説明

送信電力制限機能付き無線通信装置

【課題】周辺の状況に応じて電力状態を自動的に制できる無線通信端末を提供する。
【解決手段】無線通信端末は、無線通信システムにおいて用いられ、かつ外部信号発生器から外部信号を受信する。無線通信端末は、外部信号発生器からの外部信号を受信する外部信号受信部と、無線通信システムと通信用の信号を送受信する通信用信号送受信部と、外部信号受信部と通信用信号送受信部とに連結された制御部とを備え、外部信号受信部は、外部信号発生器からの外部信号を元に無線通信端末の電力状態を制御する電力状態制御信号を得、制御部に送信し、制御部は、外部信号受信部からの電力状態制御信号を元に無線通信端末の電力状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末に関し、より詳細には、送信電力制御機能を周辺の通信環境に応じて調節し得る無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
今日広く普及している携帯電話は、一般にセル方式の無線通信システムを利用している。このような無線通信システムにおいて、携帯電話を例とする携帯通信端末は、セル内の基地局との間に無線通信リンクを確立し、基地局からの送信電力制御信号に応じて送信電力を決定するようになっている。
【0003】
携帯通信端末が屋内にある場合、携帯通信端末は、屋内に小型基地局が設置されているときは小型基地局と、小型基地局がないときは屋外の基地局と、それぞれ無線通信リンクを確立する。携帯通信端末が屋外の基地局と無線リンクを確立する際は、無線リンクを安定させるため、携帯通信端末の送信電力は一般的に大きくなる。一方、携帯通信端末が屋内の基地局と無線リンクを確立する場合は、携帯通信端末の送信電力は一般に小さくて済む。
【0004】
一方、図1に示されるように、屋内に小型基地局が設置されていても、携帯通信端末の使用者が窓際などのような場所にいる場合は、携帯通信端末は屋内の基地局でなく屋外の基地局と無線リンクを接続することがある。この場合、携帯通信端末の送信電力は大きくなる。一方、屋内に例えば医用電気機器などの精密電気機器がある場合、これらの電気機器は高感度のセンサと高利得の増幅回路等から構成されるため、携帯通信端末などの電波放射源が近接した場合には電磁干渉を起こす可能性がある。そのため、医用電気機器の置かれた部屋においては、携帯通信端末の種類によっては使用者が自らの操作により電源を切るなどの対処が必要となることがあった。しかし、使用者が携帯通信端末の電源を切るのを忘れてしまった場合には、携帯通信端末と医用電気機器との間で電磁干渉が起きる可能性が高くなる。
【0005】
室内の電気機器との電磁干渉を避けるための携帯通信端末システムの例として、特許文献1があり、ここでは、室内の電気機器に近接した場所にタグを取り付けてタグから発せられるマーカー信号により電気機器からの距離を探知している。
【0006】
【特許文献1】特開2006-276942号公報(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、携帯通信端末の利用において、その送信電力に自動的に制限をかける制御を行うシステム、携帯通信端末が望まれる。上記特許文献1のような構成の場合、電子機器の存在を示すマーカー信号を発するタグを新たに取り付ける必要がある。従って、タグを予め設置する必要なく、携帯通信端末の送信電力を自動的に制御し電気機器との電磁干渉を抑制することのできる携帯通信端末、携帯通信システムが必要とされている。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、携帯通信端末の送信電力を自動的に制御するための、無線通信システム及び無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無線通信システムにおいて用いられかつ外部信号発生器からの外部信号を受信する無線通信端末であって、外部信号発生器からの外部信号を受信する外部信号受信部と、無線通信システムと通信用の信号を送受信する通信用信号送受信部と、外部信号受信部と通信用信号送受信部とに連結された制御部とを備え、外部信号受信部は、外部信号発生器からの外部信号を元に無線通信端末の利用状態を制御する利用状態制御信号を得、制御部に送信し、制御部は、外部信号受信部からの利用状態制御信号を元に無線通信端末の利用状態を制御することを特徴とする。
【0010】
これにより、周囲の状況に応じて利用状態の制御が可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信端末であって、外部信号は外部信号発生器から発せられる電波であり、前記無線通信端末は所定の周波数、方式、電力限度値の少なくともいずれか1つを格納する限度値情報メモリをさらに備え、外部信号受信部は、外部信号発生器からの外部信号と限度値情報メモリに格納された限度値情報とを比較することによって利用状態制御信号を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の無線通信端末であって、外部信号受信部は、外部信号発生器からの外部信号と限度値情報メモリに格納された限度値情報とを比較することによって、利用状態制御信号による利用状態制御を解除するための制御信号を生成し、制御部に送信することを特徴とする。
