説明

送信装置、送信方法、受信装置、受信方法、物標探知装置、および物標探知方法

【課題】2次エコーや干渉を抑圧し、物標による真の像のみを正確に探知できる物標探知装置を実現する。
【解決手段】送信部12は、短パルス信号PSと中パルス信号PMとを含むパルス列PGを、所定のパルス列繰り返し周期PRIで繰り返しながら送信する。少なくとも1つのパルス列PGでは、それぞれのパルス列PGの開始タイミングを基準にしてパルス列PG内での短パルス信号PSおよび中パルス信号PMの送信タイミングとが異なるように設定されている。受信信号処理部14は、このようなパルス列PGの各パルス状信号の受信データを取得し、それぞれのパルス列PGの開始タイミングを基準にした各パルス状信号の時間的位置が一致するように、受信データを置き換える。そして、受信信号処理部14は、置き換えた受信データをパルス列PG間で比較し、パルス列PG間での再現性等を得ることで、2次エコーや干渉と真の像とを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数種類のパルス状信号を送信する送信装置および送信方法と、送信されたパルス状信号の反射信号を受信する受信装置および受信方法と、当該送信装置および受信装置を備えた物標探知装置、および、当該送信方法および受信方法を含む物標探知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定範囲の探知領域に電波信号を送信して、その反射信号を受信することで探知領域に対する探知画像を形成する等の物標探知を行うレーダ装置等の物標探知装置が各種考案されている。このようなレーダ装置では、特許文献1や特許文献2に示すように、送信する電波信号としてパルス状信号を用いており、当該パルス状信号を所定間隔で連続的に送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2656097号公報
【特許文献2】特許2788926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のレーダ装置では、送信するパルス状信号を生成する際に、大きな送信電力が容易に得られるマグネトロンを用いていた。しかしながら、昨今のスプリアス規制や小型化等に伴い、マグネトロンレーダに代わり半導体等の固体化レーダが多く実用化されている。
【0005】
このような固体化レーダは、マグネトロンレーダと比較して生成可能なパルスの振幅が小さいので、遠方を探知する場合等で大きな送信電力が必要な場合には、パルス幅を広くしなければならない。しかしながら、1つのアンテナで送受信を切り替えて行うレーダ装置では、送信中に受信を行うことができず、パルス幅が広いと、その分反射信号が受信できないブラインドエリアがレーダ装置の近傍領域に生じてしまう。
【0006】
このため、パルス幅が広いパルス状信号のブラインドエリアを探知するために、パルス幅の狭いパルス状信号を用いる方法が考案されている。この方法では、連続するパルス幅の広いパルス状信号の間に、パルス幅の狭いパルス状信号を送信する。
【0007】
しかしながら、この方法では、自船の送信するパルス幅の異なるパルス状信号の2次エコーを受信して、実際には物標の無い位置から、物標反射以外とは思えないレベルのエコーが得られてしまうことがあり、誤検知の元になってしまうことがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複数種類のパルス状信号を用いて物標探知を行う場合であっても、正確且つ確実な物標探知を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を生成する信号生成部と、パルス状信号を外部へ放射するアンテナとを備えた送信装置に関するものである。この送信装置における信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の順序と、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の順序が異なる。
【0010】
また、この発明の送信装置の信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せと、所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せが異なる。
【0011】
これらの構成では、複数種類のパルス状信号が常に同じパターンで放射され続けることがない。これにより、当該複数種類のパルス状信号のエコー信号を受信する際に、異なる種類のパルス状信号のエコー信号同士の受信間隔が常に同じにならないようにできる。
【0012】
また、この発明の送信装置の信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、複数種類のパルス状信号を構成する各種類のパルス状信号を少なくとも一つずつ含むパルス列を、所定の時間の単位としている。
【0013】
この構成では、上述のような複数種類のパルス状信号の放射を実現する、より具体的な構成を示している。この構成では、複数種類のパルス状信号の組合せからなるパルス列の概念を用いる。そして、この構成では、パルス列内でのそれぞれのパルス状信号の組合せや送信順序を、パルス列毎に異ならせる。
【0014】
例えば、あるパルス列では、短パルス、中パルスの順に送信し、これに連続する次のパルス列では、中パルス、短パルスの順で送信する。これにより、例えば、同じ短パルスであっても、それぞれにパルス列の基準タイミングから短パルス送信までの時間間隔が異なる。これらにより、それぞれのパルス列の基準タイミングに対する同じ種類のパルス状信号の受信信号(エコー信号)の得られるタイミングを、意図的に異ならせることができる。
【0015】
また、例えば、基本のパルス列では、短パルスと中パルスとを一つずつ含む構成であるのに対して、特定のパルス列では、短パルスを二つと中パルスを一つ含むに構成に設定する。この設定でも、同じ種類のパルス状信号に対して、それぞれのパルス列の開始タイミングからの時間的間隔を、パルス列毎に異ならせることができる。また、この方法であれば、複数種類のパルス状信号の送信タイミングをパルス列毎にシフトさせたり、パルス状信号の送信順序を変化させる必要が無く、パルス列内での特定のパルス状信号の送信回数を単に増やすだけでよい。
【0016】
また、この発明の送信装置では、各パルス列における特定の二種類のパルス状信号の送信タイミング間隔が、複数のパルス列における少なくとも1つのパルス列で異なる。
【0017】
この構成では、上述のパルス列毎にタイミングを異ならせる具体的な別の方法を示すものである。この方法を組み合わせても、同じ種類のパルス状信号に対して、それぞれのパルス列の開始タイミングからの時間的間隔を、パルス列毎に変化させることができる。そして、この設定を用いることで、各パルス状信号の送信タイミングを、さらに自由に設定できる。
【0018】
また、この発明は、それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信装置に関するものである。この受信装置は、アンテナと受信信号処理部とを備える。アンテナは、エコー信号を受信する。受信信号処理部は、パルス状信号の種類毎に受信データの基準タイミングを一致させ、パルス状信号の種類毎に受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する。
【0019】
この構成では、上述のように複数種類のパルス状信号がランダムに送信され、そのエコー信号を受信しても、パルス状信号の種類毎にエコー信号に基づく受信データの基準タイミングを一致させる。そして、このように基準タイミングを一致させた受信データ同士を比較すれば、各受信データの再現性等に基づいて2次エコーを抑圧できる。この際、他船の送信するパルス状信号を受信しても、この処理を用いることで、当該受信による干渉の影響を抑圧できる。
【0020】
また、この発明は、それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号の組合せや順序が異なる複数のパルス列を設定した状態で、パルス列毎に送信された複数のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信装置に関するものである。この受信装置は、アンテナと受信信号処理部とを備える。アンテナは、エコー信号を受信する。受信信号処理部は、各パルス列の複数種類のパルス状信号の受信データを、パルス列の基準タイミングをパルス列間で一致させるとともに、該パルス列の基準タイミングに対して該パルス列を構成する複数種類のパルス状信号の受信データの各基準タイミングを一致させ、パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する。
