説明

送信装置

【課題】送信出力の電力可変範囲を改善する送信装置を提供する。
【解決手段】ベースバンド信号に含まれる位相信号を高周波に変換して位相変調信号を生成する位相信号変換部と、前記ベースバンド信号に含まれる振幅信号の振幅値を所定の量子化ステップで量子化し、量子化値を出力する量子化部と、前記振幅信号の振幅値を前記振幅値が量子化された量子化値で除算する除算部と、前記量子化部の出力に応じたパルス幅のパルス信号を生成するパルス生成部と、前記位相変調信号に前記パルス信号を乗算する乗算部と、前記乗算部の出力を前記除算部の出力に応じた電源電圧で増幅する電力増幅部と、を備える送信装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置の送信出力の電力可変範囲に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車等の車両に搭載される無線通信装置においては、無線通信装置本体とアンテナとの距離が離れるほど通信時の信号のロスや雑音の影響が大きくなる。信号のロスや雑音の影響を軽減する目的で太い通信ケーブルを使用すると、限られたスペースにおける配線が困難となり、また重量が増加する。このため、無線通信装置のフロントエンドをアンテナの近傍に配置したいという要望がある。しかし、アンテナが通常設置される車両のルーフの付近は、直射日光等の影響により高温になり得る。車両のルーフ付近は、発熱の大きな部品を有する電力増幅器などには、苛酷な環境である。そのため、車両に搭載される無線通信装置では、電力効率を向上させて発熱を抑制することが求められる。
【0003】
電力効率の向上のために、送信装置においてさまざまな増幅方法が使用されている。ここでは、EER(Envelope Elimination and Restoration)方式と、LINC(LInear amplification with Non-linear Components)方式について説明する。EER方式には、
例えば、リニアレギュレータにより電源電圧の可変をする方式と、エンベロープPWM(Pulse Width Modulation)を用いる方式とがある。
【0004】
図1は、EER方式を用いた送信装置の構成例(1)を示す図である。図1の例では、リニアレギュレータが用いられる。送信装置300は、信号変換器301と、位相変調器311と、DA(Digital to Analog)変換器312及び321と、アップコンバータ3
13と、リニアレギュレータ322と、RF(Radio Frequency)電力増幅器331と、
LPF(Low Pass Filter)332と、アンテナ333とを有する。
【0005】
信号変換器301は、入力信号Sinを、I成分(In-phase component)及びQ成分(Quadrature phase component)から、位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)に変換する。
【0006】
位相信号θ(t)は、位相変調器311に入力される。位相変換器311は、入力された信号を、位相変調し、位相変調信号を生成する。位相変換器311で生成された位相変調信号は、DA変換器312に入力される。
【0007】
DA変換器312は、入力された信号を、アナログ信号に変換する。アップコンバータ313は、DA変換器312で変換されたアナログ信号を、RF周波数に周波数変換する。周波数変換された信号は、RF電力増幅器331に入力される。
【0008】
一方、振幅信号r(t)は、DA変換器321によりアナログ信号に変換される。リニアレギュレータ322は、入力電源電圧Vccを、DA変換器321によって変換されたアナログ信号に基づいて、変換する。変換された振幅信号はRF電力増幅器331に入力される。RF電力増幅器331は、位相変調信号に、リニアレギュレータ322の出力を乗じ、増幅を行う。
【0009】
RF電力増幅器331から出力された信号は、LPF332により高周波成分がカットされ、アンテナ333から出力される。
【0010】
図2は、EER方式を用いた送信装置の構成例(2)を示す図である。図2の例では、
信号の合成にエンベロープPWMが用いられる。送信装置400は、信号変換器401と、位相変調器411と、DA変換器412と、アップコンバータ413と、PWMパルス生成部421と、乗算器431と、RF電力増幅器432と、BPF(Band Pass Filter)433と、アンテナ434とを有する。
【0011】
信号変換器401は、入力信号Sinを、I成分及びQ成分から、位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)に変換する。位相信号θ(t)は、図1の例と同様に、位相変調器411に入力され、RF周波数に周波数変換されてアップコンバータ413から出力される。
【0012】
一方、振幅信号r(t)は、PWMパルス生成部421に入力される。PWMパルス生成部421は、入力された振幅信号を、エンベロープPWMによりパルス信号に変換する。
【0013】
乗算器431は、アップコンバータ413でRF周波数に周波数変換された信号と、PWMパルス生成部421で生成されたパルス信号とを乗算し、RF電力増幅部432に出力する。RF電力増幅部432は、乗算器431の出力に、入力電源電圧Vccを乗算する。RF電力増幅器421は、飽和動作で非線形の増幅を行う増幅器である。
【0014】
BPF433は、RF電力増幅部432の出力から、所望の周波数帯の成分を抽出し、アンテナ434に出力する。アンテナ434は、BPF433の出力を、出力する。BPF433は、エンベロープPWMにより発生するエンベロープPWMの変調周波数及びその高調波によるスプリアス(不要成分)を抑圧できる。
【0015】
以上、EER方式の送信装置の構成例について説明した。このように、EER方式では、入力信号を位相信号と振幅信号とに分離した上で、電力増幅時の電源制御において振幅信号の包絡線に応じた電力を供給することで振幅変調することによって、位相と振幅の合成を実現する。このような構成によると、位相変調信号の電力増幅に非線形増幅器を適用できるので電力効率が向上する。
【0016】
図3は、LINC方式を用いた送信装置の構成例を示す図である。送信装置500は、信号変換器501と、加算器502と、逆余弦演算器503と、減算器504とを有する。送信装置500は、さらに、位相変調器511及び512と、DA変換器513及び514と、アップコンバータ515及び516と、RF電力増幅器517及び518と、加算器521と、アンテナ522とを有する。
【0017】
信号変換器501は、複素ベースバンド信号Sinを、I成分及びQ成分から、位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)(0≦r(t)≦1)に変換する(式1を参照)。
【0018】
【数1】

