説明

送達基板への生体活性剤の塗布

生体活性剤の溶解速度を制御する方法は、生体活性剤を保持する溶液の第1の滴を送達基板の第1の選択された場所に塗布するステップと、生体活性剤を保持する溶液の第2の滴を送達基板の第2の選択された場所に位置決めするステップとを含み、第1の滴の場所及び第2の滴の場所が目標溶解速度に基づいて選択される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[背景]
医薬品の経口投与は、様々な疾患を処置するための治療を提供するのに最も広く用いられている方法の1つである。多くの薬物が、錠剤、カプセル剤、又は液体等の剤形で人間に経口投与される。このような薬物は、口腔投与、舌下投与、又は消化管に放出するように嚥下され得る。多くの医薬品は、マイクログラムからミリグラム範囲の単位用量の1つ又は複数の精製された活性成分を含み、多くの医薬品は、各錠剤又はカプセル剤につき所定量の配合で作られる。このような医薬品の投薬量(doses)は、50mg、100mg等の一定の強度で利用可能であることが多い。
【0002】
このように小さい単位用量を効果的に取り扱い分配するために、通常の製造方法は、既知の量の活性成分を賦形剤又は希釈剤と一般に呼ばれる種々の固体物質及び/又は液体物質に混合することを含む。さらに、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、安定剤、緩衝剤、防腐剤等の他の材料も活性成分と混合することができる。これらの材料は、治療上不活性且つ無毒であり、製薬において重要な役割を果たすことができるにもかかわらず、その使用は問題となる場合がある。例えば、希釈剤の使用は通常、連続希釈を伴い、希釈ごとに、活性成分の濃度が制御されずにばらつきが増し得る。さらに、十分に混合するには、均一な投薬量を生成するために複雑な手順及び高価な装置が必要である。既知の処理方法では、成分が過剰な熱に複数の期間にわたって(for durations)曝される場合があり、これは特定の活性成分を破壊する場合がある。混合装置におけるホットスポットも、生成される投薬量のばらつきの原因となり得る。したがって、混合装置を冷却する必要があり得るか、又は過剰な熱を防止するために生産速度を遅くする必要があり得る。種々の希釈、混合、及び装置設定を厳密に管理することが、投薬量の正確度及び精度の十分な制御を維持するのに必要である。
【0003】
治療上不活性な材料は、活性成分との潜在的な不適合性を判断するために使用前に評価しなければならない。例えば、潤滑剤又は崩壊剤等のこれらの材料には、活性成分のバイオアベイラビリティに関する問題のあるものがあり得る。新薬の検定(certification)は、長い時間及び高い費用がかかるプロセスであり、新薬の有効性及び安全性の両方を確認するために設計された動物実験及び化学試験を伴う。医薬品の特徴は、製造及び/又は梱包の変化により影響を受ける場合があるため、承認プロセスは、特定の製造及び梱包プロセスに対する承認を制限する。したがって、従来の製薬システム及びプロセスでは、剤形の属性を迅速且つ容易に変える能力は極めて限られている。
【0004】
治療域の狭い薬剤は、安全且つ効果的であるように正確に投薬しなければならない。服用者が有効量未満しか服用しない場合、所望の効果が生じない可能性が高い。他方、服用者が有効量よりも多く服用した場合、毒性作用の危険性が高まる。強力な薬剤の投薬量制御は、固体剤形を作るときに問題となることが多い。少量の材料を大量の賦形剤と均一に混合しなければならない。これらの混合及びその後の剤形形成(dosage formation)プロセスでは、投薬量は意図される表示用量の±15%以上となる場合があり、丸薬ごとの用量のばらつきは6%の相対標準偏差よりも大きくなる場合がある。これは、治療域の狭い薬剤には不十分である。このような表示偏差及び丸薬ごとの不一致により、米国薬局方等の組織により定められている基準に合わない薬剤ができる可能性がある。薬剤濃度が高すぎるか又は低すぎる医薬品に対して、FDAにより多くのジェネリック医薬品の配合が拒絶及びリコールされていることは、正確度及び精度が依然として従来の製薬プロセスにおける課題であることを証明している。
【0005】
医薬品の放出プロファイルをカスタマイズすることができることが有利であり得る。例えば、活性成分の濃度が服用者の体内で24時間以上にわたって治療域内に保たれるように活性成分を放出できる場合、服用者は医薬品を1日に1回服用するだけでよい。別の例として、一部の医薬品は、服用者によりほぼ瞬時に吸収された場合に最も効果的であり得る。したがって、活性成分の溶解速度を高めることにより、医薬品の有効性を向上させることができる。従来の剤形及び製造技法は、服用者がその剤形を摂取したときの活性成分の溶解速度の制御が限られていることを特徴とする。したがって、このような薬剤の放出プロファイルを制御することは困難である。さらに、高い溶解速度に関連して速い放出プロファイルを達成することは困難である。
【0006】
薬剤溶解速度を高めるための従来の試みは、薬剤を物理的に粉砕してミクロンサイズ以下の粒子を得ることに依拠してきた。これは、剪断及び熱応力により薬剤の劣化を引き起こす場合がある。さらに、5ミクロン未満の粒子は凝集する傾向があり、これは微粉化の利益を打ち消す。凝集は懸濁液又は乳濁液の形成により抑えることができるが、このような液体は貯蔵寿命が短い場合があり、このような液体を投与する従来の方法は好まれていない。軟質ゼラチンカプセルを用いて溶液中に薬剤を保ってもよいが、これらの液体形態は、固体状態の配合物と比較して熱劣化が早い可能性がある。
【0007】
薬剤溶解速度を高める試みとして、小粒子を生成するために噴霧乾燥及び凍結乾燥も用いられてきた。しかしながら、凝集が依然として問題である。別の手法は、有機溶剤中で薬剤を溶解し、それに続いて、水又は薬剤の溶解度が低い他の何らかの混和性溶剤を加えることにより沈殿させることに依拠している。しかしながら、この方法で小粒子を生成することは、困難又は不可能であることが多い。さらに別の代案は、活性薬剤実体(entity)とシクロデキストリンのような包接剤との錯体形成を行うことにより、薬剤の溶解速度を高めることである。これを成功させるには、薬剤分子がシクロデキストリン環に包接されやすくなければならない。その場合でも、薬剤−シクロデキストリン錯体の安全性を広範囲にわたって試験しなければならず、これには長い時間及び高い費用がかかり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[詳細な説明]
