送信機および送信方法
【課題】PAPRを低く抑え、送信電力の増幅を効率的に行う送信機を得ること。
【解決手段】本発明は、変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調部11と、前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該各信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する位相補間部12と、を備えることを特徴としている。
【解決手段】本発明は、変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調部11と、前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該各信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する位相補間部12と、を備えることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定包絡線信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
信号のピーク電力と平均電力の比をPAPR(Peak to Average Power Ratio)と呼ぶ。送信機において電力増幅器の動作効率を向上させるためには、電力増幅器でのバックオフを小さくする必要があり、そのためには送信信号のPAPRは小さいことが望ましい。このために、例えば送信信号を振幅一定の定包絡線信号とすれば、信号電力は常に一定であるため、PAPRを0dBにできる。
【0003】
一方、送信機は信号をオーバーサンプリングし、帯域制限処理を実施後に送信されるのが一般的である。具体的には特許文献1,2などに記載されているように、信号の各サンプル間にV−1個の0を挿入し、信号長をV倍にする(V倍オーバーサンプリング)。その後、帯域制限フィルタによる帯域制限処理を実施する。帯域制限フィルタとしてはルートロールオフフィルタがしばしば用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−358561号公報
【特許文献2】特開2009−232426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにしてオーバーサンプリング後に帯域制限を行う場合、定包絡線信号の実現は難しい。実際、オーバーサンプリング処理を行う前の信号を定包絡線信号とすることは容易である。しかしながら、オーバーサンプリング処理を行った後に帯域制限を行うと、帯域外信号が除去され、その結果、信号振幅は変化する。すなわち、図12に示すとおり帯域制限後の信号は定包絡線信号とはならず、PAPRは0dBより大きくなる。このように、帯域制限後の信号を定包絡線信号とすることは一般に困難である。
【0006】
この様子を周波数領域で図示したものが図13である。オーバーサンプリング前の定包絡線信号の周波数スペクトルが図13(a)のようであるとき、この信号を2倍オーバーサンプリングすると、図13(b)のような周波数スペクトルを持つ信号となり、この時点ではまだ定包絡線信号である。しかし、図13(c)のようなフィルタによる帯域制限が行われることで、帯域外信号が除去され、定包絡線信号ではなくなってしまう。その結果、PAPRが大きくなる。
【0007】
例えば、振幅一定を特徴とするCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列と呼ばれる系列がある。しかし、本系列が振幅一定となるのはオーバーサンプリング処理前であり、オーバーサンプリング後に帯域制限を行うことで振幅一定では無くなり、ピーク電力が大きくなる問題がある。この問題は文献「3GPP、R1-061284、Fujitsu、"Cubic Metric properties of CAZAC sequences"、2006/5」にて報告されている。
【0008】
このように、オーバーサンプリング前は振幅一定の信号であるが、オーバーサンプリング後に帯域制限を行うことで振幅一定では無くなる問題は、一般的なPSK、FSK信号でも起こる現象である。そのため、PAPRを小さくして電力増幅器の動作効率を向上させるために定包絡線信号を生成しても、その信号を特許文献1,2のように0信号を挿入してオーバーサンプリングし、帯域制限フィルタにより帯域制限を行えば、振幅一定の信号では無くなる。つまり、ピーク電力が大きくなりPAPRが大きくなることになり、電力増幅器の動作効率は悪くなる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、PAPRを低く抑えた信号を生成する送信機および送信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調手段と、前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する補間手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプリングし、その結果得られた信号をさらに帯域制限して送信信号を生成する場合でも、PAPRを低く抑えた送信信号を生成できる。その結果、電力増幅部でのバックオフを小さくすることが可能となり、電力増幅部の動作効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1の送信機の構成例を示す図である。
【図2】図2は、位相補間部による補間処理の例を示す図である。
【図3】図3は、定包絡線信号をオーバーサンプリングして得られた信号のスペクトルの例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2の送信機の構成例を示す図である。
【図5】図5は、帯域制限フィルタの周波数特性例を示す図である。
【図6】図6は、自己折り返し操作の例を示す図である。
【図7】図7は、オーバーサンプル数が2の場合の自己折り返し操作の例を示す図である。
【図8】図8は、オーバーサンプル数が4の場合の自己折り返し操作の例を示す図である。
【図9】図9は、自己折り返し操作の例を示す図である。
【図10】図10は、GIが挿入された送信信号の例を示す図である。
【図11】図11は、送信信号に挿入するCPの例を示す図である。
【図12】図12は、オーバーサンプリング処理の概要を示す図である。
【図13】図13は、定包絡線信号に対してオーバーサンプリングおよび帯域制限を行う場合の周波数スペクトルの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる送信機および送信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、本発明は、無線通信と有線通信のいずれにも適用が可能である。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる送信機の実施の形態1の構成例を示す図である。図示したように、本実施の形態の送信機は、変調部11、位相補間部12、帯域制限フィルタ13、D/A変換部14、電力増幅部15およびアンテナ16を備える。
【0015】
上述したように、従来のオーバーサンプリングでは各サンプル間に0を挿入するようにしていたが、本実施の形態の送信機では位相補間によりオーバーサンプリングを行うことを特徴とする。以下に、送信機の各構成要素の説明を示す。
【0016】
変調部11は、入力された情報系列に対して変調処理を行い、送信信号を生成する。本実施の形態では変調後の信号は振幅一定の定包絡線信号とし、以下の式(1)のように表現する。ただし、jは虚数単位、s(n)は変調後の送信信号、Cは振幅、θ(n)は位相、Nは信号の長さである。
【0017】
【数1】
【0018】
位相補間部12は、変調部11で生成された送信信号に対し補間処理を行い、V倍オーバーサンプリング(V≧2)を実施する。即ち各サンプル間にV−1個の信号を挿入し、長さVNの信号を生成する。このとき、以下のようなV−1個の信号を各サンプル間に挿入するようにする。
(a)挿入する信号の振幅はCとする。即ち、オーバーサンプリング前の信号と同じ振幅の信号を挿入する。
