説明

送信機、受信機、電力増幅方法及び信号復調方法

【課題】隣接帯域への干渉を低減する送信機及び電力増幅方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の送信機は、周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;決定された非線形入出力変換特性に基づいて、信号の振幅を変換する振幅制御部;及び振幅が変換された信号を電力増幅する送信電力増幅部;を有する。また、本発明の送信機は、周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;互いに異なる非線形入出力変換特性を有する複数の送信電力増幅部;及び決定された非線形入出力変換特性に基づいて、前記複数の送信電力増幅部のうち1つを選択する選択部;を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機、受信機、電力増幅方法及び信号復調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式では、複数のユーザがシステム帯域を共用する。システム帯域は複数のサブキャリアに分割され、複数のユーザに割り当てられる。なお、システム帯域内のユーザ数や、1ユーザが使用する帯域幅は、時間と共に変動し、その結果、システム帯域内の使用率も変動する。
【0003】
OFDMA方式における各ユーザの送信信号であるOFDM信号は、各サブキャリアの信号が加算された信号である。このため、各サブキャリアの信号位相に応じて、平均電力と比較して非常に大きなピーク電力が発生する。例えば、すべてのキャリアの信号が同相で加算された場合には、平均電力のN倍(Nはサブキャリア数)のピーク電力が発生する。このため、生成されたOFDMA方式用送信信号(OFDM信号)は、平均電力と比較して非常に大きいピーク電力を有する。このピーク電力を効果的に低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−060846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OFDMA方式の送信機で用いられる送信電力増幅器では、電力効率を高める観点から、増幅後の電力の上限値である飽和電力に近い平均電力が得られる領域で使用することが望ましい。しかし、OFDMA方式用送信信号のように平均電力に対してピーク電力が大きい場合には、入力信号を送信電力増幅器で増幅したときに送信電力増幅器の飽和電力より大きい信号成分が生じる可能性がある。この結果、一定以上の入力信号の振幅成分がカットされる(以下、クリップと呼ぶ)。
【0006】
このようなクリップが発生すると信号が歪み、歪電力(クリップ雑音)が信号帯域外に拡がる。例えば、同じシステム帯域を複数のユーザが使用しており、他ユーザが隣接帯域を使用する場合には、信号帯域外に拡がった歪電力が隣接帯域を使用する他ユーザにとって干渉となる。
【0007】
本発明は、隣接帯域への干渉を低減する送信機及び電力増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送信機は、
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、信号の振幅を変換する振幅制御部;及び
振幅が変換された信号を電力増幅する送信電力増幅部;
を有することを特徴の1つとする。
【0009】
また、本発明の送信機は、
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;
互いに異なる非線形入出力変換特性を有する複数の送信電力増幅部;及び
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、前記複数の送信電力増幅部のうち1つを選択する選択部;
を有することを特徴の1つとする。
【0010】
また、本発明の受信機は、
周波数帯域の使用状況に応じて送信機で決定された信号変換用の非線形入出力変換特性を受信する非線形入出力変換特性受信部;
受信信号を復調する受信信号復調部;
復調された信号を変調する変調信号生成部;
受信した非線形入出力変換特性に基づいて、変調された信号の振幅を変換し、歪電力を生成する送信歪電力生成部;
生成された歪電力を受信信号から減算する減算部;及び
歪信号が減算された受信信号を再び復調する受信信号再復調部;
を有することを特徴の1つとする。
【0011】
また、本発明の電力増幅方法は、
送信機における電力増幅方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定するステップ;
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、信号の振幅を変換するステップ;及び
振幅が変換された信号を電力増幅するステップ;
を有することを特徴の1つとする。
【0012】
また、本発明の電力増幅方法は、
送信機における電力増幅方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定するステップ;及び
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、非線形入出力変換特性が互いに異なる複数の送信電力増幅部のうち1つを選択するステップ;
を有することを特徴の1つとする。
【0013】
また、本発明の信号復調方法は、
受信機における信号復調方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて送信機で決定された信号変換用の非線形入出力変換特性を受信するステップ;
受信信号を復調するステップ;
復調された信号を変調するステップ;
受信した非線形入出力変換特性に基づいて、変調された信号の振幅を変換し、歪電力を生成するステップ;
生成された歪電力を受信信号から減算するステップ;及び
歪信号が減算された受信信号を再び復調するステップ;
を有することを特徴の1つとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によれば、隣接帯域への干渉が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】OFDM方式用送信信号におけるクリップの例
【図2】クリップによる歪電力の例
【図3】本発明の実施例に係る送信機
【図4】OFDMA方式で用いられる変調信号生成部の例
【図5】非線形入出力変換特性の例
【図6】送信歪電力制御部において非線形入出力変換特性を用いて変換された出力信号のスペクトラムの概形
【図7A】システム帯域の使用状況の例(その1)
【図7B】システム帯域の使用状況の例(その2)
【図7C】システム帯域の使用状況の例(その3)
【図7D】システム帯域の使用状況の例(その4)
【図7E】システム帯域の使用状況の例(その5)
【図8】送信機において変調方式及び符号化方式を制御する変形例
【図9】複数の送信電力増幅部を切り替える変形例
【図10】プリディストーションを用いる変形例
【図11】プリディストーションで用いられる非線形入出力変換特性の例
【図12】フィルタリングを更に用いる変形例
【図13】送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用する変形例(その1)
