説明

送液装置

【課題】 POC分析等をはじめとする種々の分析装置に好適に用いられる小型且つ低コストな送液装置を提供する。
【解決手段】 送液装置は、液体貯槽を有する液体収容体と、液体貯槽の容積変化を生じさせるための圧力を伝達する非圧縮性媒体を収容する非圧縮性媒体収容体と、を備えている。液体貯槽には、液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能な隔膜が備えられている。また、非圧縮性媒体収容体は、圧力を発生させる変圧手段を備え且つ非圧縮性媒体が満たされた第一媒体貯槽と、非圧縮性媒体流路によって第一媒体貯槽に連通された第二媒体貯槽と、を備えている。液体貯槽と第二媒体貯槽とは、隔膜を挟んで隣接して配置されており、変圧手段により非圧縮性媒体に加えられた圧力変化に追随して、隔膜が変形するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量試料の分析,検出を簡便に行う分析装置等に好適に用いられる送液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断に必要な測定を患者近傍で行うベッドサイド診断用の分析(POC(point of care )分析)や、河川や廃棄物中の有害物質の分析を河川や廃棄物処理場等の現場で行うこと(POU( point of use )分析)や、食品の調理,収穫,輸入の各現場における汚染検査等のような、分析・計測が必要とされる現場若しくは現場の近傍で分析・計測を行うこと(以下、これらを「POC分析等」と総称する)の重要性が注目されている。そして、近年、このようなPOC分析等に適用される検出法や装置の開発が重要視されつつある。このようなPOC分析等は、簡便に短時間で、且つ低コストで行われることが要求される。
【0003】
従来、微量分析には、試料をキャピラリガスクロマトグラフィー(CGC),キャピラリ液体クロマトグラフィー(CLC)等で分離した後、質量分析計で定量するGC−MS装置やLC−MS装置が広く使用されてきた。しかしながら、これらの分析装置は、質量分析計が大型であることと操作が煩雑であることから、患者のベッドサイドや汚染河川,廃棄物処理場近辺等の現場での測定に使用することには適していない。さらに、血液等を試料とする医療診断用途の分析装置は、試料が触れる部分を使い捨てにすることが望ましい。
【0004】
そこで、これらの問題点を解決するために、従来利用されてきた分析装置を小型化し、極微量の液体試薬を反応させるμTAS(micro total analysis system )の技術をPOC分析等へ応用する検討が進んできた。μTASでは、血液に限らず検体量を微量にするために、10cmから数cm角程度以下のガラスやシリコン製のチップの表面に溝を形成して、その溝中に試薬溶液や検体を流して分離,反応を行って、微量試料の分析を行っている(例えば、特許文献1,2,3及び非特許文献1を参照)。この技術においては、検体量,検出に必要な試薬量,検出に用いた消耗品等の廃棄物,廃液の量がいずれも少なくなる上、検出に必要な時間もおおむね短時間で済むという利点がある。
【0005】
本願出願人も、「混合分析装置及び混合分析方法」(特許文献4)、「キャピラリ光熱変換分析装置」(特許文献5)、「分析装置」(特許文献6)、「分析用カートリッジ及び送液制御装置」(特許文献7,8)等のμTAS関係の発明を出願している。
これらの公報又は出願明細書には、チップとして樹脂製のマイクロチップを用いることや、微量成分の検出法として熱レンズ検出法を用いることなども記載されている。
【0006】
熱レンズ検出法は、励起光で液体中の試料を励起して、いわゆる熱レンズを形成させ、検出光でその熱レンズの変化を測定する光熱変換検出法であり、その原理等は以前から知られている(特許文献9,10,11及び非特許文献2,3,4,5,6等)。
キャピラリー中の成分を測定する方法としては、熱レンズ検出法の他に蛍光法や吸光度法等も用いることができるが、蛍光標識物質の導入等の操作をすることなく高い感度が実現できるので、熱レンズ検出法が適している。
【0007】
一方、チップ中で、キャピラリ電気泳動そのものや、電気浸透流を用いて電圧をかけることによって送液する方法も提案されている(特許文献12,13,14及び非特許文献3,7等)。
しかしながら、電気泳動も電気浸透流も、チップ内の液体に電極を介して電圧をかけるため、電極表面で測定試薬や測定試料の電気分解が生じて、試薬組成や試料組成が変化してしまうことがある。また、試薬や試料の電気分解生成物がキャピラリの内面に付着して、キャピラリ表面のゼータ電位を変えてしまい、送液速度が変化するといった現象が起こる場合もある。
【0008】
また、カートリッジ内に凍結乾燥した固体試薬を入れておき、カートリッジ内に封入した溶解希釈液で血液検体を希釈し、さらに該希釈検体液で前記固体試薬を溶解して、分析反応を行い定量する方法が開示されている(特許文献15,16等)。
この方法では、送液は遠心力により行われているため、送液方向は常に遠心力の働く方向、つまり、円形カートリッジの円の中心から外方に向かう方向である。固体試薬はカートリッジ中の流路末端に位置する、円周沿いの小部屋内に置かれており、希釈された検体が各小部屋に流入して、固体試薬を溶解し反応して吸光度に変化を来すようになっている。
【0009】
