説明

逆の電荷のポリペプチド類をベースにした組成物

【課題】インスリン様成長因子(IGF-I)及びインスリンのような逆の電荷を持つポリペプチド類の混合物を含有する製剤を提供する。
【解決手段】逆の電荷を持つポリペプチド類の混合物(例えばインスリン様成長因子(IGF-I)及びインスリン)と、アルギニン、リジン、グルタミン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、β-ヒドロキシシクロデキストリン、及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルからなる群から選択される賦形剤を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、インスリン様成長因子(IGF-I)及びインスリンのような逆の電荷を持つポリペプチド類の混合物を含有する製剤に関する。特に、この発明は、該製剤中で逆の電荷を持つタンパク質類の混合を可能にする選択された賦形剤を含む製剤を可能にし、賦形剤が通常溶液からタンパク質を沈殿させるタンパク質の相互作用を防止する。
【0002】
(関連技術の説明)
ヒトIGF-Iは、成長ホルモン(GH)の作用を調節するインスリン様及び細胞分裂促進的生物活性を有するソマトメジンのファミリーに属する7649ダルトンのポリペプチドである(Rinderknecht及びHumbel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73:2365(1976);Rinderknecht及びHumbel, J. Biol. Chem., 253:2769(1978))。Van Wykら, Recent Prog. Horm. Res., 30:259(1974);Binoux, Ann. Endocrinol., 41:157(1980);Clemmons及びVan Wyk, Handbook Exp. Pharmacol., 57:161(1981);Baxter, Adv. Clin. Chem., 25:49(1986);米国特許第4,988,675号;国際公開第91/03253号;及び国際公開第93/23071号。IGF-Iは3つのジスルフィド結合を含み、8.65のpIと276nmで0.645のモル吸光係数を有する。IGF-Iはヒトの体液、例えば血液及びヒトの脳髄液中に天然に生じている。殆どの組織、特に肝臓は、特定のIGF結合タンパク質と共にIGF-Iを産生する。GHと同様に、IGF-Iは強力な同化タンパク質である。Tannerら, Acta Endocrinol., 84:681-696(1977);Uthneら, J. Clin. Endocrinol. Metab., 39:548-554(1974)を参照。また、重度の病気における同化剤としてのIGF-I、成長ホルモン、インスリンの役割をレビューしているRossら, Intensive Care Med., 19 Suppl. 2:S54-57(1993)を参照されたい。
IGF-Iは、天然源、例えばヒト血清から精製されるか(Rinderknecht及びHumbel, J. Biol. Chem., 上掲)、又は組換え(例えば欧州特許第123,228号及び同128,733号)により調製することができる。IGF-Iの様々な製剤法が開示されている。これらには、例えば強酸と共にIGF-Iを含有する溶液を乾燥させることを含む、IGF-Iの乾燥組成物を調製するための方法を開示している欧州特許第440,989号、pH6のシトレートバッファー中でのIGF−Iの製剤化に関する国際公開第91/18621号、成長促進組成物におけるIGF-I及びGHの製剤化についての米国特許第5,374,620号、酢酸バッファー中でのIGF-Iの製剤化についての米国特許第5,681,814号、pH5.5から6.5をもたらす、50mmol以下の量のリン酸バッファー中にIGF-Iを含み、等張性であって注射に適した安定な溶液についてのPCT/SE94/00010、及び酸素濃度を低減させた水溶液中にIGF-Iを含有する溶液についての国際公開第95/34318号が含まれる。
【0003】