【0021】
この構成では、複数種類のパルス状信号の送信にパルス列の概念を用いた場合の受信について示す。この構成では、パルス列内での複数種類のパルス状信号が異なるような場合であっても、並べ替えにより、パルス状信号の送信タイミングをパルス列間で一致させることができ、パルス列毎の受信信号を比較するための基準を一致させることができる。そして、このように基準タイミングを一致させた受信信号同士を比較すれば、各受信データの再現性等に基づいて2次エコーを抑圧できる。さらに、他船からのパルス状信号による干渉も抑圧できる。
【0022】
また、この発明の受信装置の受信信号処理部は、パルス列毎の受信データをそれぞれ個別に記憶するスイープメモリを備える。受信信号処理部は、それぞれのスイープメモリに記憶された受信データ同士を比較して、比較結果に基づくデータを生成する。
【0023】
この構成では、受信装置の具体的構成を示すものであり、比較しようとするパルス列毎にスイープメモリを用意して、それぞれの受信データを記憶しておくようにしてもよい。
【0024】
また、この発明の受信装置の受信信号処理部は、比較対象となる同種のパルス状信号による複数の受信データから代表値データを採用することで、比較結果に基づくデータを生成する。
【0025】
この構成では、比較処理の具体的方法を示すものである。この方法では、最小値データ等の代表値データを採用することで、パルス列毎に連続して同じ距離位置に物標のデータが現れた場合に高いレベルのデータが得られ、2次エコーや干渉であれば低いレベルのデータに抑圧される。
【0026】
この発明は、互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を放射し、エコー信号に基づく受信データを受信する物標探知装置に関するものである。この物標探知装置は、信号処理部、アンテナ、および受信信号処理部を備える。信号処理部で生成される複数種類のパルス状信号は、所定の時間内に含まれる複数のパルス状信号の順序と、所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数のパルス状信号の順序が異なる、または/および、生成される複数種類のパルス状信号が、所定の時間内に含まれる複数のパルス状信号の組合せと、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数のパルス状信号の組合せが異なる。アンテナは、信号生成部から与えられたパルス状信号を順次外部へ放射するとともに、エコー信号を受信する。受信信号処理部は、パルス状信号の種類毎に受信データの基準タイミングを一致させ、パルス状信号の種類毎に受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する。
【0027】
この構成は、上述の送信装置と受信装置とを組として備えることで、物標探知装置を構成している。このような構成とすることで、複数周波数のパルス状信号を用いた物標探知における2次エコーを抑圧できる。さらに、他船から送信されるパルス状信号による干渉も抑圧できる。
【0028】
また、この発明の物標探知装置は、比較結果に基づくデータを用いて画像形成を行う画像形成部を備える。この構成では、上述の比較結果に基づいて画像形成が行われることで、真の像のみが画面に表示される。これにより、正確且つ視認性の良い探知結果を、オペレータへ表示できる。
【0029】
また、この発明の物標探知装置のアンテナは所定の周期で回転する。この構成では、アンテナが回転することで、物標探知装置の全周囲方向に対して、上述の物標探知を行うことができる。
【0030】
なお、上述の説明では、送信装置、受信装置、物標探知装置を例に本願の作用を記載したが、送信方法、受信方法、物標探知方法や、これらの方法を実現する処理プログラムを用いても、同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数種類のパルス状信号を送信して物標探知を行う場合にであっても、受信データにおける2次エコーの信号や干渉による影響を抑圧し、正確且つ確実な物標探知を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のレーダ装置の探知概念、送信概念、受信概念、および問題点を模式的に示した図である。
【図2】第1の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係るレーダ装置の送信概念を示す図である。
【図4】第1の実施形態のレーダ装置の送受信のパルス状態を示す図であって、(A)は送信タイミングチャート、(B)は受信信号の状態を時系列で示した図、(C)は受信信号を並び替えた状態を示す図である。
【図5】2次エコーの除去概念を示すための図である。
【図6】干渉の除去概念を示す図であり、(A)は送受信のタイミングチャート、(B)は受信信号を並び替えた状態を示す図、(C)は干渉抑圧処理後のデータ列を示す図である。
【図7】第1の実施形態のレーダ装置におけるその他の送信タイミングチャートを示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る短パルス信号PS、中パルス信号PM、および長パルス信号PLからなる三連パルスの送信タイミングチャートである。
【図9】三連パルスにおける2次エコーの除去概念を説明する図であり、(A)は受信タイミングチャート、(B)は受信信号を並び替えた状態を示す図、(C)は各スイープメモリのデータ列、および、2次エコー抑圧処理後のデータ列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1の実施形態に係る物標探知装置について図を参照して説明する。なお、以下では、物標探知装置としてレーダ装置を例に示すが、本実施形態の構成を、ソナー装置等パルス状信号を用いる他の装置に適用することもできる。
【0034】
まず、本実施形態のレーダ装置が解決した問題について、図を用いて詳細に説明する。
【0035】
図1は、従来のレーダ装置の探知概念、送信概念、受信概念、および問題点を模式的に示した図である。
【0036】
一般的なレーダ装置は、図1(A),(B)に示すように、所定範囲内の自船10から比較的遠い中距離領域を探知するための中パルス信号PMと、当該中パルス信号PMでブラインドエリアとなる近距離領域を探知するための短パルス信号PSとを、繰り返し送信する。具体的には、図1(B)に示すように、従来のレーダ装置は、短パルス信号PSと中パルス信号PMとが所定の時間間隔で送信されるように設定されたパルス列PGを、予め設定したパルス列繰り返し周期PRIで順次送信する送信制御を行っている。この際、各パルス列の構成および短パルス信号PSと中パルス信号PMとの時間的関係、短パルス信号PSの待機期間RTおよび中パルス信号PMの待機期間RTは、パルス列によらず一定である。
【0037】
しかしながら、このような従来の送信制御を行った場合、次に示す問題が生じる。
すなわち、短パルス信号PSは、短距離領域内ですべて反射または減衰されるとは限らず、中距離領域内まで伝搬する。そして、中距離領域に存在する物標90の反射断面積が大きい等の状況によっては、図1(A)に示すように物標90に反射して、その反射信号がレーダ装置に受信されてしまう。
【0038】
このため、図1(C)に示すように、物標90の中パルス信号PM(PM1,PM2)による真の受信信号RM(RM1,RN2)とともに、短パルス信号PS(PS1,PS2)による2次エコーの受信信号RS(RS1,RS2)が、中パルス信号PMの待機期間RT中に受信されてしまう。
【0039】
この場合、自船10と物標90との真の距離Dに応じた、中パルス信号PMの送信タイミングと当該中パルス信号による受信信号の受信タイミングとの時間差TDとともに、中パルス信号PMの送信タイミングと短パルス信号PSによる受信信号の受信タイミングとの時間差Tvに応じた2次エコーが検出されてしまい、図1(D)に示すように、現実には存在しない自船10から距離vの位置に、2次エコーの像である物標90Iが存在するかのように検出されてしまう。
【0040】
そして、この2次エコーは、全てのパルス列PGの送受信期間内における時間軸上の同じ位置に生じるので、パルス列間での相関処理を行っても、正確に検出、除去することができない。
【0041】
また、このような2次エコーとともに、他船のレーダ装置からの干渉も、当該他船のレーダ装置の送信周期が自船と同じであれば、時間軸上の同じ位置に干渉の像が生じるので、パルス列間での相関処理を行っても、正確に検出、除去することができない。
【0042】
