説明

送液チューブコネクタ

【課題】送液チューブと流路との接続が容易な送液チューブコネクタを提供する。
【解決手段】送液チューブ5が挿通される貫通孔7が長手方向に沿って形成されたチューブホルダ2と、前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材3と、前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体4と、を備え、突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、送液チューブコネクタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送液チューブコネクタ、及びこれを使用するマイクロチップホルダに関する。より詳しくは、分取分析装置、例えば微小粒子分取装置等に使用する送液チューブコネクタ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小粒子の特性を判別するため、微小粒子の分散液を流路内に導入し、流路内へ導入された微小粒子の特性を光学的に測定する装置が用いられている。この微小粒子として、細胞や微生物、リポソーム等の生体関連微小粒子、或いはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子等が挙げられる。
【0003】
このうち、特に生体関連微小粒子については、フローサイトメトリー(フローサイトメータ)と呼ばれる装置が広く用いられている(非特許文献1参照)。フローサイトメトリーには、微小粒子の特性測定のみを目的としたものや、さらに測定結果に基づいて所望の特性を備えた微小粒子のみを分取できるように構成されたものがある。後者のうち、特に細胞を分取対象とした装置を「セルソータ」と呼んでいる。現在、市販されているセルソータでは、毎秒数千〜数万個という高速で細胞の特性を測定し、分取することが可能である。
【0004】
従来のフローサイトメトリーでは、以下のようにして、細胞やマイクロビーズ等の微小粒子の大きさや構造等の特性を測定している。まず、フローセルにおいて測定対象とする微小粒子を含むサンプル溶液をシース液の層流の中心に流し、フローセル内に微小粒子を一列に配列させる。次に、光学検出部において、フローセル内に配列されて通流する微小粒子に測定光を照射し、微小粒子から生じる散乱光や蛍光を検出して微小粒子の特性を測定する。続いて、微小粒子の分取を行う場合には、サンプル液を、微小粒子を含む液滴としてフローセル外の空間に吐出し、液滴の移動方向を制御して、所望の特性を備えた微小粒子を分取する。
【0005】
上述のようなフローサイトメトリー等の分取分析装置、これに脱着可能なマイクロチップ及びマイクロチップモジュールは流路を有している。このような流路と、液体を送液する送液チューブとを接続するために送液チューブコネクタが使用されている。
この送液チューブコネクタは、送液チューブと基板との接続部に配置され、液漏れのない高い液密性が必要とされている。
このようなことから、主に市販されている送液チューブコネクタは、コネクタのねじ込みを行うことにより、コネクタ先端部を変形させ固定し、液漏れを防ぐ構造をとっている。このため、送液チューブの先端が大きく変形してしまい送液チューブを再利用することが困難である。そして、再利用する場合には先端を切断して再利用する方法が取られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、液密性の高く、かつ簡単に脱着できるコネクタが開示されている。具体的には、端部に、末端から始まる少なくとも一つのスリットが設けられているフェラルと、長手方向中央に送液チューブが挿通される貫通孔を有するスリーブと、基板ホルダーに係止されるキャップ体とを備えるコネクタである。ここで、スリーブには、基板側端部にフェラルの第二の端部が勘合するすり鉢状の凹部が形成されている。キャップ体は、フェラル及びスリーブを中空部に格納して基板方向に押し付けながら、基板が固定された基板ホルダーに係止される。
【0007】
また、特許文献2には、交換や破棄が容易なコネクタが開示されている。具体的には、送液チューブと、流路及び送液チューブの一端を接続するコネクタ部と、送液チューブの他端を保持するチューブ保持部とを備える。ここで、液体試料に接触する部分は送液チューブであり、この送液チューブは交換可能である。コネクタ部は送液チューブが挿入される貫通孔を有する筒状である。チューブ保持部は送液チューブを保持するためのチューブ保持孔と、他のチューブを保持する他のチューブ保持孔とを有する。
【0008】
また、特許文献3には、チップと送液チューブとを容易に接続することができるコネクタが開示されている。具体的には、流路に送液チューブを接続するための、コネクタ部及びチューブ部を有するコネクタである。コネクタ部は、マイクロ化学チップに当接され、コネクタ部に形成された貫通孔はマイクロ化学チップの開口部に接続される。送液チューブは、マイクロ化学チップに当接されたコネクタ部に形成された貫通孔に挿入され、送液チューブ及びマイクロ化学チップの流路が接続されている。
【0009】
また、特許文献4には、耐圧性を向上させ、デッドボリュームを低減することが可能な脱着容易なマイクロコネクタが開示されている。マイクロ化学システムは、流路を有するマイクロ化学チップと、流路に送液すべく、流路の導入口に挿入された送液チューブとを接続すると共にマイクロ化学チップを固定するマイクロコネクタを備える。マイクロコネクタは、送液チューブの外周面を保持すべく、マイクロ化学チップ上に配置されたハウジングと、略円錐形のフェラルを備える。略円錐形のフェラルは、ハウジングからの圧力により変形して、マイクロ化学チップの表面及び送液チューブの外周面を同時に押圧すべくハウジング及びマイクロ化学チップ間に配置される。
【0010】
この技術分野では、さらに送液チューブと流路との接続が容易な送液チューブコネクタが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−137143号公報
【特許文献2】特開2003−107099号公報
【特許文献3】特開2007−152151号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「細胞工学別冊 実験プロトコルシリーズ フローサイトメトリー自由自在」、中内啓光、秀潤社、第2版、2006年8月31日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本開示は、送液チューブと流路との接続が容易な送液チューブコネクタ、これを使用するマイクロチップホルダを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題解決のため、本開示は、突出したチューブホルダをコネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、輪状弾性部材が押し込まれたチューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された送液チューブに密着する、送液チューブコネクタを提供する。