IGF-Iは、静脈ボーラス注射により投与された場合、ヒトにおいてインスリンと同様の低血糖効果を有するが、また正の窒素バランスを促進する。Underwoodら, Hormone Research, 24:166(1986)。IGF-Iはレギュラーインスリンと類似していると記載されている時間経過をもって、正常な個体(Gulerら, N. Engl. J. Med., 317:137-140(1987))と糖尿病の個体(Schoenleら, Diabetologia, 34:675-679(1991);Zenobiら, J. Clin. Invest., 90:2234-2241(1992))の双方においてグルコース低下効果を働かせることが知られている(さらに、Sherwinら, Hormone Research, 41(Suppl.2):97-101(1994);Takanoら, Endocrinol. Japan, 37:309-317(1990);Gulerら, Acta Paediatr. Scand.(Suppl.), 367:52-54(1990)を参照のこと)。また、rhIGF-Iの投与に続いて低血糖症が増加することを報告しているKerrらの「低血糖症への反応とその認識に対するインスリン様成長因子Iの効果」American Diabetes Association(ADA), 52nd Annual Meeting, San Antonio, Texas, June 20-23, 1992を参照のこと。さらに、rhIGF-Iの単一投与により、IDDMを有する青年の一夜のGHレベルとインスリン要求度が減少する。Cheethamら, Clin. Endocrinol., 40:515-555(1994);Cheethamら, Diabetologia, 36:678-681(1993)。
Schalchら, J. Clin. Metab.により報告されているように、組換えヒトIGF-IのII型糖尿病への投与は、血清インスリンを低下させ、平行してCペプチドレベルを減少させることを実証しており、これはIGF-I治療の5日後の膵臓インスリン分泌の低減を示している。この効果はFroeschら, Horm. Res., 42:66-71(1994)によって独立に確認されている。また、正常なラットにおけるインビボ実験では、IGF-Iの注入が膵臓のインスリン放出を阻害することが示されている。Fursinnら, Endocrinology, 135: 2144-2149 (1994)。さらに、膵臓灌流製剤において、IGF-Iがまたインスリン分泌を抑制する。Leahyら, Endocrinology, 126:1593-1598(1990)。ヒト及び動物でのインスリン分泌に対するIGF-Iのインビボ阻害効果が明らかになっているにもかかわらず、インビトロ実験では、このような一貫した結果が出ていない。
【0004】
IGF-Iとグルコースの双方を様々な濃度で使用するインビトロ実験では、インスリン分泌の様々な度合いの阻害性、例えば生理学的レベルのIGF-Iを利用するインスリン放出において効果なし(Sreradzeriら, J. Endocrinol., 117:59-62(1988))から30%低減までといったことが示されている。Van Schravendijkら, Diabetologia, 33:649-653(1990)。ヒト膵臓小島を使用する最近の研究では、Eizirikら, Eur. J. Endocr., 133:248-250(1995)では、培地のインスリン蓄積又はグルコース刺激インスリン放出にはIGF-Iが効果を持たないことが見出されている。研究者は、インスリン分泌に対してインビボで見られるIGF-Iの効果が、膵臓へのその直接の効果というよりもむしろIGF-Iの膵臓外効果に二次的である可能性があると推測している。よって、インスリン分泌に対するIGF-Iの作用機序と部位は十分には理解されていない。
短い期間のrhIGF-I投与により誘発される数々の生化学的変化が文献に記載されている。これらの中でも顕著なものは、オイグリセミッククランプ(euglycemic clamp)中の健康な被験者において報告されている組換えヒトIGF-I(rhIGF-I)のホスフェート及びカリウム低下効果である。Boulwareら,「ヒトにおけるインスリン様成長因子Iのホスフェート及びカリウム低下効果:インスリンとの比較」The Endocrine Society, 74th Annual Meeting, San Antonio, Texas, 1992, 6月24-27日。また、Gulerら, Acta Paediatr. Scand.(Suppl.), 367, 上掲を参照。
