説明

送信機、DSTBC符号器及びDSTBC符号器の符号化方法

【課題】DSTBC方式により信号を送信する送信機で、効率的に通信を行う。
【解決手段】DSTBC符号器が、入力ビット系列に対応した番号及び該当する時刻より1所定時刻前の状態番号を入力値とするとともに該当する時刻の状態番号を出力値とする状態遷移テーブル(13)と、状態遷移テーブルから出力される状態番号を入力値とするとともにシンボルインデックスを出力値とする状態−シンボルインデックステーブル(15)と、状態−シンボルインデックステーブルから出力されるシンボルインデックスを入力値とするとともにシンボル値を出力値とするシンボルインデックス−シンボル値テーブル(16−1〜16−4)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動時空間符号化(DSTBC:Differential Space−Time Block Coding)方式により効率的に通信を行う送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、時空間符号化(STBC:Space−Time Block Coding)方式により通信する技術について検討等されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEICE TRANSACTIONS on Communications、VOL.E92−B、NO.6、JUNE 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、STBC方式では通信上で不十分な点もあり、更なる開発が要求されていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、DSTBC方式により信号を送信する送信機において、次のような構成とした。
すなわち、DSTBC符号器が、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力するテーブルを1つ以上含む。
従って、テーブル化した部分について演算の負荷を低減させることなどができ、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
【0006】
本発明では、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、前記DSTBC符号器が、状態遷移テーブルと、状態−シンボルインデックステーブルと、シンボルインデックス−シンボル値テーブルと、を含む。
前記状態遷移テーブルは、入力ビット系列に対応した番号及び該当する時刻より1所定時刻前の状態番号を入力値とするとともに該当する時刻の状態番号を出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力する。
前記状態−シンボルインデックステーブルは、前記状態遷移テーブルから出力される状態番号を入力値とするとともにシンボルインデックスを出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力する。
シンボルインデックス−シンボル値テーブルは、前記状態−シンボルインデックステーブルから出力されるシンボルインデックスを入力値とするとともにシンボル値を出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力する。
【0007】
従って、これらのテーブル化した部分について演算の負荷を低減させることなどができ、DSTBC符号器について全体的に効率化を図って、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
ここで、時刻としては、任意の単位の時刻が用いられてもよい。
また、1所定時刻としては、例えば、適宜設定される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明に係る送信機によると、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る送信機の構成例を示す図である。
【図2】シンボル点の配置の一例を示す図である。
【図3】シンボルインデックス−シンボル値テーブルの内容の一例を示す図である。
【図4】状態−シンボルインデックステーブルの内容の一例を示す図である。
【図5】状態遷移テーブルの内容の一例を示す図である。
【図6】DSTBCを適用した無線通信システムの送信機の構成例及び受信機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
