説明

送風機、及び持続的陽圧/非侵襲的陽圧喚起(CPAP/NIPPV)装置

【課題】 高い信頼性及び低い音響ノイズを有する送風機を提供すること。
【解決手段】 患者の持続的気道陽圧(CPAP)換気のための両端可変速度送風機は、協同して望ましい圧力及び流れの特性にガスを圧縮する、2つのインペラーをガス流路中に含む。更に、送風機は、吸気部及び排気部との間のガス流路と、モータと、インペラー・アセンブリとを備え、インペラー・アセンブリは、第1の軸の周囲を回転運動するモータに連絡されたシャフトと、軸に対して動かないように固定された第1及び第2のインペラーとを含む。従って、両端送風機は、狭い範囲のモータ速度にわたって速い圧力応答及び望ましい流れの特性を提供することができ、高い信頼性及び低い音響ノイズを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、睡眠時無呼吸症(OSA)の持続的気道陽圧(CPAP)治療、気腫などの他の呼吸器疾患及び障害、又は補助通気の適用の中で使用される、人間が呼吸可能なガスを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的用圧喚起法(NIPPV)の形式によるOSAのCPAP治療は、導管とマスクを用いて、加圧された、通常は空気である、呼吸可能なガスを、患者の気道に届けることを必要とする。CPAPに用いられるガスの圧力は、患者の必要条件に応じて、180L/min(マスクにおいて測定)までの流量で、4cm水柱のH2Oから28cm水柱のH2Oまでの範囲で変化することができる。加圧されたガスは、特に呼吸の吸息相において気道が虚脱することを防ぎ、患者の気道に対して空気式の副木の役割を果たす。
【0003】
典型的には、患者がCPAPの間に換気の圧力は、患者の呼吸周期の段階によって変化する。例えば、換気装置は、呼吸の周期における吸息相の間における吸息性の陽性の気道圧力(IPAP)及び呼吸の周期における呼息相の間における呼息性の陽性の気道圧力(EPAP)の2つの圧力を、届けるために予め設定されてもよい。CPAPの理想のシステムは、吸息相の初期の段階において、患者に最大の圧力のサポートを供給しつつ、速く、効率的に、そして静かにIPAPとEPAPとの間で圧力を切り替えることができるシステムである。
【0004】
従来のCPAPシステムでは、患者への供給される空気は、単一のインペラーを有する送風機によって加圧された。インペラーは、回転するインペラーによって加圧されながら、入ったガスが遮られるボリュート、又はハウジング内に囲われる。加圧されたガスは徐々にボリュートから離れて、患者のマスクに移動する。
【0005】
現在のところ、理想的なCPAPシステムで要求される2つの異なる圧力、IPAP及びEPAPを生じるように、送風機及びインペラーを構成することができる2つの共通の方法がある。第1の方法は、一定の高い圧力を生成するためにモータ/インペラーを設定し、次に、必要なIPAP及びEPAP圧力を達成するために高い圧力を調整するダイバーター・バルブ配置を使用する方法である。第1の方法によるCPAPシステムは、ダイバータを有する単一速度の二段式システムと呼ばれる。第2の方法は、直接IPAP及びEPAPの圧力を生成するために、インペラーを駆動するモータを加速する方法である。第2の方法によるCPAPシステムは、変速の二段式(bi−level)システムと呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変速二段CPAPシステムは多数の特殊な欠点を有する。最初の欠点は、IPAP及びEPAPの間で急速に切り替えるために、インペラーを急速に加速及び減速させなければならないということである。これは、インペラー、モータ、及びベアリングに過剰な応力を起こさせる。しかしながら、インペラーがゆっくりと加速された場合、圧力の上昇が、不十分に遅くなる可能性がある。そのため、患者が適切な治療を受けることができなくなる可能性がある。
【0007】
モータ及びインペラーの急速な加速及び減速は、過度の熱の発生及び望ましくない音響雑音の発生を生じる(ここで使用されている「望ましくない」音響雑音という用語は、その音量にかかわらず、過度に大きい音響雑音はもちろん、ユーザをイライラさせる周波数で生じる音響雑音をも指す)。更に、設計技師は、望ましい最適のピーク圧力を達成する方を選んで、最適の圧力及び流動特性を犠牲にする妥協をしばしば強いられる。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる両端送風機及び両端送風機のためのボリュートを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの形態における本発明は、増加した信頼性及び少ない音響雑音を有し、より速い圧力上昇の時間を供給する変速送風機に関する。本発明の送風機は、吸気部及び排気部の間のガス流路、モータ、及びインペラー・アセンブリーを備える。
