説明

送信方法およびアクセス制御装置

【課題】通信量が増加した場合であってもパケット信号の衝突確率を低減したい。
【解決手段】フレーム規定部34は、複数のスロットを少なくとも含んだフレームが繰り返されるように規定され、かつフレームに含まれた複数のスロットのうちの一部がアクセス制御装置の使用のために確保されるように規定する。空きスロット特定部42は、複数のスロットのうちの残りから、無線装置間の通信に使用可能なスロットを検出する。選択部110は、検出したスロットに関する情報を報知するために、複数のスロットのうちの一部からスロットを選択する。変復調部24、RF部22は、選択したスロットにて、前記検出部において検出したスロットに関する情報を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知技術に関し、特に所定の情報が含まれた信号を報知する報知方法およびアクセス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、端末装置間の距離や電波を減衰させる障害物の影響などによって、互いの無線信号が到達しない状況、つまりキャリア・センスが機能しない状況が発生する。キャリア・センスが機能しない場合、複数の端末装置から送信されたパケット信号が衝突する。また、通信速度を高速化するために、無線LANでは、OFDM変調方式が使用される。
【0005】
一方、無線LANを車車間通信に適用する場合、不特定多数の端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。しかしながら、交差点などでは、車両数の増加、つまり端末装置数の増加によって、パケット信号の衝突の増加が想定される。その結果、パケット信号に含まれたデータが他の端末装置へ伝送されなくなる。このような状態が、車車間通信おいて発生すれば、交差点の出会い頭の衝突事故を防止するという目的が達成されなくなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信量が増加した場合であってもパケット信号の衝突確率を低減させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアクセス制御装置は、無線装置間の通信を制御するアクセス制御装置であって、複数のスロットを少なくとも含んだフレームが繰り返されるように規定され、かつフレームに含まれた複数のスロットのうちの一部がアクセス制御装置の使用のために確保されており、複数のスロットのうちの残りから、無線装置間の通信に使用可能なスロットを検出する検出部と、検出部において検出したスロットに関する情報を報知するために、複数のスロットのうちの一部からスロットを選択する選択部と、選択部において選択したスロットにて、検出部において検出したスロットに関する情報を報知する報知部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、報知方法である。この方法は、無線装置間の通信を制御するアクセス制御装置での報知方法であって、複数のスロットを少なくとも含んだフレームが繰り返されるように規定され、かつフレームに含まれた複数のスロットのうちの一部がアクセス制御装置の使用のために確保されており、複数のスロットのうちの残りから、無線装置間の通信に使用可能なスロットを検出するステップと、検出したスロットに関する情報を報知するために、複数のスロットのうちの一部からスロットを選択するステップと、選択したスロットにて、検出したスロットに関する情報を報知するステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信量が増加した場合であってもパケット信号の衝突確率を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る通信システムの別の構成を示す図である。
【図3】図1および2のアクセス制御装置の構成を示す図である。
【図4】図4(a)−(d)は、図3のフレーム規定部において規定されるフレームのフォーマットを示す図である。
【図5】図5(a)−(b)は、図1および2の通信システムにおいて使用されるOFDMシンボルのフォーマットを示す図である。
【図6】図1の車両に搭載された端末装置の構成を示す図である。
【図7】図1および2の通信システムの動作概要を示す図である。
【図8】図1および2の通信システムの別の動作概要を示す図である。
【図9】図1および2の通信システムのさらに別の動作概要を示す図である。
【図10】図3のアクセス制御装置における制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。
【図11】図10のキャリアセンスによる制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。
【図12】図10の制御スロット情報と識別情報による制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。
【図13】図3のアクセス制御装置における空きスロットの通知手順を示すフローチャートである。
【図14】図3のアクセス制御装置における衝突スロットの通知手順を示すフローチャートである。
【図15】図6の端末装置におけるデータの送信手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明の変形例における制御スロット情報と識別情報による制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間においてデータ通信を実行する通信システムに関する。端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。ここで、端末装置は、通信速度の高速化を目的としてOFDM変調方式を採用する。このような状況のもと、交差点等において、端末装置の数が増加すると、パケット信号の発生確率が増加する。これに対応するために、本実施例に係る通信システムは、次の処理を実行する。
【0013】
本実施例に係る通信システムは、複数の端末装置の他にアクセス制御装置を含み、アクセス制御装置は、例えば、交差点に設置される。アクセス制御装置は、複数のスロットが含まれたフレームを繰り返し規定する。なお、各フレームに含まれた複数のフレームのうち、一部が制御スロットとして確保されている。アクセス制御装置は、各スロットでの受信電力を測定することによって、複数の端末装置間の通信に使用されてないスロット(以下、「空きスロット」という)を特定する。なお、空きスロットは、制御スロット以外のスロットを対象とする。
【0014】
