説明

送液手段および送液方法

【課題】金属製の送液ポンプを備えた送液手段において、送液ポンプからの金属イオンの溶出による純水の金属汚染を防止した送液手段およびその運転方法を提供する。
【解決手段】純水を貯留タンク2から超純水製造ユニット4に供給する供給手段3に、並列に接続され、流量調整可能な2系統の送液管11、12を設ける。送液管11、12は、それぞれ送液ポンプ13、14を備える。送液手段3は、さらに、送液管11、12の流量を、調整および制御するインバータを備えた流量調整手段を兼ねた制御手段である制御装置40を備える。2つの送液ポンプ13、14は低出力で常時、運転され、これにより、送液ポンプに異常が発生した場合でも、送液ポンプ13、14内に滞留し、金属汚染された液体が超純水製造ユニット4に供給されることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水使用装置へ純水を送液する送液手段および送液方法に関し、特に、超純水製造装置に設けられ、送液ポンプの故障時でも高水質の超純水を安定して製造することを可能とする純水の送液手段および送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製品の洗浄などに用いられる超純水の製造装置として、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム(または「サブシステム」)を備えた超純水製造装置が用いられている。超純水製造装置では、工業用水などの原水を、凝集沈殿装置や濾過装置などを備えた前処理システムで処理した後、脱塩装置などを備えた一次純水システムで処理して一次純水を得、さらに、二次純水システムでこの一次純水から微量の不純物を除去して、比抵抗が17.5〜18.2MΩ・cm程度の超純水を製造する。
【0003】
こうした超純水を製造する超純水製造装置では、一般に、前処理システムおよび一次純水システムで処理された一次純水を貯留タンクに一時的に貯留した後、二次純水システムに送液する。具体的には、二次純水システムは貯留タンク(二次純水槽)を備え、ここから送液ポンプによって、この二次純水槽内の液体を二次純水システムに供給し、超純水を製造する。ここでは、二次純水システムから送液した超純水の内、使用されなかった超純水は二次純水槽へ循環され、使用された超純水の量に応じた一次純水も同時に二次純水槽へ供給される。
【0004】
このため、二次純水システムの送液ポンプが故障すると、超純水を使用するユースポイントへ超純水が供給できなくなる。超純水の供給が停止した場合、半導体製品などが製造できなくなることから、超純水製造装置には、通常使用する送液ポンプ(以下、「運転ポンプ」という)の故障時に動かす非常用送液ポンプとして、予備の送液ポンプ(以下、「待機ポンプ」という)が設けられることが常である。
【0005】
これらの送液ポンプとしては、被処理液を高圧(例えば3〜5kg/cm)で吐出するために高い強度を備えたものが求められ、強度に優れた金属製のものが多く用いられる。しかし、金属製の送液ポンプの接液部分からは微量の金属イオンが溶出し、送液される純水が金属汚染される恐れがある。特に、運転ポンプの故障時に待機ポンプを稼動させた場合、待機ポンプに封入されていた純水(「シール水」)に溶出していた金属成分が二次純水システムなどに送り込まれ、金属汚染を引き起こす。また、待機ポンプの前後に接続された配管などに滞留していた滞留水中で繁殖した細菌などを含む有機物や滞留水に溶解した溶存酸素などの非金属系の汚染物質が二次純水システムに送り込まれるおそれもある。
【0006】
金属成分は、有機物と並んで超純水水質悪化の主原因であり、近年の半導体製品の高集積化に伴って、超純水の金属濃度に関する要求は特に厳しくなっている。例えば、DRAM集積度が16MBの半導体製品製造用の超純水では、重金属イオン濃度は10〜50ng/L未満、64MBの半導体製品製造用では5ng/L未満、さらに256MBの半導体製品製造用では1ng/L未満であることが求められている。
【0007】
従来から、超純水製造装置の接液部分からの金属イオンの溶出を防止するために、超純水製造装置の構成部材、特に配管を合成樹脂などの非金属材料のものとすることが行われているが、近年、金属濃度に関する要求がより厳しくなっていることから、送液ポンプについても金属イオンの溶出を防止した超純水製造装置が提案されている(特許文献1)。
【0008】
特許文献1に開示された超純水製造装置では、接液部分を合成樹脂などの非金属材料で構成した送液ポンプを用いる。特許文献1に開示された超純水製造装置によれば、送液ポンプから溶出する金属成分による二次純水システムの金属汚染を防止し、二次純水システムの負荷を低減し、また、二次純水システムで製造される超純水の金属濃度を低くすることができる。