【0010】
好ましくは、インペラー・アセンブリは、第1の軸の周囲を回転運動するモータに連絡されたシャフトと、結合、例えば軸に対して動かないように固定された第1及び第2のインペラーとを含む。第1及び第2のインペラーは、吸気部から排気部へと流れるガスを協同して圧縮するために両方のインペラーが吸気部及び排気部との間に配されるように、ガス流路によって互いに流体伝達されるよう配される。
【0011】
一つの形態では、第1及び第2のインペラーは、吸気部及び排気部との間で直列に配置される。送風機は、ハウジングの一部が各第1及び第2のインペラーの周囲に配されたハウジングを更に備えてもよい。特に、ハウジングは、第1及び第2のボリュートを含み、第1のボリュートは、第1のインペラーの周囲に流れるガスを含み、第2のボリュートは、第2のインペラーの周囲に流れるガスを含んでもよい。吸気部は、第1のボリュート内に配され、排気部は、第2のボリュート内に配されてもよい。
【0012】
第1及び第2のインペラーは、第1の軸に沿って互いに垂直に間隔をあけられて配されてもよい。特に、第1及び第2のインペラーは、送風機のハウジングの、それぞれ反対側の両端に配されてもよい。
【0013】
本発明による送風機は、さまざまな構成を有してもよい。一つの形態では、2つのインペラ−が同じ方向に回転するよう設計されてもよい。他の形態では、2つのインペラ−が反対の方向に回転するよう設計されてもよい。
【0014】
発明の他の形態は、両端部又は単一端部送風機のいずれかに使用するための平面型移送用渦巻型ボリュートに関する。平面型移送用渦巻型ボリュートは、圧縮された空気を徐々に回転するインペラ−から遠ざかる方向へ向ける。
【発明の効果】
【0015】
上記説明から明らかなように、本発明によれば高い信頼性及び低い音響ノイズを有する送風機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のこれら及び他の形態は、以下の好ましい実施形態の詳細な記載中に記載、又は実施形態の詳細な記載から明らかにされる。
【0017】
ここで図を参照して、図1は、本発明の第1の実施例による両端送風機100の斜視図である。送風機100は、各端部に配されたインペラー・ハウジング又はボリュート112及び113を備えた、一般的に円筒状の形状を有する。従って、送風機100は、図2の断面斜視図中において最もよく見られる2つのインペラー114及び115を収容する。
【0018】
図1及び2を参照して、2つのインペラー114及び115は、流路116によって互いに流動伝達がされるように配される。送風機100の流路116は、第1のボリュート112から第2のボリュート113へと延長する配管によって構成され、流路116の各終端は、曲線を描くように配され、単一の一体構造を形成するために、徐々にボリュート112及び113に近接する送風機100の胴体に融合する。流路116は、送風機100の他の部品に一体成型される剛性の配管により構成されてもよく、あるいはフレキシブル配管(例えば金属又はプラスチックのフレキシブルな配管)により構成されてもよい。
【0019】
送風機100は、空気、又は他の適当なガスが、第1のボリュート112へ直接流れて、第1のボリュート112内の回転するインペラー114によって引き寄せられることができるように配された単一の吸気部118を有する。一旦吸気部118に引き寄せられた空気は、徐々にボリュート112から出て流路116に入る前に、インペラー114の運動により循環されて加圧される。流路116中では、空気は、第2のボリュート113へ移動し、流出導管124を通って送風機100から出る前に、第2のボリュート113のインペラー115によって更に循環され加圧される。送風機100中の空気の経路は、図1の中の矢印によって示される。図1に示されるように、送風機100内では、第1のボリュート112からの空気は、流路116の比較的直線の部分に沿って移動し、第2のボリュート113(図1に図示されない)の直上の吸気空洞を通って第2のボリュート113に入る。
【0020】