組換えヒトIGF-I(rhIGF-I)はインスリン感受性を改善する能力を有している。例えば、rhIGF-I(1日2回の70μg/kg)は、筋緊張性ジストロフィーを患っている非糖尿性インスリン耐性患者においてインスリン感受性を改善した。Vlachopapadopoulouら, J. Clin. Endo. Metab., 12:3715-3723(1995)。Saadらは、Diabetologia, 37:アブストラクト40(1994)において15日間のrhIGF-I治療(1日2回の25μg及び100μg/kg)後に、肥満と障害性グルコース耐性を患っている成人において、インスリン感受性が用量依存的に改善されたことを報告している。また、rhIGF-Iは重度のA型インスリン耐性の患者(Schoenleら, Diabetologia, 34:675-679(1991);Morrowら, Diabetes, 42(Suppl.):269(1993)(要約書);Kuzuyaら, Diabetes, 42:696-705(1993))、又は非インスリン依存性の真性糖尿病を持つ他の患者において、インスリン感受性と糖血症の調節度合いを改善した。Schalchら,「II型真性糖尿病における組換えヒトインスリン様成長因子I(rhIGF-I)の短期間の代謝効果」Spencer EM 編, インスリン様成長因子の現代的概念(New York:Elsevier:1991)pp.705-715;Zenobiら, J. Clin. Invest., 90:2234-2241(1993)。
【0005】
インスリン耐性がI型糖尿病の顕著な特徴であると考えられていないが、それがある個体には明らかに存在し、青年期においては臨床的にもっとも重要である。GHはよく知られた抗インスリン効果を有しているので、青年期においてGHレベルが増加すると、かなりのこのインスリン耐性が媒介されうる。Pressら, 上掲;Defeoら, 上掲;Campbellら, N. Eng. J. Med., 上掲, Campbellら, Metabolism, 上掲;Ariasら, 上掲;Davidsonら, 上掲。
インスリン耐性を生じるいくつかの臨床的フェノタイプの病因と選択された代表的な被験者に対するIGF-I投与による可能性な効果の一般的な概要については、いくつかの文献に与えられている。例えば、「人におけるヒトインスリン様成長因子(IGF-I)に対する血行力学及び代謝応答」:インスリン様成長因子の現代的概念(Spencer EM,編), Elsevier, New York, pp.219-224(1991);Quinnら, New. Engl. J. Med., 323:1425-1426(1990);Schalchら,「II型真性糖尿病における組換えヒトインスリン様成長因子I(rhIGF-I)の短期間の代謝効果」:インスリン様成長因子の現代的概念, (Spencer EM,編), Elsevier, New York, pp.705-714(1991);Schoenleら, Diabetologia, 34:675-679(1991);Usalaら, N. Eng. J. Med., 327:853-857(1992);Liebermanら, J. Clin. Endo. Metab., 75:30-36(1992);Zenobiら, J. Clin. Invest., 90:2234-2241(1992);Zenobiら, J. Clin. Invest., 89:1908-1913(1992);Kerrら, J. Clin. Invest., 91:141-147(1993)を参照されたい。国際公開第94/16722号には、少なくとも約7日の間、修飾有効量のIGF-Iに細胞を暴露することにより、細胞障壁特性を慢性的に修飾する方法、及びインスリン耐性の慢性的改善又は逆転の方法が開示されている。しかしながら、IGF-Iが120-160μg/kgの用量で毎日2回、診療所でII型の糖尿病患者の治療のために使用された場合、その副作用が治療の有益性を越えた。Jabriら, Diabetes, 43:369-374(1994)。また、IGF-Iを用いた患者の治療の際に観察された副作用に関して、Wilton, Acta Paediatr., 383:137-141(1992)も参照されたい。
米国特許第4,988,675号には、IGF-Iを用いたII型糖尿病の治療が記載されており、米国特許第5,466,670号には、IGF-Iを用いたI型糖尿病の治療が記載されており、国際公開第91/03253号には重度のインスリン耐性糖尿病を治療するためにIGF-Iを使用することが報告されており、国際公開第96/01124号には糖尿病を予防し、糖尿病の臨床的発病を遅延し、かつ糖尿病に対する保護効果を提供するためにIGF-Iを使用することが記載されている。
【0006】
II型糖尿病において選択される治療法は併用療法となっている。このような併用療法は、歴史的に、様々な形態のインスリン、短時間作用するインスリン、中間作用及び長時間作用するインスリンの使用を含む。インスリン製剤の総括論文には、Kissel及びVolland, Deutsche Apotheker-Zeitung, 134:25(1994)及びCampbell, Pharmacy Times, 59:40(1993)が含まれる。より最近では、スルホニルウレア及びビグアナイド剤等の経口的に付与される他の抗糖尿剤とインスリンとの併用が一般化している。
