説明

送信装置、受信装置、送信方法、受信方法

【課題】さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現する技術を提供する。
【解決手段】取得部32は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列を取得する。第1導出部34は、伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列を導出するとともに、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列を導出する。第2導出部36は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度を導出する。判定部38は、特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内であるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に複数のアンテナを使用した無線通信を実行する送信装置、受信装置、送信方法、受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANのような無線通信システムにおいて、通信速度の高速化が要求される。通信速度の高速化を実現するための技術のひとつが、MIMO(Multiple−Input and Multiple−Output)である。MIMOでは、複数の送信アンテナから独立な信号系列が空間多重して送信され、複数の受信アンテナによって信号系列が受信される。受信された信号系列は、各送受信アンテナ間の伝送路特性の行列をもとに復調される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−236054号公報
【特許文献2】特開2009−49966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、MIMOでは、多重伝送を実現するために、送信すべき信号系列の数に応じた数の独立した伝送路が望まれる。このような伝送路は、相関性の低い空間に相当し、例えば、反射波が存在する空間である。その場合、振幅、位相、遅延等のパラメータが異なる。しかしながら、無線通信システムを相関性の高い空間において使用されることもある。相関性の高い空間は、例えば、無反射空間に近くなる。その場合、振幅、位相、遅延のパラメータのいずれかの相関が高くなる。その結果、受信側においてデータの分離が困難になり、多重伝送が困難になる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の送信装置は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列を取得する取得部と、取得部が取得した伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列を導出するとともに、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列を導出する第1導出部と、第1導出部が導出した特異値行列に配置された特異値間の違いの程度を導出する第2導出部と、第2導出部において導出した特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内であるかを判定する判定部と、判定部が範囲内であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号との演算結果を複数のアンテナから送信し、判定部が範囲外であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号と補正行列の演算結果を複数のアンテナから送信する送信部と、を備える。
【0007】
この態様によると、特異値間の違いの程度に応じて、ウエイトベクトルと補正行列との組合せを使用するか、あるいはウエイトベクトルを使用するかを決定するので、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現できる。
【0008】
判定部が範囲内であると判定した場合、取得部が取得した伝送路行列を記憶する記憶部と、判定部が範囲外であると判定した場合、取得部が取得した伝送路行列と、記憶部が記憶した伝送路行列をもとに、補正行列を生成する生成部をさらに備えてもよい。この場合、違いの程度が範囲内である場合の伝送路行列と、違いの程度が範囲外である場合の伝送路行列とをもとに補正行列を生成するので、違いの程度が範囲内である場合の伝送路行列に近くできる。
【0009】
送信部は、補正行列とウエイト行列と信号との演算結果を複数のアンテナから送信する場合、補正行列の使用を通知してもよい。この場合、補正行列の使用を通知するので、それに適した処理を実行させることができる。
【0010】
