説明

送液装置、及び送液方法

【課題】クローズド系で送液することで外部からの異物混入の可能性を低減ないし防止できる送液装置及び方法を提供する。
【解決手段】可撓性材料の液体貯蔵部1、2と、第1流路3、4と、送液部5、6と、第2流路7、8と、吐出口を持つ吐出部10とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部10の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。送液部5、6で、第1流路3、4から第2流路7、8の方向に液体を送るためのエネルギーを夫々液体に与えて、貯蔵部1、2を夫々変形させつつ吐出部10の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部1、2から吐出部10へと送液する。複数の貯蔵部1、2から送液された液体は検出部11に達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯蔵部から送って吐出部から出す送液装置及び送液方法に関する。特に、マイクロTASやマイクロリアクタなど、微量の液体を取り扱う機器や複数の物質を微量の液体中で取り扱う機器中などで利用される送液機構において、その利用形態に応じて広範な適用が可能な送液装置及び送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体微細加工技術の発展に伴い、ガラスやシリコン等の基板上に、微小な流路、ポンプ、バルブ等の液体素子、及びセンサなどを集積化し、その基板上で化学分析を行うシステムが注目されている。これらのシステムは、小型化分析システム、μ-TAS(Micro Total Analysis System)或いはLab on a Chipと呼ばれている。化学分析システムを小型化することにより、無効体積の減少や試料の分量の大幅な低減が可能となる。また、分析時間の短縮やシステム全体の低消費電力化が可能となる。更に、小型化によりシステムの低価格化を期待することができる。μ-TASは、システムの小型化、低価格化及び分析時間の大幅な短縮が可能なことから、在宅医療やベッドサイドモニタ等の医療分野、DNA解析やプロテオーム解析等のバイオ分野での応用が期待されている。
【0003】
こうした技術状況において、ヒータを加熱することにより液体を加熱して気泡を発生させ、発生した気泡の膨張と収縮を利用して液体を搬送する装置が提案されている(非特許文献1参照)。この装置では、チャンバ内に発熱体素子が形成されている。また、チャンバに連通する出口と入口には、テーパ−形状の流路が形成されている。発熱体素子に電圧を印加することで、チャンバ内に気泡が発生する。発生した気泡は、一定時間膨張した後、収縮に転じてやがて消滅する。気泡の膨張時には、チャンバ内の液体は、気泡が膨張する作用力によりチャンバの外側に流出する。出口側と入口側では、流路のテーパ−形状により流路抵抗に差が生じる。これにより、出口から流出する流量は、入口から流出する流量と比較して大きくなる。一方、気泡の収縮時には、出口側及び入口側の流体は、チャンバ内に流入する。このときは、膨張時とは逆に、入口側から流入する流量が出口側から流入する流量よりも大きくなる。こうして、チャンバ内の発熱体素子を繰り返し駆動し、気泡の膨張と収縮を繰り返すことにより、流体はチャンバ内の入口側から出口側に搬送される。
【0004】
また、溶液を混合して反応を行った後、定量及び分析をしてから分離するという一連の生化学実験操作を幾つかのセルの組み合わせによって実現可能なマイクロリアクタも提案されている(特許文献1参照)。マイクロリアクタは、シリコン基板上に平板で密閉された独立した反応チャンバを有している。このリアクタでは、リザーバーセル、混合セル、反応セル、検出セル、分離セルが組み合わされている。このリアクタを基板上に多数個形成することにより、多数の生化学反応を同時に並列的に行うことができる。更に、単なる分析だけでなく、タンパク質合成などの物質合成反応もセル上で行うことができる。
【0005】
また、発熱体により生起される気泡の膨張と収縮の作用で、チャンバ内に導入された異なる液体を混合する液体混合装置の技術も提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、送液装置の中には、単一組成物を送液するよりも、複数の物質を送液するものが多い。薬剤と補助剤、或いは複数の薬剤を吐出、噴霧するものなど、多彩に利用されている。薬剤ないし液剤も、治療目的の化合物、香料、色素などと広範囲である。
【0007】
一方、複数の物質を送液するにあたり、混合することで不具合を生じる場合がある。別個に存在する限りは安定であるものが、他の物質と同一雰囲気下で存在すると状態が変わり、性質が変わる物質がある。こうした現象の駆動力としては、イオン間や電荷による相互作用、水素結合を介する相互作用、π共役に伴う作用などが挙げられる。また、このポットライフが長時間にわたる組合せや短い組合せもあり、多様である。
【0008】
この様に複数の物質を送液するにあたり、吐出ないし噴霧直前に液体を混合する方式が提案されている(特許文献3及び4参照)。直前に液体を混合するこの方式によれば、複数の物質を混合することで起こり得る不具合を回避できる可能性がある。
【非特許文献1】Jr-Hung Tsai and LiweiLin, “A Thermal Bubble Actuated Micro Nozzle-Diffuser Pump”, Proceedingsof 2001 IEEE Micro Electro Mechanical Systems Workshop, 2001, pp.409-412
【特許文献1】特開平10−337173号公報
【特許文献2】特許第3605102号公報
【特許文献3】国際公開WO2002/05898号公報
【特許文献4】国際公開WO2004/07346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記の技術の方式においては、液注入や異物混入に対する工夫はなされていない。前記の工程で液体を駆動させる際においても、大気と導通して大気圧を利用して液体の流出を調整している。すなわち、インクジェット方式などでは連続吐出させる際に液供給が生じ、従来はこの供給を大気圧で押し出す形式となっている。この場合には、大気と連通しているために大気中の異物が混入する懸念があり、微量での分析、反応などにおいて純度や精度が低下することに繋がる可能性がある。
