説明

送信回路およびトルク測定器

【課題】
本発明は、信号を無線で送信する送信回路、および、送信回路と受信回路を含み回転軸のトルクを測定するトルク測定器に関し、異なる動作速度をもつ信号伝送系や信号受信系であっても共通化可能な、送信回路とする。
【解決手段】
センサによりピックアップされた信号を、2値信号であって所定の繰返し周期一周期内の信号によって1ビット分の論理値を表すデジタル信号に変換する信号変換部と、信号変換部によって生成されたデジタル信号を送信する信号送信部と、上記の繰り返し周期を設定する周期設定部とを有し、信号変換部が、センサによりピックアップされた信号を、周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を無線で送信する送信回路、および、送信回路と受信回路を含み回転軸のトルクを測定するトルク測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より回転軸のトルクを測定するトルク測定器が知られている。このトルク測定器は、同芯に回転する2本の回転軸に挟まれた位置に連結されて、それらの回転軸が回転しているときのそれらの回転軸間のねじれにより生じる歪みを検出することにより、それらの回転軸のトルクを測定するものである。このトルク測定器は、2つの回転軸に連結されてそれらの回転軸とともに回転する回転子と、その回転子を回転方向に取り巻く固定子とを有し、回転子で検出された信号をロータリトランスを介して固定子に伝達し、その固定子に伝達された信号からトルクの測定値を得る構造を有している。特許文献1には回転子から固定子にロータリトランスを介して信号を伝達する信号伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−162383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで近年では、上記のようなトルク検出器において、トルク検出器に従来より備えられているロータリトランスを介して、符号化されたデジタル信号を送信することが考えられている。トルクの測定値を表わすデジタル信号を送信するにあたっては、できるだけ短い時間で繰り返し送信した方がトルクの変化を受信回路側で速やかに高精度に認識することができて好ましい。ただし一方では、ロータリトランスなどの信号伝送系や受信回路などの信号受信系の動作速度の問題があり、その動作速度を越える高速信号を送信しても正確に伝送あるいは受信されないおそれがある。送信回路によるデジタル信号の送信速度を信号伝送系や信号受信系の動作速度に合わせて個々に設計することも考えられるが、その場合、例えばトルク測定器の機種によって別々の設計が必要となり、また、送信回路の互換性もなくなるため、複数種類の送信回路を管理する必要があるなど、問題が多い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、異なる動作速度をもつ信号伝送系や信号受信系であっても共通化可能な送信回路、および、その送信回路が搭載されたトルク測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の送信回路は、
センサによりピックアップされた信号を、2値信号であって所定の繰返し周期一周期内の信号によって1ビット分の論理値を表すデジタル信号に変換する信号変換部と、
信号変換部によって生成されたデジタル信号を送信する信号送信部と、
上記の繰り返し周期を設定する周期設定部とを有し、
信号変換部が、センサによりピックアップされた信号を、周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の信号変換部は、上記の周期設定部を有し、信号変換部が、センサによりピックアップされた信号を、周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換するものであるため、信号伝送系や信号受信系の動作速度と合わせた繰り返し周期を設定することにより、異なる動作速度をもつ信号伝送系や信号受信系に適合させることができ、送信回路の共通化が図られる。
【0008】
ここで、上記の本発明の送信回路において、信号変換部は、センサによりピックアップされた信号を、マンチェスタ符号化方式により符号化されたデジタル信号に変換するものであることが好ましい。
【0009】
マンチェスタ符号化方式を採用すると、受信側で、送信回路の停止状態と送信回路の動作状態とを識別することができ、誤受信を低減することができる。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明のトルク測定器は、
同軸の2つの回転軸の中間に配置され該2つの回転軸双方の互いに対向した各一端が固定されてそれら2つの回転軸の回転に伴って回転する回転子と、
回転子を回転方向に取り巻く固定子と、
回転子に取り付けられて上記2つの回転軸を伝達するトルクを計測するトルクセンサと、
