説明

退院評価プログラム

【課題】専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うこと。
【解決手段】読出処理部が、入院患者自身の属性について二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる第1の評価項目群および入院患者以外の属性について評価項目からなる第2の評価項目群を含んだ評価リストと、この評価リストに含まれる評価項目にそれぞれ対応付けられた所定の重み付け値とを含んだ評価項目情報を記憶部から読み出し、回答受付処理部が、読み出された評価項目情報の評価リストを表示部に表示させたうえで、この評価リストに対する回答を2値変数として評価項目ごとに受け付け、退院確率算出処理部が、受け付けた2値変数および読み出された評価項目情報の重み付け値に基づいて入院患者が退院することができる確率を示す退院確率を算出するように退院評価プログラムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入院患者の退院可否について多重ロジスティック回帰解析を用いて評価する退院評価プログラムに関し、特に、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うことができる退院評価プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病院などの医療施設における療養病床の不足が問題となってきている。療養病床は、介護を必要とする入院患者や、疾病や怪我を治療する入院患者を受け入れるために用いられる。ここで、高齢の入院患者の場合、認知症やうつなど、自宅退院を阻害する要因が多く見受けられ、退院して自宅に戻っても生活を維持することができず、再入院するケースも多い。
【0003】
このように、高齢者の場合、疾病が治癒しても自宅での生活が困難な場合も多く、結果として再入院を含め、療養病床を必要とする期間が長くなる傾向にある。特に、高齢者の人口比率が大きい地域においては、このような療養病床の不足は深刻である。その一方で、自宅退院を望む高齢者も多いことから、自宅退院が可能な入院患者の評価手法や、退院に向けた適切な支援策が求められている。
【0004】
CGA(Comprehensive geriatric assessment;高齢者総合的機能評価)と呼ばれる手法は、高齢者について疾病などの体の状態だけではなく、家族や経済状況といった多面的な要素で総合的に評価し、医師、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーなど多職種のチームで、入院中の治療・介護および退院後の生活をフォローしていこうとするものである。
【0005】
なお、特許文献1には、退院後の患者を適切にケアするために、病院や介護福祉施設等をネットワークで結び、患者情報を共有する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−318174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術は、退院後のケアを充実させることで、結果として、療養病床数の削減に寄与するものの、入院患者が退院できるか否かを定量的に評価する技術ではない。したがって、特許文献1の技術を用いたとしても、自宅退院が可能であるか否かの退院評価を行うことはできない。
【0008】
また、上記したCGAを用いると、多面的な要素で退院可否を評価することは可能であるものの、評価に要する要素数が非常に多い(たとえば、200〜300)ため、熟練した専門家でなければ、適正な退院評価を行うことはできない。したがって、このような専門家が存在しない病院においては、CGAを用いて適正な退院評価を行うことは困難である。
【0009】
これらのことから、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うことができる退院評価方法あるいは退院評価プログラムをいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0010】
本発明は、上記した従来技術による問題点を解決するためになされたものであって、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うことができる退院評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、入院患者の退院可否について多重ロジスティック回帰解析を用いて評価する退院評価プログラムであって、前記入院患者自身の属性について二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる第1の評価項目群および前記入院患者以外の属性について前記評価項目からなる第2の評価項目群を含んだ評価リストと、該評価リストに含まれる前記評価項目にそれぞれ対応付けられた所定の重み付け値とを含んだ評価項目情報を記憶部から読み出す読出手順と、前記読出手順によって読み出された前記評価項目情報の前記評価リストを表示部に表示させたうえで、当該評価リストに対する前記回答を2値変数として前記評価項目ごとに受け付ける回答受付手順と、前記回答受付手順が受け付けた前記2値変数および前記読出手順によって読み出された前記評価項目情報の前記重み付け値に基づいて前記入院患者が退院することができる確率を示す退院確率を算出する退院確率算出手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記読出手順は、すべての前記評価項目情報の中から前記重み付け値に基づいて所定数の前記評価項目情報を抽出したうえで前記記憶部から読み出すことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記回答受付手順は、現状の前記退院確率を示す現状退院確率を算出するために用いられる現状評価リストと、目標とする前記退院確率を示す目標退院確率を算出するために用いられる目標評価リストとを前記評価リストとして前記表示部に表示させ、前記退院確率算出手順は、前記現状評価リストに対する前記回答に基づいて前記現状退院