【0010】
また、上記特許文献3及び4の方法では、混合から吐出ないし噴霧に至る過程が充分明瞭ではない。したがって、均一に混合して微細に液滴化したり、精密に量や混合比を制御したりすることができる機構に発展させ得る構成になっているとは言い難い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明の第1のタイプの送液装置は、液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、第1流路を介して貯蔵部に連通した送液部と、第2流路を介して送液部に連通し吐出口を介して液体を吐出するための吐出部とを有する。送液部は、第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを与える送液用エネルギー付与手段を有する。更に、一連の貯蔵部、第1流路、送液部、第2流路、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成している。そして、送液用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、貯蔵部が変形しつつ吐出部の吐出口より液体が吐出されて液体が貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0012】
また、上記課題に鑑み、本発明の第2のタイプの送液装置は、液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、流路を介して貯蔵部に連通し吐出口を介して液体を吐出するための吐出部とを有する。吐出部は、液体を吐出するためのエネルギーを与える吐出用エネルギー付与手段を有する。更に、一連の貯蔵部、流路、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成している。その結果、吐出用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、貯蔵部が変形しつつ吐出部の吐出口より液体が吐出されて液体が貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0013】
また、上記課題に鑑み、本発明の第3のタイプの送液装置は、液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、夫々第1流路を介して貯蔵部に連通した複数の送液部と、吐出口を介して液体を吐出するための吐出部と、複数の送液部に夫々連通した第2流路を合流させて1つの流路として吐出部に連通する連結部とを有する。複数の送液部は、夫々第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを与える送液用エネルギー付与手段を有する。更に、一連の複数の貯蔵部、複数の第1流路、複数の送液部、複数の第2流路、連結部、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成している。そして、複数の送液部の送液用エネルギー付与手段が夫々の液体に前記エネルギーを与えるとき、夫々の貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部に送られて吐出部の吐出口より吐出され、夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0014】
また、上記課題に鑑み、本発明の第4のタイプの送液装置は、液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、吐出口を介して液体を吐出するための吐出部と、複数の貯蔵部に夫々連通した流路を合流させて1つの流路として吐出部に連通する連結部とを有する。吐出部は、液体を吐出するためのエネルギーを与える吐出用エネルギー付与手段を有する。更に、一連の複数の貯蔵部、連結部、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成している。その結果、吐出用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、夫々の貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部に送られて吐出部の吐出口より吐出され、夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0015】
第3のタイプの送液装置は、吐出部の部分を除いて、第1のタイプの送液装置を複数並列的に組み合わせ、複数の第2流路が、1つの流路になった連結部を経て1つの吐出部に繋がる様に構成したものである。第1のタイプの送液装置は、外部からの異物混入の可能性を低減ないし無くするクローズド系で微量の液体でも精密に制御して送液することができる送液装置である。これに対して、第3のタイプの送液装置は、外部からの異物混入の可能性を低減ないし無くするクローズド系であることは共通で、個々の量を微少でも精密に制御して複数の液体物質を微量でも送液することができる送液装置である。第3のタイプの送液装置では、複数の送液部のエネルギー付与手段が交互に駆動されて液体にエネルギーを与えるとき、貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部の前記1つの流路で所望の比率で混合されて吐出口より混合液として吐出される様にできる。
【0016】
第4のタイプの送液装置は、吐出部の部分を除いて、第2のタイプの送液装置を複数並列的に組み合わせ、複数の流路が、1つの流路になった連結部を経て1つの吐出部に繋がる様に構成したものである。第2のタイプの送液装置は、外部からの異物混入の可能性を低減ないし無くするクローズド系で液体を吐出口より吐出できる送液装置である。これに対して、第4のタイプの送液装置は、外部からの異物混入の可能性を低減ないし無くするクローズド系であることは共通で、複数の液体物質を吐出口より吐出できる送液装置である。