デジタル無線通信において、周波数利用効率を高める技術として、複数の送受信アンテナを用いて空間多重伝送を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術がある。MIMO技術の一つであるSTBCは、送信アンテナ毎に2シンボル間での適切な信号配置を行うことによって、送信ダイバーシチ効果を高めて通信品質の向上(ビット誤り率の低減)を図る技術である。
【0011】
STBCでは、受信機においてN本の送信アンテナ、M本の受信アンテナ間のチャネル応答行列(M×Nの大きさを持つ)を求める必要があり、送信信号にパイロット信号と呼ばれる既知シンボル系列を挿入し、これに対する受信信号からチャネル応答行列を推定する手法が一般的にとられる。しかしながら、狭帯域信号による移動無線システム、或いは高速移動に対応するシステムでは、相対的にチャネル応答行列の時間に対する変動が激しくなり、これを正しく推定するためには多数のパイロット信号を配置する必要があり、伝送効率を劣化させてしまうという問題がある。
STBCの応用技術であるDSTBCは、このような問題の対策技術であり、チャネル応答行列の推定を必要としないことが利点である。
【0012】
(本発明の基本となる構成例の説明)
以下で、デジタル無線伝送においてDSTBC方式を適用したシステムについて説明する。
図6には、DSTBCを適用した無線通信システムの送信機の構成例及び受信機の構成例を示してある。一例として、送信機は基地局装置に設けられ、受信機は移動局装置に設けられ、送信機から受信機へ信号を無線により通信する。
本例では、基本となる変調方式を4値PSKであるQPSK(Quadrature Phase Shit Keying)として、変復調動作を説明する。
【0013】
本例の送信機は、送信ビット入力端子101、S/P(シリアル/パラレル)変換器からなるS/P変換部111、2つのQPSKマッピング部(シンボルマッピング部の一例)112−1、112−2、空間変換部(空間変換器)113、2つのメモリ114−1、114−2、STBC符号化部115、2つの送信RF(Radio Frequency)部116−1、116−2、2つの送信アンテナ117−1、117−2を備えている。本例では、空間変換部113、2つのメモリ114−1、114−2、STBC符号化部115からDSTBC符号器が構成されている。
本例の受信機は、受信アンテナ201、受信RF部202、STBC復号部203、2つの判定部(判定器)204−1、204−2、P/S(パラレル/シリアル)変換器からなるP/S変換部205、ビット出力端子211を備えている。
【0014】
本例の送信機における動作の一例を示す。
送信ビット入力端子101から入力されるビット系列bはS/P変換部111によって、時刻nにおいて4ビットb4n、b4n+1、b4n+2、b4n+3のパラレル出力となる。この内の前半の2ビットであるb4n、b4n+1は第1のQPSKマッピング部112−1に入力され、第1のQPSKマッピング部112−1はQPSKの複素シンボルx2nを空間変換部113へ出力する。一方、後半の2ビットであるb4n+2、b4n+3は第2のQPSKマッピング部112−2に入力され、第2のQPSKマッピング部112−2はQPSKの複素シンボルx2n+1を空間変換部113へ出力する。
【0015】
空間変換部113からの出力であるs2n、s2n+1は、STBC符号化部115に入力されるとともに、それぞれ、第1のメモリ114−1、第2のメモリ114−2に入力されて遅延させられて空間変換部113に入力される。
空間変換部113への入力は、2つのQPSKマッピング部112−1、112−2からの出力x2n、x2n+1と、時刻n−1での空間変換部113からの出力を保持している2つのメモリ114−1、114−2からの出力s2n−2、s2n−1となる。空間変換部113は、これらを入力として、(式1)の演算を行って、その結果s2n、s2n+1を出力する。
なお、*は複素共役を示す。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、(式2)に示される変換行列M2nはユニタリ行列である必要があり、そのためには、2つのメモリ(レジスタ)114−1、114−2の初期値s−2、s−1が(式3)を満たし、且つ、2つのQPSKマッピング部112−1、112−2からの出力x2n、x2n+1が(式4)を満たすことが必要である。
【0018】
【数2】

【数3】

【数4】

【0019】
STBC符号化部115は、空間変換部113からの出力s2n、s2n+1を入力とし、例えば従来と同様なSTBC符号化を行い、(式5)で表現される値を送信RF部116−1、116−2へ出力する。
ここで、(式5)において、p行q列の要素はp番目(本例では、p=1、2)のアンテナからq番目(本例では、q=1、2)に出力される信号を表す。
