説明

送風装置およびイオン発生機

【課題】シロッコファンを搭載した送風装置において、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる送風装置を提供し、この送風装置とイオン発生装置とを備えて、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を提供する。
【解決手段】シロッコファンとケーシングと、ケーシングの出口に接続される送風経路と、を備える送風装置において、ケーシングの、シロッコファンを囲む渦巻き部の外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部10d、11dを、送風経路の流通方向の中心線に対して所定角度傾斜した送風装置V1A、V1Bとし、この送風装置を用いるとともに、シロッコファン6のファン吹出口に連なる送風経路が拡幅された第二送風経路7bにイオン発生装置5を配設したイオン発生機M1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロッコファンを搭載した送風装置および、この送風装置とイオン発生装置を備えたイオン発生機に関し、特に、イオン発生装置が生成したイオンを効率よく拡散できる送風装置およびイオン発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中に発生させたプラスイオン(正イオン)とマイナスイオン(負イオン)によって空気中に浮遊する細菌を殺菌しウィルスを不活化して、空気を清浄する作用が見出され、この技術を応用した空気清浄機などの製品が注目を集めている。
【0003】
例えば、大気中におけるコロナ放電によって、空気中に正イオンであるH+(H2O)m(mは任意の自然数)と、負イオンであるO2-(H2O)n(nは任意の自然数)を同等量発生させて放出することにより、両イオンが空気中の浮遊カビ菌やウィルスの周りを取り囲んで付着し、その際に反応生成される活性種の水酸基ラジカル(・OH)の作用により、前記浮遊カビ菌等を不活化することを可能とする研究開発がなされている。
【0004】
例えば、本出願人からも、正イオンと負イオンを安定して発生させることが可能なイオン発生素子やイオン発生装置などが既に出願されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
このようなイオン発生装置において、正負のイオンをバランスよく室内に送出することが求められる。そのためには、送風経路内に設置したイオン発生装置のイオン発生部に均等に気流が当たることが不可欠であるが、機器のデザイン面や大きさの面からの制限のために、理想的な配置ができない場合が生じる。そのような場合には、送風機下流の送風経路内に気流ガイドを設けて気流を導くことが一般的である。
【0006】
例えば、吹出し口を複数方向に設けた空気調和機において、二つのエアガイダを対角に設けて、所望の風速と風量を得るようにしたものが出願されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−47651号公報
【特許文献2】特開2002−319472号公報
【特許文献3】特開2010−55960号公報
【特許文献4】特開2001−208366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、空気中に浮遊する細菌を殺菌しウィルスを不活化する所定の除菌効果と、空気を清浄する所定の効果を得るためには、所定のイオン濃度が必要であることが既に知られている。そのために、ただ単に、送風通路内にイオン発生装置を取り付けるだけでは、また、単に、送風経路内の気流を安定させるだけでは、送風経路内を流通する気流全体に一様に安定して所定濃度のイオンを供給することは困難であって、十分な除菌効果と空気清浄効果を得ることができない。
【0009】
また、正イオンと負イオンの両イオンを用いる場合には、それぞれのイオンを同時に、所定濃度で供給することが肝要であって、イオン発生装置のイオン発生面で発生させたイオンを、速やかに大量の空気流れに供給するとともに、供給された両イオン同士が衝突や中和等によりイオン濃度が低下しないようにして安定して搬送することが望まれる。
【0010】
例えば、シロッコファンを送風ファンとして搭載する送風装置において、シロッコファンがファンの円周の接線方向に風を送るという性質上、ケーシング出口に接続される送風経路の形状によっては、気流が片寄って流通することがある。特に、イオン発生装置を搭載した送風装置において、シロッコファンを利用してイオン発生装置で発生した正負のイオンを吹出口から送出する場合、シロッコファン吹出口から送出される風がファン吹出口の一方に片寄るため、送風装置の吹出口から送出される風が均一に広がらない。そのため、放出されるイオンにも片寄りが生じてしまい、空間に効率よくイオンを拡散させることができなくなる。