(b)s(n)とs(n+1)の間を補間する際は、IQ平面上でs(n)、s(n+1)を両端とする弧のうち短い方をV等分するようにV−1個の点を挿入する。
【0019】
このとき、s(n)とs(n+1)の間に挿入するv番目(1≦v<V)の信号点s_add(n,v)は次式(2)で表される。次式(2)において、*は複素共役を表し、f_arg(x)はxの偏角を[−π、π]の範囲で返す関数とする。
【0020】
【数2】
【0021】
一例としてV=2、4の場合の補間の様子を図2に示す。図2では補間の様子をIQ平面上で示している。なお、黒丸で示したナイキスト点とは、オーバーサンプリング前の信号に存在する点(つまり、s(n))を意味する。
【0022】
このような補間方法にてオーバーサンプリングすることで、オーバーサンプリング後の信号s_ovs(n)は、kを0以上の整数として次式(3)で表される。この信号s_ovs(n)の長さはVNである。
【0023】
【数3】
【0024】
このような補間方法を行う理由を以下に説明する。上記(a)のように振幅Cの信号を挿入することで、補間処理後の信号もまた振幅一定の定包絡線信号とすることができる。しかし、その後帯域制限フィルタによる帯域制限を行うと、帯域外信号が除去される影響で、時間領域信号の振幅は変化し、振幅一定ではなくなる(つまり、PAPRは0dBより大きくなる)。このとき、フィルタにより除去される帯域外信号を可能な限り小さくすることができれば、フィルタ通過後の信号のPAPRを0dBに近づけられる。
【0025】
そこで、本実施の形態の送信機において、位相補間部12は、上記(b)のような方法で振幅Cの信号を挿入する。補間処理前の信号s(n)の1サンプル当たりの位相の変化量Δθ1は−π≦Δθ1<πであるため、補間処理後の信号s_ovs(n)の1サンプル当たりの位相の変化量Δθ_ovsは−π/V≦Δθ_ovs<π/Vを満たす。一般に、定包絡線信号の1サンプル当たりの位相の変化量Δθは−π≦Δθ<πであるため、s_ovs(n)の1サンプル当たりの位相の変化量は、通常の定包絡線信号の1/Vとなっている。1サンプル当たりの位相の変化量をこれ以上小さくすることはできないため、この補間方法は、1サンプル当たりの位相の変化量を最も小さくする補間方法であると言える。
【0026】
一方、位相を時間微分したものは角周波数となる。よって、単位時間当たりの位相の変化量が小さい信号ほど、その信号の持つ高周波成分は小さい。前述の通り、本実施の形態の補間方法は1サンプル当たりの位相の変化量を最も小さくできる方法であるため、オーバーサンプル後の信号の持つ高周波成分を最も小さくする方法であると言い換えることができる。すなわち、後段の帯域制限フィルタで除去される帯域外信号を最も小さくできる方法である。その結果、フィルタ通過後の信号のPAPRを0dB近くにすることが可能となる。
【0027】
一例として、次式(4)で表される信号s(n)をオーバーサンプリングする場合について考える。
【0028】
【数4】
【0029】
この信号s(n)に対し、(i)従来例のように0信号を挿入することでオーバーサンプリングした場合、(ii)位相補間によりオーバーサンプリングした場合の信号のスペクトルを図3に示す。ただし、図はs_ovs(n)、つまり帯域制限フィルタに入力される前の信号のスペクトルである。また、オーバーサンプル数Vは4である。
【0030】
図示したように、位相補間によりオーバーサンプリングを行った場合、信号の高周波成分は、0信号を挿入してオーバーサンプリングを行った場合よりも非常に小さくなる。4倍オーバーサンプリングをしているため、帯域制限フィルタでは、信号は図示した範囲の1/4の帯域、つまり横軸が−4096〜4096の範囲に制限される。このときフィルタにより除去される帯域外信号は0信号を挿入する場合よりも十分小さいことがわかる。
【0031】
このように、位相補間部12が行うオーバーサンプリングによれば、後段のフィルタリング処理で除去される帯域外信号を小さくすることができる。
【0032】
帯域制限フィルタ13は、送信信号の帯域外信号を除去するためのフィルタであり、位相補間部12から出力された信号を対象としてフィルタリングを行う。一般的にはルートロールオフフィルタが用いられることが多いが、本実施の形態においては、フィルタの種類は特に限定しない。
【0033】
D/A変換部14は、帯域制限フィルタ13からの出力信号をディジタル信号からアナログ信号に変換する。
【0034】
電力増幅部15は、D/A変換部14から出力されたアナログ送信信号の電力を増幅する。本実施の形態の送信信号のPAPRは小さいため、この電力増幅部15でのバックオフは十分に小さくすることが可能である。
【0035】
アンテナ16は、電力増幅部15で増幅された後のアナログ送信信号を対向装置(受信機)に向けて送信する。
【0036】
なお、既に説明したとおり、位相補間部12での位相補間処理により十分に帯域外電力の小さい信号を作ることが可能である。そのため、帯域制限フィルタ13は必ずしも必要ではなく、本フィルタを設けないようにすることも可能である。この場合、位相補間部12からの信号は直接D/A変換部14へ入力される。このような構成にすると、フィルタにより帯域外信号が除去されることがないため、PAPRを完全に0dBとすることができる。
【0037】
また、本実施の形態では変調後の信号に対してオーバーサンプリングを行う場合について説明してきた。しかし、本実施の形態の方法は変調後の信号のみならず、様々な信号に使用可能である。例えば振幅一定の系列(例えばCAZAC系列)をパイロット信号としてそのまま送信するような場合にも本実施の形態の方法は使用可能である。この場合、図1に示した変調部11が不要となり、送信したい系列を直接位相補間部12に入力し、以降の処理を実施すればよい。
【0038】
このように、本実施の形態の送信機は、情報系列を変調して得られた振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプル数Vでオーバーサンプリングする際、定包絡線信号の各サンプル点の間に、この定包絡線信号と振幅が同一のV−1個の信号を、等間隔に(定包絡線信号の各サンプル点を含む各信号の位相変化量が同一となるように)、それぞれ挿入することとした。これにより、振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプリングし、その結果得られた信号をさらに帯域制限して送信信号を生成する場合でも、PAPRを低く抑えた送信信号を生成できる。その結果、電力増幅部でのバックオフを小さくすることが可能となり、電力増幅部の動作効率を向上させることができる。
【0039】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2の送信機の構成例を示す図である。本実施の形態の送信機は、実施の形態1で説明した送信機(図1参照)の帯域制限フィルタ13を、DFT部21、帯域制限フィルタ22、自己折り返し操作部23およびIDFT部24に置き換えたものである。これら以外の各部は実施の形態1の送信機と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
実施の形態1の送信機によれば、PAPRの小さい送信信号を生成することが可能となる。しかし、従来の0信号を挿入するオーバーサンプリング方法は後段の帯域制限フィルタにより波形歪みが生じない唯一の方法であり、実施の形態1の送信機によるオーバーサンプリングでは後段の帯域制限フィルタにより波形歪みが生じる。よって、実施の形態1の送信機によるオーバーサンプリングを適用すると、PAPRを低く抑えることが可能である一方、受信機での感度特性が劣化し、誤り率特性が劣化する問題がある。そこで、本実施の形態ではこの誤り率特性の劣化を低減可能な送信機を説明する。
【0041】
本実施の形態の送信機では、位相補間部12から出力された位相補間後の信号をDFT部21にて、VNポイントDFT(Discrete Fourier Transform)により周波数領域の信号に変換し、周波数領域で帯域制限フィルタ22による帯域制限を行う。ここで、実施の形態1と同様に位相補間後の時間領域信号をs_ovs(n)とする。このとき、DFT後の信号をS_OVS[k]、帯域制限フィルタ22による帯域制限後の信号をS_FIL[k]、帯域制限フィルタ22により除去される信号をS_CUT[k]とすると、これらは、周波数領域の信号として、次式(5)で表される。