【0017】
上記第1と第3のタイプの送液装置の構成で、吐出部の吐出口は、第2流路または連結部の1つの流路がそのまま伸びた形態としてもよいが、吐出口から吐出するためのエネルギーを液体に与える吐出用エネルギー付与手段を吐出部に備える形態としてもよい。
【0018】
また、上記課題に鑑み、本発明の第1のタイプの送液方法は、可撓性材料の液体貯蔵部と、第1流路と、送液部と、第2流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。そして、送液部で、第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを液体に与えて、貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部から吐出部へと送液する。上記第1のタイプの送液装置は、この第1のタイプの送液方法を実行するのに適した送液装置である。
【0019】
また、上記課題に鑑み、本発明の第2のタイプの送液方法は、液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。そして、吐出部で、吐出口を介して液体を吐出するためのエネルギーを液体に与えて、貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部から吐出部へと送液する。上記第2のタイプの送液装置は、この第2のタイプの送液方法を実行するのに適した送液装置である。
【0020】
また、上記課題に鑑み、本発明の第3のタイプの送液方法は、次の様にして複数の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液する。可撓性材料の複数の液体貯蔵部と、夫々貯蔵部に繋がった第1流路と、夫々第1流路に繋がった送液部と、夫々送液部に繋がった第2流路と、第2流路を合流させて1つの流路とした連結部と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通する。これと共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。そして、複数の送液部で、夫々第1流路から第2流路の方向に送液するためのエネルギーを液体に与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液する。上記第3のタイプの送液装置は、この第3のタイプの送液方法を実行するのに適した送液装置である。
【0021】
また、上記課題に鑑み、本発明の第4のタイプの送液方法は、可撓性材料の複数の貯蔵部と、複数の貯蔵部に夫々連通した流路を合流させて1つの流路とした連結部と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通する。これと共に、これら一連の部位を、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。そして、吐出部で、吐出口を介して液体を吐出するためのエネルギーを液体に与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液する。上記第4のタイプの送液装置は、この第4のタイプの送液方法を実行するのに適した送液装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる送液装置及び方法では、クローズド系で送液することで外部からの異物混入の可能性を低減ないし防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の送液装置及び方法の実施形態を説明する。
第1の実施形態の送液装置及び方法では、可撓性材料で形成された液体貯蔵部と、第1流路と、送液部と、第2流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。送液部では、第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを液体に与えて、可撓性材料の貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部から吐出部へと送液する。
【0024】
第2の実施形態の送液装置及び方法では、可撓性材料で形成された貯蔵部と、流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。吐出部では、吐出口を介して液体を一定程度の勢いで吐出するためのエネルギーを液体に与えて、貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して、その結果液体が貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0025】
第3の実施形態の送液装置及び方法では、吐出部の部分を除いて、第1の実施形態を複数並列的に組み合わせ、複数の第2流路は、1つの流路になった連結部を経て1つの吐出部に繋がる様にしたものである。ここでも、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。複数の送液部で、夫々第1流路から第2流路の方向に送液するためのエネルギーを液体に与えて、可撓性材料の夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液する。
【0026】
第4の実施形態の送液装置及び方法では、吐出部の部分を除いて、第2の実施形態を複数並列的に組み合わせ、複数の流路が、1つの流路になった連結部を経て1つの吐出部に繋がる様にしたものである。ここでも、これら一連の部位を、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とする。吐出部で、吐出口を介して液体を吐出するためのエネルギーを液体に与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出して、その結果夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液される。
