説明

送風式薬剤散布機

【課題】送風式薬剤散布機の防塵能力を改善する。
【解決手段】タンク6の薬剤を送風機3の空気流と混合して散布する送風式薬液散布機1において、送風機3の吸気口41は隙間を開けて背負枠の背面と対向し、タンク6は送風機3と背負枠との間の隙間の上方に配置され、タンク6から下向きに延在する防塵カバー11により、送風機3と背負枠との間の隙間を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や粉体のような薬剤を送風機の空気流とを混合して先端から散布する送風式薬剤散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤をタンクに入れ、送風機の空気流と混合して散布する薬剤散布機が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許2009/0008473号公報(US2009/0008473 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の送風式薬剤散布機では、背当てフレームの後ろに、送風機、エンジンが並べられ、送風機の上にタンクが載せられている。
しかしながら、このような構造の送風式薬剤散布機では、送風機の吸気口で、枯葉、塵などが詰まることがある。特に、送風機の上側から、枝や枯葉が落下して吸気口を塞ぎ易い。
吸気口を塞がれた送風機は、空気流を送れなくなり、薬剤を散布することができない。また、回転負荷が低下して、エンジン回転数が上がり、装置を痛める。
【0005】
このように送風式薬剤散布機では、送風機が空気を吸い込めなくならないように、枯葉、塵などに対する防塵能力を改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の送風式薬剤散布機は、タンクの薬剤を送風機の空気流と混合して散布する送風式薬剤散布機であって、送風機の吸気口は、隙間を開けて背負枠の背面と対向し、タンクは、送風機と背負枠との間の隙間の上方に配置され、タンクから下向きに延在する防塵カバーにより、送風機と背負枠との間の隙間を覆う。
【0007】
好適には、防塵カバーは、タンクに取り付けられたフレームに取り付けられてよい。
【0008】
好適には、タンクは、送風機と背負枠との間の隙間の上方に配置される上タンク部と、上タンク部と一体に形成され、背負枠の背面部を構成して送風機の吸気口と対抗する下タンク部と、を有し、隙間を開けて送風機の前側および上側を覆い、送風式薬剤散布機の側面および背面に形成される、送風機の上部および側部とタンクとの隙間を、タンクに装着された防塵カバーにより覆ってよい。
【0009】
好適には、防塵カバーは、可撓性を有する平板状の部材で一体形成されてよい。
【0010】
好適には、送風機は、タンクに取り付けられたフレームに対して、サスペンション構造により取り付けられてよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、送風機と背負枠との間の隙間の上方にタンクを配置するので、枝や枯葉が上から落下しても、タンクにより吸気口が保護される。
また、タンクから下向きに防塵カバーを延在させているので、落下する枝や枯葉が防塵カバーに付着し難い。
よって、送風機が空気を吸い込めなくならないように、枯葉、塵などに対する、送風式薬剤散布機の防塵能力を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る送風式薬液散布機の斜視図である。
【図2】図2は、図1の送風式薬液散布機の主要機能を説明する図である。
【図3】図3は、図1の送風式薬液散布機の装置本体について、防塵カバーを取り外した状態を示す図である。
【図4】図4は、図3のドーム型の吸気口カバーを示す図である。
【図5】図5は、送風式薬液散布機1から外した状態の防塵カバーの正面図である。
【図6】図6は、図5の防塵カバーを取り付けた状態での、送風式薬液散布機の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る送風式薬液散布機1の斜視図である。送風式薬剤散布機には、この他にも粉剤や粒状肥料を散布するための送風式散粉機がある。
図2は、図1の送風式薬液散布機1の主要機能を説明する図である。
図1の送風式薬液散布機1は、エンジン2、送風機3、送風管4、加圧管5、タンク6、供給管7、混合部8を有する。
作業者は、送風式薬液散布機1を背負い、送風管4を持って使用する。
タンク6に貯蔵された薬液は、送風管4の空気流と混合されて霧状化し、空気流とともに送風管4から吹き出され、農地などに散布される。