【0011】
そのために、シロッコファンを用いてイオン発生装置で発生した正負のイオンを送出するイオン発生機能付き送風装置(イオン発生機)の場合は、気流の片寄りを抑制して送風経路内を流通させて、イオン発生部分で発生した正負の両イオンを十分に、また、均一に含んだ気流として吹出口から送出することが望ましく、生成したイオンを効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機であることが望まれる。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、シロッコファンを搭載した送風装置において、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる送風装置を提供し、この送風装置とイオン発生装置とを備えて、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、シロッコファンと、このシロッコファンを囲むケーシングと、該ケーシングの出口に接続され前記シロッコファンのファン吹出口を前記シロッコファンの回転軸に垂直な面内に拡大する送風経路と、を備える送風装置において、前記ケーシングは、前記シロッコファンを囲む渦巻き部と、この渦巻き部の外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部と内周部に形成されファン吹出口に至るのど部と、を備えるとともに、前記直線部を、前記送風経路の流通方向の中心線に対して所定角度傾斜して設置したことを特徴としている。
【0014】
この構成によると、シロッコファンから送出される風をファン吹出口の幅方向の左右に略均等な拡がり角度で拡散する適当な角度に前記直線部を傾斜させることで、シロッコファンから送出される風が送風経路内に片寄ることなく均一に流通させることができる。すなわち、シロッコファンを搭載した送風装置において、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる送風装置を得ることができる。
【0015】
また本発明は上記構成の送風装置において、前記所定角度は、前記のど部に近いファン吹出口部分から送出される気流と、前記直線部に近いファン吹出口部分から送出される気流とが、各々前記送風経路の流通方向の中心線に対して成す角度の平均値相当角度であって、当該平均値相当角度だけ、前記シロッコファンをファンの回転方向の逆方向に傾けたことを特徴としている。この構成によると、シロッコファンから送出される風をファン吹出口の幅方向の左右に略均等な拡がり角度で拡散させることができる。
【0016】
また本発明は、上記構成の送風装置とイオン発生装置とを備えたイオン発生機であって、前記シロッコファンのファン吹出口に連なる送風経路が、前記シロッコファンの回転軸に垂直な面内に徐々に拡幅される第一送風経路と拡幅された広幅の第二送風経路とを有し、この第二送風経路に前記イオン発生装置を配設したことを特徴としている。この構成によると、広幅に拡大されて流れの安定した領域となる第二送風経路にイオン発生装置を配設したので、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として本体吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。
【0017】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記イオン発生装置は、所定間隔離間して設置される複数のイオン発生部を有し、この複数のイオン発生部の並び方向を、前記送風経路の流通方向に交差する方向としたことを特徴としている。この構成によると、拡幅された送風経路の幅方向に複数のイオン発生部を配置することにより、幅方向にイオンを均一に含んだ気流を送出することができる。すなわち、複数のイオン発生部で発生したイオンを送風経路の幅方向に略均等に含ませた気流を流通させることができる。
【0018】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記イオン発生部は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを備え、前記イオン発生装置は、正イオンと負イオンを同時に発生することを特徴としている。この構成によると、複数のイオン発生部で発生した正負の両イオンを送風経路の幅方向に略均等に含ませて送出することができる。