すなわち、本開示は、(1)送液チューブが挿通される貫通孔が長手方向に沿って形成されたチューブホルダと、(2)前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材と、(3)前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体と、を備え、突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、送液チューブコネクタを提供する。
【0015】
また、本開示に係わる送液チューブコネクタにおいて、前記前記輪状弾性部材が、チューブホルダとチューブホルダとの間に介在するのが好適である。
また、前記複数のチューブホルダは継手構造を有するのが好適である。
前記外部に突出するチューブホルダに向かって長手方向に付勢する弾性体を備えるのが好適である。
前記弾性体によって付勢されるチューブホルダを係止する構造を有し、チューブホルダの非接触時には輪状弾性部材は押圧変形されないのが好適である。
前記継手構造は、係止構造を兼用するのが好適である。
前記チューブホルダの接続口が基板面方向に設けられ、接続時にはチューブホルダが基板表面に突き当たることでコネクタ本体の内部に押し込まれるのが好適である。
前記コネクタ本体に、接続口を有するチューブホルダが外れ落ちない係合片を有するのが好適である。
前記チューブホルダの外部に突出した部分が少なくともポリテトラフルオロエチレンであるのが好適である。
前記チューブホルダの外部に突出した部分が湾曲しているのが好適である。
【0016】
また、本開示は、マイクロチップを保持する保持部と、該マイクロチップに流体を移送する送液チューブを有する送液チューブコネクタがねじ込まれるポート部と、を設け、
前記送液チューブコネクタが、(1)送液チューブが挿通される貫通孔が長手方向に沿って形成されたチューブホルダと、(2)前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材と、(3)前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体と、を備え、(a)前記マイクロチップの基板面に送液コネクタの接続口が接触し、(b)突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、マイクロチップホルダを提供する。
【0017】
また、本開示は、(1)サンプル流路と、(2)サンプル流路への液体の供給路と、(3)微小管への微小粒子を含む液体の供給路と、(4)吸引流路とを有するマイクロチップホルダと、(5)マイクロチップ上に配され、マイクロチップに備えるオリフィスにおいて液体を液滴化して吐出させるための振動素子と、を備え、前記マイクロチップホルダが、(a)サンプル流路への液体の供給路が接続されるシースポート部と、(b)微小管への微小粒子を含む液体の供給路が接続されるサンプルポート部と、(c)吸引流路を負圧源に接続する吸引ポート部とから構成されるポート部を有する、前記マイクロチップホルダと一体に配設されたマイクロチップモジュールを提供する。
【0018】
本発明において、「微小粒子」には、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などが広く含まれるものとする。
【0019】
生体関連微小粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれる。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれる。さらに、生体関連微小粒子には、核酸やタンパク質、これらの複合体などの生体関連高分子も包含され得るものとする。また、工業用粒子は、例えば有機もしくは無機高分子材料、金属などであってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料などが含まれる。金属には、金コロイド、アルミなどが含まれる。これら微小粒子の形状は、一般には球形であるのが普通であるが、非球形であってもよく、また大きさや質量なども特に限定されない。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、送液チューブと流路との接続が容易である送液チューブコネクタ、これを使用するマイクロチップホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本開示に係わる送液チューブコネクタの概略構成の(a)上面図並びに(b)側面図及び部分断面模式図である。
【図2】(A)本開示に係わる第一の実施形態の送液チューブコネクタの概略構成の断面及び(B)本開示に係わる第二の実施形態の断面模式図である。
【図3】本開示に係わる第一の実施形態の送液チューブコネクタがマイクロチップ及びマイクロチップホルダのポート部に接合した際のこれらの断面模式図である。
【図4】(A)本開示に係わる第一の実施形態の送液チューブコネクタが、マイクロチップ及びマイクロチップホルダのポート部にねじ込まれているときのこれらの断面模式図である。(B)本開示に係わる第一の実施形態の送液チューブコネクタが、マイクロチップ及びマイクロチップホルダのポート部にねじ込まれ、送液チューブコネクタの突出した先端部分が基板に接した状態のこれらの断面模式図である。
【図5】本開示に係わる送液チューブコネクタが、マイクロチップ及びマイクロチップホルダのポート部にねじ込まれているときのこれらの断面模式図の例示である。
【図6】本開示に係る微小粒子分取装置Aの概略構成を説明する図である。
【図7】本開示に係るマイクロチップモジュールの構成を説明する図である。
【図8】本開示に係るマイクロチップの概略構成を示す図である。
【図9】本開示に係わるマイクロチップの微小管及び絞込流路の近傍のサンプル流路の構造と、通流するサンプル液層流及びシース液層流の様子を説明する断面模式図である。
【図10】微小粒子分取装置Aによる微小粒子の分取を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
【0023】
1.送液チューブコネクタ
(1)第一実施形態
(1−1) チューブホルダ
(1−2) 輪状弾性部材
(1−3) コネクタ本体
(2)第二実施形態
2.微小粒子分取装置
3.マイクロチップホルダ及びマイクロチップモジュール
【0024】
<1.送液チューブコネクタ>
本開示は、すなわち、本開示に係わる送液チューブコネクタ1は、チューブホルダ2と、輪状弾性部材3と、該輪状弾性部材3を内部に収容し、チューブホルダ2を一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体4と、を備える。
【0025】
そして、突出したチューブホルダ2をコネクタ本体4の内部に押し込んだ状態において、輪状弾性部材3が押し込まれたチューブホルダ2によって押圧変形される。該押圧変形された輪状弾性部材3は、貫通孔に挿通されている送液チューブ5に密着する(図1〜5参照)。