IGFとインスリンとの併用については、Gennら, Biochem. Arch., 5:53-59(1989)にインスリンとIGF-IIとの同化効果が開示されている。Jacobら, Am. J. Physiol., 260:E262-E268(1991)には、自然発症糖尿病BB/wラットにおけるIGF-Iとインスリンの代謝効果が開示されている;さらに米国特許第4,876,242号を参照。またさらに、インスリンとIGFを用いた治療後の心臓タンパク質合成の刺激については、Fullerら, Biochem. Soc. Trans., 19:277S(1991)に開示されている。実験は新鮮に単離された心筋細胞を用いてインビトロにおいて実施されている。一晩絶食させたイヌにインスリンとIGFとを用いて治療を施した後のタンパク質代謝に対する効果は、Umplebyら, Eur. J. Clin. Invest., 24:337-344(1994)により報告されている。Shojaee-Moradieらはイヌのグルコース代謝に対するIGF-I、インスリン及びそれらを組合せた注入物の効果の比較を開示している。Randazzo及びJarett, Exp. Cell Res., 190(1):31-39(1990)には、ヒトインスリンレセプターを発現するマウス線維芽細胞の成長の特徴付け及びそのDNA合成に対するIGF-Iとインスリンの効果が開示されている。Tomasら, Diabetes., 45:170-177(1996)には、糖尿病のラットに対するIGF-Iとインスリンの組合わせ注入の効果が開示されている。Dungerら, Metabolism, 44:119-123(1995)では、インスリンと組み合わされてIGF-Iが、青年期におけるIDDM治療へのさらなるアプローチを提供しうることが示唆されている。Mathe, Biomedicine及びPharmacotherapy, 49:221-224(1995)には、真性糖尿病の治療のための、インスリンに関連したIGFの役割が開示されている。
【0007】
特許文献については、米国特許第4,988,675号が、II型糖尿病の治療のために、通常よりも少量のインスリンとのIGF-Iの組合わせを開示している。1996年1月18日に公開された国際公開第96/01125号には、窒素バランスの低減を相殺し、タンパク質合成の低減を相殺する医薬の製造においてインスリンとIGF-Iとを併用することが開示されており、これは糖質コルチコイド過多によるタンパク質異化作用の治療に使用することができる。米国特許第5,091,173号には、IGF-I、IGF-II及びインスリンから選択されるIGFファミリーのメンバーを一又は複数含有し、毛髪の成長を増加させるのに十分な真皮乳頭細胞の培養物からの無細胞上清を含有する、哺乳動物の皮膚又は毛髪への局所適用に適した組成物が開示されている。
作用の持続時間と作用の始まりが異なる様々な形態のヒトインスリンが市場に存在している。Jens Brange, インスリンのガレノス製剤、インスリンの物理化学及び製薬的側面及びインスリン製剤(Springer-Verlag, New York, 1987), 17-40頁。レギュラーインスリンは六量体インスリンを含む透明な中性溶液である。短時間で作用し、その作用開始は注射後0.5時間であり、作用の持続時間は約6−8時間である。イソフェンインスリンとも呼ばれているNPH[中性プロタミンハーゲドルン(Hagedorn)]インスリンはインスリン-プロタミン複合体の結晶懸濁液である。これらの結晶は、インスリン六量体当たり、約0.9分子のプロタミンと2個の亜鉛原子を含む。Doddら, Pharmaceutical Research, 12:60-68(1993)。NPHインスリンは中間作用インスリンであり;その作用開始は1.5時間で生じ、その作用の持続時間は18−26時間である。70/30インスリンは70%のNPHインスリンと30%のレギュラーインスリンからなる。またセミレンテ(Semilente)インスリン(亜鉛インスリン複合体の非晶質沈殿物)、ウルトラレンテ(UltraLente)インスリン(亜鉛インスリンの結晶懸濁液)、及びレンテ(Lente)インスリン(非晶質及び結晶質インスリン粒子の3:7混合物)、並びに、最近イーライリリー社により市場に導入されたフマログ(Humalog)インスリン(速効作用の単量体インスリン溶液で、インスリンB鎖においてLys(B28)とPro(B29)アミノ酸とが転換した結果によるもの)がある。
【0008】
NPH-、70/30、及びレギュラーインスリンは最も広範囲に使用されているインスリンであり、1996年の処方箋において、それぞれ36%、28%及び15%を占めると計算されている。これら3つの形態のインスリンを合計すると全てのインスリン処方箋の79%になる。よって、IGF-I製剤はレギュラー、NPH-及び70/30インスリンと混合可能であることが必要であることが決定された。