インペラー114及び115が直列より、むしろ並列で機能するよう設計される場合、送風機100は、各ボリュート112、113にそれぞれ1つずつ設けられた2つの吸気部118を有してもよい。高い流量が要求される低圧CPAP装置内に設置されるのであれば、この型の並列インペラー配置は有効であるかもしれない。しかしながら、低圧CPAP装置中で高い流量を生成する他の手段は、知られている。
【0021】
流路116の設計は、送風機100の全体的な性能に影響を与えることができる。一般的に、いくつかの設計上の考慮は、本発明による送風機に使用される流路の設計に影響を及ぼす。第1に、流路中の低い流体抵抗が送風機中の2つのボリュート112、113間の圧力降下を最小限にするので、本発明による送風機中で使用される流路は、低い流体抵抗を提供するために最も有利なように構成される。第2に、インペラー115のブレードが設計された方向から空気が第2のボリュート113に入るように、流路は最適に構成される(以下に更に詳細に記載されるように、本発明による送風機の2つのインペラーは、同じ又は異なる方向へ回転するように設計されてもよい)。最後に、本発明による送風機のための流路は、簡潔なデザインである点で最も有利である。
【0022】
上記の設計上の考慮は、ベンドの周囲における圧力降下を最小限にするために長く、大きな曲線を描いて延びるベンドを有する流路において最も具体化される。
【0023】
更に、ベンドの後の比較的直線の部分により、ボリュートに入る前に、ガスの流れが、より完全に発達するようになることが許容されるので、流路中のベンドの後に比較的直線の部分を有することは有益である。ベンドに続く直線流路部分の適切な長さは、流路の直径の約3倍である。比較的直線な部分は、更に第2のボリュート113に入る流れが、多くのインペラーがそのために設計された流れの方位である、軸方向であることを保証する。付加的な流れの形状が望まれる場合、静翼又は他の同様な流れを案内する構造を送風機に加えてもよい。しかし、静翼は、流れのインピーダンス及び圧力降下の点から高価かもしれない。
【0024】
上記の3つの主な流路の設計上の考慮から見て、比較的直線の部分は、2つのボリュート112及び113の間において、最短の最も可能な経路のうちの1つなので、図1中に記載された実施形態の流路116は、長く、比較的直線の部分を有する。当業者は、流路116が全く直線である必要がないことを理解するであろう。
【0025】
流路116及び他の部品の設計を最適化するために、試作品の中で試作品及び気流と圧力の実験の測定値を用いることにより、本発明による送風機は、手動で設計されてもよい。代わりに、送風機は、計算流体力学コンピューター・シミュレーション・プログラムを用いて全体として又は部分的に設計されてもよい。様々な計算流体力学プログラムが知られている。発明による送風機の設計に特に適した計算流体力学プログラムは、FLOWORKS(NIKA有限会社、ソットラム(Sottrum)、ドイツ)、ANSYS/FLOTRAN(アンシス(Ansys)社、キャノンズバーグ、ペンシルバニア、アメリカ)及びCFX(ABAテクノロジ・エンジニアリング・ソフトウェア社、エルドラド・ヒル、カリフォルニア、アメリカ)を含む。このようなシミュレーション・プログラムは、シミュレートされたガスの流れに対する流路の設計変更による影響を見る能力を、ユーザに与える。
【0026】
本発明による両端送風機において、2つのボリュート112及び113、及び流路116のために、多くの異なる型の構成が可能である。一般的に、各ボリュートは、短期間、インペラーの周囲のガスを保持して、流路へガスを徐々に流出させることを許容するために設計されている。流路の正確な構成は、各インペラーの周囲における、ボリュート及び回転方向の構成、又は気流の方向を含む多くの要因に依存する。
【0027】
不適切に設計されたボリュートは、ノイズを発生するかもしれず、望ましい圧力及び流れの特性の生成を妨げるかもしれないので、ボリュートのデザインは、それ自体技術である。ボリュートの設計に伴う、いくつかの変数は、完全にコンピューターにより設計されたボリュートを通常排除するが、上記の計算流体力学コンピュータ・プログラムは、更にボリュートの設計に有用であるかもしれない。
【0028】
ボリュート112及び113に関する1つの共通の問題点は、ボリュート112及び113が、流路116中に急激な遷移を与えるかもしれないということである。ボリュート112及び113と、流路116との間の急な遷移は、開口部の周囲に通常枝分かれした経路又は「リップ」を残す。インペラーのブレードが、このリップを通過するときに、翼通過周波数と呼ばれるノイズが発生する。本発明の両端送風機は、翼通過周波数及び他のノイズの発生を減少するために構成されたボリュートを伴う使用に特に適する。