本実施形態のレーダ装置では、このようなそれぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号を用いて物標探知を行う際の2次エコーの像や干渉の影響を抑圧することができる。以下、具体的な構成および方法を説明する。
【0043】
図2は本実施形態のレーダ装置11の機能ブロック図である。図3は送信概念を模式的に示した図である。図4(A)は本実施形態の送信制御による送信タイミングチャートを示し、図4(B)は図4(A)の送信制御により図3のような状況で得られる受信信号の時系列での状態を示す図であり、図4(C)は、図4(B)の受信信号を並び替えた時系列での状態を示す図である。なお、図4では、パルス列PG1からパルス列PG4までが示されているが、これ以降についてもパルス列PGは繰り返されている。図5は、2次エコーの除去概念を示す図であり、図5(A)は受信信号処理部14の受信データ記憶部42の各スイープメモリのデータ列を示し、図5(B)は2次エコー除去処理後のデータ列を示している。
【0044】
図2に示すように、本実施形態のレーダ装置11は、本願の送信装置に相当する送信部12、サーキュレータ13、アンテナ900、および、本願の受信装置に相当する受信信号処理部14を備える。
【0045】
送信部12は、送信制御部21および送信信号生成部22を備える。送信制御部21は、図4(A)に示すような送信タイミングチャートを実現する送信制御情報を、送信信号生成部22へ与える。送信信号生成部22は、送信制御情報に基づいて短パルス信号PSおよび中パルス信号PMの2種類のパルス状信号を含むパルス列PGを所定タイミングで生成し、順次、サーキュレータ13へ出力する。
【0046】
具体的には、図4(A)に示すように、短パルス信号PSと中パルス信号PMとを一組としてパルス列PGを構成する。中パルス信号PMとは、所定の探知領域を探知するために所定のパルス長WPMを有するパルス状信号である。短パルス信号PSとは、中パルス信号PMのパルス長WPMによって生じるブラインドエリアとなる近距離領域を探知するためのパルス状信号である。このため、短パルス信号PSのパルス長WPSは中パルス信号PMのパルス長WPMよりも短く設定されている。
【0047】
さらに、各パルス列PGでは、時間軸上において、短パルス信号PSの送信後には、短距離領域の最遠方に該当する距離に応じた待機時間RTが設定されており、中パルス信号PMの送信後には、中距離領域の最遠方すなわち探知領域の最遠方に該当する距離に応じた待機時間RTが設定されている。そして、各パルス列PGは、一定のパルス列繰り返し周期PRIで繰り返されるように設定されている。
【0048】
ここで、本願では、短パルス信号PSと中パルス信号PMとの順序を全てのパルス列PGで一致させているのではなく、時間軸上で隣り合うパルス列PG間で短パルス信号PSと中パルス信号PMとの順序が入れ替わるように設定している。例えば、図4(A)に示すように、時系列に列ぶパルス列PG1,PG2,PG3,PG4に対して、パルス列PG1では短パルス信号PS1、中パルス信号PM1の順で送信し、パルス列PG2では中パルス信号PM2、短パルス信号PS2の順で送信し、パルス列PG3では短パルス信号PS3、中パルス信号PM3の順で送信し、パルス列PG4では中パルス信号PM4、短パルス信号PS4の順で送信する。なお、この例では、パルス列PG毎に交互に送信順序が代わる例を示したが、少なくとも1つのパルス列PGが他のパルス列PGと異なる送信順序に設定されていればよい。また、このような短パルス信号PSと中パルス信号PMの送信順序が異なるパルス列PGを含む複数のパルス列での送信順序は、予め設定した送信スケジュールに準じて設定してもよく、操作入力等による所定のランダムなトリガに準じて設定してもよい。
【0049】
図2に戻り、サーキュレータ13は、送信部12の送信信号生成部22から出力された短パルス信号PSおよび中パルス信号PMをアンテナ900へ伝送する。アンテナ900は、自船10に配備されており、図3に示すように、水平面上を所定の回転速度で回転しながら、サーキュレータ13を介して入力された短パルス信号PSおよび中パルス信号PMを所定の指向性で外部へ放射する。これにより、図3に示すように、各パルス列PGを構成する短パルス信号PSおよび中パルス信号PMが、方位方向を順次変えながら放射される。
【0050】
一方、アンテナ900は、外部から到来した電波を受波して受信信号をサーキュレータ13へ出力する。この受信信号に、アンテナ900から放射した短パルス信号PSおよび中パルス信号PMの反射信号が含まれている。サーキュレータ13は、アンテナ900から伝搬された受信信号を受信信号処理部14へ伝送する。このような構成により、自船10の全周囲方位の物標探知が可能になる。
【0051】
受信信号処理部14は、A/D変換部41、受信データ記憶部42、受信データ比較部43、および画像データ生成部44を備え、送信部12からの送信制御情報に基づいて、短パルス信号PSおよび中パルス信号PMが送信されていない待機期間RT,RTを受信期間として受信処理を実行する。
【0052】
A/D変換部41は、サーキュレータ13を介して取得した受信信号を、所定のサンプリングタイムでアナログ−デジタル変換して、所定ビット数からなる受信データを形成し、受信データ記憶部42へ出力する。
【0053】
受信データ記憶部42は、図5(A)に示すような所謂スイープメモリを備え、パルス列PG毎に、順次入力される受信データを近距離側から遠距離側へ列ぶように、すなわち自船10を基準として距離(R)方向に列ぶように、順次1スイープ分だけ記憶する。この際、受信データ記憶部42は、方位(θ)方向に列ぶ複数スイープすなわち複数のパルス列PGの受信データを記憶できるように、複数のスイープメモリを備えている。そして、スイープメモリの数は、後段の比較処理における一回の比較処理の対象となるパルス列PGの数だけあればよい。
【0054】
具体的なスイープメモリへの記憶方法としては、例えば、次の方法を用いる。
短パルス信号PSが先に送信され、中パルス信号PMが後に送信されるパルス列PG1,PG3では、まず、短パルス信号PSの受信データが入力されると、送信制御情報の送信タイミング情報に基づいて、スイープメモリ上の距離(R)方向の最も近い位置に対応する距離方向アドレスを起点として、距離(R)方向に沿って、短パルス信号PSの探知範囲に準じて割り当てられた距離方向アドレスまで、それぞれの距離(R)に応じてた短パルス信号PSの受信データを順次書き込む。この後、中パルス信号PMの受信データが入力されると、送信制御情報の送信タイミング情報に基づいて、上述の最も近い位置に対応する距離方向アドレスを起点として、先の短パルス信号PSの距離(R)範囲より遠方に割り当てられた中パルス信号PMのパルス長WPM分に対応するデータメモリ領域に距離(R)に応じて中パルス信号PMの受信データを順次書き込む。
【0055】
一方、中パルス信号PMが先に送信され、短パルス信号PSが後の送信されるパルス列PG2,PG4では、まず中パルス信号PMの受信データが入力されると、送信制御情報の送信タイミング情報に基づいて、最も近い位置に対応する距離方向アドレスを起点として、距離(R)方向に沿って中パルス信号PM用に割り当てられた中パルス信号PMのパルス長WPM分に対応するデータメモリ領域に、それぞれの距離(R)に応じて、中パルス信号PMの受信データを順次書き込む。この後、短パルス信号PSの受信データが入力されると、送信制御情報の送信タイミング情報に基づいて、最も近い位置に対応する距離方向アドレスを起点として、距離(R)方向に沿って、短パルス信号PSに割り当てられたアドレスまで、それぞれの距離(R)に応じて短パルス信号PSの受信データを順次上書きする。
【0056】
受信データ記憶部42は、スイープメモリ毎に全てのアドレスに受信データが書き込まれ、比較対象分のスイープ受信データPGnSD(nはパルス列PGの番号に相当)が蓄積されると、当該スイープ受信データPGnSD群を、受信データ比較部43へ出力する。
【0057】
受信データ比較部43は、入力された複数のスイープの受信データPGnSDの同じ距離方向アドレスの受信データ同士を比較する。そして、受信データ比較部43は、対象の距離方向アドレスにおける複数の受信データから、最小値データ(本願の「代表値データ」の一例に相当する。)を算出する。受信データ比較部43は、最小値データを用いて、画像形成用スイープデータGDmSD(mは正の整数)を形成し、画像データ生成部44へ出力する。このような比較、最小値算出処理を実行すると、詳細は後述するが、比較したスイープ同士の同距離位置すなわち並び替え処理を行ったパルス列同士の時間軸上の同じ位置に現れる真の像の受信データのみが高いレベルのデータとして画像形成用スイープデータGDmSDに現れる。一方、同じ位置に現れない2次エコーや干渉の受信データは画像形成用スイープデータGDmSDにおいてレベルが抑圧される。これにより、2次エコーや干渉による受信データへの影響を抑圧することができる。
