説明

送気マスク用エアーコンプレッサ

【課題】エアーコンプレッサで空気を防じんマスクに供給する際に停電や機器の不具合でエアーが供給されない状態になったとき、代わりの空気を確実に供給する。
【解決手段】送気マスクに呼吸用のエアーを供給する送気マスク用エアーコンプレッサにおいて、エアーコンプレッサにエアーを充填したエアーボンベ4を付設し、エアーコンプレッサの吐出系路である主系路7にエアーボンベ4の吐出系路である副系路8を閉止した状態で合流させるとともに、主系路7の圧力が一定以下に低下すると、副系路8を自動的に開通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送気マスクに吸気用のエアーを送る送気マスク用エアーコンプレッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の作業現場で有害物質を吸い込む虞がある場合には呼吸用の空気が強制的に送られてくる送気マスクを使用する。この送気マスクについては、JIS T 8153において基準化されており、その構造についても、”6.2.2エアラインマスク”の項で決められているが、そのエアーの供給源となるエアーコンプレッサについてははっきりとした規格が見受けられない。供給されるエアーは人体に無害であることはもちろん、エアーコンプレッサの故障等によるエアー供給停止の緊急の事態にも十分に留意されている必要がある。
【0003】
下記特許文献1には、防じんマスクにエアーを供給するエアーコンプレッサが記されているが、これは、チューブやクリーニング方法に関するもので、エアーコンプレッサが停止したとき等の緊急事態にどのように対処するかは述べられていない。また、下記特許文献2にはエアーコンプレッサから供給される空気を吸い込む防じんマスクの目詰まりを防止するものであって、これも緊急事態に対してのものではない。
【0004】
送気マスクに供給されるエアーの供給には万全を期す必要がある。例えば、エアーコンプレッサの駆動源である電気の供給が停まったとき(停電の場合)やエアーコンプレッサの不具合でその作動に異常が発生した場合等の緊急時には何らかの安全策がとられる必要がある。加えて、この緊急時の対策は早急に行われる必要があるから、人為的に操作するのではなく、自動的に行われるようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−21522号公報
【特許文献2】登録実用新案第3130794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この緊急時の安全策を簡単な構造で、しかも、迅速、かつ、確実にできるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、送気マスクに呼吸用のエアーを供給する送気マスク用エアーコンプレッサにおいて、エアーコンプレッサにエアーを充填したエアーボンベを付設し、エアーコンプレッサの吐出系路である主系路にエアーボンベの吐出系路である副系路を閉止した状態で合流させるとともに、主系路の圧力が一定以下に低下すると、副系路を自動的に開通させることを特徴とする送気マスク用エアーコンプレッサを提供したものである。
【0008】
また、本発明は、以上のエアーコンプレッサにおいて、請求項2に記載した、副系路の開閉が電磁弁で行われるものであり、電磁弁のソレノイドが励磁されていると閉止された内部通路が副系路と連通し、主系路の圧力低下を圧力スイッチが感知するとソレノイドの励磁が止み、内部通路が開通して副系路に連通する手段、請求項3に記載した、エアー供給が主系路から副経路に切り換わる際の主系路の一時的な圧力低下を検出してマスク使用者に警報を発する手段、請求項4に記載した、エアーボンベがエアーコンプレッサを収容するボックスに付設されたエアーボンベ室に収容されている手段、請求項5に記載した、エアーボンベ室にエアーボンベのセットを検出するセンサが設けられており、センサが発する信号によってエアーコンプレッサ及び電磁弁が作動する手段を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、緊急時のエアーの供給をエアーコンプレッサとは別の安定した供給源であるエアーボンベから行うものであるから、エアーコンプレッサの作動に影響を受けない。また、エアーボンベからの副系路はエアーコンプレッサの作動中は常時閉止されているから、空気を無駄に逃がすことはない。さらに、副系路の開通は主系路の圧力低下によって自動的になされるのであるから、迅速、かつ、確実に行われる。