【図14】送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用する変形例(その2)
【図15】本発明の実施例に係る受信機
【図16】受信機における変調信号生成部の例
【図17】受信機における送信歪電力生成部の例
【図18】送信歪電力制御とフィルタリングとが繰り返し適用される場合の受信機の変形例
【図19】送信歪電力制御とフィルタリングとが繰り返し適用される場合の受信機における送信歪電力生成部の例
【図20】送信歪電力除去を繰り返し適用する変形例
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例では、所定の周波数帯域が複数のユーザ又は複数のシステムにより共用される周波数共用システムが用いられる。例えば、周波数共用システムとして、OFDMA方式が用いられてもよい。
【0017】
図1に、OFDM方式用送信信号におけるクリップの例を示す。上記のように、OFDM方式用送信信号は、平均電力に対してピーク電力が大きい信号である。図1に示すように、送信機の送信電力増幅器では、入力信号を増幅したときに送信電力増幅器の飽和電力より大きい信号成分がカットされる(クリップされる)。このため、図1の斜線部における送信電力増幅器の出力は、送信電力増幅器の飽和電力に等しくなる。
【0018】
図2に、クリップによる歪電力の例を示す。歪電力とは、クリップされた信号に対応する電力であり、図1の斜線部に対応する電力を言う。
【0019】
図1に示すようにクリップが発生すると信号が歪み、図2に示すように歪電力(クリップ雑音)が信号帯域外に拡がる。なお、クリップが発生しない場合には、信号スペクトラムは所望の信号帯域内に収まる。
【0020】
例えば、システム帯域内の周波数利用率が低く、各ユーザの帯域が十分確保できる場合には、ユーザ間でガードバンドを設けることにより、歪電力によるユーザ間干渉を低減できる。しかし、同じシステム帯域を複数のユーザが使用しており、他ユーザが隣接帯域を使用する場合には、信号帯域外に拡がった歪電力が他ユーザにとって干渉となる。例えば、図2のように、ユーザ2がユーザ1の隣接帯域を使用する場合には、ユーザ1の歪電力は、ユーザ2にとって干渉になる。
【0021】
このような信号帯域外への歪電力の拡がりを抑えるためには、送信電力増幅器のバックオフ値を大きくする必要がある。しかし、バックオフ値を大きくした場合には、送信電力増幅器のコストが増大すると共に、電力効率が著しく低下する。移動通信端末のように電池で動作させている場合には、消費電力が増大する。
【0022】
本発明の実施例では、隣接帯域への干渉を低減するため、周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する。例えば、隣接帯域が使用されている場合には、信号帯域外への歪電力の拡がりを低減するような非線形入出力変換特性を決定する。非線形入出力変換特性とは、入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との間の関係が非線形関数で表される特性のことを言う。この非線形関数は、出力信号の振幅の上限値(飽和出力)を定める。飽和出力のときの出力信号が送信電力増幅器で増幅されたときに送信電力増幅器の飽和電力を超えないようにすることで、送信電力増幅器で発生する歪電力を低減できる。
【0023】
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、入力信号の振幅が変換され、出力信号が送信電力増幅器で増幅される。或いは、決定された非線形入出力変換特性に基づいて、非線形入出力変換特性が互いに異なる複数の送信電力増幅器のうち1つが選択されてもよい。
【0024】
本発明の実施例について、図面を参照して更に詳細に説明する。
【0025】
<非線形入出力変換特性を用いた歪電力制御>
図3に、本発明の実施例に係る送信機10を示す。送信機10は、変調信号を増幅して送信する装置であり、移動通信システムの基地局に備えられてもよく、移動局に備えられてもよい。送信機10は、変調信号生成部101と、非線形入出力変換特性制御部103と、送信歪電力制御部105と、送信電力増幅部107とを有する。
【0026】
図4に、OFDMA方式で用いられる変調信号生成部101の例を示す。変調信号生成部101は、シリアルパラレル変換部(S/P)111と、シンボルマッピング部112と、符号化部113と、サブキャリア割当部114と、逆高速フーリエ変換部(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)115と、パラレルシリアル変換部(P/S)116と、ガードインターバル部(GI:Guard Interval)117とを有する。
【0027】
入力信号(データ信号)は、シリアルパラレル変換部111において、使用サブキャリア数に応じてマルチキャリア用のパラレル信号に変換される。パラレル信号は、シンボルマッピング部112において、指定された変調方式により決まる信号点にマッピングされる。更に、符号化部113において、指定された符号化の種類及び符号化率を用いて符号化される。次に、シンボルマッピング及び符号化された信号は、サブキャリア割当部114において、サブキャリアが割り当てられる。次に、割り当てられたサブキャリアの位置に相当するIFFT入力に、シンボルマッピング及び符号化された信号が入力される。これらの入力信号をIFFT部115により逆高速フーリエ変換することにより、OFDMA方式用変調信号が生成される。更に、OFDMA方式用変調信号は、パラレルシリアル変換部116においてシリアル変換され、ガードインターバル部117において、伝搬路におけるマルチパスフェージングの対策としてガードインターバルが付加される。ガードインターバル部117では、各送信シンボル後方の一部の信号をコピーし、それらをシンボルの先頭に挿入することにより、ガードインターバルが付加される。
【0028】
このようにして、システム帯域の一部を使用する変調信号が生成されてもよい。なお、OFDMA方式では、ユーザからの要求に応じて周波数帯域を割り当てるため、システム帯域の使用状況により、各ユーザの使用周波数帯域と帯域幅とが変動する。ユーザ数が少ない場合には、システム帯域上に空きが生じることもある。
【0029】
変調信号生成部101により生成された変調信号は、送信歪電力制御部105により送信電力増幅部107の入力前に信号変換される。送信歪電力制御部105は、非線形入出力変換特性制御部103で決定された非線形入出力変換特性を用いて変調信号の振幅を変換する。以下に詳細に説明するように、非線形入出力変換特性制御部103は、周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する。非線形入出力変換特性とは、入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との間の関係が非線形関数で表される特性のことを言う。この非線形関数は、出力信号の振幅の上限値(飽和出力)を定める。飽和出力のときの出力信号が送信電力増幅部107で増幅されたときに送信電力増幅部107の飽和電力を超えないようにすることで、送信電力増幅部107で発生する歪電力を低減できる。なお、線形入出力変換特性とは、入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との間の関係が線形関数で表される場合に相当する。従って、線形入出力変換特性では、入力信号の振幅値の増加と共に出力信号の振幅値が線形的に増加し、出力信号の振幅の上限値が存在しない。