押し込まないときに輪状弾性部材と送液チューブに隙間があったものの(図4(A)参照)、送液チューブと押圧変形した輪状弾性部材とが密着する(図3及び図4(B)参照)。このため、送液チューブと流路で移送する流体(液体、気体)の液漏れを抑制でき、また送液チューブの寸法にばらつきがあっても送液チューブに密着することも可能である。これにより分取分析装置の液圧等が安定するため精度の良い分取分析が可能となる。
また、送液チューブと流路とを接続する際に特殊な道具を用いる場合もあるが、このような道具を用いなくとも簡単に送液チューブと流路を接続することも可能である。これにより、面倒な液漏れの確認作業が軽減されるので、作業性も向上する。
【0026】
また、チューブホルダの接続口が基板等の表面から離れることで、挿通された送液チューブへの輪状弾性部材の密着が減少する。これにより、送液チューブが着脱可能な状態になる(図4(A)参照)。このとき、輪状弾性部材は変形前の形状にほぼ戻っているので、脱着を繰り返してもカシメによる塑性変形等も発生しない。このため、使用した送液チューブを取り外すときに切断したりや破損させなくてもよい。
また、送液チューブの脱着も簡単となるので、必要に応じて別の送液チューブに変更することも容易となる。例えば、送液チューブや送液によるコンタミネーションの低減を行うことが可能であり、また緩衝溶液等の送液の変更、送液チューブの径の変更等が容易に行うことができる。
【0027】
前記送液チューブとは、特に限定されるものではないが、緩衝溶液や反応溶液等の溶液を分取分析装置(液体クロマト等)等に送るためのチューブが含まれる。この送液チューブには、例えば、金属製(ステンレス製等)、天然樹脂、合成樹脂(プラスチック製等)等が含まれる。一般的に、耐圧性、イナート性、耐熱性及び耐薬品性等の特性を有する合成樹脂製の送液チューブが用いられている。この合成樹脂製の送液チューブとしては、例えば、フッ素樹脂(ETFE、PFA、PTFE、FEP等)チューブ及びピーク(Poly Ether Ether Ketone)チューブ等が好適である。この外径は0.5〜2.0mmである。
【0028】
ところで、従来の一般的な送液チューブコネクタは、ねじ込みを行うことでコネクタ先端部を変形させて固定し、液漏れを防ぐ構造を採用していた。しかし、送液チューブを変形固定した場合、送液チューブの先端が変形しているため、コネクタ及び送液チューブの再利用が困難である。送液チューブの先端を切断等して再利用する方法も取られているが、これには特殊な道具が必要となり、また手間暇がかかり、作業性が悪い。
これに対し、本開示の送液チューブコネクタは、液密性が高く、しかも繰り返し送液チューブに密着できるので、作用性や再利用の点で有利である。
【0029】
また、従来の送液チューブコネクタには、送液チューブの外径にシール性を持たせたものもあるが、実際に送液チューブの製造においてチューブの外径寸法にばらつきがあるため、例えばある内径サイズだけではシールしきれず、液漏れ等の問題を起こしている。また、このタイプの対応策として送液チューブ径毎に対応する送液チューブコネクタを準備しておき、液漏れがでないコネクタ部品を随時選別して使用する場合がある。すなわち、送液チューブ径毎に対応するコネクタ部品を準備しておき、実際に適合するかを随時確認する手間が必要となり、作業性は悪い。
これに対し、本開示の送液チューブコネクタのチューブホルダに突出した部分を押し込む前は、送液チューブが挿通される輪状弾性部材には、送液チューブの外径部分と輪状弾性部材との内径部分に隙間がある(図4(A)参照)。一方で、押し込んだ際には、輪状弾性部材が送液チューブ方向に押圧変形し、押圧変形した輪状弾性部材の内径部分が送液チューブの外径部分に密着する。これにより、液密性が高まり、送液チューブの液漏れが防げる。また、突出した部分を押し込むことで効果的に液密性が高まるので、作業性の点でも有利である。
【0030】
よって、本開示の送液チューブコネクタは、送液チューブと流路との接続が容易となり、従来のものと比較しても取り扱いが容易である。例えば、本開示の送液チューブコネクタは、送液チューブの繰り返し着脱が可能である。また、径や材質の異なる種々の送液チューブにも対応することが可能である。さらに、本開示の送液チューブコネクタは、送液の液漏れも認められないため、液密性も高いという利点がある。
また、本開示の送液チューブコネクタは、輪状弾性部材を必要に応じて代えることのできる構成とすることも可能である。このため、本開示の送液チューブコネクタは径が異なる等の種々の送液チューブに幅広く対応することが可能である。また、本開示の送液チューブコネクタは、上述の通り、送液チューブを繰り返し着脱することも可能である。つまり、本開示の送液チューブコネクタを使用することで、装置等のランニングコストの低減も可能となる。
【0031】
また、本開示の送液チューブコネクタは、フローサイトメトリー等の微小粒子分取装置等の様々な分取分析装置に使用することが可能である。上述のように、本開示の送液チューブコネクタを分取分析装置に使用した場合、送液チューブの接続の際の作業性が向上する。しかも、液密性も高いので運転の安定性も向上させることが可能である。このため、本開示の送液チューブコネクタは、使い捨てタイプの部品を使用する装置や高い安定性や高感度が求められる装置等に使用するのが好適である。例えば、微小粒子取得装置(例えば、フローサイトメーター)、これの部品であるマイクロチップホルダやマイクロチップモジュールに使用することが好適である。
【0032】
(1)本開示に係わる送液チューブコネクタの第一実施形態
第一の実施形態の送液チューブコネクタ1について、図1〜5を参照して説明する。上述で説明した構成の説明については省略することもある。
図1に示すように、送液チューブコネクタ1は、第1チューブホルダ21、第2チューブホルダ22及び第3チューブホルダ23から構成されているチューブホルダ2と、輪状弾性部材3と、中空構造のコネクタ本体4と、を備える。このコネクタ本体4は、該輪状弾性部材3、第1チューブホルダ21、第2チューブホルダ22及び第3チューブホルダ23を内部に収容する。このとき、第1チューブホルダ21の一部が外部に突出した状態で収容されている。
そして、突出した第1チューブホルダ21をコネクタ本体4の内部に押し込んだ状態において、輪状弾性部材3が押圧変形される。この押圧変形は、押し込まれた第1チューブホルダ21と、弾性体9にて付勢された第2チューブホルダ22とによって、発生する。押圧変形された輪状弾性部材3は挿通された送液チューブ5の外径隙間をなくし、送液チューブ5に密着する(図1〜5参照)。
【0033】
(1−1)チューブホルダ
本開示のチューブホルダ2は、第1チューブホルダ21、第2チューブホルダ22及び第3チューブホルダ23から構成されている。これらチューブホルダ21,22,23は継手構造を有するのが好適であり、これが係止構造を兼用するのがより好適である。例えば、継手構造として、一方のチューブホルダの端部が雄型形状であり、他方のチューブホルダの端部が雌型形状である管継手構造等が挙げられる。一例として、チューブホルダ22の端部の環状凸部が、チューブホルダ22の端部の環状凹部に、挿入されるような管継手構造でもよい。