【0009】
しかし、接液部分が非金属材料で構成された送液ポンプは、構成が複雑であるため価格が高くなる。一方、接液部分も金属材料で構成されている送液ポンプ(以下、単に「金属製の送液ポンプ」という)は、構成が単純で安価に製造でき、強度も高く、高圧での液体供給ができるが、上述した通り、送液ポンプからの金属汚染の問題がある。このため、金属製の送液ポンプを用いた場合でも、純水が金属汚染されることを防止し、二次純水システムで製造される超純水の水質低下を低減することができる送液手段が求められている。
【特許文献1】特開2003−136058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、純水を送液するための金属製の送液ポンプを備えた送液手段において、送液ポンプからの金属イオンの溶出による純水の金属汚染を防止できる送液手段および送液方法を提供することを目的とする。また本発明は、純水の金属汚染のみならず、非金属的な汚染(送液ポンプや送液ポンプの前後に接続された配管などに滞留した滞留水による汚染)も防止できる送液手段および送液方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、超純水製造装置に設けられ、送液ポンプの故障時、および故障からの復旧直後でも超純水の水質低下を防ぐことができる送液手段および送液方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、純水を貯留タンクから二次純水システムなどの純水使用装置に供給する送液手段に、流量調整可能な第1送液管と、流量調整可能な第2送液管とを設け、第1送液管と第2送液管とを並列に接続し、さらに、これら送液管の流量を調整する流量調整手段を設けることを特徴とする。具体的には、本発明は以下のような送液手段および送液方法を提供する。
【0012】
(1) 純水を純水使用装置に送液する純水の送液手段であって、第1送液ポンプを備えた流量調整可能な第1送液管と、第2送液ポンプを備えた流量調整可能な第2送液管と、前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量を調整する流量調整手段と、を備え、前記第1送液管と、前記第2送液管と、は並列に接続されていることを特徴とする送液手段。
【0013】
(2) 前記第1送液ポンプの稼動状態、および前記第2送液ポンプの稼動状態を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記第1送液ポンプの稼動状態、および前記第2送液ポンプの稼動状態の少なくとも一方の稼動状態に応じて、前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量の少なくとも一方を制御する制御手段と、をさらに備えることを特徴とする(1)記載の送液手段。
【0014】
(3) 前記流量調整手段は、前記第1送液ポンプの送液量、および前記第2送液ポンプの送液量を調整することにより、前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量を調整するものであることを特徴とする(1)または(2)記載の送液手段。
【0015】
(4) 前記第1送液管、および前記第2送液管に接続されるブロー管をさらに備えることを特徴とする(1)から(3)いずれか記載の送液手段。
【0016】
(5)前記ブロー管は、前記第1送液管の前記第1送液ポンプの出口側に接続される第1分岐ブロー管と、前記第2送液管の前記第2送液ポンプの出口側に接続される第2分岐ブロー管と、前記第1送液管の前記第1送液ポンプの入り口側に接続される第3分岐ブロー管と、前記第2送液管の前記第2送液ポンプの入り口側に接続される第4分岐ブロー管と、を含むことを特徴とする(4)記載の送液手段。
【0017】
(6)前記制御手段は、前記第1送液ポンプおよび前記第2送液ポンプの両方を同時に稼動させながら前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量の少なくとも一方を制御するものであることを特徴とする(1)から(5)いずれか記載の送液手段。
【0018】
(7)前記制御手段は、インバータ制御を行なうものであることを特徴とする(2)から(6)いずれか記載の送液手段。
【0019】