しかしながら、カートリッジの構造上、固体試薬は流路の最終点におかれているため、1試薬による1段反応の検出反応しか行えないこととなり、検出項目によっては、検査センターや病院の臨床検査室などで行われている、学会や官庁などで定められた推奨法による検出反応とは異なる反応及び試薬組成を採用せざるを得ない。そのため、従来の検査データとの相関性が低い場合がある。さらに、検査項目によっては、このような円形カートリッジの反応様式では分析が困難な場合も考えられる。
【0010】
これに対して、密閉カプセル内での気泡による送液方法が報告されている。これには、気泡の熱膨張による送液と電解ガスの発生による送液とがある。前者は、密閉されたチャンバーと加熱材料及び充填液とにより行われる。加熱された気泡の膨張は高い圧力を発生し、早い送液が可能である。例えばNaruse Yoshihiroらの方法は、液が充填されたチャンバー内に吸光発熱材料を封入しておき、ガラスファイバーでレーザー光をチャンバー内に導くと、吸光発熱材料の発熱によりチャンバー内の気泡が膨張して送液が行われるというものである(特許文献17)。
【0011】
一方、後者は、密閉されたチャンバーとその中に充填された電解液とチャンバーに挿入された一対の電極とにより行われる。電極に電圧を印加することによる電解ガスの発生で圧力が生じ、送液が行われるというものである。例えば、D.A.Hopkins,Jr(特許文献18)やC.R.Neagu ら(非特許文献8)が報告しているものがある。
しかしながら、気泡は圧縮性を有するので、細いキャピラリ流路中に液を送る場合は、液の流れが始まってから安定するまでに長い時間が必要となる。場合によっては、液が流れ方向に振動して、送液がまったく安定しないという問題が発生するおそれがある。
【0012】
さらにまた、気泡を使用することなく充填液を外部から押して液を送る方法が提案されており、例えば圧電素子による送液があげられる。圧電素子は、比較的少量のエネルギーで大きな力を発生させることが可能である。
しかしながら、圧電素子が単一の結晶で構成されていると、極小さい距離しか液を押し動かすことができない。ストロークを大きくするには通常は複数の結晶で圧電素子を構成するが、そうすると多くの部品が必要になり、結局コストがかさんでしまう。
【0013】
また、圧電素子は小さい電流で駆動するが高い電圧を必要とするため、必ずしも今日の半導体回路に適応しているとは言えない。さらに、伸張係数の異なる材料を積層して圧電素子を構成する必要があり、しかも積層に際しては正確なクリアランスが要求されるため、微小サイズ化することが難しい。さらに、振動による往復運動であるため、送液に適した一方向の力に変換するためには、逆止弁機能を有する複数のバルブを必要としたり、複数のポンプに位相差を付ける電気的制御を必要としたりするので、システム全体が非常に複雑になるという問題があった。
【0014】
ディフューザーなど整流効果のあるモジュールを流路内に設置することにより送液を行うことも可能であるが、その構造上の特性により、高流速でないと整流効果は期待できない。低流速の場合には流路幅を細くすることにより高速化することも可能ではあるが、この方法では流路での圧力損失が大きくなる,チップの製作精度や流量制御精度を高める必要がある,高コストにつながる等の理由により、実用的なシステムを組むことが困難になってくる。
さらにまた、静電的な荷電反発と反対荷電の引き合いの原理に基づく送液も報告されている。例えば、 R. Zengerleらの方法では、薄い膜状電極とチップ固定電極との静電的反発によりチャンバー内の液が押し出される(非特許文献9)。
【0015】
しかしながら、ギャップ距離は送液に敏感なため、実際の送液では2,3μmに制限される。この狭いギャップはゴミ等による汚染に敏感で、高い電場ではゴミを引きつけやすく、このような汚染により適切な送液が阻害される。また、大きな電流は必要としないが高い電圧を必要とするので、必ずしも今日の半導体回路に適応しているとは言えない。さらに、大きな送液力を得るには大容量の荷電板が必要である。さらに、振動による往復運動であるため、送液に適した一方向の力に変換するためには、電気的に制御されるか又は逆止弁機能を有する複数のパイロットバルブが必要になり、システム全体が非常に複雑になるという問題がある。
【特許文献1】特開平2−245655号公報
【特許文献2】特開平3−226666号公報
【特許文献3】特開平8−233778号公報
【特許文献4】特願平10−181586号明細書
【特許文献5】特開2000−2675号公報
【特許文献6】特開2000−2677号公報
【特許文献7】国際公開第99/64846号パンフレット
【特許文献8】特願平11−227624号明細書
【特許文献9】特開昭60−174933号公報
【特許文献10】特開平10−142177号公報
【特許文献11】特開平4−369467号公報
【特許文献12】国際公開第96/04547号パンフレット
【特許文献13】特開平10−142177号公報
【特許文献14】特開平4−369467号公報
【特許文献15】特表平10−501340号公報
【特許文献16】特表平9−504732号公報
【特許文献17】米国特許第5210817号明細書
【特許文献18】米国特許第5671905号明細書
【非特許文献1】Analytical Chem. 69, 2626-2630(1997)
【非特許文献2】A. C. Boccara et. al., Appl. Phys. Lett.36, 130,1980
【非特許文献3】J. Liquid Chromatography 12,2575-2585 (1989)