これらチューブホルダ21,22,23は、送液チューブ5が挿通される貫通孔7が形成されているものである。これらチューブホルダ21,22,23は、中空構造のコネクタ本体4の内部に収容されている(図1及び図2(A)参照)。
【0034】
そして、第1チューブホルダ21は、コネクタ本体4の外部に一部が突出するように配置されている。第2チューブホルダ22は、第1チューブホルダ21との間に輪状弾性部材3を介在させるように配置されている。第3チューブホルダ23は、第1チューブホルダ21及び第2チューブホルダ22がコネクタ本体4の内部に押し込まれたときに支持するように、配置されている。
【0035】
第1チューブホルダ21は、コネクタ本体4の外部に一部が突出した状態で配置されている。この突出した部分は、基板等の表面と接触する接続口10を有する。例えば、基板等の表面と接触する接続口との両方の接する面は、平坦面とするのが好ましい。
接続口10の形状は、この接続口10の先端の押し当て面積が小さくなる形状が好ましい。このような形状として、例えば、長手方向に沿った断面の形状が、湾曲形状、テーパ形状等であるのが挙げられる。尚、短手方向に沿った断面の形状は、略中空円形状等が挙げられる。
また、基板等の表面に接する接続口10の押し当て面積が大きい場合、単位面積当たりの圧力を確保しようとすると、トータルでの押し当て力が強くなりやすい。このため、押し当て面積をより小さくすることで、接続口10の先端に接する面(例えば基板表面等)を曲げるようなリスクが回避でき、また裏側に支持する材料を必要となるようなリスクも回避できる。
よって、接続口10の先端部分と基板等の表面は、面と面で接するよりも、線と面で接する方が好ましい。例えば、接続口先端又はマイクロチップの片方に曲率を設けるのが好ましい。接続口10の先端になるほどより鋭くすると、基板等の面に歪みが生じていた場合でも密に接することができる。
【0036】
また、突出した部分の長さは、送液チューブコネクタ1をポート部17に接続することで送液チューブ5と流路6との接続が良好にできる長さが好ましい。具体的には、前記突出した部分の長さは、0.5〜1.5mm程度であればよい。
ここで、前記突出した部分の長さとは、ポート部未装填のときにコネクタ本体4の外部に突出する部分の先端から、コネクタ本体4の先端までの長さである(例えば、図5のK0、J0、L0参照)。
第2チューブホルダ21の突出した部分(特に接続口10の先端)の材質は、フッ素樹脂(ETFE、PFA、PTFE、FEP等)であるのが好ましい。このフッ素樹脂のうち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、基板と接触する際に基板を損傷させることなく、液密性も高いため、好ましい。
【0037】
尚、貫通孔7の内径は、送液チューブ5の外径よりも、大きくなっているのが好ましい。このとき接続口10の内径は、送液チューブ5と略同径かやや小さいのが好適である。例えば、貫通孔7の内径はチューブ外径と略同径もしくはそれ以上大きければよい。また、接続口10の内径はチューブ外径と略同径もしくはそれより小さければよい。
【0038】
また、第2チューブホルダ22には、接続口10とは反対の長手方向に、付勢する弾性体9を配置するのが好適であり、また弾性体9はコネクタ本体4内に収容するように配置してもよい。
この弾性体9は、送液チューブ5と接続する流路6とは反対方向に配置するのが好ましい。
これにより、弾性体9によってチューブコホルダ2が接続口10方向に付勢される。さらに、接続口10がコネクタ本体4に押し込まれてない場合には、輪状弾性部材3が押圧変形しない程度の弾性力とするのが好適である。このとき、この弾性体9は、第2チューブホルダ22と、弾性体9を支持できる第3チューブホルダ23との間に配置されているのが好ましい。
弾性体9の形状は、特に限定されず、コイル状(螺旋状)、板バネ状等が挙げられる。また、この材質は、特に限定されず、例えば、金属、ゴム、合成樹脂、流体(空気、液体)等が挙げられ、耐薬剤性を有するものが好ましい。
【0039】
また、第1チューブホルダ21とコネクタ本体4とで係合構造を有するのが好適である。例えば、第1チューブホルダ21の外周部分に、コネクタ本体4内部の係合片19(例えば、肩部等)に対応する部分を設けてもよい。該係合片19に対応する部分として、例えば、第1チューブホルダ21の外周に設けた、突起部又は該外周より広い径差部等が挙げられる。これにより、中空構造のコネクタ本体内部に存在する第1チューブホルダが、コネクタ本体から脱落するのを防止できる。また、係合構造の位置により第1チューブホルダの突出した部分の長さを調整できる。
【0040】
また、第2チューブホルダ22とコネクタ本体4とで係止構造を有するのが好適である。例えば、第2チューブホルダ22の外周部分に、コネクタ本体4内部の係止片18(例えば、肩部等)に対応する部分を設けてもよい。該係止片18に対応する部分として、例えば、第2チューブホルダ22の外周端、又は外周に設けた突起部等が挙げられる。
これにより、コネクタ本体から第2チューブホルダが脱落するのを防止できる。さらに、この係止構造にて弾性体によって付勢される第2チューブホルダを係止することも可能となる。この弾性体の付勢を途中で係止することにより、第2チューブホルダがコネクタ本体の内部に押し込まれていない状態のときには、輪状弾性部材が押圧変形されていない状態になっている。輪状弾性部材が押圧変形されていないので、輪状弾性部材の内部に送液チューブを自在に挿通することが可能となる。
【0041】
また第3チューブホルダ23は、その外周部にネジ部を設けるのが好適である。これにより、コネクタ本体4と第3チューブホルダ23とを強く固定することができる。そして、第1チューブホルダ21及び第2チューブホルダが押し込まれた際に、これらを安定的に支持できる。
【0042】
(1−2)輪状弾性部材
本開示の輪状弾性部材3は、送液チューブ5が挿通される送液チューブ5と略同径とされたものである。
輪状弾性部材3は、チューブホルダ2が複数から構成されるとき、チューブホルダとチューブホルダとの間に介在するのが好ましい(図2等参照)。例えば、輪状弾性部材3は、送液チューブ5を流路6に接続する際に基板等の表面に接する第1チューブホルダ21と第2チューブホルダ22との間に配置するのが好ましい。
また、輪状弾性部材3を押圧変形させる際に、輪状弾性部材3が外側に逃げるのを防止するために、該輪状弾性部材3の挿入スペースの外側がコネクタ本体4又は支持部材8の内壁にて規制されているのが望ましい。
また、輪状弾性部材3を支持するための支持部材8を、第1チューブホルダ及び/又は第2チューブホルダとの間に配置するのが好ましい。この支持部材8により、輪状弾性部材が均一に押圧され易くなることで、押圧変形時の輪状弾性部材の歪みが少なくなる。そして、輪状弾圧部材の内径部分が送液チューブの外周部分に均一的に密着することが可能となり、液密性が向上する。