【0030】
図5に、非線形入出力変換特性の例を示す。図5は、送信歪電力制御部105の入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との関係を示している。図5における出力振幅の1.0は、飽和出力を表しており、出力信号の振幅の上限値に相当する。また、入力振幅の1.0は、入力信号の振幅が線形入出力変換特性に従って変換される場合の飽和出力に対応する飽和入力を表している。
【0031】
非線形入出力変換特性の一例として、一定以上の振幅成分をカットするクリッピング(ハードクリッピング)がある。図5に示すように、クリッピングでは、飽和入力までは線形入出力変換特性により入力信号の振幅が変換される。入力信号が飽和入力より大きくなると、出力信号の振幅値は飽和出力の振幅値に等しくなる。例えば、非線形入出力変換特性は、以下の式(1)で表される。
【0032】
【数1】

ただし、Ainは入力信号の振幅値であり、Aoutは出力信号の振幅値である。また、A0は飽和出力における振幅値であり、pは非線形性を決定するパラメータである。なお、p=∞のときがクリッピングに相当する。図5には、クリッピングの他に2つの非線形入出力変換特性が示されており、式(1)のpが小さいほど飽和出力付近の変換特性がなだらかになる。具体的には、pが小さいほど、飽和出力付近で所定の入力信号の振幅値に対する出力信号の振幅値が小さくなる。典型的には、入力信号の振幅値の増加と共に出力信号の振幅値が増加するが、pが小さいほど、飽和入力のときの出力信号の振幅値が小さくなり、出力信号がほぼ飽和出力とみなせるときの入力信号の振幅値が大きくなる。
【0033】
図6に、送信歪電力制御部105において非線形入出力変換特性を用いて変換された出力信号のスペクトラムの概形を示す。図6に示すように、クリッピングでは信号帯域内の歪電力は比較的小さいが、信号帯域外に歪電力が拡がる。一方、飽和出力付近の変換特性をなだらかにした非線形入出力変換特性を用いた場合には、信号帯域内の歪電力は大きくなるが、信号帯域外に拡がる歪電力はクリッピングと比較して低減される。具体的には、式(1)においてpの値を小さくするほど、信号帯域内の歪電力は大きくなるが、信号帯域外に拡がる歪電力は小さくなる。このように、非線形入出力変換特性制御部103において入出力変換時の非線形性を制御することにより、信号帯域外に拡がる歪電力を制御できる。
【0034】
例えば、当該ユーザの隣接帯域が使用されている場合には、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域外への歪電力の拡がりがより小さくなるように、飽和出力付近の変換特性をなだらかにした非線形入出力変換特性を決定する。例えば、上記の式(1)においてpの値を小さくする。一方、当該ユーザの隣接帯域が使用されていない場合には、信号帯域内の歪電力を低減するため、クリッピング又はそれに近い非線形入出力変換特性を決定する。例えば、上記の式(1)において、pの値を大きくする。このように、非線形入出力変換特性制御部103は、周波数帯域の使用状況に応じて非線形入出力変換特性を決定する。
【0035】
図7Aに、システム帯域の使用状況の例(その1)を示す。例えば、ユーザ2のように、隣接する帯域が他のユーザ1及び3に使用されている場合には、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域外への歪電力の拡がりがより小さくなるようにpの値を小さくする。例えば、ユーザ4のように、隣接する帯域が他のユーザに使用されていない場合には、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域内の歪電力がより小さくなるようにpの値を大きくする。また、非線形入出力変換特性制御部103は、隣接する未使用の帯域の大きさが小さいほど、pの値を小さくして、信号帯域外への歪電力の拡がりを低減してもよい。逆に、非線形入出力変換特性制御部103は、隣接する未使用の帯域の大きさが大きいほど、pの値を大きくして、信号帯域内の歪電力を低減してもよい。
【0036】
図7Bに、システム帯域の使用状況の例(その2)を示す。例えば、互いに隣接する帯域をユーザ1及びユーザ2が使用している場合に、ユーザ2に隣接する帯域を新たにユーザ3に割り当てる必要が生じたことを想定する。このような場合、ユーザ2は既にユーザ1から歪電力による干渉を受けているため、ユーザ3から干渉を受けた場合、より大きな影響を受け、受信品質が劣化することになる。このため、非線形入出力変換特性制御部103は、ユーザに帯域を割り当てるときに、隣接する帯域の使用状況に加えて、隣接する帯域における干渉量を推定し、隣接する帯域の使用状況及び推定された干渉量に基づいて非線形入出力変換特性を制御してもよい。例えば、隣接する帯域が使用されており、この隣接帯域での干渉量が所定の閾値より大きいときに、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域外への歪電力の拡がりがより小さくなるようにpの値を小さくしてもよい。或いは、非線形入出力変換特性制御部103は、新たに帯域を割り当てたときに隣接帯域での干渉量が所定の閾値より小さくなるようにpの値を決定してもよい。このことにより、新たにユーザに帯域を割り当てるときに、既に帯域を割り当てられたユーザへの歪電力の影響を低減できる。
【0037】
図7Cに、システム帯域の使用状況の例(その3)を示す。例えば、携帯電話システムに代表されるセルラーシステムは、複数の基地局(BS)と移動局(MS)とで構成され、同一の周波数帯域を複数の基地局で使用する。この場合、他の基地局で使用している帯域への歪電力の影響も考慮する必要がある。例えば、ユーザ1が使用する帯域とユーザ2が使用する帯域との間に他基地局で使われている帯域が存在する場合、ユーザ1及びユーザ2と通信する基地局から見たときにユーザ1とユーザ2との間にある帯域は未使用である。しかし、この基地局内での周波数帯域の使用状況に応じてpの値を大きくして、信号帯域外への歪電力の拡がりを大きくすると、他基地局へ大きな干渉を与える恐れがある。このため、非線形入出力変換特性制御部103は、隣接する帯域の周辺基地局における使用状況に基づいて非線形入出力変換特性を制御してもよい。このことにより、周辺基地局で隣接帯域を使用するユーザへの歪電力の影響を低減できる。
【0038】
