因にもなる。
【0011】
上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、従来公知の各種ポリイソシアネート、例えば、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、及びそれらのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0012】
上記ウレタン樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種ウレタン樹脂、例えば、上記ポリイソシアネート化合物とポリオールからなる化合物が挙げられる。ポリオールとしては、従来公知の各種ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールにプロピレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらのオリゴグリコール類;ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンポリオール類;ポリカーボネートポリオール類;ポリエチレンアジペート等のポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール類;ヒマシ油等の水酸基を有する高級脂肪酸エステル類;ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類にビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオール類等)等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0013】
上記アクリル樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種アクリル樹脂、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル等の多価アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシニルおよび(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリル酸脂環式アルキル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等のヘテロ原子含有(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらの重合体、共重合体等が挙げられる。また、これらのアクリル系モノマーと酢酸ビニル、スチレンなどの共重合性モノマーとの共重合体も挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0014】
上記オレフィン樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種オレフィン樹脂、例えば、イソブチレン、シリル基含有イソブチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α−オレフィンの重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0015】
上記ポリエステル樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種ポリエステル樹脂、例えば、ジカルボン酸成分として、例えばテレルタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4.4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、5−Kスルホイソフタル酸等、また、グリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA・アルキレンオキシド付加物等を用いたポリエステル等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0016】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種エポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、線状脂肪族エポキサイド型、脂環族エポキサイド型等のエポキシ樹脂;さらにこれらの変性体、たとえばゴム変性エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルなど)とブタジエン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体との反応生成物]、ウレタン変性エポキシ樹脂[ポリテトラメチレンエーテルグリコール(重量平均分子量500〜5000)に過剰量のジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)を反応させて得られる末端NCO含有ウレタンプレポリマーと、OH含有エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルなど)との反応生成物]、チオコール変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0017】
上記シリコーン樹脂としては特に限定されず、従来公知の各種シリコーン樹脂、例えば、シラン系プライマーの樹脂成分として一般に使用されているものが挙げられ、例えば、平均単位が以下の式:
SiO(4−m−n)/2(OR
〔式中、Rは炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは0.8〜1.8を表し、nは1分子中のケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基の数が1価以上になる値を表す。〕
で示される、ケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
なお、Rの炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、特に限定されず、例えば炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数2〜6のアルケニル基(ビニル基、アリル基等)等が挙げられる。また、Rの炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
本発明において、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0018】
本発明のプライマー組成物は、上記バインダー樹脂として、好ましくは難黄変性樹脂を含んでなる。バインダー樹脂として難黄変性樹脂を使用することで、樹脂の黄変による意匠上の問題も回避することができる。
本発明における「難黄変性樹脂」とは、無色透明で熱や紫外線の外的エネルギーが加えられても発色しにくい樹脂を意味する。
このような難黄変性樹脂としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ウレタン樹脂、脂環族ポリイソシアネート、脂環族ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0019】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。