【0019】
また本発明は上記構成のイオン発生機において、前記正イオンはH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンはO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴としている。この構成によると、細菌を殺菌しウィルスを不活化する所定の除菌効果と、空気を清浄する所定の効果を発揮する所定の正負の両イオンを均一に拡散させて送出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シロッコファンを搭載した送風装置において、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる。そのために、この送風装置とイオン発生装置とを備えて、イオン発生装置で発生したイオンを均一に含んだ気流として吹出口から送出して効率よく拡散できる送風構造のイオン発生機を得ることができる。従って、シロッコファンを使用するイオン発生機において、送風経路内に気流を行き渡らせることができ、従来よりも効率よく空間に正負のイオンを拡散させることができる。この結果、浮遊カビ菌や細菌の殺菌、ウィルスやアレルゲンの不活性化、空間や物品の除電効果が良好に得られる。また、気流ガイドやベーンのように圧力損失を伴わないので、無駄なエネルギーを消耗せず騒音の低下にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るイオン発生機の外観斜視図である。
【図2】図1のイオン発生機が備えるイオン発生装置の外観斜視図である。
【図3】図1のイオン発生機の内部構造を示す概略説明図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】第一実施形態の送風装置の気流の流通状態を示す概略説明図である。
【図6A】第一実施形態の送風装置の気流の吹出し状態を示す概略説明図である。
【図6B】第一実施形態の送風装置の調整された気流の吹出し状態を示す概略説明図である。
【図7A】第二実施形態の送風装置の気流の吹出し状態を示す概略説明図である。
【図7B】第二実施形態の送風装置の調整された気流の吹出し状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。まず本実施形態に係るイオン発生機の一例について、図1および図2を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るイオン発生機M1の外観斜視図であり、図2は、図1のイオン発生機M1が備えるイオン発生装置5の外観斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るイオン発生機M1は、送風装置V1とイオン発生装置5を内蔵する装置全体を覆うカバー4と、吸込口1と吹出口2を備えている。また、側面部に操作部3を設けており、運転スイッチ等のスイッチと運転状態を表示する表示部を備える。
【0024】
イオン発生装置5は、イオン発生機本体に対して着脱自在な構成とされており、カバー4の切欠き部からその表面の一部が露出している。また、後述するように、本体の背面側には、送風装置V1が有する送風ファンや制御装置などの取付部や、イオン発生装置5を着脱するためのガイドなどが形成された背面カバー8(図4参照)を備えている。
【0025】
本実施形態に係るイオン発生装置5は、図2に示すように、正イオン発生部51a、52aと、負イオン発生部51b、52bとの複数のイオン発生部を備え、吸込口1から吸い込んだ空気に発生したイオンを含ませて、吹出口2から正負のイオンを含んだ空気を空間に放出する。
【0026】
イオン発生装置5は、例えば、同量の正イオンと負イオンを生成するイオン発生装置であって、正イオン発生部と負イオン発生部となる電極をそれぞれ備える。この電極には交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加される。電極の印加電圧が正電圧の場合はイオンが空気中の水分と結合して主としてH+(H2O)mから成る正イオンを発生する。電極の印加電圧が負電圧の場合はイオンが空気中の水分と結合して主としてO2-(H2O)nから成る負イオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H+(H2O)m及びO2-(H2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。
【0027】