【0042】
S_OVS[k]=F[s_ovs(n)]
S_FIL[k]=S_OVS[k]H[k]
S_CUT[k]=S_OVS[k](Hmax−H[k]) …(5)
ただし、H[k]は帯域制限フィルタ22の周波数特性、Hmaxは|H[k]|の最大値、F[x(n)]はx(n)のDFTを表す。|H[k]|の例を図5に示す。図示したように、H[k]は−VN/2≦k<VN/2で定義される。
【0043】
つまり、帯域制限フィルタ22では、DFT後信号S_OVS[k]に対しフィルタ周波数特性H[k]を掛けることで、帯域制限後信号S_FIL[k]を得る。また、DFT後信号S_OVS[k]にHmax−H[k]を掛けることで帯域制限処理により除去される信号S_CUT[k]も得る。帯域制限フィルタ22は、これらの信号S_FIL[k]およびS_CUT[k]を自己折り返し操作部23へ出力する。
【0044】
自己折り返し操作部23は、帯域制限フィルタ22から入力されたS_CUT[k]の一部、または全部をS_FILに加算する。このとき、そのまま加算するのではなく、S_CUT[k]を帯域内(S_FILの帯域内)に折り返して加算する。これを自己折り返し操作と呼ぶことにする。
【0045】
ここで、自己折り返し操作について具体的に説明する。
図5に示したように、
|H[k]|=0となるkのうち、
k<0で最大のものをk=−N/2−a、
k>0で最小のものをk=N/2+d、
また、|H[k]|=Hmaxとなるkのうち、
k<0で最小のものをk=−N/2+b、
k>0で最大のものをk=N/2−c、
とする。ただし、a〜dは0以上の実数とする。帯域制限フィルタ22としてルートロールオフフィルタやフルロールオフフィルタを用いる場合は、a=b=c=dとなる。
【0046】
自己折り返し操作では、以下の式(6)〜(9)に従い、S_FILにS_CUT[k]を加算する。ただし、自己折り返し操作後の信号をS_FOLD[k]とする。
【0047】
(I)k<0の場合
−N/2≦k<0の場合
S_FOLD[k+N]=S_FIL[k+N]+S_CUT[k] …(6)
k<−N/2の場合
S_FOLD[k+pN]=S_FIL[k+pN]+S_CUT[k] …(7)
ただし、pは整数であり、−N/2≦k+pN<N/2となるようにpは選択される。
(II)k≧0の場合
0≦k<N/2の場合
S_FOLD[k-N]=S_FIL[k-N]+S_CUT[k] …(8)
k≧N/2の場合
S_FOLD[k-pN]=S_FIL[k-pN]+S_CUT[k] …(9)
ただし、pは整数であり、−N/2≦k−pN<N/2となるようにpは選択される。
【0048】
なお、位相補間によりV倍オーバーサンプリングしている場合、各信号のkの範囲は次式(10)で示した範囲となる。
−VN/2≦k<VN/2 …(10)
【0049】
上記の式(6)〜(9)に従って行う自己折り返し操作を図示したものが図6となる。
【0050】
また、オーバーサンプル数V=2の場合の自己折り返し操作の例を図7に示す。V=2のため、信号は上式(10)より−N≦k<Nで定義される。また、オーバーサンプル数V=4の場合の自己折り返し操作の例を図8に示す。V=4のため、信号は式(10)より−2N≦k<2Nで定義される。
【0051】
なお、上述したように、自己折り返し操作部23では、S_CUT[k]の一部、または全部をS_FILに加算する。つまり、−VN/2≦k<VN/2を満たすkについて、全てのS_CUT[k]をS_FILに加算する必要はなく、一部でもよい。一部のkについて加算する場合、そのkの選び方はどのような方法でも良い。ただし、多くのkについて加算するほど、誤り率の劣化を低減できる。
【0052】
次に、S_CUT[k]の一部をS_FILに加算する例を示す。
【0053】
図5に示した特性の帯域制限フィルタ22を用いることで、フィルタ通過後信号S_FIL[k]の帯域は、−N/2−a≦k<N/2+dに制限される。しかし、自己折り返し操作の際に式(6),(8)により信号の加算を行う場合には、S_FIL[k]のN/2+d≦k<N,−N≦k<−N/2−aの範囲にも信号が加算される可能性があり、その結果、S_FOLD[k]の帯域はS_FIL[k]の帯域よりも広がってしまう可能性がある。これを防ぐために、N/2+d≦k<N,−N≦k<−N/2−aの範囲には信号を加算しないようにするという方法が考えられる(図9参照)。勿論、S_FOLD[k]の帯域がS_FIL[k]の帯域よりも広がることが問題にならないのであれば、S_CUT[k]の全部をS_FILに加算するようにしてもかまわない。
【0054】
あるいは、より単純な方法として、TH_L≦k<TH_Hの範囲にあるS_CUT[k]をS_FILに加算するとしてもよい。ここで、TH_L,TH_Hは任意の実数である。
【0055】
以上のような自己折り返し操作により、一度帯域制限フィルタ22により除去された信号を、再び送信信号内に戻すことになるため、実施の形態1で発生する波形歪みを低減することができる。また、あくまで同一信号を帯域内に折り返しているだけであるため、PAPRが大きく増加するようなことはなく、実施の形態1と同等のPAPRを実現可能である。
【0056】
以上のような自己折り返し操作により作られた信号S_FOLD[k]は、IDFT部24に入力され、VNポイントIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)により時間領域信号に変換される。その後の動作は実施の形態1と同様である。
【0057】
なお、本実施の形態のDFT/IDFT処理については、ポイント数が2のべき乗の場合は、FFT/IFFTを用いるようにしてもよい。
【0058】
上述したように、本実施の形態では、周波数領域で帯域制限フィルタ22による帯域制限を行う。従来、周波数領域ではなく時間領域で帯域制限フィルタによる帯域制限が行われることが多いが、その場合、フィルタにより除去される信号S_CUT[k]を得ることができない。そのため、本実施の形態では周波数領域にて帯域制限フィルタによる帯域制限を行うようにしている。
【0059】
なお、DFT部21、帯域制限フィルタ22、自己折り返し操作部23、IDFT部24の処理は長さVNの信号に対して行われる。そのため、位相補間部12から入力される信号の長さをLとしたときに、LがVNより大きい場合は、長さVNの信号に分割し、分割した信号それぞれに対してDFT部21以降の処理を行う。そして、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合し、再度長さLの信号にする。
【0060】
ここで、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合する際、信号の不連続性が問題になる可能性がある。そこで、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合する際、図10に示したように、ガードインターバル(GI:Guard Interval)と呼ばれる信号を挿入するようにしてもよい。このガードインターバルはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)で一般的に用いられるものと同等である。ガードインターバルは受信機では復調されることなく捨てられるため、中身は何でもよい。オール0としてもよいし、あるいは図11のように、長さVNの信号の終わりの部分をコピーしたものとしてもよい。図11に示したガードインターバルは特にサイクリックプレフィックス(CP:Cyclic Prefix)と呼ばれる。
【0061】
帯域制限フィルタは一般的にはルートロールオフフィルタが用いられることが多いが、実施の形態1と同様に本実施の形態においても、フィルタの種類は特に限定しない。ただし、ここでより良いフィルタの条件を考察する。以下、簡単のためオーバーサンプル数V=2として説明するが、V>2の場合も同様に考えることができる。
【0062】
位相補間前の信号を、上式(1)で表される定包絡線信号s(n)とする。より良いフィルタの条件を考察するために、まずはこの信号を2倍で位相補間し、さらに自己折り返し操作を行う場合の自己折り返し操作後の信号を数式で表現することを考える。
【0063】
s(n)をNポイントDFTしたものをS[k]とすると、このS[k]は次式(11)のように表される。
【0064】