【0029】
図6は、本発明における送風機用の平面型移送用渦巻型ボリュート300の斜視図である。ボリュート300は、任意の従来の送風機装置に使用されてもよい。図6において、ボリュート300はモータ302を内部に備える。ボリュート300は、2個のボリュート内のインペラーを駆動する1個のモータを備えた両端送風機で使用するようになされてもよい。図示されるように、ボリュート300は、ボリュート300を2等分した上側部分304及び下側部分306を備える。ボリュート308の吸気部は、上側部分304の中心に位置する。上側部分304及び下側部分306は、インペラーと共に回転する気体からゆっくりと剥離する気体の進路を確定する。上側部分304及び下側部分306によって確定された進路上には、従来のボリュートにおいて発生するような急激な「リップ」又は「流れの分岐」が発生せず、したがって、「翼通過周波数」は低減するか、完全に除去される。図6に記載されたボリュート300は、比較的短くて広幅なモータに特に適している。
【0030】
もしくは、送風機に取り付けられたモータの寸法に応じて、任意の一般のタイプのボリュートを使用してもよい。他の適するタイプのボリュートは、2000年7月21日に出願された米国特許出願公開09/600738号明細書に開示されている軸方向のボリュートである。それらの内容の全部が、参照によって本出願に組み込まれる。
【0031】
本発明における両端送風機のための重要な設計要件は、各インペラーのまわりの気流の方向、即ち、「回転方向」である。「回転方向」は、インペラーが回る方向によって決定されてもよい。あるいは、インペラーの個々のブレードやベーンの配向及び配置によって決定されてもよい。例えば、1個のインペラーが時計回りに回転するか、ブレードが気体を時計まわりに回転させるように配向され、他のインペラーが反時計回りに回転するか、ブレードが気体を反時計まわり回転させるように配向されてもよい(「反対方向回転」タイプの両端送風機)。もしくは、両方のインペラーが同じ方向に駆動され得る、「同一方向回転」タイプの両端送風機であってもよい。図1に示された送風機100は、「反対方向回転」タイプの両端送風機の例である。
【0032】
「同一方向回転」送風機は、2個のインペラーを同一のものできるので、送風機の部品点数及びコストを削減すると言う点で有利である。しかしながら、それぞれのボリュート内の気流が最適化されるように、2つのインペラーが個別に設計された「同一方向回転」送風機を設計してもよいことに注目するべきである。
【0033】
「反対方向回転」送風機は、インペラーが取り付けられるシャフトの長さを縮小することを可能にする。シャフトの長さを縮小することによって、高速で回転する長い片持ちシャフトの不安定性に関する問題を低減するので、シャフト自体の安定性を増加させ得る。
【0034】
図3は、本発明における「同一方向回転」送風機200を示す。送風機200は、送風機100と同様に、2個のボリュート212、213、流路216、吸気部218及び排気部220を備える。しかしながら、図3に示すように、流路216は螺旋形状を有する。即ち、モータ150と、送風機200の吸気部として機能するアーチ型のフランジ160の間に配置された吸込空洞に漸次結合される前に、流路216は、第1のボリュート212から分岐し、送風機200の周縁部に添いながら下方へ傾斜する。送風機200を貫流する気流は、図5中の矢印によって示される。
【0035】
送風機200の内部構造は、部分断面図である図4に示される。送風機100及び200の内部構造は実質的に同様であり、適用可能な範囲については、両方の送風機の構成要素について以下に記載される。図4に示されるように、電動モータ150は、送風機200の中心に設置される。説明を簡単にするために図4には図示されていないが、様々なタイプの公知のブラケット及び取付具が、モータを支持し、送風機200の内部に固定するために使用されてもよい。
【0036】
モータ150は単一のシャフト152を駆動する。シャフト152は、送風機100、200の実質的に全長にわたりその中心に沿って横切り、各端部でインペラー114、115、214に固定される。シャフト152は、丸、角、又は鍵状の形状を有するか、もしくは2個のインペラー114、115、214に動力を伝達する形状に成形されていてもよい。インペラー114、115、214及びシャフト152の結合は、2つの部品間の締りばめ、溶接、接着剤、又はネジのようなファスナーによってなされてもよい。送風機100及び200において、シャフト152とインペラー114、115、214の連結は、インペラー114、115、214の中心に形成され、垂直に配向させられた(つまり、シャフト152の軸に沿って配向させられた)環状のフランジ154によってなされている。図3及び図4では、インペラー114と115、214及びシャフト152の連結は、締りばめとして示される。