輪状弾性部材3の材質は、特に限定されないが、シール性の高いものが好ましい。例えばニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム、及びその表面にフッ素樹脂(PTFE等)がコーティングされているものが好ましい。
【0043】
(1−3)コネクタ本体
本開示のコネクタ本体4は、中空構造である。その中空構造に、輪状弾性部材3を内部に収容し、第1チューブホルダ21を一部が外部に突出した状態で収容する。必要に応じて、チューブホルダに向かって長手方向に付勢する弾性体を収容するのが、輪状弾性部材が送液チューブに適度に密着しやすくするため、好ましい。
また、コネクタ本体4の内部には、接続口10を有する第1チューブホルダ21と係合するための係合片19(例えば、内肩部等)が設けられているのが好ましい。この係合構造により、第1チューブコネクタの脱落を防止することが可能である。
また、コネクタ本体4の内部には、付勢された第2チューブホルダ22や支持する第3チューブホルダ23を係止するための係止片18(例えば、内肩部等)が設けられているのが好ましい。これにより輪状弾性部材が加圧変性の際に歪になって、送液チューブが好適に密着しにくくなるのを防ぐことが可能である。
また、前記コネクタ本体4に、送液チューブコネクタ1を装置等に固定する部を設けるのが好適である。例えば、前記コネクタ本体4の外周部に、負荷がかかっても外れないようなシール部やネジ部(例えば山ネジ部)11を設けてもよい。また、コネクタ本体の上方の外周部には、識別を容易にするための環状部材12を設けてもよい。
【0044】
また、コネクタ本体4には、送液チューブコネクタ1をポート部17に挿入した際に、送液チューブコネクタ(コネクタ本体)の挿入位置を規制する係止部が設けられているのが、好適である。これにより、送液チューブコネクタを簡単に接続でき、液密性等も良好となる。
図5(c)に例示するように、コネクタ本体の挿入位置を規制する係止部を設けなくとも、コネクタ本体4がマイクロチップ101の基板表面に突き当たるまで送液チューブコネクタをねじ込むことで、液密性等は良好である。しかし、このとき、突き当たり等の力調整や挿入位置規制は個々のユーザの技量に委ねられている。
そこで、前記係止部を設けることで、送液チューブコネクタ1をポート部17やこれを備えるマイクロチップホルダ107に挿入した際に、簡単に挿入位置の規制を行うことができる。また、前記係止構造を採用することにより、送液チューブコネクタ1の外部に突出した部分(接続口10)とマイクロチップ101の基板表面とが接触する際の力加減を調整する技量もほとんど必要としない。また、挿入位置を規制することで、貼り合わせた基板等のマイクロチップ101に負担がかからないようになる。
【0045】
前記コネクタ本体の挿入位置を規制する係止部の構造は、特に限定されるものではない。該係止部構造として、例えば、以下の例示が挙げられ、これら係止部構造を適宜組み合わせてもよい。
例えば、図5(a)に例示するように、コネクタ本体4をポート部17等の外側で挿入規制可能な、コネクタ第1係止部41を設けるのが好適である。これに対応するホルダ第1係止部1071をポート部やマイクロチップホルダ107に設けるのが望ましい。該ホルダ第1係止部1071は、マイクロチップホルダの外側に必要に応じて設けることも可能なので、コネクタ本体の挿入位置の規制が行いやすいという利点がある。
使用の一例として、送液チューブコネクタ1がポート部17(マイクロチップホルダ107)にねじ込まれる。そして、送液チューブコネクタ1の外部に突出した部分がマイクロチップ101に接触し、マイクロチップ101はマイクロチップホルダ内の内面に押し当てられる。さらに、送液チューブコネクタ1のコネクタ第1係止部41がポート部17(マイクロチップホルダ107)の外側に接触するまでねじ込まれる。これにより、接続口10とマイクロチップ101の基板表面とが密に接することが可能となる。このとき、輪状弾性部材3が挿通された送液チューブに密着する。
また、例えば、図5(b)に例示するように、コネクタ本体4をポート部17等の内部構造で挿入規制可能な、コネクタ第2係止部42を設けるのが好適である。これに対応するホルダ第2係止部1072を、ポート部17内部やホルダ107内部に設けるのが望ましい。
使用の一例として、送液チューブコネクタ1がポート部17(マイクロチップホルダ107)にねじ込まれる。そして、送液チューブコネクタ1の外部に突出した部分がマイクロチップ101に接触し、マイクロチップ101はマイクロチップホルダ内の内面に押し当てられる。さらに、送液チューブコネクタ1がマイクロチップホルダ107の内部のホルダ第2係止部1072に突き当たるまでねじ込まれる。これにより、接続口10とマイクロチップ101の基板表面とが密に接することが可能となる。このとき、輪状弾性部材3が挿通された送液チューブに密着する。
また、例えば、図(d)に例示するように、空間14が少ない場合でも、ホルダ第2係止部1072にて、送液チューブコネクタ1をマイクロチップ101に突き当て調整することは可能である。
【0046】
上述した送液チューブコネクタの各部品の材質は、特に限定されず、金属製、プラスチック製等の素材及びこれらの組み合わせであればよい。各部品とも必要とされる強度や柔軟性、耐薬剤性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、送液が接触する部品については、耐薬剤性のブラスチック製素材を使用するのが好ましい。耐薬剤性素材として、例えば、フッ化樹脂等が挙げられる。
そして、これら部品の形状は、各材質に対応した製造方法、例えば射出成形や鋳型成形等で形成することが可能である。
【0047】
本開示の第一の実施形態の送液チューブコネクタ1の使用方法について、図1、3及び4を参照して、一例について説明する。
送液チューブ5を送液チューブコネクタ1の貫通孔7に挿通し、接続口10付近まで到達させる。このとき、送液チューブ5の外径が、輪状弾性部材3の内径に接する程度である。
送液チューブ5が挿通された状態の送液チューブコネクタ1を、装置等の流路への流体(液体、気体)の入出力を行うための末端の接続部分と接続する(図4(A)参照)。接続した際に、接続口10の先端部が、基板15の表面に接触する。
より具体的には、送液チューブコネクタ1の(山)ネジ部11を、マイクロチップホルダ等に備えられたポート部17にねじ込む。ねじ込みながら、接続口10の先端部が、基板15の表面に接触する。
そして、突出した第1チューブホルダ21は、コネクタ本体4の内部に押し込まれた状態となる。このとき、支持部材8が輪状弾性部材3に押圧をかけ、さらに輪状弾性部材3は第2チューブホルダ22及び弾性体9を押す。これらを第3チューブホルダ23が支持する。
さらに、輪状弾性部材3は、押し込まれた第1チューブホルダ21の押圧と、弾性体9にて付勢された第2チューブホルダ22の押圧とによって、変形する。押圧変形された輪状弾性部材3は、貫通孔7内の送液チューブ5の方向に押圧変形され、さらに送液チューブ5の外径を押圧する。これにより、輪状弾性部材と送液チューブとの隙間をなくすように密着することが可能となり(図4(B)参照)、送液チューブからの送液が漏れることなく、流路6に送液される。
【0048】