【0013】
これにより、医用機器などから発せられる電波を元に無線通信端末の利用状態制御が可能になる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信端末であって、外部信号発生器が発生する外部信号には、音声信号に利用状態制御信号を合成させた信号が含まれ、外部信号受信部は、外部信号を解析して合成された利用状態制御信号を取り出し、制御部に送信することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の無線通信端末であって、外部信号受信部は、利用状態制御信号と音声信号とを合成した信号を含む外部信号を所定時間受信しない場合、利用状態制御信号による利用状態制御を解除するための制御信号を生成し、制御部に送信することを特徴とする。
【0016】
これにより、音声信号に合成された利用状態制御信号を元に無線通信端末の利用状態制御が可能になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通信端末であって、利用状態制御信号は、通信用信号送信部の送信出力を制御する信号であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の無線通信端末であって、利用状態制御信号は、前記通信用信号送信部の送信出力をゼロに制御する信号であることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の無線通信端末であって、利用状態制御信号による通信用信号送信部の送信電力の制御は使用者が手動で解除し得、使用者による解除の後、所定時間が経つと、外部信号受信部は、外部信号を元に利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項6または7に記載の無線通信端末であって、外部信号受信部は無線通信端末が発呼または着呼するときに、外部信号を元に利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通信端末であって、無線通信端末を不応答モード、マナーモードの少なくともいずれか1つのモードに設定するモード設定回路をさらに備え、利用状態制御信号は、無線通信端末を不応答モード、マナーモードの少なくともいずれか1つのモードに設定する信号であることを特徴とする。
【0022】
これにより、無線通信端末から電波を出すこと自体は構わないが、着信音等の発生が望ましくない場所にある場合にも有効に無線通信端末の制御ができる。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の無線通信端末であって、外部信号受信部は、無線通信端末が着呼するときに、外部信号を元に利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通信端末であって、利用状態制御信号は、無線通信端末の電源をオフにする信号であることを特徴とする。
【0025】
これにより、電波を出すこと自体が厳しく制限されるべき場所にある場合において確実に無線通信端末から電波を出さなくすることができる。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の無線通信端末であって、外部信号受信部は、無線通信端末の電源をオンにするときに、外部信号を元に利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする。
【0027】
これにより、電源がオフになった無線通信端末の電源をオンにしようとしても、電源を入れることをできなくすることができる。
【0028】
請求項14に記載の発明は、請求項2または3に記載の無線通信端末であって、無線通信端末の有する、所定の周波数、方式、電力限度値の少なくともいずれか1つを格納する限度値情報メモリは、書き換え可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
周辺の状況に応じて、携帯通信端末利用状態を自動的に変更することができる無線通信端末、無線通信システムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図2に示すように、本実施形態に係る携帯通信端末100は、携帯通信システムにおいて用いられ、かつ周辺電波環境を構成するテレメータ200、250からの信号も受信しえる。
【0031】
携帯通信端末100は、無線ネットワーク送受信アンテナ110と、アンテナ共用回路120と、通信用無線送信回路130と、通信用無線受信回路135と、制御回路140と、モード設定回路150と、電源回路160と、電波環境認知部170と、周波数・方式・受信電力限度値情報格納メモリ180とを備えている。制御回路140は、通信用無線送信回路130と、通信用無線受信回路135と、モード設定回路150と、電源回路160と、電波環境認知部170とに連結され、制御を行う。電波環境認知部170は、周囲電波モニタ用広帯域受信アンテナ171と、周囲電波モニタ用無線受信回路172と、周波数・方式・受信電力認識回路173とを有している。周囲電波モニタ用広帯域受信アンテナ171は、電界センサでもよい。