本発明の別の態様は、受信装置である。この装置は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列と、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列とが導出されるとともに、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内である場合に、ウエイト行列に含まれた送信ウエイトベクトルに演算された信号を送信装置から複数のアンテナにて受信する受信部と、受信部において受信した信号をもとに、受信ウエイトベクトルを導出する導出部と、導出部において導出した受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信部において受信した信号に対するアレイ合成を実行する処理部とを備える。受信部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、送信ウエイトベクトルと補正行列とに演算された信号を受信し、導出部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、受信ウエイトベクトルの導出を停止し、処理部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、導出部において既に導出していた受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信部において受信した信号に対するアレイ合成を実行する。
【0011】
この態様によると、特異値間の違いの程度に応じて、ウエイトベクトルと補正行列との組合せが使用されるか、あるいはウエイトベクトルが使用されるので、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現できる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、送信方法である。この方法は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列を取得するステップと、取得した伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列を導出するとともに、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列を導出するステップと、導出した特異値行列に配置された特異値間の違いの程度を導出するステップと、導出した特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内であるかを判定するステップと、範囲内であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号との演算結果を複数のアンテナから送信し、範囲外であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号と補正行列の演算結果を複数のアンテナから送信するステップと、を備える。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、受信方法である。この方法は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列と、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列とが導出されるとともに、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内である場合に、ウエイト行列に含まれた送信ウエイトベクトルに演算された信号を送信装置から複数のアンテナにて受信するステップと、受信した信号をもとに、受信ウエイトベクトルを導出するステップと、導出した受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信した信号に対するアレイ合成を実行するステップとを備える。受信するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、送信ウエイトベクトルと補正行列とに演算された信号を受信し、導出するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、受信ウエイトベクトルの導出を停止し、実行するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、既に導出していた受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信した信号に対するアレイ合成を実行する。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1の送信装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(d)は、図1の通信システムにおける伝送路特性の一例を示す図である。
【図4】図4(a)−(c)は、図2の第1付加器から第4付加器における設定の一例を示す図である。
【図5】図2の送信装置から送信されるパケット信号の構成を示す図である。
【図6】図1の受信装置の構成を示す図である。
【図7】図2の送信装置による送信手順を示すフローチャートである。