【0027】
上記実施形態において、前記送液用エネルギー付与手段と前記吐出用エネルギー付与手段のうちの少なくとも一方は熱エネルギーを液体に与える様にできる。好適には、エネルギー付与手段は加熱発泡方式の原理に基づいてエネルギーを液体に与える。また、吐出部で、加熱発泡方式などの原理に基づいて、吐出口から吐出するためのエネルギーを液体に与える構成にもできる。第3の実施形態において、複数の送液部で交互に夫々の液体にエネルギーを与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部の1つの流路に交互に送って所望の比率で均一に混合して吐出部の吐出口より混合液として吐出することができる。
【0028】
上記実施形態に用いる貯蔵部、流路、送液部位の材質は任意の材質でよく、ガラス、プラスチック、金属から選ばれる材質が好適に用いられる。液を含有する部位に用いる可撓性材料は、内外の圧力差に応じて収縮ないし変形するものであれば材質、厚さは任意である。
【0029】
上記実施形態に用いる液は、流動性があり、送液部位が送液しうる性状のものであればよい。主媒体は水または有機物が好ましく、生体に投与されるときは水が主媒体であることがより好ましい。上記実施形態の液構成物は液中に均一化されていれば何でもよく、液中の均一状態は溶解、分散、乳化、懸濁、スラリーのいずれでもよい。
【0030】
液組成物は前記の状態を有していればよく、有機物でも無機物でもよい。化合物としては、一般に知られる化合物、薬剤、香料、色素などを用いることができる。薬剤としては、薬理的、生理的な作用を示す医薬用化合物の薬剤、嬌味・嬌臭目的の成分、染料、顔料などを例示できる。
【0031】
前記の生理的な作用を示す医薬用化合物については、一般的に利用されている薬剤化合物の一例として、次の様なものがある。消炎ステロイド、非ステロイド消炎剤、鎮静剤、鬱病治療剤、鎮痛剤、喘息治療剤、β−交感神経作用剤、抗コリン作用剤、肥満細胞安定剤、拮抗剤、鎮咳剤、去痰剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、制吐剤、睡眠誘導剤、ビタミン剤、性ステロイドホルモン、抗腫瘍剤、抗不整脈剤、高血圧剤、抗不安剤、抗精神剤、強心剤、気管支拡張剤、肥満治療剤、片頭痛剤、抗リウマチ剤、タンパク製剤、ホルモン剤、サイトカイン、レセプター、抗体、酵素、ワクチン、ウィルス、アンチセンス、遺伝子、核酸類などである。
【0032】
薬剤の適用量は物質によって異なるが、1ppm乃至10%の範囲に選択することが好ましく、なかでも、0.001%乃至5%の範囲に選択できるとより好ましい。
【0033】
前記の嬌味成分或いは矯臭成分としては、各種の天然香料、合成香料、調合香料を利用でき。また、化粧品香料、石鹸香料、食品香料などの用途で利用される一般的な香料成分も利用可能である。添加可能な副次成分として、各国の薬局方などに記載されている医薬用途のもの、或いは、食品、化粧品において利用が許容されているものなどを用いることができる。
【0034】
前記の嬌味成分或いは矯臭成分として配合される香料などの配合比率は、利用する香料の種類によっても異なるが、一般に、1ppb乃至10%の範囲に設定することが好ましい。1ppm乃至1%の範囲とするとより好ましい。また、吐出液の利用目的に反しない範囲で、嬌味成分と矯臭成分を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
前記の染料或いは顔料としては、各種の染料及び顔料を利用できる。添加可能な副次成分として、各国の薬局方などに記載されている医薬用途のもの、或いは、食品、化粧品において利用が許容されているものを用いることができる。
【0036】
前記の染料或いは顔料として配合される色素の配合比率は、利用する色素の種類によっても異なるが、一般に、1ppm乃至30%の範囲に設定することが好ましい。0.01%乃至10%の範囲とするとより好ましい。また、吐出液の利用目的に反しない範囲で、染料や顔料を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
また、必要に応じて吐出補助剤や抗菌剤などの添加剤を用いてもよい。前記の薬剤、香料や色素が所望の溶解性を示さない疎水性物質であることもある。その際には、必要に応じて、均一な分布を達成するに利用可能な、分散剤、界面活性剤などを添加することができる。更には、必要に応じて、適用対象の噴霧液の使用目的に適合する種々の添加剤、例えば、分散剤、界面活性剤、表面調整剤、粘度調整剤、溶剤、保湿剤、pH調整剤を適正量添加することができる。
【0038】
具体的には、配合可能な添加剤として、次の様なものが例示できる。イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、乳化剤、分散剤、親水性バインダー、疎水性バインダー、親水性増粘剤、疎水性増粘剤、グリセリン、グリコール類、グリコール誘導体類、アルコール類、アミノ酸、尿素、電解質、緩衝液成分などである。なお、前記各種添加剤は、必要に応じて、単一のものを添加することもでき、或いは、複数種を添加することもできる。
【0039】
上記の添加剤として配合される各種の物質の添加比率(質量濃度)は、対象となる主成分の薬剤化合物、及び嬌味成分或いは矯臭成分として利用する香料の種類、色素の種類及び配合比率に依って異なる。一般に、0.01%乃至40%の範囲に選択することが好ましく、0.1%乃至20%の範囲内とすることがより好ましい。一方、上記添加剤の添加量は、その用途(機能)、種類、組合せにも依存するが、配合される液剤の吐出性の観点から、液剤の薬剤、矯臭成分或いは嬌味成分、色素の各含有量合計1質量部に対して、0.5質量部乃至100質量部の範囲に選択することが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態は、極微量の物質同定や反応に用いることができる。物質同定の方法として、各種の液体クロマトグラフ、電気化学的な手段、或いは紫外線、可視光線、赤外線、蛍光などの分光法が挙げられる。勿論、上記特許文献1及び2で示される所にも適用できる。