【0010】
請求項2の手段によれば、停電時等にエアーコンプレッサが正常に作動しなくなったときは、電磁弁のソレノイドの励磁は止まり、スプールに形成された開通する内部通路はバネによって副系路と連通する側に移動することから、エアーボンベのエアーは送気マスクに確実に供給される。請求項3の手段によれば、エアーコンプレッサの不具合等で主系路から副系路に切り換わったときを使用者に知らせることができ、一時的な圧力低下等に備えることができる。請求項4の手段によれば、エアーコンプレッサとエアーボンベを一体にできるし、請求項5の手段によれば、エアーコンプレッサの作動はエアーボンベがセットされた場合に限られるから、エアーボンベがセットされていない状態を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアー回路の回路図である。
【図2】送気マスクの説明図である。
【図3】エアーコンプレッサの正面図である。
【図4】エアーコンプレッサの側面図である。
【図5】緊急時の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図3は本発明に用いるエアーコンプレッサ(以下、コンプレッサという)の正面図、図4は側面図であるが、このコンプレッサ1はオイルフリータイプのものをボックス2で密封したものであり、これらの構造は従来周知であるから、ここでは説明を省略する。本発明では、ボックス2の側部にエアーボンベ室3を形成し、この中に8〜9Lのエアーが格納できるエアーボンベ4を収容する。なお、図示は省略するが、エアーボンベ4がセットされる個所には、マイクロスイッチや近接スイッチ等のセンサを設けてエアーボンベ4がセットされたかどうかを確認できるようになっている。
【0013】
図2は送気マスク5の説明図であるが、この送気マスク5とは、種々の現場で有害物質等を吸う虞のある場合に使用するもので、空気源から空気の供給を受けて吸気するものである。この送気マスク5自体も周知であってここでの詳説は省略するが、コンプレッサ1で吐出される空気を送気ホース6を通じて送気マスク5内に供給しているものである。図1はこのコンプレッサとエアーボンベの回路図であるが、この回路は、コンプレッサ1の吐出系路である主系路7とエアーボンベ4の吐出系路である副系路8とからなる。主系路7も周知であり、圧縮機9をモータ10で駆動し、これをタンク11に溜めて送気マスク5側に送るものである。
【0014】
なお、タンク11には、内部の圧力を検出してコンプレッサ1に作動指令を発する圧力スイッチ12やタンク11内の圧力が規定値を超えた場合に中のエアーを逃す安全弁13等が設けられている。この場合、コンプレッサ1で生成された空気は高圧であり、しかも、油分や水分を含んでいるから、これを0.49MPa程度の呼吸に適した圧力に調整するとともに、濾過、清浄して呼吸に使用しても支障のないものにする濾過清浄装置14を主系路7の出口に設けている。
【0015】
副系路8のエアー源となるエアーボンベ4は14〜30MPaの圧力のものが8〜9L程度溜められたものであり、吐出口から上記した圧力程度の呼吸に適したものに減圧するレギュレータ15を経てこの系路を開閉する電磁弁16を通って主系路7の濾過清浄装置14より上流側に合流している。したがって、エアーボンベ4をエアー源とする緊急用のエアーも濾過清浄装置14を経て清浄な状態で供給される。
【0016】
この場合の電磁弁16はスプールに設けられる内部系路として閉止された内部通路16aと開通された内部通路16bとが設けられる2ポート2ポジションタイプであり、ソレノイド16cが励磁されていると、閉止された内部通路16aは副系路8につながっている。一方、ソレノイド16cの励磁が止むとスプールはバネ16dで押されて開通された内部通路16bが副系路8につながるように切り換わる。そして、ソレノイド16cの励磁は主系路7に挿設された圧力スイッチ17によっている。つまり、主系路7を流通するエアが一定の圧力を維持している限り、ソレノイド16cは励磁され、副系路8は遮断されている。
【0017】