また、アクセス制御装置は、フレームの構成情報や特定したスロットに関する情報を制御情報に含め、制御情報を格納したパケット信号(以下、これを「制御情報」ということもある)をひとつのスロットにてブロードキャスト送信する。ここで、制御情報の送信に使用されるひとつのスロットは、制御スロットの中から選択される。端末装置は、制御情報をもとに、空きスロットのいずれかを選択し、選択したスロットにおいて、データを格納したパケット信号(以下、これを「データ」ということもある)をブロードキャスト送信する。なお、端末装置は、複数のフレームにわたってデータを送信する場合、各フレームでの相対的なタイミングが同一のスロットを使用する。
【0015】
アクセス制御装置は、各スロットにおいて、複数の端末装置から送信されたパケット信号が衝突しているかも測定することによって、衝突が発生しているスロット(以下、「衝突スロット」という)を特定する。なお、衝突スロットも、制御スロット以外のスロットを対象とする。また、アクセス制御装置は、特定したスロットに関する情報も制御情報に含める。端末装置は、制御情報をもとに、既に使用したスロットにおいて衝突が発生しているかを確認する。衝突が発生している場合、端末装置は、制御情報をもとに、別の空きスロットのいずれかを選択する。ここで、アクセス制御装置は、端末装置間のデータ通信に直接関与せず、データ通信に使用すべきスロットを直接指定しない。あくまでも、アクセス制御装置は、端末装置間のデータ通信の状況を監視し、空きスロットや衝突スロットの情報を報知している。つまり、アクセス制御装置は、複数の端末装置間の通信を制御する。
【0016】
なお、制御情報もひとつのスロットにて送信されているので、制御情報を受信できない端末装置から送信されたデータと、制御情報とが衝突する可能性がある。その結果、他の端末装置が制御情報を受信できないと、上記の処理の実行が困難になる。これに対応するために、データを送信するために使用されるOFDM信号では、一部のサブキャリアにデータが格納されず、ヌルキャリアとされている(以下、このようなサブキャリアを「識別キャリア」という)。一方、制御情報を送信するために使用されるOFDM信号では、識別キャリアにも信号が配置されている。そのため、仮に、データと制御情報とが衝突した場合であっても、端末装置は、識別キャリアの信号成分を観測することによって、制御情報の存在を検知することができる。
【0017】
さらに、近接した交差点のそれぞれにアクセス制御装置が設置される場合、それらのアクセス制御装置間の干渉を考慮する必要がある。仮に、各アクセス制御装置からブロードキャスト送信される制御情報が干渉すると、端末装置は、それらの制御情報を受信できなくなるおそれがあり、前述の動作が実現されなくなる。このような干渉は、各アクセス制御装置に対して異なった周波数チャネルを割り当てることによって回避できるが、別の周波数チャネルが設けられない場合、干渉を低減するための別の構成が必要とされる。これに対応するために、前述の制御スロットが複数確保される。各アクセス制御装置は、複数の制御スロットのそれぞれに対してキャリアセンスを実行することによって、ひとつの制御スロットを選択し、選択した制御スロットにて制御情報をブロードキャスト送信する。
【0018】
なお、キャリアセンスにて制御スロットを選択する場合、アクセス制御装置が設置された位置によっては、他のアクセス制御装置を認識できないおそれがある。つまり、隠れ端末問題と同様の現象が発生する。これに対応するために、各アクセス装置は、当該アクセス装置を識別するための情報(以下、「識別情報」という)を制御情報に含ませて報知する。端末装置は、制御情報が送信された制御スロットの情報(以下、「制御スロット情報」という)と識別情報をデータに含ませて、データをブロードキャスト送信する。アクセス装置は、データを受信することによって、他のアクセス制御装置が使用している制御スロットを認識する。また、アクセス制御装置は、認識した制御スロットも考慮して、制御スロットを選択する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、アクセス制御装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12hを含む。なお、各車両12には、図示しない端末装置が搭載されている。また、アクセス制御装置10によってエリア200が形成されている。
【0020】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
【0021】
各車両12に搭載された端末装置は、データを取得し、データが格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。ここで、本発明の実施例を説明する前に、端末装置が公知の無線LANに対応する場合、つまりCSMA/CAに対応する場合の動作を説明する。各端末装置は、キャリアセンスを実行して送信可能であると判定した場合に、データをブロードキャスト送信する。そのため、複数の端末装置からのデータが衝突する場合がある。また、端末装置の数が増加するにつれて、衝突の発生確率が増加する。特に、交差点のような場所では、車両12の衝突が発生しやすいにもかかわらず、データの衝突も発生しやすくなり、データを必要とするような場所においてデータの利用がなされなくなる。
【0022】
そこで、通信システム100は、交差点にアクセス制御装置10を配置する。アクセス制御装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号をもとに、複数のスロットを含んだフレームが繰り返されるように生成する。また、アクセス制御装置10は、複数のスロットの中から、空きスロットと衝突スロットとを特定する。なお、空きスロットと衝突スロットとの特定方法は、後述する。アクセス制御装置10は、特定した空きスロットと衝突スロットに関する情報を制御情報に含める。さらに、アクセス制御装置10は、複数の制御スロットのいずれかにて制御情報を報知する。なお、制御スロットの選択については、後述する。
【0023】
複数の端末装置は、アクセス制御装置10によって報知された制御情報を受信し、空きスロットのいずれかを選択する。また、端末装置は、選択したスロットにてデータを報知する。ここで、端末装置は、複数のフレームにわたって、選択したスロットに対応したスロットにてデータを報知する。例えば、フレームの先頭から10番目のスロットを選択した場合、次のフレームにおいても、フレームの先頭から10番目のスロットを使用する。なお、制御情報において、使用していたスロットが衝突スロットであると示されていれば、端末装置は、別の空きスロットをさらに選択する。端末装置は、アクセス制御装置10によって報知された制御情報を受信できている期間にわたって、上記の処理を繰り返し実行する。つまり、端末装置は、制御情報を監視しており、制御情報を受信できたときに、エリア200に進入したことを検出する。なお、端末装置は、制御情報を受信できていない場合であっても、データを報知してもよい。他の端末装置からのデータを受信した端末装置は、データをもとに、他の端末装置が搭載された車両12の存在を認識する。
【0024】