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH22(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、正イオン及び負イオンを発生して吐出口から吐出することにより各貯蔵室の殺菌及び臭い除去を行うことができる。
【0028】
+(H2O)m+O2-(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ H22+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
【0029】
本実施形態に係るイオン発生装置5は、高圧発生回路等の制御部を収納する本体部50a、制御回路から高圧電気を印加されて正または負イオンを発生するイオン発生部51a、51b、52a、52b、これらのイオン発生部51a、51b、52a、52bを損傷から守り、ユーザー等が指先を怪我することを防止するガード50b、および、イオン発生装置5に電力を供給するとともに動作情報やID等の情報データを装置本体の制御装置と交換する端子部50cを備える。
【0030】
イオン発生部は、正イオン発生部が51a、52aの二か所、負イオン発生部が51b、52bの二か所設けられており、各々略同量の正イオンまたは負イオンを同時に発生している。イオン発生部で発生したイオンは、このイオン発生部を通過する気流によって機外に送出される。従って、正負のイオンを同等量で送出するためには、各々のイオン発生部を通過する気流も同等であることが要求される。
【0031】
次に、図3、図4を用いて装置本体内部の気流状態について説明する。図3は、イオン発生機M1の内部構造を示す概略説明図であり、図4は、図3のA−A断面図である。また、本実施形態では、送風ファンとしてシロッコファン6を用いている。シロッコファン6は、ファン6bと、この外側に気流をガイドするケーシング6aを備えている。ケーシング6aには、渦巻き部60a、のど部60b、ファン吹出口の一方の端部60c、直線部60d、ファン吹出口の他方の端部60eが設けられている。すなわち、直線部60dは、シロッコファン6を囲む渦巻き部60aと、この渦巻き部60aの外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部分を指している。
【0032】
図3に示すように、シロッコファン6から送出される風は、拡幅される送風経路7(第一送風経路7a、第二送風経路7b)を介してイオン発生装置5のイオン発生部に供給され、吹出口2から吹き出される。すなわち、送風経路7は、シロッコファン6のファン6bの回転軸に垂直な面内で拡幅している第一送風経路7aと、この第一送風経路7aに接続され当該接続部と同じ断面形状で延長される第二送風経路7bとを備え、この拡幅された第二送風経路7bに、気流の流通方向と直交する方向に所定間隔離れて複数のイオン発生部を配設するようにしてイオン発生装置5が設置されている。
【0033】
イオン発生装置5は、図4に示すように、ガード50bが背面カバー8側に位置するように(図2に示すイオン発生装置5の上下を逆にした状態に)配置され、イオン発生機5の正面側に配置された吸込口1から空気流れFL1として取り込まれた気流は、イオン発生装置5の本体部50aの面と背面カバー8との間に形成された送風経路(第一送風経路7a、第二送風経路7b)を通りイオン発生部を通過して、正負のイオンを含んだ状態で正面側に設けられた吹出口2から空気流れFL2として送出される。
【0034】
イオン発生装置5から発生するイオンは、正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)、負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)となるように構成されており、両者のイオンは空気中に送出されることによって、空気中の浮遊細菌やウィルスに付着し、その際に起こる反応によって水酸基ラジカル(・OH)を生じ、その活性によって殺菌もしくは不活化する。
【0035】
図3に見るように、イオン発生装置5は、所定間隔離間して設置される複数のイオン発生部51a、51b、52a、52bを有し、この複数のイオン発生部の並び方向を、送風経路7の流通方向に交差する方向である拡幅された幅方向としている。また、イオン発生装置5のイオン発生部の並び方向の寸法に比べて、シロッコファン6のファン吹出口寸法が小さく、シロッコファン6が吹出した気流を、イオン発生部51a、51b、52a、52bを包括する幅まで拡大することが必要となっている。
【0036】