固定子に取り付けられたステータと回転子に取り付けられたロータとを有し、固定子側から回転子側への電力の供給と回転子側から固定子側への信号の伝達とを担うロータリトランスと、
トルクセンサでピックアップされたトルク信号をロータリトランスを介在させて固定子側に送信する、回転子に取り付けられた送信回路と、
固定子側に配置されロータリトランスを介在させて送信されてきた信号を受信する受信回路とを備え、
上記送信回路が、
トルクセンサによりピックアップされたトルク信号を、2値信号であって所定の繰返し周期一周期内の信号によって1ビット分の論理値を表すデジタル信号に変換する信号変換部と、
信号変換部によって生成されたデジタル信号を送信する信号送信部と、
上記の繰り返し周期を設定する周期設定部とを有し、
信号変換部が、トルクセンサによりピックアップされた信号を、周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明のトルク測定器によれば、上記構成の送信回路を備えているため、ロータリトランスや受信回路の動作速度の異なる複数種類のトルク測定器において送信回路を共通化することができ、かつ、トルク信号を、その種類のトルク測定器に応じてできる限り高速に送信することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、異なる動作速度をもつ信号伝送系や信号受信系であっても送信回路を共通化でき、その系に応じて最大限高速なデジタル信号を送信することができる。また本発明によれば、複数種類の物理量データの送信も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態としてのトルク測定器のハードウェア構成図である。
【図2】図1に示す構造のトルク測定器の使用例を示す図である。
【図3】マンチェスタ符号の説明図である。
【図4】図1に示す回転子に備えられた回転基板上の送信回路の概要を示すブロック図である。
【図5】図4に示す送信回路で行われる信号処理を示したフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるデータ更新周期を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態としてのトルク測定器のハードウェア構成図である。
【0016】
このトルク測定器1は回転子10と固定子20とを有する。
【0017】
回転子10は円盤形状を有し、回転中心軸Оを取り巻く複数の第1の取付穴11と、その第1の取付穴11よりも内側においてやはり回転中心軸Оを取り巻く複数の第2の取付穴12とが形成されている。
【0018】
この回転子10は、2本の同芯の回転軸2a,3a(図2参照)の間に挟まるようにそれら2本の回転軸に連結される。それら2本の回転軸のうちの1本の回転軸は、回転子10の表面側から第1の取付穴11を使って回転子10に連結され、もう1本の回転軸は、この回転子10の裏面側から第2の取付穴12を使って回転子10に連結される。この回転子10は2本の回転軸間を伝達するトルクに応じて、第1の取付穴11が形成されている、回転中心軸Оから離れた側と、第2の取付穴12が形成されている、回転中心軸Оに近い側との間でねじれを生じる構造となっており、そのねじれがトルクセンサ13で検出される。このトルクセンサ13でピックアップされた信号は回路基板15に伝えられ、この回路基板15上の電子回路で処理される。またこの回路基板15には複数のセンサ配置部18が設けられており、そこには温度センサ14が配置されている。この温度センサ14からの温度信号も回路基板15上の電子回路で処理される。また、センサ配置部18のうちの温度センサ14に隣接した位置にあるセンサ配置部18には、例えば気圧センサや湿度センサなど、その他の物理量計測用のセンサを配置することができる。ただし、ここでは、センサ配置部18には温度センサ14のみ配置されているものとして説明を続ける。
【0019】
この回路基板15上の電子回路での処理内容については後述する。
【0020】
固定子20は、回転子10との間に僅かなすき間dを隔てて回転子10を取り巻いている。回転子10と固定子20には、そのすき間dを隔てて、ロータリトランス30(図1には不図示、図4,図5参照)を構成する、それぞれロータ19とステータ29が配置されている。このロータリトランス30は、固定子20側から回転子10側への電力の供給と、回転子10側から固定子20側への信号の伝達を担っている。すなわち、回転子10に備えられている回路基板15上の電子回路は、固定子20側からロータリトランス30を介して供給されてきた電力で動作し、トルクセンサ13や温度センサ14でピックアップされたトルク信号および温度信号をロータリトランス30を介在させて固定子20側に送信する送信回路である。
【0021】
また、固定子20側にも回路基板21が備えられている。この回路基板21には、図示しない電源から供給されてきた電力を自分自身で受け取るとともにロータリトランス30を介して回転子10側に供給する電源回路と、回転子10側からロータリトランス30を介して送信されてきた信号を受信する受信回路とが搭載されている。