【0032】
無線ネットワーク送受信アンテナ110と、アンテナ共用回路120と、通信用無線送信回路130と、通信用無線受信回路135とは、携帯通信システムと通信用の音声・データ信号を送受信するための回路・アンテナである。これに対し電波環境認知部170は、携帯通信端末が、通信で使用する周波数以外にも広帯域に周囲電波をモニタすることを可能にする。このため、電波環境認知部170は、広帯域受信アンテナ171を持つ。広帯域受信アンテナ171は受信のみを行うため、電界センサに置き換えてもよい。
【0033】
また上記のように、電波環境認知部170はさらに、周囲電波モニタ用無線受信回路172、周波数・方式・受信電力認識回路173から構成される。広帯域受信アンテナ171で受信された電波信号は、周囲電波モニタ用無線受信回路172を経て周波数・方式・受信電力認識回路173に送られる。周波数・方式・受信電力認識回路173は、認識した周囲電波の周波数・方式・受信電力を周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180に格納されている各情報と突合わせ、周波数および方式についてはそれらが一致した場合、受信電力については受信電力限度値を超えた場合に、制御回路140に対して送信電力制限信号を送信する。
【0034】
制御回路140は、周波数・方式・受信電力認識回路173からの送信電力制限信号を受信すると、通信用無線送信回路130にこの送信電力制限信号を伝達する。これは、制御回路140が、屋外または屋内の無線基地局より別途送信電力制御信号を受信している場合でも行われ、周波数・方式・受信電力認識回路173からの送信電力制限信号が基地局からのそれに優先する。
【0035】
図2では例として、テレメータA 200(外部信号発生器の一例)からテレメータB 250に対してテレメトリ信号(電波)(外部信号の一例)を送信している様子を示している。テレメータA 200からの電波は一定の広がりを持って伝搬するため、テレメータB 250のみでなくその周囲においても受信可能である。テレメータA 200からの電波を携帯通信端末100の広帯域受信アンテナ171が受信すると、周波数・方式・受信電力認識回路173の受信した電波の周波数、方式、受信電力などが周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180(限度値情報メモリの一例)に格納されている所定のものに合致するかを確認する。合致する周波数、方式、受信電力があった場合、周波数・方式・受信電力認識回路173は制御回路140に送信電力制限信号(利用状態制御信号の一例)を送信し、携帯通信端末の送信電力制御を自動的に行う。
【0036】
ここで電波環境認知部170は、場所に特有の周波数または方式を認知する。例えば、医療用テレメータに割り当てられている帯域(420.05 MHz〜449.6625 MHzの一部)および/または方式(FM、 BFSK、 またはGMSK)を一定の強さ以上で認知した場合には、電波環境認知部170は携帯通信端末100が医療施設内にあると判断する。また、例えば航空無線に割り当てられている帯域および/または方式を一定の強さ以上で認知した場合には、携帯通信端末100は航空機内にあると判断する。このような判断結果を元に、必要に応じて、携帯通信端末100の送信出力を制限させる。
【0037】
尚、広帯域受信アンテナ171による周囲電波のモニタは、連続的に行われても間欠的に行われてもどちらでもよい。
【0038】
本実施形態において、電波環境認知部170からの送信電力制限信号による送信電力の制限値をゼロとすることができる。すなわち、携帯通信端末100は、送信電力制限信号による送信電力制御を受けると、電源はオンのままでありスケジューラの閲覧など携帯通信端末100内のローカルの動作は可能のままであるが、一切の通信すなわち電波の放射を行うことができなくなる。
【0039】
また本実施形態では、周波数・方式・受信電力認識回路173が周囲電波の周波数・方式・受信電力を周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180に格納されている各情報と突合わせ、周波数および方式についてはそれらが不一致した場合、受信電力については受信電力限度値より小さくなった場合に、制御回路140に対して送信電力制限解除信号を送信する、または送信電力制限信号の送信を止めるようにすることも可能である。制御回路140は、屋外または屋内の無線基地局より受信した基地局送信電力制御信号に従い、通信用無線送信回路130に送信電力制御信号を伝達する。これにより、自動的に送信電力制限機能を解除することができる。
【0040】
また、携帯通信端末100が周波数・方式・受信電力認識回路173からのシステム送信電力制限信号により既に送信電力制限機能を作動しているときに、使用者が携帯通信端末において所定の手動操作をすることにより、当該機能を解除することも可能である。これにより、周囲の電波環境の変動等により広帯域受信アンテナ171が電波を偶然受信してしまい、送信電力制限の対象となってしまっても、解除可能となる。但し、送信電力制限の対象となる電波を偶然認知したのか、そのような環境下に実際に携帯通信端末があり必然的に認知したのかはわからないため、一定時間ののちに再度周囲の電波環境を認知し、上記の送信電力制限動作を行うことにより、必然的に認知したものに対しては送信電力制限機能を再度作動する。