ここで、アクセス制御装置10から報知される制御情報と、端末装置から報知されるデータとは、ともにOFDM信号を使用する。しかしながら、両者の配置されているサブキャリアは、同一ではない。データは、前述の識別キャリアに配置されていない。一方、識別情報は、データが配置されたサブキャリアに加えて、識別キャリアにも配置される。その結果、仮に、データと識別情報とが衝突した場合であっても、端末装置は、識別キャリアの信号成分を観測することによって、制御情報の存在を検知できる。なお、前述の端末装置によるエリア200への進入検出は、識別キャリアに対してなされてもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の別の構成を示す。図2は、図1に示された交差点が横にふたつ並んでいる場合に相当する。第1アクセス制御装置10aおよび第2アクセス制御装置10bが各交差点に設置されている。なお、図面を明瞭にするために、図2では、図1に示された車両12を省略する。図示のごとく、第1アクセス制御装置10aによって第1エリア200aが形成され、第2アクセス制御装置10bによって第2エリア200bが形成されている。また、第1エリア200aと第2エリア200bとでは、一部分が重なっている。重なっている一部分に、図示しない車両12が存在すると、当該車両12に搭載された端末装置は、第1アクセス制御装置10aからの制御情報と第2アクセス制御装置10bからの制御情報とを受信できる。そのため、ふたつのアクセス制御装置10からの制御情報に対して、干渉を低減させるための構成が必要になる。具体的には、以下に説明する。
【0026】
図3は、アクセス制御装置10の構成を示す。アクセス制御装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、GPS測位部28、制御部30を含む。また、処理部26は、検出部32、フレーム規定部34、生成部36、選択部110を含み、検出部32は、電力測定部38、品質測定部40、空きスロット特定部42、衝突スロット特定部44を含む。また、選択部110は、情報取得部112、解析部114、推定部116、キャリアセンス部118、実行部120を含む。
【0027】
GPS測位部28は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。GPS測位部28は、時刻の情報をフレーム規定部34へ出力する。フレーム規定部34は、GPS測位部28から時刻の情報を取得する。フレーム規定部34は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部34は、「0msec」となるタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。
【0028】
また、フレーム規定部34は、各フレームを複数に分割することによって、複数のスロットを生成する。例えば、各フレームが200分割されることによって、「500μsec」のスロットが200個生成される。ここで、フレームに含まれた複数のスロットのうちの一部が、「制御スロット」として確保されている。例えば、ひとつのフレームに含まれた200個のスロットのうち、先頭から5個のスロットが制御スロットとされる。また、制御スロットは、アクセス制御装置10が制御情報を報知するために使用されるスロットといえる。前述のごとく、通信システム100は、OFDM変調方式を採用しているので、各スロットは、複数のOFDMシンボルから構成されるように規定される。また、OFDMシンボルは、ガードインターバル(GI)と有効シンボルとによって構成される。なお、各スロットの前方の部分や後方の部分にガードタイムが設けられてもよい。ここで、スロットに含まれた複数のOFDMシンボルのまとまりが、前述のパケット信号に相当する。
【0029】
図4(a)−(d)は、フレーム規定部34において規定されるフレームのフォーマットを示す。図4(a)は、フレームの構成を示す。図示のごとく、第iフレームから第i+2フレームのように、複数のフレームが繰り返されるように規定されている。また、各フレームの期間は、例えば、「100msec」である。図4(b)は、ひとつのフレームの構成を示す。図示のごとく、ひとつのフレームは、M個のスロットによって構成されている。例えば、Mは「200」であり、各スロットの期間は「500μsec」である。また、フレームの先頭部分に配置されたスロットが制御スロットに相当し、制御スロットを配置した区間が制御領域220として示されている。
【0030】
ここでは、第1スロットから第5スロットまでの5つのスロットが、制御スロットとして制御領域220に含まれている。図4(c)は、ひとつのスロットの構成を示す。図示のごとく、スロットの前方の部分と後方の部分とにガードタイムが設けられている。また、スロットの残りの期間は、N個のOFDMシンボルによって構成されている。図4(d)は、ひとつのOFDMシンボルの構成を示す。図示のごとく、ひとつのOFDMシンボルは、GIと有効シンボルによって構成されている。図3に戻る。
【0031】
RF部22は、受信処理として、各スロットにおいて、図示しない他の端末装置間の通信において送信されるパケット信号をアンテナ20から受信する。なお、RF部22は、受信処理として、制御領域220に含まれた各制御スロットにおいて、図示しない他のアクセス制御装置10からの制御情報が含まれたパケット信号も受信する。RF部22は、アンテナ20を介して受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。
【0032】
また、RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。RF部22は、送信処理として、各スロットにおいて、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0033】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0034】
キャリアセンス部118は、制御領域220において制御スロット単位に、キャリアセンスを実行する。つまり、制御領域220は、RF部22あるいは変復調部24から、制御スロット単位に受信信号を受けつけ、受信電力を測定する。その結果、キャリアセンス部118は、複数の制御スロットのそれぞれに対する受信電力を測定する。また、キャリアセンス部118は、制御スロット用しきい値を予め記憶しており、各制御スロットに対して、受信電力と制御スロット用しきい値とを比較する。キャリアセンス部118は、制御スロット用しきい値よりも小さい受信電力の制御スロットを選択する。キャリアセンス部118は、選択した制御スロットの番号を推定部116へ出力する。
【0035】
情報取得部112は、変復調部24から、図示しない複数の端末装置間の通信におけるパケット信号、つまり所定の端末装置からブロードキャスト送信されたパケット信号を受けつける。なお、情報取得部112は、フレームのうちの制御領域220以外のスロットにおいてパケット信号を受けつける。パケット信号には、識別情報と制御スロット情報とが含まれている。制御情報とは、当該パケット信号を送信した端末装置にて参照された制御情報を報知したアクセス制御装置10を識別するための情報である。その前提として、各アクセス制御装置10によってブロードキャスト送信される制御情報には、識別情報が含まれているとする。