【0041】
複数の液体を含有する部位(貯蔵部)に満たす液組成としては、上記記載のものなどから選ばれるが、個々の液は同一であってもよく、異なる物質からなる組合せであってもよい。具体的には、異種化合物の組合せであってもよく、また主たる物質と界面活性剤との組合せなどであってもよい。また、複数の液体を含有する部位個々の液組成は、薬剤或いは香料或いは色素と添加剤の混合物であってもよく、或いは薬剤、香料、色素から選ばれる物質の混合物でもよい。
【0042】
前記の液体を含有する部位(貯蔵部)に満たす液組成を異種薬剤の組合せとすることで、複数の目的を一稼動で達成することができる。具体的には、呼吸器疾患の治療薬と体内治療用の全身投与薬を組み合わせるケースが例示できる。
【0043】
或いは、主たる物質と吐出用の安定化剤を組み合わせることで、互いの相互作用を吐出の直前に初めて発生させることができる。これにより、吐出の直前までは単独に貯蔵することができ、より安定性を確保できる。
【0044】
上記実施形態に用いる送液部は、マイクロポンプなど、液を送るものであれば何でもよく、その駆動となる原動力は、圧力による押し出し式、負圧式、振動式を例示できる。また、その制御も、手動であってよいし、電子制御でもよい。電子制御の場合は、より精密に量を制御するためにプログラムで任意に制御できることがより好ましい。電子制御の方式では、振動式としてピエゾアクチュエータ方式や超音波方式を例示できる。負圧式としては、熱エネルギー付与による加熱発泡方式を例示できる。
【0045】
送液部については、逆流を防止するとともに精密に量を制御できる様にするために、一方の流路を介して貯蔵部に繋がる入り口と他方の流路に繋がる出口に逆止弁を設けることがより好ましい。
【0046】
上記実施形態に用いる吐出部は、加熱発泡方式によって液剤の微小液滴を吐出させることが可能なサーマルインクジェット原理に基づいた吐出用ヘッド部を有することができる。この場合、ヘッド部を構成する多数の液剤吐出ユニットを独立駆動可能な構成とすることが好ましい。吐出方式の選択に関しては、製造コスト、単価、集積密度などを考慮して、熱エネルギーを付与して発泡させる方式を用いることがより好ましい。
【0047】
液状試料を微細に液滴化した上で、吐出する方法の一つとして、インクジェット技術が公知であり、これは、特に、液滴化した上で吐出する液量に関して、極微量でも高い制御性を示すという特長を有している。このインクジェット方式の微細液滴吐出方式としては、上述した様に、ピエゾ圧電体素子などを利用する振動方式や、マイクロ・ヒーター素子を利用する加熱発泡方式が知られている。ピエゾ圧電体素子などを利用する振動方式は、利用される圧電体素子のサイズ微小化の限界に伴って、単位面積あたりに設ける吐出口の数が制限される。特に、単位面積あたりに設ける吐出口の数が多くなるとともに、その作製に要するコストが急激に高くなる。それに対して、加熱発泡方式では、利用するマイクロ・ヒーター素子のサイズ微小化は比較的に容易であり、ピエゾ圧電体素子などを利用する振動方式と比較して、単位面積あたりに設ける吐出口の数も多くでき、また、その作製に要するコストも低くできる。
【0048】
図1に、上記した送液装置の全体構成の一例を模式的に示す。図1に例示する上記第3のタイプの装置は、液体を含有する複数の部位(貯蔵部)1と2、複数の送液部位(送液部)5と6、貯蔵部1と送液部5とを連結する流路3、貯蔵部2と送液部6とを連結する流路4を有する。また、更に、吐出部10と、送液部5と6と吐出部10とを連結する連結部を構成する流路7乃至9を有する。流路9は、流路7と流路8が合流して1つになって形成された流路である。この構成において、例えば、送液部5と6を交互に駆動させて、連結部すなわち流路9で均一に混合させて吐出部10へ送液し、混合液を吐出部10より吐出させることができる。その際に、逆流を防ぐために、図2に示す形に、流路7、8及び9を配置することが好ましい。流路7、8及び9の径は充分に細いので、この逆流防止効果は、装置の使用姿勢によって変化することはない。貯蔵部1と2は夫々可撓性の材質で構成され、これは、送液部5と6や吐出部10で発生する圧力変化に応じて変形して、クローズド系中の液体の状態の均衡を保つ仕組みとなっている。尚、図1において、11は、反応または分析部位など、液体(ブロック矢印で示す。図3、図6、図7でも同様。)が供給される検出部である。すなわち、吐出部10から検出部11に対して液滴が吐出される。
【0049】
吐出部10はヘッド部を有し、図3に示す様に、このヘッド部が、各液剤吐出ユニットの駆動を制御するコントローラ12と内部配線で連結されて、駆動信号、制御信号などのやり取りを行う様にできる。その際、ヘッド部としては、吐出される微細な液滴個々の液量を、サブピコリットル或いはフェムトリットルオーダーとして、高い精度で制御できる制御性にも優れている極微小の液滴吐出部を利用することが好ましい。コントローラ12は送液部5と6も制御する様にできる。
【0050】
上記吐出用ヘッドは、特開2003−154655号公報に開示されている様なものを用いることができる。これを、図4の断面図を用いて説明する。図4に示す様に、吐出口24には、吐出口プレート25の吐出口24が開口した面である吐出口面25aに対して凹となる位置に、絞り部27、すなわち吐出口24の断面積を他の部分と比較して急激に絞り込んだ部分27aが、設けられている。吐出される液体は、吐出口24内において、吐出口面25aと絞り部27との間でメニスカス28を形成して保持される。したがって、絞り部27は、液流路23から、吐出口プレート25の吐出口面25aまでの経路における液中に位置している。基板22上には、液吐出のために電圧印加されて発熱するヒータ21が設けられていて、ヒータ21が発熱させられると、その上に気泡が発生してメニスカス28から液滴が吐出される。この構成は、絞り部27の所を閉鎖すると共に流路23とは別の流路を設ければ、送液部の送液用エネルギー付与手段として用いることもできる。
【0051】
