説明

送電鉄塔用中空鋼管増強工法

【課題】 中空鋼管により構成された送電鉄塔を安価に増強できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 主柱材の上下端に固着したフランジにボルトを挿通させナットで螺締した中空鋼管のフランジの隙間からモルタルが漏れ無いよう対策を行った送電用鉄塔へ上部より無収縮高流動モルタルを充填することにより、鉄塔強度を向上させる送電鉄塔用中空鋼管増強工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔用中空鋼管増強工法に関し、特に、中空鋼管により構成された送電用鉄塔を増強するものについてである。
【背景技術】
【0002】
現地における中空鋼管鉄塔へのモルタル充填工法としては、鉄塔の下部からのモルタル圧入と鉄塔の上部からのモルタルの注入があったが、充填口の造設が困難、充填不良が発生する等の問題点があった。
【0003】
また、鉄塔の強度不足に対しては、強度が不足する箇所の部材の交換や、溶接補修、また部材交換が不可能な主柱材等の強度不足の際は、鉄塔建て替えとなる場合もあり、高コストとなっていた。
【特許文献1】特開2003−321947号公報
【特許文献2】特開2003−321948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中空鋼管により構成された送電鉄塔を、安価に増強できることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、中空鋼管により構成された送電鉄塔を安価に、増強できるようにすべく、主柱材の上下端に固着したフランジにボルトを挿通させナットで螺締した中空鋼管のフランジの隙間からモルタルが漏れ無いよう対策を行った送電用鉄塔へ上部より無収縮高流動モルタルを充填することにより、鉄塔強度を向上させる送電鉄塔用鋼管増強工法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、主柱材の上下端に固着したフランジにボルトを挿通させナットで螺締した中空鋼管のフランジの隙間からモルタルが漏れ無いよう対策を行った送電用鉄塔へ上部より無収縮高流動モルタルを充填することにより、鉄塔強度を向上させる送電鉄塔用中空鋼管増強工法であるので、中空鋼管により構成された送電鉄塔を安価に、増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、主柱材の上下端に固着したフランジにボルトを挿通させナットで螺締した中空鋼管のフランジの隙間からモルタルが漏れ無いよう対策を行った送電用鉄塔へ上部より無収縮高流動モルタルを充填することにより、鉄塔強度を向上させる送電鉄塔用中空鋼管増強工法である。
【0008】
本発明を添付する図面に示す具体的実施例に基づき、以下詳細に説明する。
【0009】
本発明の送電鉄塔用中空鋼管への無収縮高流動モルタル (以下、単に「モルタル」という。) の充填作業手順を、図1〜図6により説明する。
【0010】
実施例の送電用鉄塔は、5節の中空鋼管より構成される。下部より第5節目の上部には四角錐形状の架空地線用のアーム(以下、「グランドアーム」という。)が取付けられている。各節間はフランジを当接させ、ボルトを挿通させ、ナットで螺締している。
【0011】
モルタルを、充填しようとする中空鋼管(第5節の主柱材)の上部開口に注入できるようにするために、図1のようにグランドアームを移動させ、図2のようにホッパーを第5節の主柱材の上部開口上に固着する。
【0012】
鉄塔敷には、ミキサーで十分攪拌したモルタルを収容するホッパーと、そのモルタルを圧送するモルタルポンプを配置する。
【0013】
ゴムホースを鉄塔最上部まで延ばし、ゴムホースの上部開口を鉄塔上のホッパー上に位置させる。
【0014】
ホッパー下部にはモルタルを主柱材に充填させるため、ポリ塩化ビニールホース(以下「ビニールホース」という。)を接続する。
【0015】
ビニールホースは、最下節部の主柱材にモルタルを充填させるため、最下節部の主柱材の上部開口に位置する長さとする。
【0016】
送電鉄塔は、通常4本(A、B、C、D)の主柱材より構成される。
【0017】
充填作業は、一脚ずつの充填とする。
【0018】
まず、図2に示すように、主柱材へのビニールホースの挿入は、骨材分離しない規定の高低差となるよう行い、最下節部のモルタル充填を行う。
【0019】
モルタル充填がビニールホース下端位置まで達したところで、ビニールホースを規定高さまで引き上げ、図3,図4,図5に示すように順次モルタルを充填する。