また、接続されていた送液チューブ5を送液チューブコネクタ1から外す場合には、ネジを緩めることで(図4(A)参照)、接続口10と基板15との接触がなくなる。これにより、突出した第1チューブホルダ21をコネクタ本体4の内部に押し込んだ状態が緩和される。さらにネジを緩めることで、輪状弾性部材3と送液チューブ5との密着がなくなる。これにより送液チューブコネクタ1から送液チューブ5を引きぬくことが可能である。
また、送液チューブを別のものに交換したり、別のポート部に変更する場合も、上述のことを繰り返すことで、簡単に繰り返し着脱することが可能である。
【0049】
(2)第二実施形態
上述の第一の実施形態での構成については省略する。
本開示の第二の実施形態に係わる送液チューブコネクタ1aは、第一の実施形態におけるチューブホルダ2及び弾性体9が異なる構成であり、弾性体9を利用しない構成である。具体的には弾性体9及び第2チューブホルダ22がなく、第3チューブホルダ23a及び第1チューブホルダ21からチューブホルダ2が構成されている。
【0050】
第4チューブホルダ24は、第1チューブホルダ21及び輪状弾性部材3等を支持するものである。第4チューブホルダ24をコネクタ本体4に固定する際には、例えば、ねじ込み式や挿し込み式等を用いてもよい。接続口10方向の第4チューブホルダ24の先端面が、コネクタ本体4の内部の係止片18と接することで第4チューブホルダ24を止めることが可能である。
また、第4チューブホルダ24の先端面と、第1チューブホルダ21に設けたコネクタ本体4内部の係合片19に対応する部分とで、係止構造を有するのが好適である。これにより、輪状弾性部材と送液チューブとの密着の程度や輪状弾性部材の押圧変形の程度を調整することが可能である。
第4チューブホルダ24の先端面と第1チューブホルダ21の係止片18に対応する部分との間の隙間は、第1チューブホルダ21の押し込み状態を考慮して変更することが可能である。
【0051】
本開示の第二の実施形態の送液チューブコネクタ1aの使用方法について、図1、2(B)、3及び4を参照して、一例について説明する。
送液チューブ5を送液チューブコネクタ1aの貫通孔7に挿通し、接続口10の突出部付近まで到達させる。このとき、送液チューブ5の外径が、輪状弾性部材3の内径に接する程度である。送液チューブ5が挿通された状態の送液チューブコネクタ1aを装置等と接続するための部材(例えばポート部17)にねじ込む(図4(A)参照)。ねじ込みながら、接続口10の突出部の先端部が、基板15の表面に接触する。そして、突出した第1チューブホルダ21をコネクタ本体4の内部に押し込んだ状態となる。このとき、支持部材8が輪状弾性部材3に押圧をかけ、さらに第4チューブホルダ24がこれを支持する。
これにより、輪状弾性部材3が、押し込まれた第1チューブホルダ21と第4チューブホルダ24によって押圧変形される。この押圧変形は、第1チューブホルダ21の係合片19に対応する部分が、第4チューブホルダ24の係止片18に対応する部分にて係止することで調整される。押圧変形された輪状弾性部材3は、貫通孔7内の送液チューブ5の外径を押圧し、輪状弾性部材3と送液チューブ5との隙間をなくすように密着する(図4(B)参照)。これにより送液チューブからの送液が漏れることなく、流路6に送液される。
【0052】
また、送液チューブ5を送液チューブコネクタ1から外す場合には、ネジを緩めることで(図4(A)参照)、接続口10と基板15との接触圧が弱まる。これにより、突出した第1チューブホルダ21をコネクタ本体4の内部に押し込んだ状態が緩和される。さらにネジを緩めることで、輪状弾性部材3と送液チューブ5との密着がなくなる。これにより送液チューブコネクタ1aから送液チューブ5を引きぬくことが可能である。
【0053】
本開示の送液チューブコネクタ1は、種々の分取分析装置等に使用可能であるが、例えば、フローサイトメトリー等の微小粒子分取装置に使用することが可能である。
【0054】
<2.微小粒子分取装置>
図5〜10は、本開示の送液チューブコネクタ1を使用するマイクロチップホルダ107及びマイクロチップモジュール100、並びにこれを備える微小粒子分取装置Aを説明する図である。
図6〜10は、微小粒子分取装置Aの全部又は一部の概略構成を説明するためのものである。
図6中、符号Aで示す微小粒子分取装置は、本体A1のカバーA2によって保護される部位に、さらにソーティングカバーA3によって保護される微小粒子分取場が設けられている。この微小粒子分取場は、ソーティングカバーA3の上部開口に挿入されて取り付けられるマイクロチップ101を含んで構成される。図6(B)中、ブロック矢印は、マイクロチップ101を備えたマイクロチップホルダ107を構成要素とするマイクロチップモジュール100のソーティングカバーA3への挿入方向を示す。
【0055】
図7は、本開示の送液チューブコネクタ1及びマイクロチップ101を備えるマイクロチップホルダ107が示される。このマイクロチップホルダ107及び振動素子102を備えるマイクロチップモジュール100が示されている。
図8は、マイクロチップ101の例示が示されている。
図9及び10には、微小粒子分取装置Aの概略構成が模式的に示されている。そして、マイクロチップ101と、本体A1に設けられたマイクロチップ101の所定部位に光を照射する光学検出部103と一対の電極104,104、容器105が示されている。容器105(105a,b,c)は本体A1に脱着可能な状態で取り付けられている。符号102は、マイクロチップ101付近に配設された振動素子である。また、符号106,106はグランド接地された接地電極を示す。
【0056】
<3.マイクロチップホルダ及びマイクロチップモジュール>
本開示のマイクロチップモジュール100は、前記送液チューブコネクタ1と接続するための単数又は複数のポート部(171〜173)を有するマイクロチップホルダ107を備えている(図7、図3〜5参照)。前記送液チューブコネクタ1はポート部171〜173に接続することでマイクロチップ101の基板表面と接触することが可能である。そして、接触することにより送液チューブコネクタ内部の輪状弾性部材が密着している送液チューブ(流路)と、マイクロチップの流路とを簡単に接続することが可能となる。この接続によって、送液チューブとマイクロチップ流路を移動する流体の流体漏れも低減されている。
【0057】
図7にマイクロチップモジュール100及び図8にマイクロチップ101の一例を示すが、本開示の送液チューブコネクタ1を使用する部品を限定するものではない。
図7に示すように、マイクロチップモジュール100は、脱着可能なマイクロチップ101と、該マイクロチップ101を保持する保持部を有するマイクロチップホルダ107と、該マイクロチップの側面に配設された振動素子102を備えている。該保持部は、中空構造になっており、図7に示すように、マイクロチップがスライドして脱着保持されるようなスライド式でもよい。
上述の本開示のマイクロチップホルダ107には、送液チューブコネクタ1と、マイクロチップ101の流路の端部であるインレット114,115,119とを接続するポート部171,172,173が備えられている。なお、ポート部の数に関しては、必要に応じて単数又は複数の何れでもよく、特に限定されるものではない。また、ポート部はマイクロチップホルダ107基板内に収容又は配置してもよい。