図7Dに、システム帯域の使用状況の例(その4)を示す。所定の周波数帯域が複数のシステムにより共用される周波数共用システムの例として、異なる優先度を有する複数のシステムが混在する環境が考えられる。例えば、所定の周波数帯域が優先システムと非優先システムとで共用されるシステムが考えられる。共用する周波数帯域内で優先システムが既に帯域を使用している場合、非優先システムは、共用する周波数帯域内で新たに帯域の使用を希望するときに、優先システムに与える影響を考慮する必要がある。例えば、優先システムのユーザ1及びユーザ2が一部のシステム帯域を使用している場合に、ユーザ2に隣接する帯域を新たに非優先システムのユーザに割り当てる必要が生じたことを想定する。このような場合、ユーザ2は既にユーザ1から歪電力による干渉を受けているため、非優先システムのユーザから干渉を受けた場合、より大きな影響を受け、受信品質が劣化することになる。このため、非優先システムの非線形入出力変換特性制御部103は、ユーザに帯域を割り当てるときに、隣接する帯域の使用状況に加えて、隣接する帯域で既にユーザが受けている干渉量を推定し、隣接する帯域の使用状況及び推定された干渉量に基づいて非線形入出力変換特性を制御してもよい。このことにより、新たにユーザに帯域を割り当てるときに、既に帯域を割り当てられたユーザへの歪電力の影響を低減できる。
【0039】
図7Eに、システム帯域の使用状況の例(その5)を示す。複数のシステムが周波数帯域を利用している場合、典型的には、隣接する他のシステムへの干渉は厳しく規制される。例えば、システム帯域の端に位置する帯域1のように、隣接する帯域に他システムが存在する場合には、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域外への歪電力の拡がりがより小さくなるようにpの値を小さくする。例えば、帯域2のように隣接する帯域に他システムが存在しない場合には、非線形入出力変換特性制御部103は、信号帯域内の歪電力がより小さくなるようにpの値を大きくする。また、非線形入出力変換特性制御部103は、変調信号の送信に使用される周波数帯域がシステム帯域の端に近いほど、pの値を小さくして、信号帯域外への歪電力の拡がりを低減してもよい。逆に、非線形入出力変換特性制御部103は、変調信号の送信に使用される周波数帯域がシステム帯域の端から離れるほど、pの値を大きくして、信号帯域内の歪電力を低減してもよい。
【0040】
非線形入出力変換特性制御部103は、基地局のスケジューラにより割り当てられた周波数帯域の情報を用いて周波数帯域の使用状況を把握してもよく、隣接する帯域の信号を検出して周波数帯域の使用状況を把握してもよい。
【0041】
送信歪電力制御部105は、非線形入出力変換特性制御部103により決定された非線形入出力変換特性を用いて変調信号を変換する。送信歪電力制御部105により変換された変調信号は、送信電力増幅部107で増幅されて送信される。
【0042】
典型的には、送信電力増幅部107は、出力信号の電力の上限値(飽和出力)を定める非線形入出力変換特性を有している。送信歪電力制御部105で用いられる非線形入出力変換特性の飽和出力を送信電力増幅部107の飽和出力以下にすることにより、送信電力増幅部107において発生する歪電力を低減できる。
【0043】
<送信機において変調方式及び符号化方式を制御する変形例>
図8に、送信機40において変調方式及び符号化方式を制御する変形例を示す。
【0044】
図6を参照して説明したように、非線形入出力特性制御部103が周波数帯域の使用状況に応じて非線形入出力変換特性を制御すると、信号帯域外への歪電力の拡がり(帯域外輻射)だけでなく、信号帯域内の歪電力も変化する。このため、変調信号の変調精度が劣化し、受信機における受信品質が劣化する可能性がある。
【0045】
典型的には、セルラーシステムでは、移動局(MS)の送信信号における変調方式と符号化方式は基地局側で決定される。なお、符号化方式は、符号化の種類及び符号化率を含む。しかし、上記のように、移動局の非線形入出力変換特性制御部103で非線形入出力変換特性を制御すると、基地局が認識している移動局の変調精度より、実際の移動局の送信信号の変調精度が劣化する可能性がある。
【0046】
このため、非線形入出力変換特性制御部103は、決定した非線形入出力変換特性から帯域内の歪電力を推定し、推定結果を変調信号生成部101に入力する。変調信号生成部101は、この推定結果に基づいて変調方式又は符号化方式を決定する。このことにより、移動局の非線形入出力変換特性制御部103で非線形入出力変換特性を制御したことに伴う変調精度の劣化及び受信品質の劣化を軽減できる。
【0047】
<複数の送信電力増幅部を切り替える変形例>
図9に、複数の送信電力増幅部を切り替える変形例を示す。図9の送信機20は、変調信号生成部201と、非線形入出力変換特性制御部203と、選択部(SW)205と、送信電力増幅部207−1〜207−Nとを有する。変調信号生成部201は、図4を参照して説明したように変調信号を生成してもよい。
【0048】
送信電力増幅部207−1〜207−Nは、送信電力増幅部の入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との間の関係が非線形関数で表される非線形入出力変換特性をそれぞれ有している。送信電力増幅部207−1〜207−Nの非線形入出力変換特性は互いに異なり、例えば、送信電力増幅部207−1は、上記の式(1)におけるp=3の特性を有し、送信電力増幅部207−2は、p=6の特性を有し、送信電力増幅部207−Nは、p=∞の特性を有してもよい。
【0049】
非線形入出力変換特性制御部203は、周波数帯域の使用状況に応じて送信電力増幅部207−1〜207−Nにおいて設定されている信号変換用の非線形入出力変換特性のうち1つを決定する。例えば、非線形入出力変換特性制御部203は、隣接する帯域が使用されている場合には、p=3の特性を決定してもよく、隣接する帯域が使用されていない場合には、p=∞の特性を決定してもよい。また、非線形入出力変換特性制御部203は、隣接する未使用の帯域の大きさに基づいてpの値を決定してもよい。別の例として、非線形入出力変換特性制御部203は、隣接帯域での干渉量を考慮してpの値を決定してもよく、隣接する帯域の周辺基地局における使用状況に基づいてpの値を決定してもよく、優先システムでの干渉量を考慮してpの値を決定してもよい。更に別の例として、非線形入出力変換特性制御部203は、隣接する帯域に他システムが存在する場合に、p=3の特性を選択してもよく、隣接する帯域に他システムが存在しない場合には、p=∞の特性を決定してもよい。また、非線形入出力変換特性制御部203は、システム帯域の端からの間隔に基づいてpの値を決定してもよい。
【0050】
選択部205は、決定された非線形入出力変換特性に基づいて、送信電力増幅部207−1〜207−Nのうち1つを選択し、変調信号生成部201により生成された変調信号を選択された送信電力増幅部に出力する。例えば、非線形入出力変換特性制御部203でp=3の特性が決定された場合、選択部205は、p=3の特性を有する送信電力増幅部207−1を選択してもよい。
【0051】
送信電力増幅部207−1〜207−Nは、変調信号を増幅して送信する。
【0052】
このように、互いに異なる非線形入出力変換特性を有する複数の送信電力増幅部207のうち1つを選択することにより、図3の送信機10と同様の効果が得られる。
【0053】
<プリディストーションを用いる変形例>
図10に、プリディストーションを用いる変形例を示す。プリディストーションとは、送信電力増幅器の非線形歪を補償する技術であり、送信電力増幅器の非線形歪と逆の特性で送信電力増幅器の入力信号を予め変換することにより、送信電力増幅器の非線形歪を補償する技術である。図10の送信機30は、変調信号生成部301と、非線形入出力変換特性制御部303と、プリディストーション部305と、送信電力増幅部307とを有する。変調信号生成部301は、図4を参照して説明したように変調信号を生成してもよい。