【数5】
【0065】
s(n)を2倍補間した信号をs_ovs(n)=Cexp{jθ_ovs(n)}(0≦n<2N)とする。ただし、θ_ovs(n)はs_ovs(n)の位相である。s_ovs(n)の2NポイントDFT結果をS_OVS[k]とすると、これは長さ2Nの系列であり、次式(12)のように表される。ただし、A[k]はs(n)を2倍に位相補間する際に追加したN個の信号のみをNポイントDFTしたものである。
【0066】
【数6】
【0067】
帯域制限フィルタの周波数特性をH[k](0≦k<2N)とする。また|H[k]|の最大値をHmaxとする。このフィルタによりS_OVS[k]を帯域制限した信号をS_FIL[k]、フィルタにより除去される信号をS_CUT[k]とすると、これらの信号は次式(13)で表される。
S_FIL[k]=S_OVS[k]H[k] (0≦k<2N)
S_CUT[k]=S_OVS[k](Hmax−H[k]) (0≦k<2N) …(13)
【0068】
さらに自己折り返し操作を行った後の信号をS_FOLD[k]とすると、この信号は以下の式(14)または式(15)で表される。
【0069】
【数7】
【0070】
【数8】
【0071】
つまり、自己折り返し操作後の送信信号S_FOLD[k]は、S[k],A[k]両方の影響を受ける。しかし、送信したい情報が乗っているのはあくまでS[k]であるため、A[k]は不要信号であり、受信側では雑音となり特性劣化を引き起こす。よって、A[k]の影響は可能な限り小さいことが望ましい。
【0072】
ここで、以下の関係式(16)が成立するフィルタを用いるとする。なお、0≦k<2N、および0≦k+N<2Nが両方成立する必要があるため、kの範囲を0≦k<Nとしている。
H[k]+H[k+N]=Hmax (0≦k<N) …(16)
【0073】
上式(16)が成り立つとき、同時にH[k]+H[k-N]=Hmaxも成り立つことになり、その結果、上記の式(14)および式(15)は、次式(17)のようになる。
S_FOLD[k]=S[k]・(Hmax−H[k+N]+H[k]) (0≦k<2N)…(17)
【0074】
つまり、送信信号は位相補間前信号S[k]とフィルタ特性H[k]のみに依存し、位相補間の際に追加した信号A[k]には依存しなくなる。よって、式(16)を満たすフィルタを用いることにより、送信信号が不要信号であるA[k]の影響を受けなくなり、誤り率を改善できる。なお、これは2倍オーバーサンプリングの場合の話であり、V倍オーバーサンプリングの場合であれば、H[k]は0≦k<VNで定義され、上式(16)の条件は以下に示す式(18)のようになる。
H[k]+H[k+(V-1)N]=Hmax (0≦k<N)
H[k]=0 (N≦k<(V−1)N) …(18)
ここで、(V−1)N≦k<VNの場合の条件は式(18)の第一式に含まれていることに注意する。
【0075】
したがって、可能な限り上式(18)を満たす特性の帯域制限フィルタを用いるようにするとよい。このようなフィルタの例としては、例えばフルロールオフフィルタが挙げられる。
【0076】
このように、本実施の形態の送信機は、実施の形態1の送信機と同じ手順で補間処理を実施した後、周波数領域において、帯域制限フィルタで帯域制限を行うとともに、帯域制限実施後の信号に対し、帯域制限フィルタで除去した信号(帯域外信号)の一部または全てを帯域内に折り返して加算することとした。これにより、実施の形態1の構成を採用した場合に生じる波形歪み、すなわち、位相補間後に帯域制限フィルタを適用することで生じる波形歪みを低減することができる。その結果、実施の形態1の送信機において誤り率特性が劣化する問題を低減することが可能である。また、本実施の形態の自己折り返し操作はあくまで同一信号を帯域内に折り返しているだけであるため、この処理によりPAPRが大きく増加するようなことはなく、実施の形態1と同等のPAPRを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる送信機は、PAPRを低く抑えた信号を送信する送信機として有用であり、特に、定包絡線信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機に適している。
【符号の説明】
【0078】
11 変調部
12 位相補間部
13,22 帯域制限フィルタ
14 D/A変換部
15 電力増幅部
16 アンテナ
21 DFT部
23 自己折り返し操作部
24 IDFT部
【技術分野】
【0001】
本発明は、定包絡線信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
信号のピーク電力と平均電力の比をPAPR(Peak to Average Power Ratio)と呼ぶ。送信機において電力増幅器の動作効率を向上させるためには、電力増幅器でのバックオフを小さくする必要があり、そのためには送信信号のPAPRは小さいことが望ましい。このために、例えば送信信号を振幅一定の定包絡線信号とすれば、信号電力は常に一定であるため、PAPRを0dBにできる。
【0003】
一方、送信機は信号をオーバーサンプリングし、帯域制限処理を実施後に送信されるのが一般的である。具体的には特許文献1,2などに記載されているように、信号の各サンプル間にV−1個の0を挿入し、信号長をV倍にする(V倍オーバーサンプリング)。その後、帯域制限フィルタによる帯域制限処理を実施する。帯域制限フィルタとしてはルートロールオフフィルタがしばしば用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−358561号公報
【特許文献2】特開2009−232426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにしてオーバーサンプリング後に帯域制限を行う場合、定包絡線信号の実現は難しい。実際、オーバーサンプリング処理を行う前の信号を定包絡線信号とすることは容易である。しかしながら、オーバーサンプリング処理を行った後に帯域制限を行うと、帯域外信号が除去され、その結果、信号振幅は変化する。すなわち、図12に示すとおり帯域制限後の信号は定包絡線信号とはならず、PAPRは0dBより大きくなる。このように、帯域制限後の信号を定包絡線信号とすることは一般に困難である。
【0006】
この様子を周波数領域で図示したものが図13である。オーバーサンプリング前の定包絡線信号の周波数スペクトルが図13(a)のようであるとき、この信号を2倍オーバーサンプリングすると、図13(b)のような周波数スペクトルを持つ信号となり、この時点ではまだ定包絡線信号である。しかし、図13(c)のようなフィルタによる帯域制限が行われることで、帯域外信号が除去され、定包絡線信号ではなくなってしまう。その結果、PAPRが大きくなる。
【0007】
例えば、振幅一定を特徴とするCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列と呼ばれる系列がある。しかし、本系列が振幅一定となるのはオーバーサンプリング処理前であり、オーバーサンプリング後に帯域制限を行うことで振幅一定では無くなり、ピーク電力が大きくなる問題がある。この問題は文献「3GPP、R1-061284、Fujitsu、"Cubic Metric properties of CAZAC sequences"、2006/5」にて報告されている。
【0008】
このように、オーバーサンプリング前は振幅一定の信号であるが、オーバーサンプリング後に帯域制限を行うことで振幅一定では無くなる問題は、一般的なPSK、FSK信号でも起こる現象である。そのため、PAPRを小さくして電力増幅器の動作効率を向上させるために定包絡線信号を生成しても、その信号を特許文献1,2のように0信号を挿入してオーバーサンプリングし、帯域制限フィルタにより帯域制限を行えば、振幅一定の信号では無くなる。つまり、ピーク電力が大きくなりPAPRが大きくなることになり、電力増幅器の動作効率は悪くなる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、PAPRを低く抑えた信号を生成する送信機および送信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調手段と、前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する補間手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプリングし、その結果得られた信号をさらに帯域制限して送信信号を生成する場合でも、PAPRを低く抑えた送信信号を生成できる。その結果、電力増幅部でのバックオフを小さくすることが可能となり、電力増幅部の動作効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1の送信機の構成例を示す図である。