【0037】
インペラー114、115、214は、実質的に環状の形状を有する。インペラー114、115、214の中央部156は反り曲がった薄い板であり、シャフト152からブレード158に向かって半径方向に外側に延長し、上向きに反っており、シャフト152からブレード158に向かって外側に延長するにつれて徐々に下方に湾曲している。各インペラー114、115、214の実際の直径は、単一のインペラーを有する従来の送風機のインペラーの直径より小さくてもよい。送風機の昇圧時間を速くする為には、直径の4乗に比例して変化する慣性モーメントを小さくする必要がある。慣性モーメントは、送風機100及び200のインペラー114及び214の直径は、従来のインペラーの直径より小さいので、インペラー114及び214は、小さい慣性モーメントを有し、従って昇圧時間を速くすることができる。より小さい慣性モーメントを得るために、直径に加えて、インペラー114、214の他の設計パラメータを修正してもよい。慣性モーメントを減少させる他の方法は、「ヒトデ形」インペラー製作のためのシュラウドの「扇型」への成形、インターナル・ロータ型モータの使用、及び、より薄い壁断面の成形を可能にし、それによってインペラーのブレードをくり抜き、リブによって補強することを可能にする液晶ポリマーのような材料の使用等の方法を含む。
【0038】
同一方向回転の両端送風機を示す図4及び図5を参照して、第1のボリュート212の頂部は開放され、吸気部118を形成する。吸気部118において、送風機100の上面120はアーチ形に内側に湾曲しており、インペラー214の頂部にリップ122を形成する。インペラー中央部156の反り曲がった形状と、上面120のリップ122によって、第1のボリュート212内部における送風機内への気体の流入が制限され、運転中の空気漏れを防止する。アーチ形の上面120に相似のアーチ形のフランジ160が、送風機200の下側の内部表面から延長し、第2のボリュート213の頂部を形成する。起伏がつけられた底板162、262は、各送風機100、200の第2のボリュート113、213の底部を形成する。送風機100の底板162は中心に穴を備え、流路116が進入できるのに対し、送風機200の底板262はそのような穴を備えない。上記のように、アーチ形のフランジ160は、送風機200の第2のボリュート213用の吸気部として作用する。一方向から優先的に気体が流入するのでは無く、全ての方向から第2のボリュート213に気体が流入するように、送風機200において、流入した空気を分散させることを補助するために、静翼及び流れ整形部材が、モータ150とアーチ形のフランジ160との間の空洞へ更に付け加えられてもよい。
【0039】
図2及び図4から明らかなように、本発明における送風機は、複雑で起伏のつけられた表面を有してもよい。アーチ形の上面120及びアーチ形のフランジ160の場合のように、そのような起伏は、ガスの流れを方向づけ、ガス漏れを防ぐことのために用いられる。送風機100、200を貫流するガスが高濃度の酸素ガスを含んでいる場合、ガス漏れが無いということは特に重要である。高濃度酸素が使用される場合、ガス漏れは安全上の障害を引き起こし得る。更に、各種の安全対策とは別に、ガス漏れは望まれないノイズを引き起こし、送風機の性能を減少させ得る。
【0040】
本発明における送風機は、複雑で起伏の有る表面を有するので、インベストメント鋳造のような生産方式で製造されることに特に適する。インベストメント鋳造は、比較的高コストではあるが、隠された部分や凹んだ部分を数多く有する単一の部品を製造することができる。それに対し、他の生産方法では、同等の機能を達成するために、多くの部品に分割する設計が必要となり得る。しかしながら、部品点数が多い事は一般に望ましくなく、ガス漏れの可能性を最小限にするために部分の点数は最小限に抑えられることが望ましく、また、部品間の継ぎ目の数も最小に抑えられることが望ましい。
【0041】
