説明

退色速度改善を示すフォトクロミック材料

【課題】本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料を提供すること。
【解決手段】本質的に重合性不飽和基を含まず、a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;およびb)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基を含むさまざまなフォトクロミック材料が提供される。代替物実施態様は、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの他の位置のさまざまな置換基を含む。基材と、基材の少なくとも一部と接触する上記フォトクロミック材料の1つとを含むフォトクロミック物品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年10月30日に出願された、米国仮特許出願第60/855,270号に対する優先権を主張し、この出願は本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、全体として、フォトクロミック材料に関し、より詳しくは、退色速度改善を示すインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含むフォトクロミック材料に関する。本発明は、さらに、そのようなフォトクロミック材料を含むフォトクロミック物品に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
フォトクロミック材料は、特定の波長の電磁放射に応答して1つの形(または状態)から別の形に構造変換され、それぞれの形が特有の可視放射の吸収スペクトルを有する。例えば、熱的に可逆的なフォトクロミック材料は、化学放射に応答して基底状態形から活性化状態形へ変換され、熱エネルギーに応答して化学放射非存在下で基底状態形へ戻ることができる。本明細書中で用いられる用語「化学放射(actinic radiation)」は、フォトクロミック材料を1つの形または状態から別の形に変換させることができる電磁放射を指す。
【0004】
眼科用途に用いられるようになっているフォトクロミック材料は、化学放射に曝露されていないとき(すなわち基底状態形で)、通常、本質的に無色または「光学的に透明」であり、化学放射に曝露されると、フォトクロミック材料の活性化状態形の吸収スペクトルに特有の可視の色を示す。1つ以上のフォトクロミック材料を含むフォトクロミック組成物および物品、例えば眼鏡類利用のためのフォトクロミックレンズは、一般に、含まれるフォトクロミック材料(単数または複数)の光学的に透明な状態および着色状態に対応する透明な状態および着色状態を示すことができる。
【0005】
特定の用途の場合、フォトクロミック材料は、できるだけ速く無色の基底状態形から着色した活性化状態形へ変換させることができるのが望ましい。多くの場合、さらに、フォトクロミック材料は、できるだけ速く着色した活性化形から無色の基底状態形へ逆変換されて戻すことができるのが望ましい。例えば、フォトクロミック眼鏡類の用途では、フォトクロミック材料を含む眼科用レンズは、着用者が屋内などの低化学放射の区域から、太陽光線に曝露されるような高化学放射の区域へ移動すると、透明状態から着色状態へ変換されてよい。レンズが着色すると、レンズを通って着用者の眼に透過する電磁スペクトルの可視領域および/または紫外領域内の波長を有する電磁放射が減少する。言い換えると、着色状態にあるレンズによって透明状態にあるより多くの電磁放射が吸収される。その後、着用者が移動して高化学放射の区域から低化学放射の区域に戻ると、眼鏡類の中のフォトクロミック材料は、化学放射および熱エネルギーの吸収がなければ、着色した活性化形から光学的に透明な基底状態形へ戻ってよい。化学放射に暴露された後、光学的に透明な状態から着色状態への移行に数分以上かかると、着色状態のレンズから導かれることがある可視および/または紫外放射の透過率減少の効果が低下することがある。さらに、化学放射から引き離された後、着色した状態から光学的に透明な状態への移行に数分以上かかると、着用者の視覚は、周囲の光の低下と着色レンズを通る可視光の透過率減少との複合効果によって、この時間の間、最適状態を下回ることがある。従って、光学的に透明な基底状態形から着色した活性化状態形へ、ならびに着色した活性化状態形から光学的に透明な基底状態形へ、より速く移行することができるフォトクロミック材料を開発することが望ましい。
【0006】
さらに、従来のフォトクロミック材料は、多くの場合、「方向」依存性を示す。すなわち色の変化は、フォトクロミック材料が直射日光などの光源に直接向き合うとき最もはっきりしており、フォトクロミック効果は、材料が光源に間接的に暴露されるとき曖昧になるかまたは完了度が低くなる。従って、方向依存性が少なく、フォトクロミック材料に対する光源の配向に実質的に依存しない確実性の高い色変化の度合いを示すフォトクロミック材料への求めがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明によれば、本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料が提供される。フォトクロミック材料は、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した2つの基であって、一緒になってスピロ環基を形成することがない2つの基、
を含む。
【0008】
本発明は、さらに、本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料を提供する。フォトクロミック材料は、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6−位および7−位のそれぞれに結合した電子供与性が中から強の基、
を含む、
さらに、本発明は、
(a)基材、および
(b)任意の上記フォトクロミック材料であって、基材の少なくとも一部と接触しているフォトクロミック材料、
を含むフォトクロミック物品を提供する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料であって、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した2つの基であって、一緒になってスピロ環基を形成することがない2つの基、
を含むフォトクロミック材料。
(項目2)
前記電子吸引性の非共役基は、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C〜C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、または−O−C(O)−R基を含み、RはC〜C10アルキル、C〜C10ハロアルキルまたはC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖基または分岐基である、項目1に記載のフォトクロミック材料。
(項目3)
前記電子吸引性の非共役基は、トリフルオロメチル基を含む、項目2に記載のフォトクロミック材料。
(項目4)
前記13−位に結合した前記2つの基のそれぞれは、独立に、(C〜C)アルキル基、(C〜C)アルコキシ基、ヒドロキシ(C〜C)アルキル基、または式
−Z[(OC(OC(OC]Z’もしくは
−[(OC(OC(OC]Z’
によって表され、−Zは−C(O)−または−CH−であり、Z’はヒドロキシ、エポキシまたはC〜Cアルコキシであり、文字x、yおよびzはそれぞれ0から50の間の数であり、x、yおよびzの和は2から50の間である、ポリアルコキシル化基Tを含む、項目1に記載のフォトクロミック材料。
(項目5)
前記フォトクロミック材料は、11−位に前記電子吸引性の非共役基のない類似のインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射の閉環形吸収スペクトルと比較すると深色側に移動した電磁放射の閉環形吸収スペクトルを有する、項目1に記載のフォトクロミック材料。
(項目6)
本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料であって、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6−位および7−位のそれぞれに結合した電子供与性が中から強の基、
を含むフォトクロミック材料。
(項目7)
前記電子吸引性の非共役基は、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C〜C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、または前記O−C(O)−R基であって、RはC〜C10アルキル、C〜C10ハロアルキルまたはC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖または分岐基である基を含む、項目6に記載のフォトクロミック材料。
(項目8)
前記電子吸引性の非共役基は、トリフルオロメチル基を含む、項目7に記載のフォトクロミック材料。
(項目9)
電子供与性が中から強の前記2つの基は、それぞれ独立に、
(i)−OR’基であって、R’は、フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであるか、またはR’は、CH(R’)Q’’基であって、R’は、水素またはC〜Cアルキルであり、Q’’は、−CN、−COOH、−COOCHまたは−COOCHCHである基;
(ii)−N(R15)R16であって、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素、C1〜C8アルキル、フェニル、ナフチル、前記複素芳香族のフラニル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、チエニル基、ベンゾチエン−2−イル基、ベンゾチエン−3−イル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾピリジル基およびフルオレニル基、C1〜C8アルキルアリール、C3〜C20シクロアルキル、C4〜C20ビシクロアルキル、C5〜C20トリシクロアルキルおよびC1〜C20アルコキシアルキルを含み、前記アリール基は、フェニルまたはナフチルである基;
(iii)次の図式
【化14】


によって表される窒素含有環であって、Yは−CH2−、−CH(R17)−、−C(R17)(R17)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)2−および−C(R17)(アリール)−からなる群から選ばれ、Xは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−NH−、−NR17−および−N−アリールからなる群から選ばれ、R17はC1〜C6アルキルであり、前記アリール置換基はフェニルまたはナフチルであり、mは整数1、2または3であり、pは整数0、1、2または3であり、pが0のときXはYである環;または
(iv)次の図式
【化15】


の1つによって表される基であって、R19、R20およびR21は、それぞれ水素、C1〜C5アルキル、フェニルまたはナフチルであるかまたは、前記R19基とR20基とは一緒になって5から8の炭素原子の環を形成してよく、R18はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フルオロまたはクロロである基
を含む、項目6に記載のフォトクロミック材料。
(項目10)
前記フォトクロミック材料は、11−位に前記電子吸引性の非共役基のない類似のインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射の閉環形吸収スペクトルと比較すると深色側に移動した電磁放射の閉環形吸収スペクトルを有する、項目1に記載のフォトクロミック材料。
(項目11)
本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料であって、
【化16】


によって表され、
BおよびB’は、それぞれ独立に、
メタロセニル基;
反応性置換基または適合性置換基で一置換されたアリール基;
9−ジュロリジニル、非置換、一置換、二置換または三置換のフェニルおよびナフチルから選ばれたアリール基、非置換、一置換または二置換のピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニルまたはフルオレニルから選ばれた複素芳香族基であって、前記アリールおよび複素芳香族の置換基は、それぞれ独立に、
ヒドロキシ、アリール、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール、ハロアリール、C〜Cシクロアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C12)アルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C12)アルコキシ、アリール(C〜C12)アルキル、アリール(C〜C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C〜C12)アルキル、アリールオキシ(C〜C12)アルコキシ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール(C〜C12)アルキル、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール(C〜C12)アルキル、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール(C〜C12)アルコキシ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール(C〜C12)アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C〜C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジノ、C〜C12アルキル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12アルコキシ、モノ(C〜C12)アルコキシ(C〜C12)アルキル、ハロゲンまたは−C(=O)R22であり、R22は、−OR23、−N(R24)R25、ピペリジノまたはモルホリノであり、R23は、アリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルであり、R24およびR25は、それぞれ独立に、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルあるいは置換または非置換フェニルであり、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立にC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリジノ、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニルおよびアクリジニルから選ばれた非置換または一置換の基であって、前記置換基は、それぞれ独立に、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニルまたはハロゲンである基;
4−置換フェニルであって、前記置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−(CH)−、−(CH−または−[O−(CH−であって、eは2から6の範囲の整数であり、fは1から50の範囲の整数であり、前記置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基と結合している4−置換フェニル;
【化17】


によって表される基であって、Pは−CH−または−O−であり;Q’’’は−O−または置換窒素であり、前記置換窒素の置換基は水素、C〜C12アルキルまたはC〜C12アシルであり、Q’’’が置換窒素ならばPは−CH−であり;R26は、それぞれ独立に、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシまたはハロゲンであり;R27およびR28は、それぞれ独立に、水素またはC〜C12アルキルであり;jは0から2の範囲の整数である基;
であるかあるいは、
BおよびB’は一緒になってフルオレン−9−イリデンまたは一置換または二置換フルオレン−9−イリデンを形成し、前記フルオレン−9−イリデンの置換基はそれぞれ独立にC〜C12アルキル、C〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、
、R、RおよびR12は、それぞれ独立に
水素、C〜Cアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、C〜Cシクロアルキルまたは非置換、一置換または二置換フェニルを含み、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立に、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
−OR40または−OC(=O)R40であって、R40は、水素、アミン、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルまたは非置換、一置換または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立に、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
反応性置換基または適合性置換基;
4−置換フェニルであって、前記置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−(CH)−、−(CH−または−[O−(CH−であり、eは2から6の範囲の整数であり、fは1から50の範囲の整数であり、前記置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基に連結している基;
−N(R41)R42であって、R41およびR42は、それぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜C16ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたはC〜C20アルコキシ(C〜C)アルキルであるか、またはR41およびR42は、窒素原子と一緒になってC〜C20ヘテロビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する基;
【化18】


によって表される窒素含有環であって、−V−は、個別にそれぞれ独立に、−CH−、−CH(R43)−、−C(R43−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−および−C(R43)(アリール)−から選ばれ、R43は、それぞれ独立に、C〜Cアルキルであり、アリールはそれぞれ独立にフェニルまたはナフチルであり;−W−は、−V−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R43)−または−N(アリール)であり;sは1から3の範囲の整数であり;rは0から3の範囲の整数であり、rが0ならば−W−は−Vと同じである環;または
【化19】