図1は、生体活性剤を送達基板に塗布するようになっているシステム10を概略的に示す。この説明のために、「生体活性剤」という用語は、人間等の動物の生体機能に影響を及ぼす組成物を説明するために用いられる。生体活性剤の非限定的な例は、動物の生理学的状態を変えるために与えられる、薬剤等の薬学的物質である。生体活性剤は、任意のタイプの薬剤、薬物、薬品、ビタミン、栄養補給剤、又は動物に影響を及ぼすことができる他の組成物であり得る。
【0009】
生体活性剤がその所望の結果を得るためには、通常、生体活性剤を対象の生物学的部位に送達しなければならない。現在使用されている薬剤の圧倒的多数が固体の摂取可能物である。これらの薬剤を血流中に吸収させて、対象の生物学的部位に搬送するためには、通常、これらの薬剤をまず溶解してから腸壁に透過させなければならない。薬剤は、薬剤が肝臓を通過すると血流から除去されるときに起こる初回通過代謝を避ける必要もある。
【0010】
現代のハイスループットスクリーニング及び組み合わせ化学創薬方法により、特異性の高い強力な薬剤が生産されている。標的細胞部位に対する親和性が高まると、化合物の親油性は高くなる傾向がある。反対に、化合物の水溶解度は低くなる傾向がある。化合物の水溶解度が低下すると、通常はそれに対応して化合物の溶解速度も低くなる。溶解速度の低い薬剤は、治療量で吸収されずに消化器系を通過する可能性がある。したがって、溶解速度の高い生体活性剤を送達する方法が望ましい。薬剤候補は、その特異性、透過性、溶解度、及び溶解速度を高めるために化学修飾されることが多い。薬剤候補が改良されると、これら所望の因子間でのトレードオフがなされる。明らかに、他の特性に悪影響を及ぼさずに1つ又は複数のこれら所望の特性を改善するために用いることができる方法が、大変望ましい。
【0011】
上述のように、システム10は、生体活性剤を送達基板に塗布するようになっている。本明細書で用いる場合、「送達基板」は、1つ又は複数の生体活性剤を塗布することができる媒体を説明するために用いられる。送達基板は、ポリビニルアルコール膜、ヒドロゲル膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、又は用途に合わせた他の生体適合性膜等の受容層で被覆することができる。送達基板、1つ又は複数の塗布された生体活性剤、及び他の塗布された物質は、剤形と総称し、動物である服用者が服用することができる。図2は、送達基板14及び塗布された生体活性剤16を含む、このような剤形12を概略的に示す。剤形は、1つ又は複数の補助成分も含むことができることを理解されたい。
【0012】
図3に示すように、送達基板は、剤形を製造するために所望の量の生体活性剤を塗布することができる複数の個別の用量部20を含むシート18として構成することができる。生体活性剤は、複数の用量部それぞれに塗布することができ、次に、1人又は複数人の服用者に個別に送達するために、用量部を互いに分離することができる。シート18は、非限定的な例として提供されており、投薬量は種々の形態を取る送達基板に塗布することができる。例えば、剤形を高速製造するために基板のロールを用いることができる。複数回分の投薬量を対応する複数の異なる用量部に塗布する代わりに、特定の時点で1回分の投薬量の生体活性剤のみを送達基板に個別に塗布することも、本開示の範囲内である。換言すれば、剤形は、一度に1つ若しくは同時に複数、又は少なくとも1つずつ調製することができる。
【0013】
剤形は、経口送達用、局所送達用、又は任意の他の適当な送達モード用に構成することができる。経口送達用に構成される場合、剤形は、経口摂取するように構成してもよく、又は生体活性剤が放出された後に口腔から取り出されるように構成してもよい。経口摂取用に構成される場合、送達基板は、体液及び/又は酵素中で溶解又は分解するように構成してもよく、又は体外へすぐに排出される非分解性の材料でできていてもよい。送達基板は、親水性で、水中で容易に崩壊してもよい。さらに、送達基板は、溶解又は崩壊が胃液又は小腸(upper intestine)液のpHで可能であるか又は高められるように構成することができる。
【0014】
送達基板の作製に用いられる材料は、最終剤形を改善するように選択され得る。例えば、基板の特性は、衝突する滴を最適の方法で受け止めるとともに、必要に応じて対応する溶剤を放出するように調整することができる。送達基板は、送達基板上に分配される生体活性剤との意図せぬ相互作用を最小にするように構成され得る。送達基板は、長期間にわたって、高温で、且つ高レベル又は低レベルの相対湿度で、安定したままであるようにも構成され得る。さらに、送達基板は、微生物が成長しにくいように構成することができる。さらに、送達基板は、引張り強度及び引裂き強度等の適当な機械的特性を有するように構成され得る。
【0015】
送達基板は、ポリマー及び/又は紙の有機膜形成剤を含み得る。いくつかの実施形態では、無機膜を用いてもよい。送達基板の非限定的な例としては、デンプン(天然及び化工)、剥離可能な裏地等を有するか又は有さないグリセリン系シート等、ゼラチン、小麦グルテン等のタンパク質、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトセル等のセルロース誘導体、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、アルギン、プルラン(オーレオバシディウム・プルランスの種々の株により産生される細胞外水溶性微生物多糖)等の他の多糖類、ソルビトール、海草、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル(PVME)、ポリ(2−エチル2−オキサゾリン)、ポリビニルピロリドン等の合成ポリマーが挙げられる。食用の送達基板のさらなる例は、乳タンパク質、ライスペーパー、ポテトウエファーシート、並びに再構築された果物及び野菜からできた膜に基づいたものである。上記に列挙した基板材料及び他の基板材料の1つ又は複数を、いくつかの実施形態で組み合わせて用いてもよいことを理解されたい。
【0016】
水膨張性の発泡体を含む摂取可能な送達基板を用いることにより、服用者が服用すると生体活性剤が迅速に放出されることを容易にすることができる。このような材料の例は、SURGICEL(登録商標)という商標でJohnson and Johnsonから市販されている酸化再生セルロース、及びGELFOAM(登録商標)という商標でPharmacia Corporationから市販されているブタ由来ゼラチン粉末である。
【0017】