【0041】
また、本実施形態において、周囲電波の認知を、携帯電話端末100が発呼または着呼するときのみに行うように設定することも可能である。これにより、間欠的な制御信号を除き、通信用の電波を送信しようとする直前のみに周囲電波のモニタを行うようになるため、携帯通信端末のバッテリ消費を低減できる。
【0042】
<第2実施形態>
本実施形態に係る携帯通信端末100は、図2と同じ構成を有し、以下のような機能を備える。即ち、携帯通信端末100のモード設定回路150は、通常モード、着信音を出さないモード(マナーモード)、着呼を行わず不応答にするモード(不応答モード)など、複数のモードの定義を格納しており、電波環境認知部170、制御回路140からのモード切り替え信号を受信することにより、モードの切り替えを行う。
【0043】
電波環境認知部170は上記第1実施形態と同様、認識した周囲電波の周波数・方式・受信電力を周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180に格納されている各情報と突合わせ、周波数および方式についてはそれらが一致している場合、受信電力については受信電力限度値を超えた場合に、制御回路140に対してモード切り替え信号を送信する。制御回路140はモード切り替え信号をモード設定回路150に送信し、それに応じて、携帯通信端末100は着呼を行わないで不応答にするモード(不応答モード)や、着信音のみを出さないモード(マナーモード)などに切り替わる。携帯通信端末100から電波を出すこと自体は構わないが、その利用が望ましくない場所にある場合に有効に適用される実施形態である。
【0044】
さらに電波環境認知部170は、周囲電波の周波数・方式・受信電力を周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180に格納されている各情報と突合わせ、周波数および方式についてはそれらが不一致となった場合、受信電力については受信電力限度値より小さくなった場合に、制御回路140に対してモード切り替え解除信号を送信する。または、モード切り替え信号の送信を止める。これにより、自動的に不応答モードやマナーモードから、モード切り替え制御以前のモードへ戻すことができる。但し、使用者自らが不応答モードやマナーモードを手動で設定した場合は、電波環境認知部170からのモード切り替え解除信号によりモード切り替えの解除が行われることはない。
【0045】
本実施例においても同様に、周囲電波の認知を、携帯電話端末が着呼するときのみに行うようにすることができる。これにより、間欠的な制御信号を除き、通信用の電波を送信しようとする直前のみに周囲電波のモニタをするので、携帯通信端末のバッテリを余分に使わずに済む。
【0046】
<第3実施形態>
本実施形態に係る携帯通信端末100は、図2と同じ構成を有し、以下のような機能を備える。即ち、電波環境認知部170は、制御回路140に対して電源オフ信号を送信し、制御回路140は電源回路160に対して電源オフ信号を送信する。つまり、航空無線や医療機器などに割り当てられている特定の帯域および/または方式の電波を一定の強さ以上で認知した場合に携帯通信端末100が航空機内または医療機器内にあると判断し、このような判断結果を元に、必要に応じて、携帯通信端末100の電源をオフにする。
【0047】
電波環境認知部170は上記第1実施形態と同様、認識した周囲電波の周波数・方式・受信電力を周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180に格納されている各情報と突合わせ、周波数および方式についてはそれらが一致した場合、受信電力については受信電力限度値を超えた場合に、制御回路140に対して電源オフ信号を送信する。制御回路140は電源オフ信号を電源回路160に送信し、これに応じて携帯通信端末100はその電源を落とす。携帯通信端末100から電波を出すこと自体が厳しく制限されるべき場所にある場合において有効に適用される実施形態である。
【0048】
本実施形態において、周囲電波の認知を、携帯通信端末100の電源を入れようとしたときに行うようにしてもよい。これにより、電波環境認知部170からの電源オフ信号により電源がオフになった携帯通信端末100の電源をオンにしようとしても、電源を入れることをできなくすることができる。
【0049】
<第4実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態について詳細に説明する。図3に示すように、本実施形態に係る携帯通信端末300は、携帯通信システムにおいても用いられ、かつ周辺音響環境を構成する音声信号発信機400(外部信号発生器の一例)からの信号も受信しえる。
【0050】