典型的には、I型又はII型糖尿病を患っている患者は、血糖値を制御するために、毎日2回から4回の皮下注射を受ける。糖尿病を治療するためのインスリン以外の他の注射可能な薬剤、例えばIGF-Iを使用することは、最小回数の注射を投与することが糖尿病では望まれているために、おのずと制限される。既に1日当たり数回のインスリン注射が必要とされている投薬計画に、IGF-I投与のために、毎日さらに2回の皮下注射を加えることは現実的ではない。さらに、IGF-I及びインスリン等の2つのタンパク質を組合わせる場合、安定で、患者によく吸収され、中間の作用のインスリンを含有する製剤を得ることが必要となってくる。代謝環境の変化する要求に応じて、時間-及び標的-組織-依存的に調節された中間の作用のインスリンが、Lewittら, Endocrinology, 129:2254-2265(1991)により記載されている。
米国特許第5,788,959号には、例えばマトリックス溶液がポリマーとは異なる製薬的に活性な成分をそこに分散させているポリペプチドのような、逆の電荷を持つ水溶性ポリマーの単一相マトリックス溶液を含んでなる薬物送達体が開示されている。さらに、Burgessら, J. Pharm. Pharmacol., 43:232-236(1991)には、マイクロカプセル化の一般的な方法であるコアセルベーションを用いた、逆の電荷を持つアルブミンとアカシアの混合物の間の複合コアセルベーションが開示されている。Mauk及びMauk, Biochemistry, 21:4730-4734(1982)は、精製されたヒトメトヘモグロビンとウシ肝臓チトクロムbのトリプシン(tyrptic)断片との間の複合体形成を開示しており、各ヘモグロビンサブユニットが、2つのタンパク質の逆の電荷を持つ基の間の相補的荷電作用により一つのチトクロムbに結合するこれら分子間の相互作用モデルを報告している。さらに、欧州特許第615,444号には、逆の電荷のゼラチン又はゼラチン誘導体マトリックスに分散されたインスリンのような医薬を含むペプチド様医薬に対する経口的投与形態が開示されている。欧州特許第313,343号には、タンパク質と不純物が選択的結合が生じるような逆の電荷を有するようなpHで、イオン交換クロマトグラフィーにより、不純物から粗タンパク質を精製する方法が開示されている。
【0009】
現在、糖尿病ではNPHインスリン(中間作用中性プロタミンハーゲドルンインスリン)をレギュラーインスリンと混合している。同じシリンジ又は他の送達容器において別個のバイアルから、インスリン及びIGF-Iのような逆の電荷を持つポリペプチド類を混合し、直ちに混合物を注射又は他の方法で送達せしめることが望ましい。米国特許第5,783,556号には、NPHインスリンとIGF-Iとを混合した製剤が開示されている。米国特許第5,756,463号には、IGF-Iとインスリンとの組合せ、及び窒素バランス低減とタンパク質合成低減の相殺におけるその使用が開示されている。米国特許第4,608,364号には、糖尿病の治療用のインスリン誘導体と未変性のインスリン又はその特定の類似体の活性化合物の組合せが開示されている。この目的のために、あらゆる種類のインスリンをIGF-Iと混合すること、並びに、他のポリペプチド、例えば現在では沈殿複合体として販売されているプロタミンとインスリンとを混合することが望ましい。
【0010】
(発明の概要)
混合の際には、逆の電荷を持つ2つのポリペプチドは互いに結合して、凝集体を形成するか溶液から沈殿する傾向にある。ある種の製剤用賦形剤の使用により、IGF-Iとインスリン及びプロタミンとインスリンを含む、このようなポリペプチドを混合した際の凝集と沈殿を防止することができる。塩類、バッファー、中性アミノ酸、ポリオール、糖類及び洗浄剤等の多くの賦形剤は沈殿の防止には効果がなかった。
従って、本発明は、一実施態様では、逆の電荷の製薬的に活性なポリペプチドの混合物と、アルギニン、リジン、グルタメート(グルタミン酸)、ドデシル硫酸ナトリウム、及びβ-ヒドロキシシクロデキストリンとアルギニンとの組合せからなる群から選択される賦形剤を含有する組成物を提供するものであり、ここでポリペプチドは組成物に可溶である。
この実施態様の好ましい側面では、組成物は約7〜7.5のpHでヒスチジン等のバッファーをさらに含有しうる。
さらなる実施態様では、本発明は:
(a)有効量のポリペプチドを含有する上述の組成物を収容する容器;及び
(b)上述の組成物が有効である疾患の治療に該組成物を使用するための使用説明書;
を含むキットを提供する。
ポリペプチドがIGF-I及びインスリンである場合、疾患は好ましくは高血糖疾患である。