このような場合に、送風経路の幅方向に気流を片寄らせることなく均一に流通させることにより、拡幅された送風経路(第二送風経路7b)の幅方向に複数のイオン発生部を配置して、幅方向にイオンを均一に含んだ気流を送出することができる。すなわち、複数のイオン発生部で発生したイオンを送風経路の幅方向に略均等に含ませた気流を流通させることができる。
【0037】
そのため、図3の実施例では、シロッコファン6の気流吹出し方向は、送風経路7の気流流通方向の中心線に対して角度σだけ傾斜するようにしている(図5参照)。すなわち、本実施形態は、ケーシング6aが、シロッコファン6を囲む渦巻き部60aと、この渦巻き部60aの外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部60dと内周部に形成されファン吹出口に至るのど部60bと、を備えるとともに、前記直線部60dの向きを送風経路の流通方向の中心線に対して所定角度傾斜して設置したものである。ここで、本発明の基礎となるシロッコファンを用いた送風装置の第一実施形態例について図6A、図6Bを用いて説明する。この説明において、シロッコファンの気流吹出し方向は、ケーシングに接続される送風経路の気流流通方向の中心線を基準としている。
【0038】
図6Aに、送風装置V1Aaの気流の吹出し状態を示す概略説明図を示し、図6Bには、調整された第一実施形態の送風装置V1Aの気流の吹出し状態を示す。すなわち、図6Aにおいては、直線部10dは送風経路の中心線と平行に設置されている。シロッコファン10はファン10aの円周の接線方向に風を送る特性がある。一方でシロッコファン10は、その外側に気流をガイドするケーシングを備えており、ケーシングにはファン吹出口10b、渦巻き部10c、直線部10d、のど部10eが設けられている。
【0039】
のど部10eは、渦巻き部10cの始点となる部分で、ファン10aとの間隔が最も狭く、ファン10aの円周方向に沿って移動する気流を堰き止め、ファン吹出口10bに向かわせる働きをする。渦巻き部10cはファン10aによって送り込まれてくる空気を集めてファン吹出口10bへ導く働きをする部分で、その半径を次第に拡大しながら直線部10dに繋がる。直線部10dは気流を整えて吹出させる働きをする。
【0040】
シロッコファン10は特性上ファン10aの接線方向に気流を送出するので、ファン吹出口10bの一方端でのど部10eに近いところにある端部10f近傍では、ファン10aと端部10fとを結ぶ接線の方向に気流が送出される。ファン吹出口10bの他方端で直線部10dに近い端部では、直線部10dと略平行の気流が送出される。
【0041】
渦巻き部10cで集められた気流は、その遠心力のために外側に多く存在するため、ファン10aで吸い込まれた空気の多くが渦巻き部10cの内壁に沿って移動して直線部10dまで導かれ、ファン吹出口10bから前方に向けて送出される。このことから判るように、ファン吹出口10bから送出される気流は、直線部10dが長ければ長いほど、平行で方向性を持った気流となる。
【0042】
以上説明したようなシロッコファンの特性は、シロッコファン10のファン吹出口10bに接続されている送風経路がファン吹出口10bの幅と同じ程度の幅で形成される場合や、この幅方向にほんの少し広がっている場合には、ファン吹出口10bから送出された気流は送風経路の幅一杯に広がって進行するので特に問題はないが、本実施形態のように、シロッコファンのファン吹出口10bの幅に対して送風経路の幅が大きく拡大されているような場合には、うまく送風経路内に広がらずに進行して、気流の片寄りが発生する。
【0043】
特に、直線部10dに近いファン吹出口10bの部分では気流が直進してしまうため、紙面の下方向に拡大された送風経路部分には気流が行き渡らないという不都合が生じる。このような状態で、送風経路中にイオン発生装置5を設置する場合、イオン発生部を通過する気流に片寄りがあるために、イオンが効率よく搬送されないことが起こる。特に、極性の異なるイオンを同時に発生させる場合には、両極性のイオンがバランスを崩す原因となってしまう。
【0044】
本実施形態はこのような事態に対応するためになされたものであり、以下に本実施形態におけるシロッコファンの搭載方法についてさらに説明する。
【0045】
図6Aにおいて、シロッコファン10から送出される風と、送風経路の中心線つまり直線部10dとがなす角度の一番大きな角度をθとする。この角度θを取る気流は、のど部10eに近い吹出口端部10fから送出される気流A2aが該当する。
【0046】
図6Bには図6Aで説明したシロッコファン10をファン10aの回転軸を中心にファン10aの回転方向と逆の(図中の時計回り)にθ/2だけ回転させた状態が示されている。すなわち、図6Bには、直線部10dが角度θ/2だけ図中の下向きに調整された姿勢でシロッコファン10を設置した第一実施形態の送風装置V1Aを示す。