更に、本発明における送風機の材料として数々のものが考慮され得る。インベストメント鋳造においては、金属材料が一般に使用される。しかし、いくつかの金属は特に酸化しやすく、本発明における送風機内では、医療用の品質の酸素ガスを使用する可能性があるので、金属が酸化することは問題となる。送風機100、200の特に適切な材料として、アルミニウムがある。鉄鋼材料は高濃度酸素との接触により錆びる可能性があるのに対し、アルミニウムは素早く酸化し、酸化した部分は不浸透性の膜を表面に形成する。使用される材料が金属材料であるにせよ、他の材料であるにせよ、高温による酸素の点火を防ぐために、材料は高い熱伝導率を有し、熱が流路より拡散されることが重要である。
【0042】
アルミニウムの使用は多くの利点を有するが、送風機の運転中に共鳴するという傾向を有する。したがって、アルミニウム材の振動の強度を減少するために、ダンピング材料がアルミニウム送風機に取り付けられてもよい。
【0043】
送風機100及び200では、希望のIPAP及びEPAP圧力を得るために、電動モータ150は可変速度で駆動される。送風機の両端形の(つまり2段式の)設計は、2つのIPAP及びEPAP圧力を達成するためのモータ速度の可変範囲を減少することができることを意味する。モータ速度の可変範囲を狭くすることにより、同等の出力及び駆動特性を有する単段の送風機と比べて、圧力応答時間を速くすることができる。更に、速度の可変範囲を狭くすることによって、回転システム部材に加わる応力が低減され、その結果信頼性が向上し、音響雑音が低減する。
【0044】
送風機100及び200の性能は、2個のインペラー/ボリュートの組み合わせの性能の合計から、2個のボリュート112及び113と、212及び213との間の流路116及び216の圧力/流量曲線を除したものとほぼ等しい。数々の公知の理由により、送風機100、200の実際の性能は、送風機100、200の瞬間流量、及びその他多くの要因にも依存する。一般的に、流量が増加するに従って、流路116、216中の圧力降下がより顕著になる。
【0045】
本発明における両端送風機は、従来の送風機と同じ方法でCPAP装置に設置されてもよい。典型的に、送風機は、振動を低減するために、スプリング又は他の衝撃を吸収する構造物に取り付けられる。
【0046】
本発明の更なる実施例が、図7に示される。図7は、本発明における両端送風機400の分解斜視図である。分解図の中心に位置するモータ及び静翼部分402は、本実施形態においてはアルミニウムからのインベストメント鋳造であるが、後述する他の製造方法も可能である。アルミニウムは、良好な熱の伝導体であるので、加速及び減速するモータによって発生する熱の拡散を促進する。シャフト404の各端は図7に示されるが、モーター巻線、ベアリング及びカバーは図示されていない。モータの電気コード406は、モータ及び静翼部分402から突出し、密封されたオリフィス450を通って送風機400から出る。モータ及び静翼部分402は、頂部において、上側ボリュート408の底部を有する。
【0047】
図7に示された設計の変形例として、モータ及び静翼部分402は、上側ボリュート408の底部分と別々に形成されてもよい。2つの部分が別々に形成される場合、インベストメント鋳造の必要性は無い。例えば、モータ本体はダイカストで製造され、上側ボリュート408の底部分は射出成形で製造されてもよい。
【0048】
シャフト404が貫通するための穴412が設けられた円形の板410が、ボルトあるいは他のファスナーによって、モータ及び静翼部分402に固定される。インペラー414は円形の板の上に休止する。インペラー414の慣性モーメントを低減するために、インペラー414は、その周囲に沿って扇型に形成され、「ヒトデ」の外観形状を有する。
【0049】
上部キャップ416はインペラー414上に固定され、上側ボリュート408の頂部を形成する。本実施形態における上側及び下側ボリュートは、図6に示された平面型移送用渦巻型ボリュート300の変形例である。上部キャップ416の中心にある開口418は、送風機400の吸気部として機能する。
【0050】
送風機400の底部においては、起伏を有する板420が、下側ボリュートの頂部を形成する。起伏を有する板420の頂部は隆起しており、穴422の方向に向かって、アーチ形かつ下方へ湾曲する。上記のように、起伏を有する板420は、一方向から優先的に気体が流入するよりも、むしろ全ての方向からインペラー空洞に気流が流入されることを確実にするために気流を形成することを助ける。起伏を有する板420の下側において、下側インペラー414が、下部キャップ428に隣接して回転する。2個の端部キャップ416、428は例えばアルミニウム又はマグネシウム合金によりダイカストで製造されてもよいし、適切な金属の射出成形によって成型されてもよい。