さらなる他の側面では、本発明は、アルギニン、リジン、グルタミン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、β-ヒドロキシシクロデキストリン、及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルからなる群から選択される賦形剤中に成分(a)として第1のポリペプチドを、成分(b)として第1のポリペプチドとは逆の電荷の第2のポリペプチドを互いに混合することを含む、上述の組成物を調製するための方法を供給する。
好ましい側面では、前記方法は、約30−40℃で所定時間、好ましくは37℃で約15分間、混合物をインキュベートする工程をさらに含み、ここで該組成物はリン酸緩衝食塩をさらに含有する。さらなる他の実施態様では、本発明は:
(a)アルギニン、リジン、グルタミン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、及びβ-ヒドロキシシクロデキストリンとアルギニンとの組合せからなる群から選択される賦形剤中に第1のポリペプチドを含む容器;及び
(b)第1のポリペプチドとは逆の電荷の第2のポリペプチドを含む容器;及び
(c)容器(a)と(b)の内容物を組合せるための使用説明書;
を含む、上述の組成物を調製するためのキットを提供する。
好ましくは、得られる混合物は製薬的に許容可能な製剤である。
さらなる他の側面では、本発明は、有効量の上述した組成物を、好ましくは注射又は注入により、哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における糖尿病等の高血糖疾患を治療する方法を提供する。
【0011】
IGF-I及びインスリン等の逆の電荷の2つのポリペプチドの混合には、双方のポリペプチドの物理的及び化学的特性が混合後に変化しないことが必要である。さらに、薬物動態学的及びグルコース薬力学的性質が混合の前と後で同じままであることが好ましい。ポリペプチドの一方がIGF-Iである場合は、製剤は最小で2年の使用期限を有するものであることが好ましい。別のポリペプチドとの混合を可能にするためには、第1のポリペプチドの製剤は透明な液状製剤、又はポリペプチド(例えばIGF-I)が結晶、非晶質の沈殿物又はタンパク質の乾燥パウダーの形態である懸濁製剤とすることができる。ここでの実施例には、インスリンと混合可能な透明な液状IGF-I製剤の開発が記載されている。
ポリペプチドがIGF-I及びインスリンである場合、目標のIGF-Iの用量は10、20又は40μg/kg/注射(又は10mg/mlのIGF-I製剤に対して1、2又は4μl/kg/注射)である。第II相臨床試験においてI型及びII型患者に使用されるインスリン用量から、最大の可能な混合比率がレギュラーインスリン:IGF-Iで6:1(vol:vol)に達することが可能であることが算出できる。最小の可能な混合比率はNPHインスリン:IGF-Iに対しては1:15(vol:vol)まで達することができる。よって、ここに記載の実施例では、1:6〜6:1(vol:vol)の範囲の混合比率がレギュラーインスリンとIGF-Iとの混合に対して実験され;1:15〜15:1(vol:vol)の範囲の混合比率がNPHインスリンとIGF-Iとの混合に対して実験され;1:15〜6:1(vol:vol)の範囲の混合比率が70/30インスリンとIGF-Iとの混合に対して実験された。
【0012】
(好ましい実施態様の記載)
A.定義
ここで用いられるところの「ポリペプチド」又は「関心あるポリペプチド」は、一般には約10より多いアミノ酸を持つペプチド及びタンパク質を意味する。哺乳動物ポリペプチドの例としては、例えば、レニン、ヒト成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子を含む成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク;α1-アンチトリプシン;インスリンA-鎖;インスリンB-鎖;プロインスリン;トロンボポエチン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリナーゼ;ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNA分解酵素;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子;カージオトロフィン-1(CT-1)等のカージオトロフィン(心臓肥大因子);血小板由来増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-α及びTGF-β等のトランスホーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CD-3、CD-4、CD-8、及びCD-19等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);プロタミン;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;抗HER-2抗体;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン(addressin);調節タンパク質;抗体;及び上に列挙したポリペプチドの任意のものの断片を含む。