【0054】
典型的には、送信電力増幅部307は、送信電力増幅部307の入力信号の振幅値と出力信号の振幅値との間の関係が非線形関数で表される非線形入出力変換特性を有している。通常のプリディストーションでは、この非線形入出力変換特性の逆特性を用いて、送信電力増幅部307の入力信号を変換する。
【0055】
図11に、プリディストーションで用いられる非線形入出力変換特性の例を示す。プリディストーションで用いられる非線形入出力変換特性は、上記の式(1)の逆特性でもよい。この逆特性は、以下の式(2)で表される。
【0056】
【数2】

図10に示す送信機30では、送信機30の全体の入出力変換特性が、非線形入出力変換特性制御部303で決定された非線形入出力変換特性になるように、プリディストーション部305で非線形歪を補償する。具体的には、プリディストーション部305における非線形入出力変換特性と送信電力増幅部307における非線形入出力変換特性とを乗算した特性が、非線形入出力変換特性制御部303で決定された非線形入出力変換特性に等しくなるようにする。
【0057】
非線形入出力変換特性制御部303は、周波数帯域の使用状況に応じて送信機30の全体の入出力変換特性を決定する。例えば、非線形入出力変換特性制御部303は、隣接する帯域が使用されている場合には、送信機30の全体としてp=3の特性を決定してもよく、隣接する帯域が使用されていない場合には、送信機30の全体としてp=∞の特性を決定してもよい。また、非線形入出力変換特性制御部303は、隣接する未使用の帯域の大きさに基づいてpの値を決定してもよい。別の例として、非線形入出力変換特性制御部303は、隣接帯域での干渉量を考慮してpの値を決定してもよく、隣接する帯域の周辺基地局における使用状況に基づいてpの値を決定してもよく、優先システムでの干渉量を考慮してpの値を決定してもよい。更に別の例として、非線形入出力変換特性制御部303は、隣接する帯域に他システムが存在する場合に、送信機30の全体としてp=3の特性を選択してもよく、隣接する帯域に他システムが存在しない場合には、送信機30の全体としてp=∞の特性を決定してもよい。また、非線形入出力変換特性制御部303は、システム帯域の端からの間隔に基づいてpの値を決定してもよい。
【0058】
プリディストーション部305は、決定された非線形入出力変換特性に対応した出力信号が送信電力増幅部307から得られるように、プリディストーションで用いられる非線形入出力変換特性を決定し、プリディストーションにより非線形歪を補償する。
【0059】
送信電力増幅部207−1〜207−Nは、変調信号を増幅して送信する。
【0060】
このように、プリディストーションを用いても、図3の送信機10と同様の効果が得られる。
【0061】
<フィルタリングを用いる変形例>
図12に、フィルタリングを更に用いる変形例を示す。図12の送信機40は、変調信号生成部401と、非線形入出力変換特性制御部403と、送信歪電力制御部405と、フィルタリング部406と、送信電力増幅部407とを有する。変調信号生成部401は、図4を参照して説明したように変調信号を生成してもよい。
【0062】
非線形入出力変換特性制御部403は、図3を参照して説明したように、周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する。
【0063】
送信歪電力制御部405は、図3を参照して説明したように、非線形入出力変換特性制御部403により決定された非線形入出力変換特性を用いて変調信号を変換する。このとき、図6を参照して説明したように、送信歪電力制御部405の出力のスペクトラムは信号帯域外に拡がる。
【0064】
このため、フィルタリング部406は、信号帯域外に輻射される歪電力の全部又は一部を除去する。すなわち、信号の帯域を制限する。
【0065】
送信電力増幅部407は、フィルタリングされた信号を増幅して送信する。フィルタリング部406での帯域制限により、送信電力増幅部407の出力信号の信号帯域外への輻射が低減できる。
【0066】
図13に、送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用する変形例(その1)を示す。図13の送信機40は、複数の送信歪電力制御部405−1〜405−Nと、複数のフィルタリング部406−1〜406−Nとを有する。送信歪電力制御部405−2〜405−Nとフィルタリング部406−2〜406−Nとをまとめて送信歪電力制御・フィルタリング部405−2・406−2〜405−N・406−Nとして図示する。
【0067】
上記のようにフィルタリング部406で帯域が制限されると、送信電力増幅部407の入力での信号帯域外への輻射を低減できるが、信号帯域外への輻射成分を除去したことにより、ピーク電力が増大する可能性がある。ピーク電力が飽和電力より大きくなると、このピーク電力による信号帯域外への輻射が送信電力増幅部407の出力において発生する。このピーク電力の大きさによっては、フィルタリング部406による信号帯域外への輻射の低減効果が小さくなることがある。そこで、複数の送信歪電力制御部405−1〜405−N及び複数のフィルタリング部406−1〜406−Nにおいて送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用することにより、信号帯域外成分の除去とピーク電力の低減を両立できる。その結果、送信電力増幅部407の出力における信号帯域外への輻射電力が低減できる。
【0068】
図14に、送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用する変形例(その2)を示す。図14の送信機40は、繰り返し処理制御部409を更に有する。
【0069】
繰り返し処理制御部409は、信号帯域外への輻射成分が所望の電力以下になるように、送信歪電力制御の繰り返し回数及びフィルタリングの繰り返し回数を制御する。送信歪電力制御部405−1〜405−Nは、信号帯域外に輻射される歪電力を推定し、この推定結果を歪電力推定信号として繰り返し処理制御部409に入力する。例えば、信号歪電力制御部405−1〜405−Nは、ベースバンドで送信歪電力制御を処理している場合、信号歪電力制御部405−1〜405−Nの出力の周波数軸上の信号波形から、信号帯域外に輻射される歪電力を容易に推定できる。
【0070】
繰り返し処理制御部409は、歪電力推定信号を受け取り、信号帯域外に輻射される歪電力が所望の電力以下であるか否かを判定する。例えば、送信歪電力制御部405−2において信号帯域外に輻射される歪電力が所望の電力以下である場合、繰り返し処理制御部409は、フィルタリングを適用しないように、フィルタリング部406−2に指示する。更に、以降の送信歪電力制御及びフィルタリングを適用しないように、送信歪電力制御部405−3〜405−N及びフィルタリング部406−3〜406−Nに指示する。このように、繰り返し回数を制御することにより、フィルタリングに伴うピーク電力の発生を抑制でき、送信電力増幅部407の出力における信号帯域外への輻射電力が低減できる。
【0071】
<受信機の構成>