【0047】
上記説明の通り、シロッコファン10の吹出し気流はファン吹出口10bの全長に亘って均等ではなく、吹出し方向は部分毎に異なり、一方の端部10fにおいて最も大きな傾き角度をもって吹出される。従って、本実施形態では、最大となる吹出し角度θの1/2相当角度だけシロッコファン10を回転させて設置している。
【0048】
このようにすることで、ファン吹出口の一方の端部10f近傍から送出される最も大きな傾き角度を持つ気流A2が、元の吹出し方向に対して上方にθ/2の傾きとなり、直線部10dに近い最も傾きの小さい吹出し気流A1は下方にθ/2傾けて送出することが可能になる。すなわち、シロッコファン10の下流側に、プラスθ/2およびマイナスθ/2だけ気流を拡大して送出できる。すなわち、元来の送風経路の中心線に対してその上下に略均等に拡大した気流を送出していることになる。
【0049】
上記したように、シロッコファン10から送出される風をファン吹出口の幅方向の左右に略均等な拡がり角度で拡散する適当な角度に直線部10dを傾斜させることで、シロッコファン10から送出される風が送風経路内に片寄ることなく均一に流通させることができる。すなわち、シロッコファン10を搭載した送風装置V1Aにおいて、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる。
【0050】
このような構成のシロッコファン10を用いた送風装置V1Aを図3に示すイオン発生機M1が備えた構成であれば、第一送風経路7aと第二送風経路7bを介してイオン発生部に気流を送出することにより、イオン発生部51a、51bおよび52a、52bに気流が一様に流れていくので、本体の吹出口2から均等にイオンを送出することができる。
【0051】
このような構成は図5に示す設置傾斜角度σを前述したθ/2とすることで実現できる。また、より好ましくは第一送風経路7aの拡大角度を±θ/2となるように形成しておくのがよい。気流の拡大角度が送風経路の拡大角度よりも小さい場合には、気流と送風経路の間にできた空間にも気流が拡大しようとするため気流の拡大損失が発生しやすく、エネルギー損失と騒音発生の原因となりやすい。
【0052】
また、本実施形態に係るイオン発生機M1は、気流の拡大を助けるために気流拡大装置7cを設けている。気流拡大装置7cは、例えば三角柱形状で、底面部分の三角形の一頂点が拡幅する第一送風経路7aと一定幅に拡幅された第二送風経路7bとの接続部分に位置し、他の2頂点を気流流通方向の下流側に位置するように形成される。
【0053】
また本実施形態では、第一送風経路7aと第二送風経路7bとの接続部分に最も風上側の頂点が設けられているが、最も風上側の頂点は第一送風経路7aにあってもよい。このようにすることで、強制的に気流中央部の流れを広げて送風経路の拡大角度が±θ/2よりも大きい場合にも対応できる。
【0054】
次に、図7A、図7Bを用いて他の実施形態の送風装置について説明する。図7Aは、送風装置V1Baの気流の吹出し状態を示す概略説明図を示し、図7Bには、調整された第二実施形態の送風装置V1Bの気流の吹出し状態を示す。
【0055】
前述した第一実施形態の送風装置V1Aは、ファン吹出口10bが直線部10dに対して略直角に形成され、直線部10dはファン10aの半径と、のど部10eからファン吹出口10bの一方の端部10fまでの距離を足したものよりも長く形成されている。そのため、直線部10dに沿う気流A1の吹出し方向は直線部10dの延長と同じ方向になっている。これに対してこの第二実施形態の送風装置M1Bは、直線部11dがファン11aの半径もしくはそれ以下に形成されている。このようなケーシングは、シロッコファン11を搭載すべき筐体、もしくは設置空間が小さいときにシロッコファン11の全長を抑える目的で使用されることがある。
【0056】
図7Aに示すシロッコファン11はファン11aの周りに気流をガイドするケーシングを備えており、ケーシングにはファン吹出口11b、渦巻き部11c、直線部11d、のど部11eが設けられている。
【0057】
のど部11eは渦巻き部11cの始点となる部分でファン11aとの間隔が最も狭く、ファン11aの円周方向に沿って移動する気流を堰き止め、ファン吹出口11bに向かわせる働きをする。渦巻き部11cはファン11aによって送り込まれてくる空気を集めてファン吹出口10bへ導く働きをする部分で、その半径を次第に拡大しながら直線部11dに繋がる。直線部11dは第一実施形態の送風装置V1Aと異なり、ファン11aの半径と同程度の長さしかなく11gが終端となっている。従って、ファン吹出口11bは図に示すように直線部11dに対して斜めに交差する。
