説明

送信用アンテナ装置

【課題】整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することが可能な小型,軽量の送信用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】送信用アンテナ装置1は、ブーム3と、ブーム3に取り付けられたダイポール素子5と、ダイポール素子5に対し平行に配置された小ループ素子6と、ダイポール素子5と小ループ素子6とを交差接続し、小ループ素子6に位相差給電する位相交差用エレメント7a,7bから成る。これにより、簡単な装置構成によって整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UHF(Ultra High Frequency)帯に相当する周波数帯の放送電波の送信処理に適用して好適な送信用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、UHF帯に相当する周波数帯の放送電波の送信用アンテナ装置としては、八木型アンテナ,ループ素子型アンテナ,コニカル型アンテナ,対数素子型アンテナ等のアンテナ装置を反射器から導波器まで連列することにより構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−273636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の送信用アンテナ装置は、利得を優先するために位相変換を行わない構成になっているために、定在波比(リターン・ロス,VSWR)が10[dB]前後と高くなる。また、従来の送信用アンテナ装置の構成によれば、整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することができない。なお、このような問題を解決するために、UHF帯内の各局(約26局に相当)毎に同軸ケーブルを引き回す方法が考えられるが、この方法を用いた場合には、同軸ケーブルの本数が多くなるために、装置が大型になり、装置を設置する場所に制約が生じる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することが可能な小型,軽量の送信用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の発明者は、精力的な研究を重ねてきた結果、ダイポール素子とループ状素子を位相交差させ、ダイポール素子とループ状素子に位相差給電することによって、整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することができることを知見した。このような知見から想到された本発明に係る送信用アンテナ装置の一態様は、支持部と、支持部に取り付けられたダイポール素子と、ダイポール素子に対し平行に配置されたループ状素子と、ダイポール素子とループ状素子とを交差接続し、ループ状素子に位相差給電する給電部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る送信用アンテナ装置によれば、整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することができるので、送信用アンテナ装置を小型,軽量に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の構成について説明する。なお、図1,2,3はそれぞれ、本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の上面図,側面図,及び正面図を示す。また、図4は本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の給電部の上面図及び側面図を示す。
【0009】
本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置1は、固定用金具2によって取り付け位置に対し水平又は垂直に取り付け可能なように構成され、アルミ製又は樹脂製の丸又は角材により形成されたブーム3と、ブーム3の先端部に固定された樹脂製の素子取付台座4aと、固定用金具2と素子取付台座4a間を移動自在にブーム3に取り付けられた樹脂製の素子取付台座4bとを備える。
【0010】
また、上記素子取付台座4aには、棒状のダイポール素子5と、円形又は矩形形状の小ループ素子6と、ダイポール素子5と小ループ素子6とを交差接続する位相交差用エレメント7a,7bが取り付けられている。なお、本実施形態では、ダイポール素子5と小ループ素子6間には水平方向に約5[cm](=0.1λ)程度の間隔が設けられている。
【0011】
また、位相交差用エレメント7a,7bは、互いに交差する2枚の燐青銅板から成り、小ループ素子6に対する給電部として機能する。また、位相交差用エレメント7a,7b間には、2枚の燐青銅板が互いに接触しないように、2.5〜3[mm]程度の隙間が設けられていると共に、絶縁材チューブ等によって隙間の大きさが維持されている。
【0012】
また、ダイポール素子5には、VSWRの乱れを調整するためのEMI(Electro Magnetic Interference)コア材8を介して、同軸ケーブル保持具9a,9bによってブーム3に取り付けられた同軸ケーブル10の芯線と編組線が接続され、図示しない送信器からダイポール素子5に直接高周波電流を給電する構成となっている。
【0013】
また、上記素子取付台座4bには、反射器として機能する反射素子11が取り付けられ、送信用アンテナ装置1の利得を調整する。なお、本実施形態では、反射素子11は送信電波周波数の下限値に相当する周波数の1/2倍の長さを有し、反射素子11と小ループ素子6間の距離は素子取付台座4bを移動することにより調整可能なように構成されている。また、素子取付台座4bの位置は、目的とする周波数に対しVSWRが最も低くなる位置、又は全周波数に対しVSWRが平均的な値になる位置に設定される。
【0014】
また、小ループ素子6は、素子取付台座4aの表面垂直方向に対して±20°の範囲内で傾倒可能なように構成されている。また、小ループ素子6の形状は、700[MHz]等の高い周波数の場合は図5(a)に示すようなコの字型、600[MHz]やそれ以下の周波数の場合には図5(b)に示すような箱型や図5(c)に示すような円形型等のように、周波数帯に応じて設定することが望ましい。
【0015】
また、小ループ素子6を61mmφ程度の直線ワイヤにより構成する場合、その大きさは28×70[mm](=0.09〜0.1λ)程度の矩形形状とし、3〜5[mm]幅,0.3[mm]厚のの燐青銅板材により構成する場合には、その大きさは直径約65〜70[mm](=0.09〜0.3λ)程度の円形形状とすることが望ましい。
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置1は、ブーム3と、ブーム3に取り付けられたダイポール素子5と、ダイポール素子5に対し平行に配置された小ループ素子6と、ダイポール素子5と小ループ素子6とを交差接続し、小ループ素子6に位相差給電する位相交差用エレメント7a,7bから成る。そして、このような構成によれば、簡単な装置構成によって整合回路を用いることなくUHF帯に相当する周波数帯の放送電波を広帯域に送信することができるので、地下駐車場,ビル内壁,地下街アーケード,隧道,イベント会場等の場所に容易に取り付けることができると共に、地下鉄道,山間部,僻地,恒久的な難視地区における電波送信処理を補助することができる。なお、本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置1の定在波比表,スミスチャート,電界特性,定在波特性はそれぞれ図6乃至図9に示すようになる。
【0017】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の構成を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の給電部の構成を示す上面図である。
【図5】本発明の実施形態となる小ループ素子の形状を示す図である。
【図6】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の定在波比表を示す図である。
【図7】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置のスミスチャートを示す図である。
【図8】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の電界特性を示す図である。
【図9】本発明の実施形態となる送信用アンテナ装置の定在波特性を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 送信用アンテナ装置
2 固定用金具
3 ブーム
4a,4b 素子取付台座
5 ダイポール素子
6 小ループ素子
7a,7b 位相交差用エレメント
8 EMIコア材
9a,9b 同軸ケーブル保持具
10 同軸ケーブル
11 反射素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
前記支持部に取り付けられたダイポール素子と、
前記ダイポール素子に対し平行に配置されたループ状素子と、
前記ダイポール素子と前記ループ状素子に接続され、前記ループ状素子に位相差給電する給電部と
を備えることを特徴とする送信用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信用アンテナ装置であって、前記ダイポール素子と前記ループ状素子間の間隔は0.09波長乃至0.1波長の範囲内にあることを特徴とする送信用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の送信用アンテナ装置であって、前記ループ状素子は四角形状又は円形形状を有することを特徴とする送信用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の送信用アンテナ装置であって、1/2波長の長さを有する反射素子を備えることを特徴とする送信用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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