【図8】図6の受信装置による受信手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、MIMO伝送を実行する通信システムに関し、特に、SVD(singular value decomposition)によって送信ウエイトベクトルを決定する通信システムに関する。前述のごとく、空間の相関性が低ければ、MIMOによる多重伝送が可能であったが、空間の相関性が高くなるほど、受信側でのデータ分離が困難になるので、多重伝送に適さなくなってくる。そのため、空間の相関性が高い場合であっても、MIMO伝送を実現することが望まれる。また、MIMOでの受信側では、一般的に演算量が増大する傾向にあるので、演算量の増大を抑制することも望まれる。そのため、本実施例に係る通信システムは、次の処理を実行する。
【0018】
送信装置は、伝送路行列を取得する。伝送路行列は、送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とした行列である。送信装置は、伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、ユニタリ行列を取得する。ユニタリ行列は、MIMOにおける複数のストリームのそれぞれに乗算すべき送信ウエイトベクトルの集合に相当する。また、特異値分解による特異値の大きい方を小さい方によって除算した値(以下、「特異値比」という)が計算される。特異値比が1に近ければ、空間の相関性が低く、特異値比が大きくなるほど、空間の相関性が高くなる。特異値比が1に近ければ、通常のSVDによるMIMO伝送と同様に、送信ウエイトベクトルによる重みづけがなされる。
【0019】
一方、特異値が大きくなると、送信装置は、補正行列を生成し、送信ウエイトベクトルによる重みづけとともに、補正行列による演算を実行する。ここで、補正行列は、空間の相関性が低いときの伝送路行列から、空間の相関性が高いときの伝送路行列を減算することによって導出される。このように空間の相関性が高い場合に、補正行列を使用するので、空間の相関性にかかわらず、安定したMIMO伝送が可能になる。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、送信装置10、受信装置12を含む。送信装置10は、送信用アンテナ14と総称される第1送信用アンテナ14a、第2送信用アンテナ14bを含み、受信装置12は、受信用アンテナ16と総称される第1受信用アンテナ16a、第2受信用アンテナ16bを含む。
【0021】
ここでは、ふたつの送信用アンテナ14のそれぞれから送信される送信信号の組合せ(以下、「送信信号ベクトル」という)がXと示され、ふたつの受信用アンテナ16のそれぞれにおいて受信される受信信号の組合せ(以下、「受信信号ベクトル」という)がRと示される。さらに、ふたつの送信用アンテナ14とふたつの受信用アンテナ16との間の伝送路特性を要素とした行列(以下、「伝送路行列」という)がHと示される。なお、送信信号ベクトルと受信信号ベクトルには、ふたつの要素がそれぞれ含まれ、伝送路行列には、4つの要素が含まれる。受信信号ベクトルは、次のように示される。
R = HX ・・・(1)
【0022】
ここで、説明を明瞭にするために、雑音項は無視している。伝送路行列に対して特異値分解を実行すると次のように示される。
H = UΣV ・・・(2)
UおよびVは、ユニタリ行列であり、Σは対角要素に特異値を有する特異値行列である。送信装置10が送信ウエイトベクトルにVを設定すると、式(1)は、次のように示される。
R =HVX = UΣX ・・・(3)
【0023】
また、受信装置12が受信ウエイトベクトルにVを設定すると、アレイ信号処理結果Yは、次のように示される。
Y = UR =ΣX ・・・(4)
前述のごとく、Σは特異値行列であるので、送信信号ベクトルXが特異値の大きさだけゲインを持って受信されることになる。なお、最終的には、送信信号ベクトルXが次のように取得される。
X = Σ−1Y ・・・(5)
【0024】
以上の処理は、次の手順によってなされる。受信装置12は、送信装置10からの信号をもとに、伝送路行列Hを導出する。受信装置12は、伝送路行列Hを送信装置10にフィードバックし、送信装置10は、伝送路行列HからV行列(以下、「ウエイト行列」という)を算出する。これらの処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0025】
送信装置10は、伝送路行列推定用信号(プリアンブル)の行列Pに、ウエイト行列を乗算した信号を送信する。受信装置12における受信プリアンブル行列は、次のように示される。
Z = HVP = UΣP ・・・(6)
受信装置12は、受信プリアンブル行列から伝送路行列を次のように推定する。
E = Z*P−1 = UΣ ・・・(7)
このとき、推定伝送路行列EはHではなく、UΣとして導出される。
【0026】
これにつづいて、送信装置10は、送信信号ベクトルを送信し、受信装置12は、受信信号ベクトルを取得する。受信信号ベクトルは、式(3)のように示される。受信装置12は、受信信号ベクトルRを復号することによって、送信信号ベクトルXを取得する。受信装置12から見た送信信号ベクトルXの等価伝送路は、UΣであるので、これを受信信号ベクトルからキャンセルすることによって、送信信号ベクトルXが取得される。なお、UΣは、推定伝送路行列Eとして既に推定されている。
【0027】
例えば、ZF(Zero−Forcing)受信がなされる場合は次のように示される。
−1R = Σ−1UΣX = X ・・・(8)
つまり、伝送路推定のためのプリアンブルにもウエイト行列を乗算しておくことによって、受信装置12において推定される伝送路行列がU行列とΣ行列から形成される。送信装置10では、推定した伝送路行列を使用することによって、ZF受信等にて、送信信号ベクトルXを取得する。さらに、本実施例においては、空間の相関性の大きさに応じて、追加の処理を実行する。この処理については後述する。