(8)純水を純水使用装置に送液する純水の送液方法であって、第1送液ポンプを備えた第1送液管と、第2送液ポンプを備え、前記第1送液管と並列に接続されている第2送液管と、を備えた送液手段を用い、前記第1送液ポンプ、および前記第2送液ポンプを最大出力の40〜80%の出力で同時に稼動させ、前記第1送液管、および前記第2送液管の両方に純水を通液して、前記貯留タンクから前記純水使用装置に純水を供給する送液方法。
【0020】
第1送液管および第2送液管を流量調整可能とする具体的手段としては、例えば、それぞれに設けられた第1送液ポンプおよび第2送液ポンプを、送液量の調整が可能なものとすることが挙げられる。また、第1送液管および第2送液管のそれぞれに、開閉状態を調整できる流量調整弁を設けることによって、これら送液管を流量調整可能なものとすることもできる。
【0021】
(1)記載の発明に係る送液手段は、2系統の流量調整可能な送液管を並列に設けるとともに、流量調整手段を設けるため、両送液管の流量を調整しながら、両送液管から純水を二次純水システムなどの純水使用装置に供給できる。本発明では、並列接続された2系統の送液管にそれぞれ設けられた送液ポンプを常時、稼動させ、送液ポンプ内に純水が滞留することを防止する。
【0022】
このため本発明によれば、送液される純水が、送液ポンプの接液部分において送液ポンプを構成する金属材料と長時間、接触して金属汚染されることを防止できる。したがって、片方の送液ポンプに異常が発生した場合でも、金属汚染された純水が二次純水システムなどの純水使用装置に供給されることを防ぐことができ、また、他方の送液ポンプを備えた送液管の流量を調整することで、純水を安定して供給することができる。
【0023】
本発明の送液手段は、第1送液管と第2送液管とに、第1送液ポンプと第2送液ポンプとをそれぞれ備えており、これら送液ポンプの稼動状態を検出する検出手段、および、送液ポンプの稼動状態に応じて送液管の流量を調整する制御手段を、さらに設けることが好ましい(前記(2)記載の発明)。
【0024】
送液ポンプの稼動状態を検出する検出手段を設けることにより、送液ポンプの稼動状態から、送液管内の流量を容易に把握できる。また、送液ポンプの稼動状態に応じた流量調整を行う制御手段によって、異常発生時の水質変化を抑制しながら一定量の純水を二次純水システムなどの純水使用装置に供給できる。
【0025】
流量調整手段は、送液管の流量調整弁の開閉度や送液ポンプの送液量を調整する手段である。特に、送液ポンプの送液量を調整するようにすると、送液量の調整が迅速にできるため、好ましい(前記(3)記載の発明)。送液ポンプの送液量は、例えば、送液ポンプの回転数を調整することにより調整できる。
【0026】
なお、流量調整手段は、第1送液管の流量(または第1送液ポンプの送液量)、および第2送液管の流量(または第2送液ポンプの送液量)の両方を、それぞれ独立して調整できるように構成するが、両送液管の流量(または両送液ポンプの送液量)は、必ずしも同時に調整される必要はない。
【0027】
すなわち、第1送液管の流量(または第1送液ポンプの送液量)は変更されず、第2送液管の流量(または第2送液ポンプの送液量)のみが変更されてもよく、逆の場合があってもよい。また、両送液管の流量(または両送液ポンプの送液量)が同時に変更されることがあってもよい。
【0028】
同様に、制御手段は第1送液ポンプの送液量と第2送液ポンプの送液量の各々を制御できるように構成するが、少なくとも一方の送液ポンプの稼動状態に応じて、どちらかの送液ポンプの送液量を制御できればよい。
【0029】
また、本発明の送液手段は、第1送液管と第2送液管とのそれぞれに接続されたブロー管をさらに備えることが好ましい(前記(4)記載の発明)。第1送液管と第2送液管とにブロー管が接続されていると、2つの送液ポンプのどちらかが故障し、故障した送液ポンプを備えた送液管の使用を停止した後、この送液管への送液再開に先立ち、送液管内に滞留した滞留液をブロー管から排出することができる。
【0030】
このため、送液管の使用停止中に送液ポンプ内などに滞留し、金属汚染されたシール水が二次純水システムなどの純水使用装置に送られることを防止し、二次純水システムなどへの負荷の増加や、超純水の水質低下を防止できる。
【0031】
ブロー管は、第1送液ポンプの入り口側および出口側において第1送液管にそれぞれ接続された第1分岐ブロー管および第3分岐ブロー管、並びに第2送液ポンプの入り口側および出口側において第2送液管にそれぞれ接続された第2分岐ブロー管および第4分岐ブロー管を含むことが好ましい(前記(5)記載の発明)。このように第1送液管および第2送液管の入り口側と出口側とに分岐ブロー管を接続することにより、第1送液管や第2送液管に滞留した液体を速やかに排出することができる。
【0032】