図1に概略的に示すように、システム10は、データインタフェース30、制御サブシステム32、位置決めサブシステム34、及び堆積(depositing)サブシステム36を含む。システム10と同様のシステムが、紙上に非常に小さいインク滴を印刷して画像を形成するために用いられている。このようなシステムは、「インクジェット」印刷システムと一般に呼ばれている。本明細書で説明する場合、紙上にインクを印刷するために用いられる技術が、生体活性剤を送達基板に塗布するようになっていてもよい。このような塗布システムは、高性能であり、大量生産を行う工業用途及び/又は少量生産を行う個人用途で用いることができる。高度に発達した印刷方法は、再現性が非常に高く高速なプロセスで、薬剤を生産するとともに薬剤生産を制御するようにすることができる。さらに、インクジェット印刷技術の進歩を利用して、生体活性剤を送達基板に精密に塗布することにより、生体活性剤の溶解速度の制御を改善することができることを理解されたい。
【0018】
制御サブシステム32は、プリント回路基板、プロセッサ、メモリ、特定用途向け集積回路等、受け取った情報40に従って送達基板への生体活性剤の塗布を行う構成部品を含むことができる。情報40は、有線若しくは無線データインタフェース30、又は他の適当な機構を介して受け取ることができる。このような情報は、1つ又は複数の塗布パラメータに従って特定の生体活性剤を送達基板に塗布する命令を含み得る。このような命令を受け取ると、制御サブシステムは、位置決めサブシステム34及び堆積サブシステム36を協働させて、それにより、生体活性剤を送達基板14のシート18に塗布し、したがって服用者が服用することができる剤形12を製造することができる。
【0019】
位置決めサブシステム34は、堆積サブシステムと生体活性剤が塗布される送達基板との相対位置決めを制御することができる。例えば、位置決めサブシステム34は、堆積サブシステムの塗布ゾーン42を通して送達基板を進めるシートフィードを含むことができる。位置決めサブシステムは、付加的又は代替的に、送達基板に対して堆積サブシステム又はその一部を横方向に位置決めする機構を含むことができる。送達基板と堆積サブシステムとの相対位置は、生体活性剤が送達基板の所望の部分のみに塗布されるように制御することができる。
【0020】
図4は、生体活性剤16を送達基板に噴射するようになっている1つ又は複数のノズル52を含み得る、噴射カートリッジ50の形態の例示的な堆積サブシステムの一部を概略的に示す。生体活性剤は、エタノール等のキャリア溶剤56を含む噴射溶液54の構成要素として噴射することができる。生体活性剤は、噴射「滴」の形態で送達基板に噴射することができる。ノズル52のサイズ、幾何学的形状、及び他の態様は、所望の体積を有する滴を確実に噴射するように設計することができる。現在の塗布システムは、ナノリットル単位からフェムトリットル単位もの小ささに及ぶ滴を塗布することができ、さらに小さい滴サイズも可能であり得る。各ノズルは、噴射された滴がほぼ同じ体積を有するように同様に設計され得る。
【0021】
図4に示すように、ノズルは、制御サブシステムに動作可能に接続される半導体抵抗体等のエジェクタ58と関連付けることができる。エジェクタ58は、噴射溶液54の滴をノズル52から噴射させるように設計される。エジェクタとして抵抗体を利用する実施形態では、制御サブシステムは、1つ又は複数のパルスで抵抗体に電流を流すことにより抵抗体を作動させることができる。各エジェクタは、エジェクタに繋がる導電路を介して噴射パルスを受け取るように構成することができる。制御サブシステムは、受け取った命令に基づいて、このような導電路を通して個々のエジェクタに電流を送ることができる。噴射パルスを用いて、エジェクタに噴射溶液を加熱させて溶液の少なくとも一部を気化させることで、噴射気泡を形成させることができる。噴射気泡の膨張により、溶液の一部を対応するノズルから送達基板に噴射させることができる。溶液の噴射は、送達基板の所望の部分に発射するように精密にタイミングを取ることができ、その相対的位置は位置決めサブシステムにより高精度で制御することができる。制御サブシステムは、塗布信号の形態で受け取った命令等の受け取った命令に従って、種々のエジェクタに、対応するノズルを通して生体活性剤を送達基板の所望の部分に噴射させることができる。
【0022】
噴射滴の形態で生体活性剤が送達基板に塗布されると、送達基板上に生体活性剤の「ドット」が形成される。「ドット」という用語は、送達基板と接触した後の生体活性剤の滴を指すために用いられる。ドットは、液体形態であっても固体形態であってもよい。例えば、液体の滴が通常は基板に塗布され、基板と接触するとこれが「ドット」と呼ばれる。液体ドットは、その後、乾燥するか又は他の形で定着し得るため、送達基板上で乾燥ドットとなる。いくつかの実施形態では、滴中の生体活性剤は、媒体の表面付近の薄い層に留まる。しかしながら、一部の媒体は多孔質であり得るため、滴が媒体と接触すると、生体活性剤が外側に広がり、且つ/又は媒体に浸透することで、ドットゲイン及び/又はドット浸透(dot penetration)が生じる可能性がある。ドットゲインとは、媒体上のドットの初期直径に対する最終直径の比である。ドット浸透とは、滴が媒体に染み込む深さである。ドットの物理的特性及び/又は化学的特性により、生体活性剤の透過性及び特異性を阻害することなく溶解速度を高めることができる。ドット配置の制御、ドットの表面対質量(surface-to-mass:表面積対質量)比が大きいこと、及びドットのデジタル質量堆積制御を用いて、製薬産業が直面している溶解速度及び用量制御の大きな問題に対処することができる。
【0023】
図5及び図6は、送達基板14上の例示的なドット60を概略的に示す。ドット60には、噴射溶液がポリテトラフルオロエチレンを有する送達基板又は他の非湿潤性表面に塗布される場合のように、ドットゲインもドット浸透も事実上ない。本明細書では、簡潔にするためにこのような非湿潤性表面への塗布が用いられる。本開示に記載される一般原理は、噴射溶液が湿潤性送達基板に塗布される場合も適用することができることを理解されたい。
【0024】
例示的なドット60は、半径Rを有するほぼ円形の水平断面と、高さHを有するほぼ楕円形の鉛直断面とを特徴とする偏球の半分である。ドット60の幾何学的表面積(S)は、以下の式から得られる。
【0025】
【数1】

【0026】
以下でより詳細に説明するように、ドットの幾何学的表面積は、生体活性剤の溶解速度等の生体活性剤の属性に影響を及ぼすことができる。ドット60は非限定的な例として提供されており、ドットの他の幾何学的形状も可能であることを理解されたい。形状の異なるこのようなドットの幾何学的表面積も、生体活性剤の溶解速度等の生体活性剤の属性に影響を及ぼすことができる。
