説明

送信回路

【課題】方向性結合器を必要とすることなくアンテナからの反射信号をアイソレータによって検出でき、好ましい送信状態に自動的に調整できる送信回路を得る。
【解決手段】終端抵抗Rを有するアイソレータ20と、終端抵抗Rに電気的に接続されたRF信号検波手段(検波用ダイオードD)と、アンテナ特性を切り替える調整手段(スイッチング素子Sw)と、検波用ダイオードDによる検波信号の大きさに応じた制御信号を出力することによってスイッチング素子Swを変化させる制御手段30と、を備えた送信回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路、特に、携帯無線通信端末に組み込まれる送信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯無線通信端末の送信回路にはパワーアンプからの送信信号をアイソレータを介してアンテナへ出力している。アイソレータは、予め定められた特定方向にのみ信号を伝送し、逆方向には伝送しない特性(非可逆性)を有している。
【0003】
ところで、携帯無線通信端末は、使用環境の変化(例えば、端末に金属材が近接するなど)によって、アンテナの入力インピーダンスが変化する場合がある。この場合、インピーダンスの不整合が生じて送信信号がアンテナから反射されるので、アンテナからの放射出力が低下する不具合を有している。送信信号の低下を補正するため、送信信号の一部を検出してパワーアンプにフィードバックし、送信出力を高める方式が存在する。しかし、アンテナで反射された送信信号はアイソレータで消費され、送信信号に変化はないので、この方式では、アンテナからの放射出力が低下したことを検出できない。
【0004】
アンテナで反射した送信信号を検出するために、特許文献1,2には、アンテナとアイソレータとの間に方向性結合器を追加する回路構成が記載されている。しかし、これでは、順方向と逆方向を区別するためには高い方向性を持つ高価な方向性結合器が必要であり、コスト的に現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−57511号公報
【特許文献2】特開2000−341143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、高価な方向性結合器を必要とすることなくアンテナからの反射信号をアイソレータによって検出でき、好ましい送信状態に自動的に調整できる送信回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である送信回路は、
終端抵抗を有するアイソレータと、
前記終端抵抗に電気的に接続されたRF信号検波手段と、
アンテナ特性を切り替える調整手段と、
前記RF信号検波手段による検波信号の大きさに応じた制御信号を出力することによって前記調整手段を変化させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記送信回路に設けたアイソレータは、送信信号をアンテナに順方向に出力し、逆方向の信号は終端抵抗で熱として消費されるので伝送されない。そして、アンテナからの反射信号はRF信号検波手段によって検出され、検波信号の大きさが大きくなると、制御手段は調整手段を変化させてアンテナ特性を切り替える。例えば、メインアンテナとサブアンテナが設置されている場合は、メインアンテナからサブアンテナにあるいはその逆に切り替える。また、一つのアンテナのインピーダンスを変更して特性を切り替える。これにて、高価な方向性結合器を用いることなく、アンテナからの放射出力を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高価な方向性結合器を必要とすることなくアンテナからの反射信号をアイソレータによって検出でき、好ましい送信状態に自動的に調整できる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例である送信回路を示す等価回路図である。
【図2】第2実施例である送信回路を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る送信回路の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1参照)
第1実施例である送信回路は、図1に示すように、メインアンテナAm又はサブアンテナAsのいずれかに送信信号を伝送するもので、パワーアンプPAとインピーダンスマッチング回路10と、アイソレータ20と、デュプレクサDupと調整手段(スイッチング素子Sw)とを備え、さらに、アイソレータ20に組み込まれたRF信号検波手段(検波用ダイオードD)と制御回路30とを備えている。
【0013】
パワーアンプPAはベースバンドICの送信信号を増幅するものである。インピーダンスマッチング回路10は、インピーダンスを50Ωに変換するものであり、インダクタL11とコンデンサC11からなる共振回路として形成されている。インダクタL11はパワーアンプPAの出力端子41とアイソレータ20の入力端子25との間に直列に接続されている。コンデンサC11は一端がインダクタL11の一端とアイソレータ20の入力端子25との間に接続され、他端がグランドに落とされている。
【0014】
デュプレクサDupは送信信号をアンテナAm,Asに伝送するとともに受信信号を図示しない受信回路に伝送する。スイッチング素子Swは、デュプレクサDupの入出力端子45に接続されており、送信用又は受信用としてメインアンテナAmとサブアンテナAsとを切り替える。
【0015】
アイソレータ20は、集中定数型の2ポートタイプであり、図示しない永久磁石により直流磁界が印加されるフェライト21と、該フェライト21に互いに絶縁状態で交差して配置された第1中心電極22(L1)及び第2中心電極23(L2)とを備えている。第1中心電極22は、一端が入力ポートP1に接続され、他端が出力ポートP2に接続されている。第2中心電極23は、一端が出力ポートP2に接続され、他端がグランドポートP3に接続されている。入力ポートP1と出力ポートP2との間に終端抵抗Rが第1中心電極22と並列に接続され、入力ポートP1と出力ポートP2との間に、第1整合用コンデンサC1が接続され、出力ポートP2とグランドポートP3との間に第2整合用コンデンサC2が接続されている。第1ポートP1は入力端子25に接続され、第2ポートP2は出力端子26に接続されている。
【0016】