【0028】
図2は、送信装置10の構成を示す。送信装置10は、乗算部20と総称される第1乗算部20a、第2乗算部20b、第3乗算部20c、第4乗算部20d、加算部22と総称される第1加算部22a、第2加算部22b、第1発振器24、ミキサ26と総称される第1ミキサ26a、第2ミキサ26b、第3ミキサ26c、第4ミキサ26d、補完伝送路生成部28、第2発振器30、取得部32、第1導出部34、第2導出部36、判定部38、記憶部40、生成部42、設定部44、制御部46を含む。補完伝送路生成部28は、SW50と総称される第1SW50a、第2SW50b、第3SW50c、第4SW50d、分配器52と総称される第1分配器52a、第2分配器52b、付加器54と総称される第1付加器54a、第2付加器54b、第3付加器54c、第4付加器54d、加算器56と総称される第1加算器56a、第2加算器56bを含む。
【0029】
取得部32は、複数の送信用アンテナ14のそれぞれと図示しない複数の受信用アンテナ16のそれぞれとの間における伝送路特性が要素として配置された伝送路行列Hを取得する。なお、伝送路行列Hは、図示しない受信装置12において導出されており、取得部32は、無線回線を介して、受信装置12から伝送路行列Hを取得する。さらに、受信装置12に伝送路行列Hを導出させるために、送信装置10は、複数の送信用アンテナ14のそれぞれから伝送路行列推定用信号を受信装置12に予め送信する。なお、このような処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
第1導出部34は、取得部32が取得した伝送路行列Hに対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列Σを導出する。また、第1導出部34は、特異値行列Σに対応したユニタリ行列のウエイト行列Vを導出する。第1導出部34は、特異値行列Σを第2導出部36に出力し、ウエイト行列Vを設定部44に出力する。第2導出部36は、第1導出部34が導出した特異値行列Σに配置された特異値を取得する。特異値行列Σが2行2列のサイズを有する場合、第2導出部36は、ふたつの特異値を取得する。ここでは、ふたつの特異値のうちの大きい方を第1特異値とよび、小さい方を第2特異値とよぶ。さらに、第2導出部36は、第1特異値を第2特異値によって除算することによって、特異値比を導出する。特異値比は、特異値間の違いの程度に相当する。第2導出部36は、特異値比を判定部38に出力する。
【0031】
判定部38は、第2導出部36において導出した特異値比が予め定められた範囲内であるかを判定する。例えば、特異値比が1以上であり1.4以下であるか、あるいは1.4より大きいかが判定される。これは、ふたつの特異値が近いか、大きく異なっているかを判定することに相当する。ここでは、伝送路行列Hと特異値比との関係を説明する。図3(a)−(d)は、通信システム100における伝送路特性の一例を示す。図3(a)は、ふたつの送信用アンテナ14とふたつの受信用アンテナ16との間に形成される伝送路特性80を示す。第1伝送路特性80aは、第1送信用アンテナ14aと第1受信用アンテナ16aとの間に形成され、第2伝送路特性80bは、第1送信用アンテナ14aと第2受信用アンテナ16bとの間に形成され、第3伝送路特性80cは、第2送信用アンテナ14bと第1受信用アンテナ16aとの間に形成され、第4伝送路特性80dは、第2送信用アンテナ14bと第2受信用アンテナ16bとの間に形成される。
【0032】
ここでは、説明を明瞭にするために、各伝送路特性80は実数であると仮定する。図3(a)では、第1伝送路特性80aが「1」であり、第2伝送路特性80bが「−0.4」であり、第3伝送路特性80cが「0.5」であり、第4伝送路特性80dが「1.2」であるとする。この場合、第1特異値は「1.30」になり、第2特異値は「1.08」になり、特異値比は「1.2037」になる。この場合、前述の範囲内に含まれる。このような伝送路特性80の相関性は低いといえる。
【0033】
なお、反射波の影響が小さくなり、さらに長距離伝送になると、送信用アンテナ14と受信用アンテナ16間のそれぞれの伝送路特性80がほぼ同じ位相および振幅になってしまう。これは、空間の相関性が高いと表現される。伝送路特性80がまったく同じ場合には、伝送路行列は一次従属になるので、逆行列を求めることができなくなる。伝送路特性80がまったく同じではなくても、伝送路特性80がほぼ同じ位相および振幅では、逆行列の要素の値が大きくなるので、オーバフローが発生しやすくなる。図3(b)では、第1伝送路特性80aが「1」であり、第2伝送路特性80bが「0.8」であり、第3伝送路特性80cが「0.9」であり、第4伝送路特性80dが「1.1」であるとする。この場合、第1特異値は「1.91」になり、第2特異値は「0.01」になり、特異値比は「191」になる。これは、送信側の相関および受信側の相関がともに大きい場合に相当する。
【0034】