【非特許文献4】M. Harada et. al.,ぶんせきNo.4,280-284,1997
【非特許文献5】Anal. Chem. Vol.65,2938-2940,1993
【非特許文献6】川西他,日本分析化学会第44年会講演要旨集,p119,1995
【非特許文献7】S. C. Jakobson et. al., Anal. Chem. Vol.66,4127-4132,1994
【非特許文献8】C.R.Neagu, J.G.E.Gardeniers, M.Elwenspoek, J.J.Kelly, Journal of Micro Electro Mechanical Systems, 5,1, 2-9,(1996)
【非特許文献9】R. Zengerle, A. Richter, H. Sandmaier, Micro Electro Mechanical Systems '92, 4, 19, (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
POC分析等を行う機器(以降は、POC分析機器と記すこともある)には、一般に、小型,低コスト,操作の簡便性,短い測定時間等の要求がある。例えば、診療所のような小規模の医療機関で使用するPOC分析機器には、診療所の限られたスペースでも設置できる小さな機器サイズ、設備投資負担の小さい低価格、専門の検査技師ではなくても操作可能な簡便性、患者を待たせることなく数十分以内に測定できること等の要求を満たすことが必要である。また、病状の正確な診断のために複数項目の同時測定が可能で、定量測定にも対応できることも必要である。
【0017】
前述のように、POC分析機器へ提供する送液技術として多くの提案がなされているが、このような小型,低コスト,簡便性,短い測定時間,多項目測定,定量性という要求のすべてに適合するものは、未だ提案されていない。
そこで、本発明の目的は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、装置が小型で平易に製造可能で、操作が煩雑でなく簡単に測定を行うことができる送液装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、検体や試薬は使い捨てカートリッジ内にのみ留まり、送液装置のカートリッジ以外の部分に触れることがなく、コンタミネーションが発生せず、検体や試薬の性状に影響されることなしに定量的に送液が可能な送液装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の送液装置は、壁体に囲まれて形成された液体貯槽の容積を変化させることによって、前記液体貯槽に満たされた液体を前記液体貯槽に連結された流路に送る、又は、前記流路若しくは前記流路に連結された別の貯槽に収容された液体を前記液体貯槽に送る送液装置であって、前記液体貯槽を有する液体収容体と、前記液体貯槽の容積変化を生じさせるための圧力を伝達する非圧縮性媒体を収容する非圧縮性媒体収容体と、を備え、前記液体貯槽は、前記壁体の少なくとも一部が、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能な弾性を有する隔膜で構成され、前記非圧縮性媒体収容体は、前記圧力を発生させる変圧手段を備え且つ前記非圧縮性媒体が満たされた第一媒体貯槽と、非圧縮性媒体流路によって前記第一媒体貯槽に連通された第二媒体貯槽と、を備え、前記液体貯槽と前記第二媒体貯槽とは、前記隔膜を挟んで隣接して配置されており、前記隔膜は、前記変圧手段により前記非圧縮性媒体に加えられた圧力変化に追随して変形するようになっていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る請求項2の送液装置は、壁体に囲まれて形成された液体貯槽の容積を変化させることによって、前記液体貯槽に満たされた液体を前記液体貯槽に連結された流路に送る、又は、前記流路若しくは前記流路に連結された別の貯槽に収容された液体を前記液体貯槽に送る送液装置であって、前記液体貯槽を有する液体収容体と、前記液体貯槽の容積変化を生じさせるための圧力を伝達する非圧縮性媒体を収容する非圧縮性媒体収容体と、を備え、前記液体貯槽は、前記壁体の少なくとも一部が、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能な弾性を有する隔膜で構成され、前記非圧縮性媒体収容体は、前記圧力を発生させる変圧手段を備え且つ前記非圧縮性媒体が満たされた第一媒体貯槽と、非圧縮性媒体流路によって前記第一媒体貯槽に連通された第二媒体貯槽と、を備え、前記液体貯槽と前記第二媒体貯槽とは、前記隔膜と前記隔膜に接するように前記第二媒体貯槽に設けられたダイアフラム部材とを挟んで隣接して配置されており、前記ダイアフラム部材は、前記変圧手段により前記非圧縮性媒体に加えられた圧力変化に追随して、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能であり、前記隔膜は、前記ダイアフラム部材の変形に応じて変形するようになっていることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明に係る請求項3の送液装置は、請求項1又は請求項2に記載の送液装置において、前記液体収容体は、一対の平板状部材が貼り合わされて構成されており、この一対の平板状部材のうち少なくとも一方は板面に溝を備え、前記溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより前記流路が形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4の送液装置は、請求項1又は請求項2に記載の送液装置において、前記非圧縮性媒体収容体は、一対の平板状部材が貼り合わされて構成されており、この一対の平板状部材のうち少なくとも一方は板面に溝を備え、前記溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより前記非圧縮性媒体流路が形成されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成から、変圧手段により発生した圧力が非圧縮性媒体を介して隔膜に伝えられ、隔膜が液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形する。そして、この隔膜の変形により液体貯槽の容積が変化するため、液体貯槽に満たされた液体が流路に送液されるか、又は、前記流路若しくは別の貯槽に収容された液体が液体貯槽に送液される。このときの液体の流量は、液体の性状には依存せず、隔膜の変形量(すなわち、非圧縮性媒体に加える変圧量)により制御可能であるので、液体収容体内の液体を定量的に送液することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の送液装置は、隔膜の変形量により液体の流量を制御することが可能であるので、液体を定量的に送液することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る送液装置及び該送液装置を備える分析装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以降の各図においては、同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。また、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に、非圧縮性媒体収容体の平面図、及び、該平面図のA−A’断面図を示す。非圧縮性媒体収容体1は板状の構造であって、第一媒体貯槽8、第二媒体貯槽10,11,12、及び第一媒体貯槽8と第二媒体貯槽10,11,12とを連通する非圧縮性媒体流路9(9a,9b,9c,9d)とを備え、第一媒体貯槽8、第二媒体貯槽10,11,12、及び非圧縮性媒体流路9は非圧縮性媒体17で満たされている。第二媒体貯槽10,11,12の開口部は、弾性変形可能なダイアフラム部材13,14,15で覆われ閉口している。第一媒体貯槽8には、チューブコネクタ16によりチューブ4の一端が接続されていて、チューブ4の他端はシリンジポンプ(図示せず)に接続されている。
【0024】
非圧縮性媒体収容体1の大きさは特に限定されるものではないが、本発明は特に微量の液体を取り扱う際に優れた効果を発揮するため、例えば、非圧縮性媒体流路9は幅及び深さが1μmから数mmの範囲であり、第一媒体貯槽8及び第二媒体貯槽10,11,12の容積は0.1μLから数mLである。
非圧縮性媒体収容体1は、非圧縮性媒体17に負荷される圧力に対して、ダイアフラム部材13,14,15以外は変形しない程度の強度を有する材料で製造されていることが好ましい。例えば、ガラス,金属,硬質ポリマー材料が用いられる。ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、1,3−シクロヘキサジエン系重合体等があげられる。
【0025】
非圧縮性媒体17としては、長期間安定で不活性な液体,ゲル,弾性変形性の高い固体が好ましい。また、シリコーンオイル,ポリエチレングリコール,高分子ゲル,ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の弾性高分子ポリマー等を用いることもできる。
ダイアフラム部材13,14,15は弾性材料で構成されており、シリコーンゴムフィルム等を用いることができる。また、ガス透過性を有し、且つ、非圧縮性媒体17に対しては透過性を持たない材料であれば、非圧縮性媒体17を封入する作業が容易になるので好ましい。例えば、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)多孔質膜やPDMS膜を用いることができる。
【0026】
非圧縮性媒体17が液状ではなく、高分子ポリマーのような固体状の物質である場合は、ダイアフラム部材13,14,15を用いる必要はない。また、非圧縮性媒体収容体1と後述する液体収容体2とをセットした後に、非圧縮性媒体17を収容する場合も、必ずしもダイアフラム部材13,14,15を用いる必要はない。
シリンジポンプによりシリンジ内の非圧縮性媒体を吐出すると、非圧縮性媒体はチューブ4を介して非圧縮性媒体収容体1に流れ込み、非圧縮性媒体収容体1内の圧力が上昇する。非圧縮性媒体収容体1は、加えられた圧力に対してダイアフラム部材13,14,15以外は変形しない強度を有する材料で構成されているため、結局、弾性変形可能なダイアフラム部材13,14,15が外側に膨らむ(第二媒体貯槽10,11,12の外部に向かって突出するように変形する)。図2に、図1の断面図のダイアフラム部材14が外側に膨らんだ状態を拡大して示す。
【0027】
