説明

送風ファンを備えた施設内移動作業台車

【課題】 施設内を走行移動し、作業を行う移動作業台車に送風ファンを設けて、主として作業者に向け直接送風するようにした送風ファンを備えた施設内移動作業台車の提供。
【解決手段】 温室やビニールハウスなどの施設内を走行移動し、作業を行う移動作業台車1であって、移動作業台車1に、バッテリ13を電源として作動する送風ファン11を、上下高さ、水平角度、前後角度をそれぞれ調節可能に設け、主として作業者に向け送風するようにした。移動作業台車1にソーラーパネル16を、受光方向及び受光角度を調節可能に取付け、ソーラーパネル16により発電した電力をバッテリ13に充電する。そして、高温・多湿・無風状態の施設内においても、作業者は快適に作業することができる。また移動作業台車は、中山間地域の商業電気配線の整備されていない施設においても、適正に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室やビニールハウスなどの施設内を走行移動し、作業を行う移動作業台車に送風ファンを設けて、主として作業者に向け直接送風するようにした送風ファンを備えた施設内移動作業台車に関する。
【背景技術】
【0002】
温室やビニールハウスなどの施設内は、日中はほとんど外気より高温、多湿になってあり、作業者にとっての作業環境は劣悪となっている。特に、主として葉菜類を栽培する施設園芸においては、減・無農薬栽培を実現するために、雨よけハウスの開口部を防虫ネットで被覆して害虫の進入を防止するようにしている。このため、防虫ネットがハウス内外の換気を抑制し、高温期のハウス内は外気よりもさらに暑く、高湿度となり、しかも気流がほとんどない状態となることから、作業環境はいっそう悪化することになる。施設には、固定式の送風機(換気扇)を設けたものもあるが、作業者に風が直接当って快適な作業が行える場合はほとんどない。
【0003】
一方、施設内を走行移動して作業を行う移動作業台車としては、例えば特許文献1に開示されているような、本体1の前端及び後端に、上方に延びた延設部材2,3を前後方向に進退自在に取付け、該本体1の下部の左右に取付けたそれぞれの車輪支持部材8,8の側面に、前後方向に2個以上の固定車輪9,9…を列設したアルミニウム合金製運搬台車が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−244618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術のアルミニウム合金製運搬台車は、ビニールハウス内や狭い畑地で使用すると、機動性に優れ、軽量で多目的に利用できる利点がある。しかし、上記雨よけハウスの開口部を防虫ネットで被覆したようなハウス内で使用しようとすると、従来周知の移動作業台車と同様に、高温、多湿、かつ気流がほとんどない環境下において作業することになるので、作業者の作業環境は劣悪なものとなる。
【0006】
そこで本発明は、施設内を走行移動して作業を行う移動作業台車に送風ファンを設け、この送風ファンにより主として作業者に向け送風するようにし、作業者の作業環境を良くして快適に作業をすることができるようにした,送風ファンを備えた施設内移動作業台車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を有することを特徴としている。
A.温室やビニールハウスなどの施設内を走行移動し、作業を行う移動作業台車であって、
前記移動作業台車に、バッテリを電源として作動する送風ファンを、上下高さ、水平角度、前後角度をそれぞれ調節可能に設け、主として作業者に向け送風するようにした。
【0008】
B.前記移動作業台車にソーラーパネルを、受光方向及び受光角度を調節可能に取付け、該ソーラーパネルにより発電した電力を前記バッテリに充電する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記A.(請求項1)及びB.(請求項2)の構成、手段を有することにより、以下の効果を奏することができる。
イ.上記A.の構成により、施設内で作業する作業者に対して、送風ファンからの風を適切に送風することができ、作業環境が良くなり、快適に作業することができる。また、送風ファンはバッテリを電源として作動するので、エンジンを動力源にする場合に比べ、排気ガスの排出や温度上昇がなく、騒音も少ない。
【0010】
ロ.上記B.の構成により、移動作業台車は施設内で作業しながら、あるいはどこででもソーラーパネルにより発電した電力をバッテリに充電することができる。従って、移動作業台車は、例えば、中山間地域の商業電気配線の整備されていない施設でも、適正に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明による施設内移動作業台車の側面図、図2は、本発明によるソーラーパネルの側面図、図3は、本発明による電気回路図である。
【0012】
図1及び図2において、符号1は、温室やビニールハウスなどの施設内において使用される移動作業台車で、この移動作業台車1は、車体フレーム2の後部に操縦ハンドル3を設け、前部に荷台枠4を設けている。車体フレーム2の下側には。左右一対の前輪及び後輪からなる走行車輪5を装備している。この走行車輪5は、本実施例では人力により駆動回転するものであるが、これを、例えば電動モータにより駆動回転するようにしてもよいものである。車体フレーム2上には、荷受け台6が設けられている。この荷受け台6に限らず、車体フレーム2上には各種の作業装置を設けても良いものである。