【0036】
また、識別情報は、アクセス制御装置10が設定された位置情報に対応している。例えば、位置情報は、緯度・経度にて示されるが、緯度・経度が識別情報に使用される。また、緯度・経度の一部、例えば下位の部分が識別情報に使用されてもよい。制御スロット情報とは、当該パケット信号送信した端末装置にて参照された制御情報が報知された制御スロットに関する情報であり、制御情報が配置されたスロット番号に相当する。例えば、図4(b)において、「第2スロット」のごとく示される。情報取得部112は、識別情報および制御スロット情報とを解析部114へ出力する。
【0037】
解析部114は、情報取得部112から、識別情報と制御スロット情報との組合せを順次取得する。解析部114は、識別情報と報知スロット情報との組合せを統計的に解析する。具体的に説明すると、解析部114は、所定の期間にわたって、組合せごとに取得回数を積算する。また、解析部114は、回数用しきい値を予め定めており、各組合せに対して、取得回数と回数用しきい値とを比較する。さらに、解析部114は、回数用しきい値よりも大きい取得回数に対応した組合せを抽出する。
【0038】
解析部114は、組合せに含まれた識別情報から位置情報を導出する。また、解析部114は、本アクセス制御装置10が設置された位置情報を予め記憶しており、両者の位置情報をもとに、両者間の距離を導出する。さらに、解析部114は、距離用しきい値を予め記憶しており、距離と距離用しきい値とを比較する。解析部114は、距離用しきい値よりも距離が大きいアクセス制御装置10に対する組合せ、つまり、本アクセス制御装置10から距離用しきい値よりも離れた位置に設置されたアクセス制御装置10に対する組合せを積算の対象から除外する。解析部114は、抽出した組合せを推定部116へ出力する。
【0039】
推定部116は、キャリアセンス部118から、選択された制御スロットの番号を受けつけるとともに、解析部114から、解析結果として抽出された組合せも受けつける。解析部114は、組合せに含まれた制御スロット情報をもとに、他のアクセス制御装置10に使用されていない制御スロットを特定する。具体的には、制御スロット情報にて示されたスロット番号以外の制御スロットが特定される。さらに、推定部116は、特定した制御スロットと、キャリアセンス部118にて選択された制御スロットとをもとに、制御領域220において他のアクセス制御装置に使用されていない制御スロットを推定する。具体的には、特定した制御スロットであって、かつキャリアセンス部118にて選択された制御スロットが、使用されていない制御スロットとされる。ここで、使用されていない制御スロットは、複数であってもよい。推定部116は、推定結果を実行部120へ出力する。
【0040】
実行部120は、推定部116から推定結果を受けつけ、使用されていない制御スロットのうち、ひとつを選択する。選択は、任意の方法でなされればよい。つまり、実行部120は、制御情報を報知するために、制御領域220からひとつの制御スロットを選択する。アンテナ20は、選択した制御スロットに関する情報を生成部36へ出力する。
【0041】
電力測定部38は、RF部22あるいは変復調部24から、受信信号を受けつけ、受信電力を測定する。ここで、受信電力はスロット単位に測定される。また、スロットは、制御スロット以外のスロットに相当する。そのため、電力測定部38では、複数のスロットのそれぞれに対する受信電力が測定される。電力測定部38は、スロット単位の受信電力を空きスロット特定部42および衝突スロット特定部44へ出力する。品質測定部40は、変復調部24からの復調結果を受けつけ、複数のスロットのそれぞれに対する信号品質を測定する。ここでは、信号品質として誤り率が測定される。ここでも、スロットは、制御スロット以外のスロットに相当する。なお、誤り率の測定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、信号品質として、誤り率の代わりに、EVM(Error Vector Magnitude)等が測定されてもよい。品質測定部40は、誤り率を衝突スロット特定部44へ出力する。
【0042】
空きスロット特定部42は、電力測定部38から、スロット単位の受信電力を受けつける。空きスロット特定部42は、各受信電力としきい値(以下、「空きスロット用しきい値」という)を比較し、受信電力が空きスロット用しきい値よりも小さくなっているスロットを特定する。つまり、空きスロット特定部42は、制御領域220以外における複数のスロットの中から、複数の端末装置間の通信に使用可能なスロットを空きスロットとして検出する。ここで、空きスロットが複数存在する場合、空きスロット特定部42は、それらを特定する。空きスロット特定部42は、特定した空きスロットに関する情報を生成部36へ出力する。
【0043】
衝突スロット特定部44は、電力測定部38から、スロット単位の受信電力を受けつけ、品質測定部40から、スロット単位の誤り率を受けつける。また、衝突スロット特定部44は、スロット単位に、受信電力と誤り率とを関連づける。衝突スロット特定部44は、スロット単位に、受信電力と第1しきい値とを比較するとともに、誤り率と第2しきい値とを比較する。衝突スロット特定部44は、受信電力が第1しきい値よりも大きく、かつ誤り率が第2しきい値より悪化しているスロットを衝突スロットとして特定する。つまり、衝突スロット特定部44は、受信電力が大きいものの通信品質が悪化しているスロットを衝突スロットとして認定する。このように、衝突スロット特定部44は、複数の端末装置が信号を重複して送信したことによって衝突が発生したスロットを衝突スロットとして検出する。衝突スロット特定部44は、特定した衝突スロットに関する情報を生成部36へ出力する。
【0044】
生成部36は、空きスロット特定部42から、空きスロットに関する情報を受けつけるとともに、衝突スロット特定部44から、衝突スロットに関する情報を受けつける。生成部36は、空きスロットに関する情報と衝突スロットに関する情報を含めながら、制御情報を生成する。ここで、フレームに含まれた複数のスロットのそれぞれには、前から順番に「1」、「2」となるような番号(以下、「スロット番号」という)が付与されている。生成部36は、空きスロットに関する情報として、以前のフレームに含まれた空きスロットのスロット番号を制御情報に含める。
【0045】
また、生成部36は、衝突スロットに関する情報として、以前のフレームに含まれた衝突スロットのスロット番号を制御情報に含める。これらに加えて、生成部36は、本アクセス制御装置10の識別情報を記憶しており、識別情報を制御情報に含めるとともに、実行部120から制御スロットに関する情報を受けつけ、制御スロットに関する情報も制御情報に含める。識別情報は、前述の通りであるので、ここでは説明を省略する。さらに、生成部36は、フレーム規定部34からフレームやスロットに関する情報を受けつける。生成部36は、制御スロットに関する情報において示された制御スロットへ定期的に制御情報を割り当てる。生成部36は、割り当てた制御スロットにて、変復調部24へ制御情報を出力する。
