説明

送話器

【目的】音道部で風雑音の共振を低減させて、通話音声の風雑音による通話品質の劣化を防止する。
【構成】マイクロユニット13と、ユニット収納部1と、このユニット収納部1に密着する音道部2とを備え、ユニット収納部11は矩形状平板11の一端にマイクロホンユニット3を収納する円筒部12を有し、音道部2は矩形状平板11に対向して密着する矩形箱型状の音道箱21と、音道箱21の一端に円筒部12と密着する円筒部22とを有し、音道箱21は矩形状平板11との対向面の他端に音通孔25と、音道箱21内を複数の気室26,27に区切るためのスリット29,30を含む複数の隔壁23,24とを有している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は送話器に関し、特に携帯電話機等に使用する風雑音防止用の送話器に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の送話器について図面を参照して説明する。
【0003】図5は第1の従来例を示すブロック図である。
【0004】図5において、この第1の従来例は特開平214400号公報に示されたもので、マイクロホン(51)より音声を電気信号に変換した音声信号を前置増幅回路(52)を介してハイパスフィルタ(58)及びローパスフィルタ(59)に夫々供給する。このハイパスフィルタ(8)は150Hz以上の周波数の信号を通過する如くする共にこのローパスフィルタ(59)は150Hz以下の風雑音の主成分を含む低域周波数信号を通過する如くする。
【0005】このハイパスフィルタ(58)の出力信号を加算回路(61)の一方の入力端子に供給すると共に、このローパスフィルタ(59)の出力信号を自動レベル制御回路(60)を介して加算回路(61)の他方の入力端子に供給する。この場合この自動レベル制御回路(60)はローパスフィルタ(59)の出力信号を可変利得増幅回路(60a)の入力側に供給し、この可変利得増幅回路(60a)の出力信号を加算回路(61)の他方の入力端子に供給すると共にこの可変利得増幅回路(60a)の出力信号をレベル検出回路(60b)に供給し、このレベル検出回路(60b)の検出レベルに応じてこの可変利得増幅回路(60a)の利得を小さくする如く構成する。即ちこの自動レベル制御回路(60)は風雑音がないときにはレベルの減衰がなく、この風雑音のレベルが大きくなるには従って減衰が大きくなる。
【0006】図6は第2の従来例を適用するハンドセットを示し、(a)は第2の従来例のハンドセット内の配置を示す図、(b)は(a)の矢印方向から見た部分矢視図である。
【0007】図6の(a),(b)において、この第2の従来例の適用例は、実開平1−139649号公報に示されたもので、突出した送話面76は、ベース72に連接された送話部73の面上の中心部にその頂点が位置するドーム形に形成されている。この突出した送話面76のドーム形の頂点から受話部74と反対側の方向に若干離間した位置に、音通孔721が開口している。この音通孔721は、前気室78から送話面76に向うにしたがい受話部74から離間する方向に形成されている。
【0008】このようなハンドセット71を用いて通話を行なう場合、通常話者は動電形受話器75から出る通話相手の音声を聞くために受話部74に耳を押しつけた状態となる。このため、話者の頬はベース72の表面近傍に位置するとともに、唇はは送話部73のドーム状に突出した送話面76の受話部74側の面の近傍に位置することになる。この状態において、話者が音声を発すると、息気流は送話部73に向って送られる。ここで、息気流すなわち風の方向は、図中の矢印Aで示すように、かなりの指向性をもって突出した送話面76の受話部74側の側面に当たることになる。ところが音通孔721の開口部は突出した送話面76の頂点よりも受話部74側に離れた点に位置しているとともに、音通孔721は前気室78から送話面76に向うにしたがい受話部74から離間する方向に形成されている。したがって、風が直接音通孔721内部に入り込むことを防止することができ、この音通孔721内での乱気流の発生を抑制し雑音の発生を防止することができる。また、唇と音通孔721との距離が極めて近いために、音声そのものはほとんど無指向性の状態となり、音声信号自体の劣化はほとんど生じない。さらに、余分な部品の追加や大きなデザイン変更をする必要がないため、安価に風雑音を低減することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】この従来の送話器は、第1の従来例では電気回路構成が複雑であり、且つ風雑音を防止中(機能動作中)では周波数特性が変化している為、通話者肉声の音質が変わるので相手側とは異話感が発生してしまうという問題点がある。又、第2の従来例の構造的対策では、通話者の発声息音を低減出来るが、室外で使用する場合に発生する風に対しては一方向の気流に対する対策である為、室外の乱流では効果が少ないという問題点がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の送話器は、マイクロホンユニットと、ユニット収納部と、このユニット収納部に密着する音道部とを備え、前記ユニット収納部は矩形状平板の一端に前記マイクロホンユニットを収納する第1の円筒部を有し、前記音道部は前記矩形状平板に対向して密着する矩形箱型状の音道箱と、前記音道箱の一端に前記第1の円筒部と密着する第2の円筒部とを有し、前記音道箱は前記矩形状平板との対向面の他端に音通孔と、前記音道箱内を複数の気室に区切るためのスリットを含む複数の隔壁とを有し、また、前記音道部が通信端末機の筺体と一体成形され、且つ前記ユニット収納部が前記通信端末機内で位置決めするための突起部を有し、更に、前記ユニット収納部がゴム部材で形成されている。