図3(c)では、第1伝送路特性80aが「1」であり、第2伝送路特性80bが「−0.7」であり、第3伝送路特性80cが「0.9」であり、第4伝送路特性80dが「−0.6」であるとする。この場合、第1特異値は「1.63」になり、第2特異値は「0.02」になり、特異値比は「81.5」になる。これは、送信側の相関が大きい場合に相当する。図3(d)では、第1伝送路特性80aが「1」であり、第2伝送路特性80bが「0.8」であり、第3伝送路特性80cが「−0.8」であり、第4伝送路特性80dが「−0.7」であるとする。この場合、第1特異値は「1.66」になり、第2特異値は「0.04」になり、特異値比は「41.5」になる。これは、受信側の相関が大きい場合に相当する。図2に戻る。
【0035】
記憶部40は、判定部38が範囲内であると判定した場合、取得部32が取得した伝送路行列Hを記憶する。つまり、記憶部40は、範囲内であると判定された最新の伝送路行列Hを記憶する。生成部42は、判定部38が範囲外であると判定した場合、取得部32が取得した伝送路行列Hと、記憶部40が記憶した伝送路行列(以下、「概知伝送路行列」という)をもとに、補正行列Wを生成する。前述のごとく、図3(b)−(d)の場合において、受信装置12にてMIMO伝送のための逆行列を導出することが困難になる。そのため、MIMO伝送による空間多重が困難になる。これに対応するために、生成部42は、補正行列Wを生成し、これを送信時に実空間伝送路に加えることによって、強制的に無相関伝送路を形成させ、多重空間伝送を可能にする。なお、補正行列Wは、補完伝送路ということもある。
【0036】
以下では、生成部42の処理を具体的に説明する。判定部38が範囲内であると判定した場合、生成部42は、補正行列Wを生成しない。そのため、MIMO伝送の際に、補正行列Wの付加はなされない。一方、判定部38が範囲外であると判定した場合、生成部42は、次のように補正行列Wを生成する。
補正行列|W|=概知伝送路行列|Y|−伝送路行列|H| ・・・(9)
【0037】
図4(a)−(c)は、第1付加器54aから第4付加器54dにおける設定の一例を示す。図4(a)−(c)における伝送路特性80は、図3(b)−(d)にそれぞれ対応する。また、概知伝送路行列は、図3(a)に対応する。図4(a)は、図3(b)における伝送路特性80に対して、導出された補正行列Wが付加器54に設定される。その結果、図3(b)における伝送路特性80であっても、図3(a)と同様の相関性が取得される。図4(b)、(c)についても同様である。図2に戻る。
【0038】
設定部44は、第1導出部34からウエイト行列Vを取得する。ウエイト行列Vが例えば2行2列の行列である場合、2行1列の送信ウエイトベクトルがウエイト行列にふたつ含まれている。設定部44は、ひとつの送信ウエイトベクトルを第1乗算部20aと第2乗算部20bに対して設定し、別の送信ウエイトベクトルを第3乗算部20cと第4乗算部20dに対して設定する。第1乗算部20aと第2乗算部20bは、ひとつのストリーム信号とひとつの送信ウエイトベクトルとを乗算し、第3乗算部20cと第4乗算部20dは、別のストリーム信号と別の送信ウエイトベクトルとを乗算する。第1加算部22aは、第1乗算部20aでの乗算結果と第3乗算部20cでの乗算結果とを加算する。これ(以下、「第1信号」という)は、第1送信用アンテナ14aから送信すべき信号に相当する。また、第2加算部22bは、第2乗算部20bでの乗算結果と第4乗算部20dでの乗算県とを加算する。これは、第2送信用アンテナ14bから送信すべき信号に相当する。
【0039】
第1発振器24は、所定の周波数のローカル信号を発生する。第1ミキサ26aは、第1発振器24からのローカル信号によって第1信号を周波数変換し、第2ミキサ26bは、第1発振器24からのローカル信号によって第2信号を周波数変換する。ここでは、例えば、中間周波数帯への周波数変換がなされるとする。また、中間周波数帯への変換がなされた第1信号および第2信号もそれぞれ第1信号および第2信号というものとする。
【0040】
判定部38が範囲内であると判定した場合、第1SW50aは、第1信号を第3SW50cに出力し、第3SW50cは、第1信号を第3ミキサ26cに出力する。また、判定部38が範囲内であると判定した場合、第2SW50bは、第2信号を第4SW50dに出力し、第4SW50dは、第2信号を第4ミキサ26dに出力する。これは、補完伝送路生成部28の処理をバイパスすることに相当し、ウエイト行列Vに含まれた送信ウエイトベクトルとストリーム信号との演算結果を複数の送信用アンテナ14から送信することに相当する。
【0041】
第2発振器30は、所定の周波数のローカル信号を発生する。第3ミキサ26cは、第2発振器30からのローカル信号によって第1信号を周波数変換し、第4ミキサ26dは、第2発振器30からのローカル信号によって第2信号を周波数変換する。ここでは、例えば、無線周波数帯への周波数変換がなされるとする。また、無線周波数帯への変換がなされた第1信号および第2信号もそれぞれ第1信号および第2信号というものとする。第1送信用アンテナ14aは、第1信号を送信し、第2送信用アンテナ14bは、第2信号を送信する。
【0042】
判定部38が範囲外であると判定した場合、第1SW50aは、第1信号を第1分配器52aに出力し、第2SW50bは、第2信号を第2分配器52bに出力する。第1分配器52aは、第1信号を第1付加器54aおよび第2付加器54bに出力し、第2分配器52bは、第2信号を第3付加器54cおよび第4付加器54dに出力する。第1付加器aは、生成部42において生成された補正行列Wのうち、対応する要素の値を第1信号に付加する。当該付加は、ベクトル演算にて乗算することに相当する。第2付加器54bから第4付加器54dも同様の処理を実行する。