ダイアフラム部材13,14,15には、内側から等しい圧力が付与される。適当な弾性強度を持つダイアフラム材料を選べば、ダイアフラム部材13,14,15の外側、すなわち液体収容体2の隔膜から受ける反力よりも、内圧を十分大きくすることができ、各ダイアフラム部材13,14,15の受ける反力の差を無視することができる。この場合、各ダイアフラム部材13,14,15の外側に膨らんだ分の体積比は、液体収容体2の流路設計や収容されている液体の性状によらず、第二媒体貯槽10,11,12の大きさにより制御することができる。また、非圧縮性媒体を使用しているので、シリンジポンプの吐出量とダイアフラム部材13,14,15の外側に膨らんだ分の体積の合計は等しい。すなわち、液体収容体2に流れる流量も、シリンジポンプの吐出量により、定量的に制御することができる。
【0028】
この特徴は、粘度等の液性状の異なる未知の測定対象を分析し、液体収容体2を測定毎の使い捨てとするPOC分析装置に適したものである。流量比が液体収容体2の流路形状に依存しないので、液体収容体2の製造時の寸法精度要求も緩和される。
上記の例では、変圧手段としてシリンジポンプを用いたが、その他の手段を用いることもできる。例えば、図3のような押圧機構を使用できる。すなわち、第一媒体貯槽8の上に弾性膜18を設置し、弾性膜18上に密閉容器20を設け、密閉容器20内を非圧縮性媒体21で満たす。ピン19をアクチュエーターにより押し下げることにより弾性膜18が下方に押圧され、非圧縮性媒体収容体1内の非圧縮性媒体17が変圧される。
【0029】
図4に、液体収容体2の平面図、及び、該平面図のB−B’断面図を示す。液体収容体2は板状の構造で、非圧縮性媒体収容体1の第二媒体貯槽10,11,12に対応する位置に液体貯槽22,23,24が設けられている。さらに、廃液貯槽26、及び、液体貯槽22,23,24と廃液貯槽26とを連通する流路25を有する。
液体収容体2の大きさは特に限定されないが、本発明は特に微量の液体を取り扱う際に優れた効果を発揮するため、例えば、流路25は幅及び深さが1μmから数mmの範囲であり、液体貯槽22,23,24の容積は0.1μLから数mLの範囲である。
【0030】
液体収容体2の材質は、収納する液体に対して化学的に不活性なものが好ましく、液体によりガラス,金属,ポリマー等を使用することができる。ポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、1,3−シクロヘキサジエン系重合体等の硬質プラスチックや、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の弾性ポリマー等があげられる。液体収容体2内の液体を熱レンズ等の光学的検出手段を用いて測定する場合は、透明で測定波長に対して吸収を持たない材料を用いることが望ましい。
【0031】
液体貯槽22,23,24の開口部は、隔膜27,28,29によってそれぞれ覆われ、密閉されている。液体貯槽22,23,24の使用法により、隔膜27,28,29はあらかじめ液体収容体2に固定されている場合と、使用時に液体貯槽22,23,24に液体を入れてから貼り付けて固定する場合がある。隔膜27,28,29はガス透過性を有し、且つ、液体貯槽22,23,24に収納する液体に対しては透過性を持たない、変形可能なシート状のものであればよい。PTFE多孔質膜や様々な素材の多孔膜が使用可能である。ただし、液体が隔膜27,28,29を透過しないためには、疎水性の有機ポリマーや無機素材を用いることが好ましい。
【0032】
疎水性の有機ポリマーは、臨界表面張力が20℃で約0.04N/m以下であることが好ましく、例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、1,3−シクロヘキサジエン系重合体があげられる。
【0033】
セルロースアセテート膜のようなものも使用できる場合もあるが、界面活性剤が添加された試薬液の場合は、PTFE,シリコーン,ポリエチレン等の疎水性の強い膜の方が液体の透過を防ぐ耐水圧が大きいので好ましい。
耐水圧が大きい膜ほど高い圧力で送液できるが、本発明における液体収容体2に使用できる膜の耐水圧は、発明を実施するための最良の形態の項で述べるような流路構成では9.8kPa以上が好ましい。膜の平均孔径は0.1μmから5μmが好ましく、孔径が小さいほど耐水圧が高く透過空気量が僅かであることを考慮すると、0.1μm程度が最も好ましい。膜厚は25〜300μmが好ましい。
【0034】
なお、液体収容体2は、一つの部材から構成されるものであってもよいし、複数の部材から構成されるものであってもよい。後者の例としては、例えば以下のようなものがあげられる。液体収容体2は、一対の平板状部材が貼り合わされて構成されており、この一対の平板状部材のうち少なくとも一方は板面に溝を備え、この溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより流路25が形成されている。非圧縮性媒体収容体1についても同様であり、一対の平板状部材が貼り合わされて構成され、溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより流路9が形成されているようなものでもよい。
【0035】
図5に、本発明の送液装置を備える分析装置の構成を示す。図1に示した非圧縮生媒体収容体1には3つの第二媒体貯槽が設けられ、各第二媒体貯槽のダイアフラム部材は、それぞれ液体収容体2に設けられた3つの液体貯槽に接するように配置されている。各ダイアフラム部材が液体貯槽内の液体と直接触れないように、各液体貯槽の開口部には隔膜が貼られている。液体収容体2は、温度制御機能を備えたステージ7上に置かれている。化学反応(生化学反応)の種類によっては、温度制御機能はなくてもよい。