【0027】
堆積サブシステムは、対応する噴射溶液中に保持され得る1つ又は複数の異なる生体活性剤を塗布するようになっていてもよい。いくつかの実施形態では、堆積サブシステムは、異なる生体活性剤を対応する送達基板に塗布し、且つ/又は滴体積の異なる溶液を噴射するようにそれぞれが構成される、2つ以上の噴射カートリッジを含んでもよい。さらに、堆積サブシステムは、種々の生体活性剤を対応する送達基板に塗布するように個別に構成される種々の噴射カートリッジを交換可能に収容するように構成されてもよい。交換可能な噴射カートリッジを用いて、空の噴射カートリッジを完全に充填されている充填カートリッジと交換することもできる。生体活性剤を送達基板に塗布する他の機構を利用することは本開示の範囲内であり、噴射カートリッジ50は非限定的な例として提供されている。例えば、堆積サブシステムは、圧電噴射素子により行われる振動変位等、非熱的機構を介して流体噴射を行うように構成されるエジェクタを有する噴射ヘッドを利用する、噴射カートリッジを含んでもよい。
【0028】
本明細書で説明するように、システム10等の塗布システムを用いて、正確に制御された投薬量、溶解速度、及び投与プロファイルで、生体活性剤を含む剤形を調製することができる。特に、システム10を用いて、溶解速度が高く投薬量が非常に正確な剤形を調製することができる。塗布システムは、噴射溶液の小滴を送達基板に非常に精密に配置することができる。塗布デバイスによる生体活性剤の噴射は、小分子の生体活性剤も大分子の生体活性剤も破壊しないことが証明されている。この方法は、生体活性剤の効力に影響を及ぼし得るか又は望ましくない副作用をもたらし得るような生体活性剤の化学修飾は一切伴わない。これは、薬剤の溶解及び適当な基板への再沈殿と同様である。
【0029】
デジタルアドレス可能塗布技術により、用量制御のための生体活性剤の再現性が高い堆積が可能となる。塗布システムは、滴サイズ及びノズル故障を積極的に測定し、これらの情報を用いて、いかなる不規則も補正及び/又は補償することにより正確な用量を達成することができる。さらに、同じ用量を、事実上無制限の異なるドットパターン、ドットサイズ、ドット形状等で送達基板に塗布することができる。したがって、溶解速度等の剤形の属性は、投薬量を構成する生体活性剤の量とは無関係に制御することができる。
【0030】
送達基板上の生体活性剤の堆積特徴は、生体活性剤が送達基板に塗布される方法により影響を受ける可能性がある。本明細書で用いる場合、「堆積特徴」は、送達基板に塗布されたときの生体活性剤の物理的特徴及び/又は化学的特徴を指すために用いられる。堆積特徴は、溶解速度等の生体活性剤の属性に影響を及ぼすことができる。堆積特徴の非限定的な例としては、ドットサイズ、ドットの幾何学的表面積、ドット質量、ドットの表面対質量比、ドット地形(topology)、ドットの地形的表面積、ドットの幾何学的形状、ドットの層構成(layering)、結晶形態、溶解度、並びに生体活性剤と送達基板との物理的相互作用及び/又は化学的相互作用(例えば、共有結合、イオン結合、水素結合)が挙げられる。このような堆積特徴は、剤形の属性に大きな影響を与えることができる。例えば、溶解速度は、以下のNoyes−Whitneyの式により証明されるように、表面積に正比例する。
dc/dt=k×S×(Cs−Cb
式中、dc/dt=溶解速度
k=溶解速度定数
S=表面積
s=飽和濃度
b=溶液全体の濃度
したがって、堆積特徴を制御できることにより、剤形の生体活性剤の溶解速度等、剤形の属性を高度に制御することができるようになる。
【0031】
生体活性剤は、高度に制御された方法で送達基板に塗布することができる。特に、堆積サブシステムは、所望のサイズを有する滴を噴射するように構成することができる。上述のように、滴サイズを非常に小さくすることができ、滴サイズが小さいとドットサイズを小さくすることが容易になり得る。さらに、位置決めサブシステムが堆積サブシステムと協働して、滴を基板上に精密に配置することができる。堆積サブシステムは、特定の生体活性剤に望まれる滴サイズを生成するように構成することができる。塗布される生体活性剤の滴サイズ及び滴パターン、並びに他の特徴の再現性は高い。したがって、一貫性が高い剤形を製造することができる。
【0032】
生体活性剤が送達基板に塗布される方法及び/又は塗布システムの構成に対応する塗布パラメータは、生体活性剤が送達基板上で所望の堆積特徴を有するように設定することができる。塗布パラメータは、設定された塗布パラメータに従って生体活性剤が送達基板に塗布されると達成することができる目標溶解速度に基づいて設定することができる。堆積特徴、したがって溶解速度に影響を及ぼすように設定され得る塗布パラメータの非限定的な例としては、ノズルサイズ、ノズル形状、チャンバサイズ、チャンバ形状、パルス特性、発射周波数、発射変調、バースト数(特定の周波数で特定の期間にわたり発射される滴の数)、発射エネルギー、ターンオンエネルギー、パルスウォーミング(pulse warming)、背圧(流体がチャンバ及び/又はノズルに供給される圧力)、基板温度、滴間隔、堆積パターン、パス数、乾燥方法(周囲温度、溶液温度、溶剤蒸気圧等)、パス間の乾燥時間、噴射溶液中の生体活性剤濃度、溶液粘度、溶液の表面張力、及び溶液密度が挙げられる。
【0033】
塗布パラメータは、一次塗布パラメータ及び二次塗布パラメータに編成することができる。一次塗布パラメータは、送達基板上にドットを形成するために利用される広範囲の滴のサイズ又は組成を決定するために選択することができる。一次塗布パラメータの非限定的な例としては、ノズルの幾何学的形状(ノズルの寸法及び形状)、抵抗体のサイズ、発射チャンバの幾何学的形状、乾燥方法、及び生体活性剤の特性が挙げられる。いくつかの一次塗布パラメータは実質的に固定されており、これは、生体活性剤の塗布が開始される前にこれらのパラメータが設定されることを意味する。一次塗布パラメータは、滴のサイズ及び組成の概略(coarse)値又は近似値を概ね決定するように指定することができる。
【0034】
二次塗布パラメータは、上述の広い範囲内の滴サイズのより狭い範囲を決定するために選択することができる。二次塗布パラメータの非限定的な例としては、発射パルスパラメータ(パルスの形状、電圧、電流、又は持続時間)、パルスウォーミングパラメータ、発射周波数、背圧、バースト数、及びエジェクタ基板温度が挙げられる。いくつかの二次塗布パラメータは可変であり、これは、滴サイズ又は他の特徴を許容範囲内に調節するように塗布システムが作られた後で、これらのパラメータを選択的に変更できることを意味する。