図1に示す例では、吐出される液体は2種類である。吐出される液剤が3種類以上の場合は、適宜に、対応する貯蔵部を設けてこれらを連結し、吐出部位10のヘッドも、例えば、複数種の液剤吐出部を集積化する構成とすることで、対応可能である。
【0052】
本実施形態による吐出装置は、例えば、図5に示す様な外形を有する。図5は、吸入器として用いる吐出装置のアクセスカバー32が開いた状態を図示したものである。図5において、33はフロントカバーで、吐出装置本体とともにハウジングを形成している。35は、バネによって付勢されたロックレバーである。アクセスカバー32が使用時に開かないように、アクセスカバー32の先端に設けた突起部32aに、ロックレバー35の先端に設けた爪形状部がひっかかりを持つようになっている。ロックレバー35を下方にスライドさせると、アクセスカバー32を付勢している不図示のアクセスカバー戻しバネの力によりアクセスカバー32がヒンジ軸を回転中心として開く。
【0053】
図5に示す如く、アクセスカバー32が開くと、吐出ユニットガイドに沿ってハウジング内に装着された吐出ユニット36とマウスピース34が見えてくる。マウスピース34は吐出ユニット36の下にあり、これらは交差して装着されている。吐出ユニット36は、液剤を包含する貯蔵部、送液部、上記した種々の流路、混合液を吐出するヘッド部(吐出部)、ヘッド部に設けたヒータに熱エネルギーを発生させるための電力をバッテリから供給するための電気接続面等から構成されている。
【0054】
また、上記実施形態においては、装置を繰り返し使用することができ、利便性から所定の部位をカートリッジ化して使用毎に交換することができる。カートリッジ化する部位は、例えば、図1に示す全体を一つのカートリッジとする、或いは液を含有する部位1と2を各々カートリッジとする、或いは吐出部10をカートリッジとする。更には、図1において吐出部10から上の部分を一つとみなしてカートリッジ化する、或いは液を含有する部位1と2から下の部分を一つとみなしてカートリッジ化する形態が挙げられる。また、カートリッジ化して前記の液を含有する部位を内部に収納し、該カートリッジに、可撓性材料からなる該液を含有する部位の保護カバーの役目を担わせ、衝撃などに対する強度を向上させることもできる。
【0055】
ところで、複数の物質について量や比率の制御が不要ないし必ずしも必要とされない場合は、図6に示すように両方の送液部がない構成としてもよい。勿論、量や比率の或る程度以上の制御を必要とする所には送液部を残しておいてもよい。この構成は、上記第4のタイプの送液装置ないし方法に属するものである。すなわち、クローズド系であるがゆえ、吐出部10から液滴が吐出された結果、可撓性材料の液体貯蔵部1、2が変形しつつ、液体が貯蔵部から吐出部10へと送液される。
【0056】
また、図7は、上記した送液装置の全体構成の他の例を模式的に示す。図7の例は、例示する上記第2のタイプの送液装置及び方法である。図7において、41は、液体を含有する貯蔵部、43は、吐出部、42は、貯蔵部41と吐出部43とを連結する流路、44は、反応または分析部位など、液体が供給される検出部である。各部位の機能は、図1の構成に関して説明した通りである。ここでも、貯蔵部41は可撓性の材質で構成され、これは、吐出部43で発生する圧力変化に応じて変形して、クローズド系中の液体の状態の均衡を保つ仕組みとなっている。また、貯蔵部41と吐出部43の間に送液部を設けると、上記第1のタイプの送液装置及び方法に対応したものとなる。
【0057】
上記実施形態によれば、例えば、以下の様な効果が奏される。
上記実施形態では大気圧を必要とせずにクローズド系で液吐出させて送液させることとしているため、液を含有する部位の材質を可撓性のものとし、圧力差をこの部位の材質で吸収させる方式を採用していて、従って、外からの異物の混入を防げる。
【0058】
また、加熱発泡方式によって液体の微小液滴を吐出させる手法を採用する場合、単位時間あたりに吐出される微細な液滴の総数を高い精度で設定、制御可能である。従って、吐出される液滴量の合計を高い精度で制御しつつ、再現性良く送液する用途に正に適合する送液手段となる。また、吐出された液滴に外部からの異物が混入しないことで、液中物質の純度をより高く維持できる。
【0059】
複数の液体貯蔵部を設けた構成では、複数の微量の液体を送液する際に、クローズド系で液量を精密に制御して送液することができる。また、溶媒中に任意の化合物を所定濃度で含有する液剤を吐出して送液する場合、該液剤が吐出する直前に混合される様にできる。また、吐出される液に複数の任意の化合物が任意の比率で均一化され、この構成を、例えば、微小分析装置へ応用すると、各回の送液操作において、複数の化合物を任意の比率で混合、均一化できるために効率良くスクリーニングを行うことができる。また、送液される液量の合計を高い精度で制御できる。
【0060】
更に、上記実施形態では、小型で低コストの送液装置並びに送液方法を提供できる。加えて、上記の送液装置ないし方法を使用して、例えば、安定した化学反応を行うことができる長寿命な化学分析装置及び方法、更には反応装置及び方法を提供できる。
【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
図3に示す機構(検出部11を除く)を図5に示す吸入器に取り入れて吸入器として用い、2種類の溶液について実験を行った。液を含有する2つの部位に以下のA液及びB液を夫々満たし、送液部位に、送液用エネルギー付与手段として圧電体ポンプを用いた。ポンプは50Hzで1秒間駆動した際に5マイクロリットル送液できる仕様のもので、実際のポンプの駆動は、A液とB液のポンプを夫々40Hzと10Hzに設定し、交互に駆動させてA液とB液の送液量を夫々1秒あたり4マイクロリットルと1マイクロリットルに設定した。
A液:インスリン4mg/ml水溶液
B液:ラウロイルサルコシン20mg/ml水溶液
【0063】
ノズル径が3μmで、ノズル数が1000個の吐出部位を用いて前記の混合液を0.5秒間吐出した。吐出液を回収して高速液体クロマトグラフ(日本分光社製;LC−2000)を用いて予め濃度による検量線を作成し、前記A、Bの2物質の濃度を同定した結果、正に仕込んで送液した比率0.8を得た。また、図3に示す検出部11にクロマトグラフシステムを設け、同様に前記A、Bの2物質の濃度を同定した結果、正に仕込んで送液した比率0.8を得た。