によって表される基であって、R44は、それぞれ独立に、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロであり;R45、R46およびR47は、それぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、フェニルまたはナフチルであるか、またはR45とR46とは一緒になって5から8の炭素原子の環を形成し、pは0から3の範囲の整数である基;
を含み、
およびRは、それぞれ独立に、電子供与性が中から強の基を含み;
10は、R、R、RおよびR12に関して上記に記載の任意の基またはメタロセニル基を含み;
11は、電子吸引性の非共役基を含み;
13およびR14は、スピロ環基を形成せず、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基を含む、
フォトクロミック材料。
(項目12)
およびRは、それぞれ独立に、
(i)−OR’基であって、R’は、フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであるか、またはR’は、CH(R’)Q’’基であり、R’は、水素またはC〜Cアルキルであり、Q’’は、−CN、−COOH、−COOCH、または−COOCHCHである基;
(ii)−N(R15)R16であって、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素、C1〜C8アルキル、フェニル、ナフチル、複素芳香族のフラニル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、チエニル基、ベンゾチエン−2−イル基、ベンゾチエン−3−イル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾピリジル基およびフルオレニル基、C1〜C8アルキルアリール、C3〜C20シクロアルキル、C4〜C20ビシクロアルキル、C5〜C20トリシクロアルキルおよびC1〜C20アルコキシアルキルを含み、前記アリール基は、フェニルまたはナフチルである基;
(iii)次の図式
【化20】


によって表される窒素含有環であって、Yは、−CH2−、−CH(R17)−、−C(R17)(R17)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)2−、および−C(R17)(アリール)−からなる群から選ばれ、Xは、−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NH−、−NR17−、および−N−アリールからなる群から選ばれ、R17はC1〜C6アルキルであり、前記アリール置換基はフェニルまたはナフチルであり、mは、整数1、2または3であり、pは整数0、1、2または3であり、pが0のときXはYである環;または
(iv)次の図式
【化21】


の1つによって表される基であって、R19、R20およびR21は、それぞれ、水素、C1〜C5アルキル、フェニルまたはナフチルであるか、または前記R19基とR20基とは一緒になって5から8の炭素原子の環を形成してよく;R18は、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フルオロまたはクロロである基
を含む、項目11に記載のフォトクロミック材料。
(項目13)
11は、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C〜C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基、または−O−C(O)−R基であって、RはC〜C10アルキル、C〜C10ハロアルキルまたはC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖または分岐基である基を含む、項目11に記載のフォトクロミック材料。
(項目14)
a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
c)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
d)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
e)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
f)3−(4−モルホリノフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
g)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
h)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−ブトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
i)3,3−ジ−(4−(2−メトキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
j)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−エトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
k)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−ブトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
l)3,3−ジ−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13−ブチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、および
m)それらの混合物
から選ばれたフォトクロミック材料。
(項目15)
フォトクロミック物品であって、
(a)基材;および
(b)前記基材の少なくとも一部と接触するフォトクロミック材料であって、前記フォトクロミック材料は本質的に重合性不飽和基を含まず、
i)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
ii)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
iii)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した2つの基であって、一緒になってスピロ環基を形成することがない2つの基を含むフォトクロミック材料
を含む物品。
(項目16)
前記電子吸引性の非共役基は、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C〜C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基または−O−C(O)−R基を含み、RはC〜C10アルキル、C〜C10ハロアルキルまたはC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖基または分岐基である、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目17)
前記電子吸引性の非共役基は、トリフルオロメチル基を含む、項目16に記載のフォトクロミック物品。
(項目18)
前記13−位に結合した2つの基は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基を含む、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目19)
フォトクロミック物品であって、
(a)基材;および
(b)前記基材の少なくとも一部と接触するフォトクロミック材料であって、前記フォトクロミック材料は本質的に重合性不飽和基を含まず、
i)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
ii)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
iii)前記インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6−位および7−位のそれぞれに結合した電子供与性が中から強の基
を含むフォトクロミック材料
を含む物品。
(項目20)
前記電子吸引性の非共役基は、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリハロメチル基、ペルハロ(C〜C10)アルキル基、ペルハロアルコキシ基または−O−C(O)−R基を含み、RはC〜C10アルキル、C〜C10ハロアルキルまたはC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖基または分岐基である、項目19に記載のフォトクロミック物品。
(項目21)
前記電子吸引性の非共役基は、トリフルオロメチル基を含む、項目20に記載のフォトクロミック物品。
(項目22)
電子供与性が中から強の前記2つの基は、それぞれ独立に、
(i)−OR’基であって、R’は、フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであるか、またはR’は、−CH(R’)Q’’基であり、R’は、水素またはC〜Cアルキルであり、Q’’は−CN、−COOH、−COOCHまたは−COOCHCHである基;
(ii)−N(R15)R16であって、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素、C1〜C8アルキル、フェニル、ナフチル、前記複素芳香族のフラニル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、チエニル基、ベンゾチエン−2−イル基、ベンゾチエン−3−イル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾピリジル基およびフルオレニル基、C1〜C8アルキルアリール、C3〜C20シクロアルキル、C4〜C20ビシクロアルキル、C5〜C20トリシクロアルキルおよびC1〜C20アルコキシアルキルを含み、前記アリール基は、フェニルまたはナフチルである基;
(iii)次の図式
【化22】


によって表される窒素含有環であって、Yは−CH2−、−CH(R17)−、−C(R17)(R17)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)2−、および−C(R17)(アリール)−からなる群から選ばれ、Xは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−NH−、−NR17−、および−N−アリールからなる群から選ばれ、R17はC1〜C6アルキルであり、前記アリール置換基は、フェニルまたはナフチルであり、mは整数1、2または3であり、pは整数0、1、2または3であり、pが0のときXはYである基;または
(iv)次の図式
【化23】


の1つによって表される基であって、R19、R20およびR21はそれぞれ、水素、C1〜C5アルキル、フェニルまたはナフチルであるか、またはR19基とR20基とは一緒になって5から8の炭素原子の環を形成してよく、R18はC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロである基
を含む項目19に記載のフォトクロミック物品。
(項目23)
前記フォトクロミック物品は光学素子であり、前記光学素子は、眼科用素子、表示素子、窓、鏡および液晶セル素子の少なくとも1つである、項目19に記載のフォトクロミック物品。
(項目24)
前記光学素子は眼科用素子であり、前記眼科用素子は、矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学装置用レンズの少なくとも1つである、項目23に記載のフォトクロミック物品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付の請求項中で用いられる単数形「a」、「an」および[the」は、明示的かつ明白に1つの参照対象に限定されない限り、複数の参照対象を含むものとする。
【0010】
本明細書において、本明細書および請求項中で用いられる成分の量、反応条件および他のパラメータを表すすべての数は、特に明記しない限り、すべての事例において用語「約」で修飾されていると理解すべきである。従って、そうでないと指示されない限り、以下の明細書および添付の請求項に示される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。最低限、均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは少なくとも記載されている有効数字の桁数を考慮し、通常の丸め技法を利用して解釈されるべきである。
【0011】
本明細書中の数値範囲はすべて、挙げられた数値範囲内のすべての数値と、すべての数値の範囲とを含む。本発明の広義の範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に記載されている。しかし、あらゆる数値はそれぞれの試験測定法に見いだされる標準偏差の結果として必然的に生じる特定の誤差を固有に含んでいる。
【0012】
本明細書に示された本発明のさまざまな実施態様および実施例は、それぞれ本発明の範囲を限定するものではないと理解される。
【0013】
以下の記載および請求項に用いられる以下の用語は、以下に示される意味を有する。
【0014】
用語「の上の」、「に付加した」、「に貼付した」、「に結合した」、「に接着した」または類似の趣旨の用語は、指定された品目、例えば被覆物、膜または層が目的物表面に直接つながっている(例えば、上に重なり合っている)か、または目的物表面に間接的に、例えば1つ以上の他の被覆物、膜または層を介してつながっていることを意味する。
【0015】
用語「眼科用」は、眼鏡類のためのレンズ、例えば矯正レンズおよび非矯正レンズ、ならびに拡大レンズなどであるがそれらに限定されない眼および視覚に関連する素子およびデバイスを指す。
【0016】
例えば重合体材料、例えば「光学的品質の樹脂」または「光学的品質の有機重合体材料」に関して用いられる用語「光学的品質」は、示された材料、例えば重合体材料、樹脂または樹脂組成物が、眼科用レンズなどの光学物品としてまたは光学物品と組み合わせて用いることができる基材、層、膜または被覆物であるか、あるいはこれらの基材、層、膜または被覆物を形成することを意味する。
【0017】
例えば光学基材に関して用いられる用語「剛性の」は、指定された品目が自己支持性であることを意味する。
【0018】
用語「光影響機能」、「光影響特性」または類似の趣旨の用語は、示された材料、例えば被覆物、膜、基材等が、材料に衝突する入射光放射、例えば可視、紫外(UV)および/または赤外(IR)放射の吸収(またはフィルター作用)によって変化させることができることを意味する。代替実施態様では、光影響機能は、例えば偏光子および/または二色性染料による光の偏光、例えばフォトクロミック材料などの化学放射へ曝露されると色を変える発色団の使用による光吸収特性の変化、例えば通常の染色料などの固定染料の使用による入射光放射の一部だけの透過であるか、あるいはそのような光影響機能の1つ以上の組み合わせによるものであってよい。
【0019】
例えば剛性の光学基材に関して用いられる用語「少なくとも1つの光影響特性を有するようになっている」は、指定された品目が中に組み込まれるかまたは付加された光影響特性を有し得ることを意味する。例えば、光影響特性を有するようになっているプラスチックマトリックスは、プラスチックマトリックスがフォトクロミック染料または染色料を内部に収容するのに十分な内部自由体積を有することを意味する。あるいは、そのようなプラスチックマトリックスの表面は、付加されたフォトクロミックまたは染色料の層、膜または被覆物を有し、および/または付加された偏光膜を有してよい。
【0020】
用語「光学基材」は、指定された基材が少なくとも4パーセントの光透過率値を示し(入射光を透過し)、例えばHaze Gard Plus Instrumentによって550ナノメートルで測定したとき1パーセント未満、例えば0.5パーセント未満の曇り(haze)値を示すことを意味する。光学基材は、レンズ、光学層、例えば光樹脂層、光学膜および光学被覆物、ならびに光影響特性を有する光学基材などの光学物品を含むがそれらに限定されない。
【0021】
例えば、基材、膜、材料および/または被覆物に関して用いられる用語「透明な」は、示された基材、被覆物、膜および/または材料が光をほとんど散乱しないで透過させる性質を有し、その結果、反対側の物体を完全に見ることができることを意味する。
【0022】
句「少なくとも部分的な膜」は、基材の少なくとも一部から全表面までを覆う膜の量を意味する。本明細書中で用いられる「膜」は、シート型材料または被覆物型材料によって形成されてよい。例えば、膜は、示された材料の少なくとも部分的に硬化した重合体シートまたは少なくとも部分的に硬化した重合体被覆物であってよい。句「少なくとも部分的に硬化した」は、硬化性成分または架橋性成分の一部から全部が内部で硬化し、架橋し、および/または反応した材料を意味する。
【0023】
用語「フォトクロミック」は、少なくとも化学放射に応答して変化する少なくとも可視放射の吸収スペクトルを有することを意味する。本明細書中で用いられる用語「フォトクロミック材料」は、フォトクロミック特性を示すようになっている、すなわち少なくとも化学放射に応答して変化する少なくとも可視放射の吸収スペクトルを有するようになっている任意の材料を意味する。上記で考察したように、本明細書中で用いられる用語「化学放射」は、フォトクロミック材料を1つの形または状態から別の形へ変換させることができる電磁放射を指す。
【0024】
フォトクロミック材料の例は、フォトクロミック基(例えばインデノ縮合ナフトピラン類等)ならびに重合体、オリゴマー、単量体、および少なくとも1つのフォトクロミック基を含む他の化合物を含むがそれらに限定されない。本明細書中で用いられる用語「基」は、1つ以上の原子の並びを意味する。さらに、本明細書中で用いられる用語「フォトクロミック基」は、フォトクロミック部分を含む原子の並びを指す。本明細書中で用いられる用語「部分」は、特徴的な化学的性質を有する有機分子の一部または部分を意味する。本明細書中で用いられる用語「フォトクロミック部分」は、化学放射に曝露されると1つの状態から別の状態へ可逆的な変換を行うことができるフォトクロミック基の部分を指す。
【0025】
本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料は、フォトクロミック基に加えて、フォトクロミック材料のフォトクロミック基または別の部分と連結するかまたは縮合した1つ以上の他の基(例えば官能基、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、複素芳香族基、複素環基等)を含んでよい。本明細書中で用いられる用語「連結した」は、共有結合によって結合していることを意味する。さらに、本明細書中で用いられる用語「縮合した」は、少なくとも2つの隣接する位置で共有結合によって結合していることを意味する。
【0026】
用語「インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン」は、一般構造式(i)(下式)によって表すことができるフォトクロミック基を指す。このフォトクロミック基は、酸素原子に隣接する利用可能な位置でピラン環に結合した1つ以上の基(単数または複数)(すなわち、下の構造式(i)の3−位で結合した基BおよびB’として示される)を含む。この基(単数または複数)は、インデノ縮合ナフトピランの開環形を安定化させる上で助けとなることがある。ピラン環に結合してよい基の非限定的な例は、基BおよびB’を参照して本明細書中下記にさらに詳細に記載される。本明細書中で用いられる「13−位」、「11−位」、「6−位」等などの用語は、構造式(i)に示されるインデノ縮合ナフトピランの環原子の(それぞれ)13−、11−、6−位等を指す。
【0027】
【化1】