検波用ダイオードDは入力ポートP1と出力ポートP2との間に終端抵抗Rと並列に接続されている。制御回路30は検波用ダイオードDの検波信号を検出し、スイッチング素子Swを駆動してアンテナAm,Asを切り替える。
【0017】
このアイソレータ20においては、高周波信号(送信信号)が入力端子25から出力端子26へ流れる順方向動作時には、第2中心電極23に大きな高周波電流が流れ、終端抵抗RやコンデンサC1にはほとんど高周波電流が流れないため(検波用ダイオードDにも電流が流れない)、小さな挿入損失で送信信号が伝送される。一方、出力端子26から高周波電流が入力されると、第1中心電極22とコンデンサC1とで形成される並列共振回路によって減衰されるとともに、終端抵抗Rによって熱として消費される、即ち、アイソレーションされる。減衰量は終端抵抗Rのインピーダンスによって調整可能である
【0018】
この送信回路は携帯無線通信端末に組み込まれて使用される。使用時に端末に金属材が近接したりして、アンテナAm,Asのインピーダンスが変化すると送信信号がアンテナAm,Asから反射され、放射出力が低下する。アンテナAm,Asからの反射信号が増大すると、その反射信号は検波用ダイオードDの出力値(直流電圧)として制御回路30によって検出される。従って、現在使用しているアンテナ(例えば、メインアンテナAm)からの反射信号が一定量増大すると、制御回路30はスイッチング素子Swを動作させて使用アンテナをメインアンテナAmからサブアンテナAsに切り替える。これにて、好ましい通信状態に調整されることになる。
【0019】
(第2実施例、図2参照)
第2実施例である送信回路は、図2に示すように、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、異なるのは、一つのアンテナAを使用しており、アンテナ特性を切り替える調整手段として前記スイッチング素子Swに代えて容量可変デバイス35を用いた点にある。容量可変デバイス35は、インダクタL21と容量可変コンデンサC21からなる共振回路として形成されている。インダクタL21はデュプレクサDupの入出力端子45とアンテナAとの間に直列に接続されている。容量可変コンデンサC21は一端がインダクタL21の一端とアンテナAとの間に接続され、他端がグランドに落とされている。
【0020】
アイソレータ20の作用は前記第1実施例で説明したとおりであり、金属材の近接でアンテナAの入力インピーダンスが変化した場合、アンテナAからの反射信号の増大が検波用ダイオードDの出力値として制御回路30によって検出され、容量可変コンデンサC21の容量を変化させる。これにて、アンテナAの入力インピーダンスが変更され、インピーダンスの不整合による損失を低減できる。
【0021】
なお、容量可変コンデンサC21は、容量値が段階的に変更可能、あるいは、容量値が無段階に変更可能のいずれであってもよい。
【0022】
(他の実施例)
なお、本発明に係る送信回路は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0023】
例えば、RF信号検波手段は、検波用ダイオードD以外の種々の検波回路を用いることができる。調整手段にあってもスイッチング素子Swや容量可変コンデンサC21以外の素子や回路を用いることができる。また、アイソレータ20自体も終端抵抗Rを備えたものであれば、種々の構成のものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明は、携帯無線通信端末などに組み込まれる送信回路に有用であり、特に、アンテナからの反射信号をアイソレータによって検出でき、好ましい送信状態に自動的に調整できる点で優れている。
【符号の説明】
【0025】
20…アイソレータ
21…フェライト
22…第1中心電極
23…第2中心電極
30…制御回路
35…容量可変デバイス
P1…入力ポート
P2…出力ポート
P3…グランドポート
C1,C2…整合用コンデンサ
R…終端抵抗
D…検波用ダイオード
PA…パワーアンプ
Sw…スイッチング素子
A,Am,As…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端抵抗を有するアイソレータと、
前記終端抵抗に電気的に接続されたRF信号検波手段と、
アンテナ特性を切り替える調整手段と、
前記RF信号検波手段による検波信号の大きさに応じた制御信号を出力することによって前記調整手段を変化させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする送信回路。
【請求項2】
前記RF信号検波手段は検波用ダイオードであること、を特徴とする請求項1に記載の送信回路。
【請求項3】
前記調整手段は二つのアンテナへの接続を切り替えるスイッチング素子であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送信回路。
【請求項4】
前記調整手段は一つのアンテナのインピーダンスを変更させる容量可変デバイスであること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送信回路。
【請求項5】
前記アイソレータは、
永久磁石と、
前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
前記フェライトに互いに絶縁状態で交差して配置された第1中心電極及び第2中心電極と、
を備え、
前記第1中心電極は、一端が入力ポートに電気的に接続され、他端が出力ポートに電気的に接続され、
前記第2中心電極は、一端が出力ポートに電気的に接続され、他端がグランドポートに電気的に接続され、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間に第1整合容量が電気的に接続され、
前記出力ポートと前記グランドポートとの間に第2整合容量が電気的に接続され、
前記入力ポートと前記出力ポートとの間に前記終端抵抗が電気的に接続されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の送信回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−114547(P2012−114547A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259845(P2010−259845)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】