さらに、本発明の超純水製造装置に設けられる制御手段は、第1送液管と第2送液管とに同時に液体を供給しながら、これらの送液管の流量の少なくとも一方を調整できるように構成することが好ましい(前記(6)記載の発明)。具体的には、第1送液ポンプおよび第2送液ポンプのそれぞれに制御機構を設け、これらの制御機構を独立して制御できるように構成することが挙げられる。
【0033】
また、制御手段はインバータを用いた制御を行なうものであることが好ましい(前記(7)記載の発明)。インバータ制御は、送液ポンプの回転数を無段階で制御できるため、送液ポンプの出力調整などを容易に行なうことができる。また、インバータ制御によれば、送液ポンプの消費電力を低減することができる。
【0034】
本発明に係る送液手段は、異常時でない限り、第1送液ポンプと第2送液ポンプの両方を稼動させ、純水を純水使用装置に供給するが、この場合において、両送液ポンプは低出力で運転していることが好ましい(前記(8)記載の発明)。具体的には、両送液ポンプは、送液量が最大吐出量の40〜80%程度、好ましくは60〜70%となるように運転する。
【0035】
このように、両送液ポンプの送液量を低くした状態で通常の運転を行なうことで、2系統の送液ポンプを設けることに伴う動力費の上昇を抑制することができる。また、どちらかの送液ポンプが故障した場合に、他方の送液ポンプの送液量を増やすことにより、二次純水システムなどの純水使用装置に供給する純水の供給量を安定化することができる。
【0036】
第1送液ポンプと第2送液ポンプとは同一種類のポンプで構成することが好ましく、具体的には、キャンドモータポンプやグルドフォスポンプなどのシールレスポンプなどを使用できる。送液ポンプは、接液部分も含めた全体が金属製のものを使用することができるが、接液部が非金属材料で構成されるなどの金属溶出対策が施された送液ポンプも当然に使用できる。
【0037】
なお、本発明に係る送液手段により、純水を送液する「純水使用装置」とは、純水を使用して超純水を製造する装置、および半導体製品、または医薬品などを製造する装置を意味する。純水使用装置の具体例としては、純水を被処理液として処理して超純水を製造する超純水製造装置の二次純水システムや、純水を洗浄用水として使用して半導体を製造する半導体洗浄装置などが挙げられる。
【0038】
本発明に係る送液手段は、純水が貯留されたタンクから純水使用装置に純水を送出するものとしてもよく、送液中の純水を加圧するためのものとしてもよい。すなわち、本明細書において「送液ポンプ」は、タンク内の液体を送出する目的で設置されるポンプに限られず、配管途上に設置し、配管内を流れる液体を加圧する目的などで設置されるポンプ(いわゆる「ブースタポンプ」)を含むものとする。
【0039】
また、本明細書において本発明の送液手段で送液される「純水」とは、有機物、イオン成分、および溶存酸素などの不純物を含む原水から、これらの不純物が除去されて得られる高純度の水を意味する。具体的には、純水は、比抵抗10MΩ・cm以上、金属濃度5μg/L以下程度の液体を指す。
【0040】
本明細書においては、「純水」には、前処理システムおよび一次純水システムにより、不純物が除去された、比抵抗10〜17MΩ・cm程度、金属濃度5μg/L以下程度の純水(以下、特に「一次純水」という)、および、この一次純水がさらに二次純水システムにより処理され、比抵抗が18〜18.2MΩ・cm、金属濃度10ng/L以下程度となるまで不純物が除去された純水(以下、特に「超純水」という)が含まれるものとする。また、原水の不純物を除去して製造した一次純水または超純水に、水素ガス、窒素ガス、オゾンガスまたは炭酸ガスなどを添加して、半導体の洗浄機能を高めた、いわゆる「機能性純水」も純水に含まれるものとする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、純水を二次純水システムに送出する送液ポンプとして、構造が単純で安価な金属製の送液ポンプを用いた場合でも、送液ポンプから溶出する金属による純水の金属汚染を防止できる。特に、本発明によれば、1台の送液ポンプが故障した場合でも、純水使用装置の金属汚染を防いで、しかも圧力変動を起こすことなく純水を安定的に二次純水システムなどの純水使用装置に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、図面を用いて本発明について詳細に説明する。以下、同一部材には同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0043】