さらに、構造式(i)の任意の利用可能な位置は、必要に応じて置換されていても置換されていなくてもよいことが当業者に自明である。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン上の利用可能な位置に結合してよい基の非限定的な例が本明細書中下記に詳しく示される。
【0028】
さらに、見出しまたは小見出し(例えば(a)、(b)…;(1)、(2)…;(i)(ii)…;等)を用いて可能な置換基の一覧が本明細書に示される場合、これらの見出しまたは小見出しは、読む上での便宜のために提供されるにすぎず、置換基の選択を限定する意図はないと理解すべきである。
【0029】
本発明によれば、本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料が提供される。フォトクロミック材料は、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した2つの基であって、一緒になってスピロ環基を形成することがない2つの基、
を含む。
【0030】
「重合性不飽和基」とは、付加重合反応に参加することができる二重結合または三重結合を含む官能基を意味する。そのような基は、例えばアルキニル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基およびアリル基を含んでよい。重合性不飽和基を「本質的に含まない」とは、化合物に重合性不飽和基がないことを意味する。
【0031】
a)のインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランは、上記(i)に示した構造を有してよく、下記にさらに詳しく記載されるさまざまな置換基を含んでよい。
【0032】
b)の電子吸引性の非共役基は、通常、α−ハロアルキル、α,α−ジハロアルキル、トリフルオロメチルなどのトリハロメチル基、ペルフルオロエチルなどのペルハロアルキル基、ペルフルオロプロポキシまたはペルフルオロメトキシなどのペルハロアルコキシ基、または置換基−O−C(O)−Rを含む。ここでRは、アセトキシ基などの置換基を形成するC〜C10アルキル、1,1−ジフルオロプロピルカルボニルオキシなどの置換基を形成するC〜C10ハロアルキル、またはトリフルオロメチルカルボニルオキシなどの置換基を形成するC〜C10ペルハロアルキルから選ばれた直鎖または分岐基である。非限定的な一実施態様では、b)の電子吸引性の非共役基はトリフルオロメチル基であってよい。
【0033】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した2つの基は、非スピロ環である。すなわち、一緒になってスピロ環を形成することがない。これらの基は、それぞれ、
(i)水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキル、アミノ、一置換または二置換アミノ、C〜Cシクロアルキル、アリル、ベンジル、一置換ベンジル、クロロ、フルオロ、−C(O)W’基であって、W’は、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、一置換フェニル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノまたはジ(C〜C)アルキルアミノ、例えばN,N−ジメチルアミノ、N−メチル−N−プロピルアミノ等、モルホリノ、ピペリジノまたはピロリジルである基であり、前記アミノの置換基はC〜Cアルキル、フェニル、ベンジルおよびナフチルからなる群から選ばれ、前記ベンジルおよびフェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
(ii)非置換、一置換、二置換または三置換のフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、インドリル基であって、本節(ii)の前記基の置換基は、クロロ、フルオロ、C〜Cアルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシおよびヒドロキシ(C〜C)アルコキシからなる群から選ばれる基;
(iii)ナフト[2,1−b]ピランまたはナフト[1,2−b]ピランなどの別のフォトクロミックなナフトピランの一部であるアリール基、例えばフェニルまたはナフチルにつながっている連結基−(CH−または−O−(CH−であって、tは整数1、2、3、4、5または6である置換基をパラ位に有する一置換フェニル;
(iv)−OR’基であって、R’は、C〜Cアルキル、C〜Cアシル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリル、ベンゾイル、一置換ベンゾイル、ナフトイルまたは一置換ナフトイルであり、前記ベンゾイルおよびナフトイル基の置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、またはR’は、−CH(R’)Q基であり、R’は、水素またはC〜Cアルキルであり、Qは、−CN、−CF、または−COOR’であり、R’は水素またはC〜Cアルキルであるか、または、R’は−C(O)V’基であり、V’は、水素、C〜Cアルコキシ、フェノキシ、モノ−またはジ−(C〜C)アルキル置換フェノキシ、モノ−またはジ−(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、非置換、一置換または二置換アリール基、フェニルおよびナフチル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ−またはジ−(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、あるいはモノ−またはジ−(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり、前記アリール基の置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
(v)−CH(Q’)基であって、Q’は、−CNまたは−COOR’であり、R’は、水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、または非置換、一置換または二置換アリール基フェニルまたはナフチルであり、前記アリール基の置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
(vi)−CH(R’)G’基であって、R’は、水素、C〜Cアルキル、または非置換、一置換または二置換アリールのフェニル基およびナフチル基であり、G’は−COOR’、−C(O)R’または−CHOR’であり、R’は水素、C〜Cアルキル、非置換、一置換または二置換アリールのフェニル基またはナフチル基、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、例えばジメチルアミノ、メチルプロピルアミノ等、フェニルアミノ、モノ−またはジ−(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ−またはジ−(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、モノ−またはジ(C〜C)アルキル置換ジフェニルアミノであり、すなわち各フェニルは1つまたは2つのC〜Cアルキル置換基を有し、モノ−またはジ(C〜C)アルコキシ置換ジフェニルアミノ、すなわち各フェニルは1つまたは2つのC〜Cアルコキシ置換基を有し、モルホリノまたはピペリジノであり、R’は、水素、−C(O)R11、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、またはフェニルおよびナフチルを含む非置換、一置換または二置換アリール基であり、R11は水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、またはフェニルまたはナフチルを含む非置換、一置換または二置換アリール基であり、前記アリール基の置換基のそれぞれはC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
(vii)式
−Z[(OC(OC(OC]Z’または
−[(OC(OC(OC]Z’
によって表されるポリアルコキシル化基Tであって、−Zは、−C(O)−または−CH−であり、Z’はヒドロキシ、エポキシまたはC〜Cアルコキシである基
からなる群から選んでよい。ただし、13位にある2つの基が一緒になってスピロ環基を形成することはない。
【0034】
−(OC−基はポリ(エチレンオキシド)を表し;−(OC−はポリ(プロピレンオキシド)を表し;−(OC−はポリ(ブチレンオキシド)を表す。一緒に用いられるとき、Tのポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)およびポリ(ブチレンオキシド)基は、T部分内でランダム順であってもブロック順であってもよい。文字x、yおよびzはそれぞれ0から50の間の数であり、x、yおよびzの和は2から50の間である。x、yおよびzの和は、2から50の範囲内にある任意の数、例えば2,3,4,...,50であってよい。この和は、2から50の範囲内の任意の下限数から任意の上限数、例えば6から50、31から50の範囲にあってよい。x、yおよびzの数は平均値であり、必ずしも整数ではなく、例えば、9.5は許容される。
【0035】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合した基は、通常、独立に、C〜Cアルキルまたはアルコキシ基、ヒドロキシ(C〜C)アルキル、あるいは式
−Z[(OC(OC(OC]Z’または
−[(OC(OC(OC]Z’
によって表されるポリアルコキシル化基Tを含む。式中、−Zは−C(O)−または−CH−であり、Z’はヒドロキシ、エポキシまたはC〜Cアルコキシである。多くの場合、これらの基は2つのメチル基または1つのエチルと1つのメトキシ基とを含む。
【0036】
本発明は、さらに、本質的に重合性不飽和基を含まないフォトクロミック材料を提供する。フォトクロミック材料は、
a)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
b)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基、および
c)インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの6−位および7−位のそれぞれに結合した電子供与性が中から強の基を含む。
【0037】
本発明のこの実施態様では、電子供与性が中から強の2つの基のそれぞれは、独立に、
(i)基−OR’であって、R’は、フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであるか、またはR’は、−CH(R’)Q’’基であって、R’は、水素またはC〜Cアルキルであり、Q’’は−CN、−COOH、−COOCH、または−COOCHCHである基;
(ii)−N(R15)R16であって、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素、C1〜C8アルキル、フェニル、ナフチル、複素芳香族のフラニル基、ベンゾフラン−2−イル基、ベンゾフラン−3−イル基、チエニル基、ベンゾチエン−2−イル基、ベンゾチエン−3−イル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾピリジル基およびフルオレニル基、C1〜C8アルキルアリール、C3〜C20シクロアルキル、C4〜C20ビシクロアルキル、C5〜C20トリシクロアルキルおよびC1〜C20アルコキシアルキルを含み、前記アリール基は、フェニルまたはナフチルである基;
(iii)次の図式によって表される窒素含有環
【0038】
【化2】

であって、Yは−CH2−、−CH(R17)−、−C(R17)(R17)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)2−、および−C(R17)(アリール)−からなる群から選ばれ、Xは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−NH−、−NR17−、および−N−アリールからなる群から選ばれ、R17はC1〜C6アルキルであり、前記アリール置換基は、フェニルまたはナフチルであり、mは、整数1、2または3であり、pは整数0、1、2または3であり、pが0のときXはYであるとする環;または
(iv)次の図式の1つ
【0039】
【化3】

によって表される基
を含んでよい。
【0040】
式中、R19、R20およびR21は、それぞれ、水素、C1〜C5アルキル、フェニルまたはナフチルであるか、または基R19とR20とが一緒になって5から8の炭素原子の環を形成してよく、R18はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、フルオロまたはクロロである。電子供与性が中から強の2つの基は、多くの場合、どちらもメトキシなどのアルコキシ基を含む。
【0041】
本発明は、さらに、構造式
【0042】
【化4】

によって表されるフォトクロミック材料を提供する。
【0043】
この構造式中、BおよびB’はそれぞれ独立に、メタロセニル基を含んでよい。本明細書中で用いられる用語「メタロセン基」は、2つのシクロペンタジエニル環配位子が金属イオンの周りに「サンドイッチ」を形成する基を指す。ここで、各シクロペンタジエニル環がペンタハプト(η)結合構造によって金属イオンに結合する。メタロセン基は、一般経験式(CMを有し、Mは+2の酸化状態を有する金属イオンである。本明細書中で用いられる用語「メタロセニル基」は、例えばフォトクロミック基などの少なくとも1つの他の基と少なくとも1つの結合を形成するかまたは形成することができるメタロセン基を指す。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料と関連して用いてよいメタロセニル基の特定の非限定的な例は、フェロセニル基、チタノセニル基、ルテノセニル基、オスモセニル基、バナドセニル基、クロモセニル基、コバルトセニル基、ニッケロセニル基およびジ−π−シクロペンタジエニルマンガン基を含む。メタロセニル基は、さらに置換されていてよい。
【0044】
あるいは、BおよびB’は、それぞれ独立に、
適合性置換基で一置換されたアリール基;
9−ジュロリジニル、非置換、一置換、二置換または三置換のフェニルおよびナフチルから選ばれたアリール基、非置換、一置換または二置換のピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニルまたはフルオレニルから選ばれた複素芳香族基であって、アリールおよび複素芳香族置換基は、それぞれ独立に、ヒドロキシ、アリール、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール、ハロアリール、C〜Cシクロアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C12)アルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C12)アルコキシ、アリール(C〜C12)アルキル、アリール(C〜C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C〜C12)アルキル、アリールオキシ(C〜C12)アルコキシ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール(C〜C12)アルキル、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール(C〜C12)アルキル、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアリール(C〜C12)アルコキシ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルコキシアリール(C〜C12)アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C〜C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C〜C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジノ、C〜C12アルキル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12アルコキシ例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ等、モノ(C〜C12)アルコキシ(C〜C12)アルキル、ハロゲンまたはC(=O)R22であり、R22は−OR23、N(R24)R25、ピペリジノまたはモルホリノであり、R23はアリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルであり、R24およびR25は、それぞれ独立に、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルあるいは置換または非置換フェニルであり、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立に、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリジノ、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニルおよびアクリジニルから選ばれた非置換または一置換の基であって、前記置換基は、それぞれ独立に、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニルまたはハロゲンである基;
4−置換フェニルであって、置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−(CH)−、−(CH−または[O(CH−であり、eは2から6の範囲の整数であり、fは1から50の範囲の整数であり、置換基は、別のフォトクロミック材料のアリール基につながっている基;