【0043】
第1加算器56aは、第1付加器54aからの出力信号と第3付加器54cからの出力信号とを加算し、第2加算器56bは、第2付加器54bからの出力信号と第4付加器54dからの出力信号とを加算する。第3SW50cは、第1加算器56aから入力した信号を第3ミキサ26cに出力し、第4SW50dは、第2加算器56bから入力した信号を第4ミキサ26dに出力する。このように、空間の相関性が高い場合、ウエイト行列Vに含まれた送信ウエイトベクトルとストリーム信号と補正行列Wの演算結果が複数の送信用アンテナ14から送信されることによって、相関性が低くされる。
【0044】
図5は、送信装置10から送信されるパケット信号の構成を示す。上段がひとつのストリーム信号に相当し、下段が別のストリーム信号に相当する。各ストリーム信号において、トレーニング信号、補完有無信号、データ信号が順に配置される。ここで、トレーニング信号は、前述の伝送路行列推定用信号に相当する。トレーニング信号は、図示しない受信装置12にとって既知の信号であり、ひとつのストリーム信号と別のストリーム信号において互いに異なるパターンになるように規定される。
【0045】
補完有無信号は、補完伝送路生成部28において補正行列Wによる補完がなされているかを受信装置12に通知するための1ビットの信号である。例えば、補完有無信号が「0」であれば、補正行列Wによる補完がなされておらず、補完有無信号が「1」であれば、補正行列Wによる補完がなされている。つまり、補正行列Wとウエイト行列とストリーム信号との演算結果を複数の送信用アンテナ14から送信する場合、補正行列Wの使用が通知される。補完有無信号は、各ストリーム信号において同一の値である。データ信号は、MIMO伝送に対応するために、ふたつのストリーム信号において異なっている。
【0046】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0047】
図6は、受信装置12の構成を示す。受信装置12は、発振器60、ミキサ62と総称される第1ミキサ62a、第2ミキサ62b、処理部64と総称される第1処理部64a、第2処理部64b、導出部66、伝送路行列計算部68、抽出部70、制御部72を含む。第1処理部64aは、乗算部74と総称される第1乗算部74a、第2乗算部74b、積算部76を含む。
【0048】
発振器60は、所定の周波数のローカル信号を発生する。第1ミキサ62aは、発振器60からのローカル信号によって、第1受信用アンテナ16aにおいて受信した信号を周波数変換する。また、第2ミキサ62bは、発振器60からのローカル信号によって、第2受信用アンテナ16bにおいて受信した信号を周波数変換する。ここでは、例えば、ベースバンドへの周波数変換がなされる。伝送路行列計算部68は、第1ミキサ62aと第2ミキサ62bからの信号をもとに、伝送路特性を推定することによって、伝送路行列Hを生成する。伝送路行列Hの生成には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、伝送路特性の推定には、図示しない送信装置10において送信ウエイトベクトルが送信されていない信号が使用される。さらに、生成された伝送路行列Hは、無線回線を介して送信装置10に送信される。
【0049】
導出部66は、第1ミキサ62aと第2ミキサ62bからの信号を入力する。ここで、入力した信号は、図示しない送信装置10において送信ウエイトベクトルが送信された信号に相当する。導出部66は、入力した信号、特にトレーニング信号をもとに、受信ウエイトベクトルを導出する。受信ウエイトベクトルの導出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0050】
処理部64は、導出部66において導出した受信ウエイトベクトルを使用することによって、第1ミキサ62aと第2ミキサ62bからの信号に対するアレイ合成を実行する。なお、第1処理部64aは、ひとつのストリーム信号に対する処理を実行し、第2処理部64bは、別のストリーム信号に対応した処理を実行する。例えば、第1処理部64aにおいては、第1乗算部74aと第2乗算部74bが受信ウエイトベクトルの乗算を実行し、積算部76が乗算結果の積算を実行する。抽出部70は、アレイ合成された信号から補完有無信号を抽出する。補完有無信号が「1」である場合、抽出部70は、補正行列Wが使用されていることを導出部66に通知する。補完有無信号が「0」である場合、抽出部70による通知がなされなくてもよい。
【0051】
前述のごとく、補完有無信号が「1」である場合、送信装置10において特異値比が予め定められた範囲外になっており、入力した信号には、補正行列Wも演算されている。導出部66は、抽出部70からの通知を入力した場合、受信ウエイトベクトルの導出を停止する。その際、導出部66は、補完有無信号が「0」である場合に既に導出した受信ウエイトベクトルを処理部64に出力する。処理部64は、導出部66からの受信ウエイトベクトルを使用することによってアレイ合成を使用する。