【0014】
タンク6、送風機3およびエンジン2は、送風式薬液散布機1のフレーム9に固定される。これにより、背負って使用される背負枠としての装置本体10が構成される。
フレーム9は、金属管を矩形枠形状に組み、さらにその矩形の上部および下部を同じ方向(背面側)へ曲げた形状を有する。上部と下部との間に、側部が形成される。
装置本体10は、フレーム9の下部により地面に載置できる。
装置本体10は、フレーム9の上部を手で持って持ち上げることができる。
【0015】
タンク6は、たとえばプラスチック材料で形成された薬液の収容容器である。
図3は、図1の送風式薬液散布機1の装置本体10について、防塵カバー11を取り外した状態を示す図である。
図3のタンク6は、箱形状の上タンク部21と、上タンク部21の下側に薄板形状で一体に形成された下タンク部22と、を有する。上タンク部21と下タンク部22とは、内部で連通し、1つの収容容器を構成する。
上タンク部21の正面側の側面と、下タンク部22の正面側の側面とは、面一に形成され、背当て面23を形成する。このようにタンク6は、背負枠として機能する。背当て面23には、背当て部材31と二本の背負いベルト32が配置される。作業者は、背負いベルト32に腕を通し、背当て面23の背当て部材31が背中に当たる状態で、送風式薬液散布機1を背負う。
薄板形状の下タンク部22は、箱形状の上タンク部21の底面から下方へ延在するように形成される。
下タンク部22の両側面の中央には、左右方向へ突出する一対のリブ部24が立設される。リブ部24は、下タンク部22の両側面において、上下方向に延在する。
上タンク部21の上面には、薬液の投入口25に対して、タンクキャップ26が取り外し可能に取り付けられる。タンクキャップ26を開けて、タンク6の投入口25から薬液を入れる。タンクキャップ26を閉じて、タンク6を密閉する。密閉されたタンク6は、送風機3の空気流で加圧できる。
【0016】
送風機3およびエンジン2は、空気流を発生するものである。エンジン2の替わりにモータを使用してよい。エンジン2は、送風機3を回転駆動する。駆動された送風機3は、内蔵するファンで吸気口41から外気を吸引し、空気流を発生する。
送風機3とエンジン2とは、フレーム9の下部に配置される。送風機3およびエンジン2は、フレーム9の上部と下部との間に収容される。
たとえば送風機3は、スプリングサスペンション51により、フレーム9の下部に固定される。エンジン2は、送風機3の背面側に固定される。
このような支持構造とすることで、送風機3およびエンジン2をタンク6にしっかりと固定しつつ、エンジン2の振動が送風機3を通じてフレーム9へ伝わり難くなる。タンク6に取り付けられる防塵カバー11と送風機3との隙間が必要最小限となるように、位置決めできる。
送風機3は、吸気口41がタンク6側(前面側)となる向きで、フレーム9の下部に固定される。送風機3の前面の吸気口41を、背負枠の背面部を構成する下タンク部22に対向する位置に、位置決めできる。送風機3は、タンク6と送風機3の間の隙間から、空気を吸引する。
【0017】
送風機3の吸気口41には、ドーム型の吸気口カバー61が取り付けられる。
図4は、図3のドーム型の吸気口カバー61を示す図である。
図4(A)は、吸気口カバー61の正面図である。図4(B)は、吸気口カバー61の側面図である。
ドーム型の吸気口カバー61は、凸球面形状を有するカバー本体62と、カバー本体に形成された多数のスリット63と、を有する。
カバー本体62は、吸気口41の全体を覆うように送風機3に取り付けられ、タンク6側(前面側)へ突出する。
ドーム型の吸気口カバー61は、仕切り板64を有する。仕切り板64は、ドーム型の吸気口カバー61の右端から左端にかけてその全幅にわたって延在する。仕切り板64は、ドーム型の吸気口カバー61の中央より下側の位置に一体に形成される。図3に示すように、仕切り板64により、吸気口41は、中央部および上部と、下部とに仕切られる。吸気口カバー61の下側から吸い込んだ枯葉、塵などが、中央部まで到達し難くなる。
なお、仕切り板64は、送風機3についての吸気口41の下側の部位に設けてもよい。
【0018】
送風管4は、空気流を放出するものであり、送風機3に接続される。送風機3の空気流は、送風管4の先端から外へ放出される。
送風管4は、蛇腹管部71と、ハンドル72とを有する。
送風管4は、蛇腹管部71により曲げることができる。作業者は、送風式薬液散布機1を背負った状態で、ハンドル72を操作して蛇腹管部71を曲げ、送風管4の向きを調整できる。