具体的には、信号s2n、−s2n+1が第1の送信RF部116−1を経て、第1の送信アンテナ117−1から無線により送信出力され、また、信号s2n+1、s2nが第2の送信RF部116−2を経て、第2の送信アンテナ117−2から無線により送信出力される。
【0020】
【数5】

【0021】
本例の受信機における動作の一例を示す。
本例では、説明を簡易化するために、受信アンテナが1本であるとして説明する。
また、第1の送信アンテナ117−1、第2の送信アンテナ117−2のそれぞれと受信アンテナ201との間のチャネル応答を各々h、hとする。
【0022】
受信アンテナ201で受信された信号は、受信RF部202において適切な増幅、周波数変換等が行われ、ベースバンド信号r2n、r2n+1となってSTBC復号部203に入力される。
STBC復号部203では、入力信号について、DSTBCに対する復号を行い、送信信号x2n、x2n+1に対する復号信号y2n、y2n+1を得て、復号信号y2nを第1の判定部204−1へ出力し、復号信号y2n+1を第2の判定部204−2へ出力する。
具体的には、STBC復号部203では、受信信号r2n−2、r2n−1、r2n、r2n+1を用いて、(式6)の計算を行う。ここで、(式6)にチャネル応答h、hが含まれていないことがDSTBCの特徴である。
【0023】
【数6】

【0024】
こうして得られた復号信号y2n、y2n+1は、各判定部204−1、204−2において硬判定或いは軟判定が行われ、その結果について2ビット分ずつP/S変換部205へ送られる。そして、P/S変換部205を経て受信ビット系列b’がビット出力端子211から出力される。
【0025】
以上に述べたDSTBC方式では、例えば、受信部において雑音成分を増大させる差動処理を含むため、従来のSTBCに比べるとビット誤り率の劣化が見られるものの、上述のようにチャネル応答推定が不必要であり、特に、狭帯域移動体通信に効果的であると期待される。
【0026】
(上記した基本となる構成例についての課題の説明)
図6に示されるような送信機では、送信機内のDSTBC符号器に関して、(式1)の各要素は複素数であり、実現にあたっては16回の乗算が必要となる。また、この構成は逐次帰還型であり、特に固定小数点演算により実現する場合には、演算の繰り返しによりnが増えるにつれて量子化誤差が蓄積する可能性がある。更に、送信ビット系列が明らかであっても、実際の送信信号を推定するためには実際に(式1)による演算を繰り返す他は手段が無いため、送信信号に対する見通しを立てることが困難であるという問題があった。
そこで、本実施例では、このような課題に鑑みて、例えば、送信機における符号化に係る演算を削減するとともに量子化誤差の影響を低減し、且つ送信信号に対する見通しを容易にする符号化の実装構成を提供することを目的とする。
【実施例】
【0027】
図1には、本発明の一実施例に係るDSTBCを適用した無線通信システムの送信機の構成例を示してある。本例では、基本となる変調方式を4値PSKであるQPSKとして、変復調動作を説明する。
本例の送信機は、送信ビット入力端子1、S/P変換部11、2進−10進変換器12、状態遷移テーブルを有する状態遷移テーブル部13、メモリ14、状態−シンボルインデックステーブルを有する状態−シンボルインデックステーブル部15、シンボルインデックス−シンボル値テーブルを有する4つのシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1〜16−4、2つの切替器17−1、17−2、2つの送信RF部18−1、18−2、2つの送信アンテナ19−1、19−2を備えている。
【0028】
本例では、2進−10進変換器12、状態遷移テーブルを有する状態遷移テーブル部13、メモリ14、状態−シンボルインデックステーブルを有する状態−シンボルインデックステーブル部15、シンボルインデックス−シンボル値テーブルを有する4つのシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1〜16−4、2つの切替器17−1、17−2からDSTBC符号器が構成されている。
【0029】
本例の送信機における動作の一例を示す。
送信ビット入力端子1から入力されるビット系列bはS/P変換部11によって、時刻2nにおいて4ビットb4n、b4n+1、b4n+2、b4n+3のパラレル出力となる。
2進−10進変換器12では、(式7)の計算により、S/P変換部11からの4ビット毎の入力系列に対する番号付けを行い、得られた番号B2nを状態遷移テーブル部13へ出力する。本例では、番号B2nは、0から15の整数となる。
【0030】
【数7】

【0031】