【0035】
1つ又は複数の一次塗布パラメータ及び/又は二次塗布パラメータは、送達基板上の生体活性剤の表面対質量比を含む堆積特徴に影響を及ぼすことができる所望のドットサイズを達成するように設定することができる。例えば、塗布された生体活性剤のドットサイズは、比較的小さい滴を送達基板に塗布することにより、比較的小さく維持することができる。現在の塗布システムは、ナノリットル単位からフェムトリットル単位もの小ささに及ぶ滴を塗布することができ、さらに小さい滴サイズも可能であり得る。ノズルサイズ及びチャンバサイズは、小さい滴サイズを達成するように設定することができる例示的な塗布パラメータである。非常に小さい滴を適当な送達基板に塗布することにより、非常に再現性が高く予測可能なプロセスで、非常に大きな幾何学的表面対質量比での生体活性剤の塗布を可能にすることができる。熱噴射カートリッジ又は圧電噴射カートリッジ等の噴射カートリッジから噴射される滴体積のばらつきは、従来技術の塗布方法を用いて以前に達成可能であったばらつきよりも実質的に少なくすることができる。このような滴は、ほぼ均一なサイズのドットを形成することができる。ほぼ均一なサイズのドットを一貫して生成できることは、生体活性剤の所望の溶解速度を得るのに役立ち得る。特に、均一なサイズのドットは、一貫した予測可能な速度で個別に溶解することができるため、複数のドットの溶解速度が実質的に制御される。現在の噴射カートリッジ製造手法を用いた場合、滴体積の標準偏差は平均滴体積の約10%〜約25%以下であり得るが、さらに小さい標準偏差が可能である。対照的に、エアロゾル噴霧等、医薬品を送達媒体に塗布する他の方法は、平均滴体積の約40%以上の標準偏差を有し得る。特に、このような方法は、本明細書で説明されるシステム及び方法を用いて達成可能な15%以下の標準偏差を常にもたらすことが可能ではなかった。換言すれば、本明細書で説明されるように精密に製造されたノズルからの溶液の噴射は、他の塗布方法よりも実質的に一貫しており制御可能であり得る。さらに、一貫した滴体積は、ドットの幾何学的表面対質量比の標準偏差がドットの平均幾何学的表面対質量比の約15%未満である場合等に、一貫したドットサイズを得ることを容易にすることができる。
【0036】
ドットサイズは、噴射溶液中に溶解した生体活性剤の濃度を低下させること、及び/又は溶剤除去速度を高めることによっても、比較的小さく維持することができ、これらは、溶剤組成(低引火点)、滴サイズ、乾燥温度、及び/又は蒸気圧等の塗布パラメータにより影響を受ける可能性がある。例えば、滴が小さいほど、それにより比例した液滴表面積により溶剤の除去速度が高くなる傾向があり、温度(例えば溶液、周囲、及び/又は基板)が高いほど、溶剤の蒸発が促進される傾向がある。いくつかの実施形態では、堆積システム36は、IR/対流オーブン等、生体活性剤が堆積された後に不要な溶剤を加熱して送達基板から蒸発させる加熱アセンブリを含むことができる。小さいドットサイズの生体活性剤を塗布することができることにより、同量の生体活性剤を、正味の幾何学的表面積が比較的小さい少数の大きなドットではなく、正味の幾何学的表面積が比較的大きな多数の小さいドットで塗布することができるため、高い溶解速度が可能となる。
【0037】
図7は、小さいドットサイズでどれだけ表面対質量比を大きくすることができ、したがって溶解速度を高めることができるかを概略的に示す。図示のように、ドット60は、V=4πr2hと等しい例示的な円柱体積を有し、ドット70、72、74、及び76はそれぞれ、V=πr2hと等しい例示的な円柱体積を有する。したがって、4つの小さいドットの総体積は大きなドットと同じである。密度が等しいと仮定すると、小さいドットの総質量も大きなドットと同じである。しかしながら、大きなドットは、S=4πr(h+r)と等しい幾何学的表面積を有し、小さいドットの1つの幾何学的表面積は、S=πr(2h+r)と等しい。したがって、4つの小さいドットを合わせた正味の幾何学的表面積は、S=4πr(2h+r)と等しい。上記から分かるように、幾何学的形状が円柱形であると仮定すると、ドットの高さがゼロではない場合、4つの小さいドットの表面積は大きなドットの表面積よりも大きくなる。上記の例は、簡潔にするために幾何学的形状が円柱形であるドットを示している。しかしながら、実質的により複雑な滴の幾何学的形状も可能であり、このような幾何学的形状では、小さい相対ドットサイズで正味の幾何学的表面対質量比を改善することができることを理解されたい。
【0038】
送達基板に塗布される滴の堆積パターンは、送達基板上の生体活性剤の表面対質量比を含む堆積特徴に影響を及ぼすために用いられ得る塗布パラメータの別の非限定的な例である。特に、表面対質量比は、隣接する滴間の間隔を選択することにより制御することができる。隣接する滴間の間隔が十分であれば、幾何学的表面対質量比を小さくする傾向がある隣接するドット同士が合体するのを防止することができる。反対に、滴を互いに十分に近接して塗布することにより、同じ正味質量を有する分離したドットよりも小さい幾何学的表面対質量比を有するように、生体活性剤を効果的に増加させてもよい。同量の生体活性剤を、種々の表面対質量比に対応することができる種々のドット間隔で塗布することにより、生体活性剤の堆積特徴のカスタマイズを可能にすることができる。塗布システムは、常に送達基板上の意図される標的の少なくとも約1×10-5メートル(10ミクロン)以内等で、滴を精密に配置することができる。このような精密な配置により、再現性が高いドットパターンの形成が促される。
【0039】
塗布システムが1インチにつき約2400個の個別の滴を精密に配置するには、約1×10-5メートルの滴の配置、より厳密には滴精度で十分である。1インチにつき2400滴の塗布システムでは、約11ミクロンのドット間隔をもたらすことができる。より精密な滴の配置は、配置の正確度を向上させるように1つ又は複数のパラメータを設定することにより可能である。例えば、精度をより高めるために長いボアを有するノズルを設計することができる。堆積サブシステムのノズルを頻繁に清掃することによりノズルの周りに溜まり得る液垂れ又は汚れを減らし、噴射の正確度に影響を及ぼすことにより、継続して精度を維持することができる。精密な滴の配置は、滴発射速度(速度及び方向)を制御することによっても影響を受け得る。さらに、ノズルと媒体との間の距離を縮めると、滴の着地面積を最小にすることにより、滴速度のばらつきが滴の精度に及ぼす影響を減らすことができる。滴は、空気抵抗等の要因により、ノズルと媒体との間で減速する可能性がある。滴の体積が小さいほど、落下の勢いが小さくなるため大きな減速度に対応することができる。滴は、平均よりも高速で発射されると、目標の場所のわずかに手前で媒体に着地し得る。反対に、滴は、平均速度よりも低速で発射されると、目標の場所よりも後方に着地し得る。さらに、滴の軌道及び/又は媒体とノズルとの相対速度に生じるばらつきは、滴の発射距離が長いほど大きくなる可能性がある。したがって、ノズルと媒体との間の距離を縮めることは、滴の精度を制限し得るいくらかのばらつきを減らすのに役立つことができる。しかしながら、一部のタイプの媒体は膨張し得るため、ノズルは媒体への衝突を避けるのに十分な間隔が置かれ得る。ノズルと媒体との間の距離が約0.5〜1.3ミリメートルであれば、滴の配置のばらつきを許容可能なレベルに制限しながら十分な間隔が与えられることが分かっている。上述の例示的なパラメータを制御することにより、他の既知の塗布方法と比較して滴を非常に精密に配置することができる。