【図2】図2は、位相補間部による補間処理の例を示す図である。
【図3】図3は、定包絡線信号をオーバーサンプリングして得られた信号のスペクトルの例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2の送信機の構成例を示す図である。
【図5】図5は、帯域制限フィルタの周波数特性例を示す図である。
【図6】図6は、自己折り返し操作の例を示す図である。
【図7】図7は、オーバーサンプル数が2の場合の自己折り返し操作の例を示す図である。
【図8】図8は、オーバーサンプル数が4の場合の自己折り返し操作の例を示す図である。
【図9】図9は、自己折り返し操作の例を示す図である。
【図10】図10は、GIが挿入された送信信号の例を示す図である。
【図11】図11は、送信信号に挿入するCPの例を示す図である。
【図12】図12は、オーバーサンプリング処理の概要を示す図である。
【図13】図13は、定包絡線信号に対してオーバーサンプリングおよび帯域制限を行う場合の周波数スペクトルの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる送信機および送信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、本発明は、無線通信と有線通信のいずれにも適用が可能である。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる送信機の実施の形態1の構成例を示す図である。図示したように、本実施の形態の送信機は、変調部11、位相補間部12、帯域制限フィルタ13、D/A変換部14、電力増幅部15およびアンテナ16を備える。
【0015】
上述したように、従来のオーバーサンプリングでは各サンプル間に0を挿入するようにしていたが、本実施の形態の送信機では位相補間によりオーバーサンプリングを行うことを特徴とする。以下に、送信機の各構成要素の説明を示す。
【0016】
変調部11は、入力された情報系列に対して変調処理を行い、送信信号を生成する。本実施の形態では変調後の信号は振幅一定の定包絡線信号とし、以下の式(1)のように表現する。ただし、jは虚数単位、s(n)は変調後の送信信号、Cは振幅、θ(n)は位相、Nは信号の長さである。
【0017】
【数1】
【0018】
位相補間部12は、変調部11で生成された送信信号に対し補間処理を行い、V倍オーバーサンプリング(V≧2)を実施する。即ち各サンプル間にV−1個の信号を挿入し、長さVNの信号を生成する。このとき、以下のようなV−1個の信号を各サンプル間に挿入するようにする。
(a)挿入する信号の振幅はCとする。即ち、オーバーサンプリング前の信号と同じ振幅の信号を挿入する。
(b)s(n)とs(n+1)の間を補間する際は、IQ平面上でs(n)、s(n+1)を両端とする弧のうち短い方をV等分するようにV−1個の点を挿入する。
【0019】
このとき、s(n)とs(n+1)の間に挿入するv番目(1≦v<V)の信号点s_add(n,v)は次式(2)で表される。次式(2)において、*は複素共役を表し、f_arg(x)はxの偏角を[−π、π]の範囲で返す関数とする。
【0020】
【数2】
【0021】
一例としてV=2、4の場合の補間の様子を図2に示す。図2では補間の様子をIQ平面上で示している。なお、黒丸で示したナイキスト点とは、オーバーサンプリング前の信号に存在する点(つまり、s(n))を意味する。
【0022】
このような補間方法にてオーバーサンプリングすることで、オーバーサンプリング後の信号s_ovs(n)は、kを0以上の整数として次式(3)で表される。この信号s_ovs(n)の長さはVNである。
【0023】
【数3】
【0024】
このような補間方法を行う理由を以下に説明する。上記(a)のように振幅Cの信号を挿入することで、補間処理後の信号もまた振幅一定の定包絡線信号とすることができる。しかし、その後帯域制限フィルタによる帯域制限を行うと、帯域外信号が除去される影響で、時間領域信号の振幅は変化し、振幅一定ではなくなる(つまり、PAPRは0dBより大きくなる)。このとき、フィルタにより除去される帯域外信号を可能な限り小さくすることができれば、フィルタ通過後の信号のPAPRを0dBに近づけられる。
【0025】
そこで、本実施の形態の送信機において、位相補間部12は、上記(b)のような方法で振幅Cの信号を挿入する。補間処理前の信号s(n)の1サンプル当たりの位相の変化量Δθ1は−π≦Δθ1<πであるため、補間処理後の信号s_ovs(n)の1サンプル当たりの位相の変化量Δθ_ovsは−π/V≦Δθ_ovs<π/Vを満たす。一般に、定包絡線信号の1サンプル当たりの位相の変化量Δθは−π≦Δθ<πであるため、s_ovs(n)の1サンプル当たりの位相の変化量は、通常の定包絡線信号の1/Vとなっている。1サンプル当たりの位相の変化量をこれ以上小さくすることはできないため、この補間方法は、1サンプル当たりの位相の変化量を最も小さくする補間方法であると言える。
【0026】
一方、位相を時間微分したものは角周波数となる。よって、単位時間当たりの位相の変化量が小さい信号ほど、その信号の持つ高周波成分は小さい。前述の通り、本実施の形態の補間方法は1サンプル当たりの位相の変化量を最も小さくできる方法であるため、オーバーサンプル後の信号の持つ高周波成分を最も小さくする方法であると言い換えることができる。すなわち、後段の帯域制限フィルタで除去される帯域外信号を最も小さくできる方法である。その結果、フィルタ通過後の信号のPAPRを0dB近くにすることが可能となる。
【0027】
一例として、次式(4)で表される信号s(n)をオーバーサンプリングする場合について考える。
【0028】
【数4】
【0029】
この信号s(n)に対し、(i)従来例のように0信号を挿入することでオーバーサンプリングした場合、(ii)位相補間によりオーバーサンプリングした場合の信号のスペクトルを図3に示す。ただし、図はs_ovs(n)、つまり帯域制限フィルタに入力される前の信号のスペクトルである。また、オーバーサンプル数Vは4である。
【0030】
図示したように、位相補間によりオーバーサンプリングを行った場合、信号の高周波成分は、0信号を挿入してオーバーサンプリングを行った場合よりも非常に小さくなる。4倍オーバーサンプリングをしているため、帯域制限フィルタでは、信号は図示した範囲の1/4の帯域、つまり横軸が−4096〜4096の範囲に制限される。このときフィルタにより除去される帯域外信号は0信号を挿入する場合よりも十分小さいことがわかる。
【0031】
このように、位相補間部12が行うオーバーサンプリングによれば、後段のフィルタリング処理で除去される帯域外信号を小さくすることができる。
【0032】
帯域制限フィルタ13は、送信信号の帯域外信号を除去するためのフィルタであり、位相補間部12から出力された信号を対象としてフィルタリングを行う。一般的にはルートロールオフフィルタが用いられることが多いが、本実施の形態においては、フィルタの種類は特に限定しない。
【0033】
D/A変換部14は、帯域制限フィルタ13からの出力信号をディジタル信号からアナログ信号に変換する。
【0034】
電力増幅部15は、D/A変換部14から出力されたアナログ送信信号の電力を増幅する。本実施の形態の送信信号のPAPRは小さいため、この電力増幅部15でのバックオフは十分に小さくすることが可能である。
【0035】
アンテナ16は、電力増幅部15で増幅された後のアナログ送信信号を対向装置(受信機)に向けて送信する。
【0036】
なお、既に説明したとおり、位相補間部12での位相補間処理により十分に帯域外電力の小さい信号を作ることが可能である。そのため、帯域制限フィルタ13は必ずしも必要ではなく、本フィルタを設けないようにすることも可能である。この場合、位相補間部12からの信号は直接D/A変換部14へ入力される。このような構成にすると、フィルタにより帯域外信号が除去されることがないため、PAPRを完全に0dBとすることができる。