【0058】
画像データ生成部44は、入力された画像形成用スイープデータGDmSDの各データのレベルに基づいて、輝度や色を調整した探知画像を形成し、表示器(図示せず)に表示させる。この際、画像形成用スイープデータGDmSDは2次エコーや干渉の影響が抑圧されているので、2次エコーや干渉が表示器上に表示されることを抑制し、真の物標のエコーのみを正確且つ確実に表示することができる。
【0059】
次に、より詳細な2次エコーおよび干渉の抑圧の原理について説明する。
(A)まずは、図3、図4、および図5を参照して2次エコーの抑圧ついて説明する。
【0060】
図3に示すように、中距離領域内に反射断面積の大きな物標90が存在する場合で、図4(A)の示すような送信タイミングで各パルス列PG1〜PG4が順次送信されると、図4(B)に示すような同じ物標90でありながら、パルス列PG毎に、各パルス列PGの開始タイミングを基準として異なるタイミングの受信信号が得られる。
【0061】
(1)パルス列PG1による送受信
まず、パルス列PG1の短パルス信号PS1が本来の目的である短距離領域を超えて、中距離領域に存在する物標90で反射し、受信信号RS1が受信される。受信信号RS1は、短パルス信号PS1の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。この短パルス信号PS1の受信タイミングは、中パルス信号PM1の待機期間(受信期間)RT内で受信されるので、中パルス信号PM1の送信開始タイミングからの遅延時間Tvに準じてスイープメモリに記憶されてしまう。
【0062】
次に、パルス列PG1の中パルス信号PM1が物標90で反射して受信信号RM1が受信される。受信信号RM1は、中パルス信号PM1の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。
【0063】
したがって、パルス列PG1による受信データから得られるスイープ受信データPG1SDは、図5(A)の最上段に示すように、中パルス信号PM1により距離Dに対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRMD1と、短パルス信号PS1により距離vに対応する距離方向アドレスに現れる2次エコー(偽のエコー)である受信データRSD1とを含む。
【0064】
(2)パルス列PG2による送受信
上述のパルス列PG1に続き、パルス列PG2の中パルス信号PM2が物標90に反射して受信信号RM2が受信される。受信信号RM2は、中パルス信号PM2の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。
【0065】
次に、パルス列PG2の短パルス信号PS2が本来の目的である短距離領域を超えて、中距離領域に存在する物標90で反射し、受信信号RS2が受信される。受信信号RS2は、短パルス信号PS2の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。この短パルス信号PS2の受信タイミングは、次のパルス列PG3の期間内で受信され、パルス列PG2の期間内では受信されない。
【0066】
したがって、パルス列PG2による受信データから得られるスイープ受信データPG2SDは、図5(A)の上から二段目に示すように、中パルス信号PM2により距離Dに対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRMD2のみを含み、短パルス信号PS2による2次エコー(偽のエコー)の像である受信データRSD2を含まない。
【0067】
(3)パルス列PG3による送受信
上述のパルス列PG2に続き、パルス列PG3の短パルス信号PS3が本来の目的である短距離領域を超えて、中距離領域に存在する物標90で反射し、受信信号RS3が受信される。受信信号RS3は、短パルス信号PS3の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。この短パルス信号PS3の受信タイミングは、中パルス信号PM3の待機期間(受信期間)RT内で受信されるので、中パルス信号PM3の送信開始タイミングからの遅延時間Tvに準じてスイープメモリに記憶されてしまう。
【0068】
次に、パルス列PG3の中パルス信号PM3が物標90で反射して受信信号RM3が受信される。受信信号RM3は、中パルス信号PM3の送信開始タイミングを基準として、アンテナ900(自船10)と物標90との距離Dの2倍に相当する時間長TDだけ遅延したタイミングで受信される。
【0069】
また、上述のパルス列PG2の短パルス信号PS2の受信信号RM2もパルス列PG3の期間内に存在する。
【0070】
したがって、パルス列PG3に対応するスイープ受信データPG3SDは、図5(A)の上から三段目に示すように、中パルス信号PM3により距離Dに対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRMD3と、短パルス信号PS3により距離vに対応する距離方向アドレスに現れる2次エコー(偽のエコー)の像である受信データRSD3と、直前のパルス列PG2の短パルス信号PS2により現れる2次エコー(偽のエコー)の像である受信データRSD2と、を含む。
【0071】
このようにして得られた短パルス信号PSと中パルス信号PMの順序が完全には一致しないパルス列PG1,PG2,PG3のスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDを距離方向アドレス毎に比較する。図5(A)の最上段、上から二段目および上から三段目に示すように、中パルス信号PM1,PM2,PM3による真の像である受信データRMD1,RMD2,RMD3は所定レベル以上で同じ距離方向アドレスに連続的に現れる。一方、短パルス信号PS1,PS2,PS3による2次エコーの像である受信データRSD1,RSD2,RSD3は、同じ距離方向アドレス、すなわち、自船10からの同じ距離位置に現れない。
【0072】
この性質を利用し、スイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDの距離方向アドレス毎に最小値を取得する。このような最小値を取得することで、中パルス信号PMの受信データが現れる距離方向アドレスでは、受信データのレベルが殆ど抑圧されず、画像形成用スイープデータに反映される。一方、短パルス信号PSの2次エコーの受信データが現れる距離方向アドレスでは、受信データのレベルが抑圧されて、画像形成用スイープデータに反映される。
【0073】
例えば、図5(B)に示すような、距離方向アドレスRdに真の像である中パルス信号PMの受信データが現れ、距離方向アドレスRvに2次エコーの像である短パルス信号PSの受信データが現れる場合を例に説明する。この場合、当該距離方向アドレスRdでのスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDの受信データは「32」である。したがって、最小値である画像形成用スイープデータGD1SDの距離方向アドレスRdのデータは、抑圧されず「32」となる。一方、当該距離方向アドレスRvでのスイープ受信データPG1SD,PG3SDの受信データは「8」であり、受信データPG2SDの受信データは「0」である。したがって、最小値である画像形成用スイープデータGD1SDの距離方向アドレスRvのデータは、抑圧されて「0」となる。
【0074】
このように、本実施形態の処理を用いれば、中パルス信号PMによる真の像を抑圧することなく、短パルス信号PSの2次エコーによる影響を抑圧することができる。
【0075】
なお、パルス列PG4以降についても同様に、比較対象とするパルス列PG間で、短パルス信号PSと中パルス信号PMとの送信順序が異なれば、同様に、2次エコーの像となる受信データは抑圧され、真の像による受信データのみからなる画像形成用スイープデータGDnSDを形成することができる。
【0076】
また、上述の説明では、時間軸上で隣り合うパルス列PG間で、短パルス信号PSと中パルス信号PMの送信順序が異なるように設定しているので、これら時間軸上で隣り合うパルス列同士を含むように比較したが、比較対象とする複数のパルス列PGは時間軸上で隣り合っている必要はなく、比較対象とする受信データの元となる複数のパルス列が完全に一致しない、すなわち、少なくとも一つでも他のパルス列とパルス状信号の送信順序が異なるパルス列が存在するように設定すればよい。
【0077】