確率を算出するとともに、前記目標評価リストに対する前記回答に基づいて前記目標退院確率を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記回答受付手順は、前記現状評価リストおよび前記目標評価リストにおける同一の前記評価項目について、前記目標評価リストにおいて前記現状評価リストとは異なる前記回答を受け付けるたびに、あらたな前記目標退院確率を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記回答受付手順は、前記現状評価リストおよび前記目標評価リストにおける同一の前記評価項目について、前記現状評価リストにおいて前記現状評価リストとは異なる前記回答を受け付けたと仮定した場合における前記目標退院確率を、前記目標評価リストにおける前記評価項目とともに前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、前記退院確率を含んだ退院支援計画書を前記入院患者ごとに印字部に印字させる印字手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記の発明において、前記入院患者ごとの前記退院確率を当該入院患者が実際に退院したか否かの退院実績に対応付けて実績情報として記憶部へ蓄積する蓄積手順と、他の前記退院評価プログラムと前記実績情報を交換する実績情報交換手順とをさらにコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記の発明において、前記蓄積手順は、前記入院患者が入院する施設を識別する施設識別子および/または前記施設が所在する地域名を識別する地域識別子を前記実績情報に含めて記憶部へ蓄積することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記の発明において、前記実績情報に基づいて前記評価項目情報における前記評価項目および/または前記重み付け値を更新する更新手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記の発明において、前記回答受付手順は、前記評価項目について前記回答を行う利用者を所定の権限が付与された利用者に限定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、入院患者自身の属性について二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる第1の評価項目群および入院患者以外の属性について評価項目からなる第2の評価項目群を含んだ評価リストと、この評価リストに含まれる評価項目にそれぞれ対応付けられた所定の重み付け値とを含んだ評価項目情報を記憶部から読み出し、読み出された評価項目情報の評価リストを表示部に表示させたうえで、この評価リストに対する回答を2値変数として評価項目ごとに受け付け、受け付けた2値変数および読み出された評価項目情報の重み付け値に基づいて入院患者が退院することができる確率を示す退院確率を算出することとしたので、退院の可能性を定量的にあらわす退院確率という概念を導入したうえで、入院患者自身の属性のみならず、入院患者以外の属性(たとえば、家族や経済状態など)を含んだ評価リストを用いて退院確率を算出することで、適正な退院評価を行うことができるという効果を奏する。また、二者択一の回答によって簡便に退院確率を算出するようにしたので、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うことができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、すべての評価項目情報の中から重み付け値に基づいて所定数の評価項目情報を抽出したうえで記憶部から読み出すこととしたので、退院確率の算出に用いる評価項目を選択することで、退院確率に寄与する評価項目を厳選して使用することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、現状の退院確率を示す現状退院確率を算出するために用いられる現状評価リストと、目標とする退院確率を示す目標退院確率を算出するために用いられる目標評価リストとを評価リストとして表示部に表示させ、現状評価リストに対する回答に基づいて現状退院確率を算出するとともに、目標評価リストに対する回答に基づいて目標退院確率を算出することとしたので、現状の退院確率と目標とする退院確率とを容易に対比することができるという効果を奏する。これによって、たとえば、目標達成のために行うべき介入の優先順位を容易に抽出することができる。
【0024】
また、本発明によれば、現状評価リストおよび目標評価リストにおける同一の評価項目について、目標評価リストにおいて現状評価リストとは異なる回答を受け付けるたびに、あらたな目標退院確率を表示部に表示させることとしたので、目標退院確率を向上させるために、回答を変更すべき評価項目を容易に抽出することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、現状評価リストおよび目標評価リストにおける同一の評価項目について、現状評価リストにおいて現状評価リストとは異なる回答を受け付けたと仮定した場合における目標退院確率を、目標評価リストにおける評価項目とともに表示部に表示させることとしたので、目標退院確率を向上させるために、回答を変更すべき評価項目を明示することができるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、退院確率を含んだ退院支援計画書を入院患者ごとに印字部に印字させることとしたので、診療報酬の対象となる退院支援計画書を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、入院患者ごとの退院確率を入院患者が実際に退院したか否かの退院実績に対応付けて実績情報として記憶部へ蓄積し、他の退院評価プログラムと実績情報を交換することとしたので、実績情報を交換して実績情報を共有し、より多くの実績値に基づいた退院確率の算出を行うことで、退院確率の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