【0045】
【化5】

によって表される基であって、Pは−CH−または−O−であり、;Q’’’は−O−または置換窒素であり、置換窒素の置換基は水素、C〜C12アルキルまたはC〜C12アシルであり、Q’’’が置換窒素のときPは−CH−であり;R26は、それぞれ独立に、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシまたはハロゲンであり;R27およびR28は、それぞれ独立に水素またはC〜C12アルキルであり;jは0から2の範囲の整数である基;または
BおよびB’は一緒になってフルオレン−9−イリデンまたは一置換または二置換フルオレン−9−イリデンを形成し、前記フルオレン−9−イリデンの置換基は、それぞれ独立に、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシまたはハロゲンである基
を含んでよい。
【0046】
、R、RおよびR12は、それぞれ独立に、
水素、C〜Cアルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、C〜Cシクロアルキルまたは非置換、一置換または二置換フェニルを含み、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立に、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
−OR40または−OC(=O)R40であって、R40は、水素、アミン、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルまたは非置換、一置換または二置換フェニルであり、前記フェニルの置換基は、それぞれ独立に、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである基;
適合性置換基;
4−置換フェニルであって、置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−(CH)−、−(CH−または−[O−(CH−であり、eは2から6の範囲の整数であり、fは1から50の範囲の整数であり、置換基は別のフォトクロミック材料のアリール基につながっている基;
−N(R41)R42であって、R41およびR42は、それぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜C16ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたはC〜C20アルコキシ(C〜C)アルキルであるか、またはR41とR42とは窒素原子と一緒になってC〜C20ヘテロビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する基;
【0047】
【化6】

によって表される窒素含有環であって、各−V−は、個別の環についてそれぞれ独立に、−CH−、−CH(R43)−、−C(R43−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−および−C(R43)(アリール)−から選ばれ、R43は、それぞれ独立に、C〜Cアルキルであり、各アリールは、独立に、フェニルまたはナフチルであり;−W−は−V−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R43)−または−N(アリール)であり;sは1から3の範囲の整数であり;rは0から3の範囲の整数であり、rが0なら−W−は−Vと同じである環;または
【0048】
【化7】

によって表される基であって、R44は、それぞれ独立に、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロであり;R45、R46およびR47は、それぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、フェニルまたはナフチルであるか、またはR45とR46とは一緒になって5から8の炭素原子の環を形成し、pは0から3の範囲の整数である基
を含んでよい。
【0049】
およびRは、それぞれ独立に、上記に記載した電子供与性が中から強の基を含んでよい。
【0050】
10は、R、R、RおよびR12またはメタロセニル基に関して上記で考察した任意の基を含んでよい。
【0051】
11は、通常、上記で考察した電子吸引性の非共役基を含む。
【0052】
13およびR14はスピロ環基を形成せず、それぞれ独立に、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの13−位に結合するのに適するとして上記に記載した任意の基を含んでよい。例えば、R13およびR14は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基を含んでも2つのメチル基または1つのエチルと1つのメトキシ基とを含んでもよい。
【0053】
本明細書中で上記に示し、下記でさらに詳細に考察するように、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料は、適合性置換基を含んでよい。本明細書中で用いられる用語「適合性置換基」は、別の材料または溶媒の中へのフォトクロミック材料の組み込みを促進してよい原子の並びを意味する。例えば、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、適合性置換基は、水または親水性重合体材料、オリゴマー材料または単量体材料中のフォトクロミック材料の混和性を増加させることによって、親水性材料の中へのフォトクロミック材料の組み込みを促進してよい。他の非限定的実施態様によれば、適合性置換基は親油性材料の中へのフォトクロミック材料の組込みを促進してよい。本明細書中では限定しないが、親水性材料の中への組み込みを促進する適合性置換基を含む本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料は、少なくともリットルあたり1グラムの程度まで親水性材料の中に混和性であってよい。適合性置換基の非限定的な例は、−J基を含む置換基を含み、−Jは−K基(下記で考察する)または水素を表す。
【0054】
本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様とともに用いてよい適合性置換基の非限定的な例は、
−A−D−E−G−J(v); −G−E−G−J(vi); −D−E−G−J(vii);
−A−D−J(viii); −D−G−J(ix); −D−J(x);
−A−G−J(xi); −G−J(xii);または −A−J(xiii)によって表してよい。
【0055】
上記(v)〜(xiii)を参照して、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によって−A−が表してよい基の非限定的な例は、−O−、−C(=O)−、−CH−、−OC(=O)−および−NHC(=O)−を含む。ただし、−A−が−O−を表すなら−A−は−Jと少なくとも1つの結合を形成する。さまざまな非限定的実施態様によってDが表してよい基の非限定的な例は、(a)ジアミン残基またはその誘導体であって、前記ジアミン残基の第1のアミノ窒素が−A−または置換基またはインデノ縮合ナフトピラン上の利用可能な位置と結合を形成してよく、前記ジアミン残基の第2のアミノ窒素は−E−、−G−または−Jと結合を形成してよい残基またはその誘導体;および(b)アミノアルコール残基またはその誘導体であって、前記アミノアルコール残基のアミノ窒素が−A−またはインデノ縮合ナフトピラン上の置換基もしくは利用可能な位置と結合を形成してよく、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素が−E−、−G−または−Jと結合を形成してよい残基またはその誘導体を含む。あるいは、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、前記アミノアルコール残基のアミノ窒素は−E−、−G−または−Jと結合を形成してよく、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は−A−、またはインデノ縮合ナフトピラン上の置換基または利用可能な位置と結合を形成してよい。
【0056】
−D−が表してよい適当なジアミン残基の非限定的な例は、脂肪族ジアミン残基、脂環式ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザ脂環式アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、または芳香族ジアミン残基を含む。ジアミン残基の特定の非限定的な例は、次式
【0057】
【化9】

を含む。
【0058】
−D−が表してよい適当なアミノアルコール残基の非限定的な例は、脂肪族アミノアルコール残基、脂環式アミノアルコール残基、アザ脂環式アルコール残基、ジアザ脂環式アルコール残基、または芳香族アミノアルコール残基を含む。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様とともに用いてよいアミノアルコール残基の特定の非限定的な例は、次式、
【0059】
【化10】

を含む。
【0060】
引き続いて上記の(v)〜(xiii)を参照して、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、−E−は、ジカルボン酸残基またはその誘導体を表してよく、前記ジカルボン酸残基の第1のカルボニル基は−G−または−D−と結合を形成してよく、前記ジカルボン酸残基の第2のカルボニル基は−G−と結合を形成してよい。−E−が表してよい適当なジカルボン酸残基の非限定的な例は、脂肪族ジカルボン酸残基、脂環式ジカルボン酸残基、または芳香族ジカルボン酸残基を含んでよい。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様に従って用いてよいジカルボン酸残基の特定の非限定的な例は、次式
【0061】
【化11】