【0051】
上側及び下側ボリュート間の流路454は、左側面ケーシング424及び右側面ケーシング426が統合される部分であり、他の要素はその上に固定される。左側面ケーシング424は、更に送風機400のための排気部442を与える。左側面ケーシング424及び右側面ケーシング426はボルトあるいは他の着脱可能なファスナーによって互いに固定される。側面ケーシング424、426の上面に、送風機400をCPAP装置の内部のスプリングに載置することを許容する突起434、436を有する正方形フランジ430、432が設けられる。図7に示される突起434、436は異なるサイズ及び形状を有するが、図8及び図9に示される突起434は同じ形状を有する。送風機400が載置されるスプリングの性質及び配置によって、突起434、436は図示された形状、あるいは他の任意の形状をとり得ることを理解するべきである。
【0052】
両端送風機400は2個のダンピング・スリーブ438、440を更に備える。ダンピング・スリーブ438、440は、それぞれ左側面ケーシング424及び右側面ケーシング426の内部の起伏に密着するように、射出成形によって成型されるゴム又はフォームラバー部材である。ある適用例において、ダンピング・スリーブ438及び440は、急速プロトタイプ・シリコーン鋳型により成形された、40HSのショアー硬さを有するポリウレタンである。もしくは、ダンピング・スリーブ438、440は、モータによって発生する高温の状態において安定状態にあるシリコーン又は他のエラストマーであってもよい。
【0053】
ダンピング・スリーブ438、440は、送風機400の3つの主要な目的のために供される。即ち、ダンピング・スリーブ438、440は、実際の流路454を形成し、他の部材間のシールの役割を果たし、他の部分の振動を減衰させる。ダンピング・スリーブ438、440のゴム又はフォームラバー材料は、凹部の成形(つまりアンダカット)が可能なので、流路454に特に適している。ダンピング・スリーブ438、440の減衰特性は、ダンピング・スリーブ438、440を備えない場合に発生するアルミニウム部品の共鳴を低減する。
【0054】
図8は、一方向からの送風機400の組立斜視図である。組み立てられた排気部442が、左側面ケーシング424と右側面ケーシング426の間に設けられたシーム444と同様に、図8に示される。図8と、図8を回転して送風機400を別の方向から見た斜視図である図9に示されるように、フランジ446、448は、各側面ケーシング424、426の端部より横方向に突出し、互いに密着してシーム444を形成する。2個の側面ケーシング424、426は、右側面ケーシング426に設けられたフランジ446中を貫通し、左側面ケーシング424のフランジ448中に設けられたネジ穴に装着されるボルト452によって互いに締結される。
【0055】
送風機400はいくつかの長所を有する。最初に、送風機400を製造するためにインベストメント鋳造を必要とせず、送風機のコストを減少させる。更に、送風機400の構成要素は隠された部分や複雑な部分が少ないので、キャスティングを容易に検査及び清掃することができる。最後に、送風機400の構成要素は2つの側面ケーシング424、426を用いて、簡単なファスナーによって締結することができるので、送風機400は、他の実施例よりも組み立てが容易である。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例による両端送風機の斜視図である。
【図2】図2は、図1の両端送風機の部分的に断面が示された透視図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施例による両端送風機の背面透視図である。
【図4】図4は、図3の両端送風機の断面斜視図である。
【図5】図5は、両端送風機を貫通する流れを示した、図3の両端送風機の背面透視図である。
【図6】図6は、本発明による送風機に使用するのに適した平面型移送用渦巻型ボリュートの斜視図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例による両端送風機の分解斜視図である。
【図8】図8は、一方の側から見た図7の両端送風機の組立斜視図である。
【図9】図9は、他方の側から見た図7の両端送風機の組立斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