、入院患者が入院する施設を識別する施設識別子および/または施設が所在する地域名を識別する地域識別子を実績情報に含めて記憶部へ蓄積することとしたので、施設の特性を反映した退院確率を算出したり、地域の特性を反映した退院確率を算出したりすることができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、実績情報に基づいて評価項目情報における評価項目および/または重み付け値を更新することとしたので、実績数の増加に伴って退院確率の算出精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明によれば、評価項目について回答を行う利用者を所定の権限が付与された利用者に限定することとしたので、評価項目の回答を行うことができる職種をそれぞれ限定することで、医師、看護師、介護士といった各職種の見解を反映した退院確率の算出、退院支援計画書の提供を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る退院支援評価プログラムの実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る退院支援評価手法の概要について図1を用いて説明した後に、本発明に係る退院支援評価手法を適用した退院支援プログラムの実施例を説明することとする。
【0032】
図1は、本発明に係る退院評価手法の概要を示す図である。本発明に係る退院支援手法では、患者自身の属性についての二者択一の評価項目と、患者以外の属性についての二者択一の評価項目とを含んだ退院支援評価シート(退院支援評価リスト)を用いて退院確率を算出する。ここで、「退院確率」とは、所定期間(たとえば、3ヶ月)の経過後に、入院患者が退院することができる確率であり、本手法が提案するあらたな指標である。なお、以下では、「退院確率」として、特に、入院患者が自宅退院することができる確率を示す「自宅退院確率」を算出する場合について説明するが、他の病院などへの転院、施設への入所のように退院先が自宅ではない場合の確率の算出にも本発明に係る退院支援手法を用いることができる。
【0033】
また、「患者自身の属性」とは、患者自身について自宅退院の可否に影響を及ぼす医学的因子、身体的因子、精神・心理的因子等を指し、「患者以外の属性」とは、患者の家族や患者の周囲の環境について自宅退院の可否に影響を及ぼす社会的因子等を指す。
【0034】
本発明に係る退院評価手法では、上記した退院支援評価シートで実際に入院患者を評価し、退院に至った退院群と、退院に至らなかった非退院群とに分け、多重ロジスティック回帰分析を行うことによって、自宅退院の可否に特に影響を及ぼす評価項目をあらかじめ抽出した。そして、退院確率の算出に用いる評価項目と、各評価項目についての重み付けをあらわすオッズ比等の重み付け値とを評価項目情報として用いることとした。
【0035】
そして、本発明に係る退院評価手法では、上記した評価項目情報を用いたうえで、退院支援評価シートを「はい」/「いいえ」ボタン等とともに画面表示して回答結果を取得し、回答結果に基づいて退院確率を算出することとした。
【0036】
具体的には、患者が入院したならば、患者の現状を「はい」/「いいえ」形式で入力し(同図の(1)参照)、現状の退院確率を算出することとした(同図の(2)参照)。また、退院へ向けての目標を同様に入力し(同図の(3)参照)、目標退院確率を算出することとした(同図の(4)参照)。
【0037】
このように、現状退院確率および目標退院確率を算出することで、患者を退院へ導くためにどのような介入を行えばよいかが明らかとなる。たとえば、同図に示すように、現状退院確率が40%である場合には、このままでは入院患者が自宅退院することが困難であることが強く予想される。このため、現状の回答結果が「はい」である評価項目を「いいえ」に変更したり、「いいえ」である評価項目を「はい」へ変更したりすることで、退院確率を向上させる操作を促す。
【0038】
このような操作の結果、たとえば、同図に示すように、目標退院確率が80%となったならば、所定の入院期間を経て入院患者が自宅退院することが可能であると強く予想される。なお、本発明に係る退院評価手法では、目標入力において回答内容を変更する際に、患者に対して介入すべき事項を例示したうえで選択できるように構成したので、施設側は、目標確率を達成するための指針を得ることができる。
【0039】
さらに、本発明に係る退院評価手法では、上記した現状退院確率および目標退院確率を含んだ退院支援計画書を印字する(同図の(5)参照)。ここで、退院支援計画書とは、入院患者を退院へ導く方策が記載される計画書であり、あらたに診療報酬の対象となったものである。
【0040】
なお、退院支援計画書は、本来手書きで記入されるものであるが、本発明に係る退院評価手法では、この退院支援計画書を退院確率の算出操作を経ることで、自動的に生成することとした。したがって、計画書のフォーマットに不慣れな利用者であっても、簡単に退院支援計画書を生成することができる。
【0041】
このように、本発明に係る退院評価手法では、退院確率というあらたな指標を導入することとしたので、退院評価を定量的に行うことができる。また、あらかじめ抽出した評価項目の数を必要最小限に抑えつつ(たとえば、20項目)、自宅退院の可否に大きな影響を与える評価項目を抽出することとしたので、利用者に高度な知識を強いることなく、退院確率の算出操作を簡便に行うことができる。
【0042】
以下では、上記した退院評価手法を適用した退院評価プログラムの実施例について説明する。なお、以下に示す実施例では、退院評価プログラムをインストールしたコンピュータであって、上記した退院支援計画書の印字機能を備えた退院支援計画書生成装置について説明することとする。また、以下の実施例では、入院患者が自宅退院することができる確率を示す「自宅退院確率」を、退院確率として算出する場合について説明するが、入院患者が他の病院などに転院する場合や、施設に入所する場合などのように退院先が自宅ではない確率と退院先が自宅である確率との和を、退院確率として算出することとしてもよい。
【実施例】
【0043】