音声信号発信機400は、複数のスピーカ410と、音楽・案内格納部420と送信電力制御信号格納部430と、合成部440とを備え、送信電力制限信号を音楽・案内等の通常の音声信号と合成した信号(外部信号の一例)として、スピーカ410から送信する。音声信号発信機400としては、上記合成部440を除き、従来の音楽・案内等放送設備を用いることが可能である。
【0051】
携帯通信端末300は、無線ネットワーク送受信アンテナ310と、アンテナ共用回路320と、通信用無線送信回路330と、通信用無線受信回路335と、制御回路340と、モード設定回路350と、電源回路360と、音声信号解析部370(外部信号受信部の一例)とを備えている。制御回路340は、通信用無線送信回路330と、通信用無線受信回路335と、モード設定回路350と、電源回路360と、音声信号解析部370とに連結され、制御を行う。音声信号解析部370は、音波を受信する必要があるためマイクロホン371を有し、さらに音声信号解析回路372を有している。音声信号解析回路372によって、合成部440において音声信号と合成された送信電力制限信号が取り出され、制御回路340に対して送信される。制御回路340は、通信用無線送信回路330に送信電力制限信号を伝達する。
【0052】
本実施例で適用される音声信号に混成したデータの解析機能の一例としては、URLなどのテキスト情報を音声信号に乗せて携帯通信端末に送信する音響OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などがある。
【0053】
このように、携帯通信端末300に音声信号に混成した別データを解析する機能を搭載し、制御信号の載った音声信号を受信した場合にその制御内容に応じて携帯通信端末300の送信電力を制限させる。医療施設や航空機には通常、音声アナウンスを行うためのスピーカなどのシステムが搭載されているため、新たなハードウェアを追加することなく送信電力制限信号等の混成した音声信号を送ることは容易である。
【0054】
上記の音声信号解析による送信電力制御は、屋外または屋内の無線基地局より基地局送信電力制御信号を受信した場合にでも適用され、音声信号解析回路372からの送信電力制御信号は、基地局からのそれに優先して適用される。携帯通信端末300のマイクロホン371および音声信号解析回路372は、通常の携帯電話端末等に搭載されているものと共用でもよい。周囲音声の解析は、連続的に行われても間欠的に行われてもどちらでもよい。
【0055】
本実施形態において、音声信号解析回路372からの送信電力制限信号による送信電力の制限値をゼロとすることができる。すなわち、携帯通信端末300は、送信電力制限信号による送信電力制御を受けると、電源はオンのままでありスケジューラの閲覧など携帯通信端末100内のローカルの動作は可能のままであるが、一切の通信すなわち電波の放射を行うことができなくなる。
【0056】
音声信号解析回路372の解析の結果、音声信号の中に送信電力制限信号が含まれなくなると、音声信号解析回路372は制御回路340に対して送信電力制限解除信号を送信する。または、送信電力制限信号の送信を止める。制御回路340はそれ以降、屋外または屋内の無線基地局より受信した送信電力制御信号に従い、通信用無線送信回路330に送信電力制御信号を伝達する。これにより、自動的に送信電力制限機能を解除することができる。
【0057】
また、音声信号解析回路372からの送信電力制御信号により既に携帯通信端末300が送信電力制限機能を作動しているときに、使用者が携帯通信端末300において所定の操作をすることにより、当該機能を解除することができる。こうすることによって、音声環境の変動等により、送信電力制限信号を含む音声信号を偶然認知してしまい送信電力制限機能を作動させたような場合でも、本機能によりそれを解除可能とする。但し、送信電力制限信号を含む音声信号を偶然認知したのか、そのような環境下に実際に携帯通信端末があり必然的に認知したのかはわからないため、一定時間ののちに再度周囲の音声信号を解析し、音声信号解析の動作を行うことにより、必然的に認知したものに対しては送信電力制限機能を再度作動する。
【0058】
また、本実施形態において、音声信号の解析を、携帯電話端末300が発呼または着呼するときのみに行うように設定することも可能である。これにより、間欠的な制御信号を除き、通信用の電波を送信しようとする直前のみに周囲電波のモニタを行うようになるため、携帯通信端末のバッテリ消費を低減できる。
【0059】
<第5実施形態>
本実施形態に係る携帯通信端末300は、図3と同じ構成を有し、以下のような機能を備える。即ち、携帯通信端末300のモード設定回路350は、通常モードや、着信音を出さないモード(マナーモード)や、着呼を行わず不応答にするモード(不応答モード)など、複数のモードの定義を格納している。音声信号発信機400は、モード切り替え信号を、音楽・案内等の通常の音声信号と合成し、合成した信号をスピーカ401から送信する。無線通信端末300は、音声信号解析回路372、制御回路340からのモード切り替え信号を受信することにより、モードの切り替えを行う。
【0060】