【0064】
なお、以下全ての実施例では各送液部の駆動時間をそろえているため、A液、B液の各成分量は濃度と周波数(送液量)の2つで決定され、これによって物質量を定義している。すなわち、A液、B液の送液の開始と終了が同時になるように、周波数で調整している。吐出液比率は、次の計算式で計算される。
[Aの成分量]=[Aの成分の濃度]×[Aの送液部の駆動周波数]
[Bの成分量]=[Bの成分の濃度]×[Bの送液部の駆動周波数]
吐出液比率=[Aの成分量]/[Bの成分量]
【0065】
(実施例2)
実施例2においては、A液とB液及びポンプ条件と送液量を以下のように変更する以外は実施例1と同様に行った。
【0066】
すなわち、ポンプの駆動は、A液とB液のポンプを夫々20Hzと50Hzに設定し、交互に駆動させてA液とB液の送液量を夫々1秒あたり2マイクロリットルと5マイクロリットルに設定した。結果、A液とB液の比率0.08を得、正に仕込んだ比率と一致した。
【0067】
以上のことから、複数の液を交互に送液して混合させることで均一化し、吐出部位から吐出して送液できる。こうして、高い精度で量のコントロールが可能であり、吸入、分析用途などに用いることが可能なことが確認された。
【0068】
(実施例3)
図7に示す機構に対して、液を含有する部位に以下のA液を満たして実験を行った。
A液:アシッドブルー9染料4mg/ml水溶液
【0069】
ノズル径が3μmで、ノズル数が1000個の吐出部位を用いて、前記のA液を0.5秒間駆動・送液した。吐出液を回収して高速液体クロマトグラフ(日本分光社製;LC−2000)を用いて予め濃度による検量線を作成し、前記A液の物質の濃度を同定した結果、0.6μgを得た。また、図7に示す検出部44にクロマトグラフシステムを設け、同定した結果、0.6μgを得た。
【0070】
(実施例4)
実施例4においては、駆動時間を1.0秒に変更する以外は実施例3と同様に行い、同定した結果、1.1μgを得た。
【0071】
(実施例5)
実施例5においては、A液を以下に示すB液に変更して実施例3と同様に行い、B液に関して検量線を作成して同定した結果、0.6μgを得た。
B液:インスリン4mg/ml水溶液
【0072】
(実施例6)
実施例6においては、ノズル径が10μm、ノズル数を500個に変更して実施例3と同様に行い、同定した結果、10.5μgを得た。本実施例ではノズル径が10μmになったので、実施例3に比べ、液滴の体積は(10/3)3倍となっている。
【0073】
上記実施例3乃至6においても、所望の物質を吐出させて送液でき、高い精度で量のコントロールが可能であり、分析用途などに用いることが可能なことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の送液装置及び方法の全体構成の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の送液装置の流路の合流部の一例を示す図である。
【図3】本発明の送液装置及び方法の全体構成の一実施形態を示す図である。
【図4】本発明の送液装置の吐出部位の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の送液装置の適用例である吐出装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の送液装置及び方法の全体構成の他の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の送液装置及び方法の全体構成の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1、2、41 貯蔵部(液含有部位)
3、4、42 流路(第1流路)
5、6 送液部(送液部位)
7、8 流路(第2流路)
9 連結部(合流した流路)
10、43 吐出部(吐出部位)
11、44 検出部(反応部位、分析部位)
12 制御部(制御部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、第1流路を介して貯蔵部に連通した送液部と、第2流路を介して送液部に連通し吐出口を介して液体を吐出するための吐出部とを有し、
送液部は、第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを与える送液用エネルギー付与手段を有し、
且つ、一連の貯蔵部、第1流路、送液部、第2流路、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成していて、
送液用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、貯蔵部が変形しつつ吐出部の吐出口より液体が吐出されて液体が貯蔵部から吐出部へと送液されることを特徴とする送液装置。
【請求項2】
液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、流路を介して貯蔵部に連通し吐出口を介して液体を吐出するための吐出部とを有し、
吐出部は、液体を吐出するためのエネルギーを与える吐出用エネルギー付与手段を有し、
且つ、一連の貯蔵部、流路、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成していて、
吐出用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、貯蔵部が変形しつつ吐出部の吐出口より液体が吐出されて液体が貯蔵部から吐出部へと送液されることを特徴とする送液装置。
【請求項3】
液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、夫々第1流路を介して貯蔵部に連通した複数の送液部と、吐出口を介して液体を吐出するための吐出部と、複数の送液部に夫々連通した第2流路を合流させて1つの流路として吐出部に連通する連結部とを有し、
複数の送液部は、夫々第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを与える送液用エネルギー付与手段を有し、