状態遷移テーブル部13からの出力であるQ2nは、状態−シンボルインデックステーブル部15に入力されるとともに、メモリ14に入力されて遅延させられて状態遷移テーブル部13に入力される。
状態遷移テーブル部13は、2進−10進変換器12からの番号B2nと、時刻2(n−1)の状態番号Q2(n−1)を保持しているメモリ(状態メモリ)14からの出力を入力とし、状態遷移テーブルの内容に基づいて、これらの入力から定められる時刻2nの状態番号Q2nを出力する。この状態番号Q2nは、メモリ14に記憶(記録)されるとともに、状態−シンボルインデックステーブル部15へ送られる。
【0032】
状態−シンボルインデックステーブル部15は、状態−シンボルインデックステーブルの内容に基づいて、入力された状態番号Q2nに対応する送信シンボルの番号(シンボルインデックス)を出力する。ここで、状態−シンボルインデックステーブルは、第1の送信アンテナ19−1から時刻2n及び2n+1に送信する信号に関するシンボルインデックスI11(Q2n)、I12(Q2n)の情報を含むとともに、第2の送信アンテナ19−2から時刻2n及び2n+1に送信する信号に関するシンボルインデックスI21(Q2n)、I22(Q2n)の情報を含み、合計で4つのシンボルインデックスが出力される。
【0033】
具体的には、状態−シンボルインデックステーブル部15から第1のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1へI11(Q2n)が出力され、状態−シンボルインデックステーブル部15から第2のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−2へI12(Q2n)が出力され、状態−シンボルインデックステーブル部15から第3のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−3へI21(Q2n)が出力され、状態−シンボルインデックステーブル部15から第4のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−4へI22(Q2n)が出力される。
【0034】
各シンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1〜16−4は、同一の内容のシンボルインデックス−シンボル値テーブルを有しており、シンボルインデックス−シンボル値テーブルの内容に基づいて、状態−シンボルインデックステーブル部15から入力されたシンボルインデックスI11(Q2n)、I12(Q2n)、I21(Q2n)、I22(Q2n)をそれに対応するシンボル値(複素数)へ置き換えて出力する。
【0035】
具体的には、第1のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1はシンボル値s2nを第1の切替器17−1の端子(a)側へ出力し、第2のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−2はシンボル値−s2n+1を第1の切替器17−1の端子(b)側へ出力し、また、第3のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−3はシンボル値s2n+1を第2の切替器17−2の端子(a)側へ出力し、第4のシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−4はシンボル値s2nを第2の切替器17−2の端子(b)側へ出力する。
【0036】
各切替器17−1、17−2は、時刻に応じて入力を切り替えるものであり、本例では、時刻2nにおいて入力を端子(a)へ切り替え、時刻2n+1において入力を端子(b)へ切り替える。
具体的には、第1の切替器17−1は、時刻2nにおいて入力を端子(a)へ切り替えることで、シンボル値s2nを第1の送信RF部18−1へ出力し、時刻2n+1において入力を端子(b)へ切り替えることで、シンボル値−s2n+1を第1の送信RF部18−1へ出力する。また、第2の切替器17−2は、時刻2nにおいて入力を端子(a)へ切り替えることで、シンボル値s2n+1を第2の送信RF部18−2へ出力し、時刻2n+1において入力を端子(b)へ切り替えることで、シンボル値s2nを第2の送信RF部18−2へ出力する。
【0037】
第1の送信RF部18−1は、第1の切替器17−1から入力されたシンボル値について所定の処理を行って、その結果の信号を第1の送信アンテナ19−1へ出力する。
第2の送信RF部18−2は、第2の切替器17−2から入力されたシンボル値について所定の処理を行って、その結果の信号を第2の送信アンテナ19−2へ出力する。
第1の送信アンテナ19−1は、第1の送信RF部18−1からの信号を無線により送信出力する。