【0019】
逆余弦演算器503は、入力された振幅信号r(t)に逆余弦演算を施す。逆余弦演算器503は、位相差信号cos−1(r(t))を生成する。
【0020】
位相信号θ(t)は、加算器502および減算器504に入力される。同様に、逆余弦演算器503から出力された位相差信号cos−1(r(t))が、加算器502および減
算器504に入力される。加算器502は、位相信号と位相差信号とを加算して加算成分
λを生成する(式2を参照)。一方、減算器504は、位相信号から位相差信号を減算して減算成分λを生成する(式3を参照)。
【0021】
【数2】

【0022】
加算成分λおよび減算成分λは、それぞれ、位相変調器511及び512に入力されて位相変調を受け、位相変調信号が生成される。位相変調信号は、それぞれ、DA変換器513及び514によりアナログ信号に変換され、さらに、アップコンバータ515及び516に入力されてRF周波数(角周波数ω)に周波数変換される。周波数変換された位相変調信号S(t)およびS(t)は、それぞれ、次の(式4)および(式5)のように表される。
【0023】
【数3】

【0024】
周波数変換された位相変調信号S(t)及びS(t)は、それぞれ、RF電力増幅器517及び518に入力されて電力増幅される。ここで、位相変調信号S(t)及びS(t)の振幅は、一定である。よって、RF電力増幅器517及び518として、非線形の増幅を行う電力増幅器が使用され得る。増幅された位相変調信号は加算器521により合成され、Soutが生成される。Soutは、次の(式6)のように表される。
【0025】
【数4】