【0058】
マイクロチップ101には、分取対象とする微小粒子を含む液体(サンプル液)が通流されているサンプル流路111が形成されている(図7参照)。
さらに、サンプル液が導入されるサンプルインレット115、シース液が導入されるシースインレット114と、シース液に浸漬される荷電電極(荷電手段)が差し込まれる荷電電極インレット114が形成されている。
【0059】
また、マイクロチップ101にはサンプル流路111に連通された吸引流路118が形成されていてもよい。この吸引流路118は、サンプル流路111と連通口181を介して接続されている。流路6(サンプル流路111等)内で目詰まりが生じた場合には、吸引アウトレット119から流路118内を負圧にして、流路6(サンプル流路111等)内を吸引することが可能である。このとき吸引アウトレット119は、吸引流路118の何れかに設ければよいが、連通口181の反対側の端に設けるのが好適である。
【0060】
また、サンプル流路111のシース液が合流する部位には、サンプルインレット115から導入されたサンプル液をシース液層流中に導入するための微小管116が配設されている。サンプル液の層流は、微小管116内を通流して、シースインレット114から導入されてサンプル流路111を通流するシース液層流中に導入される。これによりサンプル流路111下流に送液することができる。
また、サンプル流路111には絞込流路を配設するのが好適である。絞込流路117は、送液方向に対する垂直断面の面積が送液方向上流から下流へ次第に或いは段階的に小さくなるように形成されている。
【0061】
サンプル流路111の所定部位133(光照射部)に光(測定光)が照射され、この照射にて微小粒子から発生する光(測定対象光)が検出される。このような光の照射や検出は、例えば光学検出部103にて行うことが可能である。なお、光学検出部103は、従来のフローサイトメトリーで使用されている構成を採用することが可能である。例えば、照射系として、レーザー光源や、検出系としてPMT、CCD素子、CMOS素子等が挙げられる。照射系と検出系は同一又は別々の光路にて構成することが可能である。また、測定対象光は、測定光の照射によって微小粒子から発生する光であって、例えば、前方散乱光や側方散乱光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光や蛍光等とすることができる。これらの測定対象光は電気信号に変換され、微小粒子の光学特性はこの電気信号に基づいて検出される。
【0062】
光学検出部103を通過したサンプル液は、絞込流路113次いで微細管121を経てサンプル流路111の一端に設けられたオリフィス112からチップ外の空間に排出される。
絞込流路113は、送液方向に対する垂直断面の面積が送液方向上流から下流へ次第に或いは段階的に小さくなるように形成されている。微細管121は、金属製やセラミック製が好適であるが、石英製や樹脂製でもよい。この微細菅により構成するオリフィス部の長さは、100〜300μm以下とするのが好ましい。
サンプル流路111の一端に設けられたオリフィス112からチップ外の空間に排出される。この際、振動素子102によってマイクロチップ101を振動させることで、サンプル液を液滴化してチップ外の空間に吐出することができる。
図7、9及び10中の符号Dは、チップ外の空間に吐出された液滴を示している。液滴Dには、分取対象とする微小粒子が含まれる可能性がある。このとき、対電極104,104は、チップ外に吐出された液滴の移動方向に沿って配設されており、移動する液滴を挟んで対向するように配置されている。吐出された液滴には、荷電部(図示せず)によって電荷が付与され、対向電極104,104は液滴に付与された荷電との電気的な反発力(又は吸引力)によって液滴の移動方向を制御し、液滴を容器105(a,b,c)の何れかに誘導する。
【0063】
なお、マイクロチップ101は、ガラスや各種プラスチック(PP、PC、COP、PMDS等)により形成できる。マイクロチップの材質は、光学検出部103から照射される測定光に対して透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいため光学誤差が少ない材質とすることが望ましい。
マイクロチップ101へのサンプル流路111の成形は、ガラス製基板のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板のナノインプリントや射出成形、機械加工によって行うことが可能である。マイクロチップ101はサンプル流路111等を形成した基板を、同じ材質又は異なる材質の基板で封止することで形成することが可能である。
【0064】
前記マイクロチップモジュール100を微小粒子分取装置Aに装着して流路6内の光を光学検出部103で検出し、振動素子102にて形成した複数の液滴中の微小粒子Pを接地電極106及び対電極104にて各容器105に分けることが可能である(図9及び10参照)。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
1/32ピークチューブで外径公差幅0.05mmのバラツキがあるチューブが使用可能である。使用する部品構成は、コネクタ本体4、スプリング固定23、スプリング9、チューブホルダ21、チューブホルダ22、Oリング3、コネクタ識別用Oリング12を有する部品で構成されたコネクタである。
コネクタ本体4の内部に、第1チューブホルダ21、Oリング3、第2チューブホルダ21、スプリング9の順番に構成部品が入っている。最後にスプリング固定23の部品をコネクタ本体4の内ネジ部にネジ込み、チューブホルダ2に圧力を加えた状態にしておく。
この状態では、コネクタ本体4内部の段差にチューブホルダ2が接触して停止し、コネクタ本体4の内部に組み込まれたOリング3には圧力はかかっていない状態となっている。
【0067】
上記の様なコネクタ構造体1にピークチューブ5を挿入する。
コネクタ本体4内部にあるOリング3径はピークチューブ5径より若干大きめのものを使用する事により挿入抵抗をなくしたものになっている。
この状態でコネクタ本体4をネジ込む事により、先端の第1チューブホルダ21がチップの基板15表面にあたる。これにより第1チューブホルダ21が、コネクタ本体4内部に入り込み、Oリング3を変形させる。さらにこれらが押しこまれる事により第2チューブホルダ22が押し上げられ、スプリング9の力を受け、Oリング3の変形がピークチューブ5の外径隙間をなくし、漏れを防ぐ。
この押圧変形の状態になった時、第1チューブホルダ21とチップ部の基板15の接地力はスプリング9によってきまり、シール性は第1チューブホルダ21の樹脂硬度によって確保されている。今回は、PTFE樹脂材料を採用する。
第1チューブホルダ21の内径とピークチューブ5の篏合具合によりピークチューブ5の耐圧を保つ様に、第1チューブホルダ21の内径公差を決定している。この際、樹脂の弾力性を利用する。