第2の送信アンテナ19−2は、第2の送信RF部18−2からの信号を無線により送信出力する。
【0038】
次に、上記した状態の定義方法やテーブル等の具体的な構成方法について説明する。
各テーブルの内容或いは状態の総数などは、特に、図6に示されるメモリ114−1、114−2の初期値s−2、s−1に依存する。一例として、メモリ114−1、114−2の初期値s−2、s−1を(式8)とする。ここで、(式8)において、j=−1であり、係数である「/ルート6」は(式3)を満足させるための係数である。
【0039】
【数8】

【0040】
この場合、図6に示される空間変換部113から出力されるs2n及びs2n+1は、複素平面上において、図2に示されるように20点の配置に集約される。
図2には、シンボル点の配置の一例を示してある。横軸は実数部分(Re)を表し、縦軸は虚数部分(Im)を表す。
【0041】
本例では、図2に示される各点に対して、図2中に示されるような番号付けを行う。
図3の表には、図2に示される各点の番号(シンボルインデックス)と複素平面上の値(出力値zであるシンボル値)との関係の一例を示してあり、この関係の内容はシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1〜16−4のシンボルインデックス−シンボル値テーブルの内容に相当する。
【0042】
本例の場合には、s2n及びs2n+1は各々20通りのパタンをとることが可能であり、その組み合わせは全部で400通りとなるが、実際には(式9)に示される制約がある。
【0043】
【数9】

【0044】
これに適合する組み合わせの数は400通りの中の96通りである。更に、s2n及びs2n+1の初期値をこの96通りの中から一つ定めると、実際に生成される組み合わせは24通りとなる。そこで、この24通りの組み合わせを状態として定義する。具体的には、図4の表のように定める。
図4の表には、状態番号Q2nと4つのシンボルインデックスI11(Q2n)、I12(Q2n)、I21(Q2n)、I22(Q2n)との関係の一例を示してあり、この関係の内容は状態−シンボルインデックステーブル部15の状態−シンボルインデックステーブルの内容に相当する。
【0045】
ここで、時刻2nにおける第1の送信アンテナ19−1及び第2の送信アンテナ19−2からの送信出力s2n及びs2n+1が定まると、時刻2n+1における第1の送信アンテナ19−1及び第2の送信アンテナ19−2からの送信出力−s2n+1及びs2nは一義に定まる。
例えば、(式8)の初期値はシンボルインデックス(1、13)に対応し、図4において状態番号1に定義されている。
【0046】
このように定義した状態において、1所定時刻前の時刻2(n−1)の状態番号Q2(n−1)から時刻2nの状態番号Q2nへの遷移を、入力されるビット系列番号B2n(=0、1、2、・・・、15)をパラメータとしてまとめると、図5の表に示される状態遷移テーブルの内容が生成される。
図5の表には、時刻2nに対して1所定時刻前の状態番号Q2(n−1)と、入力ビット系列番号B2nと、これらの交わるところにある時刻2nにおける状態番号Q2nの関係の一例を示してあり、この関係の内容は状態遷移テーブル部13の状態遷移テーブルの内容に相当する。
図5に示される状態遷移テーブルの内容では、1所定時刻前の状態番号Q2(n−1)がpである場合に入力されるビット系列番号B2nがqであるときに遷移する先の状態番号Q2nをp行q列に記したものとなっている。
【0047】
本例のような構成をとることにより、DSTBCの符号器において、例えば、複素数の行列演算を回避することにより実装負荷を軽減するとともに、単純な状態遷移ブロックの適用により符号器として見通しのよい構成をとることが可能となる。
【0048】
以上のように、本例では、DSTBCを使用する変調器を有する送信機では、送信ビット系列のS/P変換部11と、1所定時刻前の状態と送信ビット系列との組み合わせを該当する時刻の状態に対応させる状態遷移テーブル部13と、1所定時刻前の状態の番号を保持するメモリ14と、状態の番号に対応するシンボル番号(シンボルインデックス)を格納した状態−シンボルインデックステーブル部15と、シンボルインデックスに対応したシンボル値を格納したシンボルインデックス−シンボル値テーブル部16−1〜16−4を備え、次のような処理を行う。
すなわち、1所定時刻前の状態番号とパラレル変換されたビットが示す値から、状態遷移テーブルによって該当する時刻の状態番号を求め、この状態番号に対応するシンボルインデックスを状態−シンボルインデックステーブルから求め、更に、このシンボルインデックスに対応するシンボル値をシンボルインデックス−シンボル値テーブルから求める。
【0049】