【0026】
生成された信号Soutは、振幅r(t)、角周波数ω、位相差θ(t)の信号として、アンテナ522から出力される。
【0027】
以上、一般的なLINC方式の送信装置の構成について説明した。このように、LINC方式では、入力信号を位相の異なる2個の位相信号(定振幅信号)に分離し、それぞれ非線形増幅器により増幅して出力端で合成する。この方式では、電力増幅に非線形増幅器を用いて、線形増幅を実現できる。一般に非線形増幅器は線形増幅器よりも効率のよい電力増幅が可能であるため、無線通信システムにおいて消費電力を抑えつつ線形増幅を実現
することができる。また、LINC方式では電力増幅器は定包絡線で動作するため、増幅器のメモリ効果による歪が発生しないことから、理論的には非常に低い歪が実現可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2006−093872号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】L. R. Kahn, “Single sideband transmission by envelope elimination and restoration,” Proc. IRE, vol. 40, pp. 803-806, July, 1952.
【非特許文献2】塚本悟司、馬場隆行、稲垣惠三、太郎丸真、「エンベロープPWMを用いたEER送信機の効率に関する実験的検討」、信学技報、SR2008-88, pp. 1-6, January, 2009.
【非特許文献3】川添浩司、外山義和、Edwin Mumali、山尾泰、「零点を有する2次のΔ―Σ変調器を用いたEPWM送信機のOFDM信号送信時の雑音特性」、信学技報、RCS2008-155、pp.25-29、March, 2009.
【非特許文献4】Yuanxun Wang, “An improved Kahn Transmitter Architecture Based on Delta-Sigma Modulation,” 2003 IEEE MTT-S International, vol.2, pp. 1327-1330, June 2003.
【非特許文献5】國弘和明、山之内慎吾、高橋清彦、青木雄一、「WCDMA用電力増幅器の低歪・高効率化回路技術」、信学技報、MW2006-193、pp.1-6、March 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
EER方式の増幅器や、LINC方式の増幅器では、送信出力の電力可変範囲が限定される。EER方式の増幅器や、LINC方式の増幅器では、CDMA(Code Division Multiple Access)の信号のように電力可変範囲が広い信号や、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の信号のように電力可変範囲が広くPAPR(Peak-Average Power Ratio)が大きい信号に対応することは、難しい。また、例えば、無線LAN
(Local Area Network)方式で使用される送信電力と、CDMA方式で使用される送信電力とは、大きく異なる。EER方式の増幅器や、LINC方式の増幅器は、送信電力が異なる多数の無線方式に対応するのに十分ではない。
【0031】
本発明は、送信出力の電力可変範囲を改善する送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の送信装置は、以下の構成を採用する。
【0033】
本発明の一態様は、
ベースバンド信号に含まれる位相信号を高周波に変換して位相変調信号を生成する位相信号変換部と、
前記ベースバンド信号に含まれる振幅信号の振幅値を所定の量子化ステップで量子化し、量子化値を出力する量子化部と、
前記振幅信号の振幅値を前記振幅値が量子化された量子化値で除算する除算部と、
前記量子化部の出力に応じたパルス幅のパルス信号を生成するパルス生成部と、
前記位相変調信号に前記パルス信号を乗算する乗算部と、
前記乗算部の出力を前記除算部の出力に応じた電源電圧で増幅する電力増幅部と、
を備える送信装置である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、送信出力の電力可変範囲を改善する送信装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、EER方式を用いた送信装置の構成例(1)を示す図である。
【図2】図2は、EER方式を用いた送信装置の構成例(2)を示す図である。
【図3】図3は、LINC方式を用いた送信装置の構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施形態1の送信装置の構成例を示す図である。
【図5】図5は、振幅信号r(t)と振幅制限器の出力及び量子化器の出力との関係の例を示す図である。
【図6】図6は、振幅信号r(t)と除算器の出力との関係の例を示す図である。
【図7】図7は、実施形態2の送信装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0037】
ここで説明する送信装置は、携帯端末(例えば、携帯電話)等の電源電圧に比べて高い電源電圧が得られる乗用自動車等の車両に搭載されることが、想定される。ここで説明する送信装置は、高い電源電圧が得られない携帯端末においても適用され得る。携帯端末においては、車両のような電源電圧への雑音の重畳が少ないので、電源電圧の可変のためにリニアレギュレータが使用されなくてもよい。
【0038】
〔実施形態1〕
本実施形態の送信装置は、ベースバンド信号の位相信号と振幅信号とを分離する。本実施形態の送信装置は、振幅信号を、粗いステップに量子化された信号と、これを補間する細かいステップに量子化された信号とに分離する。本実施形態の送信装置は、粗いステップの振幅変調をエンベロープPWMで行い、細かいステップの振幅変調をリニアレギュレータによる電源電圧の可変で行う。
【0039】
図4は、本実施形態の送信装置の構成例を示す図である。送信装置100は、信号変換器101と、位相変調器111と、DA変換器112と、アップコンバータ113とを有する。また、送信装置100は、振幅制限器121と、量子化器122と、除算器123と、スイッチ124と、PWMパルス生成部125と、DA変換器126と、リニアレギュレータ127とを有する。さらに、送信装置100は、乗算器131と、RF電力増幅器132と、スイッチ133と、BPF141、142および143、LPF144と、スイッチ145と、アンテナ141とを有する。位相変調器111、DA変換器112、及び、アップコンバータ113は、一体となって、位相信号変換部として動作し得る。
【0040】
送信装置100が、広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信する場合、PWMパルス生成部125及びリニアレギュレータ127が使用されるように制御される。PWMパルス生成部125及びリニアレギュレータ127を使用して、広い電力可変範囲を得るためである。PWMパルス生成部125が使用される信号の周波数帯に対して、BPFが用意される。BPFが用意されるのは、PWMの変調周波数およびその高調波によるスプリアスを除去するためである。
【0041】
ここでは、送信装置100が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信す
る場合について説明する。送信装置100が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求されない信号等を送信する場合については、(変形例1−1)で説明する。
【0042】
広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号として、例えば、CDMAによる信号やPAPRが大きいOFDMによる信号が挙げられる。
【0043】
送信装置100が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信する場合、送信装置100は、スイッチ124を、除算器123側に接続する。スイッチ124は、例えば、送信装置100におけるCPU(Central Processing Unit)によって、制御され
る。
【0044】
信号変換器101は、入力信号である複素ベースバンド信号Sinを、I成分I(t)及びQ成分Q(t)から、位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)に変換する。位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)は、例えば、次のように求められる。
【0045】
【数5】

【0046】
位相信号θ(t)は、位相変換器111に入力される。位相変換器111は、入力された信号を、位相変調し、位相変調信号を生成する。位相変換器111で生成された信号は、DA変換器112に入力される。
【0047】
DA変換器112は、入力された信号を、アナログ信号に変換する。アップコンバータ113は、DA変換器112で変換されたアナログ信号を、RF周波数(角周波数ω)に周波数変換する。周波数変換された信号は、乗算器131に入力される。周波数変換された位相変調信号s(t)は、次のように表される。
【0048】
【数6】

【0049】
一方、振幅信号r(t)は、振幅制限器121に入力される。振幅制限器121は、次に示すような振幅信号r(t)を出力する。
【0050】
【数7】

【0051】
ここで、定数Rt1は所定の閾値である。ここで、量子化器122の出力が0にならな
いようにするため、定数Rt1は後述する量子化ステップQ以上の値とする。
【0052】
量子化器122は、振幅信号r(t)を、量子化ステップQで量子化し、振幅信号rpwm(t)を出力する。振幅信号rpwm(t)は、次のように表される。量子化ステップQは、正の数である。
【0053】
【数8】

【0054】
ここで、係数n(t)は、rpwm(t)がr(t)を超えない、最大の整数である。即ち、係数n(t)は、次の関係式を満たす整数である。また、量子化関数QQ1[r(t)]は、r(t)に対し、量子化ステップQで切り捨ての量子化をする関数である。e(t)は、量子化誤差である。
【0055】
【数9】