図15に、本発明の実施例に係る受信機50を示す。受信機50は、送信機から送信された信号を受信して復調する装置であり、移動通信システムの基地局に備えられてもよく、移動局に備えられてもよい。上記のように、飽和出力付近の変換特性がなだらかな非線形入出力変換特性を用いた場合に、信号帯域外への歪電力の拡がりを低減できるが、信号帯域内の歪電力が増大する。この結果、受信機における受信品質が劣化する恐れがある。受信機50は、送信機の非線形入出力変換特性制御部で決定された非線形入出力変換特性により発生する歪電力を除去する。ここでは、OFDMA方式の場合に、周波数軸上で歪電力を除去する受信機50について詳細に説明する。
【0072】
受信機50は、ガードインターバル(GI)除去部501と、シリアルパラレル変換部(S/P)503と、高速フーリエ変換部(FFT:Fast Fourier Transform)505と、サブキャリア選択部507と、チャネル推定部509と、受信信号復調部511と、変調信号生成部513と、送信歪電力生成部515と、等化部517と、受信信号再復調部519とを有する。
【0073】
まず、受信信号は、受信機50において復調される。例えば、OFDMA方式の受信信号は、ガードインターバル除去部501において、ガードインターバルが除去され、シリアルパラレル変換部において、パラレル変換される。これらの信号は、FFT部505において高速フーリエ変換され、サブキャリア選択部507において、受信機50のユーザが使用しているサブキャリアの受信信号のみが選択される。選択された受信信号は、受信信号復調部511において、サブキャリア毎に復調される。このときに、チャネル推定部509で推定されたチャネル推定値が用いられる。復調された信号に誤りが無ければ、受信機50は、歪電力を除去する必要はない。
【0074】
復調された信号に誤りがある場合、復調された信号は変調信号生成部513により再び変調される。図16に、変調信号生成部513の例を示す。変調信号生成部513は、シンボルマッピング部521と、符号化部523と、サブキャリア割当部525とを有する。復調された信号は、シンボルマッピング部521において、指定された変調方式により決まる信号点にマッピングされる。更に、符号化部523において、指定された符号化の種類及び符号化率を用いて符号化される。次に、シンボルマッピング及び符号化された信号は、サブキャリア割当部525において、受信機50のユーザが使用するサブキャリアに入力され、サブキャリアが割り当てられる。
【0075】
次に、送信歪電力生成部515は、送信機と同じ非線形入出力変換特性に基づいて、サブキャリアが割り当てられた信号の振幅を変換し、このときに発生する歪電力を算出する。図17に、送信歪電力生成部515の例を示す。送信歪電力生成部515は、逆高速フーリエ変換部(IFFT)531と、送信歪電力制御部533と、高速フーリエ変換部535と、サブキャリア選択部537とを有する。周波数軸上の信号は、逆高速フーリエ変換部531において、時間軸上の信号に変換され、送信歪電力制御部533において、送信機で用いられた非線形入出力変換特性と同じ非線形入出力変換特性を用いて、時間軸上の信号の振幅が変換される。送信歪電力制御部533において用いられる非線形入出力変換特性は、送信機で用いられる非線形入出力変換特性と同じものであり、送信機から送信される。受信機50は、送信機で用いられる非線形入出力変換特性を送信側非線形入出力変換特性情報として受信してもよい。送信歪電力制御部533により変換された信号は、高速フーリエ変換部535により周波数軸上の信号に変換される。この高速フーリエ変換部535の出力と元の周波数軸上の信号とを比較することにより、歪電力が算出される。具体的には、高速フーリエ変換部535の出力から元の周波数軸上の信号を減算することにより歪電力が算出される。次に、サブキャリア選択部537により、受信機50のユーザが使用しているサブキャリアの歪電力が選択される。
【0076】
以上の処理により生成された歪電力は、等化部517により、伝送チャネルにおけるチャネル変動に応じて変換される。この等化処理には、チャネル推定部509により推定されたチャネル推定値が用いられる。
【0077】
最後に、サブキャリア選択部507において選択されたサブキャリアの受信信号から、以上の処理により生成された歪電力が減算され、受信信号から歪電力が除去される。歪電力が除去された信号は、受信信号再復調部519において、サブキャリア毎に復調される。このように、受信機50において、送信機で発生した歪電力が除去され、この結果、受信機50における受信品質が改善できる。
【0078】
上記のように、受信機で用いられる非線形入出力変換特性は、時間的に変動する送信電力増幅部107、207、307、407の変換特性ではなく、送信機の非線形入出力変換特性制御部103、203、303、403で決定された非線形入出力変換特性である。例えば、送信機で式(1)の非線形入出力変換特性が用いられる場合、送信機がpの値を受信機に送信側非線形入出力変換特性情報として送信してもよい。受信機50は、送信歪電力生成部515において式(1)を用いて歪電力を生成することにより、受信信号から歪電力を除去できる。
【0079】
<送信歪電力制御とフィルタリングとが繰り返し適用される場合の変形例>
図18に、送信歪電力制御とフィルタリングとが繰り返し適用される場合の受信機60の変形例を示す。図13を参照して説明したように、送信機では、送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用することにより、信号帯域外成分の除去とピーク電力の低減を両立できる。受信機60においても、送信機側の繰り返し処理により発生する歪電力を除去することで、受信品質が改善できる。
【0080】
図18の受信機60は、ガードインターバル(GI)除去部601と、シリアルパラレル変換部(S/P)603と、高速フーリエ変換部(FFT:Fast Fourier Transform)605と、サブキャリア選択部607と、チャネル推定部609と、受信信号復調部611と、変調信号生成部613と、複数の送信歪電力生成部615−1〜615−Nと、加算部616と、等化部617と、受信信号再復調部619とを有する。
【0081】
ガードインターバル除去部601から受信信号復調部611までの処理は、図15の受信機と同じであるため、説明を省略する。
【0082】
送信歪電力生成部615−1〜615−Nのそれぞれは、送信機と同じ非線形入出力変換特性に基づいて、サブキャリアが割り当てられた信号の振幅を変換し、更に、フィルタリングを適用したときに発生する歪電力を算出する。図19に、送信歪電力生成部615の例を示す。送信歪電力生成部615は、逆高速フーリエ変換部(IFFT)631と、送信歪電力制御部633と、高速フーリエ変換部635と、フィルタリング部636と、サブキャリア選択部637とを有する。
【0083】
図17の送信歪電力生成部515と同様に、周波数軸上の信号は、逆高速フーリエ変換部631において、時間軸上の信号に変換され、送信歪電力制御部633において、送信機で用いられた非線形入出力変換特性と同じ非線形入出力変換特性を用いて、時間軸上の信号の振幅が変換される。送信歪電力制御部633により変換された信号は、高速フーリエ変換部635により周波数軸上の信号に変換される。更に、周波数軸上の信号は、フィルタリング部636によりフィルタリングされる。フィルタリング部636は、送信機で用いられたものと同じフィルタリングを適用する。このフィルタリング部636の出力と元の周波数軸上の信号とを比較することにより、歪電力が算出される。具体的には、フィルタリング部636の出力から元の周波数軸上の信号を減算することにより歪電力が算出される。次に、サブキャリア選択部637により、受信機60のユーザが使用しているサブキャリアの歪電力が選択される。