(B)次に、図6を参照して干渉の抑圧ついて説明する。図6は干渉除去の概念を説明する図である。図6(A)は送信および受信のタイミングチャートを示し、図6(B)はパルス列PG同士の短パルス信号PSと中パルス信号PMの順序を一致させるように受信信号の並び替え処理を行った後の干渉の受信信号RCのタイミングチャートを示し、図6(C)は各スイープメモリのデータ列を示し、図6(D)は干渉抑圧処理後のデータ列を示している。
【0078】
他船が送信するパルス状信号を自船の受信期間に受信した場合、当該他船のパルス状信号による受信信号RCが検出される。この際、他船のパルス状信号の送信周期TRCが、自船のパルス列繰り返し周期PRIに一致すると、図6(A)に示すように、各パルス列PGの開始タイミングから同じ遅延時間TC後に、それぞれ干渉による受信信号RC(RC1、RC2,RC3,RC4,・・・)が得られてしまう。
【0079】
しかしながら、パルス列PG1,PG3は、パルス列の開始タイミングから短パルス信号PS、中パルス信号PMの順で送信され、パルス列PG2,PG4は、パルス列の開始タイミングから中パルス信号PM、短パルス信号PSの順で送信されている。
【0080】
このため、図6のような場合であれば、短パルス信号PSから始まるパルス列PG1では、短パルス信号PSの開始タイミングからの干渉の受信信号RC1までの遅延時間はTCであるが、当該干渉の受信信号RC1が中パルス信号PM1の受信期間内であるので、中パルス信号PM1の開始タイミングからの遅延時間TDC1に準じてスイープメモリへ記憶される。したがって、スイープ受信データPG1SDでは、中パルス信号PM1の開始タイミングからの遅延時間TDC1(≠TC)に準じた距離方向アドレスに、受信データRCD1が記憶される。
【0081】
次に、中パルス信号PM2から始まり、当該中パルス信号PM2の受信期間に干渉による受信信号RC2を受信するパルス列PG2では、中パルス信号PM2の開始タイミングからの遅延時間TCと同じ遅延時間TDC2に準じてスイープメモリへ記憶される。したがって、スイープ受信データPG2SDでは、中パルス信号PM2の開始タイミングからの遅延時間TDC2(=TC)に準じた距離方向アドレスに、受信データRCD2が記憶される。
【0082】
同様に、パルス列PG3に対応するスイープ受信データPG3SDでは、中パルス信号PM3の開始タイミングからの遅延時間TDC3(≠TC)に準じた距離方向アドレスに、受信データRCD3が記憶される。また、パルス列PG4に対応するスイープ受信データPG4SDでは、中パルス信号PM4の開始タイミングからの遅延時間TDC4(=TC)に準じた距離方向アドレスに、受信データRCD4が記憶される。
【0083】
そして、パルス列PG1,PG2,PG3に対するスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDとを比較すると、干渉による受信データRCD1,RCD3と、干渉による受信データRCD2の距離方向アドレス位置が異なり、上述の最小値を取得するような処理を行えば、これら干渉による受信データRCD1,RCD2,RCD3は画像形成用スイープデータGD1SDの形成時には抑圧される。
【0084】
例えば、図6(D)に示すように、距離方向アドレスRc1でのスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDの受信データはそれぞれ、「8」、「0」、「8」である。したがって、最小値である画像形成用スイープデータGD1SDの距離方向アドレスRc1のデータは、抑圧されて「0」となる。さらに、距離方向アドレスRc2でのスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDの受信データはそれぞれ、「0」、「8」、「0」である。したがって、最小値である画像形成用スイープデータGD1SDの距離方向アドレスRc2のデータも、抑圧されて「0」となる。
【0085】
このように上述の2次エコーを抑圧する処理を用いることで、干渉も確実に抑圧することができる。
【0086】
以上のように、本実施形態の構成および方法を用いることで、複数種類のパルス状信号を連続的に送信するレーダ装置であっても、2次エコーや干渉を確実に抑圧し、現実に存在する物標を、自装置から当該物標までの距離に応じて確実に表示することができる。
【0087】
なお、上述の説明では、短パルス信号PSと中パルス信号PMとの送信順序を異ならせた複数のパルス列PGを用いて送信制御を行う例を示したが、図7に示す他の送信制御を用いてもよい。図7は、本実施形態の他の送信制御例を示す送信タイミングチャートであり、図7(A)は短パルス信号PSの送信タイミング間隔をパルス列PG毎に異ならせたものであり、図7(B)は、一部のパルス列PGにおいて、中パルス信号PMを繰り返し送信したものである。
【0088】
図7(A)に示す送信制御では、パルス列PG1,PG2,PG3,PG4,・・・の全てのパルス列PGにおける短パルス信号PSと中パルス信号PMとの送信順序は同じである。しかしながら、パルス列PG1の短パルス信号PS1の待機時間RTS1と、パルス列PG2の短パルス信号PS2の待機時間RTS2とが異ならせてある。また、パルス列PG2の短パルス信号PS2の待機時間RTS2とパルス列PG3の短パルス信号PS3の待機時間RTS3とが異ならせてある。さらに、パルス列PG3の短パルス信号PS3の待機時間RTS3とパルス列PG4の短パルス信号PS4の待機時間RTS4とが異ならせてある。これにより、短パルス信号PSの送信タイミングが間隔が異なる。
【0089】
そして、このように短パルス信号PSの送信タイミング間隔を異ならせることで、短パルス信号PSによる2次エコーや干渉の現れる距離方向の位置が、パルス列PGの開始タイミングを基準として、それぞれの短パルス信号PSに対する待機時間RTに依存して、バラバラになる。したがって、短パルス信号PSの待機時間RTの異なるパルス列PGによる受信データ同士を比較することで、2次エコーや干渉が画像形成用スイープデータに現ることを抑圧できる。
【0090】
図7(B)に示す送信制御では、パルス列PG1,PG3は同じ送信タイミング構成であるが、時間軸上でこれらに挟まれるパルス列PG2’は、同じ形状からなる二本の中パルス信号PM21,PM22を、短パルス信号PS2に続いて連続的に送信する。
【0091】
このような送信制御を行った場合、受信信号処理部では、パルス列PG2’の受信時に、中パルス信号PM21と中パルス信号PM22の受信データに追加処理を行って、スイープメモリへ記憶する。例えば、中パルス信号PM21の受信データ上に中パルス信号PM22の受信データを更新記憶させたり、中パルス信号PM21の受信データと中パルス信号PM22の受信データとを平均化して記憶させる。そして、この追加処理されたパルス列PG2’のスイープ受信データに対して、パルス列PG1やパルス列PG3のスイープ受信データを比較することで、短パルス信号PSの2次エコーや干渉が、画像形成用スイープデータに現れることを抑圧できる。
【0092】
さらには、これらの方法、すなわち、パルス列PGの構成要素である短パルス信号PSと中パルス信号PMとの送信順序、各待機時間、短パルス信号PSや中パルス信号の送信数を適宜組み合わせることで、短パルス信号PSの2次エコーの現れる距離方向の位置や干渉の現れる距離方向の位置を、複数のパルス列PGで異ならせることができ、2次エコーや干渉を抑圧することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、比較処理を行う場合に、比較対象となる複数のパルス列PGのスイープ受信データの各距離方向アドレスの受信データの最小値を、画像形成用スイープデータとする例を示したが、平均値、中央値等を用いてもよい。また、対象となる受信データ群における、最小値側から所定番目のレベルの受信データ等の設定を行うことで得られる値を用いてもよい。
【0094】
さらには、複数のパルス列PGの同じ距離方向アドレスの受信データがともに所定閾値以上となった場合にのみ、いずれかの受信データを画像形成用スイープデータに設定し、いずれか少なくとも一方の受信データが閾値未満の場合には、当該距離方向アドレスの画像形成用スイープデータを例えば所定の低い値にしたり「0」に設定するようにしてもよい。また、このような閾値による判断ではなく、同じ距離方向アドレスの受信データ間のレベル差が所定値未満の場合にのみ、いずれかの受信データを設定し、レベル差が所定値以上の場合には、レベルが低い方の受信データもしくは「0」を画像形成用スイープデータに設定するようにしてもよい。これらの方法であっても、2次エコーや干渉による影響を抑圧することができる。
【0095】
また、本実施形態では、二つのパルス列PGのスイープ受信データを比較する場合を示したが、三つ以上のパルス列PGのスイープ受信データを比較して、2次エコーや干渉を抑圧した画像形成用スイープデータを形成することもできる。この場合、例えば、複数のパルス列PGの同一距離方向アドレスにおいて最小値を用いたり、平均値や中央値等を用いてもよい。