【0056】
振幅信号r(t)は、量子化ステップQ以上であるため、n(t)は、1以上である。よって、量子化器122の出力が0になることはない。
【0057】
図5は、振幅信号r(t)と振幅制限器の出力r(t)及び量子化器の出力rpwm(t)との関係の例を示す図である。図5の例では、横軸が振幅信号r(t)であり、縦軸が振幅制限器121の出力又は量子化器122の出力である。また、図5の例では、実線が振幅制限器121の出力を示し、点線が量子化器122の出力を示す。入力された振幅信号r(t)が定数Rt1未満である場合、振幅制限器121は、振幅信号r(t)としてRt1を出力する。量子化器122の出力である振幅信号rpwm(t)は、振幅信号r(t)が定数Rt1以上の場合、振幅信号r(t)が大きくなるのにしたがって、量子化ステップQずつ大きくなる。量子化器122の出力が0になることはない。
【0058】
除算器123は、振幅信号r(t)を、量子化器122の出力である振幅信号rpwm(t)で除算し、振幅信号rreg(t)を出力する。振幅信号rpwm(t)は、量子化器122の出力であり、0ではない。振幅信号rreg(t)は、次のように表される。
【0059】
【数10】

【0060】
図6は、振幅信号r(t)と除算器の出力との関係の例を示す図である。図6の例では、定数Rt1は、Q以上2Q未満としている。この例では、除算器123の出力である振幅信号rreg(t)の最大値は、2である。定数Rt1が大きくなると、振幅信号
reg(t)の最大値は小さくなる。
【0061】
振幅信号r(t)は、量子化器122の出力である振幅信号rpwm(t)と、除算器123の出力である振幅信号rreq(t)との積として、表される。振幅信号rpwm(t)は粗いステップに量子化された信号であり、振幅信号rreq(t)は粗い量子化ステップを補間する細かいステップに量子化された信号である。ここで、量子化ステップQが大きくなると、rpwm(t)は、より粗いステップに量子化された信号となる。
【0062】
PWMパルス生成部124は、振幅信号rpwm(t)を、エンベロープPWMによりパルス信号に変換する。乗算器131は、アップコンバータ113でRF周波数に周波数変換された位相変調信号s(t)と、PWMパルス生成部125で生成されたパルス信号とを乗算し、RF電力増幅部132に出力する。
【0063】
スイッチ124は、ここでは、除算器123側に接続される。DA変換器126は、振幅信号rreg(t)を、アナログ信号に変換する。
【0064】
リニアレギュレータ127は、入力電源電圧Vccを、DA変換器126で変換されたアナログ信号に基づいて、変換する。リニアレギュレータ127は、例えば、DA変換器126で変換されたアナログ信号に比例した値に、入力電圧Vccを変換し、出力する。リニアレギュレータ127の出力は、RF電力増幅器132に入力される。
【0065】
RF電力増幅部132は、乗算器131の出力を、リニアレギュレータ127の出力で増幅する。
【0066】
送信信号の送信周波数帯に応じて、スイッチ133及びスイッチ145によって、いずれかのフィルタ(BPF141、142、143、LPF144)が選択される。スイッチ133及びスイッチ145は、例えば、送信装置100におけるCPUによって、制御される。RF電力増幅器132で増幅された信号は、選択されたフィルタによって、帯域制限される。BPFは、送信信号の送信周波数帯毎に用意され得る。いずれかのフィルタによって、帯域制限された信号は、アンテナ151から出力される。エンベロープPWMにより発生するエンベロープPWMの変調周波数及びその高調波によるスプリアスは、例えば、BPFにより抑制され得る。
【0067】
(実施形態1の作用効果)
送信装置100は、振幅変調をエンベロープPWMと電源電圧の可変との両者で行う。送信装置100は、振幅信号を粗いステップに量子化された信号と細かいステップに量子化された信号とに分離する。送信装置100は、粗いステップの振幅変調を、PWMで行う。送信装置100は、粗い量子化ステップを補間する細かいステップの振幅変調を、RF電力増幅器132の電源電圧を供給するリニアレギュレータ127の出力電圧の可変によって行う。
【0068】
送信装置100は、広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される周波数帯の信号を、PWMを用いて振幅変調し、BPFを使用して帯域制限することができる。
【0069】
送信装置100は、エンベロープPWMの粗い量子化ステップが、リニアレギュレータの細かい量子化ステップによって補間されることで、線形性に優れ、量子化雑音に優れる。
【0070】
送信装置100によるエンベロープPWMと電源電圧とで行う電力可変は、それぞれの積が出力電力の可変となることから、従来のEER方式よりも送信出力電力の可変範囲を
広げることができる。例えば、エンベロープPWMの可変範囲が40dBであり電源電圧の可変範囲が30dBであるとき、70dBの送信電力可変範囲が得られる。
【0071】
送信装置100によれば、送信出力の電力可変範囲が広がることにより、送信出力の電力のレベルが異なる複数の無線方式に対応することができる。
【0072】
(変形例1−1)
ここでは、送信装置100が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求されない信号や帯域外のスプリアスが小さいことが優先される信号を送信する場合について説明する。この場合、PWMパルス生成部125は、実質的に使用されない。送信装置100は、スイッチ124を、信号変換器101側に接続する。送信装置100は、PWMパルス生成部125の実質的な使用の有無を、送信信号の種類によって選択できるようにされてもよい。この変形例は、上記の例と、共通点を有する。従って、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。
【0073】
この変形例の場合、振幅制限器121及び量子化器122は、定常的に1を出力するように制御される。よって、PWMパルス生成部125は、定常的に1を出力する。乗算器131にはアップコンバータ113の出力とPWMパルス生成部125の出力とが入力されるが、乗算器131は、アップコンバータ113の出力を、乗算器131の出力として出力する。振幅制限器121及び量子化器122は、例えば、送信装置100のCPUによって制御される。また、送信装置100のCPUは、振幅制限器121及び量子化器122を制御する代わりに、PWMパルス生成部125から定常的に1を出力するように制御してもよい。
