説明

送風装置

【課題】シロッコ型などの遠心型ファンを用いた送風装置において、送風口での風切り音の低減化を目的としたものである。
【解決手段】駆動源で回転駆動される遠心型のファン4を内設したケーシング5の送風口6近傍で、その上流側内壁に高圧渦発生部9を配置して、ファン4からの空気流がこの高圧渦発生部9で発生した高圧渦によりケーシング5の内壁から離れるように内方向へ押圧されて流動するようにした。したがって、送風口6のエッジでの風切り音の発生を抑えることができるものである。高圧渦発生部9は、送風口6から所定量ケーシング5内に突入し、その内壁との間に三角形の空間を構成するバッフル10で形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロッコ型送風機などの遠心型送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、遠心型送風装置にあって、そのケーシングの送風口には送風路に臨んだ形で内側エッジ(段差)がどうしても存在することとなる。
【0003】
また、ダクトを接続する場合、その接続部からの空気流出を防ぐ上からこのダクトを送風口部分の外周に嵌合させていたため、やはり、前記内側エッジ(段差)が存続し続けるものであった。
【0004】
このように内側エッジ(段差)が存在すると、ケーシングから出て行く空気の一部、つまり、ケーシング内壁にそって流動する空気が内側エッジの後側に回りこみ、不快感を伴う耳障りな風切り音を発生していた。
【0005】
遠心型送風装置は、ファンの遠心力で外周方向への空気流を生起させ、これをケーシングの作用で一方向へ送出するものであるから、特に、風切り騒音は送風口の外周側で発生するものである。
【0006】
内側エッジでの風切り騒音対策ではないが、従来、この種遠心型送風装置において、ケーシングにおける送風口近傍で、かつその外周側中央部に空気の流れに対してなだらかな傾斜状突条を形成したものは見受けられる(例えば、特許特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭60−194195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたものは、送風口での風速分布を改善するものであって、つまり、遠心型送風機では、そのファンの吸気口の位置との関係上、送風口における、特に外周側においてその風速分布が中央部ほど高くなる傾向となり、乱流などの要因となるところから、相当部分になだらかな突出部を設けて風速分布の均等化を図ったものである。
【0008】
しかしながら、このものでは突出部が風速分布の均等化面で効果を奏するけれども、送風口のエッジにおける風切り騒音の低減には直接つながるものではない。すなわち、空気流はなだらかな突出部にそって流れ、結局はエッジの後側に回り込むこととなる。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を解決したものであって、静音化面ですぐれた送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の送風装置は、駆動源で回転駆動される遠心型のファンと、このファンを内設するケーシングとを具備し、前記ケーシングの送風口近傍でその上流側内壁には高圧渦発生部を配置して、ファンからの空気流がこの高圧渦発生部で発生した高圧渦によりケーシングの内壁から離れるように内方向へ押圧されて流動するようにしたものである。
【0011】
したがって、送風口の内側エッジから離れた形で空気が流れ、その後側への巻き込みがなくなることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の送風装置は、高圧渦によりケーシングの内壁から離れるように内方向へ押圧されて送風口の内側エッジから離れた形で空気が流れ、その後側への巻き込みを防いだところから、風切り音などの騒音発生がなくなり、静かな送風が実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の送風装置は、駆動源で回転駆動される遠心型のファンと、このファンを内設するケーシングとを具備し、前記ケーシングの送風口近傍でその上流側内壁には高圧渦発生部を配置して、ファンからの空気流がこの高圧渦発生部で発生した高圧渦によりケーシングの内壁から離れるように内方向へ押圧されて流動するようにしたもので、送風口の内側エッジから離れた形で空気が流れ、その後側への巻き込みがない。
【0014】
高圧渦発生部の配置位置は、ケーシングの送風口近傍で、しかも外周側に設定することが実際上最も効果があるであろう。
【0015】
また、高圧渦発生部は、空気流動方向にそって複数段にわたって配置することも考えられる。
【0016】
さらに、ケーシングの送風口にダクトを外嵌合して接続したものでは、このダクトの上流側端部から高圧渦発生部を突設することも考えられる。
【0017】
高圧渦発生部の具体的構成としては、空気の流動方向上流側へ斜めに突出するようにバッフルを位置させ、このバッフルを介して回り込む空気により高圧渦を形成するようにした。
【0018】
そして、ダクトの途中には温風発生手段や脱臭手段を配置することが考えられ、特に、これらを組み込んだ送風装置を便座装置に組み込めば、静音化対策で有効である。
【0019】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜3において、ケース1内には送風装置2とこれに接続されたダクト3が収納されている。
【0021】
送風装置2は、シロッコ型などの遠心型のファン4と、このファン4を内設したケーシング5とで構成されており、モータなどの駆動源を具備しているものである。そして、ケーシング5の送風口6にダクト3が接続されている。
【0022】
空気流への影響を可及的に小さくするために、前記ダクト3は送風口6の口縁外周に嵌合されており、そのために、前記送風口6とダクト3との間には段差7が形成されることおなる。
【0023】
前述したように、段差7の存在は、ファン4を介して送出された空気がケーシング5を案内として送風口6からダクト3に流動する際、その内側エッジ8で段差7に回り込み、そこに風切り騒音を発生する。特に、この種、遠心型送風装置では、空気流速の大なる送風口6の外周部位で発生しやすいものである。