【0040】
滴は、互いに離間するように配置することができるか、又は、互いに少なくとも部分的に重なるように意図的に配置することができる。いずれの場合も、噴射される各滴は、所望の場所に精密に配置することができる。滴の配置は、エアロゾル噴霧による送達等の他の塗布方法を用いる場合のように、必ずしも成り行き任せにはならない。精密な滴の配置を用いて、所望のドットパターン又はドット間隔を達成することができる。2つ以上の隣接する滴の相対間隔で、塗布されるドットの表面対質量比を変えることができ、したがって塗布される生体活性剤の溶解速度を制御することができる。
【0041】
例えば、図8は、4つの異なる表面対質量比に対応する4つの代替的なドットパターンを概略的に示す。ドット80a及び80bは、互いに離間しており、重なっていない。ドット82a及び82bは、より近接しており、わずかに重なっている。ドット84a及び84bは、さらにより近接しており、2つのドット間にはかなりの重なりがある。最後に、ドット86a及び86bは、互いに重なっており、完全に重なり合っている。概して、重なりの量が増えると表面対質量比は小さくなる。したがって、ドット80a及び80bは、最も大きな総表面対質量比を有し、ドット86a及び86bは最も小さい総表面対質量比を有する。上述のように、溶解速度は表面対質量比に関係する。したがって、ドット間隔は、所望の溶解速度を得るために選択することができる。
【0042】
2つのドットに関して説明したが、所望の溶解速度をさらに得るために3つ以上のドット間の間隔を選択してもよいことを理解されたい。塗布される全てのドット間の間隔は、全てのドットに関してほぼ同じでもよく、又は反復パターン等、間隔が変わるパターンでドットを配置してもよい。いずれの場合も、滴の配置を高度に制御することにより、隣接するドット間の距離の標準偏差が隣接するドット間の平均距離の約15%未満であるように滴を塗布することができる。この文脈で用いられる場合、隣接するドットは、他のドット対と同じ間隔を有することが意図されるドット対を意味する。意図的に異なる距離で離間したドットは、この文脈では隣接するとはみなされない。上述のように、意図的に重ねることができるドットもある。滴の配置を高度に制御することにより、重なったドットの合わせた幾何学的表面積の標準偏差が重なったドットの合わせた平均幾何学的表面積の約15%未満であるように滴を塗布することができる。
【0043】
種々のサイズを有するドット(例えば、種々のサイズを有する滴に対応して)を、所望の溶解速度を得るために精密に位置決めしてもよい。図8はドットを円柱として概略的に表しているが、実際のドットの幾何学的形状ははるかに複雑であり得ることを理解されたい。とはいえ、滴の配置、したがってドットパターンを精密に制御する能力を用いて、事実上いかなるドットの幾何学的形状の相対溶解速度も制御することができる。
【0044】
ドット形状及び/又はドット地形もまた、塗布パラメータにより影響を受ける可能性がある堆積特徴である。本明細書で用いる場合、ドット形状は表面の詳細に関係なくドットの全体的な形状を指し、ドット地形は表面の詳細を指すために用いられる。ドット形状及び/又はドット地形は、ドットの地形的表面積に大きな影響を及ぼすことができる。凹凸の大きい(highly textured)表面は、平滑な表面よりもはるかに大きな表面積を提供することができる。地理的表面積の量は通常、ドットが溶解する確率に直接対応する。換言すれば、多くの側面が露出した、したがって3次元結晶格子があまり安定していないドットは、露出がより少なくより安定したドットよりも容易に溶解する可能性が高い。形状及び/又は地形に基づいて地形的表面積に影響を及ぼすように設定することができる塗布パラメータとしては、噴射溶液中の生体活性剤濃度と、滴サイズ及び溶剤除去速度に影響を及ぼすようなパラメータとが挙げられる。
【0045】
ドット地形及び/又はドット形状は、ドットの結晶形態により影響を受ける可能性がある。いくつかの生体活性剤は多くの結晶形態を有する。非晶質形態(非晶形)の生体活性剤は最も速く溶解し得るが、最も不安定で、一貫した再生、貯蔵、及び送達が困難でもあり得る。適した非晶形は通常、プラリン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の高分子膜形成剤を含むがこれらに限定されない賦形剤とともに生体活性剤を乾燥させることにより、形成することができる。一部の水和物及び溶剤和物は、純粋な結晶形よりも多少安定している可能性があり、水は貯蔵中に吸収又は脱着することができる。溶剤配合、滴サイズ、除去速度、及び結晶鋳型等の塗布パラメータを調整することにより、異なる結晶形態を得ることができる。結晶形成の動力学により、結晶形を種々の構造又は構造の混合物にすることができる。所望の状態は、十分な安定性を維持しつつ溶解速度を最適にするように選択することができる。
【0046】
塗布システムが、溶液の乾燥方法及び/又は液晶形態及び/又はドット地形に影響を及ぼし得る他の塗布パラメータを高度に制御しながら、精密に制御された溶液配合物を所望のパターンで一貫したサイズの滴として精密に配置できるため、所望の非晶形又は結晶形を確実に形成及び安定化することができる。換言すれば、送達基板に塗布される複数のドットそれぞれの結晶形態及び/又はドット地形は、地形的表面積の標準偏差が送達基板に塗布される全てのこのようなドットの平均の地形的表面積の約15%未満であることを特徴とし得る。
【0047】