【0037】
また、本実施の形態では変調後の信号に対してオーバーサンプリングを行う場合について説明してきた。しかし、本実施の形態の方法は変調後の信号のみならず、様々な信号に使用可能である。例えば振幅一定の系列(例えばCAZAC系列)をパイロット信号としてそのまま送信するような場合にも本実施の形態の方法は使用可能である。この場合、図1に示した変調部11が不要となり、送信したい系列を直接位相補間部12に入力し、以降の処理を実施すればよい。
【0038】
このように、本実施の形態の送信機は、情報系列を変調して得られた振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプル数Vでオーバーサンプリングする際、定包絡線信号の各サンプル点の間に、この定包絡線信号と振幅が同一のV−1個の信号を、等間隔に(定包絡線信号の各サンプル点を含む各信号の位相変化量が同一となるように)、それぞれ挿入することとした。これにより、振幅一定の定包絡線信号をオーバーサンプリングし、その結果得られた信号をさらに帯域制限して送信信号を生成する場合でも、PAPRを低く抑えた送信信号を生成できる。その結果、電力増幅部でのバックオフを小さくすることが可能となり、電力増幅部の動作効率を向上させることができる。
【0039】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2の送信機の構成例を示す図である。本実施の形態の送信機は、実施の形態1で説明した送信機(図1参照)の帯域制限フィルタ13を、DFT部21、帯域制限フィルタ22、自己折り返し操作部23およびIDFT部24に置き換えたものである。これら以外の各部は実施の形態1の送信機と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
実施の形態1の送信機によれば、PAPRの小さい送信信号を生成することが可能となる。しかし、従来の0信号を挿入するオーバーサンプリング方法は後段の帯域制限フィルタにより波形歪みが生じない唯一の方法であり、実施の形態1の送信機によるオーバーサンプリングでは後段の帯域制限フィルタにより波形歪みが生じる。よって、実施の形態1の送信機によるオーバーサンプリングを適用すると、PAPRを低く抑えることが可能である一方、受信機での感度特性が劣化し、誤り率特性が劣化する問題がある。そこで、本実施の形態ではこの誤り率特性の劣化を低減可能な送信機を説明する。
【0041】
本実施の形態の送信機では、位相補間部12から出力された位相補間後の信号をDFT部21にて、VNポイントDFT(Discrete Fourier Transform)により周波数領域の信号に変換し、周波数領域で帯域制限フィルタ22による帯域制限を行う。ここで、実施の形態1と同様に位相補間後の時間領域信号をs_ovs(n)とする。このとき、DFT後の信号をS_OVS[k]、帯域制限フィルタ22による帯域制限後の信号をS_FIL[k]、帯域制限フィルタ22により除去される信号をS_CUT[k]とすると、これらは、周波数領域の信号として、次式(5)で表される。
【0042】
S_OVS[k]=F[s_ovs(n)]
S_FIL[k]=S_OVS[k]H[k]
S_CUT[k]=S_OVS[k](Hmax−H[k]) …(5)
ただし、H[k]は帯域制限フィルタ22の周波数特性、Hmaxは|H[k]|の最大値、F[x(n)]はx(n)のDFTを表す。|H[k]|の例を図5に示す。図示したように、H[k]は−VN/2≦k<VN/2で定義される。
【0043】
つまり、帯域制限フィルタ22では、DFT後信号S_OVS[k]に対しフィルタ周波数特性H[k]を掛けることで、帯域制限後信号S_FIL[k]を得る。また、DFT後信号S_OVS[k]にHmax−H[k]を掛けることで帯域制限処理により除去される信号S_CUT[k]も得る。帯域制限フィルタ22は、これらの信号S_FIL[k]およびS_CUT[k]を自己折り返し操作部23へ出力する。
【0044】
自己折り返し操作部23は、帯域制限フィルタ22から入力されたS_CUT[k]の一部、または全部をS_FILに加算する。このとき、そのまま加算するのではなく、S_CUT[k]を帯域内(S_FILの帯域内)に折り返して加算する。これを自己折り返し操作と呼ぶことにする。
【0045】
ここで、自己折り返し操作について具体的に説明する。
図5に示したように、
|H[k]|=0となるkのうち、
k<0で最大のものをk=−N/2−a、
k>0で最小のものをk=N/2+d、
また、|H[k]|=Hmaxとなるkのうち、
k<0で最小のものをk=−N/2+b、
k>0で最大のものをk=N/2−c、
とする。ただし、a〜dは0以上の実数とする。帯域制限フィルタ22としてルートロールオフフィルタやフルロールオフフィルタを用いる場合は、a=b=c=dとなる。
【0046】
自己折り返し操作では、以下の式(6)〜(9)に従い、S_FILにS_CUT[k]を加算する。ただし、自己折り返し操作後の信号をS_FOLD[k]とする。
【0047】
(I)k<0の場合
−N/2≦k<0の場合
S_FOLD[k+N]=S_FIL[k+N]+S_CUT[k] …(6)
k<−N/2の場合
S_FOLD[k+pN]=S_FIL[k+pN]+S_CUT[k] …(7)
ただし、pは整数であり、−N/2≦k+pN<N/2となるようにpは選択される。
(II)k≧0の場合
0≦k<N/2の場合
S_FOLD[k-N]=S_FIL[k-N]+S_CUT[k] …(8)
k≧N/2の場合
S_FOLD[k-pN]=S_FIL[k-pN]+S_CUT[k] …(9)
ただし、pは整数であり、−N/2≦k−pN<N/2となるようにpは選択される。
【0048】
なお、位相補間によりV倍オーバーサンプリングしている場合、各信号のkの範囲は次式(10)で示した範囲となる。
−VN/2≦k<VN/2 …(10)
【0049】
上記の式(6)〜(9)に従って行う自己折り返し操作を図示したものが図6となる。
【0050】
また、オーバーサンプル数V=2の場合の自己折り返し操作の例を図7に示す。V=2のため、信号は上式(10)より−N≦k<Nで定義される。また、オーバーサンプル数V=4の場合の自己折り返し操作の例を図8に示す。V=4のため、信号は式(10)より−2N≦k<2Nで定義される。
【0051】
なお、上述したように、自己折り返し操作部23では、S_CUT[k]の一部、または全部をS_FILに加算する。つまり、−VN/2≦k<VN/2を満たすkについて、全てのS_CUT[k]をS_FILに加算する必要はなく、一部でもよい。一部のkについて加算する場合、そのkの選び方はどのような方法でも良い。ただし、多くのkについて加算するほど、誤り率の劣化を低減できる。
【0052】
次に、S_CUT[k]の一部をS_FILに加算する例を示す。
【0053】
図5に示した特性の帯域制限フィルタ22を用いることで、フィルタ通過後信号S_FIL[k]の帯域は、−N/2−a≦k<N/2+dに制限される。しかし、自己折り返し操作の際に式(6),(8)により信号の加算を行う場合には、S_FIL[k]のN/2+d≦k<N,−N≦k<−N/2−aの範囲にも信号が加算される可能性があり、その結果、S_FOLD[k]の帯域はS_FIL[k]の帯域よりも広がってしまう可能性がある。これを防ぐために、N/2+d≦k<N,−N≦k<−N/2−aの範囲には信号を加算しないようにするという方法が考えられる(図9参照)。勿論、S_FOLD[k]の帯域がS_FIL[k]の帯域よりも広がることが問題にならないのであれば、S_CUT[k]の全部をS_FILに加算するようにしてもかまわない。
【0054】
あるいは、より単純な方法として、TH_L≦k<TH_Hの範囲にあるS_CUT[k]をS_FILに加算するとしてもよい。ここで、TH_L,TH_Hは任意の実数である。
【0055】
以上のような自己折り返し操作により、一度帯域制限フィルタ22により除去された信号を、再び送信信号内に戻すことになるため、実施の形態1で発生する波形歪みを低減することができる。また、あくまで同一信号を帯域内に折り返しているだけであるため、PAPRが大きく増加するようなことはなく、実施の形態1と同等のPAPRを実現可能である。