【0024】
そこで、本実施の形態では、送風口6の近傍でその上流外周側内壁に高圧渦発生部9を
配置した。つまり、ファン4からの空気流がこの高圧渦発生部9で発生した高圧渦Aによりケーシング5の内壁から離れるように内方向へ押圧されて流動するようにした。
【0025】
さらに詳述すると、ダクト3の上流側端部より斜め下方へのびるバッフル10を一体的に形成して高圧渦発生部9を構成した。このバッフル10は送風口6から所定量ケーシング5内に突入しており、その内壁との間に三角形の空間11を形成しているものである。
【0026】
ダクト3の途中には電気ヒータなどを装備した温風発生手段12が配備されており、例えば、ファン4の回転数に応じてその出力を制御器13で制御するようにしてある。
【0027】
上記の構成において、ファン4から送り出された空気はケーシング5で案内されて送風口6に至る。そして、その空気流のうち外周部を流動する一部空気は、高圧渦発生部9のバッフル10に案内されて空間11に達し、渦流となる。この渦流はバッフル10により受止められた空気であるがために圧力として上昇した、いわゆる高圧渦Aを呈するものとなる。
【0028】
前記高圧渦Aは、ケーシング5における外周側の流れを内周方向へ押圧して実質的に偏流させる。したがって、送風口6の外周部位全体にバッフル10を設けていなくても、その空気流は内側エッジ8より離れて存在することとなり、その結果、風切り音の発生を防ぐことができるものである。
【0029】
もちろん、エッジ8の形成領域は、送風口6の外周部位全体でも構わず、また、外周部位から側壁の外周に亘って形成することも、或いは、送風口6の全周に設けることも考えられる。
【0030】
さらに、バッフル10はケーシング5の内壁より一体的に形成することも想定の範囲であり、この場合には、ダクト3の有無に関係のない機能が発揮できることとなる。
【0031】
バッフル10、すなわち、高圧渦発生部9の形成個数としては1個に限らず、例えば、空気の流れ方向に複数段にわたって形成することも充分考えられるものである。
【0032】
バッフル10の通風路への突出高さは、空気流を内周方向へ押圧し得る範囲で圧力損失が最小限となるように考慮する。
【0033】
以上のように構成により、本実施の形態においては、風切り音が発生しやすい遠心型送風装置におけるケーシング5の送風口外周側にバッフル10を設置したことにより、特にケーシング5とダクト3の接合部で発生する耳障りな風切り騒音を低減できるものである。
【0034】
今、ファン径が約60mm、送風口6が40mm×30mm程度の送風装置の場合は、バッフル10の突出長さを10mm、幅を10mm程度に設定することで充分な効果が得られるものである。
【0035】
また、図1のダクト3は風向を矯正するためにダクト3自身が曲がった形状となっている。一般的には、こうすることで送風装置全体の省スペース化が図れるが、ダクト3の形状による圧力損失のため風量が低減する。
【0036】
しかし、バッフル10の設置箇所および壁面との角度を調節することで送風口6からの風向を調節することができる。そうすることでダクト3によって風向を矯正されるより圧力損失が少なくなり、送風装置全体の風量を一定とするときファン4の回転数を下げるこ
とができ、結果としてさらに騒音の低減が図れる。
【0037】
さらに、本実施の形態においては、ダクト3内に温風発生手段12を設置し温風を発生する構成としたが、これに限るものではなく、ダクト3内に脱臭材を設置することにより脱臭機能を備えた送風装置とすることが可能であり、また、加熱手段と脱臭材の両方を設置することも可能である。
【0038】
そして、これを便座などに搭載すれば静音化面ですぐれた商品として完成させることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる送風装置は、従来の構成を殆ど変えることなく騒音の低減化が図れるため、遠心型ファンを用いた送風装置を搭載した様々な製品に利用可能である。具体的には、乾燥機、脱臭機、掃除機、除湿機、温水洗浄便座、エアコンの室外機、AV機器内部の冷却機などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態を示す温風発生用送風装置の断面図
【図2】同送風装置部の断面図
【図3】同要部拡大断面図
【符号の説明】
【0041】
3 ダクト
4 ファン
5 ケーシング
6 送風口
9 高圧渦発生部
10 バッフル
12 温風発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源で回転駆動される遠心型のファンと、このファンを内設するケーシングとを具備し、前記ケーシングの送風口近傍でその上流側内壁には高圧渦発生部を配置して、ファンからの空気流がこの高圧渦発生部で発生した高圧渦によりケーシングの内壁から離れるように内方向へ押圧されて流動するようにした送風装置。
【請求項2】
ケーシングの送風口近傍で、しかも外周側に高圧渦発生部を配置した請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
空気流動方向にそって複数段にわたって高圧渦発生部を配置した請求項1または2記載の送風装置。
【請求項4】
ケーシングの送風口にダクトを外嵌合して接続し、このダクトの上流側端部から高圧渦発生部を突設した請求項1〜3いずれか1項記載の送風装置。
【請求項5】
空気の流動方向上流側へ斜めに突出するようにバッフルを位置させて高圧渦発生部を構成し、このバッフルを介して回り込む空気により高圧渦を形成するようにした請求項1記載の送風装置。
【請求項6】
ダクトの途中に温風発生手段を配置した請求項4記載の送風装置。
【請求項7】
ダクトの途中に脱臭手段を配置した請求項4記載の送風装置。
【請求項8】
請求項6または8記載の送風装置を組み込んだ便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−32417(P2007−32417A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216734(P2005−216734)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】