図1は、本発明の第1実施形態に係る送液手段3を備えた超純水製造装置1の二次純水システム10の模式図である。二次純水システム10は、貯留タンク2、貯留タンク2内の純水を送出する送液手段3、および純水を被処理液として処理し、超純水を製造する純水使用装置である超純水製造ユニット4を備える。貯留タンク2内には、図示しない前処理システム、および一次純水システムにより処理された一次純水およびユースポイント9で使用されずに返送された超純水が貯留されている。
【0044】
前処理システムは、凝集沈殿装置や濾過装置などを備え、工業用水などの原水に含まれる懸濁物質や有機物の一部を除去する。一次純水システムは、前処理システムから供給される液体中の不純物を除去して、比抵抗10〜17MΩ・cm、金属濃度が5μg/L以下程度の一次純水を製造するシステムであり、例えば、イオン交換脱塩装置、逆浸透膜装置、および脱気装置などで構成される。
【0045】
超純水製造ユニット4は、これら前処理システムと一次純水システムを用いて製造される一次純水と、ユースポイント9で使用されずに返送された超純水との混合液を被処理液とし、一次純水に僅かに残存する有機物や金属、および超純水が返送される過程で配管などから溶出した有機物や金属などを除去するシステムを備えた装置である。超純水製造ユニット4は、脱塩装置、膜濾過装置、および酸化装置などを適宜、組み合わせて構成される。本実施形態の超純水製造装置1では、超純水製造ユニット4は、熱交換器5、紫外線酸化装置6、脱塩装置7、および限外膜濾過装置8で構成されている。なお、脱塩装置7は、非再生型のイオン交換樹脂を充填した塔で構成されている。
【0046】
送液手段3は、第1送液ポンプ13を備えた第1送液管11と、第2送液ポンプ14を備えた第2送液管12とを備える。第1送液管11と第2送液管12の一端は、それぞれに備えられた送液ポンプ13、14の入り口側で第1接続管3aと接続され、他端は送液ポンプ13、14の出口側で第2接続管3bと接続され、第1送液管11と第2送液管12とは、並列に接続されている。また、本実施形態では、送液ポンプ13、14はキャンドモータポンプで構成され、回転数を調整することにより送液量を調整でき、これにより送液管11、12は流量調整可能に構成されている。
【0047】
第1接続管3aの一端は、貯留タンク2と接続され、第2接続管3bの一端は超純水製造ユニット4の熱交換器5に接続されている。第1接続管3a、第1送液管11、第2送液管12、および第2接続管3bは送液手段3を構成している。
【0048】
第1送液管11には、第1送液ポンプ13の入り口側に第1弁V、並びに、送液ポンプ13の出口側に第1圧力センサ31、第1圧力計33、第1逆止弁V13、および第1出口弁Vがさらに設けられている。同様に、第2送液管12には、第2送液ポンプ14の入り口側に第2弁V、並びに、送液ポンプ14の出口側に第2圧力センサ32、第2圧力計34、第2逆止弁V14、および第2出口弁Vがさらに設けられている。
【0049】
また、第1送液管11および第2送液管12には、第1分岐ブロー管50aおよび第2分岐ブロー管50bがそれぞれ接続され、第1分岐ブロー管50aと第2分岐ブロー管50bはいずれも一端がブロー本管50と接続されている。第1分岐ブロー管50aの他端は第1送液ポンプ13の出口側、具体的には第1出口弁Vと第1逆止弁V13との間に接続されている。同様に第2分岐ブロー管50bの他端は第2送液ポンプ14の出口側、具体的には第2出口弁Vと第2逆止弁V14との間に接続されている。
【0050】
さらに、第1送液管11および第2送液管12には第1送液ポンプ13および第2送液ポンプ14の入り口側に第3分岐ブロー管50dおよび第4分岐ブロー管50eがそれぞれ接続されている。具体的には、第1送液ポンプ13と第1弁Vとの間に第3分岐ブロー管50dの一端が接続され、第2送液管12には第2送液ポンプ14と第2弁Vとの間に第4分岐ブロー管50eの一端が接続されている。第3分岐ブロー管50dおよび第4分岐ブロー管50eの他端は、いずれもブロー本管50cに接続されている。第1分岐ブロー管50a、第2分岐ブロー管50b、第3分岐ブロー管50d、第4分岐ブロー管50eおよびブロー本管50cはブロー管50を構成する。
【0051】
第1分岐ブロー管50a、第2分岐ブロー管50b、第3分岐ブロー管50d、および第4分岐ブロー管50eには、開閉可能な第1ブロー弁V、第2ブロー弁V、第3ブロー弁V、および第4ブロー弁Vがそれぞれ設けられている。弁V〜Vの開閉は手動で行なってもよいが、自動で開閉できるよう、制御装置40から、弁V〜Vに開閉信号を送るように制御装置40を構成してもよい。
【0052】