図2は、退院支援計画書生成装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、退院支援計画書生成装置10は、表示部11と、入力部12と、印字部13と、制御部14と、記憶部15とを備えている。また、制御部14は、読出処理部14aと、回答受付処理部14bと、退院確率算出処理部14cと、蓄積処理部14dと、印字処理部14eとをさらに備えており、記憶部15は、評価項目情報15aと、実績情報15bと、計画書フォーマット15cとを記憶する。
【0044】
ここで、退院支援計画書装置10は、パーソナルコンピュータやワークステーションといった市販のコンピュータに、退院評価プログラムをインストールすることで構成される。また、同図に示す制御部14が、退院評価プログラムに相当する。なお、本実施例では、印字部13を備えた退院支援計画書生成装置10について示しているが、USB(Universal Serial Bus)やLAN(Local Area Network)経由で、プリンタ装置と接続し、印字部13を省略する構成としてもよい。
【0045】
表示部11は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであり、回答受付処理部14bから受け取った入力用画面を表示する。また、入力部12は、キーボードやマウス、タッチパネルといった入力デバイスであり、入力用画面に入力されたデータを回答受付処理部14bへ通知する。また、印字部13は、インクジェットプリンタやレーザプリンタといった印刷デバイスであり、印字処理部14eから受け取った印字データを印字する処理を行う。
【0046】
制御部14は、二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる退院支援評価リストを表示部11に表示させる処理、入力部12経由で回答を受け取る処理、回答および評価項目情報15aに基づいて退院確率を算出する処理、退院支援計画書を印字部13に印字させる処理等を行う処理部である。
【0047】
読出処理部14aは、記憶部15から評価項目情報15aを読み出し、読み出した評価項目情報15aを回答受付処理部14bへ渡す処理を行う処理部である。なお、記憶部15から読み出した評価項目情報15aについて所定の抽出処理を行ったうえで、抽出された評価項目のみを回答受付処理部14bへ渡すこととしてもよい。
【0048】
たとえば、評価項目情報15aに50個の評価項目が含まれる場合、各評価項目に対応付けられた重み付け値(たとえば、オッズ値)について退院に対する寄与度が高い順に、20個の評価項目を抽出することができる。
【0049】
ここで、読出処理部14aによって記憶部15から読み出される評価項目情報15aについて図3〜図5を用いて説明しておく。図3は、退院支援評価シート(退院支援評価リスト)の一例を示す図である。なお、評価項目情報15aは、図3に示した20項目の評価項目を含んでおり、各評価項目について所定の重み付け値を対応付けた情報である。
【0050】
図3に示すように、退院支援評価シートは、患者自身の属性について(1)〜(8)の8項目、患者以外の属性について(9)〜(20)の12項目の評価項目を含んでおり、それぞれ「はい」/「いいえ」を選択させる二者択一の回答を求める質問形式の項目群である。なお、同図に示すように、「はい」が選択された場合に「1」とするか、「いいえ」が選択された場合に「1」とするかは、あらかじめ定義することが可能である。
【0051】
たとえば、(1)の「摂食が自立している」の場合、「はい」が選択された場合に2値変数は「1」とされ、「いいえ」が選択された場合には「0」とされる。また、(4)の「高次脳機能障害がある」の場合、「はい」が選択された場合に2値変数は「0」とされ、「いいえ」が選択された場合には「1」とされる。
【0052】
ここで、図3に示した20項目の評価項目は、各項目について実際に入院患者を評価し、退院に至った退院群と、退院に至らなかった非退院群とに分け、多重ロジスティック回帰分析を行うことによって、自宅退院の可否に特に影響を及ぼすものをあらかじめ抽出したものである。
【0053】
図4は、退院評価シートにおける各項目についての分析結果を示す図である。なお、かかる分析結果は、長期療養病床に入院中の後期〜超高齢者について、CGA(高齢者総合的機能評価)の対象者であり、1ヶ月以上の入院および離床可能な入院患者を対象としたものである。なお、対象者数は、男28例、女87例の合計115例、平均年齢は、85.1歳である。
【0054】
上記した対象者を、所定期間経過後に退院に至った退院群と、退院に至らなかった非退院群と2群に分類したうえで、上記した退院評価シートの回答に基づいて退院確率の算出に用いる各種数値を求めた。
【0055】
同図に示す「評価項目」は、図3に示した各評価項目に対応するものである。たとえば、(2)の「排泄が自立している」は、図3における「患者様自身の問題」の「身体機能」における「排泄が自立している」(図3の(2)参照)に対応する。
【0056】
また、「β値」は、ロジスティック回帰分析において偏回帰係数と呼ばれる重み付け値であり、この値が大きい評価項目ほど自宅退院に寄与する評価項目であるといえる。なお、この「β値」についてexp(β)の演算を行うことで、いわゆるオッズ比(Odds Ratio;OR)と呼ばれる指標が得られる。
【0057】
また、「95%CI(Confidence Interval;信頼区間)」とは、95%の確率で真の値を含むと予想される区間である。また、「p値」とは、解析結果の確からしさを示す指標であり、p値が小さいほど解析結果の信憑性が増すことになる。
【0058】
図4に示した評価項目の中では、(12)の「家族に退院への意欲がある」について、「β値」が「3.386」と最も大きく、「p値」も「0.001」未満と信憑性も高いことから、家族に退院への意欲がある場合に、自宅退院が実現する可能性、すなわち、退院確率が大きくなることがわかる。
【0059】
ここで、退院確率を「p」とおき、図4に示した「β値」を(1)についてβ、(2)についてβのようにあらわし、はい/いいえの回答に基づく2値変数を(1)についてx、(2)についてxのようにあらわすと、pと、βおよびxとの関係は、
【数1】