【0036】
液体収容体2の流路25内での化学反応(生化学反応)を測定するために、流路25を照射できる位置にレーザー出射部5を配置し、照射された流路25からの信号を検出できる位置に光学検出部6を備える。図5では、熱レンズ信号測定のようにレーザー出射部5と光学検出部6が流路25を挟んで同軸上に対向する位置に配置されているが、蛍光測定の場合には同軸上である必要はない。また、レーザー出射部5と光学検出部6の位置関係が反転していてもよい。
【0037】
本発明の送液装置を備える分析装置は、光学的測定手段を有するものに限定されるわけではなく、電気的な測定手段を利用したものであってもよい。例えば、図11のような流路25中に電極35,36を備えた液体収容体2により、流路25内の化学反応(生化学反応)を電気的に測定することができる。
分析装置は、送液装置の機能を制御,駆動するための電気回路を備えている。また、シリンジポンプ3の駆動,流量制御のためのアクチュエーター駆動回路及び制御回路、ステージ温度制御のためのヒーター駆動回路及び温度制御回路、反応測定のための検出系制御回路等を備え、さらにそれらを協調動作,制御するための統括制御CPUを備えている。検出系に関しては、例えば、熱レンズ信号測定の場合は、レーザー照射のための光源駆動回路、レーザー強度を変調させるための光源変調回路、光センサーからの信号を検出する光検出回路、信号の増幅回路及び信号処理回路等を備えている。
また、分析装置外のパーソナルコンピューター等から分析装置の各機能を制御し、分析装置内の制御回路の全部あるいは一部を省略することもできる。この場合は、分析装置にパーソナルコンピューターとの信号インターフェースが備えられる。
【0038】
図6の(1)〜(6)の平面図及び断面図を用いて、この分析装置を用いた分析の操作手順を説明する。
図6の(1)に示すように、はじめに、液体収容体2の液体貯槽23に検体を、液体貯槽22,24に検体分析反応の試薬溶液を滴下する。この例では、2試薬分析反応の例を示しており、液体貯槽22,24にはそれぞれ異なる試薬が入る。滴下量は厳密である必要はない。また、液体貯槽22,23,24にあらかじめ乾燥試薬を封入しておいて、溶解バッファーを滴下してもよい。
【0039】
次に、図6の(2)に示すように、各液体貯槽22,23,24の開口部に隔膜27,28,29をぞれぞれ貼り付けて密封する。次に、図6の(3)に示すように、流路25の出口に接続する廃液槽26にマイクロシリンジ33を接続し、空気を流路25内に注入する。すると、液体収容体2の流路25内の圧力が高まり、各液体貯槽22,23,24に収容された液体が隔膜27,28,29の方に押される。隔膜27,28,29は疎水性の多孔質弾性膜であるので、隔膜27,28,29と液体貯槽22,23,24に収容されている液体との間に存在する気体のみが透過し、液体は外に漏出しない。よって、隔膜27,28,29と収容された液体との間には、気体が存在しない状態になる。
【0040】
次に、図6の(4)に示すように、液体収容体2の上に非圧縮性媒体収容体1を接触させ、固定する。このとき、液体収容体2の各液体貯槽22,23,24上の隔膜27,28,29と、非圧縮性媒体収容体1の各第二媒体貯槽10,11,12に設けたダイアフラム部材13,14,15とが接するように配置する。さらに、図6の(5)に示すように、図示しないシリンジポンプによりシリンジから非圧縮性媒体を吐出すると、非圧縮性媒体がチューブ4を介して非圧縮性媒体収容体1に流れ込み、非圧縮性媒体収容体1内の圧力が上昇する。各第二媒体貯槽10,11,12に設けたダイアフラム部材13,14,15が外側に膨らみ(第二媒体貯槽10,11,12の外部に向かって突出するように変形する)、接触している液体収容体2の液体貯槽22,23,24上の隔膜27,28,29を下方に押圧する。そのため、液体貯槽22,23,24内の液体が流路25に押し出され、流路25内に流れ出す。この様子を、図6の(6)に拡大して図示した。
図6の(5)で、流路25内に流れ出した検体及び試薬は、非圧縮性媒体収容体1の設計により決まる所定の流量比で混合,反応する。また、総流量もシリンジポンプにより正確に制御される。流路25の下流側に位置する測定点32において、レーザーが照射され、信号検出することにより定量測定を行う。
【実施例】
【0041】
次に、実施例及び参考例によって、本発明をより詳細に説明する。
〔実施例1〕
非圧縮性媒体収容体1として、図7に示すPMMA製マイクロチップ1を用意した。非圧縮性媒体流路9の幅は200μmで、深さは100μmである。非圧縮性媒体流路9aは長さが20mmであり、非圧縮性媒体流路9e,9f,9gはすべて長さが25.7mmである。第二媒体貯槽10,11,12の直径はそれぞれ3mm、2.5mm、5mmである。第二媒体貯槽10,11,12の開口部には、シリコーンゴム・メンブレンがそれぞれ接着されている。第一媒体貯槽8には、チューブコネクター16を介してPEEK製チューブ4の一端が接続していて、チューブ4の他端は図示しないシリンジポンプに接続している。第一媒体貯槽8、第二媒体貯槽10,11,12及び非圧縮性媒体流路9は、水で満たされていて、残留気泡はない。
【0042】