第1圧力センサ31および第2圧力センサ32は、それぞれ、第1送液ポンプ13および第2送液ポンプ14の稼動状態を検出する検出手段であり、送液ポンプ13、14の出口側に接続された配管内の圧力に応じて、ON/OFF、または異常発生等の信号を制御装置40に送る。検出手段としては、この他、流量センサ付きの流量計や過電流検出器などがある。また、本実施形態の超純水製造装置1のように、送液管11、12に圧力計33、34を設ければ、送液管11、12内の圧力を目視することもできる。
【0053】
制御装置40は、圧力センサ31、32などの検出手段から送られるデジタルおよび/またはアナログの入力信号に応じて、デジタルおよび/またはアナログの出力信号を出力するコントローラ(図示せず)を備えている。コントローラとしては、プログラマブルロジックコントローラやシーケンサなどの公知の演算処理装置を用いることができる。
【0054】
また、制御装置40は、コントローラからの出力信号に応じて、送液ポンプ13、14各々の送液量を変更する制御機構としてインバータを含む。インバータは、本実施形態では第1送液ポンプ13用と第2送液ポンプ14用に別個に設けられたもので、送液ポンプ13、14をそれぞれ独立して制御できるように構成されている。具体的には、インバータは送液ポンプ13、14のそれぞれに取り付けられ、これら送液ポンプ13、14の回転数を調整することにより、第1送液ポンプ13と第2送液ポンプ14の送液量をそれぞれ調整し、送液管11、12の流量を調整する。このようにインバータを送液ポンプ13、14のそれぞれに取り付け、独立に制御するように構成することにより、制御装置40を用いて送液ポンプ13、14を同時に稼動させて第1送液管11および第2送液管12の両方に送液しながらこれらの送液管11、12の一方または両方の流量を制御できる。
【0055】
なお、第1送液ポンプ13にインバータを備える代わりに第1出口弁Vを開度調整可能な弁で構成し、また、第2送液ポンプ14にインバータを備える代わりに第2出口弁Vを外部信号で開度調整できる弁で構成し、送液ポンプ13、14の稼動状態に応じて、これらの出口弁V、Vの開度を調整することにより、送液管11、12の流量調整をするようにしてもよい。しかし、出口弁V、Vの開度調整により、流量調整を行なう方法は目的流量を得るまで時間がかかる場合があるため、送液ポンプ13、14の回転数を制御する方が好ましい。
【0056】
本実施形態の制御装置40は、インバータを用いて、検出手段で検知された送液ポンプ13、14の送液量を調整して制御するものであり、制御手段と流量調整手段とを兼ね備える。
【0057】
次に、上記の超純水製造装置1の運転例について説明する。本発明では、二次純水システム10のメイン操作用のスイッチを入れ、二次純水システム10を稼動させる。このスイッチを入れることにより、そのON信号が制御装置40に入力され、各インバータから第1送液ポンプ13と第2送液ポンプ14の両方に起動信号が出力される。これにより、第1送液ポンプ13と第2送液ポンプ14の両方が稼動し、貯留タンク2内の純水は、第1接続管3aを介して第1送液管11と第2送液管12との両方に供給され、第2接続管3bで合流して超純水製造ユニット4に供給される。
【0058】
送液ポンプ13、14はいずれも、通常運転時は最大吐出量の40〜80%、好ましくは60〜70%程度の低出力で運転する。これにより、送液ポンプ13、14を2台稼動させるために必要な電力量を低減する。また、第1送液ポンプ13または第2送液ポンプ14のどちらかに、出力低下または停止などの故障が生じた場合、他方の送液ポンプである第2送液ポンプ14、または第1送液ポンプ13の出力を上げる。これにより、超純水製造ユニット4への一次純水の供給量と水質とを安定化し、超純水製造ユニット4で製造された超純水が使用されるユースポイント9へ供給される超純水の供給量と水質とを安定化できる。
【0059】
超純水製造装置1の運転中は、圧力センサ31、32を用いて、送液管11、12内の圧力を検知することから送液ポンプ13、14の稼動状態を検知する。送液ポンプ13、14の送液量が増減した場合や、異常が発生した場合、圧力センサ31、32から出力される信号が制御装置40に入力される。制御装置40では、入力信号に応じてコントローラから出力信号が出力され、通常運転時は低周波設定とされている送液ポンプ13、14の周波設定を高周波設定とするなどして後工程に実質的に圧力変動の影響を与えることなく、送液量の調整を行なって送液管11、12の流量を制御する。
【0060】
第1送液管11および第2送液管12には、第1送液ポンプ13および第2送液ポンプ14の入り口側において、第1弁Vおよび第2弁Vがそれぞれ設けられていることから、第1送液ポンプ13または第2送液ポンプ14のどちらかを修理、または点検する場合は、第1弁Vおよび第1出口弁V、または第2弁Vおよび第2出口弁Vを閉じることにより、第1送液管11または第2送液管12への通液を停止する。