【0046】
前述のごとく、通信システム100は、OFDM変調方式に対応しているので、生成部36は、制御情報をOFDM信号として生成する。なお、図示しない複数の端末装置間のデータ通信にもOFDM信号が使用されている。ここでは、制御情報を配置させるOFDM信号(以下、これも「制御情報」ということがある)と、データを配置させるOFDM信号(以下、これも「データ」ということがある)とを比較しながら説明する。図5(a)−(b)は、通信システム100において使用されるOFDMシンボルのフォーマットを示す。図5(a)は、制御情報に相当し、図5(b)は、データに相当する。
【0047】
ここで、両方において、縦の方向が周波数を示し、横の方向が時間を示す。縦の方向において、上から順に「31」、「30」、・・・「−32」の番号が示されているが、これらはサブキャリアを識別するために付与された番号(以下、「サブキャリア番号」という)である。また、OFDM信号の中において、サブキャリア番号「31」のサブキャリアの周波数が最も高く、サブキャリア番号「−32」のサブキャリアの周波数が最も低い。また、図中の「D」は、データシンボルに相当し、「P」は、パイロットシンボルに相当し、「N」は、ヌルに相当する。
【0048】
制御情報とデータとに共通して、サブキャリア番号「31」から「27」、「2」、「0」、「−2」、「−26」から「−32」のサブキャリアは、ヌルである。また、制御情報のうち、サブキャリア番号「26」から「3」、「−3」から「−25」のサブキャリアは、データでも使用されており、また、両者においてシンボルの用途も同一である。一方、制御情報のうち、サブキャリア番号「1」、「−1」は、データにて使用されていない。これらは、前述の識別キャリアに相当する。つまり、識別キャリアは、OFDM信号のうちの中央の周波数付近のサブキャリアに配置されている。さらに、制御情報のうち、データでも使用されるサブキャリアと、識別キャリアとの間、つまりサブキャリア番号「2」、「−2」には、ガードバンドが設けられてる。なお、サブキャリア番号「−2」から「2」のサブキャリアをまとめて「識別キャリア」と呼んでもよい。
【0049】
ここで、生成部36は、制御情報のうちの識別キャリア以外のサブキャリアに、空きスロットに関する情報および衝突スロットに関する情報を配置する。また、生成部36は、フレームに関する情報を識別キャリアに配置する。また、生成部36は、これらの情報に限られず、重要度の高い情報を識別キャリアに優先的に配置してもよい。また、パケット信号の前方のOFDMシンボルには、既知信号が配置される。このような既知信号は、端末装置におけるAGCや、伝送路特性の推定に使用される。生成部36は、所定のスロットのうちの一部の期間にわたって、識別キャリアに既知信号を配置してもよい。このような既知信号は、例えば、UW(Unique Word)のように使用される。図3に戻る。
【0050】
変復調部24、RF部22は、生成部36において生成した制御情報をアンテナ20から報知する。なお、制御情報に含まれた空きスロットに関する情報および衝突スロットに関する情報に応じたスロットを使用している端末装置は、複数のフレームにわたって、当該スロットに対応したスロットを使用する。例えば、スロット番号「10」のスロットが継続的に使用される。制御部30は、アクセス制御装置10全体の処理を制御する。
【0051】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0052】
図6は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。また、処理部56は、タイミング特定部60、取得部62、生成部64、通知部70を含み、タイミング特定部60は、制御情報抽出部66、スロット決定部68を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、これらの説明を省略する。
【0053】
取得部62は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部62は、取得した情報を生成部64へ出力する。
【0054】
制御情報抽出部66は、変復調部54からの復調結果を受けつける。また、制御情報抽出部66は、復調結果のうち、識別キャリアに対応したサブキャリアの部分を監視する。識別キャリアに対応したサブキャリアの部分に有効なデータが含まれている場合、制御情報抽出部66は、制御情報が含まれたスロット、つまり制御スロットを受信していることを認識する。また、制御情報抽出部66は、制御情報が含まれたスロットを受信しているタイミングを基準として、フレームおよびスロットの同期を確立する。
【0055】
具体的に説明すると、制御情報抽出部66は、制御情報に含まれた制御スロットに関する情報をもとに、受けつけた復調結果が配置された制御スロットを特定し、これを基準にフレームを生成する。さらに、制御情報抽出部66は、制御情報から、空きスロットに関する情報、衝突スロットに関する情報、識別情報を取得する。制御情報抽出部66は、空きスロットに関する情報および衝突スロットに関する情報をスロット決定部68へ出力する。また、制御情報抽出部66は、制御スロットに関する情報を制御スロット情報としてスロット決定部68へ出力するとともに、識別情報もスロット決定部68へ出力する。
【0056】
スロット決定部68は、制御情報抽出部66から、空きスロットに関する情報および衝突スロットに関する情報を受けつける。また、スロット決定部68は、制御情報抽出部66から、制御スロット情報および識別情報も受けつける。スロット決定部68は、空きスロットに関する情報をもとに、フレーム中の制御領域220以外のスロットから、ひとつの空きスロットを選択する。なお、空きスロットの選択は、任意になされればよい。スロット決定部68は、選択した空きスロットに関する情報、制御スロット情報、識別情報を生成部64へ出力する。
【0057】
生成部64は、取得部62からの情報を受けつけるとともに、スロット決定部68からの制御スロット情報および制御情報も受けつける。生成部64は、情報をもとにデータを生成する。ここで、データは、図5(b)のように形成されており、データには、制御スロット情報および制御情報も含まれる。また、生成部64は、スロット決定部68から、空きスロットに関する指示を受けつけ、指示に応じた空きスロットにてデータを変復調部54へ出力する。なお、データを出力する前に、処理部56は、キャリアセンスを実行してもよい。また、生成部64は、次のフレームにおいても、同一のスロット番号のスロットにおいてデータを出力する。
【0058】