上記脂肪族ウレタン樹脂としては、例えば、上記脂肪族ポリイソシアネートと上記ポリオールとの化合物等が挙げられる。
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂環族ウレタン樹脂としては、例えば、上記脂環族ポリイソシアネートと上記ポリオールとの化合物等が挙げられる。
また、上記オレフィン樹脂、上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂および上記シリコーン樹脂としては、それぞれ上記に例示したもの等が挙げられる。
【0020】
本発明のプライマー組成物は、バインダー樹脂(A)に加えて、退色性色素として、クルクミン色素、紅麹色素、クロロフィル、トウガラシ色素、マリーゴールド色素およびカラメル色素から選ばれる1種または2種以上の色素(B)を含有する。
【0021】
上記色素(B)として使用される「クルクミン色素」は、ショウガ科の植物ウコン(Curcuma longa L.)の根茎に含まれる黄色色素(アルカリ性の環境下では赤褐色)であり、例えば、1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン等が挙げられる。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
なお、クルクミン色素には、ケト型とエノール型の2つの互変異性体が存在するが、本発明においては特に区別することなく両者を使用することができる。
クルクミン色素は、例えば、ウコンを原料とした有機溶媒抽出によって製造することができる。
また、クルクミン色素は、例えば、商品名「クルクミンW」(保土谷化学株式会社)、「ウィナーエローコンク」(キリヤ化学株式会社)等として市販されている。
【0022】
上記色素(B)として使用される「紅麹色素」は、紅麹菌に含まれる赤色ないし黄色の色素であり、例えば、ルブロパンクタチン(rubropunctatin)、ルブロパンクタミン(rubropunctamine)、モナスコルブリン(monascorubrin)、モナスコルブラミン(monascorubramin)、モナスシン(monascin)、アンカフラビン(ankaflavin)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
紅麹色素は、例えば、紅麹菌から含水有機溶媒抽出によって製造することができる。
また、紅麹色素は、例えば、商品名「モナスレッドLAR」(いずれも保土谷化学株式会社)、「モナスコレッドPG」(キリヤ化学株式会社)等として市販されている。
【0023】
上記色素(B)として使用される「クロロフィル」は、植物、シアノバクテリア、光合成細菌等に含まれる緑色(植物等)ないし赤色(紅色細菌等)の色素であり、例えば、各種のクロロフィル(クロロフィルa、b、c、c、d等)、各種のバクテリオクロロフィル(バクテリオクロロフィルa、b、c、d、e、f、g等)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
クロロフィルは、例えば、植物、シアノバクテリア、光合成細菌等から有機溶媒抽出によって製造することができる。
また、クロロフィルは、例えば、商品名「ネオグリーンO」(保土谷化学株式会社)等として市販されている。
【0024】
上記色素(B)として使用される「トウガラシ色素」は、例えば、ナス科の植物トウガラシ(別名パプリカ)(Capsicum annuum)の果実中に含まれる橙黄色ないし赤橙色の色素であり、例えば、カプサンチン(capsanthin)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
トウガラシ色素は、例えば、トウガラシ(パプリカ)の果実から有機溶媒抽出によって製造することができる。
また、トウガラシ色素は、例えば、商品名「カプロチンL」(保土谷化学株式会社)等として市販されている。
【0025】
上記色素(B)として使用される「マリーゴールド色素」は、マリーゴールドの花中に含まれる黄色ないし橙色の色素であり、例えば、ルテイン(lutein)、ゼアキサンチン(zeaxanthin)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
マリーゴールド色素は、例えば、マリーゴールドの花から有機溶媒抽出によって製造することができる。
また、マリーゴールド色素は、例えば、商品名「マリーゴールドO」(保土谷化学株式会社)等として市販されている。
【0026】
上記色素(B)として使用される「カラメル色素」は、デンプン加水分解物、糖蜜の食用炭水化物または糖類を熱処理して得られた茶色色素である。これらは、単独または2種以上の混合物で使用することができる。
カラメル色素は、例えば、デンプン加水分解物、ブドウ糖、砂糖などを、熱処理(例えば170〜200℃)することによって製造することができる。
また、カラメル色素は、例えば、商品名「OSカラメルPM」(保土谷化学株式会社)等として市販されている。
【0027】
上記色素(B)を含有する本発明のプライマー組成物は、その色素に応じた色(例えばクルクミン色素の場合、黄色(アルカリ性組成物の場合、赤褐色))を呈するので、その塗布状態を目視によって確認することができる。一方、色素(B)は光(特に紫外線)によって退色して無色になる。例えばクルクミン色素の場合、その構造中のオレフィン二重結合部分で環化反応が進行し、黄色から無色へ変化する。その結果、本発明のプライマー組成物を被着体に塗布後、光に暴露した場合、比較的短時間で、かつ十分に退色する。したがって、本発明のプライマー組成物は、被着体表面にはみ出した場合や付着した場合も、意匠上の問題を生じさせない。
【0028】
また、上記色素(B)は、芳香族化合物(トルエン等)、アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン(アセトン)等の有機溶媒に溶解することから、溶剤系プライマー組成物に含有させることもできる。この場合、使用される溶剤に応じて色素(B)を選択することができる。
【0029】
本発明のプライマー組成物における色素(B)の量は、特に限定されないが、塗布状態の確認の容易性、退色性などの観点から、組成物全体に基づいて、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。0.001重量%未満では、塗布状況の確認が困難になり、10重量%を超えると退色までの日数が多く掛かり過ぎたり、北面では十分退色しないなどの問題が懸念される。
【0030】
本発明のプライマー組成物は、上記成分(A)および(B)に加えて、必要に応じて、溶剤(C)、密着剤(D)、触媒(E)などのプライマー組成物の添加剤として既知の成分を含有していてもよい。
【0031】
上記溶剤(C)としては、例えば、芳香族化合物(トルエン、キシレン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル(ブチルセロソルブ等)リグロイン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のプライマー組成物における溶媒の量は、特に限定されないが、作業性、皮膜形成速度の観点から、組成物全体に基づいて、好ましくは40〜99重量%、より好ましくは50〜99重量%である。
【0032】