【0074】
また、DA変換器126には、信号変換器101から振幅信号r(t)が入力される。DA変換器126は、振幅信号r(t)を、アナログ信号に変換する。リニアレギュレータ127は、入力電源電圧Vccを、DA変換器126で変換されたアナログ信号に基づいて、変換する。変換された振幅信号(出力電圧)は、RF増幅器132に入力される。
【0075】
PWMパルス生成部125を使用してパルス信号を生成すると、量子化による雑音以外に、エンベロープPWMの変調周波数とその高調波によるスプリアスが発生する。発生したスプリアスはBPFで抑圧することになるが、広い周波数範囲および多数の周波数帯に使用される送信装置では、それぞれ、広い周波数範囲および周波数帯毎にBPFを用意することが求められる。そこで、広い電力可変範囲や低い変調歪を求められない周波数帯の信号に対しては、PWMパルス生成部125を実質的に使用しないことで、スプリアスの発生を抑制することができる。広い電力可変範囲や低い変調歪を求められない信号の周波数帯に対しては、BPFが用意されなくてもよく、LPFが使用され得る。
【0076】
また、帯域外のスプリアスが小さいことが優先される信号の周波数帯に対しては、阻止帯域減衰量が大きく、インサーションロス(挿入損失)が小さいBPFが求められる。しかし、阻止帯域減衰量が大きく、インサーションロスが小さいBPFを用いると、BPFのサイズが大きくなり、コストが高くなるという問題がある。送信装置100は、帯域外のスプリアスが小さいことが優先される信号の周波数帯に対して、エンベロープPWMを使用しないで振幅変調し、BPFを使用せず、LPFを使用して、出力することができる。
【0077】
送信装置100はエンベロープPWMを実質的に使用しない信号の周波数帯に対してはBPFを用意しなくてもよいことから、すべての周波数帯のBPFを用意する場合と対比して、小型化が可能であり、コストダウンが可能である。
【0078】
(変形例1−2)
上記のように、送信出力電力の可変をリニアレギュレータによる電源電圧可変で対応するとリニアレギュレータでの電力損失によって送信装置全体の電力効率は低下する。そこで、スイッチングレギュレータとリニアレギュレータとをカスケード接続してもよい。このとき、スイッチングレギュレータでは振幅変調による電源電圧制御を行わず、送信電力出力に応じた電源電圧制御だけを行ってもよい。スイッチングレギュレータは、スイッチング機構によって出力電圧を一定に制御する。スイッチングレギュレータは、リニアレギュレータに比べて、高効率である。よって、スイッチングレギュレータを使用することで、送信装置全体の電力効率を上げることができる。また、送信出力電力の変化は振幅変調と比較してはるかに遅い変化なので、スイッチングレギュレータに速い応答速度が求められない。よって、送信装置の設計が容易になる。
【0079】
〔実施形態2〕
次に実施形態2について説明する。実施形態2は、実施形態1との共通点を有する。従って、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。
【0080】
本実施形態の送信装置は、位相信号と振幅信号とを分離する。本実施形態の送信装置は、振幅信号を、最も粗いステップに量子化された信号と、次に粗いステップに量子化された信号と、最も細かいステップに量子化された信号に分離する。本実施形態の送信装置は、最も粗いステップの振幅変調をエンベロープPWMで行い、次に粗いステップの振幅変調をリニアレギュレータによる電源電圧の可変で行い、最も細かいステップの振幅変調をLINC方式で行う。
【0081】
図7は、本実施形態の送信装置の構成例を示す図である。送信装置200は、信号変換器201と、逆余弦演算器202と、位相変調器212及び222と、DA変換器213及び223と、アップコンバータ214及び224と、乗算器215及び225と、RF電力増幅器216及び226とを有する。逆余弦演算器202と、位相変調器212及び222と、DA変換器213及び223と、アップコンバータ214及び224と、乗算器215及び225と、RF電力増幅器216及び226とは、LINC方式の装置と同様の構成である。また、送信装置200は、振幅制限器231及び235と、量子化器232及び236と、除算器233と、スイッチ234と、メモリ238と、乗算器239とを有する。送信装置200は、PWMパルス生成部241と、DA変換器242と、リニアレギュレータ243とを有する。さらに、送信装置200は、加算器251と、スイッチ252と、BPF261、262および263、LPF264と、スイッチ265と、アンテナ271とを有する。位相変調器212、DA変換器213、及び、アップコンバータ214は、一体となって、第1位相信号変換部として動作し得る。位相変調器212、DA変換器213、及び、アップコンバータ214は、一体となって、第2位相信号変換部として動作し得る。
【0082】
送信装置200が、広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信する場合、PWMパルス生成部241、リニアレギュレータ243及びLINC方式が使用されるように制御される。PWMパルス生成部241、リニアレギュレータ243及びLINC方式を使用して、広い電力可変範囲を得るためである。PWMパルス生成部241が使用される信号の周波数帯に対して、BPFが用意される。
【0083】
ここでは、送信装置200が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信する場合について説明する。送信装置200が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求されない信号等を送信する場合については、(変形例2−1)で説明する。
【0084】
送信装置200が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求される信号を送信する場合、ス
イッチ234は、除算器233側に接続される。スイッチ234は、例えば、送信装置200におけるCPUによって、制御される。
【0085】
信号変換器201は、入力信号である複素ベースバンド信号Sinを、I成分I(t)及びQ成分Q(t)から、位相信号θ(t)及び振幅信号r(t)に変換する。
【0086】
振幅信号r(t)は、振幅制限器231に入力される。振幅制限器231は、次に示すような振幅信号r(t)を出力する。
【0087】
【数11】