【0056】
以上のような自己折り返し操作により作られた信号S_FOLD[k]は、IDFT部24に入力され、VNポイントIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)により時間領域信号に変換される。その後の動作は実施の形態1と同様である。
【0057】
なお、本実施の形態のDFT/IDFT処理については、ポイント数が2のべき乗の場合は、FFT/IFFTを用いるようにしてもよい。
【0058】
上述したように、本実施の形態では、周波数領域で帯域制限フィルタ22による帯域制限を行う。従来、周波数領域ではなく時間領域で帯域制限フィルタによる帯域制限が行われることが多いが、その場合、フィルタにより除去される信号S_CUT[k]を得ることができない。そのため、本実施の形態では周波数領域にて帯域制限フィルタによる帯域制限を行うようにしている。
【0059】
なお、DFT部21、帯域制限フィルタ22、自己折り返し操作部23、IDFT部24の処理は長さVNの信号に対して行われる。そのため、位相補間部12から入力される信号の長さをLとしたときに、LがVNより大きい場合は、長さVNの信号に分割し、分割した信号それぞれに対してDFT部21以降の処理を行う。そして、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合し、再度長さLの信号にする。
【0060】
ここで、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合する際、信号の不連続性が問題になる可能性がある。そこで、IDFT部24から出力される長さVNの信号を結合する際、図10に示したように、ガードインターバル(GI:Guard Interval)と呼ばれる信号を挿入するようにしてもよい。このガードインターバルはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)で一般的に用いられるものと同等である。ガードインターバルは受信機では復調されることなく捨てられるため、中身は何でもよい。オール0としてもよいし、あるいは図11のように、長さVNの信号の終わりの部分をコピーしたものとしてもよい。図11に示したガードインターバルは特にサイクリックプレフィックス(CP:Cyclic Prefix)と呼ばれる。
【0061】
帯域制限フィルタは一般的にはルートロールオフフィルタが用いられることが多いが、実施の形態1と同様に本実施の形態においても、フィルタの種類は特に限定しない。ただし、ここでより良いフィルタの条件を考察する。以下、簡単のためオーバーサンプル数V=2として説明するが、V>2の場合も同様に考えることができる。
【0062】
位相補間前の信号を、上式(1)で表される定包絡線信号s(n)とする。より良いフィルタの条件を考察するために、まずはこの信号を2倍で位相補間し、さらに自己折り返し操作を行う場合の自己折り返し操作後の信号を数式で表現することを考える。
【0063】
s(n)をNポイントDFTしたものをS[k]とすると、このS[k]は次式(11)のように表される。
【0064】
【数5】
【0065】
s(n)を2倍補間した信号をs_ovs(n)=Cexp{jθ_ovs(n)}(0≦n<2N)とする。ただし、θ_ovs(n)はs_ovs(n)の位相である。s_ovs(n)の2NポイントDFT結果をS_OVS[k]とすると、これは長さ2Nの系列であり、次式(12)のように表される。ただし、A[k]はs(n)を2倍に位相補間する際に追加したN個の信号のみをNポイントDFTしたものである。
【0066】
【数6】
【0067】
帯域制限フィルタの周波数特性をH[k](0≦k<2N)とする。また|H[k]|の最大値をHmaxとする。このフィルタによりS_OVS[k]を帯域制限した信号をS_FIL[k]、フィルタにより除去される信号をS_CUT[k]とすると、これらの信号は次式(13)で表される。
S_FIL[k]=S_OVS[k]H[k] (0≦k<2N)
S_CUT[k]=S_OVS[k](Hmax−H[k]) (0≦k<2N) …(13)
【0068】
さらに自己折り返し操作を行った後の信号をS_FOLD[k]とすると、この信号は以下の式(14)または式(15)で表される。
【0069】
【数7】
【0070】
【数8】
【0071】
つまり、自己折り返し操作後の送信信号S_FOLD[k]は、S[k],A[k]両方の影響を受ける。しかし、送信したい情報が乗っているのはあくまでS[k]であるため、A[k]は不要信号であり、受信側では雑音となり特性劣化を引き起こす。よって、A[k]の影響は可能な限り小さいことが望ましい。
【0072】
ここで、以下の関係式(16)が成立するフィルタを用いるとする。なお、0≦k<2N、および0≦k+N<2Nが両方成立する必要があるため、kの範囲を0≦k<Nとしている。
H[k]+H[k+N]=Hmax (0≦k<N) …(16)
【0073】
上式(16)が成り立つとき、同時にH[k]+H[k-N]=Hmaxも成り立つことになり、その結果、上記の式(14)および式(15)は、次式(17)のようになる。
S_FOLD[k]=S[k]・(Hmax−H[k+N]+H[k]) (0≦k<2N)…(17)
【0074】
つまり、送信信号は位相補間前信号S[k]とフィルタ特性H[k]のみに依存し、位相補間の際に追加した信号A[k]には依存しなくなる。よって、式(16)を満たすフィルタを用いることにより、送信信号が不要信号であるA[k]の影響を受けなくなり、誤り率を改善できる。なお、これは2倍オーバーサンプリングの場合の話であり、V倍オーバーサンプリングの場合であれば、H[k]は0≦k<VNで定義され、上式(16)の条件は以下に示す式(18)のようになる。
H[k]+H[k+(V-1)N]=Hmax (0≦k<N)
H[k]=0 (N≦k<(V−1)N) …(18)
ここで、(V−1)N≦k<VNの場合の条件は式(18)の第一式に含まれていることに注意する。
【0075】
したがって、可能な限り上式(18)を満たす特性の帯域制限フィルタを用いるようにするとよい。このようなフィルタの例としては、例えばフルロールオフフィルタが挙げられる。
【0076】
このように、本実施の形態の送信機は、実施の形態1の送信機と同じ手順で補間処理を実施した後、周波数領域において、帯域制限フィルタで帯域制限を行うとともに、帯域制限実施後の信号に対し、帯域制限フィルタで除去した信号(帯域外信号)の一部または全てを帯域内に折り返して加算することとした。これにより、実施の形態1の構成を採用した場合に生じる波形歪み、すなわち、位相補間後に帯域制限フィルタを適用することで生じる波形歪みを低減することができる。その結果、実施の形態1の送信機において誤り率特性が劣化する問題を低減することが可能である。また、本実施の形態の自己折り返し操作はあくまで同一信号を帯域内に折り返しているだけであるため、この処理によりPAPRが大きく増加するようなことはなく、実施の形態1と同等のPAPRを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる送信機は、PAPRを低く抑えた信号を送信する送信機として有用であり、特に、定包絡線信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機に適している。
【符号の説明】
【0078】
11 変調部
12 位相補間部
13,22 帯域制限フィルタ
14 D/A変換部
15 電力増幅部
16 アンテナ
21 DFT部
23 自己折り返し操作部
24 IDFT部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、
情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調手段と、
前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する補間手段と、
を備えることを特徴とする送信機。
【請求項2】
前記定包絡線信号の信号点をs(k)(ただし、k=0,1,…,n-1,n,n+1,…)、オーバーサンプリング数をVとしたとき、
前記補間手段は、