【0013】
前記車体フレーム2の後部で前記操縦ハンドル3の前側に位置して、パイプ状の送風ファン用外側支柱7が立設され、この送風ファン用外側支柱7には、送風ファン用内側支柱9が摺動可能に嵌挿され、該内側支柱9は、外側支柱7の上部に設けた固定ネジ8の締め付け、弛緩により、上下高さ、水平角度調節が可能となっている。送風ファン用内側支柱9の上端部には、左右の支持枠10を介して送風ファン11が支持されている。支持枠10,10に支持された送風ファン11は、前後角度調節用グリップ12により前後角度が調節可能である。従って、送風ファン11は、上下高さ、水平角度、前後角度がそれぞれ調節可能であり、送風ファン11で発生した風を、移動作業台車1を操縦ハンドル3により操縦する作業者や、移動作業台車1が通る通路の両側で作業する作業者に対して適切に送風することができる。
【0014】
前記車体フレーム2の下側には、バッテリ支持台13aによりバッテリ13が搭載されている。このバッテリ13は、前記送風ファン11の電源となるものである。その他、走行車輪5を電動モータにより駆動回転するような場合にはその電源として、また、車体フレーム2上に各種の作業装置を設けた場合の電源としても利用される。該バッテリ13には、後述するソーラーパネル16により発電された電力が充電される。
【0015】
前記車体フレーム2の前側の、前記荷台枠4の手前に位置して、ソーラパネル用支柱14が立設され、該支柱14に、2本の支持アーム15に支持された2枚のソーラーパネル16が、水平方向に回動可能に支持されている。また、2枚のソーラーパネル16は、前後角度調節支持部材17を介して支持アーム15の上端部に、前後角度を調節可能に支持されている。従って、ソーラーパネル16は、水平方向の回動と前後の角度を調節することにより、受光方向及び受光角度を自由に調節することができる。
【0016】
図3に、前記ソーラーパネル16と、バッテリ13と、送風ファン11との間の電気回路図を示す。ソーラーパネル16から、バッテリ13及び送風ファン11に至る回路には、充電確認ランプ18及びダイオード19が介装され、また、バッテリ13及び送風ファン11には、それぞれバッテリスイッチ13b及び送風ファンスイッチ11aが設けられている。この電気回路図に基づくスイッチボックス20が、前記操縦ハンドル3に設けられ、該スイッチボックス20に、送風ファンスイッチ11a、充電確認ランプ18、21などが配設されている。
【0017】
このような構成の送風ファン16を備えた施設内で使用される移動作業台車1においては、施設内で、作業者が操縦ハンドル3を持って移動作業台車1を押していどうさせながら作業するときに、送風ファン16を作業者に向けて送風することにより、作業者は快適に作業することができる。また、この作業の間にも、ソーラーパネル16により発電された電力はバッテリ13に充電され、ソーラーパネル16の充電量が低下することがない。このため、移動作業台車1は、中山間地域の商業電気配線の整備されていない、即ち、バッテリ13への充電施設がない施設でも、適正に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の送風ファンを備えた施設内移動作業台車は、施設内で作業する作業者に対して、送風ファンからの風を適切に送風することができ、快適に作業することができる。また、移動作業台車は、中山間地域の商業電気配線の整備されていない施設でも、適正に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による施設内移動作業台車の側面図である。
【図2】本発明によるソーラーパネルの側面図である。
【図3】本発明による電気回路図である。
【符号の説明】
【0020】
1 移動作業台車
2 車体フレーム
3 操縦ハンドル
4 荷台枠
5 走行車輪
6 荷受け台
7 送風ファン用外側支柱
8 固定ネジ
9 送風ファン用内側支柱
10 支持枠
11 送風ファン 11a 送風ファンスイッチ
12 前後角度調節用グリップ
13 バッテリ 13a バッテリ支持台 13b バッテリスイッチ
14 ソーラパネル用支柱
15 支持アーム
16 ソーラーパネル
17 前後角度調節支持部材
18 充電確認ランプ
19 ダイオード
20 スイッチボックス
21 充電スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室やビニールハウスなどの施設内を走行移動し、作業を行う移動作業台車であって、
前記移動作業台車に、バッテリを電源として作動する送風ファンを、上下高さ、水平角度、前後角度をそれぞれ調節可能に設け、主として作業者に向け送風するようにしたことを特徴とする送風ファンを備えた施設内移動作業台車。
【請求項2】
前記移動作業台車にソーラーパネルを、受光方向及び受光角度を調節可能に取付け、該ソーラーパネルにより発電した電力を前記バッテリに充電することを特徴とする請求項1記載の送風ファンを備えた施設内移動作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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