【0084】
それぞれの送信歪電力生成部615−1〜615−Nで生成された歪電力は、加算部616において加算され、等化部617により、伝送チャネルにおけるチャネル変動に応じて変換される。最後に、サブキャリア選択部607において選択されたサブキャリアの受信信号から、以上の処理により生成された歪電力が減算され、受信信号から歪電力が除去される。歪電力が除去された信号は、受信信号再復調部619において、サブキャリア毎に復調される。このように、受信機60において、送信機側の繰り返し処理により発生する歪電力を除去できる。
【0085】
なお、受信機60での繰り返し回数は、送信機で発生する歪電力を精度良く再生成する観点から、送信機と同じ回数に設定することが望ましい。例えば、送信機でフィルタリングが1回適用される場合には、受信機60での繰り返し回数は1回でもよい。図14の送信機40のように繰り返し回数が制御される場合、受信機60は、送信機で用いられる非線形入出力変換特性と共に、繰り返し回数を送信機から受信してもよい。ただし、受信機60の演算量を低減するため、送信機より少ない回数に設定されてもよい。
【0086】
<送信歪電力除去を繰り返し適用する変形例>
図20に、送信歪電力除去を繰り返し適用する変形例を示す。図20の受信機70は、ガードインターバル(GI)除去部701と、シリアルパラレル変換部(S/P)703と、高速フーリエ変換部(FFT:Fast Fourier Transform)705と、サブキャリア選択部707と、チャネル推定部709と、複数の受信信号復調部711−1〜711−Nと、複数の変調信号生成部713−1〜713−Nと、複数の送信歪電力生成部715−1〜715−Nと、複数の等化部717−1〜717−Nと、受信信号再復調部719とを有する。受信信号復調部711−1〜711−Nと、変調信号生成部713−1〜713−Nと、送信歪電力生成部715−1〜715−Nと、等化部717−1〜717−Nとをまとめて送信歪電力除去部710−1〜710−Nとして図示する。
【0087】
ガードインターバル除去部701からサブキャリア選択部707までの処理は、図15の受信機と同じであるため、説明を省略する。また、送信歪電力除去部710−1〜710−Nのそれぞれの処理も、図15の受信信号復調部511から等化部517の処理と同じである。このように、受信機70では、送信歪電力を除去した後に、再度復調して送信歪電力を生成することで、送信歪電力除去を繰り返し適用する。
【0088】
歪電力が繰り返し除去された信号は、受信信号再復調部719において、サブキャリア毎に復調される。このように、送信歪電力を除去した後に再度復調することにより、復調後の受信品質が改善するため、更に、この復調後の信号を用いて送信歪電力を生成することにより、精度良く送信歪電力を再生成できる。
【0089】
なお、送信機で送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用している場合には、送信歪電力除去部710−1〜710−Nにおいて、図18に示すような送信電力生成部が繰り返されてもよい。
【0090】
以上の説明では、特にOFDMA方式の送信機及び受信機に関する実施例について説明したが、本発明は、所定の周波数帯域が複数のユーザ又は複数のシステムにより共用される周波数共用システムに適用可能である。
【0091】
上記のように、本発明の実施例によれば、所定の周波数帯域が複数のユーザ又は複数のシステムにより共用されるシステムにおいて、信号の送信に使用される周波数帯域の隣接帯域への干渉を低減できる。例えば、信号の送信に使用される周波数帯域の隣接帯域が使用されている場合には、非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403で非線形入出力変換特性を制御して信号帯域外の輻射電力を減少させることにより、隣接帯域への干渉を低減できる。
【0092】
更に、非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403において、信号の送信に使用される周波数帯域の隣接帯域の干渉状況を更に考慮することにより、隣接帯域を使用するユーザへの歪電力の影響を低減できる。
【0093】
また、非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403において、自基地局だけでなく、周辺基地局における周波数帯域の使用状況を考慮することにより、周辺基地局で隣接帯域を使用するユーザへの歪電力を低減できる。
【0094】
また、非線形入出力変換特性制御部103で決定した非線形入出力変換特性から帯域内の歪電力を推定し、変調信号生成部101において、推定結果に基づいて変調方式又は符号化方式を決定することにより、変調精度の劣化及び受信品質の劣化を軽減できる。
【0095】
このとき、送信歪電力制御部105で用いられる非線形入出力変換特性の飽和出力を送信電力増幅部107の飽和出力以下にすることにより、送信電力増幅部107において発生する歪電力を低減できる。
【0096】
一方、システム帯域内の周波数利用率が低く、各ユーザへの帯域が十分に確保できる場合には、非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403で非線形入出力変換特性を制御して信号帯域内の歪電力を減少させることにより、受信機での受信品質を維持できる。
【0097】
また、システム帯域の端に位置する周波数帯域において、非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403で非線形入出力変換特性を制御して信号帯域外の輻射電力を減少させることにより、他システムへの干渉を低減できる。
【0098】
このような効果は、非線形入出力変換特性が互いに異なる複数の送信電力増幅部207−1〜207を切り替えても実現でき、また、プリディストーション部305を用いる場合でも実現できる。
【0099】
また、送信機40にフィルタリング部406を備えることにより、送信電力増幅部407の出力信号の信号帯域外への輻射を低減できる。
【0100】
更に、送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用することにより、送信電力増幅部407の出力での信号帯域外への輻射を低減できると共に、ピーク電力を低減できる。送信歪電力制御とフィルタリングとを繰り返し適用する場合、繰り返し処理制御部409において、繰り返し回数を制御することにより、フィルタリングに伴うピーク電力の発生を抑制できる。
【0101】
受信機50においては、送信機の非線形入出力変換特性制御部103、203、303及び403で決定された非線形入出力変換特性を用いて送信側で発生した歪電力を除去することにより、受信品質を向上できる。また、送信機が式(1)の非線形入出力変換特性を用いる場合、受信機は、送信機からpの値を受信するだけで、歪電力を除去できる。
【0102】
更に、送信機で送信歪電力制御とフィルタリングとが繰り返し適用された場合に、送信機の繰り返し処理により発生する歪電力を除去することで、受信品質を向上できる。