なお、蛇腹管部71の替わりに、たとえば可撓性を有するビニールチューブなどを使用してよい。
【0019】
加圧管5は、送風機3とタンク6との間に接続される。送風機3の空気流の一部は、加圧管5を通じてタンク6へ導入される。この空気流により、タンク6は加圧される。
加圧管5の先端は、タンク6内に延び、逆止弁を内蔵した噴出部81に接続される。空気は、噴出部81からタンク6内へ放出される。タンク6内の薬液は、放出された空気の泡により撹拌される。
【0020】
供給管7は、タンク6の薬液を送風管4へ供給するものであり、タンク6と混合部8との間に接続される。
供給管7は、タンク6の底部に形成された供給口27に接続される。タンク6の供給口27には、供給管7と一体化された図示外のストレーナがタンク6内部に突出する。
供給管7の途中には、開閉弁91が設けられる。開閉弁91は、ハンドル72の横に固定される。
【0021】
混合部8は、送風管4の空気流に薬液を混合するものであり、送風管4の先端部分に配置される。
混合部8は、図2に示すように、絞り部101を有する。絞り部101は、供給される空気流についてベンチュリ効果を発揮する。供給管7の他端に接続されたノズル102の先端は、絞り部101の上流側に配置される。
加圧されたタンク6から供給される薬液は、ノズル102から吐出され、絞り部101において霧状になる。霧状になった薬液は、送風管4の空気流により、送風管4の先端から放出される。
【0022】
使用時には、作業者は、タンク6に薬液を入れた送風式薬液散布機1を背負い、ハンドル72を把持する。作業者は、開閉弁91のコックを開き、ハンドル72の操作レバーを操作してエンジン2および送風機3を操作する。これにより、ミスト化された薬液が送風管4の先端から吹き出す。作業者は、送風管4の向きを調整して、薬液を所望の土地に散布できる。
保管時には、作業者は、送風式薬液散布機1を床に置く。また、開閉弁91のコックを閉じる。これにより、タンク6の薬液が、漏れ出さなくなる。図1のように、送風管4が床の上に置かれた状態であっても、タンク6の薬液がノズル102から漏れ出さなくなる。
なお、保管時または運搬時には、送風管4を曲げて、ハンドル72を、たとえばフレーム9の上部に固定された環状ストラップ111に掛けてもよい。これにより、送風管4を立てて、混合部8のノズル102をタンク6より上側に位置させることができる。開閉弁91のコックを閉じ忘れたとしても、タンク6の薬液が漏れなくなる。
【0023】
図5は、送風式薬液散布機1から外した状態の防塵カバー11の正面図である。
図6は、図5の防塵カバー11を取り付けた状態での、送風式薬液散布機1の背面図である。
【0024】
図5に示すように、防塵カバー11は、平板状であって、中央面部121と、一対の側面部122と、を有する。
中央面部121および一対の側面部122には、通気性を確保するために複数のスリット123が形成される。防塵カバー11を送風式薬液散布機1に装着しても、送風機3への空気の通気口を確保できる。
中央面部121の上部の二か所、各側面部122の上下の二か所に、防塵カバー11をフレーム9へ固定するための取付孔124が形成される。
そして、防塵カバー11は、可撓性のプラスチック材料により、一枚の板部材に形成される。これにより、防塵カバー11を容易に折り曲げて装着できる。防塵カバー11を容易に一体成型できる。防塵カバー11の製造が容易になる。
なお、防塵カバー11には、スリット123の替わりに多数の孔が形成されても、または、その全体がメッシュ状若しくはネット状に形成されてもよい。
【0025】
図1および図6に示すように、防塵カバー11は、中央面部121に対して一対の側面部122を前側へ折り曲げた状態で、フレーム9に固定される。
防塵カバー11の中央面部121は、上部の二か所の取付孔124により、フレーム9の上部にねじ止めされる。各側面部122は、上下の二か所の取付孔124により、フレーム9の上部および下部にねじ止めされる。
そして、図6に示すように、防塵カバー11をフレーム9に固定することにより、防塵カバー11がタンク6(背負枠)と送風機3との間の隙間を覆う。両側面を側面部122が覆い、送風機3と上タンク部21を上下に覆うように中央面部121が覆う。防塵カバー11は、タンク6についてのフレーム9の内側へ突出する部分と重なり、これらの間に隙間が形成されない。防塵カバー11は、タンク6と送風機3との隙間を、余分な隙間を残さないように覆うことができる。タンク6に取付孔を開設する必要がないので、タンク6の気密性を損なうことなく、タンク6に対して防塵カバー11を取り付けることができる。