以上により、コンプレッサ1の電源を入れると、圧縮機9を駆動するモータ10が起動し、タンク11に溜められるとともに、濾過清浄装置14を経て送気マスク5に送気されるから、送気マスク5の使用者はこのエアーを吸って呼吸する。この間、電磁弁16はソレノイド16cが励磁されているから、副系路8は閉塞する内部通路16aにつながっており、エアーボンベ4のエアーは放出されない。
【0018】
次に、何らかの原因(例えば、コンプレッサの作動不良等)で主系路7の圧力が呼吸用に適さない圧力に低下し、それによって圧力スイッチ17が作動すると、電磁弁16のソレノイド16cは励磁されなくなり、この結果、スプールはバネ16dで動かされて副系路8は開通する内部通路16bとつながる。すると、エアーボンベ4の空気は濾過清浄装置14を通って送気マスク5に供給されることになる。
【0019】
この場合、主系路7から副系路8に切り換わるときには送気マスク5に送られる空気の圧力は一旦は下がるから、副系路8から送られる空気で圧力は回復するものの、一時的には、送気マスク5の使用者(作業者だけでなく、監督者も含む。以下、同じ)に違和感と不安感を与える。そこで、このことを使用者に知らせるのが適する。図5はこの回路の一例であるが、一番簡単なのは、圧力スイッチ17の圧力低下でタイマーTMを作動させ、タイマーTMの開接点18で設定時間だけアラームALを作動することである。なお、このアラームALとしては、警報やランプの点灯等がある。
【0020】
ところで、トラブルとしてコンプレッサ1の作動不良を挙げたが、作動中に停電等が起こった場合でも同様である。ただ、最初から停電であると、コンプレッサは作動しないから、送気マスク5を用いる作業は見合わせ、停電が回復するまで待つのが普通である。このように、コンプレッサ1の作動不良や停電等のトラブルが生ずると、すべてエアーボンベ4のエアーを利用し、このとき、電磁弁16の構成は、上記したようなフェイルセーフとなっているので、呼吸用のエアーの確保が確実に図られる。
【符号の説明】
【0021】
1 エアーコンプレッサ
2 ボックス
3 エアーボンベ室
4 エアーボンベ
5 送気マスク
6 送気ホース
7 主系路
8 副系路
9 圧縮機
10 モータ
11 タンク
12 圧力スイッチ
13 安全弁
14 濾過清浄装置
15 レギュレータ
16 電磁弁
16a 〃 の閉止された内部通路
16b 〃 の開通された内部通路
16c 〃 のソレノイド
16d 〃 のバネ
17 圧力スイッチ
18 タイマーの開接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気マスクに呼吸用のエアーを供給する送気マスク用エアーコンプレッサにおいて、エアーコンプレッサにエアーを充填したエアーボンベを付設し、エアーコンプレッサの吐出系路である主系路にエアーボンベの吐出系路である副系路を閉止した状態で合流させるとともに、主系路の圧力が一定以下に低下すると、副系路を自動的に開通させることを特徴とする送気マスク用エアーコンプレッサ。
【請求項2】
副系路の開閉が電磁弁で行われるものであり、電磁弁のソレノイドが励磁されていると閉止された内部通路が副系路と連通し、主系路の圧力低下を圧力スイッチが感知するとソレノイドの励磁が止み、内部通路が開通して副系路に連通する請求項1の送気マスク用エアーコンプレッサ。
【請求項3】
エアー供給が主系路から副経路に切り換わる際の主系路の一時的な圧力低下を検出してマスク使用者に警報を発する請求項1又は2の送気マスク用エアーコンプレッサ。
【請求項4】
エアーボンベがエアーコンプレッサを収容するボックスに付設されたエアーボンベ室に収容されている請求項1〜3いずれかの送気マスク用エアーコンプレッサ。
【請求項5】
エアーボンベ室にエアーボンベのセットを検出するセンサが設けられており、センサが発する信号によってエアーコンプレッサ及び電磁弁が作動する請求項4の送気マスク用エアーコンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217663(P2012−217663A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86913(P2011−86913)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000206934)株式会社マルテー大塚 (26)
【出願人】(000155230)株式会社明治機械製作所 (23)
【Fターム(参考)】