となる。なお、βについては、図4には示していないが、ロジスティック回帰分析の結果として得ることができる。
【0060】
ここで、式(1)におけるβおよびxであらわされる辺の値をyとすると、yは、βおよびxの値が定まることで求めることができる。したがって、pは、yを用いて式(2)のようにあらわされる。このようにして、退院確率(p)を算出することができる。
【0061】
図5は、退院群および非退院群における退院確率の分布を示す図である。なお、同図では、上記した115例についてそれぞれ算出された退院確率の分布を、54例の退院群、61例の非退院群に区別して示している。
【0062】
同図に示すように、退院確率が70%以上の場合について、退院群の分布と非退院群の分布とを対比すると、退院群の分布が明らかに多いことがわかる。すなわち、退院確率が70%以上の場合、退院に至る可能性が高いことを示している。一方、退院確率が30%未満の場合については、非退院群の分布が明らかに多いことがわかる。すなわち、退院確率が30%未満の場合、退院できない可能性が高いことを示している。
【0063】
なお、退院確率が30%〜70%の範囲については、退院群と非退院群との明確な差異はないことから、退院確率が30%〜70%の範囲については、入院患者による積極的な介入によって退院確率を向上させる余地が残されているといえる。
【0064】
図2の説明に戻り、回答受付処理部14bについて説明する。回答受付処理部14bは、読出処理部14aから受け取った評価項目情報15aの各評価項目について入力画面を生成し、表示部11へ渡す処理を行うとともに、入力部12から受け取った入力結果を退院確率算出処理部14cへ出力する処理を行う処理部である。
【0065】
なお、この回答受付処理部14bは、入力部12から受け取った患者識別子に対応する評価項目情報15aの読み出しを読出処理部14aに対して依頼するものとする。また、図2では、患者の氏名や病歴、診断履歴といった患者情報の図示を省略しているが、回答受付処理部14bは、患者情報を反映した入力画面を生成するものとする。
【0066】
ここで、回答受付処理部14bが生成する入力画面の例について図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7には、評価項目ごとに「はい」ボタンおよび「いいえ」ボタンが表示され、選択されたボタンは反転表示(同図では黒背景に白文字)される場合について示している。
【0067】
図6は、入院時の回答受付に用いる画面例を示す図である。同図に示すように、画面には、評価者氏名を選択する「評価者氏名選択ボタン」(同図の61参照)、退院確率を算出するシチュエーションを選択する「シチュエーション選択ボタン」(同図の62参照)が含まれている。
【0068】
たとえば、「シチュエーション選択ボタン」をクリックすると、選択肢が表示されるので(同図の62参照)、利用者は、所望する項目を選択する。その結果、「シチュエーション選択ボタン」には、選択されたシチュエーションが表示される(同図では、「入院時」)。なお、「評価者氏名選択ボタン」で選択可能な評価者氏名についてコンピュータにログイン権限を有する利用者に制限したり、選択時にパスワードの入力を要求したりすることで、評価者を所定の利用者に制限することができる。
【0069】
また、同図に示すように、入力画面には、図3の(1)〜(20)に対応する評価項目が含まれおり、各評価項目には、「はい」ボタンおよび「いいえ」ボタンが対応付けられている。これらのボタンは、利用者に選択されることによって反転表示され(同図の64参照)、利用者がすべての評価項目についての入力を終えると、自宅退院の確率が表示される(同図の63参照)。なお、選択されていないボタンは通常表示される(同図の65参照)。
【0070】
また、各評価項目には、「基」ボタン(同図の66参照)および「介」ボタン(同図の67参照)が設けられる。ここで、「基」ボタンが選択されると、同図の68に示したようなポップアップ画面が表示され、評価項目において「はい」/「いいえ」の選択基準となる情報が提示される。また、「介」ボタンは、患者に対する介入策の候補を表示させるためのボタンである。なお、「介」ボタンが選択された場合に表示されるポップアップ画面の例については、図7で説明する。
【0071】
このように、評価項目ごとに、「はい」/「いいえ」の選択基準や、介入策の候補を表示させることが可能であるので、利用者は、高度な知識を要することなく評価項目の入力を簡便に行うことができるとともに、簡単な操作で退院確率を得ることができる。
【0072】
図7は、目標設定時の回答受付に用いる画面例を示す図である。同図に示すように、図6に示した入院時における評価結果、すなわち、各評価項目の入力結果および退院確率(同図の63参照)が表示される。この状態で、左から2つめの「シチュエーション選択ボタン」をクリックし、ポップアップ画面(同図の71参照)から「目標」を選択し、各評価項目の入力を開始する。
【0073】
ここで、目標欄における各評価項目の選択状況の初期値としては、入院時欄における各評価項目の選択状況がコピーされている。たとえば、入院時における各評価項目の選択状況が、上から、「はい」、「いいえ」、「いいえ」である場合、目標欄における選択状況の初期値についても、上から、「はい」、「いいえ」、「いいえ」となる。
【0074】
利用者は、目標欄における各評価項目を「はい」から「いいえ」へ、「いいえ」から「はい」へ、それぞれ変更する操作を行うことで、目標退院確率(同図の73参照)を、入院時退院確率(同図の63参照)より高くすることができるか否かを検討することになる。
【0075】
ここで、同図に示す72a、72b、72c、72dおよび72eは、目標設定時に、選択内容が変更された評価項目を示している。なお、評価項目の選択内容が変更されるたびに、目標退院確率(同図の73参照)は、更新されていく。利用者は、目標退院確率を目視しつつ、目標退院確率を向上させるために選択内容を変更すべき評価項目を検討していくことになる。
【0076】
なお、本実施例では、各評価項目について選択内容の変更後に、目標退院確率を更新して表示する場合について説明したが、目標退院確率の更新タイミングを変更することとしてもよい。たとえば、選択されていない「はい」/「いいえ」ボタンにマウスカーソルを重ねたタイミングで、選択変更を仮定した場合における目標退院確率を、一時的に同図の73に表示することとしてもよい。