s(n)とs(n+1)の間を補間する場合には、IQ平面上でs(n)およびs(n+1)を両端とする弧のうち短い方をV等分するようにV−1個の信号点を挿入する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記補間手段による信号挿入処理が実施された後の信号に対して帯域制限を行う帯域制限フィルタ手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項4】
前記補間手段による信号挿入処理が実施された後の信号を周波数領域の信号に変換する信号変換手段と、
前記信号変換手段から出力される周波数領域信号に対して帯域制限を行うとともに、当該帯域制限にて除去された信号である帯域外信号の一部または全部を、当該帯域制限にて除去されなかった信号である帯域内信号の帯域内に折り返して当該帯域内信号に加算する帯域制限フィルタ手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項5】
前記帯域制限で使用するフィルタの周波数特性をH[k](0≦k<VN)、|H[k]|の最大値をHmax、オーバーサンプリング数をVとしたとき、
前記フィルタの周波数特性H[k]は、以下の条件を満たす
H[k]+H[k+(V-1)N]=Hmax (0≦k<N)
H[k]=0 (N≦k<(V−1)N)
ことを特徴とする請求項4に記載の送信機。
【請求項6】
変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機が実行する送信方法であって、
情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する定包絡線信号生成ステップと、
前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する信号挿入ステップと、
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換するDA変換ステップと、
前記DA変換ステップを実行して得られたアナログ送信信号を増幅して送信する信号送信ステップと、
を含むことを特徴とする送信方法。
【請求項7】
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に対して帯域制限を行う帯域制限ステップ、
をさらに含み、
前記DA変換ステップでは、前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に代えて、前記帯域制限ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換する
ことを特徴とする請求項6に記載の送信方法。
【請求項8】
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号を周波数領域の信号に変換する第1の信号変換ステップと、
前記第1の信号変換ステップを実行して得られた周波数領域信号に対して帯域制限を行うとともに、当該帯域制限にて除去された信号である帯域外信号の一部または全部を、当該帯域制限にて除去されなかった信号である帯域内信号の帯域内に折り返して当該帯域内信号に加算する帯域制限ステップと、
前記帯域制限ステップを実行して得られた信号を時間領域の信号に変換する第2の信号変換ステップと、
をさらに含み、
前記DA変換ステップでは、前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に代えて、前記第2の信号変換ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換する
ことを特徴とする請求項6に記載の送信方法。
【請求項1】
変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機であって、
情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する変調手段と、
前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する補間手段と、
を備えることを特徴とする送信機。
【請求項2】
前記定包絡線信号の信号点をs(k)(ただし、k=0,1,…,n-1,n,n+1,…)、オーバーサンプリング数をVとしたとき、
前記補間手段は、
s(n)とs(n+1)の間を補間する場合には、IQ平面上でs(n)およびs(n+1)を両端とする弧のうち短い方をV等分するようにV−1個の信号点を挿入する
ことを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記補間手段による信号挿入処理が実施された後の信号に対して帯域制限を行う帯域制限フィルタ手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項4】
前記補間手段による信号挿入処理が実施された後の信号を周波数領域の信号に変換する信号変換手段と、
前記信号変換手段から出力される周波数領域信号に対して帯域制限を行うとともに、当該帯域制限にて除去された信号である帯域外信号の一部または全部を、当該帯域制限にて除去されなかった信号である帯域内信号の帯域内に折り返して当該帯域内信号に加算する帯域制限フィルタ手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項5】
前記帯域制限で使用するフィルタの周波数特性をH[k](0≦k<VN)、|H[k]|の最大値をHmax、オーバーサンプリング数をVとしたとき、
前記フィルタの周波数特性H[k]は、以下の条件を満たす
H[k]+H[k+(V-1)N]=Hmax (0≦k<N)
H[k]=0 (N≦k<(V−1)N)
ことを特徴とする請求項4に記載の送信機。
【請求項6】
変調信号をオーバーサンプリングして送信信号を生成する送信機が実行する送信方法であって、
情報系列に対して変調処理を実施して定包絡線信号を生成する定包絡線信号生成ステップと、
前記定包絡線信号の各信号点の間に、当該信号点と振幅が同一の所定数の信号を、元の信号点を含む各信号点が等間隔となるように挿入する信号挿入ステップと、
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換するDA変換ステップと、
前記DA変換ステップを実行して得られたアナログ送信信号を増幅して送信する信号送信ステップと、
を含むことを特徴とする送信方法。
【請求項7】
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に対して帯域制限を行う帯域制限ステップ、
をさらに含み、
前記DA変換ステップでは、前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に代えて、前記帯域制限ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換する
ことを特徴とする請求項6に記載の送信方法。
【請求項8】
前記信号挿入ステップを実行して得られた信号を周波数領域の信号に変換する第1の信号変換ステップと、
前記第1の信号変換ステップを実行して得られた周波数領域信号に対して帯域制限を行うとともに、当該帯域制限にて除去された信号である帯域外信号の一部または全部を、当該帯域制限にて除去されなかった信号である帯域内信号の帯域内に折り返して当該帯域内信号に加算する帯域制限ステップと、
前記帯域制限ステップを実行して得られた信号を時間領域の信号に変換する第2の信号変換ステップと、
をさらに含み、
前記DA変換ステップでは、前記信号挿入ステップを実行して得られた信号に代えて、前記第2の信号変換ステップを実行して得られた信号をアナログ信号に変換する
ことを特徴とする請求項6に記載の送信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−46261(P2013−46261A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183096(P2011−183096)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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