また、フレーム9をタンク6に取り付けた後、そのフレーム9の外側に防塵カバー11を曲げて取り付けることができる。一枚の可撓性の板部材からなる防塵カバー11を、タンク6の周囲を覆うように曲げた状態で、タンク6の周囲に取り付けることができる。
一連の組み立てが容易である。
【0026】
以上のように、本実施形態では、送風機3の前面の吸気口41は、タンク6(背負枠)との間に挟まれ、送風機3の前面および上面がタンク6により覆われ、さらに、送風機3の上部および側部とタンク6と間の隙間が、防塵カバー11により覆われる。タンク6の下タンク部22は、背負枠の背面部を構成している。
また、防塵カバー11は、タンク6側のフレーム9に装着されている。特に、防塵カバー11は、フレーム9を用いて、タンク6に隙間なく取り付ける。
よって、送風機3が空気を吸い込めなくならないように、枯葉、塵などに対する、送風式薬剤散布機1の防塵能力を改善できる。
また、送風機3が振動したとしても、防塵カバー11を送風機3側に装着した場合のように防塵カバー11が揺れることがない。防塵カバー11がタンク6などに当たって異音が発生することを抑制できる。そして、このような異音の発生を抑制するためには、防塵カバー11とタンク6との間に隙間を確保する必要があるが、そのような余分な隙間を確保することにより、タンク6と防塵カバー11による防塵効果が低下してしまう。本実施形態では、このような弊害もない。
また、本実施形態では、送風機3とタンク6(背負枠)との間の隙間の上方にタンク6を配置するので、枝や枯葉が上から落下しても、タンク6により吸気口41が保護される。
また、タンク6から下向きに防塵カバー11を延在させているので、落下する枝や枯葉が防塵カバー11に付着し難い。
よって、送風機3が空気を吸い込めなくならないように、枯葉、塵などに対する、送風式薬剤散布機1の防塵能力を改善できる。
【0027】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
たとえば上記実施形態では、タンク6にフレーム9を取り付け、このフレーム9に防塵カバー11を取り付けている。この他にもたとえば、防塵カバー11をタンク6に直接取り付けてもよい。
上記実施形態では、タンク6は、箱形状の上タンク部21と、その下側の薄板形状の下タンク部22とからなる。この他にもたとえば、タンク6を上タンク部21に相当する部分のみで構成し、背負枠をタンク6と別に設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…送風式薬液散布機(送風式薬剤散布機)
3…送風機
6…タンク
9…フレーム
10…装置本体(背負枠)
11…防塵カバー
21…上タンク部
22…下タンク部
24…リブ部
41…吸気口
61…吸気口カバー
121…中央面部
122…側面部
123…スリット(通気孔)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの薬剤を送風機の空気流と混合して散布する送風式薬剤散布機であって、
前記送風機の吸気口は、隙間を開けて背負枠の背面と対向し、
前記タンクは、前記送風機と前記背負枠との間の隙間の上方に配置され、
前記タンクから下向きに延在する防塵カバーにより、前記送風機と前記背負枠との間の隙間を覆う
送風式薬剤散布機。
【請求項2】
前記防塵カバーは、前記タンクに取り付けられたフレームに取り付けられる
請求項1記載の送風式薬剤散布機。
【請求項3】
前記タンクは、
前記送風機と前記背負枠との間の隙間の上方に配置される上タンク部と、
前記上タンク部と一体に形成され、前記背負枠の背面部を構成して前記送風機の吸気口と対抗する下タンク部と、
を有し、隙間を開けて前記送風機の前側および上側を覆い、
前記送風式薬剤散布機の側面および背面に形成される、前記送風機の上部および側部と前記タンクとの隙間を、前記タンクに装着された前記防塵カバーにより覆う
請求項1記載の送風式薬剤散布機。
【請求項4】
前記防塵カバーは、可撓性を有する平板状の部材で一体形成される
請求項1記載の送風式薬剤散布機。
【請求項5】
前記送風機は、前記タンクに取り付けられた前記フレームに対して、サスペンション構造により取り付けられる
請求項2記載の送風式薬剤散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91027(P2013−91027A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234450(P2011−234450)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】