【0052】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図7は、送信装置10による送信手順を示すフローチャートである。取得部32は、伝送路行列Hを取得する(S10)。第2導出部36は、特異値比Xを計算する(S12)。特異値比Xが1以上であり、かつ1.4以下であれば(S14のY)、記憶部40は、概知伝送路行列Yとして伝送路行列Hを記憶する(S16)。送信装置10は、MIMO伝送を実行する(S22)。特異値比Xが1以上であり、かつ1.4以下でなければ(S14のN)、生成部42は、概知伝送路行列Yから伝送路行列Hを減算することによって、補正行列Wを生成する(S18)。補完伝送路生成部28は、補正行列Wによる補正を実行する(S20)。送信装置10は、MIMO伝送を実行する(S22)。
【0053】
図8は、受信装置12による受信手順を示すフローチャートである。導出部66は、受信ウエイトベクトルを計算する(S40)。抽出部70が補完有無信号「1」を抽出しなかった場合(S42のN)、導出部66は、受信ウエイトベクトルを記憶する(S44)。処理部64は、データ信号に対するアレイ合成を実行する(S48)。抽出部70が補完有無信号「1」を抽出した場合(S42のY)、導出部66は、受信ウエイトベクトルを読み出す(S46)。処理部64は、データ信号に対するアレイ合成を実行する(S48)。
【0054】
本発明の実施例によれば、特異値比の大きさに応じて、送信ウエイトベクトルと補正行列との組合せを使用するか、あるいは送信ウエイトベクトルを使用するかを決定するので、必要に応じて相関性を低くできる。また、空間の相関性が高い場合に、補正行列を使用して相関性を低くするので、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現できる。また、特異値比が範囲内である場合の伝送路行列と、特異値比が範囲外である場合の伝送路行列とをもとに補正行列を生成するので、特異値比が範囲内である場合の伝送路行列に近くできる。また、さまざまな相関空間伝送路であってもデータ多重伝送が可能になるので、高容量データをスムーズに伝送できる。また、補正行列の使用を通知するので、それに適したアレイ合成処理を実行させることができる。
【0055】
また、特異値間の違いの程度に応じて、ウエイトベクトルと補正行列との組合せが使用されるか、あるいはウエイトベクトルが使用されるので、さまざまな種類の伝送路環境下においても多重伝送を実現できる。また、予め定めた特異値比の範囲であるかを判定するだけなので、空間の相関性が低いか否かを直ちに特定でき、ランク落ち等で多くの演算時間を要する状況の発生を低減できる。また、受信装置では、概知伝送路行列あるいはこれから求められる逆行列の解を記憶させておくことによって、空間伝送路が補完されるので、伝送行列を概知伝送路行列に近くできる。また、逆行列を解くための演算時間を大幅に短縮できる。
【0056】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0057】
本発明の実施例において、送信用アンテナ14の数と受信用アンテナ16の数はいずれも「2」であるので、特異値行列に含まれる特異値の数も「2」である。しかしながらこれに限らず例えば、送信用アンテナ14の数や受信用アンテナ16の数は、「2」よりも大きく、特異値行列に含まれる特異値の数が「2」よりも大きくてもよい。その際、特異値比は、最大の特異値を最小の特異値によって除算することによって取得される。また、最大の特異値を2番目に大きい特異値によって除算することによって特異値比が取得されてもよい。本変形例によれば、送信用アンテナ14の数や受信用アンテナ16の数が2より大きい場合であっても、本発明を適用できる。
【0058】
本発明の実施例において、判定部38は、予め定められた範囲が、1以上であり1.4以下であるとしている。しかしながらこれに限らず例えば、1.4が他の値であってもよい。この値は、例えば、シミュレーション実験等で定められればよい。本変形例によれば、最適な範囲を設定できる。
【符号の説明】
【0059】
10 送信装置、 12 受信装置、 14 送信用アンテナ、 16 受信用アンテナ、 20 乗算部、 22 加算部、 24 第1発振器、 26 ミキサ、 28 補完伝送路生成部、 30 第2発振器、 32 取得部、 34 第1導出部、 36 第2導出部、 38 判定部、 40 記憶部、 42 生成部、 44 設定部、 46 制御部、 50 SW、 52 分配器、 54 付加器、 56 加算器、 60 発振器、 62 ミキサ、 64 処理部、 66 導出部、 68 伝送路行列計算部、 70 抽出部、 72 制御部、 74 乗算部、 76 積算部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列を取得する取得部と、
前記取得部が取得した伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列を導出するとともに、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列を導出する第1導出部と、
前記第1導出部が導出した特異値行列に配置された特異値間の違いの程度を導出する第2導出部と、
前記第2導出部において導出した特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内であるかを判定する判定部と、