100、200、400 送風機、112、113、212、213、300、308 ボリュート、114、115、214、414 インペラー、116、216、454 流路、118、218 吸気部、120 上面、124、220 流出導管、150、302 モータ、304 上側部分、306 下側部分、220 排気部、160 フランジ、152、404 シャフト、154 フランジ、156 中央部、158 ブレード、122 リップ、162 底板、406 電気コード、402 静翼部分、450 オリフィス、408 上側ボリュート、412、422 穴、410 円形の板、416 上部キャップ、420 起伏を有する板、428 下部キャップ、424 左側面ケーシング、426 右側面ケーシング、442 排気部、434、436 突起、430、432 正方形フランジ、438、440 ダンピング・スリーブ、444 シーム、424、426 側面ケーシング、446、448 フランジ、452 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機であって、
吸気部及び排気部との間のガス流路と、
モータと、
インペラー・アセンブリとを備え、
前記インペラー・アセンブリは、
第1の軸の周囲を回転運動する前記モータに連絡されたシャフトと、
前記軸に対して動かないように固定された第1及び第2のインペラーと
を含み、
前記第1及び第2のインペラーは、
前記吸気部から前記排気部へと流れるガスを協同して圧縮するために両方のインペラーが前記吸気部及び前記排気部との間に配されるように、前記ガス流路によって互いに流体伝達されるよう配されたこと
を特徴とする送風機。
【請求項2】
前記第1及び第2のインペラーは、前記吸気部及び前記排気部との間で直列に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
一部が各第1及び第2のインペラーの周囲に配されたハウジングを更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項4】
前記第1及び第2のインペラーは、前記ハウジングの、それぞれ反対側の両端に配されたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項5】
前記ハウジングは、第1及び第2のボリュートを含み、前記第1のボリュートは、前記第1のインペラーの周囲に流れるガスを含み、前記第2のボリュートは、前記第2のインペラーの周囲に流れるガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項6】
前記吸気部は、前記第1のボリュート内に配され、前記排気部は、前記第2のボリュート内に配されたことを特徴とする請求項5に記載の送風機。
【請求項7】
前記ガス流路は、前記第1のボリュートと前記第2のボリュートとの間にチャネルを備えたことを特徴とする請求項5に記載の送風機。
【請求項8】
前記第1及び第2のインペラーが、前記第1の軸に沿って互いに垂直に間隔をあけられたことを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項9】
前記チャネルが、前記第1のボリュートの側部及び前期第2のボリュートの側部に接続されたことを特徴とする請求項7に記載の送風機。
【請求項10】
前記チャネルが、前記第1のボリュートの側部及び前期第2のボリュートの端部に接続されたことを特徴とする請求項7に記載の送風機。
【請求項11】
前記チャネルがパイプであることを特徴とする請求項7に記載の送風機。
【請求項12】
流入口及び流出口を有し、ボリュートの中心から前記流出口の方向へと深さを増加する実質的に螺旋形の形状を有する気流のチャネルを、内部において規定するボリュートと、
モータと、
前記モータに操作的に接続され、前記流入口から前記流出口へ流れるガスを圧縮するために前記流入口及び前記流出口に対して流体伝達されるインペラーとを備えたことを特徴とする送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17744(P2012−17744A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226073(P2011−226073)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2008−253988(P2008−253988)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】