【0061】
第1送液管11または第2送液管12への通液を停止した後、再び通液を開始する場合は、通液開始に先立ち、第1送液管11または第2送液管12内に滞留した液体を排出する。すなわち、第1送液管11への通液を停止後、通液を再開する前は、第1送液ポンプ13のインバータを、ポンプの運転が可能な最小出力に設定し、第1弁Vを開くとともに、第1分岐ブロー管50aの第1ブロー弁Vを開き、ブロー管50から第1送液管11内に滞留した液体を排出する。
【0062】
同様に、第2送液管12への通液の停止および再開に際しては、第2送液ポンプの出力を最小に設定し、第2弁Vを開くとともに、第2分岐ブロー管50bの第2ブロー弁Vを開き、ブロー管50から第2送液管12内に滞留した液体を排出する。送液ポンプ13、14の出口側に接続された分岐ブロー管50a、50bを用いる代わりに、入り口側に接続された分岐ブロー管50d、50eを用いてブロー水の排出を行なってもよい。また送液ポンプ13、14の入り口側に接続された分岐ブロー管50d、50eは、送液管11、12への通液開始時にこれら送液管11、12の上流(送液ポンプ13、14の入り口側)の配管内の空気を排出するエア抜き管として使用することもでき、あるいは洗浄用薬品その他の液体を供給する給液管として使用することもできる。なお、ブロー弁V〜Vは、通常の運転時は閉じた状態としている。
【0063】
滞留液には、送液管11、12への通液停止中に、送液ポンプ13、14などから溶出した金属などが含まれているが、ブロー管50から滞留液を排出することにより、超純水製造ユニット4への負荷の増大を低減するために、超純水製造ユニット4系内に持ち込まれた金属成分などがリークして超純水の水質を悪化させることを防止できるだけでなく、超純水を洗浄に使用する製品の金属汚染を防止できる。
【0064】
このように、本発明の超純水製造装置1では、送液手段3に2系統の送液管11、12を設けるとともに、流量調整手段(制御装置40)を設け、2系統の送液管11、12のそれぞれに設けた送液ポンプ13、14の両方を低出力で常時運転することにより、純水が送液ポンプ13、14内に滞留して金属などで汚染された滞留液(またはシール水)が発生することを防止し、これにより、超純水中の金属成分、特に鉄(Fe)の濃度上昇を防止する。
【0065】
さらに、第1送液ポンプ13または第2送液ポンプ14に異常が発生した場合でも、処置後の通液再開に先立ち、ブロー管50から滞留した液体を排出することができるため、超純水製造ユニット4および超純水での洗浄対象品のクリーン化を図ることができる。
【0066】
上記第1実施形態では、送液手段3は、純水を超純水製造ユニット4へ送液する送液手段として構成されているが、本発明の送液手段は、二次純水システムで製造された超純水を半導体洗浄装置へ送液する送液手段としてもよく、この例には、二次純水システム内に別途設置され、二次純水システム内を流れる液体を加圧送液するブースタポンプとしての送液ポンプを備えるものも含まれる。また、送液手段は、二次純水システムを介さずに一次純水を直接、半導体洗浄装置などに送液する送液手段としてもよい。
【0067】
図2は、本発明の第2実施形態を示し、前処理システム(図示せず)、一次純水システム(図示せず)、および二次純水システム10で製造された超純水を、超純水貯留タンク22に一時的に貯留し、複数の半導体洗浄装置24へ送液する、いわゆるセントラル方式の超純水製造装置21の模式図である。
【0068】
第2実施形態では、送液手段により送液される純水は超純水であり、送液手段の前方には、純水使用装置として3つの半導体洗浄装置24a、24b、および24cが設けられている。超純水貯留タンク22と各半導体洗浄装置24a、24b、24cとの間には、送液手段3a、3b、3cがそれぞれ1つずつ、合計3つ、設けられている。送液手段3a、3b、3cの構成はいずれも、上記第1実施形態の超純水製造装置1の送液手段3と同一である。
【0069】
上記第2実施形態の超純水製造装置21では、前処理システム、一次純水システム、および二次純水システム10で不純物を除去して得た超純水を、超純水貯留タンク22に貯留し、本発明に係る送液手段3a、3b、3cにより、半導体洗浄装置24a、24b、24cのそれぞれに送液する。
【0070】