【0096】
次に、第2の実施形態に係る物標探知装置(レーダ装置)について図を参照して説明する。なお、本実施形態の物標探知装置は、第1の実施形態に係る物標探知装置と基本構成は同じであるが、パルス列PGを構成する複数種類のパルス信号が、近距離領域用の短パルス信号PS、中距離領域用の中パルス信号PM、長距離領域用の長パルス信号PLから構成されるものである。したがって、構成的説明は省略し、送信制御および2次エコーや干渉の抑圧概念についてのみ、図8、図9を参照して説明する。
【0097】
図8は、短パルス信号PS、中パルス信号PM、および長パルス信号PLからなる三連パルスの送信タイミングチャートを示しており、図8(A)は従来の送信タイミングチャートを示し、図8(B)は本願の送信タイミングチャートを示す。
【0098】
また、図9は三連パルスにおける2次エコーの抑圧概念を説明する図であり、図9(A)は図8(B)の送信制御を用いた場合の受信タイミングチャートを示し、図9(B)は図9(A)の受信信号を並び替えた時系列での状態を示す図である。なお、図9では、パルス列PG1からパルス列PG4までが示されているが、これ以降についてもパルス列PGは繰り返されている。図9(C)は受信信号処理部14の受信データ記憶部42の各スイープメモリのデータ列、および、2次エコー抑圧処理後のデータ列を示している。
【0099】
まず、簡単に、従来方法では、全てのパルス列PGで、短パルス信号PS、中パルス信号PM、および長パルス信号PLの送信順序および、それぞれの待機時間RT,RT,RTは同じである。そして、これらパルス列PGがパルス列繰り返し周期PRIで順次送信制御されている。このような場合、全てのパルス列PGで同じように、中パルス信号PM後の待機期間RT内に短パルス信号PSの2次エコーが現れたり、長パルス信号PL後の待機時間RT内に、短パルス信号PSや中パルス信号PMの2次エコーが現れてしまうことがある。また、全てのパルス列PG内の同位置に干渉によるエコーが現れてしまうことがある。そして、これらは全てのパルス列PGが同じ構成であるので、パルス列PGの受信データ間を比較しても除去できない。
【0100】
このため、本実施形態では、パルス列PG毎に短パルス信号PS、中パルス信号PM、および長パルス信号PLの送信順序を異ならせている。例えば、図8(B)の場合であれば、パルス列PG1では、パルス列PG1の開始タイミングとともに、短パルス信号PS1を送信し、当該送信後に待機時間RTを待って、中パルス信号PM1を送信する。さらに、中パルス信号PM1の送信後に待機時間RTを待って、長パルス信号PL1を送信し、当該送信後に待機時間RTを設けている。
【0101】
次に、パルス列PG1に続くパルス列PG2では、パルス列PG2の開始タイミング(パルス列PG1の終了タイミングと一致する)とともに、中パルス信号PM2を送信し、当該送信後に待機時間RTを待って、長パルス信号PL2を送信する。さらに、長パルス信号PL2の送信後に待機時間RTを待って、短パルス信号PS2を送信し、当該送信後に待機時間RTを設けている。
【0102】
次に、パルス列PG2に続くパルス列PG3では、パルス列PG3の開始タイミング(パルス列PG2の終了タイミングと一致する)とともに、長パルス信号PL3を送信し、当該送信後に待機時間RTを待って、短パルス信号PS3を送信する。さらに、短パルス信号PS3の送信後に待機時間RTを待って、中パルス信号PM3を送信し、当該送信後に待機時間RTを設けている。
【0103】
次に、パルス列PG3に続くパルス列PG4では、パルス列PG4の開始タイミング(パルス列PG3の終了タイミングと一致する)とともに、短パルス信号PS4を送信し、当該送信後に待機時間RTを待って、長パルス信号PL4を送信する。さらに、長パルス信号PL4の送信後に待機時間RTを待って、中パルス信号PM4を送信し、当該送信後に待機時間RTを設けている。
【0104】
このように、パルス列PG毎に短パルス信号PS、中パルス信号PM、および長パルス信号PLの送信順序を異ならせることで、図9(A)に示すように、それぞれのパルス信号によって生じる真の像とともに2次エコーの像が受信データとして得られてしまう。
【0105】
例えば、図9の例であれば、中距離領域と長距離領域とにそれぞれ物標が存在している場合を示す。
【0106】
(1)パルス列PG1の期間内
パルス列PG1の中パルス信号PM1の待機期間RT内に、中パルス信号PM1による真の受信信号RMM1とともに、短パルス信号PS1による2次エコーの受信信号RMS1が現れる。また、長パルス信号PL1の待機期間RT内に、長パルス信号PL1による真の受信信号RLL1とともに、中パルス信号PM1による2次エコーの受信信号RLM1が現れる。
【0107】
したがって、パルス列PG1による受信データから得られるスイープ受信データPG1SDは、図9(C)の最上段に示すように、中パルス信号PM1による中距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真のエコーである受信データRMMD1と、長パルスPL1による長距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真のエコーである受信データRLLD1とを含む。さらに、短パルス信号PS1により中距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる2次エコーの像である受信データRMSD1と、中パルス信号PM1により長距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる2次エコーの像である受信データRLMD1とを含む。
【0108】
(2)パルス列PG2の期間内
次に、パルス列PG2の中パルス信号PM2の待機期間RT内には、直前に短パルス信号が送信されていないので、中パルス信号PM2による真の受信信号RMM2のみが現れる。また、長パルス信号PL2の待機期間RT内に、長パルス信号PL2による真の受信信号RLL2とともに、中パルス信号PM2による2次エコーの像の受信信号RLM2が現れる。
【0109】
したがって、パルス列PG2による受信データから得られるスイープ受信データPG2SDは、図9(C)の上から二段目に示すように、中パルス信号PM2により中距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRMMD2と、長パルスPL2により長距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRLLD2とを含む。さらに、中パルス信号PM2により長距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる2次エコーの像である受信データRLMD2とを含む。
【0110】
(3)パルス列PG3の期間内
次に、パルス列PG3の期間内では、まず長パルス信号PL3の送信期間に、パルス列PG2の短パルス信号PS2による偽の受信信号RMS2が現れるはずであるが、送信期間であるため受信されず現れない。そして、長パルス信号PL3の待機期間RT内には、直前に中パルス信号が送信されていないので、長パルス信号PL3による真の像の受信信号RLL3のみが現れる。短パルス信号PS3の待機期間RTには何も現れず、中パルス信号PM3の待機期間RTには、中パルス信号PM3による真の像の受信信号RMM3とともに、短パルス信号PS3による2次エコーの像の受信信号RMS3が現れる。なお、中パルス信号PM3による長距離領域の物標の2次エコーの像の受信信号は、次のパルス列PG4の受信期間で現れる。
【0111】
したがって、パルス列PG3による受信データから得られるスイープ受信データPG3SDは、図9(C)の上から三段目に示すように、中パルス信号PM3により中距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRMMD3と、長パルスPL3により長距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる真の像である受信データRLLD3とを含む。さらに、短パルス信号PS3により中距離領域の物標位置に対応する距離方向アドレスに現れる2次エコーの像である受信データRMSD3を含む。
【0112】