且つ、一連の複数の貯蔵部、複数の第1流路、複数の送液部、複数の第2流路、連結部、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成していて、
複数の送液部の送液用エネルギー付与手段が夫々の液体に前記エネルギーを与えるとき、夫々の貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部に送られて吐出部の吐出口より吐出され、夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液されることを特徴とする送液装置。
【請求項4】
液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、吐出口を介して液体を吐出するための吐出部と、複数の貯蔵部に夫々連通した流路を合流させて1つの流路として吐出部に連通する連結部とを有し、
吐出部は、液体を吐出するためのエネルギーを与える吐出用エネルギー付与手段を有し、
且つ、一連の複数の貯蔵部、連結部、吐出部が、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系を構成していて、
吐出用エネルギー付与手段が液体に前記エネルギーを与えるとき、夫々の貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部に送られて吐出部の吐出口より吐出され、夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液されることを特徴とする送液装置。
【請求項5】
前記吐出部が、吐出口から吐出するためのエネルギーを液体に与える吐出用エネルギー付与手段を有することを特徴とする請求項1または3に記載の送液装置。
【請求項6】
複数の送液部の送液用エネルギー付与手段が交互に駆動されて夫々の液体に前記エネルギーを与えるとき、夫々の貯蔵部が変形しつつ夫々の液体が連結部で混合されて吐出部の吐出口より混合液として吐出され、夫々の液体が複数の貯蔵部から吐出部へと送液されることを特徴とする請求項3に記載の送液装置。
【請求項7】
前記複数の貯蔵部に夫々連通した流路の少なくとも一方に、前記連結部の方向に液体を送るためのエネルギーを与える送液用エネルギー付与手段を有する送液部が設けられることを特徴とする請求項4に記載の送液装置。
【請求項8】
前記送液用エネルギー付与手段と前記吐出用エネルギー付与手段のうちの少なくとも一方は、加熱発泡方式の原理に基づいてエネルギーを液体に与えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の送液装置。
【請求項9】
液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、第1流路と、送液部と、第2流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とし、
送液部で、第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを液体に与えて、貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部から吐出部へと送液することを特徴とする送液方法。
【請求項10】
液体を貯蔵するための可撓性材料で形成された貯蔵部と、流路と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とし、
吐出部で、吐出口を介して液体を吐出するためのエネルギーを液体に与えて、貯蔵部を変形させつつ吐出部の吐出口より液体を吐出して液体を貯蔵部から吐出部へと送液することを特徴とする送液方法。
【請求項11】
液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、夫々複数の貯蔵部に連通した複数の第1流路と、夫々複数の第1流路に繋がった複数の送液部と、夫々複数の送液部に繋がった複数の第2流路と、複数の第2流路を合流させて1つの流路とした連結部と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出部の吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とし、
複数の送液部で、夫々第1流路から第2流路の方向に液体を送るためのエネルギーを液体に与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液することを特徴とする送液方法。
【請求項12】
液体を貯蔵するための夫々可撓性材料で形成された複数の貯蔵部と、複数の貯蔵部に夫々連通した流路を合流させて1つの流路とした連結部と、吐出口を持つ吐出部とを順に連通すると共に、これら一連の部位を、吐出口を除いて、外部に連通しないクローズド系とし、
吐出部で、吐出口を介して液体を吐出するためのエネルギーを液体に与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に送って吐出部の吐出口より吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液することを特徴とする送液方法。
【請求項13】
前記吐出部で、吐出口から吐出するためのエネルギーを液体に与えることを特徴とする請求項9または11に記載の送液方法。
【請求項14】
複数の送液部で交互に夫々の液体に前記エネルギーを与えて、夫々の貯蔵部を変形させつつ夫々の液体を連結部に交互に送って混合して吐出部の吐出口より混合液として吐出し、夫々の液体を複数の貯蔵部から吐出部へと送液することを特徴とする請求項11に記載の送液方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−122190(P2008−122190A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305400(P2006−305400)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】