を含む。
【0062】
本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、−G−は、(a)−[(OC(OC(OC]−O−基であって、x、yおよびzは、それぞれ独立に選ばれ、0から50の範囲にある整数であり、x、yおよびzの和は1から50の範囲にある基;(b)ポリオール残基またはその誘導体であって、前記ポリオール残基の第1のポリオール酸素は−A−、−D−、−E−またはインデノ縮合ナフトピランの置換基または利用可能な位置と結合を形成してよく、前記ポリオールの第2のポリオール酸素は−E−または−Jと結合を形成してよい残基またはその誘導体、または(c)(a)と(b)との組み合わせであって、ポリオール残基の第1のポリオール酸素は−[(OC(OC(OC]−基と結合を形成(すなわち−[(OC(OC(OC]−O−基を形成)し、第2のポリオール酸素は−E−または−Jと結合を形成する基、を表してよい。−G−が表してよい適当なポリオール残基の非限定的な例は、脂肪族ポリオール残基、脂環式ポリオール残基、または芳香族ポリオール残基を含む。
【0063】
−G−が表してよいポリオール残基が本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によって形成されてもよいポリオールの特定の非限定的な例は、(a)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる、米国特許第6,555,028号明細書の第4欄、列48〜50および第4欄、列55から第6欄、列5に示されているものなどであるがそれらに限定されない500未満の平均分子量を有する低分子量ポリオール;(b)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第5欄、列7〜33に示されているものなどであるがそれらに限定されないポリエステルポリオール;(c)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第5欄、列34〜50に示されているものなどであるがそれらに限定されないポリエーテルポリオール;(d)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第5欄、列51〜62に示されているものなどであるがそれらに限定されないアミド含有ポリオール;(e)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第5欄、列63から第6欄、列3に示されているものなどであるがそれらに限定されないエポキシポリオール;(f)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第6欄、列4〜12に示されているものなどであるがそれらに限定されない多価ポリビニルアルコール;(g)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第6欄、列13〜43に示されているものなどであるがそれらに限定されないウレタンポリオール;(h)参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第6欄、列43から第7欄列40に示されているものなどであるがそれらに限定されないポリアクリルポリオール;(i)参照によって開示がここに本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第7欄、列41〜55に示されているものなどであるがそれらに限定されないアミド含有ポリオール;および(j)そのようなポリオールの混合物を含む。
【0064】
上記の(v)〜(xiii)を再び参照して、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、−Jは、−K基を表してよく、−Kは、−CHCOOH、−CH(CH)COOH、−C(O)(CHCOOH、−CSOH、−C10SOH、−CSOH、−CSOH、−CSOHおよび−SOHなどであるがそれらに限定されない基を表し、wは1から18の範囲の整数を表す。他の非限定的実施態様によれば、−Jは、連結基の酸素または窒素と結合を形成して−OHまたは−NHなどの反応性部分を形成する水素を表してよい。例えば、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、−Jは、水素を表してよい。ただし、−Jが水素を表すなら、−Jは−D−または−G−の酸素、あるいは−D−の窒素と結合する。
【0065】
既に考察したように、−G−は、開示が参照によってここで特に本明細書に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第7欄、列56から第8欄、列17に示されているものなどの、本明細書中でヒドロキシ含有炭水化物を含むと定義されるポリオールの残基を表してよい。ポリオール残基は、例えば、本明細書中では限定しないで、1つ以上のポリオールヒドロキシル基と、カルボン酸またはメチレンハロゲン化物などの−A−の前駆体、ポリアルキレングリコールなどのポリアルコキシル化基の前駆体、またはインデノ縮合ナフトピランのヒドロキシル置換基との反応によって形成させてよい。ポリオールは、R’−(OH)によって表してよく、ポリオールの残基は式−O−R’−(OH)g−1によって表してよく、R’は、ポリヒドロキシ化合物のバックボーンまたは主鎖であり、gは少なくとも2である。
【0066】
さらに、上記で考察したように、−G−のポリオール酸素の1つ以上が−Jと結合を形成(すなわち−G−J基を形成)してよい。例えば、本明細書中では限定しないが、適合性置換基が−G−J基を含む場合、−G−がポリオール残基を表し、−Jがカルボキシル末端基を含む−K基を表すなら、1つ以上のポリオールヒドロキシル基を反応させて−K基を形成させ、カルボキシ化されたポリオール残基を作り出すことによって−G−Jを製造してよい(例えば、参照によって開示がここで本明細書に特に組み込まれる米国特許第6,555,028号明細書の第13欄、列22から第16欄、列15に反応BおよびCに関して考察されているように)。あるいは、−Jがスルホまたはスルホノ末端基を含む−K基を表すなら、本明細書中では限定しはないが、1つ以上のポリオールヒドロキシル基とHOCSOH;HOC10SOH;HOCSOH;HOCSOH;HOCSOH;またはHSOとの酸縮合によって−G−Jをそれぞれ製造してよい。
【0067】
本発明のフォトクロミック材料は、光学的に無色の状態から着色した状態へ、および/または着色した状態から光学的に無色の状態へ迅速に移行する、すなわち、「迅速な」活性化および/または退色速度を有するフォトクロミック材料である。本開示全体にわたって、用語「退色速度」は、フォトクロミック材料のT1/2値で表してよい動力学的速度値を表す。「退色速度」は、フォトクロミック材料が着色した活性化状態形から光学的に透明な基底状態形へ変換される速度の大きさである。フォトクロミック材料の退色速度は、例えば、所定のマトリックス中の制御された条件下でフォトクロミック材料を飽和するように活性化させ、その活性化定常状態の吸光度(すなわちその飽和光学密度)を測定し、続いてフォトクロミック材料の吸光度が活性化定常状態吸光度値の2分の1に減少するのに要する時間の長さを測定することによって測定してよい。こうして測定された退色速度は、T1/2によって表してよく、秒の単位を有する。従って、退色速度が速いまたはより速いと言われるとき、フォトクロミック材料は着色した状態から光学的に無色の状態へより速い速度で変化する。より速い退色速度は、例えば、フォトクロミック材料についてのより低いT1/2値によって示してよい。すなわち、退色速度が速くなると、吸光度が初期活性化吸光度値の2分の1に低下する時間の長さは短くなることになる。
【0068】
フォトクロミック材料の退色速度が、フォトクロミック材料が組み込まれる媒質になんらかの依存性を有することは当業者に自明である。媒質中のフォトクロミック材料に関して本明細書中で用いられる用語「組み込まれる」は、物理的におよび/または化学的に組み合わされたことを意味する。本開示中では、本明細書中に開示される、T1/2値によって示される退色速度値および深色シフト値を含むすべてのフォトクロミック性能データは、特に明記しない限り、メタクリレート重合体を含む重合体試験チップの中へのフォトクロミック材料の組み込みを含む標準プロトコルを用いて測定される。退色速度および例えば深色シフトデータなどの他のフォトクロミック性能データの正確な値は、フォトクロミック材料が組み込まれる媒質に依存して変化することがあるが、本明細書に示されるフォトクロミック性能データは、他の媒質中に組み込まれたときフォトクロミック材料について予測することができる相対速度およびシフトの例を示すものであることは当業者には自明であろう。
【0069】
インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランおよびインデノ縮合ナフトピランの11−位に結合した電子吸引性の非共役基を含む本発明のフォトクロミック材料は、通常、11−位に結合した電子吸引性の非共役基がない相当するインデノ縮合ナフトピランと比較すると、より速い退色速度を示す。
【0070】
本発明のフォトクロミック材料は、
a)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
b)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
c)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
d)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
e)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
f)3−(4−モルホリノフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
g)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
h)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−ブトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
i)3,3−ジ−(4−(2−メトキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
j)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−エトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
k)3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−ブトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
l)3,3−ジ−(4−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13−ブチル−13−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および
m)それらの混合物
から選んでよい。
【0071】
本発明のフォトクロミック材料は、通常、11−位に電子吸引性の非共役基がない相当するインデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含むフォトクロミック材料の電磁放射の閉環形の吸収スペクトルと比較すると深色側に移動した電磁放射の閉環形の吸収スペクトルを有する。「深色側に移動した」とは、フォトクロミック材料が長波長側に移動した閉環形の電磁放射の吸収スペクトルを有し得ることを意味する。本明細書中で用いられる用語「閉環形の吸収スペクトル」は、閉環形または非活性化状態のフォトクロミック材料の吸収スペクトルを指す。特定の用途では、フォトクロミック材料が閉環形から開環形へ変換されることを可能にするのに十分な390nmより大きな波長を有する電磁放射をフォトクロミック材料が吸収するように、フォトクロミック材料の閉環形吸収スペクトルを移動させることができる。そのような深色シフトによって方向依存性を低くすることが可能になる。
【0072】
本発明によるフォトクロミック材料は、さらに、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランが組み込まれる有機材料を含んでよい。適当な有機材料は、例えば、重合体材料、オリゴマー材料または、単量体材料を含む。従って、これらのフォトクロミック材料を用いて、例えば光学素子およびさまざまな基材に加えてよい被覆用組成物などであるがそれらに限定されない、フォトクロミック物品を形成させてよい。本明細書中で用いられる用語「重合体」および「重合体材料」は、単独重合体および共重合体(例えばランダム共重合体、ブロック共重合体および交互共重合体)ならびにそれらのブレンドおよび他の組み合わせを指す。本明細書で用いられる用語「オリゴマー」および「オリゴマー材料」は、追加の単量体単位(単数または複数)と反応することができる2つ以上の単量体単位の組み合わせを指す。本明細書中で用いられる用語「の中に組み込まれる」は、物理的におよび/または化学的に組み合わされることを意味する。例えば、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料は、例えば、限定はしないが、フォトクロミック材料を有機材料の中に混合するかまたは吸収することによって有機材料の少なくとも一部と物理的に組み合わせてよく、および/または、例えば、限定はしないが、共重合によってまたは他の方法でフォトクロミック材料を有機材料に結合させることによって有機材料の少なくとも一部と化学的に組み合わせてよい。
【0073】
さらに、本発明によるフォトクロミック材料はそれぞれ、本明細書中に開示されるフォトクロミック物品中に単独で用いてよく、または他のフォトクロミック材料と組み合わせて用いてよいと考えられる。例えば、本発明のフォトクロミック材料は、300から1000ナノメートル、例えば400から800ナノメートルの範囲内の活性化状態形吸収極大を有する通常のフォトクロミック材料とともに用いてよい。さらに、本発明によるフォトクロミック材料は、例えば、開示が参照によってここで特に本明細書に組み込まれる米国特許第6,113,814号明細書(第2欄、列39から第8欄、列41まで)および第6,555,028号明細書(第2欄、列65から第12欄、列56まで)に開示されているものなど、相補的な従来の重合性フォトクロミック化合物または適合化フォトクロミック化合物とともに用いてよい。
【0074】
上記で考察したように、フォトクロミック材料は、フォトクロミック化合物の混合物を含んでよい。例えば、フォトクロミック材料の混合物を用いてニアニュートラルグレイまたはニアニュートラルブラウンなどの特定の活性化色を実現してよい。米国特許第5,645,767号明細書第12欄、列66から第13欄、列19にニュートラルグレイおよびブラウンの色を定義するパラメータが記載されており、それらの開示は参照によって本明細書に特に組み込まれる。
【0075】
フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料を有機材料またはその前駆体とブレンドし、および/または結合させることによって有機材料の一部の中に組み込んでよい。有機材料の中へのフォトクロミック材料の組み込みに関して本明細書中で用いられる用語「ブレンドする」および「ブレンドされる」は、フォトクロミック材料が有機材料の少なくとも一部と混ぜ合わされるかまたは入り混じらされるが、有機材料に結合しないことを意味する。さらに、有機材料の中へのフォトクロミック材料の取り込みに関して本明細書で用いられる用語「結合させる」または「結合される」は、フォトクロミック材料が、有機材料またはその前駆体の一部と連結されることを意味する。
【0076】
フォトクロミック材料がさらに重合体材料を含むとき、用いてよい重合体材料の例は、ビス(アリルカーボネート)単量体;ジエチレングリコールジメタクリレート単量体;ジイソプロペニルベンゼン単量体;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート単量体;エチレングリコールビスメタクリレート単量体;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレート単量体;エトキシル化フェノールビスメタクリレート単量体;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート単量体などのアルコキシル化多価アルコールアクリレート単量体;ウレタンアクリレート単量体;ビニルベンゼン単量体;およびスチレン、の重合体を含むがそれらに限定されない。適当な重合体材料の他の非限定的な例は、多官能、例えばモノ−、ジ−または多官能のアクリレートおよび/またはメタクリレート単量体の重合体;ポリ(メチルメタクリレート)などのポリ(C〜C12アルキルメタクリレート);ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート;ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート);セルロースアセテート;セルローストリアセテート;セルロースアセテートプロピオネート;セルロースアセテートブチレート;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネート;ポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリスチレン;ポリ(α−メチルスチレン);スチレンとメチルメタクリレートとの共重合体;スチレンとアクリルニトリルとの共重合体;ポリビニルブチラール;およびジアリリデンペンタエリスリトールの重合体、特にポリオール(アリルカーボネート)単量体、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)との共重合体、およびアクリレート単量体、例えばエチルアクリレートおよびブチルアクリレートを含む。上述の単量体の共重合体、上述の重合体および共重合体と他の重合体との例えば相互貫入型ネットワーク生成物を形成する組み合わせおよびブレンドも含まれる。
【0077】
フォトクロミック組成物の透明さが望ましいとき、有機材料は透明な重合体材料であってよい。例えば、重合体材料は、LEXAN(登録商標)の商標で販売されているビスフェノールAとホスゲンとから誘導された樹脂などの熱可塑性ポリカーボネート樹脂;MYLAR(登録商標)の商標で販売されている材料などのポリエステル;PLEXIGLAS(登録商標)の商標で販売されている材料などのポリ(メチルメタクリレート);ポリオール(アリルカーボネート)単量体、特に単量体がCR−39(登録商標)の商標で販売されているジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合物;および例えば、重合体用組成物がPPG Industries, Inc.によってTRIVEX(登録商標)の商標で販売されているポリウレタンオリゴマーとジアミン硬化剤との反応によって調製されるポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)重合体、から調製された光学的に透明な重合体材料であってよい。適当な重合体材料の他の非限定的な例は、ポリオール(アリルカーボネート)、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の共重合体と、酢酸ビニルとの共重合体、末端ジアクリレート官能基を有するポリウレタンとの共重合体、および末端部分がアリルまたはアクリリル官能基を含む脂肪族ウレタンとの共重合体などであるがそれらに限定されない他の共重合性単量体材料との重合物を含む。さらに他の適当な重合体材料は、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ジエチレングリコールジメタクリレート単量体、ジイソプロペニルベンゼン単量体、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート単量体、エチレングリコールビスメタクリレート単量体、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレート単量体、エトキシル化フェノールビスメタクリレート単量体、およびエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート単量体から選ばれた重合体、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレンおよびスチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニルおよびアクリルニトリルとの共重合体を含むがそれらに限定されない。特定の非限定的な実施態様によれば、重合体材料は、PPG Industries, Inc.によってCR−番号、例えばCR−307、CR−407およびCR−607で販売されている光学樹脂であってよい。