【0020】
最上節部については図6に示すようにビニールホースを全て引き上げ、ホッパーより直接モルタル充填を行い、最上面まで仕上げる。
【0021】
本発明に使用するモルタルは、高い位置から流し込み、均質に仕上げることを前提としており、使用するモルタルにはセメント、細骨材、水に加え、適切な混和材を入れることにより分離抵抗性ならびに高流動性を付与する必要がある。今回使用したモルタルはスランプフロー25〜35cm程度となるよう混和材により調整し、流動性をある程度確保しつつ材料分離抵抗を向上させている。さらに、膨張材を添加することで、収縮による隙間をなくす必要がある。
【0022】
但し、過度な膨張は鋼管損傷に至る原因となることから、その量については硬化時の収縮量と膨張量が均衡するよう調整することが必要である。また、コンクリート・モルタル充填鋼管としての強度上昇を期待するため、水セメント比は50%以下とする必要がある。
【0023】
本発明を実施する上で、以下の課題について検討することとした。
【0024】
中空鋼管鉄塔の主柱材は上下端に固着したフランジにボルトを挿通させ、ナットで螺締して連結している。モルタル充填時、総充填高さ、モルタル比重から求められる圧力が主柱材内に発生するためフランジのボルト・ナット部からの漏れ防止対策としては図7に示すようにシールワッシャーを採用し、フランジ側面からの漏れ防止対策としては図8に示すように、すべてのフランジの側面にコーキング剤を塗布し、その上にビニールテープを巻き付けるようにした。
【0025】
高低差の大きい環境でのモルタル充填の作業性は、モルタル練り待ちによるモルタルポンプの長時間停止によりホース内のモルタル硬化が進む上、軟質のビニールホースでは内部圧力変化による変形が起こることによりモルタルが詰まり、作業時間の多大なロスとなる。そこで、モルタルの練り待ちを無くすため使用モルタル量に合わせた適正なミキサーの配置を行うこととし、ホースは変形しない硬質ゴム製ホースを使用することにした。
【0026】
但し、硬質ゴムホースは柔軟性がないので主柱材への挿入が不可能であるため、ホッパーとビニールホースを併用することとした。
【0027】
本発明の施工品質は、無収縮高流動モルタルを使用するため主柱材、斜部材に至るまで隙間なく充填でき、硬化後の沈下量も少ない。
【0028】
また、本発明の無収縮高流動モルタルは40N/mm2 以上の圧縮強度を有する。
【0029】
また、本発明の無収縮高流動モルタルの密度、比重、供試験体の充填状況、供試験体側面の状況についても良好である。
【実施例1】
【0030】
実施例の送電鉄塔は5節の中空鋼管で構成され、高さ約30mである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、送電鉄塔用中空鋼管の増強工法に関するものであるが、通信鉄塔用中空鋼管の増強工法にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順1を示す図である。
【図2】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順2を示す図である。
【図3】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順3を示す図である。
【図4】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順4を示す図である。
【図5】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順5を示す図である。
【図6】本発明の送電鉄塔用中空鋼管へのモルタルの充填作業の手順6を示す図である。
【図7】本発明のフランジ上下面からのモルタルの漏れを防止する図である。
【図8】本発明のフランジ側面からのモルタルの漏れを防止する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主柱材の上下端に固着したフランジにボルトを挿通させナットで螺締した中空鋼管のフランジの隙間からモルタルが漏れ無いよう対策を行った送電用鉄塔へ上部より無収縮高流動モルタルを充填することにより、鉄塔強度を向上させる送電鉄塔用中空鋼管増強工法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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