【0077】
この場合、該当するボタンのクリックを行うことなくマウスカーソルをボタン外に移動させると、目標退院確率は一時更新前の状態に戻る。また、選択されていない「はい」/「いいえ」ボタンにマウスカーソルを重ねたタイミングで、選択変更を仮定した場合における目標退院確率をポップアップ表示させることとしてもよい。
【0078】
さらに、評価項目ごとに、「はい」/「いいえ」ボタンの選択変更を仮定した場合における目標退院確率を表示するエリアを設け、各表示エリアに、それぞれ目標退院確率を表示することとしてもよい。この場合、いずれかの評価項目について選択内容が変更されるたびに、各表示エリアの目標退院確率はそれぞれ更新されていくことになる。
【0079】
なお、「介」ボタンが選択された場合に表示されるポップアップ画面(同図の74参照)には、介入策の候補が表示され、利用者がいずれかの候補を選択すると、選択された候補は実績情報15bに記録される。ここで、介入策の候補から複数の介入策を選択することもできる。
【0080】
このように、目標設定時には、入院時における評価結果および入院時退院確率を参照しながら、各評価項目の選択内容を変更するか否かを検討することができるので、効率的に目標設定を行うことができる。なお、同図の71に示した「シチュエーション選択ボタン」から、「退院検討時」、「退院時」といった項目を選択することで、あらたに退院検討欄、退院時欄が、追加されていき退院確率がそれぞれ算出されていくので、入院患者の状況変化の比較を容易に行うことができる。
【0081】
図2の説明に戻り、退院確率算出処理部14cについて説明する。退院確率算出処理部14cは、回答受付処理部14bから受け取った各評価項目の選択内容および評価項目情報15aに含まれる各評価項目についての重み付け値(たとえば、オッズ比)に基づき、上記した式(1)および式(2)を用いて退院確率(p)を算出する処理を行う処理部である。
【0082】
蓄積処理部14dは、退院確率算出処理部14cによって算出された退院確率を、回答受付処理部14bにおける選択内容や患者情報とともに実績情報15bとして、記憶部15へ記憶させる処理を行う処理部である。
【0083】
たとえば、図6を用いて説明した入院時の回答受付画面への入力がなされると、退院確率算出処理部14cによって入院時退院確率の算出がなされ、実績情報15bが更新される。また、図7を用いて説明した目標設定時の回答受付画面への入力がなされると、退院確率算出処理部14cによって目標退院確率の算出がなされ、実績情報15bが更新される。
【0084】
印字処理部14eは、実績情報15bおよび計画書フォーマット15cに基づいて退院支援計画書の印刷イメージを生成し、生成した印刷イメージを印字部13へ出力する処理を行う処理部である。
【0085】
ここで、印字処理部14eによって印字制御される退院支援計画書のフォーマット例について図8および図9を用いて説明する。図8は、退院支援計画書のフォーマット例(1/2)を示す図であり、図9は、退院支援計画書のフォーマット例(2/2)を示す図である。なお、図8および図9に示した2ページ分の計画書で1つの退院支援計画書が構成される。
【0086】
図8に示したように、「患者氏名」、「性別」、「病棟」、「病名」といった各欄には、図示しない患者情報から該当する項目が転記される。また、「退院へ向けた支援概要」には、図7の74で選択された介入策等が転記される。なお、同図における各空欄の内容について選択肢から選択させることとしてもよいし、自由入力を行わせることとしてもよい。
【0087】
また図9に示したように、退院支援計画書の2ページ目には、総合機能評価91、レーダーチャート92、退院支援評価シート93等の情報が含まれる。ここで、退院支援評価シート93は、図7に示した画面において入力されたデータに対応するものである。
【0088】
このように、退院支援計画書生成装置10は、退院確率を算出する際に蓄積された実績情報15b等に基づき、簡単な操作で診療報酬の対象となる退院支援計画書を生成することができる。
【0089】
図2の説明に戻り、記憶部15について説明する。記憶部15は、メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、評価項目情報15aと、実績情報15bと、計画書フォーマット15cとを記憶する。
【0090】
評価項目情報15aは、図3に例示した評価項目と、各評価項目の退院寄与度を示す重み付け値(たとえば、オッズ比)とを関連付けた情報である。すなわち、この評価項目情報15aと、各評価項目の選択結果とを用いることで、上記した式(1)および式(2)によって退院確率を算出することができる。
【0091】
実績情報15bは、各シチュエーションで算出された退院確率および退院確率の算出根拠となった各評価項目の選択結果を対応付けた情報である。なお、この実績情報15bは、入院患者ごとに用意される。また、実績情報15bに施設を識別する施設識別子や、施設が所在する地域を識別する地域識別子を含めることとしてもよい。
【0092】
計画書フォーマット15cは、退院支援計画書のフォーマットを含んだ情報であり、退院計画書のレイアウト、各項目の選択肢などから構成される。この計画書フォーマット15cを変更することで、退院支援計画書のレイアウト等を容易に変更することができる。
【0093】
次に、退院支援計画書生成装置10によって実行される処理手順について図10および図11を用いて説明する。図10は、入院時の回答受付における処理手順を示すフローチャートであり、図11は、目標設定時の回答受付における処理手順を示すフローチャートである。なお、図10には図6に示した画面に対応する処理手順を示しており、図11には図7に示した画面に対応する処理手順を示している。
【0094】
図10に示すように、入力部12経由で退院支援評価シートの入力(初回)が画面メニューから選択されると(ステップS101)、退院確率算出処理部14cは、回答受付処理部14bから受け取った回答結果および評価項目情報15aに含まれる重み付け値に基づいて退院確率(初回)を算出する(ステップS102)。そして、蓄積処理部14dは、算出された退院確率(初回)および回答結果を実績情報15bへ蓄積し(ステップS103)、処理を終了する。