【0078】
多くの場合、有機材料は、ポリ(カーボネート)、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体;エチレンとビニルアルコールとの共重合体;エチレン、酢酸ビニルおよびビニルアルコールの共重合体(エチレンと酢酸ビニルとの共重合体の部分鹸化の結果であるものなど);セルロースアセテートブチレート;ポリ(ウレタン);ポリ(アクリレート);ポリ(メタクリレート);エポキシ類;アミノ樹脂官能性重合体;ポリ(無水物);ポリ(ウレアウレタン);N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性重合体;ポリ(シロキサン);ポリ(シラン)ならびにそれらの組み合わせおよび混合物から選ばれる重合体材料であってよい。
【0079】
さらに、本明細書に開示されているフォトクロミック材料が組成物または被覆物またはそれらから誘導された物品の加工および/または性能を助ける他の添加剤をさらに含んでよいことは当業者に自明であろう。そのような添加剤の非限定的な例は、重合禁止剤、溶媒、光安定剤(紫外線光吸収剤、およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの光安定剤などであるがそれらに限定されない)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(例えば界面活性剤などであるがそれらに限定されない)、フリーラジカル捕捉剤、接着促進剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤などの)、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。
【0080】
既に考察したように、本発明はさらに、基材と、基材の少なくとも一部と接触する本明細書中に開示される任意のフォトクロミック材料とを含む、光学素子などのフォトクロミック物品を含む。本明細書中で用いられる用語「と接触する」は、直接的に、または別の材料または構造物を介して間接的に関連していることを意味する。さらに、表面または物体「の上に」ある被覆物に関して本明細書中で用いられる用語「の上に」は、主題被覆物が表面または物体によって支持されるかまたは保持されるように、主題被覆物が表面または物体につながっていることを意味する。例えば、表面「の上に」ある被覆物は、表面の上に直接加えてよく、あるいは、少なくとも1つが表面の上に直接加えられている1つ以上の他の被覆物の上に加えてよい。
【0081】
本明細書中で用いられる用語「光学」は、光および/または視覚に付随するかまたは関連することを意味する。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様による光学素子は、眼科用素子、表示素子、窓、鏡および液晶セル素子を含んでよいが、それらに限定されない。本明細書に用いられる用語「眼科用」は、眼および視覚に付随するかまたは関連することを意味する。眼科用素子の非限定的な例は、単一視覚または複数視覚レンズを含む矯正レンズおよび非矯正レンズを含み、セグメント化または非セグメント化多視覚レンズ(例えば二焦点レンズ、三焦点レンズおよび進行性レンズなどであるがそれらに限定されない)ならびに、コンタクトレンズおよび他の眼内素子、拡大レンズ、バイザー、ゴーグルならびに光学計器(例えばカメラおよび望遠鏡)のためのレンズを含むがそれらに限定されない視覚を矯正するか、保護するかまたは増強する(美容としてまたはその他の面で)ために用いられる他の素子であってよい。本明細書中で用いられる用語「表示」は、言葉、数字、記号、設計または図面中の情報の眼に見えるまたは機械可読表現を意味する。表示素子の非限定的な例は、スクリーン、モニターおよびセキュリティマークなどのセキュリティ素子を含む。本明細書中で用いられる用語「窓」は、それを通る放射の透過を可能にするようになっている開口を意味する。窓の非限定的な例は、自動車および航空機の透明部、風防、フィルター、シャッターおよび光スイッチを含む。本明細書中で用いられる用語「鏡」は、入射光線の大部分を鏡面反射する表面を意味する。本明細書中で用いられる用語「液晶セル」は、秩序化させることができる液晶材料を含む構造体を指す。1つの非限定的な液晶セル素子の例は、液晶ディスプレイである。
【0082】
フォトクロミック物品の基材が重合体材料を含む本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、フォトクロミック材料を基材の重合体材料の少なくとも一部の中に組み込むことによって、またはフォトクロミック材料を基材が形成されるもとのオリゴマー材料または単量体材料の少なくとも一部の中に組み込むことによって、フォトクロミック材料を基材の少なくとも一部と接触させてよい。例えば、フォトクロミック物品は、上記で考察されたものなどのフォトクロミック材料から場所打ち法(cast−in−place method)によって形成されてよい。この方法では、フォトクロミック材料は、基材を形成する前にフォトクロミック材料を重合体材料の少なくとも一部とブレンドし、および/または結合することによって、あるいは基材を形成する前にフォトクロミック材料を基材の重合体材料が形成されるもとのオリゴマー材料または単量体材料の少なくとも一部の中に組み込むことによって、基材の重合体材料の少なくとも一部の中に組み込まれる。あるいは、フォトクロミック材料は、吸収法によって基材の重合体材料の中に組み込んでよい。吸収法および場所打ち法について下記でさらに詳細に考察する。
【0083】
フォトクロミック材料は、基材の少なくとも一部に加えられる被覆物の一部としてフォトクロミック物品の基材の少なくとも一部と接触してもよい。本明細書中で用いられる用語「被覆物」は、流動性組成物から導かれる1つ以上の完全な層もしくは部分的な層(一様な組成および/または断面厚さを有しても有しなくてもよい)を含む構造体を意味する。被覆物を形成するもととなる流動性組成物は、例えば、本明細書中に下記で考察するものなどの方法を用いて基材に塗布してよい液体または粉末組成物を含む。これらの調製方法では、基材は、重合体基材または無機基材(ガラス基材などであるがそれらに限定されない)であってよい。重合体基材を形成するために用いてよい単量体および重合体の例は、本明細書中に開示されるフォトクロミック組成物を形成する上で有用なことがある、上記で考察した単量体および重合体を含むがそれらに限定されない。
【0084】
基材は、眼科用基材であってよい。本明細書中で用いられる用語「眼科用基材」は、レンズ、部分的に形成されたレンズおよび半加工レンズを指す。眼科用基材を形成することができるもとの有機材料の非限定的な例は、光学用途(既に説明したものなどの)のための透明なまたは光学的に透明なキャスト物を形成する上で有用な当分野で公知の重合体を含むがそれらに限定されない。
【0085】
基材を形成する際に用いるのに適する有機材料の他の非限定的な例は、不透明または半透明重合体材料、天然および合成繊維製品およびセルロース材料を含むがそれらに限定されない合成および天然有機材料を含む。基材を形成する際に用いるのに適する無機材料の非限定的な例は、無機酸化物系ガラス、鉱物、セラミックおよび金属を含む。例えば、基材は、研磨されて反射表面を形成しているセラミック、金属または鉱物基材であってよい。他の非限定的な実施態様では、反射被覆物または層を析出させるかまたは他の方法によって無機または有機基材の表面を被覆して反射性にするかまたは反射率を増強させてよい。
【0086】
基材は、その表面の少なくとも一部の上に保護被覆物を含んでよい。本明細書中で用いられる用語「保護被覆物」は、磨耗または摩滅を予防し、1つの被覆物または膜から別のものへの特性の移行を提供し、重合反応化学物質の効果に対して保護し、および/または、水分、熱、紫外線、酸素等などの環境条件による劣化に対して保護することができる被覆物または膜を指す。例えば、市販の熱可塑性ポリカーボネート眼科用レンズ基材は、表面に容易に引っかき傷ができ、傷がつくかまたはすり減る傾向があるので、多くの場合、耐摩耗性被覆物をそれらの表面に被覆済みの状態で販売されている。一つのそのようなポリカーボネートレンズ基材の例がGENTEXの商標で(Gentex Opticsによって)販売されている。耐摩耗性被覆物の非限定的な例は、シランを含む耐摩耗性被覆物、放射線硬化アクリレート系薄膜を含む耐摩耗性被覆物、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどの無機材料系の耐摩耗性被覆物、およびそれらの組み合わせを含む。例えば、保護被覆物は、放射線硬化アクリレート系薄膜の第1の被覆物と、シランを含む第2の被覆物とを含んでよい。市販の保護被覆物製品の非限定的な例は、SDC Coatings, Inc.およびPPG Industries, Inc.からそれぞれ市販されているSILVUE(登録商標)124およびHI−GARD(登録商標)被覆物を含む。
【0087】
上記で考察した本発明のさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料は、被覆用組成物の基材への塗布の前に被覆用組成物の少なくとも一部の中に組み込んでよく、あるいは、被覆用組成物を基材に塗布し、少なくとも部分的に硬化させ、その後でフォトクロミック材料を被覆物の少なくとも一部の中に吸収させてよい。被覆物、被覆用組成物またはその成分を参照して本明細書中で用いられる用語「硬化」および「硬化させる」は、硬化させ、重合させ、架橋させ、冷却させ、乾燥させることなどであるがそれらに限定されないプロセスを含むものとする。
【0088】
フォトクロミック材料を中に組み込んでよい被覆用組成物の特定の非限定的な例は、フォトクロミック材料に関連して用いられる当分野で既知の被覆用組成物を含むがそれらに限定されない。フォトクロミック材料を中に組み込んでよい被覆用組成物の非限定的な例は、米国特許第6,916,537号(「537特許」)明細書の第3欄、列1から12に開示されているモノイソシアネート含有被覆用組成物を含む。これは、少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオール(537号特許の第7欄、列38から第8欄、列49に非限定的な例が示されている)と、少なくとも1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合性二重結合を含むイソシアネート基(537号特許の第8欄、列50から第9欄、列44に非限定的な例が示されている)との反応生成物(537号特許の第7欄、列4〜37に非限定的な例が示されている)を含み(フォトクロミック材料に加えて)、任意選択として、付加共重合性単量体(537号特許の第11欄、列47から第20欄、列43に非限定的な例が示されている)を含む。上記で参照した537号特許の開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0089】
フォトクロミック材料を中に組み込んでよい被覆用組成物の他の非限定的な例は、米国特許第6,531,076号明細書の第3欄、列4から第10欄、列49に開示されているポリ(ウレア−ウレタン)組成物を含む。この開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。フォトクロミック材料を中に組み込んでよい被覆用組成物のさらにその他の非限定的な例は、米国特許第6,187,444号明細書の第2欄、列52から第12欄、列15に開示されているポリウレタン組成物を含む。この開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0090】
フォトクロミック材料を中に組み込んでよい被覆用組成物のさらに別の非限定的な例は、米国特許第6,602,603号明細書の第2欄、列60から第7欄、列50に開示されているポリ(メタ)アクリル被覆要組成物;米国特許第6,506,488号明細書の第2欄、列43から第12欄、列23および米国特許第6,432,544号明細書の第2欄、列32から第14欄、列5に記載されているアミノプラスト樹脂被覆用組成物;米国特許第6,436,525号明細書の第2欄、列15から第11欄、列60に記載されているポリ無水物被覆用組成物;米国特許第6,268,055号明細書の第2欄、列63から第17欄、列3に記載されているエポキシ樹脂被覆用組成物;および米国特許第6,060,001号明細書の第2欄、列6から第5欄、列39に記載されているアルコキシアクリルアミド被覆用組成物を含む。上記に参照した開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0091】
さらに、フォトクロミック被覆用組成物が、組成物または組成物から誘導される被覆物の加工および/または性能を助ける他の添加剤をさらに含んでよいことは、当業者に自明であろう。そのような添加剤の非限定的な例は、光開始剤、熱開始剤、重合禁止剤、溶媒、光安定剤(紫外線吸収剤、およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの光安定剤などであるがそれらに限定されない)、熱安定剤、離型剤、レオロジー調節剤、レベリング剤(界面活性剤などであるがそれらに限定されない)、フリーラジカル捕捉剤、接着促進剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤などの)およびそれらの組み合わせおよび混合物を含む。
【0092】
例えば、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物を基材の表面の少なくとも一部に塗布し、被覆用組成物を少なくとも部分的に硬化させることによって、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物をフォトクロミック物品の基材の少なくとも一部と接触させてよい。さらに、またはあるいは、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物を、例えば、1つ以上の別の少なくとも部分的な被覆物を介して基材につなげてよい。例えば、本明細書中では限定しないが、別の被覆用組成物を基材の表面の一部に塗布し、少なくとも部分的に硬化させた後、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物を別の被覆物の上に塗布し、少なくとも部分的に硬化させてよい。本明細書中下記で被覆物組成物を基材に塗布する非限定的な方法を考察する。
【0093】
本明細書中に開示されるフォトクロミック物品とともに用いてよい別の被覆物および膜の非限定的な例は、プライマーまたは適合性被覆物;移行被覆物、耐摩耗性被覆物および重合反応化学薬品の効果に対して保護し、および/または水分、熱、紫外線および/または酸素などの環境条件による劣化に対して保護する他の被覆物(例えばUV−遮蔽被覆物および酸素バリア被覆物)を含む保護被覆物;反射防止被覆物;従来のフォトクロミック被覆物;偏光被覆物および偏光延伸膜;およびそれらの組み合わせを含む。
【0094】
本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様とともに用いてよいプライマーまたは適合性被覆物の非限定的な例は、カップリング剤、カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物、およびそれらの混合物を含む被覆物を含む。本明細書中で用いられる用語「カップリング剤」は、表面の上の基と反応し、結合し、および/または会合することができる基を有する材料を意味する。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるカップリング剤は、シラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、ジルコニウムアルミネート、それらの加水分解物、およびそれらの混合物などの有機金属化合物を含んでよい。本明細書中で用いられる句「カップリング剤の少なくとも部分的な加水分解物」は、カップリング剤上の加水分解可能な基の一部から全部が加水分解されていることを意味する。本明細書中に開示されるさまざまな非限定的な実施態様とともに用いるのに適するプライマー被覆物の他の非限定的な例は、米国特許第6,025,026号明細書の第3欄、列3から第11欄、列40および米国特許第6,150,430号明細書の第2欄、列39から第7欄、列58に記載されているプライマー被覆物を含む。これらの開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書で用いられる用語「移行被覆物」は、2つの被覆物の間に特性の勾配を作り出す上で助けとなる被覆物を意味する。例えば、本明細書中では限定しないが、比較的硬い被覆物(耐摩耗性被覆物などの)と比較的柔らかな被覆物(フォトクロミック被覆物などの)との間の硬度の勾配を作り出す上で移行被覆物が助けとなることがある。移行被覆物の非限定的な例は、米国特許出願公開第2003/0165686号明細書の段落[0079]〜[0173]に記載されている放射線硬化、アクリレート系薄膜を含む。この開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書中で用いられる用語「耐摩耗性被覆物」は、振動砂法を用いる透明プラスチックおよび被覆物の耐摩耗性用ASTM F−735標準試験方法(ASTM F−735
Standard Test Method for Abrasion Resistance of Transparent Plastics and Coatings Using the Oscillating Sand Method)と互換性のある方法で試験されたとき、標準参照材料、例えばPPG Industries,
Inc.から入手可能なCR−39(登録商標)単量体で作られた重合体より大きな、磨耗に対する抵抗性を示す保護重合体材料を指す。耐摩耗性被覆物の非限定的な例は、オルガノシラン、オルガノシロキサン、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどの無機材料系の耐摩耗性被覆物、および紫外線硬化性の有機耐摩耗性被覆物を含む、耐摩耗性被覆物を含む。
【0097】
反射防止被覆物の非限定的な例は、金属酸化物、金属フッ化物、または他のそのような材料の単層被覆物または多層被覆物を含む。これらの被覆物は、例えば真空蒸着、スパッタリング等によって本明細書中に開示される物品の上に(または物品に塗布された自己支持膜の上に)析出させてよい。
【0098】
偏光被覆物および偏光延伸膜の非限定的な例は、偏光被覆物(米国特許出願公開第2005/0151926号明細書の段落[0029]〜[0116]に記載され、開示は参照によってここで特に本明細書に組み込まれるものなどの)および当分野で既知の二色性化合物を含む偏光延伸膜を含むがそれらに限定されない。
【0099】
上記で考察したように、フォトクロミック材料を含む被覆物を基材の上に形成させる前に、別の少なくとも部分的な被覆物または膜を基材の上に形成させてよい。例えば、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物を塗布する前に、プライマーまたは適合性被覆物を基材の上に形成させてよい。さらに、またはあるいは、フォトクロミック材料を含む被覆物を基材の上に形成させた後で、例えばフォトクロミック被覆物の上の保護膜として1つ以上の別の少なくとも部分的な被覆物(単数または複数)を基材の上に形成させてよい。例えば、フォトクロミック材料を含む被覆物の上に移行被覆物を形成させ、次に、移行被覆物の上に耐摩耗性被覆物を形成させてよい。