【0088】
ここで、定数Rt2は所定の閾値である。ここで、量子化器232の出力が0にならないようにするため、定数Rt2は後述する量子化ステップQ以上の値とする。
【0089】
量子化器232は、振幅信号r(t)を、量子化ステップQで量子化し、振幅信号rpwm(t)を出力する。振幅信号rpwm(t)は、次のように表される。量子化ステップQは、正の数である。
【0090】
【数12】

【0091】
ここで、係数p(t)は、rpwm(t)がr(t)を超えない、最大の整数である。即ち、係数p(t)は、次の関係式を満たす整数である。振幅信号r(t)は、量子化ステップQ以上であるため、p(t)は、1以上である。よって、量子化器232の出力が0になることはない。また、量子化関数QQ2[r(t)]は、r(t)に対し、量子化ステップQで切り捨ての量子化をする関数である。e(t)は、量子化誤差である。
【0092】
【数13】

【0093】
量子化器232の出力である振幅信号rpwm(t)は、PWMパルス生成部241及び除算器233に入力される。
【0094】
除算器233は、振幅信号r(t)を、量子化器232の出力である振幅信号rpwm(t)で除算し、振幅信号r(t)を出力する。振幅信号rpwm(t)は、量子化器232の出力であり、0ではない。振幅信号r(t)は、次のように表される。
【0095】
【数14】

【0096】
振幅信号r(t)は、振幅制限器235に入力される。振幅制限器235は、次に示すような振幅信号r(t)を出力する。
【0097】
【数15】

【0098】
ここで、定数Rt3は所定の閾値である。ここで、量子化器236の出力が0にならないようにするため、定数Rt3は後述する量子化ステップQ以上の値とする。
【0099】
量子化器236は、振幅信号r(t)を、量子化ステップQで量子化し、振幅信号rreg(t)を出力する。振幅信号rreg(t)は、次のように表される。量子化ステップQは、正の数である。
【0100】
【数16】

【0101】
ここで、係数q(t)は、rreg(t)がr(t)を超えない、最大の整数である。即ち、係数q(t)は、次の関係式を満たす整数である。振幅信号r(t)は、量子化ステップQ以上であるため、q(t)は、1以上である。よって、量子化器236の出力が0になることはない。また、量子化関数QQ3[r(t)]は、r(t)に対し、量子化ステップQで切り捨ての量子化をする関数である。e(t)は、量子化誤差である。
【0102】
【数17】

【0103】
量子化器236の出力である振幅信号rreg(t)は、DA変換器242及び除算器237に入力される。
【0104】
除算器237は、振幅信号r(t)を、量子化器236の出力である振幅信号rreg(t)で除算し、振幅信号r(t)を出力する。振幅信号rreg(t)は、量子化器236の出力であり、0ではない。振幅信号r(t)は、次のように表される。
【0105】
【数18】

【0106】
逆余弦演算器202への入力は、0以上1以下の範囲に正規化されることが求められる。ここで、除算器237の出力(振幅信号r(t))について検討する。
【0107】
振幅信号r(t)がとり得る範囲は、振幅信号が正であること及び(式20)より、次のようになる。
【0108】
【数19】

【0109】
また、振幅信号が正であること及び(式18)より、振幅信号r(t)と振幅信号r(t)との関係は、次のようになる。
【0110】
【数20】

【0111】
よって、除算器237の出力である振幅信号r(t)がとり得る範囲は、(式19)、(式21)、(式22)及び(式23)により、次のようになる。
【0112】
【数21】