【0095】
また、図11に示すように、画面メニューから目標入力が選択されたならば、回答受付処理部14bは、患者識別子等をキーとして該当する実績情報15bの読み出しを行う(ステップS201)。つづいて、初回欄(図7における「入院時」欄参照)に評価項目情報を表示するとともに(ステップS202)、目標欄(図7における「目標」欄参照)へ、初回欄の情報をコピーして表示する(ステップS203)。
【0096】
つづいて、はい/いいえが変更されたか否かを判定し(ステップS204)、変更された場合には(ステップS204,Yes)、退院確率(目標)を算出して表示する(ステップS205)。なお、当該項目を解決するための支援概要を選択肢から選択したり(ステップS206)、具体的介入策を選択肢から選択したり(ステップS207)、といった入力も随時受け付ける。なお、ステップS204の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS204,No)、ステップS204の処理を繰り返す。
【0097】
そして、すべての評価項目について変更が完了したか否かを判定し(ステップS208)、変更が未完了である場合には(ステップS208,No)、ステップS204以降の処理を繰り返す。
【0098】
一方、変更が完了した場合には(ステップS208)、退院支援計画書を印刷モード(印刷イメージで表示する形態)で表示し(ステップS209)、各欄における選択または入力を受け付ける(ステップS210)。そして、印字開始の指示を受け付けた場合には(ステップS211,Yes)、退院支援計画書を印刷し(ステップS212)、処理を終了する。なお、ステップS211の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS211,No)、ステップS211の処理を繰り返す。
【0099】
ところで、これまでは、あらかじめ用意された静的な評価項目情報15aを用いて退院確率を算出する場合について説明してきたが、実績情報15bに基づいて評価項目情報15aを更新したり、他の退院支援計画書生成装置10や所定のサーバ装置と実績情報15bを交換したりすることとしてもよい。そこで、以下では、評価項目情報15aを動的に変更する場合について説明する。
【0100】
図12は、変形例に係る退院支援計画書生成装置10aの構成を示すブロック図である。なお、同図においては、図2に示した退院支援計画書生成装置10aの各構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するか、簡単な説明にとどめることとする。
【0101】
同図に示すように、退院支援計画書生成装置10aは、制御部14に交換処理部14fおよび更新処理部14gをさらに備え、通信部16をさらに備える点で、図2に示した退院支援計画書生成装置10とは異なる。なお、更新処理部14gのみを設け、通信部16および交換処理部14fを省略することとしてもよい。
【0102】
通信部16は、LAN(Local Area Network)カードなどの通信デバイスであり、インターネットなどのネットワーク経由で、外部装置とデータの送受信を行うために用いられる。
【0103】
交換処理部14fは、記憶部15に記憶された実績情報15bを通信部16経由で、他の退院支援計画書生成装置10aや所定のサーバ装置へ送信するとともに、他の退院支援計画書生成装置10aや所定のサーバ装置から受け取った実績情報15bを記憶部15の実績情報15bと置き換えたり、記憶部15の実績情報15bに追加したりする処理を行う処理部である。このように、他装置と実績情報15bを交換することで、実績情報15bの母数を増やしたり、実績情報15bの信頼度を高めたりすることができる。
【0104】
更新処理部14gは、実績情報15bの内容に基づいて評価項目情報15aを動的に更新する処理を行う処理部である。具体的には、この更新処理部14gは、評価項目情報15aに含まれる評価項目の更新、追加、削除、各評価項目に対応する重み付け値の更新を行う。たとえば、この更新処理部14gは、交換処理部14fや蓄積処理部14dによって実績情報15bの内容が更新された場合や、所定の期間ごとに評価項目情報15aを更新する。
【0105】
上述してきたように、本実施例では、読出処理部が、入院患者自身の属性について二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる第1の評価項目群および入院患者以外の属性について評価項目からなる第2の評価項目群を含んだ評価リストと、この評価リストに含まれる評価項目にそれぞれ対応付けられた所定の重み付け値とを含んだ評価項目情報を記憶部から読み出し、回答受付処理部が、読み出された評価項目情報の評価リストを表示部に表示させたうえで、この評価リストに対する回答を2値変数として評価項目ごとに受け付け、退院確率算出処理部が、受け付けた2値変数および読み出された評価項目情報の重み付け値に基づいて入院患者が退院することができる確率を示す退院確率を算出するように退院評価プログラムを構成し、この退院評価プログラムをインストールした退院支援計画書生成装置を構成した。
【0106】
したがって、退院の可能性を定量的にあらわす退院確率という概念を導入したうえで、入院患者自身の属性のみならず、入院患者以外の属性(たとえば、家族や経済状態など)を含んだ評価リストを用いて退院確率を算出することで、適正な退院評価を行うことができる。また、二者択一の回答によって簡便に退院確率を算出するようにしたので、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明に係る退院評価プログラムは、専門的な技能を要することなく適正な退院評価を行いたい場合に有用であり、退院評価の結果を含んだ退院支援計画書の自動生成に適している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る退院評価手法の概要を示す図である。
【図2】退院支援計画書生成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】退院支援評価シートの一例を示す図である。