【0011】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0012】図1は本発明の一実施例が装着された携帯電話機の一部分を示す分解図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1に示す携帯電話機の上部筺体を反転させた場合を示す図である。
【0013】図1,図2及び図3において、本実施例の送話器はユニット収納部1と、ユニット収納部1と密着する携帯電話機の上部筺体31に一体成形された音道部2と、携帯電話機内の電子回路基板33に接続されたマイクロホンユニット3とから成っている。ユニット収納部1はゴム部材で形成され矩形状平板11の一端にマイクロホンユニット3を収納する円筒部12を、他端に電子回路基板33の穴34に位置決めして固定するための突起部11を有している。
【0014】音道部2は矩形状平板11に対向して密着する矩形箱型状の音道箱21と、音道箱21の一端に円管部12と密着する円筒部22とを有し、音道箱21は矩形状平板11の対向面の他端に音通孔25と、音道箱21内を二つの気室26,27に区切るためにそれぞれにスリット29,30を含む隔壁23,24とを有している。
【0015】本実施例の送話器を構成するユニット収納部1及び音道部2は、上部筺体31と下部筺体32とによって挟み込まれて収納される。
【0016】図4は本実施例の送話器を示す等価回路図である。
【0017】図2,図3及び図4において、音通孔25はコイルL1 と抵抗R1 との直列回路に、スリット29はコイルL2 と抵抗R2 との直列回路に、スクリット30はコイルL3 と抵抗R3 との直列回路に、気室26,27,28はそれぞれコンデンサC1 ,C2 ,C3 に、マイクロホンユニット3は抵抗R4 に置換され、全体として音道部2は多段のローバスフィルタと等価である。
【0018】図4に示す等価回路を基にシュミレーションすることにより、スリット29,30の大きさによって、風雑音の周波数特性に対する共振現象を減衰させることができる。
【0019】又、気室26,27,28を設けることにより、マイクロホンユニット3へ風雑音の音圧の減衰を、通話者の発声音圧の減衰よりも大きくすることができる。このような結果、通話者の音質を損わせることなく風雑音を減衰させることができる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、マイクロホンユニットと、ユニット収納部と、このユニット収納部に密着する音道部とを備え、ユニット収納部は矩形状平板の一端に前記マイクロホンユニットを収納する第1の円筒部を有し、音道部は矩形状平板に対向して密着する矩形箱型状の音道箱と、音道箱の一端に第1の円筒部と密着する第2の円筒部とを有し、音道箱は矩形状平板との対向面の他端に音道孔と、音道箱内を複数の気室に区切るためのスクットを含む複数の隔壁とを有することにより、音道部での風雑音の共振をなくすことができ、また、マイクロホンユニットに対する風雑音の音圧の減衰を、通話者の発声音圧による減衰よりも大きくすることができるので、通話者の音質を損わせることなく、風雑音の影響を低減させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が装着された携帯電話機の一部分を示す分解図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1に示す携帯電話機の上部筺体を反転させた場合を示す図である。
【図4】本実施例の送話器を示す等価回路図である。
【図5】第1の従来例を示すブロック図である。
【図6】第2の従来例を適用するハンドセットを示し、(a)は第2の従来例のハンドセット内の配置を示す図、(b)は(a)の矢印方向から見た部分矢視図である。
【符号の説明】
1 ユニット収納部
2 音道部
3 マイクロホンユニット
11 矩形状平板
12 円筒部
21 音道箱
22 円筒部
23,24 隔壁
25 音通孔
26,27,28 気室
29,30 スリット
31 上部筺体
32 下部筺体
33 電子回路基板
34 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロホンユニットと、ユニット収納部と、このユニット収納部に密着する音道部とを備え、前記ユニット収納部は矩形状平板の一端に前記マイクロホンユニットを収納する第1の円筒部を有し、前記音道部は前記矩形状平板に対向して密着する矩形箱型状の音道箱と、前記音道箱の一端に前記第1の円筒部と密着する第2の円筒部とを有し、前記音道箱は前記矩形状平板との対向面の他端に音通孔と、前記音道箱内を複数の気室に区切るためのスリットを含む複数の隔壁とを有することを特徴とする送話器。
【請求項2】 前記音道部が通信端末機の筺体と一体成形され、且つ前記ユニット収納部が前記通信端末機内で位置決めするための突起部を有することを特徴とする請求項1記載の送話器。
【請求項3】 前記ユニット収納部がゴム部材で形成されているいることを特徴とする請求項1または2記載の送話器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平8−111705
【公開日】平成8年(1996)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−246109
【出願日】平成6年(1994)10月12日
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)