【0022】
ここで、回転子10に備えられている回路基板15上の送信回路は、固定子20側から電力の供給を受けた後、トルクセンサ13や温度センサ14で得られた信号の初回の送信に先立って、固定子20側の回路基板21に搭載されている受信回路との間でハンドシェーキングを行なうことなく単方向通信により、タイミング調整用の擬似信号を送信する。ここでは擬似信号として、トルクセンサ13や温度センサ14でピックアップされた信号としては有り得ない数値(本実施形態では‘FFFF’)を表す信号が使われている。この擬似信号は、受信回路側で受信ミスが発生する可能性を考慮し、複数回(本実施形態では3回)送信する。そして、この送信回路は、その擬似信号の送信が終わった後、トルクセンサ13と温度センサ14でそれぞれピックアップされたトルク信号および温度信号を時系列に繰り返し送信する。
【0023】
さらに本実施形態では、後述するマンチェスタ符号化方式が採用されており、回転子10側の送信回路および固定子20側の受信回路は、マンチェスタ符号化方式により符号化された信号を、それぞれ送信および受信する。
【0024】
図2は、図1に示す構造のトルク測定器の使用例を示す図である。
【0025】
ここには、エンジン試験装置が示されており、エンジン2の回転軸2aとダイナモ3に連結された回転軸3aとの間にトルク測定器1が配置されている。
【0026】
このエンジン試験装置では、エンジン2の負荷としてダイナモ3を用い、ダイナモ3で様々な負荷条件を再現してその負荷条件下での回転軸2a,3aを伝達するトルクの変化が測定される。
【0027】
図3はマンチェスタ符号の説明図である。
【0028】
図3(A)はバイナリ符号、図3(B)はマンチェスタ符号を示している。バイナリ符号における論理‘1’,論理‘0’は、互いに異なる2つの物理量、例えば図3(A)に示すように電圧値の高い‘H’レベルと電圧値の低い‘L’レベルとで表わされる。これに対し、マンチェスタ符号では、論理‘1’,論理‘0’は、互いに異なる2つの物理量間での、互いに逆方向への遷移で表される。例えば、図3(B)に示すように、‘H’レベルから‘L’レベルへの遷移をもって論理‘1’、‘L’レベルから‘H’レベルへの遷移をもって論理‘0’と定義される。あるいはこれとは逆に、‘L’レベルから‘H’レベルへの遷移をもって論理‘1’、‘H’レベルから‘L’レベルへの遷移をもって論理‘0’と定義してもよい。
【0029】
このマンチェスタ符号を採用すると、有効な信号が伝送されている限り、‘H’レベルと‘L’レベルとの間で常に遷移が発生しているので、送信側が停止している状態と信号を送信している状態とを識別することができる。
【0030】
マンチェスタ符号自体については従来から知られているため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0031】
図4は、図1に示す回転子に備えられた回転基板上の送信回路の概要を示すブロック図である。
【0032】
図1に示すトルクセンサ13および温度センサ14でピックアップされたトルク信号および温度信号は、それぞれプリアンプ41a,41bによりAD変換に適したレベルの信号にまで増幅されて、AD変換器42により交互にデジタル信号に変換される。このデジタル信号に変換されたトルク信号および温度信号は符号器43によりマンチェスタ符号化され、さらに送信器44により、ロータリトランス30を介しての送信に適した信号に変換されて、そのロータリトランス30を構成するロータ19に送られる。ロータ19に送られた信号はステータ29に伝達される。
【0033】
また、この送信回路40は、メモリを内蔵したCPU45を備えている。このCPU45は、プログラムの実行によりこの送信回路40の全体を制御する。
【0034】
さらに、この図4には、発振器46が明示的に示されている。この発振器46は、CPU45により調整された発振周波数のクロック信号を生成する。ここで、CPU45に内蔵されたメモリには、発振周波数の設定値が記憶されている。CPU45はそのメモリを参照して、そこに記憶されている発振周波数のクロック信号を生成するように発振器46の発振周波数を調整する。
【0035】
AD変換器42、符号器43、および送信器44は、その発振器46から供給されたクロック信号に基づいて動作する。すなわち、符号器43も、CPU45から発振器46に設定された発振周波数のクロック信号に基づいて動作する。したがってこの符号器43では、トルクセンサ13や温度センサ14でピックアップされたトルク信号および温度信号が、発振器46で生成されたクロック信号の発振周波数に対応した繰り返し周期一周期ごとに1ビットの論理値を表わす、マンチェスタ符号化されたデジタル信号に変換される。すなわち、このCPU45における、発振器46の発振周波数を設定する機能、および発振器46が、データ送信の繰り返し周期を決定する周期決定部47としての役割りを担っている。