【0058】
前述したように、シロッコファン11は特性上ファン11aの接線方向に気流を送出するので、ファン吹出口11bの一方端でのど部11eに近いところにある端部11f近傍では、ファン11aと端部11fとを結ぶ接線の方向に気流A2が送出される。これは、先に示した第一実施形態の送風装置V1Aと同じである。しかし、ファン吹出口11bの他方端で直線部11dに近い端部11gでは、直線部11dと略平行の気流とファン11aと端部11gとを結ぶ接線方向に吹出す気流A11が送出される。
【0059】
渦巻き部11cで集められた気流は、直線部11dまで導かれるが直線部分が短いために遠心力が残り、さらにファン11aから端部11gへの接線方向に気流A11が直接吹出されるため、結果として、気流がファン吹出口11bから斜め方向に向けて送出される。
【0060】
このような状態において、のど部11eに近い端部11f近傍の気流方向と接続される送風経路の気流流通方向の中心線とがなす角度をθ1とし、直線部11dに近い端部11g近傍の気流方向となす角度をθ2とすると、両方の気流の傾き角度を略同等とするためには、各々の気流の吹出し角度θ1とθ2の平均値を求め、シロッコファン11をその相当角度だけ、ファン11aの回転軸を中心にファン1aの回転方向と逆方向に回転させるとよい。
【0061】
傾き角度θ1とθ2は回転方向が異なるので、これらの平均値を求めることは、θ1とθ2の差を求めて、その値の1/2を求めることと同じになる。このようにすることで、吹出口11bの一方の端部11fを通過する最も大きな傾きを持つ吹出し気流A2が、元の吹出し方向に対して図中の上方に(θ1−θ2)/2の傾きとなり、直線部11dに近い吹出し気流は図中の下方に(θ1−θ2)/2傾けて送出することが可能になる。
【0062】
図7Bには図7Aで説明したシロッコファン11をファン11aの回転軸を中心にファン11aの回転方向と逆の(図中の時計回り)に(θ1−θ2)/2だけ回転させた状態が示されている。すなわち、図7Bには、直線部11dが角度(θ1−θ2)/2だけ図中の下向きに調整された姿勢でシロッコファン11を設置した第二実施形態の送風装置V1Bを示す。
【0063】
このようにすることで、元来の送風経路の中心線に対してその上下に(送風経路の幅方向に)略均等に拡大した気流を送出できる。このような構成のシロッコファン11を用いた送風装置V1Bを図3に示すイオン発生機M1が備えた構成であれば、第一送風経路7aと第二送風経路7bを介してイオン発生部に気流を送出することにより、イオン発生部51a、51bおよび52a、52bに気流が一様に流れていくので、本体の吹出口2から均等にイオンを送出することができる。
【0064】
上記したように、第一実施形態の送風装置V1Aにおいては角度θ/2だけ、シロッコファンの吹出し角度を調整することで、シロッコファンから送出される風が送風経路内に片寄ることなく均一に流通させることができ、第二実施形態の送風装置V1Bにおいては角度(θ1−θ2)/2だけ、シロッコファンの吹出し角度を調整することで、シロッコファンから送出される風が送風経路内に片寄ることなく均一に流通させることができる。
【0065】
すなわち、第二実施形態の送風装置V1Bにおけるθ2を0とした場合が、第一実施形態の送風装置V1Aに該当することになって、両者は同じことを言っていることになる。
【0066】
言い換えれば、傾斜させる直線部の所定角度は、のど部に近いファン吹出口部分から送出される気流と、直線部に近いファン吹出口部分から送出される気流とが、各々送風経路の流通方向の中心線に対して成す角度の平均値相当角度であって、当該平均値相当角度だけ、シロッコファンをファンの回転方向の逆方向に傾けることが好ましい。この構成であれば、シロッコファンから送出される風をファン吹出口の幅方向の左右に略均等な拡がり角度で拡散させることができる。
【0067】
上記したように、ケーシングの直線部の向きが送風経路の流通方向の中心線に対して所定角度σ(第一実施形態の送風装置においては角度θ/2、第二実施形態の送風装置においては角度(θ1−θ2)/2)傾斜して設置することで、シロッコファンから送出される風が送風経路内に片寄ることなく均一に流通させることができる。
【0068】
すなわち、シロッコファンから送出される気流のうち、送風経路に対して傾斜角度が最大の気流と最少の気流とが各々成す角度の平均値相当角度だけシロッコファンをファンの回転方向と逆方向に傾斜させて設置することにより、シロッコファンを搭載した送風装置において、気流の片寄りを抑制して送風経路内を均一に流通させることが可能となる送風装置を得ることができる。
【0069】