このようにして得られた短パルス信号PS、中パルス信号PMおよび長パルス信号PLの順序が異なるパルス列PG1,PG2,PG3のスイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDを距離方向アドレス毎に比較する。図9(C)の最上段と二段目と三段目に示すように、中パルス信号PM1,PM2,PM3による真の像である受信データRMMD1,RMMD2,RMMD3は所定レベル以上で同じ距離方向アドレスに連続的に現れる。一方、短パルス信号PS1,PS3による2次エコーの像である受信データRMSD1,RMSD3と同じ距離方向アドレスには、短パルス信号PS2の像が存在しない。
【0113】
また、長パルス信号PL1,PL2,PL3による真の像である受信データRLLD1,RLLD2,RLLD3は所定レベル以上で同じ距離方向アドレスに連続的に現れる。一方、中パルス信号PM1,PM2による2次エコーの像である受信データRLMD1,RLMD2と同じ距離方向アドレスには、中パルス信号PM3の像が存在しない。
【0114】
この性質を利用し、スイープ受信データPG1SD,PG2SD,PG3SDの距離方向アドレス毎に最小値を採用すれば、図9(C)の最下段に示すように、真の像である中パルス信号PMの受信データおよび真の像である長パルス信号PLの受信データが現れる距離方向アドレスでは、高いレベルの画像形成用スイープデータGD1SDを形成することができる。一方で、短パルス信号PSの2次エコーの像である受信データや中パルス信号PMの2次エコーの像である受信データが現れる距離方向アドレスでは、レベルが抑圧され、当該抑圧されたレベルのデータで、当該距離方向アドレスの画像形成用スイープデータGD1SDが形成される。これにより、短パルス信号PSによって中距離領域に現れる2次エコーおよび中パルス信号PMによって長距離領域に現れる2次エコーによる像の発生を抑圧することができる。また、この場合も、上述の実施形態と同様に、他船のパルス状信号による干渉も抑圧することができる。
【0115】
なお、上述のように、それぞれに送信順序の異なる3つのパルス列を比較することで、中距離領域に現れる2次エコーの像と長距離領域に現れる2次エコーの像の両方を確実に同時に抑圧することができるが、それぞれに送信順序の異なる2つのパルス列の組合せ方によっては、中距離領域に現れる2次エコーの像のみを抑圧できたり(図9(C)のスイープ受信データPG1SD,PG2SDの組合せ)、長距離領域に現れる2次エコーの像のみを抑圧できたり(図9(C)のスイープ受信データPG1SD,PG3SDの組合せ)、中距離領域と長距離領域に現れる2次エコーの像を抑圧することもできる(図9(C)のスイープ受信データPG2SD,PG3SDの組合せ)。
【0116】
また、本実施形態においても、上述の第1の実施形態と同様に、短パルス信号PSの待機時間RTSや中パルス信号PMの待機時間RTMをパルス列PG間で異ならせたり、中パルス信号PMや長パルス信号PLを、特定のパルス列PGで複数回送信するようにしてもよい。
【0117】
また、上述の説明では三連パルスを例に説明したが、パルス列PGを構成するパルス信号の種類を四つ以上にすることもでき、このような四つ以上のパルス信号からなる構成であっても、上述の構成および方法を適用することができる。
【0118】
また、本実施形態でも、比較処理を行う場合に、比較対象となる複数のパルス列PGのスイープ受信データの各距離方向アドレスの受信データの最小値を、画像形成用スイープデータとする例を示したが、平均値、中央値等を用いてもよい。
【0119】
さらには、複数のパルス列PGの同じ距離方向アドレスの受信データがともに所定閾値以上となった場合にのみ、いずれかの受信データを画像形成用スイープデータに設定し、少なくとも一つの受信データが閾値未満の場合には、当該距離方向アドレスの画像形成用スイープデータを例えば「0」に設定するようにしてもよい。また、このような閾値による判断ではなく、同じ距離方向アドレスの受信データ間の最大値と最小値とのレベル差が所定値未満の場合にのみ、最大値の受信データを画像形成用スイープデータに設定し、レベル差が所定値以上の場合には、レベルが最小値の受信データもしくは「0」を画像形成用スイープデータに設定するようにしてもよい。
【0120】
また、本実施形態では、三つのパルス列PGのスイープ受信データを比較する場合を示したが、四つ以上のパルス列PGのスイープ受信データを比較して、2次エコーや干渉を抑圧した画像形成用スイープデータを形成することもできる。この場合、例えば、複数のパルス列PGの同一距離方向アドレスにおいて最小値を用いたり、平均値もしくは中央値等を用いてもよい。
【0121】
また、本実施形態のように、パルス列PG内のパルス信号の種類が多くなると、パルス信号の送信順序の組合せ数が増加するので、例えば、組合せ数に応じたスイープ受信データを形成し、これらを比較することもできる。この場合、比較による画像形成用スイープデータの形成方法は、上述のいずれの方法を用いてもよく、これらのスイープ受信データから任意に複数のスイープ受信データを取得して比較することで、2次エコーや干渉を除去してもよい。
【0122】
なお、このように組合せ数が増加すると、パルス列PGの送信順序を順次異ならせて、複数種類のスイープ受信データを形成することができるので、反射信号の小さく、定常的に所定レベルの受信信号が得られない物標では、2次エコーや干渉とともに抑圧されてしまう。したがって、例えば比較対象の距離方向アドレスの受信データ群のレベルから、例えば上述のように、対象となる受信データ群から比較的高いレベルの受信データを採用するようにしたり、所定レベル以上の受信データの個数を算出して個数閾値で判断することで、このような受信レベルの低い物標を2次エコーや干渉と間違って抑圧することを防止できる。
【0123】
さらに、上述の各実施形態の構成及び処理の概念を機能的に表現すれば、複数種類のパルス信号が順次送信されるパルス列毎に、各パルス信号の送信順序および各パルス信号の時間的関係を一致させる置き換え処理(スイープメモリへの書き込み処理)を行って受信データを形成する場合に、本来のパルス信号と受信期間との関係からは現れない位置に現れる2次エコーの像が、全てのパルス列で同じように現れないように、送信時において各パルス列の構成を異ならせておけばよく、これを実現できる構成や方法であれば、他の構成や方法であってもよい。
【0124】
なお、上述の説明では、送信順序や待機時間および特定パルス信号の繰り返し等の時間ずらしの制御を、予め設定した場合を示したが、操作入力部等を備えて手動の操作入力により順序の入れ替えや時間ずらしの制御を適宜挿入してもよく、ランダム的に順序の入れ替えや時間ずらしの制御を挿入してもよい。また、他の航行装置等から物標の位置情報が取得できる環境であれば、当該位置情報に基づいて2次エコーや干渉が生じている可能性を判断し、生じている可能性があれば、順序の入れ替えや時間ずらしの制御を行うようにしてもよい。
【0125】
また、上述の説明では、それぞれの異なるパルス幅からなる複数種類のパルス状信号を組み合わせてパルス列を構成し、当該パルス列内での各パルス状信号の順序やタイミングを調整する例を示したが、パルス列の概念を用いなくても、本願の構成及び方法を適用して2次エコーの像や干渉の影響の抑圧を行うことができる。
【0126】
この場合、送信側では、複数種類のパルス状信号の時間的位置関係が定常的に一定にならないように、各パルス状信号を送信すればよい。一方、受信側では、各種類のパルス状信号の受信データの基準タイミング合わせは、パルス列の基準タイミングを用いず、同一種類の複数のパルス状信号間で、受信データの基準タイミングを一致させる処理を行えばよい。
【0127】
また、上述の説明では、一回の比較結果毎に画像形成用スイープデータを形成する例を示したが、複数回の比較結果で得られたデータ同士のさらに中間値、中央値、最小値、平均値等を算出して画像形成用スイープデータを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
10−自船、11−レーダ装置、12−送信部、21−送信制御部、22−送信信号生成部、13−サーキュレータ、14−受信信号処理部、41−A/D変換部、42−受信データ記憶部、43−受信データ比較部、44−画像データ生成部、90−物標、90I−虚像の物標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を生成する信号生成部と、前記パルス状信号を外部へ放射するアンテナとを備えた送信装置であって、
前記信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の順序と、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の順序が異なる、送信装置。
【請求項2】
互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を生成する信号生成部と、前記パルス状信号を外部へ放射するアンテナとを備えた送信装置であって、