【0100】
例えば、基材(平凹眼科用レンズ基材または平凸眼科用レンズ基材などであるがそれらに限定されない)を含むフォトクロミック物品が提供される。基材は、その表面の少なくとも一部の上の耐摩耗性被覆物;耐摩耗性被覆物の少なくとも一部の上のプライマーまたは適合性被覆物;プライマーまたは適合性被覆物の少なくとも一部の上の本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック被覆物;フォトクロミック被覆物の少なくとも一部の上の移行被覆物;および移行被覆物の少なくとも一部の上の耐摩耗性被覆物を含む。さらに、他の非限定的実施態様によれば、フォトクロミック物品は、例えば、基材の表面につながった反射防止被覆物、および/または基材の表面につながった偏光被覆物または膜を含んでよい。
【0101】
基材が重合体材料を含むとき、フォトクロミック材料は、型内キャスト法(in−mold casting)によって基材の少なくとも一部につなげてよい。この実施態様によれば、液体被覆用組成物であっても粉体被覆用組成物であってもよいフォトクロミック材料を含む被覆用組成物を型の表面に塗布し、少なくとも部分的に硬化させてよい。その後、被覆物の上に重合体溶液または融解物、あるいはオリゴマーまたは単量体溶液または混合物をキャストし、少なくとも部分的に硬化させてよい。硬化させた後、被覆された基材を型から取り出してよい。米国特許第6,068,797号明細書の第7欄、列50から第19欄、列42に、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料を使用してよい粉体被覆物の非限定的な例が示されている。この開示は、参照によってここで特に本明細書に組み込まれる。
【0102】
基材が重合体材料、または例えばガラスなどの無機材料を含むとき、フォトクロミック材料は、被覆プロセスによって基材の少なくとも一部とつなげてよい。適当な被覆プロセスの非限定的な例は、スピンコート法、スプレーコート法(例えば液体または粉体被覆用組成物を用いる)、カーテンコート法、ロールコート法、スピンおよびスプレーコート法、ディップコート法、オーバーモールド法およびそれらの組み合わせを含む。例えば、フォトクロミック材料は、オーバーモールド法によって基材につなげてよい。この場合、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物(この被覆物の例は上で考察した)を型に塗布し、次に、基材が被覆物と接触し、被覆物を基材の表面の少なくとも一部の上に広がらせるように、基材を型の中に置いてよい。その後、被覆用組成物を少なくとも部分的に硬化させ、被覆された基材を型から取り出してよい。あるいは、オーバーモールドプロセスは、基材と型との間に隙間領域が定められるように基材を型の中に置き、その後、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物を隙間領域に注入することを含んでよい。その後、被覆用組成物を少なくとも部分的に硬化させ、被覆された基材を型から取り出してよい。フォトクロミック材料は、例えば、基材を回転させ、基材が回転している間に被覆用組成物を基材に塗布することによって、および/または被覆用組成物を基材に塗布し、続いて基材を回転させることによって、フォトクロミック材料を含む被覆用組成物を基材の上にスピンコートして基材につなげてもよい。
【0103】
さらに、またはあるいは、被覆用組成物(フォトクロミック材料の有無にかかわらず)を基材に塗布し(例えば、任意の上記の被覆プロセスによって)、被覆用組成物を少なくとも部分的に硬化させ、その後、フォトクロミック材料を被覆物の中に吸収(既に考察したように)させてよい。
【0104】
上記で考察したように、フォトクロミック被覆物を形成させた後、フォトクロミック被覆物の少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させてよい。例えば、フォトクロミック被覆物の少なくとも一部を少なくとも部分的に硬化させることは、フォトクロミック被覆物を電磁放射および熱放射の少なくとも1つに曝露させて少なくとも部分的に乾燥させ、被覆用組成物の1つ以上の成分を重合させ、および/または架橋させることを含んでよい。
【0105】
基材が重合体材料、または例えばガラスなどの無機材料を含むとき、フォトクロミック材料は、ラミネート法によって基材の少なくとも一部に貼り付けてよい。フォトクロミック材料を含む自立膜またはシートを、接着剤および/または熱および圧力を加えることの有無によらず、基材の一部と接着させるかまたは他の方法によってつなげてよい。任意選択として、その後、保護被覆物を膜の上に塗布してよく、または、第1の基材の上に第2の基材を加え、2つの基材を一緒にラミネートして(すなわち熱および圧力を加えて)フォトクロミック材料を含む膜が2つの基材の間にはさまれた素子を形成させてよい。フォトクロミック材料を含む膜を形成させる方法は、例えば、フォトクロミック材料を重合体またはオリゴマーの溶液または混合物と組み合わせ、それからの膜をキャストするかまたは押し出すこと、および必要なら、膜を少なくとも部分的に硬化させることを含んでよいが限定されない。さらに、またはあるいは、膜(フォトクロミック材料の有無にかかわらず)を形成させ、フォトクロミック材料を吸収(上記で考察したように)させてよい。
【0106】
さらに、被覆法またはラミネート法によってフォトクロミック材料を基材の少なくとも一部につなげる前に、基材の表面の少なくとも一部の上にプライマーまたは適合性被覆物(上記で考察したものなどの)を形成させてフォトクロミック被覆物と基材との濡れ性、接着性および/または化学適合性の1つ以上を高めさせてよい。上記に適当なプライマーまたは適合性被覆物および上記適当なプライマーまたは適合性被覆物を作る方法の非限定的な例が開示されている。さらにまた、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によって既に考察したように、基材は、その表面の少なくとも一部の上に耐摩耗性被覆物を含んでよい。
【0107】
任意の被覆物または膜を基材に適用する前に、例えば、被覆法および/またはラミネート法によってフォトクロミック材料を基材の表面の少なくとも一部に適用する前に、あるいはプライマーまたは適合性被覆物を基材に適用する前に、表面を清浄化し、および/または処理して清浄な表面、および/またはフォトクロミック被覆物の基材への接着性を高めることができる表面を準備してよい。効果的な清浄化法および処理法は、石鹸/洗剤水溶液を用いる超音波洗浄法;有機溶媒の水性混合物、例えばイソプロパノール:水またはエタノール:水の50:50混合物による清浄化法;UV処理法;活性化気体処理法、例えば低温プラズマまたはコロナ放電による処理法;および結果として基材表面をヒドロキシル化する化学処理法、例えばアルカリ金属水酸化物、例えば、フッ素化界面活性剤も含んでよい水酸化ナトリウムまたはカリウムの水溶液による表面のエッチング法を含むがそれらに限定されない。一般に、アルカリ金属水酸化物溶液は、希薄水溶液、例えば5から40重量パーセント、より典型的には10から15重量パーセント、例えば12重量パーセントのアルカリ金属水酸化物である。例えば、重合体有機材料の表面処理を記載している米国特許第3,971,872号明細書の第3欄、列13から25、米国特許第4,904,525号明細書の第6欄、列10から48、および米国特許第5,104,692号明細書の第13欄、列10から59を参照すること。上記開示は、参照によって特に本明細書に組み込まれる。
【0108】
基材の表面処理は、低温プラズマ処理であってよい。本明細書中では限定しないが、この方法は、例えば、物品の他の部分に影響を及ぼさずに表面を粗くし、および/または化学的に変化させることによって、その上に形成される被覆物の接着性を高める表面の処理を可能にし、物理的な表面を変化させる清浄かつ効率的方法となり得る。アルゴンなどの不活性気体、酸素などの反応性気体をプラズマ気体として用いてよい。不活性気体は表面を粗くし、一方、酸素などの反応性気体は、例えばヒドロキシル単位またはカルボキシル単位を表面の上に作り出すことによって、プラズマに曝露された表面を粗くすることと化学的に変化させることとの両方を行ってよい。1つの非限定的実施態様によると、酸素をプラズマ気体として用いてよい。本明細書中では限定しないが、酸素は、わずかではあるが効果的な表面の化学的改質とともに、わずかではあるが効果的な表面の物理的粗面化を提供することができると考えられる。当業者には自明であるように、表面粗面化および/または化学的改質の程度は、プラズマ気体およびプラズマ装置の動作条件(処理時間の長さを含む)の関数となる。
【0109】
プラズマ処理に付される基材の表面は、室温であってもよく、あるいはプラズマ処理の間またはその前に若干予熱されてもよい。プラズマ処理に付される表面の温度は、表面がプラズマによって悪影響(粗面化および若干の化学的改質による表面積の意図された増加を除く)を受けることがある温度未満の温度に維持するとよい。当業者は、処理されるプラスチック基材のそれぞれについて容易にプラズマ装置の動作条件を選んでプラズマ処理された表面の上に重ね合された膜/被覆物の接着性の改善を実現することができる。
【0110】
本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様は、さらに、フォトクロミック物品を形成する上記の方法のさまざまな組み合わせを用いることを含む。例えば、基材を形成するもとの有機材料の中への取り込み(例えば、場所打ち(cast−in−place)法および/または吸収法を用いる)によってフォトクロミック材料を基材と接触させ、その後、上記で考察した場所打ち法、被覆法および/またはラミネート法を用いてフォトクロミック材料(上記のフォトクロミック材料と同じであっても異なっていてもよい)を基材の一部とつなげてよい。
【0111】
本明細書中に記載されるフォトクロミック材料は、フォトクロミック材料が組み込まれるかまたは他の方法によってつなげられる有機材料または基材が所望の光学特性を示すように、量(または比)を用いてよい。例えば、フォトクロミック材料の量および種類は、フォトクロミック材料が基底状態形にあるとき有機材料または基材は実質的に透明または無色であり、フォトクロミック材料が活性化状態形にあるとき所望の結果としての色を示すように選んでよい。本明細書中に記載されるさまざまなフォトクロミック組成物、フォトクロミック被覆物および被覆用組成物、ならびにフォトクロミック物品中で利用されるフォトクロミック材料の正確な量は、所望の効果を作り出すのに十分な量が用いられるのであれば、重要でない。用いられるフォトクロミック材料の特定の量は、フォトクロミック材料の吸収特性、活性化されたときの望ましい色および色の強度、およびフォトクロミック材料を基材に組み込むかまたはつなげるために用いられる方法などであるがそれらに限定されないさまざまな因子に依存することがあると理解すべきである。本明細書中では限定しないが、本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によれば、有機材料の中に組み込まれてよいフォトクロミック材料の量は、有機材料の重量を基準として0.01から40重量パーセントの範囲であってよい。
【0112】
本発明は、以下の非限定的な実施例とともに読むとさらによく理解されよう。実施例中に示される手順の変更形ならびに実施例中に記載されていない他の手順が、本発明によるフォトクロミック材料を調製する上で有用なことがあることは当業者に自明であるので、下記の実施例中に示される手順は、本明細書においては非限定的であるものとする。
【実施例】
【0113】
実施例の第1部では、実施例1〜2に本明細書中に開示されるさまざまな非限定的実施態様によるフォトクロミック材料を作るために用いられる合成手順が示され、比較例1〜2に比較フォトクロミック材料を作るために用いられる手順が記載される。第2部では、試験チップの調製および試験手順が記載される。第3部では、試験結果が記載される。
【0114】
第1部 フォトクロミック材料 合成
(実施例1)
工程1
窒素雰囲気下反応フラスコの中で4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリド(200グラム)、1,2−ジメトキシベンゼン(128mL)およびジクロロメタン(1800mL)を一緒にした。塩化スズ(IV)(168mL)を45分間かけてゆっくり滴下して反応混合物に加えた。反応混合物を加熱して11時間還流させた。続いて反応混合物を室温に冷却し、200mLの塩化水素と1800mLの氷水との混合物の中にゆっくり注いだ。層を相分離させた。有機層を水で4回(各1L)、次に1.5Lの20%(重量/体積)水酸化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次にロータリーエバポレーションによって濃縮した。残留物を1Lの15%酢酸エチル/85%ヘキサン中で再結晶した。真空ろ過によって結晶固体を集め、132グラムの3,4−ジメトキシ−4’−トリフルオロメチルベンゾフェノンを得た。この物質をそれ以上精製しないで次の工程にそのまま用いた。
【0115】
工程2
窒素雰囲気下反応フラスコの中で工程1からの3,4−ジメトキシ−4’−トリフルオロメチルベンゾフェノン(129グラム)、カリウムtert−ブトキシド(93.5グラム)およびトルエン(1290mL)を一緒にした。コハク酸ジメチル(95mL)を45分間かけて滴下して反応混合物に加えた。次に、反応混合物を60℃に3時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を氷水(1500mL)の中に注いだ。層を相分離させ、水層をエチルエーテルで2回(各1L)洗浄した。有機層を棄て、水層を濃塩酸でpH1に酸性化した。撹拌しながら酢酸エチル(1L)を加え、次に層を相分離させた。水層を酢酸エチルで2回(各1L)抽出した。有機層を併せ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、続いて次にロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた橙色の固体を1Lの15%酢酸エチル/85%ヘキサン中でスラリー化した。真空ろ過によって固体を集め、166グラムの3−メトキシカルボニル−4−(4−トリフルオロメチル)フェニル−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ブテン酸の混合物(EおよびZ)を得た。この物質をそれ以上精製しないで次の工程にそのまま用いた。
【0116】
工程3
反応フラスコの中で工程2からの生成物(3−メトキシカルボニル−4−(4−トリフルオロメチル)フェニル−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−ブテン酸の混合物(EおよびZ)84グラム)および無水酢酸(252mL)を一緒にし、加熱して5時間還流させた。室温に冷却した後、反応混合物をロータリーエバポレーションによって濃縮した。残留物を酢酸エチル(500mL)に溶解させ、続いて炭酸水素ナトリウム飽和水溶液と氷(2L)との混合物の中に注いだ。層を相分離させた。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた残留物を500mLの60%メチルtert−ブチルエーテル/40%ヘキサンの中で再結晶した。真空ろ過によって結晶固体を集め、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6,7−ジメトキシナフタレンおよび1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−トリフルオロメチルナフタレン35グラムを得た。この物質をそれ以上精製しないで次の工程にそのまま用いた。
【0117】
工程4
窒素雰囲気下反応フラスコの中に工程3からの混合物(1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6,7−ジメトキシナフタレンおよび1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−トリフルオロメチルナフタレン、64グラム)を秤量して入れ、1280mLの無水テトラヒドロフランを加えた。テトラヒドロフラン中のメチルマグネシウムクロリドの3.0M溶液(286mL)を1時間かけて反応混合物に加えた。反応混合物を加熱して3.5時間還流させた。室温に冷却した後、反応混合物を塩化アンモニウム飽和水溶液と氷(1.5L)との中に撹拌しながらゆっくり注いだ。層を相分離させ、次に水層を酢酸エチルで2回(各1L)抽出した。有機層を併せ、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(1.5L)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーションによってピンク色の固体に濃縮した。固体を15%酢酸エチル/85%ヘキサン中でスラリー化させ、真空ろ過によって集め、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレンおよび1−(3,4−ジメトキシフェニル−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルナフタレン52グラムを得た。この物質をそれ以上精製しないで次の工程にそのまま用いた。
【0118】
工程5
Dean−Starkトラップを備えた反応フラスコの中に工程4からの生成物(1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレンおよび1−(3,4−ジメトキシフェニル−2−(ジメチルヒドロキシメチル)−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルナフタレン、51.7グラム)を入れ、775mLのトルエンを加えた。窒素雰囲気下で反応混合物を撹拌し、ドデシルベンゼンスルホン酸(8.3グラム)を加えた。反応混合物を加熱して5時間還流させた。室温に冷却した後、反応混合物をロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた褐色の固体を300mLの15%酢酸エチル/85%ヘキサンの中でスラリー化した。固体を真空ろ過によって集め、35.1グラムの2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−トリフルオロメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを得た。この物質をそれ以上精製しないで次の工程にそのまま用いた。
【0119】
工程6
反応フラスコの中で工程6からの生成物(2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−9−トリフルオロメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(8.8グラム)、参照によって実施例が本明細書にここで特に組み込まれる米国特許第5,458,814号明細書の実施例1、工程1の手順によって作られた1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オール(7.9グラム)、およびジクロロメタン(175mL)を併せた。これにトリフルオロ酢酸(260mg)およびp−トルエンスルホン酸(215mg)を加えた。反応混合物を室温で5時間撹拌し、次にNaHCO50%飽和水溶液(200mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた残留物をシリカゲル(450グラム)上のカラムクロマトグラフィーによって精製し、15%ヘキサン/85%ジクロロメタンで溶出させた。生成物を含む留分を併せ、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた固体をメタノール中でスラリー化し、真空ろ過によって集め、10.8グラムの緑色の固体を得た。質量分析およびNMR分析によると、生成物は下に示す3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと矛盾しない構造を有していた:
【0120】
【化12】