液体収容体2として、図8に示すPMMA製マイクロチップ2を用意した。流路25の幅は200μmで、深さは100μmである。合流点30から合流点31までの長さは100mmであり、合流点31から測定点32までの長さは130mmである。液体貯槽22,23,24の直径は、それぞれ3mm、2.5mm、5mmであり、深さは2mmである。
【0043】
液体貯槽22,23,24の開口部に、それぞれPTFEメンブレン27,28,29を貼り付け、流路25の出口にある廃液槽26にコネクターを介してチューブを接続した(いずれも図示せず)。チューブの他端に図示しないシリンジをつなぎ、このシリンジから直径1μmのポリスチレン・ビーズの懸濁液をマイクロチップ2に流し込んだ。液体貯槽22,23,24内の気泡が完全になくなるまで、懸濁液を注入した。そして、シリンジをチューブからはずし、替わりに内径100μmのガラスキャピラリーを接続した。
【0044】
図7のマイクロチップ1と図8のマイクロチップ2とを、図5のように重ねてステージ上に固定した。マイクロチップ1とマイクロチップ2とは、マイクロチップ1の第二媒体貯槽10,11,12上のダイアフラム部材13,14,15と、マイクロチップ2の液体貯槽22,23,24上の隔膜27,28,29とが互いに接するように配置した。
【0045】
シリンジポンプより水を吐出すると、マイクロチップチップ1上のダイアフラム部材13,14,15が外側に膨らみ、それによりマイクロチップ2上の隔膜27,28,29は押されて、液体貯槽22,23,24の内部に突出するように変形する。このため、液体貯槽22,23,24内のビーズ懸濁液は流路25内に流れ出す。液体貯槽22,23,24からの送液量の合計は、ガラスキャピラリーのメニスカスの移動量から算出した。シリンジポンプの吐出量とマイクロチップ2内の送液量との関係について測定した結果を、図9に示す。シリンジポンプの吐出量とマイクロチップ2内の送液量とは比例していて、5%以内の精度で一致した。
マイクロチップ2を10枚用意して同様の実験を行い、シリンジポンプで同じ液量を吐出した時のマイクロチップ2内の送液量のばらつきは、1.4%以内であった。懸濁液の流れを光学顕微鏡で観察したところ、シリンジポンプの吐出速度が0.1μL/minでも脈動がなく、スムーズな液流れになっていた。
【0046】
〔実施例2〕
実施例1で使用したものと同じ形状の非圧縮性媒体収容体1と液体収容体2とを用意して、マイクロチップ2の液体貯槽22又は液体貯槽23に蛍光色素溶液を封入した。実施例1と同様にマイクロチップ1とマイクロチップ2とを重ねて、ステージ上に固定し、マイクロチップ1に接続しているシリンジポンプから水を吐出させた。マイクロチップ2の流路25の合流点30又は合流点31において、液体の流れを光学顕微鏡で観測した。各液体貯槽22,23,24からの流量比は、蛍光色素により液体が可視化されるため測定可能である。その結果、実験範囲であるシリンジポンプの吐出量0μLから25μLの間で、流量比は常に一定に保たれていた。
なお、液体貯槽23にさらにデキストランを添加し、液体の粘度を変えてみたが、粘度0.9mPa・sから10mPa・sの範囲では、流量比に変化は見られなかった。
【0047】
〔実施例3〕
次に、実際の血液分析に適用した例について説明する。検体として、マルチリピッドキャリブレーター(和光純薬工業株式会社製)を使用した。蒸留水で希釈比率を調整し、総コレステロール濃度0〜320mg/dLの間で6段階の濃度のサンプルを用意した。試薬溶液はLタイプワコーCHO・H(和光純薬工業株式会社製)を使用した。非圧縮性媒体収容体と液体収容体は実施例1で使用したものと同じ形状のものを使用した。
【0048】
マイクロチップ2の液体貯槽23に、検体をさらに1/10の濃度に希釈したものを10μL、液体貯槽22に酵素発色液Aを40μL、液体貯槽24に酵素発色液Bを15μLそれぞれ滴下した。そして、液体貯槽22,23,24の開口部に、それぞれPTFEメンブレン27,28,29を貼り付け、封止した。
廃液槽26にシリンジを接続し、マイクロチップ2の流路25内に空気を送り込み、内圧を上昇させた。液体貯槽22,23,24のPTFEメンブレンと検体,試薬液との間の気泡はメンブレンから外に押し出され、気泡が存在しない状態になった。
【0049】
マイクロチップ1及びマイクロチップ2を、図5に示すように分析装置にセットした。温調ステージは、マイクロチップ2の流路25内が37℃になるように温度コントロールした。そして、シリンジポンプより2.4μL/minの速度で水を吐出させた。この流速では、検体と酵素発色液Aとの反応溶液が合流点30と合流点31との間を通過するのに約1分を要し、さらに酵素液Bを加えた反応溶液が合流点31と測定点32との間を通過するのに約1分を要した。独自に構成した熱レンズ信号測定装置(励起光の波長630nm、変調周波数1kHz、プローブ光の波長780nm)を用いて、測定点32において熱レンズ信号の測定を行った。
分析結果を図10に示す。グラフからわかるように、調整した希釈検体中のコレステロール濃度と、熱レンズ測定により得られた熱レンズ信号の出力とには、高い相関性があった。この結果から、該マイクロチップにより血液生化学分析が実施可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の送液装置は、微量の液体を精密に送液することができ、しかも液体収容体以外の部分に液体が接触することはないので、試料間の汚染を嫌う微量分析装置に好適である。本発明の送液装置を分析装置に適用すれば、POC分析等をはじめとする種々の分析を簡便且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の非圧縮性媒体収容体の一例を示す平面図及び断面図である。