上記密着剤(D)としては、例えば、シランカップリング剤[例えばγ−(α−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトシキシリルプロピル)アミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(n−ブチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(シクロヘキシル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン等]、シリケート化合物(例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン;およびエチルポリシリケート、プロピルポリシリケート、ブチルポリシリケート、メチルセロソルブオルソシリケート、n−プロピルオルソシリケート、テトラメチルシリケートなどのシリケート類)、シロキサン化合物(例えばドデカメチルペンタシロキサン等)、オルガノポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のプライマー組成物における密着剤の量は、特に限定されないが、接着性の観点から、組成物全体に基づいて、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
【0033】
上記触媒(E)としては、例えば、ジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のスズ系触媒や、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルエチルアセトアセテート等のチタン系触媒などが挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のプライマー組成物における触媒の量は、特に限定されないが、皮膜形成速度の観点から、組成物全体に基づいて、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0034】
本発明のプライマー組成物は、さらに必要に応じて、通常の無機充填材(ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等)、上記色素(B)以外の退色性着色剤(例えば、特開2002−285098号公報に記載の合成色素)などを適量含有することもできる。
【0035】
本発明のプライマー組成物は、塗布状態を目視によって確認することができ、かつ、光に暴露した場合、十分に退色し得る。例えば、クルクミン色素を組成物全体に基づいて0.01〜5重量%含有するプライマー組成物は、被着体に10〜100μmの厚さで塗布後、日中屋外に暴露した場合、数時間から数日間は目視により塗布状態を確認することができるが、それ以降は退色により目視にて確認することが困難になる。
したがって、本発明のプライマー組成物は、例えば、建築用シーリング材などの各種シーリング材用のプライマー組成物として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0036】
〔実施例1〜9〕
溶剤、バインダー樹脂、密着剤、触媒および退色性色素の各成分を、表1に記載の量比(重量部:ただし、成分が溶剤を含有する場合、溶剤を含めた配合量である。)で混合し、プライマー組成物を得た。
【0037】
〔比較例1および2〕
溶剤、バインダー樹脂、密着剤および触媒の各成分を、表1に記載の量比(重量部:ただし、成分が溶剤を含有する場合、溶剤を含めた配合量である。)で混合し、プライマー組成物を得た。
【0038】
〔性能試験〕
(塗布状態視認性)
木質系サイディングボート(モエンエクセラード;ニチハ(株)製)の小口面に各プライマーを370ml/m塗布し、20℃×1時間後、目視にて確認し、以下のように評価した。
○:プライマーの塗布状況が容易に確認できる。
×:プライマーの塗布状況が確認しにくい。
【0039】
(退色性)
白色塗装面に各プライマーを270ml/m塗布し、屋外南面垂直暴露2日後、目視にて確認し、以下のように評価した。
○:プライマーの色調が確認できない。
×:プライマーの色調が確認できる。
【0040】
【表1】

【0041】
脚注)
1)脂肪族ポリイソシアネート:イソホロンジイソシアネート70重量%ソルベントナフサ溶液
2)アクリル樹脂:アクリット1403EA(アクリル樹脂40重量%、酢酸エチル60重量%、大成ファインケミカル(株))
3)メルカプトシラン:KBM803(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株))
4)クルクミン色素:クルクミンW(クルクミン5重量%プロピレングリコール溶液、保土谷化学(株))
5)紅麹色素:モナスレッドLAR(紅麹色素50重量%エチルアルコール溶液、保土谷化学(株))
6)クロロフィル:ネオグリーンO(クロロフィル50重量%植物油溶液、保土谷化学(株))
7)トウガラシ色素:カプロチンL(トウガラシ色素98重量%ミックストコフェロール溶液、保土谷化学(株))
8)マリーゴールド色素:マリーゴールドO(マリーゴールド色素7重量%植物油溶液、保土谷化学(株))
9)カラメル色素:OSカラメルPM(カラメル40重量%グリセリンエステル溶液、保土谷化学(株))
10)錫化合物:ネオスタンU−8(ジブチル錫ジオクトエート、日東化成(株))
【0042】
表1から明らかに、所定の色素を含有するプライマー組成物(実施例1〜9)では、プライマーの塗布状態が確認でき、かつ、屋外南面垂直暴露2日後、目視にて確認しプライマーの色調が消失していることが認められた。一方、所定の色素を含有しないプライマー組成物(比較例1および2)では、プライマーの塗布状態の目視による確認が困難であることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂と、(B)クルクミン色素、紅麹色素、クロロフィル、トウガラシ色素、マリーゴールド色素およびカラメル色素から選ばれる1種または2種以上の色素とを含んでなる、シーリング材用プライマー組成物。
【請求項2】
上記色素(B)を、組成物全体に基づいて0.001〜10重量%含んでなる、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
色素(B)はクルクミン色素を含んでなる、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
色素(B)は紅麹色素を含んでなる、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
色素(B)はクロロフィルを含んでなる、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂(A)は難黄変性樹脂を含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項7】
難黄変性樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ウレタン樹脂、脂環族ポリイソシアネート、脂環族ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選択される、請求項6に記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2010−195850(P2010−195850A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39056(P2009−39056)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】