上記したように、本発明に係る送風装置によれば、シロッコファンから送出される風の片寄りを活かして送風経路内で気流を均等に拡大するので、シロッコファンを搭載した空気調和機やその他の電気機器において、新たな構成を加えることなく、吹出し気流を均等化して吹出口から送出することができる。
【0070】
そのために、この送風装置と、正負の両イオンを発生するイオン発生装置を備えた本発明に係るイオン発生機によれば、イオン発生装置が発生したイオンを空間中にバランスよく送出して効率よく拡散することができる。
【0071】
従って、シロッコファンを使用するイオン発生機において、送風経路内に気流を行き渡らせることができるため、従来よりも効率よく空間に正負のイオンを拡散させることができる。特に、正イオンおよび負イオンのバランスを重視しながら正負のイオンを送出する場合には、簡単に実施できる手段である。また、気流ガイドやベーンなどの圧力損失を伴う構造体を使用しないので、無駄にエネルギーを使用することなく、騒音の低下にも繋がる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
そのために、本発明に係る送風装置は、細菌などの殺菌、ウィルスやアレルゲンなどの不活性化、空間や物品の除電効果などを発揮するための正負のイオンを均一に送出することが求められるイオン発生機に好適に利用可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1 吸込口
2 吹出口
4 ケース
5 イオン発生装置
51a、52a 正イオン発生部
51b、52b 負イオン発生部
6 シロッコファン
10 シロッコファン(第一実施形態)
11 シロッコファン(第二実施形態)
7 送風経路
7a 第一送風経路
7b 第二送風経路
V1 送風装置
V1A 送風装置(第一実施形態)
V1B 送風装置(第二実施形態)
M1 イオン発生機
FL1、FL2 空気流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロッコファンと、このシロッコファンを囲むケーシングと、該ケーシングの出口に接続され前記シロッコファンのファン吹出口を前記シロッコファンの回転軸に垂直な面内に拡大する送風経路と、を備える送風装置において、
前記ケーシングは、前記シロッコファンを囲む渦巻き部と、この渦巻き部の外周部から接線方向に延設されファン吹出口に至る直線部と内周部に形成されファン吹出口に至るのど部と、を備えるとともに、前記直線部を、前記送風経路の流通方向の中心線に対して所定角度傾斜して設置したことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記所定角度は、前記のど部に近いファン吹出口部分から送出される気流と、前記直線部に近いファン吹出口部分から送出される気流とが、各々前記送風経路の流通方向の中心線に対して成す角度の平均値相当角度であって、当該平均値相当角度だけ、前記シロッコファンをファンの回転方向の逆方向に傾けたことを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送風装置とイオン発生装置とを備えたイオン発生機であって、
前記シロッコファンのファン吹出口に連なる送風経路が、前記シロッコファンの回転軸に垂直な面内に徐々に拡幅される第一送風経路と拡幅された広幅の第二送風経路とを有し、この第二送風経路に前記イオン発生装置を配設したことを特徴とするイオン発生機。
【請求項4】
前記イオン発生装置は、所定間隔離間して設置される複数のイオン発生部を有し、この複数のイオン発生部の並び方向を、前記送風経路の流通方向に交差する方向としたことを特徴とする請求項3に記載のイオン発生機。
【請求項5】
前記イオン発生部は、正イオンを発生する正イオン発生部と負イオンを発生する負イオン発生部とを備え、前記イオン発生装置は、正イオンと負イオンを同時に発生することを特徴とする請求項4に記載のイオン発生機。
【請求項6】
前記正イオンはH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンはO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴とする請求項5に記載のイオン発生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2013−93173(P2013−93173A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233906(P2011−233906)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)