【0103】
また、受信機70において、送信歪電力除去を繰り返し適用することで、受信品質を向上できる。
【0104】
なお、本発明は、上記の実施例及び変形例に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々の変更及び応用が可能である。また、上記の実施例及び変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 送信機
101 変調信号生成部
103 非線形入出力変換特性制御部
105 送信歪電力制御部
107 送信電力増幅部
20 送信機
201 変調信号生成部
203 非線形入出力変換特性制御部
205 選択部
207 送信電力増幅部
30 送信機
301 変調信号生成部
303 非線形入出力変換特性制御部
305 プリディストーション部
307 送信電力増幅部
40 送信機
401 変調信号生成部
403 非線形入出力変換特性制御部
405 送信歪電力制御部
406 フィルタリング部
407 送信電力増幅部
409 繰り返し処理制御部
50 受信機
501 ガードインターバル除去部
503 シリアルパラレル変換部
505 高速フーリエ変換部
507 サブキャリア選択部
509 チャネル推定部
511 受信信号復調部
513 変調信号生成部
515 送信歪電力生成部
517 等化部
519 受信信号再復調部
60 受信機
601 ガードインターバル除去部
603 シリアルパラレル変換部
605 高速フーリエ変換部
607 サブキャリア選択部
609 チャネル推定部
611 受信信号復調部
613 変調信号生成部
615 送信歪電力生成部
616 加算部
617 等化部
619 受信信号再復調部
70 受信機
701 ガードインターバル除去部
703 シリアルパラレル変換部
705 高速フーリエ変換部
707 サブキャリア選択部
709 チャネル推定部
710 送信歪電力除去部
711 受信信号復調部
713 変調信号生成部
715 送信歪電力生成部
717 等化部
719 受信信号再復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、信号の振幅を変換する振幅制御部;及び
振幅が変換された信号を電力増幅する送信電力増幅部;
を有する送信機。
【請求項2】
前記非線形入出力変換特性制御部は、信号の送信に使用される周波数帯域の隣接帯域が使用されている場合に、飽和出力付近の変換特性がなだらかな非線形入出力変換特性を決定する、請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記非線形入出力変換特性制御部は、信号の送信に使用される周波数帯域の隣接帯域における干渉量が所定の閾値より大きい場合に、飽和出力付近の変換特性がなだらかな非線形入出力変換特性を決定する、請求項2に記載の送信機。
【請求項4】
前記非線形入出力変換特性制御部は、信号の送信に使用される周波数帯域がシステム帯域の端に位置する場合に、飽和出力付近の変換特性がなだらかな非線形入出力変換特性を決定する、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の送信機。
【請求項5】
前記非線形入出力変換特性制御部は、
【数3】

で表される非線形入出力変換特性を決定する、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の送信機。
【請求項6】
前記振幅制御部は、決定された非線形入出力変換特性に対応した信号出力が前記送信電力増幅部から得られるように、プリディストーションにより非線形歪を補償する、請求項1に記載の送信機。
【請求項7】
振幅が変換された信号の帯域を制限するフィルタリング部;
を更に有する、請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の送信機。
【請求項8】
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定する非線形入出力変換特性制御部;
互いに異なる非線形入出力変換特性を有する複数の送信電力増幅部;及び
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、前記複数の送信電力増幅部のうち1つを選択する選択部;
を有する送信機。
【請求項9】
周波数帯域の使用状況に応じて送信機で決定された信号変換用の非線形入出力変換特性を受信する非線形入出力変換特性受信部;
受信信号を復調する受信信号復調部;
復調された信号を変調する変調信号生成部;
受信した非線形入出力変換特性に基づいて、変調された信号の振幅を変換し、歪電力を生成する送信歪電力生成部;
生成された歪電力を受信信号から減算する減算部;及び
歪信号が減算された受信信号を再び復調する受信信号再復調部;
を有する受信機。
【請求項10】
前記送信歪電力生成部は、振幅が変換された信号の帯域を制限し、歪電力を生成する、請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
前記送信歪電力生成部は、歪電力の生成を繰り返し、
前記減算部は、繰り返し生成された歪電力を受信信号から減算する、請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
前記送信歪電力生成部及び前記減算部は、歪電力の生成及び生成された歪電力の受信信号からの減算を繰り返す、請求項9に記載の受信機。
【請求項13】
送信機における電力増幅方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定するステップ;
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、信号の振幅を変換するステップ;及び
振幅が変換された信号を電力増幅するステップ;
を有する電力増幅方法。
【請求項14】
送信機における電力増幅方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて信号変換用の非線形入出力変換特性を決定するステップ;及び
決定された非線形入出力変換特性に基づいて、非線形入出力変換特性が互いに異なる複数の送信電力増幅部のうち1つを選択するステップ;
を有する電力増幅方法。
【請求項15】
受信機における信号復調方法であって:
周波数帯域の使用状況に応じて送信機で決定された信号変換用の非線形入出力変換特性を受信するステップ;
受信信号を復調するステップ;
復調された信号を変調するステップ;
受信した非線形入出力変換特性に基づいて、変調された信号の振幅を変換し、歪電力を生成するステップ;
生成された歪電力を受信信号から減算するステップ;及び
歪信号が減算された受信信号を再び復調するステップ;
を有する信号復調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−206385(P2010−206385A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48093(P2009−48093)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】