【図2】図1の非圧縮性媒体収容体の第二媒体貯槽周辺部分を拡大して示した部分断面図である。
【図3】媒体変位機構の変形例を説明する断面図である。
【図4】本発明の液体収容体の一例を示す平面図及び断面図である。
【図5】本発明の送液装置を用いた分析装置の一例を示す構成図である。
【図6】本発明の送液装置による送液操作の手順を示す模式図である。
【図7】実施例で用いた非圧縮性媒体収容体の流路形状を示す平面図である。
【図8】実施例で用いた液体収容体の流路形状を示す平面図である。
【図9】シリンジポンプの吐出量と液体収容体内の液体の送液量との関係を示すグラフである。
【図10】実施例2で測定した標準血清中の総コレステロール濃度と熱レンズ信号値との関係を示すグラフである。
【図11】流路内の化学反応(生化学反応)を電気的に測定するための電極を備えた液体収容体の一例を示す平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 非圧縮性媒体収容体
2 液体収容体
3 シリンジポンプ
4 チューブ
5 レーザー出射部
6 光学検出部
7 温度調節ステージ
8 第一媒体貯槽
9,9a,9b,9c,9d 非圧縮性媒体流路
10,11,12 第二媒体貯槽
13,14,15 ダイアフラム部材
16 チューブコネクター
17 非圧縮性媒体
18 弾性膜
19 ピン
20 密閉容器
21 非圧縮性媒体
22,23,24 液体貯槽
25 流路
26 廃液槽
27,28,29 隔膜
30,31 合流点
32 測定点
33 マイクロシリンジ
35,36 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に囲まれて形成された液体貯槽の容積を変化させることによって、前記液体貯槽に満たされた液体を前記液体貯槽に連結された流路に送る、又は、前記流路若しくは前記流路に連結された別の貯槽に収容された液体を前記液体貯槽に送る送液装置であって、
前記液体貯槽を有する液体収容体と、前記液体貯槽の容積変化を生じさせるための圧力を伝達する非圧縮性媒体を収容する非圧縮性媒体収容体と、を備え、
前記液体貯槽は、前記壁体の少なくとも一部が、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能な弾性を有する隔膜で構成され、
前記非圧縮性媒体収容体は、前記圧力を発生させる変圧手段を備え且つ前記非圧縮性媒体が満たされた第一媒体貯槽と、非圧縮性媒体流路によって前記第一媒体貯槽に連通された第二媒体貯槽と、を備え、
前記液体貯槽と前記第二媒体貯槽とは、前記隔膜を挟んで隣接して配置されており、前記隔膜は、前記変圧手段により前記非圧縮性媒体に加えられた圧力変化に追随して変形するようになっていることを特徴とする送液装置。
【請求項2】
壁体に囲まれて形成された液体貯槽の容積を変化させることによって、前記液体貯槽に満たされた液体を前記液体貯槽に連結された流路に送る、又は、前記流路若しくは前記流路に連結された別の貯槽に収容された液体を前記液体貯槽に送る送液装置であって、
前記液体貯槽を有する液体収容体と、前記液体貯槽の容積変化を生じさせるための圧力を伝達する非圧縮性媒体を収容する非圧縮性媒体収容体と、を備え、
前記液体貯槽は、前記壁体の少なくとも一部が、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能な弾性を有する隔膜で構成され、
前記非圧縮性媒体収容体は、前記圧力を発生させる変圧手段を備え且つ前記非圧縮性媒体が満たされた第一媒体貯槽と、非圧縮性媒体流路によって前記第一媒体貯槽に連通された第二媒体貯槽と、を備え、
前記液体貯槽と前記第二媒体貯槽とは、前記隔膜と前記隔膜に接するように前記第二媒体貯槽に設けられたダイアフラム部材とを挟んで隣接して配置されており、前記ダイアフラム部材は、前記変圧手段により前記非圧縮性媒体に加えられた圧力変化に追随して、前記液体貯槽の内部又は外部に向かって突出するように変形可能であり、前記隔膜は、前記ダイアフラム部材の変形に応じて変形するようになっていることを特徴とする送液装置。
【請求項3】
前記液体収容体は、一対の平板状部材が貼り合わされて構成されており、この一対の平板状部材のうち少なくとも一方は板面に溝を備え、前記溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより前記流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送液装置。
【請求項4】
前記非圧縮性媒体収容体は、一対の平板状部材が貼り合わされて構成されており、この一対の平板状部材のうち少なくとも一方は板面に溝を備え、前記溝を備えた板面を内側にして貼り合わせることにより前記非圧縮性媒体流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−23121(P2006−23121A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199475(P2004−199475)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム マイクロ分析・生産システムプロジェクト」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】