【0121】
(実施例2)
モルホリン(1.4mL)と無水テトラヒドロフラン(100mL)とを反応フラスコの中で一緒にした。反応混合物は窒素雰囲気下室温で撹拌し、n−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.5M、6.2mL)を10分間かけて滴下して加えた。5分間撹拌した後、実施例1、工程5からの3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(5g)を反応フラスコに加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を塩化ナトリウム飽和水溶液中に注き、次に酸性になるまで濃塩酸で酸性化させた。層を相分離させ、水層を100mLのジエチルエーテルで1回抽出した。有機部分を併せ、飽和水性塩化ナトリウム(200mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。結果として得られた褐色の固体を熱ジエチルエーテル/ヘキサン混合物(1:1)中でスラリー化させ、室温に冷却し、真空ろ過によって集め、冷ジエチルエーテル/ヘキサン混合物(1:1)で洗浄し、4.8グラムの白色固体を得た。質量分析およびNMR分析によると、生成物は、下に示される3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−11−トリフルオロメチル−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと矛盾しない構造を有していた:
【0122】
【化13】


【0123】
[比較例1]
4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリドの代わりにベンゾイルクロリドが用いられた以外は実施例1の手順に従った。質量分析およびNMR分析によると、生成物は、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと矛盾しない構造を有していた。
【0124】
[比較例2]
実施例1の代わりに比較実施例1が用いられた以外は、実施例2の手順に従った。質量分析およびNMR分析によると、生成物は、3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと矛盾しない構造を有していた。
【0125】
第2部 フォトクロミック試験正方片調製
実施例1〜2および比較例1〜2のフォトクロミック材料のフォトクロミック性能を以下のように試験した。1.5×10−3Mの溶液を生じると計算された量の試験されるフォトクロミック材料を、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)4部とポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート1部との単量体ブレンド50グラム、および0.033重量パーセントの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)を含むフラスコに加えた。撹拌および穏やかな加熱によってフォトクロミック材料を単量体ブレンドの中に溶解させた。透明な溶液が得られた後、真空脱気してから2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内寸を有する平らなシートの型の中に流し込んだ。型を密封し、温度を40℃から95℃に5時間かけて増加させ、温度を95℃で3時間保持し、次にそれを60℃に少なくとも2時間低下させるようにプログラムされた水平気流、プログラム制御オーブンの中に置いた。型を開いた後、ダイヤモンドブレードソーを用いて重合体シートを2インチ(5.1cm)の試験正方片に切断した。
【0126】
上記に記載したように調製したフォトクロミック試験正方片のフォトクロミック応答を光学ベンチ上で試験した。光学ベンチ上の試験の前に、フォトクロミック試験正方片を365nm紫外光に約15分間曝露してフォトクロミック材料を基底状態形から活性化状態形へ変換させ、次に、75℃のオーブンの中に約15分間置いてフォトクロミック材料を反対に基底状態形に戻らせた。次に、試験正方形を室温に冷却し、少なくとも2時間室内蛍光灯に曝露し、次に、覆われた状態に(すなわち、暗い環境の中に)少なくとも2時間保持した後、73°F(23℃)に維持された光学ベンチ上で試験した。ベンチは、300ワットのキセノンアーク灯、遠隔制御式シャッター、UVおよびIR波長を変化させ、吸熱源として作用するMelles Griot KG2フィルター、濃度フィルター(単数または複数)および試料ホルダを備え、水浴内に配置され、そこに被験正方片を挿入した。タングステン灯からの平行にされた光のビームを、正方片への法線に対して小さな角度(約30°)で正方形を通過させた。正方片を通過した後、タングステン灯からの光を集光球へ誘導し、そこで光を合わせ、さらにOcean Optics S2000分光計に誘導し、そこで測定ビームのスペクトルを収集し、分析した。λmax−visは、試験正方片中のフォトクロミック化合物の活性化状態形の最大吸収が起こる可視スペクトルの波長である。λmax−vis波長は、フォトクロミック試験正方片をVarian Cary 300紫外可視分光光度計の中で試験することによって測定した。λmax−vis波長は、光学ベンチ上のS2000分光計によって得たスペクトルから計算してもよい。
【0127】
各試験正方片の飽和光学密度(「Sat’d OD」)は、キセノン灯からのシャッターを開き、試験チップをUV放射線に30分間曝露した後に透過率を測定することによって測定した。Sat’d ODにおけるλmax−visは、光学ベンチ上のS2000分光計によって測定した活性化データから計算した。第1退色半減期(「T1/2」)は、試験正方片中のフォトクロミック材料の活性化状態形の吸光度が、活性化光の光源の除去後、室温(73°F)でSat’d OD吸光度値の2分の1に達する秒で表した時間間隔である。
【0128】
第3部 試験および結果
試験されたフォトクロミック材料に関する結果を下の表1に挙げる。
【0129】
表1 フォトクロミック試験データ
【0130】
【表1】

これらの結果は、本発明のフォトクロミック材料の退色速度が11−位に置換基のない各比較実施例と比べて顕著に速いことを示している。
【0131】
例示を目的として本発明の特定の実施態様を上記に記載したが、添付の請求項に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細の多数の変化形が作られ得ることは当業者には自明であろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。


【公開番号】特開2012−233202(P2012−233202A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−176256(P2012−176256)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2009−534738(P2009−534738)の分割
【原出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】