このような処理の継続中も、制御情報抽出部66は、フレームごとに制御情報から、空きスロットに関する情報および衝突スロットに関する情報を取得し続ける。スロット決定部68は、衝突スロットに関する情報をもとに、現在使用しているスロットに対応したスロット番号が衝突スロットとされていないかを確認する。衝突スロットとされていなければ、スロット決定部68は、これまでと同一のスロット番号を生成部64へ出力し続ける。一方、衝突スロットとされていれば、スロット決定部68は、空きスロットに関する情報をもとに、ひとつの空きスロットを再び選択する。つまり、これまで選択していたスロットとは別のスロットが選択される。スロット決定部68は、選択した空きスロットに関する情報を生成部64へ出力する。以下、生成部64では、同様の処理が実行される。通知部70は、図示しない他の端末装置14からのデータを取得し、データの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へ通知する。通知部70での処理は、これに限定されない。制御部58は、端末装置14全体の動作を制御する。
【0059】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図7は、通信システム100の動作概要を示す。図の横方向が時間に相当しており、図の縦方向に第1アクセス制御装置10aから第3アクセス制御装置10cが示されている。また、図7では、図4(b)での制御領域220のみを示している。前述のごとく、ここでは、制御領域220に5つの制御スロットが配置されているとしている。図中の「制」は、制御情報に相当する。第1アクセス制御装置10aは、先頭の制御スロットを使用し、第2アクセス制御装置10bは、5番目の制御スロットを使用し、第3アクセス制御装置10cは、3番目の制御スロットを使用する。その結果、各アクセス制御装置10からブロードキャスト送信される制御情報間の干渉が低減される。
【0060】
図8は、通信システム100の別の動作概要を示す。図の横方向が時間に相当しており、最上段に記載しているように、第iフレームから第i+2フレームまでの3つのフレームが示されている。また、説明を明瞭にするために、ひとつのフレームに含まれる制御スロットをひとつにするとともに、ひとつのフレームに15個のスロットが含まれているとする。アクセス制御装置10は、図示のごとく、各フレームの先頭のスロットにて、制御情報を報知する。図中の「制」は、制御情報に相当する。また、その下段には、制御情報に含まれている空きスロットに関する情報と衝突スロットに関する情報が、スロットに対応づけられながら示されている。図中の「空」は、空きスロットに相当し、「衝」は、衝突スロットに相当する。
【0061】
さらに下段には、第1端末装置14aから第4端末装置14dがデータを報知するタイミングが示されている。図中の「デ」は、データに相当する。第1端末装置14aから第4端末装置14dは、制御情報を参照し、空きスロットをそれぞれ選択する。第iフレームにおいて、第1端末装置14aから第4端末装置14dは、選択した空きスロットにてデータを報知する。その際、第3端末装置14cと第4端末装置14dにおいて選択された空きスロットが同一であるので、両者から報知されたデータが衝突している。アクセス制御装置10は、当該スロットでの衝突の発生を検出する。第i+1フレームにおいて、アクセス制御装置10から報知される制御情報には、衝突スロットに関する情報として、衝突が発生したスロットが示されている。
【0062】
第1端末装置14aおよび第2端末装置14bは、既に使用したスロットにおいて衝突が発生していないので、同一のスロット番号のスロットを再び使用する。一方、第3端末装置14cおよび第4端末装置14dは、既に使用したスロットにおいて衝突が発生しているので、別の空きスロットを再び選択する。第3端末装置14cおよび第4端末装置14dは、選択した空きスロットにてデータを報知する。すべてのデータが衝突していないので、第i+2フレームにおいて、アクセス制御装置10から報知される制御情報には、衝突スロットが示されていない。そのため、第i+2フレームにおいて、第1端末装置14aから第4端末装置14dは、既に使用したスロットと同一のスロット番号のスロットを再び使用する。
【0063】
図9は、通信システム100のさらに別の動作概要を示す。図9は、図8と同様に示される。ここでは、前提として、第2端末装置14bは、アクセス制御装置10からの制御情報を受信できていないとする。そのため、第2端末装置14bは、フレームの構成を把握せずにデータを送信している。アクセス制御装置10は、フレームの先頭のスロットにて、制御情報を報知する。一方、第2端末装置14bは、フレームの先頭スロットにて、データを報知する。その結果、当該スロットにおいて、制御情報とデータとが衝突する。ここで、第1端末装置14a、第3端末装置14c、第4端末装置14dは、衝突が発生した場合であっても、制御情報のうちの識別キャリアの信号成分を観測することによって、制御情報の存在を検知できる。
【0064】
図10は、アクセス制御装置10における制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。キャリアセンス部118は、キャリアセンスによるスロットの選択を実行する(S100)。情報取得部112、解析部114、推定部116、キャリアセンス部118は、制御スロット情報と識別情報によるスロットの選択を実行する(S102)。
【0065】
図11は、キャリアセンスによる制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。これは、図10のステップ100での処理に相当する。また、制御領域220に含まれた制御スロットの数を「s−1」とする。キャリアセンス部118は、スロット番号mを1に設定する(S120)。キャリアセンス部118は、受信電力を測定する(S122)。キャリアセンス部118は、受信電力が制御スロット用しきい値よりも小さければ(S124のY)、スロット番号mのスロットを空きと特定する(S126)。キャリアセンス部118は、受信電力が制御スロット用しきい値よりも小さくなければ(S124のN)、ステップ126の処理をスキップする。スロット番号mが最大数s−1でなければ(S128のN)、キャリアセンス部118は、スロット番号mに1を加算して(S130)、ステップ122に戻る。一方、スロット番号mが最大数s−1であれば(S128のY)、処理は終了される。
【0066】
図12は、制御スロット情報と識別情報による制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。これは、図10のステップ102での処理に相当する。解析部114は、制御スロット情報と識別情報とをひとつの組合せとして一定期間での取得回数を積算する(S150)。取得回数の積算値が回数用しきい値より大きい組合せがあれば(S152のY)、解析部114は、当該組合せを抽出する(S154)。また、距離用しきい値よりも離れた組合せがあれば(S156のY)、解析部114は、当該組合せを除外する(S158)。距離用しきい値よりも離れた組合せがなければ(S156のN)、ステップ158はスキップされる。推定部116は、空きスロットを特定する(S160)。一方、取得回数の積算値が回数用しきい値より大きい組合せがなければ(S152のN)、ステップ154から160までの処理は、スキップされる。実行部120は、キャリアセンス結果を反映させて、スロットを選択する(S162)。