【0036】
尚、本願実施形態では、CPU45に内蔵されたメモリに記憶されている発振周波数の設定値をCPU45が読み出して発振器46の発振周波数をその設定値に応じた発振周波数に調整することで周期設定部47を構成しているが、周期設定部は、このような構成に限定されるものではない。例えば、この周期設定部は、発振周波数の設定値をメモリに記憶しておくことに代えて、例えばディップスイッチのオン/オフのパターンで設定値を表わし、そのディップスイッチのオン/オフのパターンをCPU45が読み取って発振器46の発振周波数をそのオン/オフパターンに応じた発振周波数に調整するものであってもよい。あるいは、この周期設定部は、CPU45とは無関係に発振器46に直接にディップスイッチを接続し、この送信回路40に電源が投入されるとその発振器46が、CPU45からの指示を待つことなく、そのディップスイッチのオン/オフパターンに応じた発振周波数で発振するものであってもよい。
【0037】
本実施形態では、図4に示す送信回路40を構成するAD変換器42と符号器43が本発明における信号変換部の一例に相当し、送信器44が本発明にいう信号送信部の一例に相当し、上述した周期設定部47が、本発明にいう周期設定部の一例に相当する。
【0038】
尚、ここでは、トルクセンサ13および温度センサ14でピックアップされた信号の送信について説明したが、この送信回路40への電源投入時には、トルクセンサ13および温度センサ14からの信号のピックアップに先立って、CPU45の制御下で符号器43により‘FFFF’の値を表す擬似信号が生成され、送信器44およびロータリトランス30を介して固定子20(図1参照)側に伝達される。
【0039】
ロータリトランスを介して固定子20側に伝達されてきた信号は、固定子20の備えられた回路基板上の受信回路により、図4に示す送信器44で行なわれた送信のための変調が復調されてマンチェスタ符号により表わされた信号が取り出され、さらにその信号が、マンチェスタ符号化は逆の演算により復号化されて、トルクや温度を表わす信号が取り出される。
【0040】
図5は、図4に示す送信回路で行われる信号処理を示したフローチャートである。
【0041】
送信回路40では、先ずCPU45が初期化され(ステップS11)、メモリに記憶されている発振周波数の設定値が参照され(ステップS12)、発振器46(図4参照)の発振周波数の調整が行なわれ(ステップS13)、固定子20の側の受信回路を含む全体が立ち上がるのに十分な時間待機する(ステップ14)。次にカウンタiが初期化(i=0)され(ステップS15)、そのカウンタiがi=3に達するまで(ステップS16)、起動用の擬似信号‘FFFF’を送信し(ステップS17)、カウンタiをカウントアップする(ステップS18)。すなわち、ここでは、起動用の擬似信号が3回送信される。ステップS16においてiが3以上であると判定されると、その後は、ステップS19とステップS25との間が繰り返し実行される。すなわちここでは、今回読み込んだ信号がトルクと温度のいずれの信号であるか判定され(ステップS20)、トルク信号のときはそのトルク信号に、トルクの信号であることを表すヘッダとチェックサムを付けて送信し(ステップS21)、次に読み込むべき信号を温度に設定する(ステップS22)。また、ステップS20において今回読み込んだ信号が温度の信号であると判定されると、その温度信号に、温度の信号であることを表すヘッダとチェックサムを付けて送信し(ステップS23)、次に読み込むべき信号がトルクに設定される(ステップS24)。
【0042】
一方、固定子20側に備えられた受信回路にもCPUが備えられていて、送信回路40から受け取った信号の復調や復号化が行なわれ、トルクや温度の信号が取り出される。
【0043】
本実施形態では、以上のようにして、立ち上げの初期段階において送信回路40の発振器46の発振周波数が調整される。この発振周波数の調整により、トルクセンサ13や温度センサ14で測定されたトルク測定値や温度測定値の送信の繰り返し周期が調整される。本実施形態では、このように、発振器46の発振周波数を調整することによりトルク測定値や温度測定値の繰り返し周期を調整するようにしたため、トルク測定値や温度測定値を、このトルク測定器のロータリトランス30や固定子20側の受信回路の動作可能速度に応じた、できる限り高速な繰り返し周期で送信を繰り返すことができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、発振周波数の調整の後、送信回路40から受信回路に向けてタイミング調整用の擬似信号を送信することにより送受信の同期をとっており、簡易な方法により正確な情報伝達を可能としている。
【0045】
図6は、本実施形態におけるデータ更新周期を例示した図である。図6(A)はデータ更新周期T=420μsのとき、図6(B)はデータ更新周期T=210μsのときの図である。
【0046】