この超純水製造装置21によれば、1ヶ所で製造された超純水を、複数の超純水製造装置である半導体洗浄装置24a、24b、24cに安定して送液できる。なお、送液手段3a、3b、3cと半導体洗浄装置24a、24b、24cとの間には、必要に応じて限外濾過膜などを備えた膜分離装置(図示せず)などを設けてもよい。また、半導体洗浄装置24a、24b、24cには、未使用の超純水を超純水貯留タンク22や貯留タンク2などに返送する返送配管(図示せず)を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、LSIやウェハなどの半導体製品の製造や、医薬品製造などに用いられる超純水製造装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明第1実施形態に係る送液手段を備えた超純水製造装置模式図である。
【図2】本発明第2実施形態に係る送液手段を備えた超純水製造装置模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1 超純水製造装置
2 貯留タンク
3 送液手段
4 超純水製造ユニット(純水使用装置)
10 二次純水システム
11 第1送液管
12 第2送液管
13 第1送液ポンプ
14 第2送液ポンプ
31 第1圧力センサ(検出手段)
32 第2圧力センサ(検出手段)
40 制御装置(流量調整手段を兼ねた制御手段)
50 ブロー管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を純水使用装置に送液する純水の送液手段であって、
第1送液ポンプを備えた流量調整可能な第1送液管と、
第2送液ポンプを備えた流量調整可能な第2送液管と、
前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量を調整する流量調整手段と、を備え、
前記第1送液管と、前記第2送液管と、は並列に接続されていることを特徴とする送液手段。
【請求項2】
前記第1送液ポンプの稼動状態、および前記第2送液ポンプの稼動状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記第1送液ポンプの稼動状態、および前記第2送液ポンプの稼動状態の少なくとも一方の稼動状態に応じて、前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量の少なくとも一方を制御する制御手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の送液手段。
【請求項3】
前記流量調整手段は、前記第1送液ポンプの送液量、および前記第2送液ポンプの送液量を調整することにより、前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量を調整するものであることを特徴とする請求項1または2記載の送液手段。
【請求項4】
前記第1送液管、および前記第2送液管に接続されるブロー管をさらに備えることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の送液手段。
【請求項5】
前記ブロー管は、前記第1送液管の前記第1送液ポンプの出口側に接続される第1分岐ブロー管と、前記第2送液管の前記第2送液ポンプの出口側に接続される第2分岐ブロー管と、前記第1送液管の前記第1送液ポンプの入り口側に接続される第3分岐ブロー管と、前記第2送液管の前記第2送液ポンプの入り口側に接続される第4分岐ブロー管と、を含むことを特徴とする請求項4記載の送液手段。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1送液ポンプおよび前記第2送液ポンプの両方を同時に稼動させながら前記第1送液管の流量、および前記第2送液管の流量の少なくとも一方を制御するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか記載の送液手段。
【請求項7】
前記制御手段は、インバータ制御を行なうものであることを特徴とする請求項2から6いずれか記載の送液手段。
【請求項8】
純水を純水使用装置に送液する純水の送液方法であって、
第1送液ポンプを備えた第1送液管と、第2送液ポンプを備え、前記第1送液管と並列に接続されている第2送液管と、を備えた送液手段を用い、
前記第1送液ポンプ、および前記第2送液ポンプを最大出力の40〜80%の出力で同時に稼動させ、前記第1送液管、および前記第2送液管の両方に純水を通液して、前記貯留タンクから前記純水使用装置に純水を供給する送液方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−167661(P2006−167661A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366503(P2004−366503)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)