【0067】
図13は、アクセス制御装置10における空きスロットの通知手順を示すフローチャートである。検出部32は、スロット番号mをsに設定する(S10)。電力測定部38は、受信電力を測定する(S12)。空きスロット特定部42は、受信電力が空きスロット用しきい値よりも小さければ(S14のY)、スロット番号mのスロットを空きスロットと特定する(S16)。空きスロット特定部42は、受信電力が空きスロット用しきい値よりも小さくなければ(S14のN)、ステップ16の処理をスキップする。スロット番号mが最大数Mでなければ(S18のN)、検出部32は、スロット番号mに1を加算して(S20)、ステップ12に戻る。一方、スロット番号mが最大数Mであれば(S18のY)、生成部36は、空きスロットのスロット番号を制御情報に含める(S22)。変復調部24、RF部22は、制御情報を報知する(S24)。
【0068】
図14は、アクセス制御装置10における衝突スロットの通知手順を示すフローチャートである。検出部32は、スロット番号mをsに設定する(S40)。電力測定部38は、受信電力を測定し、品質測定部40は、誤り率を測定する(S42)。衝突スロット特定部44は、受信電力が第1しきい値より大きく、かつ誤り率が第2しきい値よりも大きければ(S44のY)、スロット番号mのスロットを衝突スロットと特定する(S46)。衝突スロット特定部44は、受信電力が第1しきい値より大きくなく、あるいは誤り率が第2しきい値よりも大きくなければ(S44のN)、ステップ46の処理をスキップする。スロット番号mが最大数Mでなければ(S48のN)、検出部32は、スロット番号mに1を加算して(S50)、ステップ42に戻る。一方、スロット番号mが最大数Mであれば(S48のY)、生成部36は、衝突スロットのスロット番号を制御情報に含める(S52)。変復調部24、RF部22は、制御情報を報知する(S54)。
【0069】
図15は、端末装置14におけるデータの送信手順を示すフローチャートである。制御情報抽出部66は、制御情報を取得する(S70)。使用すべきスロットが既に特定されていれば(S72のY)、スロット決定部68は、当該スロットに衝突が発生していないかを確認する。衝突が発生していれば(S74のY)、スロット決定部68は、スロットを変更する(S76)。衝突が発生していなければ(S74のN)、ステップ76はスキップされる。一方、使用すべきスロットが既に特定されていなければ(S72のN)、スロット決定部68は、空きスロットを特定する(S78)。生成部64は、特定したスロットにて、制御スロット情報と識別情報とを含めながら、データを送信する(S80)。
【0070】
次に変形例を説明する。変形例における通信システム100は、実施例における通信システム100と同様に、複数のアクセス制御装置10を含む。実施例におけるアクセス制御装置10の解析部114は、組合せを積算することによって、つまり統計処理を実行することによって、空きの制御スロットを特定する。一方、変形例における解析部114は、統計処理を実行しない。変形例に係る通信システム100は、図1および図2と同様であり、変形例に係るアクセス制御装置10は、図3と同様であり、変形例に係る端末装置14は、図6と同様である。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
【0071】
解析部114は、情報取得部112から、識別情報と制御スロット情報との組合せを順次取得する。解析部114は、組合せに含まれた識別情報から位置情報を導出する。また、解析部114は、本アクセス制御装置10が設置された位置情報を予め記憶しており、両方の位置情報をもとに、両方の間の距離を導出する。さらに、解析部114は、距離用しきい値を予め記憶しており、距離と距離用しきい値とを比較する。解析部114は、距離用しきい値よりも距離が大きいアクセス制御装置10に対する組合せ、つまり、本アクセス制御装置10から距離用しきい値よりも離れた位置に設置されたアクセス制御装置10に対する組合せを除外する。解析部114は、残った組合せを推定部116へ出力する。
【0072】
図16は、本発明の変形例における制御スロット情報と識別情報による制御スロットの選択手順を示すフローチャートである。これは、図10のステップ102での処理に相当する。解析部114は、制御スロット情報と識別情報とをひとつの組合せとして取得する(S180)。距離用しきい値よりも離れた組合せがあれば(S182のY)、解析部114は、当該組合せを除外する(S184)。距離用しきい値よりも離れた組合せがなければ(S182のN)、ステップ184はスキップされる。推定部116は、空きスロットを特定する(S186)。実行部120は、キャリアセンス結果を反映させて、スロットを選択する(S188)。
【0073】
本発明の実施例によれば、複数のスロットの中から、複数の端末装置間の通信に使用可能なスロットを報知するので、複数の端末装置間の通信における衝突の発生確率を低減できる。また、複数の端末装置間の通信における衝突の発生確率が低減されるので、通信量が増加した場合であってもパケット信号の衝突確率を低減できる。また、複数のスロットのそれぞれに対する受信電力をもとに、空きスロットを特定するので、特定を簡易に実行できる。また、以前のフレームに含まれた空きスロットの番号を報知するので、端末装置への指示を確実に実行できる。また、空きスロットを使用している端末装置は、複数のフレームにわたって、当該スロットに対応したスロットを使用するので、処理を簡易にできる。また、アクセス制御装置は、端末装置間のデータ通信に参加せず、空きスロットに関する指標を通知するだけなので、CSMA/CAを前提とした通信システムにも容易に適用できる。
【0074】
また、複数のスロットの中から、複数の端末装置が信号を重複して送信したことによって衝突が発生したスロットを報知するので、複数の端末装置間の通信における衝突の発生確率を低減できる。また、複数のスロットのそれぞれに対する受信電力と、複数のスロットのそれぞれに対する信号品質とをもとに、衝突スロットを特定するので、特定を簡易に実行できる。また、以前のフレームに含まれた衝突スロットの番号を報知するので、端末装置への指示を確実に実行できる。また、アクセス制御装置は、端末装置間のデータ通信に参加せず、衝突スロットに関する指標を通知するだけなので、CSMA/CAを前提とした通信システムにも容易に適用できる。
【0075】