本明細書で開示されるように、生体活性剤の塗布は、バルクプロセスよりも高い再現可能性及び/又は一貫性で、運動対平衡現象(kinetic versus equilibrium phenomena)を促進(drive)及び制御し得る。動力学及び/又は溶剤除去は、滴サイズ、滴パターン、溶液配合、蒸気圧、温度等の適当な塗布パラメータの選択により厳密に制御され得る。生体活性剤を含有する溶液の個々の滴は、送達基板に個別に塗布することができるため、望ましくない構成へのバッチ全体の結晶化を促進するような望ましくない結晶形(すなわち、鋳型効果を受ける)危険性が低い。さらに、送達基板への小滴の塗布は、このような塗布方法に関連する動力学が非常に高速であるため、平衡効果を最小にすることができる。
【0048】
図9は、異なる地形的表面積を有する2つのドットを概略的に示す。特に、ドット90は、特定の結晶形に現れ得るように、非常に不規則な地形を特徴とする。いくつかの実施形態では、非常に不規則な地形は、小さい滴サイズ及び/又は速い溶剤除去速度に起因し得る。ドット92は、ドット90と比較して比較的平滑な地形を有する。したがって、ドットの他の堆積特徴がほぼ同様であると仮定すると、ドット90はドット92よりも速い溶解速度を有することができる。ドット90及びドット92は、非常に概略的な形態で図示されていることを理解されたい。ドットの実際の地形は、ドットを形成する生体活性剤、送達基板、及び/又は他の塗布パラメータに応じて大きく変わることができる。
【0049】
送達基板の選択は、堆積特徴に影響を及ぼすように設定することができるさらに別の塗布パラメータである。例えば、送達基板は、塗布される生体活性剤が基板の隙間空間(間隙)に封入されるか又は閉じ込められる(entrain)ように選択されてもよく、又は生体活性剤がこのような空間に入り込むことができないように選択されてもよい。生体活性剤の少なくとも一部が封入されると、生体活性剤の露出する表面積は比較的少なくなるため、溶解速度が低下し得る。したがって、遅い溶解速度が望まれる場合は比較的多孔質の基板が選択され得る。必ずしもドットを封入するわけではないが受容基板の上又は中にドットを捕捉することにより凝集を最小にするように構成される送達基板により、比較的高い溶解速度も容易に実現することができる。
【0050】
所望の溶解速度が得られるまで1つ又は複数の塗布パラメータを変えて行われる実験から、所望の溶解速度を発見することができる。例えば、ノズルサイズ及び/又はチャンバサイズ等、滴サイズに影響を及ぼすパラメータを変えることができる。さらに、溶液濃度、滴パターン、及び/又は乾燥温度等の付加的又は代替的なパラメータを変えることができる。設定されたパラメータに応じて、試験剤形を形成することができる。このような剤形は、所望の溶解速度が得られるまで種々のパラメータ設定で作ることができる。所望の溶解速度が得られたら、試験剤形を作るために用いられたパラメータを用いて、一貫した溶解速度を有する剤形を繰り返し作ることができる。
【0051】
図10は、全体的に100で示す、生体活性剤の溶解速度を制御する例示的な一方法を示すフローチャートである。方法100は、102において、生体活性剤を保持する溶液の第1の滴を送達基板の第1の選択された場所に塗布することを含む。この方法はさらに、104において、生体活性剤を保持する溶液の第2の滴を送達基板の第2の選択された場所に位置決めすることを含み、第1の滴の場所及び第2の滴の場所は、目標溶解速度に基づいて選択される。このような方法を用いて、目標溶解速度又は少なくとも目標溶解速度に実質的に近い溶解速度を有する剤形を製造することができる。
【0052】
本開示は、上記の動作原理及び実施形態を参照して提供したが、添付の特許請求の範囲に定義される精神及び範囲から逸脱せずに、形態及び詳細の種々の変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本開示は、全てのこのような代替形態、変更形態、及び変形形態(variances)を包含することが意図される。本開示又は特許請求の範囲が、「ある(a)」、「第1の」、又は「別の」要素、又はそれらに相当する要素(それらの等価物)を記載している場合、それらは2つ以上のそのような要素を要求も除外もすることなく、1つ又は複数のそのような要素を含むと解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】生体活性剤を送達基板に塗布するように構成される例示的なシステムを概略的に示す。
【図2】送達基板及び塗布された生体活性剤を含む例示的な剤形を概略的に示す。
【図3】複数の剤形を含む例示的なシートを概略的に示す。
【図4】生体活性剤を含む溶液を送達基板に噴射するように構成される例示的な堆積サブシステムの一部を概略的に示す。
【図5】例示的な送達基板に塗布された溶液の例示的な滴を示す。
【図6】例示的な送達基板に塗布された溶液の例示的な滴を示す。
【図7】種々の幾何学的表面積を有する生体活性剤の例示的なドットを概略的に示す。
【図8】種々のドットパターンを有する生体活性剤の例示的なドットを概略的に示す。
【図9】種々の地形的表面積を有する生体活性剤の例示的なドットを概略的に示す。
【図10】生体活性剤の溶解速度を制御する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体活性剤を保持する溶液の第1の滴を送達基板の第1の選択された場所に塗布するステップと、
前記生体活性剤を保持する溶液の第2の滴を前記送達基板の第2の選択された場所に位置決めするステップと
を含み、前記第1の滴の場所及び前記第2の滴の場所が目標溶解速度に基づいて選択される、生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項2】
前記第1の滴及び前記第2の滴は少なくとも部分的に重なる請求項1に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項3】
前記第1の滴及び前記第2の滴は衝突を避けるために離間している請求項1に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項4】
前記溶液の第1の滴を塗布するステップと前記溶液の第2の滴を位置決めするステップとは、前記生体活性剤を保持する溶液を熱噴射素子を用いて加熱するステップを含む請求項1に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項5】
前記加熱された溶液は、ほぼ同じ体積を有する溶液の滴を噴射するサイズにされる少なくとも2つのノズルを介して塗布される請求項4に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項6】