前記信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せと、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せが異なる、送信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の送信装置であって、
前記信号生成部で生成される複数種類のパルス状信号は、複数種類のパルス状信号を構成する各種類のパルス状信号を少なくとも一つずつ含むパルス列を、前記所定の時間の単位としている、送信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の送信装置であって、
各パルス列における特定の二種類のパルス状信号の送信タイミング間隔が、複数のパルス列における少なくとも1つのパルス列で異なる、送信装置。
【請求項5】
それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信装置であって、
前記エコー信号を受信するアンテナと、
前記パルス状信号の種類毎に受信データの基準タイミングを一致させ、前記パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する受信信号処理部と、を備えた受信装置。
【請求項6】
それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号の組合せや順序が異なる複数のパルス列を設定した状態で、パルス列毎に送信された前記複数のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信装置であって、
前記エコー信号を受信するアンテナと、
各パルス列の複数種類のパルス状信号の受信データを、パルス列の基準タイミングをパルス列間で一致させるとともに、該パルス列の基準タイミングに対して該パルス列を構成する複数種類のパルス状信号の受信データの各基準タイミングを一致させ、前記パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する受信信号処理部と、を備えた受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の受信装置であって、
前記受信信号処理部は、
前記パルス列毎の受信データをそれぞれ個別に記憶するスイープメモリを備え、
それぞれのスイープメモリに記憶された受信データ同士を比較して、前記比較結果に基づくデータを生成する、受信装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の受信装置であって、
前記受信信号処理部は、
比較対象となる同種のパルス状信号による複数の受信データから代表値データを採用することで、前記比較結果に基づくデータを生成する、受信装置。
【請求項9】
互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を放射し、エコー信号に基づく受信データを受信する物標探知装置であって、
生成される複数種類のパルス状信号が、所定の時間内に含まれる複数のパルス状信号の順序と、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数のパルス状信号の順序が異なる、または/および、生成される複数種類のパルス状信号が、所定の時間内に含まれる複数のパルス状信号の組合せと、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数のパルス状信号の組合せが異なる信号生成部と、
該信号生成部から与えられたパルス状信号を順次外部へ放射するとともに、前記エコー信号を受信するアンテナと、
前記パルス状信号の種類毎に受信データの基準タイミングを一致させ、前記パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する受信信号処理部と、を備えた物標探知装置。
【請求項10】
互いにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号の組合せや順序が異なる複数のパルス列を設定し、パルス列毎に前記複数のパルス状信号を送信するとともに、各パルス状信号のエコー信号を受信して受信データを生成する物標探知装置であって、
請求項3または請求項4に記載の送信装置と、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の受信装置とを組み合わせてなる物標探知装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の物標探知装置であって、
前記比較結果に基づくデータを用いて画像形成を行う画像形成部を備える、物標探知装置。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の物標探知装置であって、
前記アンテナは所定の周期で回転する、物標探知装置。
【請求項13】
互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を放射する送信方法であって、
所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の順序と、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の順序が異なる、前記複数種類のパルス状信号を生成する工程と、
該複数種類のパルス状信号を順次外部へ放射する工程と、を含む送信方法。
【請求項14】
互いにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を放射する送信方法であって、
所定の時間内に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せと、前記所定の時間と異なる時刻であって同じ長さの時間に含まれる複数種類のパルス状信号の組合せが異なる、前記複数種類のパルス状信号を生成する工程と、
該複数種類のパルス状信号を順次外部へ放射する工程と、を含む送信方法。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の送信方法であって、
前記パルス状信号を生成する工程は、複数種類のパルス状信号を構成する各種類のパルス状信号を少なくとも一つずつ含むパルス列を、前記所定の時間の単位としている、送信方法。
【請求項16】
それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信方法であって、
前記エコー信号を受信する工程と、
前記パルス状信号の種類毎に受信データの基準タイミングを一致させ、前記パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する工程と、を含む受信方法。
【請求項17】
それぞれにパルス幅の異なる複数種類のパルス状信号の組合せや順序が異なる複数のパルス列を設定した状態で、パルス列毎に送信された前記複数のパルス状信号によるエコー信号を受信して受信データを生成する受信方法であって、
前記エコー信号を受信する工程と、
各パルス列の複数種類のパルス状信号の受信データを、パルス列の基準タイミングをパルス列間で一致させるとともに、該パルス列の基準タイミングに対して該パルス列を構成する複数種類のパルス状信号の受信データの各基準タイミングを一致させ、前記パルス状信号の種類毎に前記受信データを比較して、比較結果に基づくデータを生成する工程と、を含む受信方法。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の受信方法であって、
前記受信データから比較結果に基づくデータを生成する工程は、
比較対象となる同種のパルス状信号による複数の受信データから代表値データを採用することで、前記比較結果に基づくデータを生成する、受信方法。
【請求項19】
それぞれにパルス幅が異なる複数種類のパルス状信号を放射し、エコー信号に基づく受信データを受信する物標探知方法であって、
請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の送信方法と、請求項16乃至請求項18のいずれかに記載の受信方法とを組み合わせてなる物標探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158349(P2011−158349A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20019(P2010−20019)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】