本例では、2つの送信アンテナ19−1、19−2から送信されるシンボル値の組み合わせを状態として定義して、状態遷移テーブルを生成し、1所定時刻前の状態と該当する時刻の入力ビット系列から当該時刻の状態を求め、その状態に対応するシンボル値の組み合わせを出力する。
【0050】
従って、本例の送信機では、複素行列演算を必要としない、実現が容易なDSTBC符号器を実現することができ、例えば、符号化にかかる演算を削減することができるとともに、量子化誤差の影響を低減することができる。
【0051】
(実施例全体のまとめ)
ここで、本発明を適用することが可能な無線通信システムの一例として、同報型無線システムである列車無線システムについて概略的に説明する。
列車無線システムでは、例えば、線路に沿って複数の基地局装置が設置されており、1つの中央装置が送信対象となるデータ列Sを各基地局装置へ同時に配信(送信)し、各基地局装置は当該データ列Sから生成したデータ列の信号をアンテナから無線により送信する。そして、線路を走行する列車の移動局装置が基地局装置からの無線信号(電波)を受信する。なお、各基地局装置は、例えば、互いに異なる無線通信領域を有する(重複部分があってもよい)指向性アンテナからなる2本のアンテナを備えている。
【0052】
このようなシステムでは、従来において、同一の周波数を使用する複数の基地局装置でシステムを運用しようとすると、隣接する基地局装置の通信エリア(無線通信領域)において重複するエリアでは電波干渉が生じてしまっていた。
そこで、一構成例として、各基地局装置において、DSTBCを用いて送信信号を符号化し、隣接する基地局装置について重複するエリアに対しては各基地局装置から互いに直交する異なる符号化列(例えば、データ列SからDSTBCにより生成される互いに直交するデータ列A、B)が送信されるように、各基地局装置の各アンテナ毎に送信データ系列を選択や設定することで、同一波干渉を防ぐことが考えられる。
【0053】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、101・・送信ビット入力端子、 11、111・・S/P変換部、 12・・2進−10進変換器、 13・・状態遷移テーブル部、 14、114−1、114−2・・メモリ、 15・・状態−シンボルインデックステーブル部、 16−1〜16−4・・シンボルインデックス−シンボル値テーブル部、 17−1、17−2・・切替器、 18−1、18−2、116−1、116−2・・送信RF部、 19−1、19−2、117−1、117−2・・送信アンテナ、 112−1、112−2・・QPSKマッピング部、 113・・空間変換部、 115・・STBC符号化部、 201・・受信アンテナ、 202・・受信RF部、 203・・STBC復号部、 204−1、204−2・・判定部、 205・・P/S変換部、 211・・ビット出力端子、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSTBC方式により信号を送信する送信機において、
DSTBC符号器が、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力するテーブルを1つ以上含む、
ことを特徴とする送信機。
【請求項2】
請求項1に記載の送信機において、
前記DSTBC符号器が、入力ビット系列に対応した番号及び該当する時刻より1所定時刻前の状態番号を入力値とするとともに該当する時刻の状態番号を出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力する状態遷移テーブルと、
前記状態遷移テーブルから出力される状態番号を入力値とするとともにシンボルインデックスを出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力する状態−シンボルインデックステーブルと、
前記状態−シンボルインデックステーブルから出力されるシンボルインデックスを入力値とするとともにシンボル値を出力値として、入力値と出力値との対応関係を記憶して入力値に対応した出力値を出力するシンボルインデックス−シンボル値テーブルと、を含む、
ことを特徴とする送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182217(P2011−182217A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45118(P2010−45118)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【特許番号】特許第4712897号(P4712897)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】