前記溶液の第1の滴を塗布するステップと前記溶液の第2の滴を位置決めするステップとは、前記生体活性剤を保持する前記溶液を圧電噴射素子を用いて変位させるステップを含む請求項1に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項7】
前記変位された溶液は、ほぼ同じ体積を有する溶液の滴を噴射するサイズにされる少なくとも2つのノズルを介して塗布される請求項6に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項8】
前記生体活性剤を保持する溶液の複数の滴それぞれを、目標溶解速度に基づいて選択される場所に位置決めするステップをさらに含む請求項1に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項9】
隣接する滴間の距離の標準偏差が、隣接する滴間の平均距離の約15%未満である請求項8に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項10】
重なった滴の合わせた幾何学的表面積の標準偏差が、重なった滴の合わせた平均幾何学的表面積の約15%未満である請求項8に記載の生体活性剤の溶解速度を制御する方法。
【請求項11】
送達基板と、
目標溶解速度に従って前記送達基板上にパターン化される生体活性剤の複数のドットと
をさらに備える生体活性剤形。
【請求項12】
前記複数のドットのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの他のドットと少なくとも部分的に重なる請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項13】
各ドットは少なくとも1つの他のドットと少なくとも部分的に重なる請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項14】
前記複数のドットのうち少なくとも1つは、少なくとも1つの他のドットと完全に重なる請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項15】
各ドットは、他の全てのドットから個別に離間している請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項16】
前記送達基板は摂取可能な媒体を含む請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項17】
前記送達基板は、デンプン、グリセリン、ゼラチン、小麦グルテン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトセル、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、アルギン、プルラン、ソルビトール、海草、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(2−エチル2−オキサゾリン)、ポリビニルピロリドン、乳タンパク質、ライスペーパー、ポテトウエファー、並びに再構築された果物及び野菜からできた膜のうち少なくとも1つを含む、請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項18】
前記送達基板はプルランを含む請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項19】
隣接するドット間の距離の標準偏差が、隣接するドット間の平均距離の約15%未満である請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項20】
重なったドットの合わせた幾何学的表面積の標準偏差が、重なったドットの合わせた平均幾何学的表面積の約15%未満である請求項11に記載の生体活性剤形。
【請求項21】
複数のノズルと、
前記複数のノズルと対のエジェクタと
を備え、各ノズル及びエジェクタ対は、目標溶解速度に基づいたパターンで送達基板に溶液の滴の生体活性剤を選択的に噴射するように合わせて構成される生体活性剤塗布システム。
【請求項22】
前記パターンは少なくとも部分的に重なった滴を含む請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項23】
前記パターンは完全に重なった滴を含む請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項24】
前記パターンは個別に離間した滴を含む請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項25】
各エジェクタは、前記生体活性剤を保持する溶液を、該溶液を選択的に加熱させることによりノズルから選択的に発射するように構成される請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項26】
各エジェクタは、前記生体活性剤を保持する溶液を、該溶液を選択的に変位させることによりノズルから選択的に発射するように構成される請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項27】
前記ノズル及び前記エジェクタに、隣接する噴射されたドット間の距離の標準偏差が隣接する噴射されたドット間の平均距離の15%未満であるパターンで、前記生体活性剤を噴射させるように構成されるコントローラをさらに備える請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。
【請求項28】
前記ノズル及び前記エジェクタに、重なったドットの合わせた幾何学的表面積の標準偏差が重なったドットの合わせた平均幾何学的表面積の約15%未満であるパターンで、前記生体活性剤を噴射させるように構成されるコントローラをさらに備える請求項21に記載の生体活性剤塗布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−528191(P2006−528191A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521194(P2006−521194)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/023354
【国際公開番号】WO2005/009737
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】