その結果、以下のような利点が挙げられる。コネクタ1ヶで各メーカーのピークチューブに対応できる。コネクタの種類を1ヶにする事ができ、コストダウンが可能である。送液の漏れがない。取り扱いが簡単になる。同じ部品で作成したコネクタを識別Oリング12に換える事により各種準備可能である。
【0068】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
〔1〕送液チューブが挿通される貫通孔が長手方向に沿って形成されたチューブホルダと、前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材と、前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体と、を備え、突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、送液チューブコネクタ。
【0069】
〔2〕前記輪状弾性部材が、チューブホルダとチューブホルダとの間に介在する、前記〔1〕記載の送液チューブコネクタ。
〔3〕前記複数のチューブホルダは継手構造を有する前記〔1〕又は〔2〕記載の送液チューブコネクタ。
〔4〕前記外部に突出したチューブホルダに向かって他のチューブホルダを長手方向に付勢する弾性体を備える前記〔1〕〜〔3〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
〔5〕前記弾性体によって付勢されるチューブホルダを係止する構造を有し、マイクロチップホルダへの非接触時には前記輪状弾性部材は押圧変形されない前記〔1〕〜〔4〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
〔6〕前記継手構造は、係止構造を兼用する前記〔1〕〜〔5〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
【0070】
〔7〕接続時にチューブホルダの接続口が基板表面に突き当たることでコネクタ本体の内部に押し込まれる前記〔1〕〜〔6〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
〔8〕前記コネクタ本体に、チューブホルダが外れ落ちない係合片を有する前記〔1〕〜〔7〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
〔8〕前記チューブホルダの突き当たる部分が少なくともポリテトラフルオロエチレンである前記〔1〕〜〔7〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
〔9〕 前記チューブホルダの外部に突出した部分が湾曲している前記〔1〕〜〔8〕の何れか1つ記載の送液チューブコネクタ。
【0071】
マイクロチップを保持する保持部と、前記〔1〕〜〔9〕の何れか1つの送液チューブコネクタ、を備えるマイクロチップホルダ;これを備えるマイクロチップモジュール;これを備える分取分析装置。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示の送液チューブコネクタは、幅広い分取分析装置に利用することが可能である。特に、フローサイトメトリー等の分取分析装置の使用に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 送液チューブコネクタ:2 チューブホルダ:21 第1チューブホルダ:22 第2チューブホルダ:23 第3チューブホルダ:24 第4チューブホルダ:3 輪状弾性部材:4 コネクタ本体:5 送液チューブ:6 流路:8 支持部材:9 弾性体:11 ネジ部:12 環状部材:18 係止片:19 係合片:17 ポート部:100 マイクロチップモジュール:107 マイクロチップホルダ:A 微小粒子分取装置:

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液チューブが挿通される貫通孔が長手方向に沿って形成されたチューブホルダと、
前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材と、
前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体と、を備え、
突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、送液チューブコネクタ。
【請求項2】
前記輪状弾性部材が、チューブホルダとチューブホルダとの間に介在する、請求項1記載の送液チューブコネクタ。
【請求項3】
前記複数のチューブホルダは継手構造を有する請求項2記載の送液チューブコネクタ。
【請求項4】
前記外部に突出したチューブホルダに向かって他のチューブホルダを長手方向に付勢する弾性体を備える請求項2記載の送液チューブコネクタ。
【請求項5】
前記弾性体によって付勢されるチューブホルダを係止する構造を有し、マイクロチップホルダへの非接触時には前記輪状弾性部材は押圧変形されない請求項4記載の送液チューブコネクタ。
【請求項6】
前記継手構造は、係止構造を兼用する請求項5記載の送液チューブコネクタ。
【請求項7】
接続時にチューブホルダの接続口が基板表面に突き当たることでコネクタ本体の内部に押し込まれる請求項5記載の送液チューブコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタ本体に、チューブホルダが外れ落ちない係合片を有する請求項5記載の送液チューブコネクタ。
【請求項9】
前記チューブホルダの突き当たる部分が少なくともポリテトラフルオロエチレンである請求項5記載の送液チューブコネクタ。
【請求項10】
前記チューブホルダの外部に突出した部分が湾曲している請求項5記載の送液チューブコネクタ。
【請求項11】
マイクロチップを保持する保持部と、
該マイクロチップに流体を移送する送液チューブを有する送液チューブコネクタがねじ込まれるポート部と、を設け、
前記送液チューブコネクタが、
送液チューブが挿通される貫通孔が長手方向に沿って形成されたチューブホルダと、
前記送液チューブが挿通される送液チューブと略同径とされた輪状弾性部材と、
前記輪状弾性部材を内部に収容し、前記チューブホルダを一部が外部に突出した状態で収容する中空構造のコネクタ本体と、を備え、
前記マイクロチップの基板面に送液コネクタの接続口が接触し、
突出した前記チューブホルダを前記コネクタ本体の内部に押し込んだ状態において、前記輪状弾性部材が押し込まれた前記チューブホルダによって押圧変形されることで、挿通された前記送液チューブに密着する、
マイクロチップホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32976(P2013−32976A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169215(P2011−169215)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】