携帯通信端末300における音声信号解析部370の構成および動作は上記第4実施形態と同様であり、音声信号解析回路372によってモード切り替え信号が取り出され、制御回路340に対して送信される。制御回路340は、モード切り替え信号をモード設定回路350に送信し、携帯通信端末300は、着呼を行わないで不応答にするモード(不応答モードなど)や、着信音のみを出さないモード(マナーモードなど)に切り替わる。携帯通信端末から電波を出すこと自体は構わないが、その利用が望ましくない場所にある場合に有効に適用される実施形態である。
【0061】
さらに音声信号解析部370は、音声信号解析回路372による音声信号解析の結果、音声信号の中にモード切り替え信号が含まれなくなった場合に、制御回路340に対してモード切り替え解除信号を送信する。または、モード切り替え信号の送信を止める。これにより、自動的に不応答モードやマナーモードから、モード切り替え制御以前のモードへ戻すことができる。但し、使用者自らが不応答モードやマナーモードを手動で設定した場合は、音声信号解析回路372からのモード切り替え解除信号によりモード切り替えの解除が行われることはない。
【0062】
本実施例においても同様に、周囲電波の認知を、携帯電話端末が着呼するときのみに行うようにすることができる。これにより、間欠的な制御信号を除き、通信用の電波を送信しようとする直前のみに周囲電波のモニタをするので、携帯通信端末のバッテリを余分に使わずに済む。
【0063】
<第6実施形態>
本実施形態に係る携帯通信端末300は、図3と同じ構成を有し、以下のような機能を備える。即ち、音声信号発信機400は、電力オフ信号を、音楽・案内等の通常の音声信号と合成し、スピーカ401から送信する。音声信号解析部370は、制御回路340に対して電源オフ信号を送信し、制御回路340は電源回路360に対して電源オフ信号を送信する。
【0064】
音声信号解析部370は、音声信号から電力オフ信号を取り出し、制御回路340に送信する。制御回路340は電源オフ信号を電源回路360に送信し、これに応じて携帯通信端末300はその電源を落とす。携帯通信端末300から電波を出すこと自体が厳しく制限されるべき場所にある場合において有効に適用される実施形態である。
【0065】
このように、携帯通信端末300に音声信号に混成した別データを解析する機能を搭載し、制御信号の載った音声信号を受信した場合にその制御内容に応じて携帯通信端末300の送信電力を制限させる。医療施設や航空機には通常、音声アナウンスを行うためのスピーカなどのシステムが搭載されているため、新たなハードウェアを追加することなく送信電力制限信号等の混成した音声信号を送ることは容易である。
【0066】
本実施形態において、音声信号の解析を、携帯通信端末300の電源を入れようとしたときに行うようにしてもよい。これにより、音声信号解析部370からの電源オフ信号により電源がオフになった携帯通信端末300の電源をオンにしようとしても、電源を入れることをできなくすることができる。
【0067】
<第7実施形態>
上記第1乃至3実施形態の周波数・方式・受信電力限度値情報メモリ180は、書き換え可能とすることができる。これにより、地域や国によって特定の場所で使用する周波数や方式が異なる場合であっても、上記情報を書き換えることによって、上記周波数・方式・受信電力の認識動作をさせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る無線通信システム及び無線通信端末では、周辺の状況に応じて、携帯通信端末の送信電力に制限をかける、または携帯通信端末を不応答にする、または携帯通信端末の着信音をオフにする、携帯通信端末の電源をオフにする等により、携帯通信端末の電力状態を自動的に制御することができる。これにより例えば、携帯通信端末が病院内にある場合に、医用電気機器と電磁干渉を起こす可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】屋内における携帯通信端末利用の問題点を説明するための図である。
【図2】本発明の第1乃至3、7実施形態にかかる無線通信システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の第4乃至6実施形態にかかる無線通信システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
100、300 携帯通信端末
110、310 無線ネットワーク送受信アンテナ
120、320 アンテナ共用回路
130、330 通信用無線送信回路
135、335 通信用無線受信回路
140、340 制御回路
150、350 モード設定回路
160、360 電源回路
170 電波環境認知部
171 周囲電波モニタ用広帯域受信アンテナ
172 周囲電波モニタ用無線受信回路
173 周波数・方式・受信電力認識回路
180 周波数・方式・受信電力限度値情報格納メモリ
200 テレメータ
370 音声信号解析部
371 マイクロホン
372 音声信号解析回路
400 音声信号発信機
410 スピーカ
420 音楽・案内格納部
430 送信電力制御信号格納部
440 合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて用いられ、かつ外部信号発生器からの外部信号を受信する無線通信端末であって、