【0113】
ここで、係数q(t)は、1以上の整数であることから、振幅信号r(t)の最大値は、2である。上述のように、逆余弦演算器202への入力は、0以上1以下の範囲に正規化されることを求められる。
【0114】
メモリ238は、逆余弦演算器202への入力を0以上1以下の範囲に正規化するためのバックオフ係数Rtqの逆数1/Rtqを格納する。除算器237の出力の最大値は、2であることから、バックオフ係数Rtqは、2となる。ここで、定数Rt3として、大きな値(2Q以上)をとる場合、バックオフ係数Rtqは、2より小さい値になる。定数Rt3が大きい値(2Q以上)をとる場合、係数q(t)が2以上になるため、(式24)から明らかなように、振幅信号r(t)が2より小さくなるからである。
【0115】
乗算器239は、除算器237の出力と1/Rtqとを乗算して、逆余弦演算器202に出力する。逆余弦演算器202には、0以上1以下の範囲の値(r(t)/Rtq
が入力される。
【0116】
以上のように、信号変換器201で変換された振幅信号r(t)は、rpwm(t)、rreg(t)、r(t)/Rtqに分離される。分離された振幅信号rpwm(t)、rreg(t)、r(t)/Rtqは、それぞれ、PWMパルス生成部241、DA変換器242、逆余弦演算器202に入力される。
【0117】
PWMパルス生成部241は、入力された振幅信号rpwm(t)を、エンベロープPWMによりパルス信号に変換する。変換されたパルス信号は、乗算器215及び225に入力される。
【0118】
DA変換器242は、振幅信号rreg(t)をアナログ信号に変換する。DA変換器242は、乗算器239で乗算された値を補償するために、振幅信号rreg(t)にバックオフ係数Rtqを乗算した値を、アナログ信号に変換してもよい。このとき、逆余弦演算器202に入力される振幅信号r(t)/Rtq、リニアレギュレータ243に入力される振幅信号rreg(t)・Rtq及びPWMパルス生成部241に入力される振幅信号rpwm(t)を乗算すると、振幅信号r(t)となる。
【0119】
リニアレギュレータ243は、入力電源電圧Vccを、DA変換器242によって変換されたアナログ信号に基づいて、変換し、RF電力増幅器216及び226に、出力する。リニアレギュレータが使用されることで、雑音を抑圧して、歪の発生が抑制される。
【0120】
逆余弦演算器202は、入力された信号(r(t)/Rtq)を、逆余弦演算し、位相差信号として、加算器211及び減算器221に出力する。
【0121】
一方、位相信号θ(t)は、加算器211及び減算器221に入力される。同様に、逆余弦演算器202から出力された位相差信号が、加算器211及び減算器221に入力される。加算器211は、位相信号と位相差信号とを加算して加算成分を生成する。一方、減算器221は、位相信号から位相差信号を減算して減算成分を生成する。
【0122】
加算器211で生成された加算成分は、位相変調器212に入力されて位相変調されて、位相変調信号が生成される。位相変換器212は、入力された信号を、位相変調し、位相変調信号を生成する。位相変換器212で生成された信号は、DA変換器213に入力される。
【0123】
DA変換器213は、入力された信号を、アナログ信号に変換する。アップコンバータ214は、DA変換器213で変換されたアナログ信号を、RF周波数(角周波数ω)に周波数変換する。周波数変換された信号は、乗算器215に入力される。乗算器215は、アップコンバータ214の出力と、PWMパルス生成部241の出力であるパルス信号とを乗算する。乗算器215の出力は、RF電力増幅器216に入力される。RF電力増幅器216は、乗算器215の出力を、リニアレギュレータの出力で増幅する。RF電力増幅器216は、加算器251に出力される。
【0124】
また、減算器221で生成された減算成分は、位相変調器222などによって、同様に処理されて、RF電力増幅器226から加算器251に出力される。
【0125】
加算器251は、RF電力増幅器216の出力及びRF電力増幅器226の出力を合成する。
【0126】
送信信号の送信周波数帯域に応じて、スイッチ252及びスイッチ265によって、い
ずれかのフィルタ(BPF261、262、263、LPF264)が選択される。スイッチ252及びスイッチ265は、例えば、送信装置200におけるCPUによって、制御される。加算器251で合成された信号は、選択されたフィルタによって、帯域制限される。いずれかのフィルタによって、帯域制限された信号は、アンテナ271から出力される。エンベロープPWMにより発生するエンベロープPWMの変調周波数及びその高調波によるスプリアスは、例えば、BPFにより抑制することができる。
【0127】
(実施形態2の作用効果)
送信装置200の送信出力電力の可変範囲は、エンベロープPWMと電源電圧とLINCとが使用されることから、実施形態1の構成よりも送信出力の電力可変範囲が大きくなる。例えば、送信出力電力の可変範囲は、エンベロープPWMの可変範囲が40dBであり電源電圧の可変範囲が30dBでありLINC方式による可変範囲が40dBであるとしたとき、110dBとなる。送信装置200では、送信出力の電力可変範囲が広がることから、歪が問題となる範囲は相対的に狭くなり、歪が低減される。
【0128】
送信装置200によれば、送信出力の電力可変範囲が広がることにより、送信出力の電力レベルが異なる複数の無線通信方式に対応することができる。
【0129】
(変形例2−1)
ここでは、送信装置200が広い電力可変範囲や低い変調歪が要求されない信号や帯域外のスプリアスが小さいことが優先される信号を送信する場合について説明する。この場合、PWMパルス生成部241は、実質的に使用されない。送信装置200は、スイッチ234を信号変換器201側に接続する。送信装置200は、PWMパルス生成部241の実質的な使用の有無を、送信信号の種類によって選択できるようにされてもよい。この変形例2−1は、上記の例と、共通点を有する。従って、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。
【0130】
この変形例の場合、振幅制限器231及び量子化器232は、定常的に1を出力するように制御される。よって、PWMパルス生成部241は、定常的に1を出力する。よって、乗算器215には、アップコンバータ214の出力とPWMパルス生成部241の出力とが入力されるが、乗算器215は、アップコンバータ214の出力を、乗算器215の出力として、出力する。乗算器225についても同様である。振幅制限器231及び量子化器232は、例えば、送信装置200のCPUによって制御される。また、送信装置200のCPUは、振幅制限器231及び量子化器232を制御する代わりに、PWMパルス生成部241から定常的に1を出力するように制御してもよい。