ここでは、送信すべきデータ(本実施形態ではトルク信号と温度信号)を1回ず送信するのに要する周期を、データ更新周期Tと称している。このデータ更新周期Tは、送信すべき信号の種類の数(本実施形態ではトルク信号と温度信号との2種類)が決まれば、あとは、図4に示す発振器46の発振周波数で決定される、デジタル信号1ビット分の送信周期である繰り返し周期と一対一に対応している。
【0047】
ロータリトランスや受信回路の動作速度が許せば、データ更新周期Tを図6(A)のようにT=420μsとするのではなく、図6(B)のようにT=210μsとすると、受信側でデータ更新が速やかに行なわれ、例えば時間変化をグラフで表示したときに一層滑らかな曲線で表現することができる。
【0048】
あるいは、ロータリトランスや受信回路が図6(B)のデータ更新周期T=210μsに応じた動作速度を有するときは、データ更新周期Tを420μsから210μsに短縮するのではなく、データ更新周期TをT=40μsのままとし、図1に示すセンサ配置部18に他の2種類のセンサを配置して、4種類の信号(例えばトルク信号と温度信号と気圧の信号と湿度の信号)を繰り返し送信することも可能である。
【0049】
本実施形態では、トルク信号のほか温度信号を送信するとして説明したが、本発明のトルク測定器は、トルク信号のみを送信するものであってもよい。あるいは複数種類の信号を送信する構成であっても、トルク信号とともに送る信号は温度の信号である必要はなく、図6(B)を参照して説明した通り、例えば気圧や湿度など、様々な物理量を表す信号を送信してもよい。
【0050】
さらには、本発明はトルク測定器のみでなく、例えば何らかの物理量の測定値を送信する一般の送信回路に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 トルク測定器
2 エンジン
2a,3a 回転軸
3 ダイナモ
10 回転子
13 トルクセンサ
14 温度センサ
15 回路基板
18 センサ配置部
19 ロータ
20 固定子
21 回路基板
29 ステータ
30 ロータリトランス
40 送信回路
41a,41b プリアンプ
42 AD変換器
43 符号器
44 送信器
45 CPU
46 発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサによりピックアップされた信号を、2値信号であって所定の繰返し周期一周期内の信号によって1ビット分の論理値を表すデジタル信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部によって生成されたデジタル信号を送信する信号送信部と、
前記繰り返し周期を設定する周期設定部とを有し、
前記信号変換部が、前記センサによりピックアップされた信号を、前記周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換するものであることを特徴とする送信回路。
【請求項2】
前記信号変換部は、前記センサによりピックアップされた信号を、マンチェスタ符号化方式により符号化されたデジタル信号に変換するものであることを特徴とする請求項1記載の送信回路。
【請求項3】
同軸の2つの回転軸の中間に配置され該2つの回転軸双方の互いに対向した各一端が固定されて該2つの回転軸の回転に伴って回転する回転子と、
前記回転子を回転方向に取り巻く固定子と、
前記回転子に取り付けられて前記2つの回転軸を伝達するトルクを計測するトルクセンサと、
前記固定子に取り付けられたステータと前記回転子に取り付けられたロータとを有し、前記固定子側から前記回転子側への電力の供給と前記回転子側から前記固定子側への信号の伝達とを担うロータリトランスと、
前記トルクセンサでピックアップされたトルク信号を前記ロータリトランスを介在させて前記固定子側に送信する、前記回転子に取り付けられた送信回路と、
前記固定子側に配置され前記ロータリトランスを介在させて送信されてきた信号を受信する受信回路とを備え、
前記送信回路が、
前記トルクセンサによりピックアップされたトルク信号を、2値信号であって所定の繰返し周期一周期内の信号によって1ビット分の論理値を表すデジタル信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部によって生成されたデジタル信号を送信する信号送信部と、
前記繰り返し周期を設定する周期設定部とを有し、
前記信号変換部が、前記トルクセンサによりピックアップされた信号を、前記周期設定部で設定された繰り返し周期一周期ごとに1ビット分の論理値を表わすデジタル信号に変換するものであることを特徴とするトルク測定器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−50867(P2013−50867A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188824(P2011−188824)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】