また、制御情報のうち、識別キャリアは、データに使用させず、残りのサブキャリアは、データにも使用されるので、制御情報とデータ信号とが衝突しても制御情報の信号成分を観測させることによって、制御情報の存在を検知させることができる。また、識別キャリアとそれ以外のサブキャリアとの間にガードバンドが設けられるので、両者の間の干渉を低減でき、識別キャリアで伝送している情報の到達確率を向上できる。また、識別キャリアに、重要な情報を配置するので、重要な情報の到達確率を向上できる。また、識別キャリアにUWを配置するので、識別キャリアの検出精度を向上できる。
【0076】
また、フレームに含まれた複数のスロットのうち、制御領域が制御スロットのために確保されているので、制御情報とデータとの干渉とを低減できる。また、制御領域に複数の制御スロットが配置されているので、複数のアクセス制御装置からの制御情報間の干渉を低減できる。また、干渉が低減できるので、制御情報の品質の悪化を抑制できる。また、制御情報の品質の悪化が抑制されるので、制御情報の内容を正確に伝送できる。また、制御情報の内容が正確に伝送されるので、空きスロット情報等を正確に通知できる。また、複数の制御情報間の干渉が低減されるので、複数のアクセス制御装置を設置できる。また、複数のアクセス制御装置が設置されるので、各交差点でのパケット信号の衝突確率を低減できる。また、他のアクセス制御装置に使用されていない制御スロットを推定するので、複数の制御情報間の干渉を低減できる。
【0077】
また、選択した制御スロットに関する情報と識別情報を制御情報に含めるので、選択した制御スロットに関する情報と識別情報を端末装置に通知できる。また、選択した制御スロットに関する情報を制御情報に含めるので、複数の制御スロットのいずれかを自由に使用できる。また、制御スロット情報と識別情報を端末装置から受信するので、存在を直接認識できないアクセス制御装置の存在を間接的に認識できる。また、存在を直接認識できないアクセス制御装置の存在が間接的に認識されるので、隠れ端末問題を解消できる。また、存在を直接認識できないアクセス制御装置の存在が間接的に認識できるので、制御スロットの選択の精度を向上できる。また、制御スロットの選択の精度が向上されるので、複数の制御情報間の干渉を低減できる。
【0078】
また、制御スロット情報と識別情報との組合せに対して統計処理を実行するので、空いている制御スロットの推定精度を向上できる。また、距離の離れたアクセス制御装置を統計処理の対象から除外するので、干渉による品質の悪化を抑制しながら、選択可能な制御スロット数を増加できる。また、選択可能な制御スロット数が増加されるので、制御スロットの選択の自由度を向上できる。また、距離の離れたアクセス制御装置以外のアクセス制御装置にて使用されていない制御スロットを選択するので、複数の制御情報間の干渉を低減できる。
【0079】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0080】
本発明の実施例において、フレーム規定部34は、複数のスロットにて形成されたフレームが規定される。しかしながらこれに限らず例えば、フレーム規定部34は、フレームに複数のスロット以外の期間を設けてもよい。具体的には、フレームの一部の期間に複数のスロットが配置され、残りの期間では、複数の端末装置14間においてCSMA/CAがなされてもよい。その際、アクセス制御装置10は、CSMA/CAの期間では、空きスロットや衝突スロットの検出を実行しない。本変形例によれば、端末装置14は、スロットによる通信とCSMA/CAによる通信を選択できるので、通信の自由度を向上できる。つまり、フレームは、複数のスロットを少なくとも含んでいればよい。
【0081】
本発明の実施例において、アクセス制御装置10から報知される制御情報や、ひとつの端末装置14から報知されるデータは、ひとつのスロットに割り当てられている。しかしながらこれに限らず例えば、制御情報やデータが、ふたつ以上のスロットに割り当てられていてもよい。本変形例によれば、制御情報やデータの通信速度を向上できる。
【0082】
本発明の実施例において、識別キャリアは、ふたつのサブキャリアに相当する。また、識別キャリアは、OFDMシンボルの中央周波数付近のサブキャリアに配置されている。しかしながらこれに限らず例えば、識別キャリアは、ふたつ以上のサブキャリアに相当してもよく、識別キャリアは、OFDMシンボルの中央周波数付近以外のサブキャリアに配置されていてもよい。その際、識別キャリアに、空きスロットに関する情報や衝突スロットに関する情報を含めてもよい。本変形例によれば、通信システム100の設計の自由度を向上できる。
【0083】
本発明の実施例において、アクセス制御装置10の識別情報は、アクセス制御装置10の位置情報に対応づけられている。しかしながらこれに限らず例えば、識別情報は位置情報と無関係に付与されてもよい。本変形例によれば、識別情報の付与の自由度を向上できる。つまり、異なったアクセス制御装置10に対して異なった識別情報が付与されていればよい。
【符号の説明】
【0084】
10 アクセス制御装置、 12 車両、 14 端末装置、 20 アンテナ、 22 RF部、 24 変復調部、 26 処理部、 28 GPS測位部、 30 制御部、 32 検出部、 34 フレーム規定部、 36 生成部、 38 電力測定部、 40 品質測定部、 42 空きスロット特定部、 44 衝突スロット特定部、 50 アンテナ、 52 RF部、 54 変復調部、 56 処理部、 58 制御部、 60 タイミング特定部、 62 取得部、 64 生成部、 66 制御情報抽出部、 68 スロット決定部、 70 通知部、 100 通信システム、 110 選択部、 112 情報取得部、 114 解析部、 116 推定部、 118 キャリアセンス部、 120 実行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置間の通信を制御するアクセス制御装置であって、
複数のスロットを少なくとも含んだフレームが繰り返されるように規定され、かつフレームに含まれた複数のスロットのうちの一部がアクセス制御装置の使用のために確保されており、複数のスロットのうちの残りから、無線装置間の通信に使用可能なスロットを検出する検出部と、
前記検出部において検出したスロットに関する情報を報知するために、複数のスロットのうちの一部からスロットを選択する選択部と、
前記選択部において選択したスロットにて、前記検出部において検出したスロットに関する情報を報知する報知部と、
を備えることを特徴とするアクセス制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−81204(P2013−81204A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256427(P2012−256427)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2008−222007(P2008−222007)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】