【0131】
また、振幅制限器235には、振幅信号r(t)が入力される。振幅制限器235は、上記の例と同様に処理をして、振幅信号r(t)を出力する。量子化器236、除算器237も、上記の例と同様に動作する。即ち、DA変換器242には、振幅信号rreg(t)が入力され、乗算器239には、振幅信号r(t)が入力される。DA変換器242は、振幅信号rreg(t)を、アナログ信号に変換する。リニアレギュレータ243は、入力電源電圧Vccを、DA変換器242で変換されたアナログ信号に基づいて、変換する。
【0132】
ここでは、送信装置200は、PWMパルス生成部241による振幅変調を行わないが、リニアレギュレータ243及びLINC方式による振幅変調が行うことで、スプリアスの発生を避けつつ、変形例1−1の構成に比べより広い電力可変範囲を実現できる。
【0133】
(変形例2−2)
ここでは、送信装置200が、最も粗いステップの振幅変調をエンベロープPWMで行
い、次に粗いステップの振幅変調をLINC方式で行い、最も細かいステップの振幅変調をリニアレギュレータによる電源電圧の可変で行う場合について説明する。この変形例2は、上記の例と、共通点を有する。従って、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。
【0134】
この変形例2−2の場合、量子化器236の出力を乗算器239に行い、除算器237の出力をDA変換器242に行う。
【0135】
量子化器236の出力の範囲について検討する。上記の(式24)の導出と同様にすると、r(t)の最大値は、2である。よって、量子化器236の出力の最大値は2である。この場合、バックオフ係数Rtqは2となる。メモリ238は、逆余弦演算器202への入力を0以上1以下の範囲に正規化するためのバックオフ係数Rtqの逆数1/Rtqを格納する。これによって、逆余弦演算器202への入力が0以上1以下の範囲の値になることが保証される。
【0136】
変形例2−2の構成によると、送信装置200は、最も粗いステップの振幅変調をエンベロープPWMで行い、次に粗いステップの振幅変調をLINC方式で行い、最も細かいステップの振幅変調をリニアレギュレータによる電源電圧の可変で行うことができる。
【符号の説明】
【0137】
100 送信措置
101 信号変換器
111 位相変調器
112 DA変換器
113 アップコンバータ
121 振幅制限器
122 量子化器
123 除算器
124 スイッチ
125 PWMパルス生成器
126 DA変換器
127 リニアレギュレータ
131 乗算器
132 RF電力増幅器
133 スイッチ
141 BPF
142 BPF
143 BPF
144 LPF
145 スイッチ
151 アンテナ
200 送信装置
201 信号変換器
202 逆余弦演算器
211 加算器
221 減算器
212 位相変調器
213 DA変換器
214 アップコンバータ
215 乗算器
216 RF電力増幅器
222 位相変調器
223 DA変換器
224 アップコンバータ
225 乗算器
226 RF電力増幅器
231 振幅制限器
232 量子化器
233 除算器
234 スイッチ
235 振幅制限器
236 量子化器
237 除算器
238 メモリ
239 乗算器
241 PWMパルス生成部
243 リニアレギュレータ
251 加算器
252 スイッチ
261 BPF
262 BPF
263 BPF
264 LPF
265 スイッチ
271 アンテナ
300 送信装置(EER方式(リニアレギュレータ))
400 送信装置(EER方式(エンベロープPWM))
500 送信装置(LINC方式)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号に含まれる位相信号を高周波に変換して位相変調信号を生成する位相信号変換部と、
前記ベースバンド信号に含まれる振幅信号の振幅値を所定の量子化ステップで量子化し、量子化値を出力する量子化部と、
前記振幅信号の振幅値を前記振幅値が量子化された量子化値で除算する除算部と、
前記量子化部の出力に応じたパルス幅のパルス信号を生成するパルス生成部と、
前記位相変調信号に前記パルス信号を乗算する乗算部と、
前記乗算部の出力を前記除算部の出力に応じた電源電圧で増幅する電力増幅部と、
を備える送信装置。
【請求項2】
ベースバンド信号に含まれる振幅信号の振幅値を所定の第1量子化ステップで量子化し、第1量子化値を出力する第1量子化部と、
前記振幅信号の振幅値を前記振幅値が量子化された前記第1量子化値で除算する第1除算部と、
前記第1量子化部の出力に応じたパルス幅のパルス信号を生成するパルス生成部と、
前記第1除算部の出力を所定の第2量子化ステップで量子化し、第2量子化値で除算する第2量子化部と、
前記第1除算部の出力を前記第1除算部の出力が量子化された前記第2量子化値で除算する第2除算部と、
前記第2除算部の出力を位相差信号に変換する振幅位相差変換部と、
前記位相信号に前記位相差信号を加算した信号を高周波に変換して、第1位相変調信号を生成する第1位相信号変換部と、
前記位相信号に前記位相差信号を減算した信号を高周波に変換して、第2位相変調信号を生成する第2位相信号変換部と、
前記第1位相変調信号に前記パルス信号を乗算する第1乗算部と、
前記第2位相変調信号に前記パルス信号を乗算する第2乗算部と、
前記第1乗算部の出力を前記第2量子化部の出力に応じて増幅する第1電力増幅部と、
前記第2乗算部の出力を前記第2量子化部の出力に応じて増幅する第2電力増幅部と、
前記第1電力増幅部の出力および前記第2電力増幅部の出力を合成する加算部と、
を備える送信装置。
【請求項3】
前記振幅位相差変換部は、前記第2量子化部の出力を位相差信号に変換し、
前記第1電力増幅部は、前記第1乗算部の出力を、前記第2除算部の出力に応じて増幅し、
前記第2電力増幅部は、前記第2乗算部の出力を、前記第2除算部の出力に応じて増幅する、
請求項2に記載の送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254260(P2011−254260A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126202(P2010−126202)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】