【図4】退院支援評価シートにおける各項目についての分析結果を示す図である。
【図5】退院群および非退院群における退院確率の分布を示す図である。
【図6】入院時の回答受付に用いる画面例を示す図である。
【図7】目標設定時の回答受付に用いる画面例を示す図である。
【図8】退院支援計画書のフォーマット例(1/2)を示す図である。
【図9】退院支援計画書のフォーマット例(2/2)を示す図である。
【図10】入院時の回答受付における処理手順を示すフローチャートである。
【図11】目標設定時の回答受付における処理手順を示すフローチャートである。
【図12】変形例に係る退院支援計画書生成装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0109】
10,10a 退院支援計画書生成装置
11 表示部
12 入力部
13 印字部
14 制御部
14a 読出処理部
14b 回答受付処理部
14c 退院確率算出処理部
14d 蓄積処理部
14e 印字処理部
14f 交換処理部
14g 更新処理部
15 記憶部
15a 評価項目情報
15b 実績情報
15c 計画書フォーマット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入院患者の退院可否について多重ロジスティック回帰解析を用いて評価する退院評価プログラムであって、
前記入院患者自身の属性について二者択一の回答を求める質問形式の評価項目からなる第1の評価項目群および前記入院患者以外の属性について前記評価項目からなる第2の評価項目群を含んだ評価リストと、該評価リストに含まれる前記評価項目にそれぞれ対応付けられた所定の重み付け値とを含んだ評価項目情報を記憶部から読み出す読出手順と、
前記読出手順によって読み出された前記評価項目情報の前記評価リストを表示部に表示させたうえで、当該評価リストに対する前記回答を2値変数として前記評価項目ごとに受け付ける回答受付手順と、
前記回答受付手順が受け付けた前記2値変数および前記読出手順によって読み出された前記評価項目情報の前記重み付け値に基づいて前記入院患者が退院することができる確率を示す退院確率を算出する退院確率算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする退院評価プログラム。
【請求項2】
前記読出手順は、
すべての前記評価項目情報の中から前記重み付け値に基づいて所定数の前記評価項目情報を抽出したうえで前記記憶部から読み出すことを特徴とする請求項1に記載の退院評価プログラム。
【請求項3】
前記回答受付手順は、
現状の前記退院確率を示す現状退院確率を算出するために用いられる現状評価リストと、目標とする前記退院確率を示す目標退院確率を算出するために用いられる目標評価リストとを前記評価リストとして前記表示部に表示させ、
前記退院確率算出手順は、
前記現状評価リストに対する前記回答に基づいて前記現状退院確率を算出するとともに、前記目標評価リストに対する前記回答に基づいて前記目標退院確率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の退院評価プログラム。
【請求項4】
前記回答受付手順は、
前記現状評価リストおよび前記目標評価リストにおける同一の前記評価項目について、前記目標評価リストにおいて前記現状評価リストとは異なる前記回答を受け付けるたびに、あらたな前記目標退院確率を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3に記載の退院評価プログラム。
【請求項5】
前記回答受付手順は、
前記現状評価リストおよび前記目標評価リストにおける同一の前記評価項目について、前記現状評価リストにおいて前記現状評価リストとは異なる前記回答を受け付けたと仮定した場合における前記目標退院確率を、前記目標評価リストにおける前記評価項目とともに前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3に記載の退院評価プログラム。
【請求項6】
前記退院確率を含んだ退院支援計画書を前記入院患者ごとに印字部に印字させる印字手順
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の退院評価プログラム。
【請求項7】
前記入院患者ごとの前記退院確率を当該入院患者が実際に退院したか否かの退院実績に対応付けて実績情報として記憶部へ蓄積する蓄積手順と、
他の前記退院評価プログラムと前記実績情報を交換する実績情報交換手順と
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の退院評価プログラム。
【請求項8】
前記蓄積手順は、
前記入院患者が入院する施設を識別する施設識別子および/または前記施設が所在する地域名を識別する地域識別子を前記実績情報に含めて記憶部へ蓄積することを特徴とする請求項7に記載の退院評価プログラム。
【請求項9】
前記実績情報に基づいて前記評価項目情報における前記評価項目および/または前記重み付け値を更新する更新手順
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項7または8に記載の退院評価プログラム。
【請求項10】
前記回答受付手順は、
前記評価項目について前記回答を行う利用者を所定の権限が付与された利用者に限定することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の退院評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−2992(P2010−2992A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159374(P2008−159374)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(508183416)医療法人 慈恵会 (1)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)