前記外部信号発生器からの外部信号を受信する外部信号受信部と、
前記無線通信システムと通信用の信号を送受信する通信用信号送受信部と、
前記外部信号受信部と前記通信用信号送受信部とに連結された制御部と
を備え、
前記外部信号受信部は、前記外部信号発生器からの外部信号を元に前記無線通信端末の利用状態を制御する利用状態制御信号を得、制御部に送信し、
前記制御部は、前記外部信号受信部からの前記利用状態制御信号を元に前記無線通信端末の利用状態を制御することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記外部信号は前記外部信号発生器から発せられる電波であり、
前記無線通信端末は所定の周波数、方式、電力限度値の少なくともいずれか1つを格納する限度値情報メモリをさらに備え、
前記外部信号受信部は、前記外部信号発生器からの外部信号と前記限度値情報メモリに格納された限度値情報とを比較することによって利用状態制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記外部信号受信部は、前記外部信号発生器からの外部信号と前記限度値情報メモリに格納された限度値情報とを比較することによって、前記利用状態制御信号による利用状態制御を解除するための制御信号を生成し、前記制御部に送信することを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記外部信号発生器が発生する外部信号には、音声信号に利用状態制御信号を合成させた信号が含まれ、
前記外部信号受信部は、前記外部信号を解析して合成された前記利用状態制御信号を取り出し、前記制御部に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記外部信号受信部は、利用状態制御信号と音声信号とを合成した信号を含む外部信号を所定時間受信しない場合、前記利用状態制御信号による利用状態制御を解除するための制御信号を生成し、前記制御部に送信することを特徴とする請求項4に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記利用状態制御信号は、前記通信用信号送信部の送信出力を制御する信号であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記利用状態制御信号は、前記通信用信号送信部の送信出力をゼロに制御する信号であることを特徴とする請求項6に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記利用状態制御信号による前記通信用信号送信部の送信電力の制御は使用者が手動で解除し得、
使用者による前記解除の後、所定時間が経つと、前記外部信号受信部は、前記外部信号を元に前記利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする請求項6または7に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記外部信号受信部は、前記無線通信端末が発呼または着呼するときに、前記外部信号を元に前記利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする請求項6または7に記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記無線通信端末を不応答モード、マナーモードの少なくともいずれか1つのモードに設定するモード設定回路をさらに備え、
前記利用状態制御信号は、前記無線通信端末を不応答モード、マナーモードの少なくともいずれか1つのモードに設定する信号であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の無線通信端末。
【請求項11】
前記外部信号受信部は、前記無線通信端末が着呼するときに、前記外部信号を元に前記利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする請求項10に記載の無線通信端末。
【請求項12】
前記利用状態制御信号は、前記無線通信端末の電源をオフにする信号であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の無線通信端末。
【請求項13】
前記外部信号受信部は、前記無線通信端末の電源をオンにするときに、前記外部信号を元に前記利用状態制御信号の有無を判断することを特徴とする請求項12に記載の無線通信端末。
【請求項14】
前記無線通信端末の有する、所定の周波数、方式、電力限度値の少なくともいずれか1つを格納する前記限度値情報メモリは、書き換え可能であることを特徴とする請求項2または3に記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124517(P2009−124517A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297314(P2007−297314)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】