前記判定部が範囲内であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号との演算結果を複数のアンテナから送信し、前記判定部が範囲外であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号と補正行列の演算結果を複数のアンテナから送信する送信部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記判定部が範囲内であると判定した場合、前記取得部が取得した伝送路行列を記憶する記憶部と、
前記判定部が範囲外であると判定した場合、前記取得部が取得した伝送路行列と、前記記憶部が記憶した伝送路行列をもとに、補正行列を生成する生成部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信部は、補正行列とウエイト行列と信号との演算結果を複数のアンテナから送信する場合、補正行列の使用を通知することを特徴とする請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列と、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列とが導出されるとともに、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内である場合に、ウエイト行列に含まれた送信ウエイトベクトルに演算された信号を送信装置から複数のアンテナにて受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号をもとに、受信ウエイトベクトルを導出する導出部と、
前記導出部において導出した受信ウエイトベクトルを使用することによって、前記受信部において受信した信号に対するアレイ合成を実行する処理部とを備え、
前記受信部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、送信ウエイトベクトルと補正行列とに演算された信号を受信し、
前記導出部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、受信ウエイトベクトルの導出を停止し、
前記処理部は、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、前記導出部において既に導出していた受信ウエイトベクトルを使用することによって、前記受信部において受信した信号に対するアレイ合成を実行することを特徴とする受信装置。
【請求項5】
送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列を取得するステップと、
取得した伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列を導出するとともに、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列を導出するステップと、
導出した特異値行列に配置された特異値間の違いの程度を導出するステップと、
導出した特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内であるかを判定するステップと、
範囲内であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号との演算結果を複数のアンテナから送信し、範囲外であると判定した場合、ウエイト行列に含まれたウエイトベクトルと信号と補正行列の演算結果を複数のアンテナから送信するステップと、
を備えることを特徴とする送信方法。
【請求項6】
送信側の複数のアンテナのそれぞれと受信側の複数のアンテナのそれぞれとの間における伝送路特性を要素とする伝送路行列に対して特異値分解を実行することによって、特異値が配置された対角行列の特異値行列と、特異値行列に対応したユニタリ行列のウエイト行列とが導出されるとともに、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲内である場合に、ウエイト行列に含まれた送信ウエイトベクトルに演算された信号を送信装置から複数のアンテナにて受信するステップと、
受信した信号をもとに、受信ウエイトベクトルを導出するステップと、
導出した受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信した信号に対するアレイ合成を実行するステップとを備え、
前記受信するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、送信ウエイトベクトルと補正行列とに演算された信号を受信し、
前記導出するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、受信ウエイトベクトルの導出を停止し、
前記実行するステップは、特異値行列に配置された特異値間の違いの程度が予め定められた範囲外である場合に、既に導出していた受信ウエイトベクトルを使用することによって、受信した信号に対するアレイ合成を実行することを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93670(P2013−93670A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233193(P2011−233193)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】