【0013】
好ましい関心あるポリペプチドは哺乳動物ポリペプチド、最も好ましくはヒトポリペプチドである。このような哺乳動物ポリペプチドの例は、t-PA、VEGF、gp120、抗HER-2、抗CD11a、抗CD18、DNA分解酵素、IGF-I、IGF-II、インスリン、プロタミン、脳IGF-I、成長ホルモン、リラキシン鎖、LHRH類似体、コレシストキニン-8類似体、成長ホルモン放出因子、インスリン鎖又はプロインスリン、ウロキナーゼ、免疫毒素、ニューロトロフィン及び抗原を含む。特に好ましい哺乳動物ポリペプチドは、双方を含有する一回の注射又は投薬を与えることが望ましい十分な程度の頻度で哺乳動物に投与される組合せである。特に好ましいこのような組合せは、例えばインスリンとIGF、最も好ましくはIGF-I又はプロタミンとインスリン、又は成長ホルモンとIGF-I等のIGF、又はロイプロリド等のLHRH類似体とCCK-8等のコレシストキニン-8類似体を含む。
ここで用いられる「逆の電荷を持つポリペプチド類」又は「逆の電荷のポリペプチド類」とは、与えられたpHにおいて一つのポリペプチドが負に荷電し、また一つのポリペプチドが正に荷電していることを意味している。電荷は、例えばゲル等電点電気泳動により測定されるその等電点(pI)により、又はポリペプチドのイオン性基のpK値に基づいて決定することができる。一般的に、負の電荷を持つポリペプチドは約pH6から8で正味の負電荷であるか、又は約5を越える負の電荷を持つ残基を有する。ポリペプチドが負の電荷を持つポリペプチドとして使用されるためには、それは正の電荷の数に比べてより多くの数の負の電荷を持たなくてはならない。逆に、正の電荷を持つポリペプチドは一般に約pH6から8で正味の正の電荷を持つか、又は約5を越える正の電荷を持つ残基を有する。ポリペプチドが正の電荷を持つポリペプチドとして使用されるためには、負の電荷の数に比べてより多く数のの正の電荷を持たなくてはならない。例えば、IGF-I及びインスリンは、pH7.2の溶液において、それぞれ8.7及び5.4のpI値を有し、よって逆の電荷を持っている。さらに、pH7.4の溶液において、ロイプロリド(LHRH類似体)は正の電荷を持っている一方、コレシストキニン-8類似体(CCK-8)は4未満のpIのために負の電荷を持つ。2つの逆の電荷を持つポリマーの電荷は静電的相互作用を引き起こすのに十分である。負の電荷を持つポリペプチドの他の例には、ヘパリン、アルブミン(ウシ血清アルブミンは、pH7.1で−18の正味の負の電荷を持ち、pI4.8を有する)、及びβ-ラクトグロブリン(pH7.1で−5の正味の負の電荷を持つ、5.1のpI)が含まれる。
ここで逆の電荷を持つポリペプチド類は天然ポリペプチド、又はそれらが「製薬的に活性」であるという前提で、誘導体化された又は合成のものである。「製薬的に活性」とは、免疫アッセイ及び細胞分裂促進アッセイを含む一又は複数の生物学的アッセイにおいて効力を有するポリペプチドを意味する。例えば、製薬的に活性なポリペプチドには、免疫学的又は生物学的な意味において作用する抗原並びに抗体、及びレセプター並びにリガンドが含まれる。
【0014】
ここで用いられる「IGF-I」は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、及び好ましくはヒトを含む任意の種からのインスリン様成長因子を意味し、天然配列又は変異体であり、天然、合成、又は組換え生産の任意の供給源からのものである。ここで動物使用に好ましいのは、治療される特定の種からのIGF-Iの形態、例えばブタの治療のためのブタIGF-I、ヒツジの治療のためのヒツジIGF-I、ウシの治療のためのウシIGF-I等々である。ここでヒト使用に好ましいのは、ヒト天然配列、成熟IGF-I、より好ましいくは、例えば、1987年8月5日に公開されたEP230,869;1984年12月19日に公開されたEP128,733;又は1988年10月26日に公開されたEP288,451に記載された方法により調製されるN末端メチオニンの無いものである。より好ましくは、この天然配列IGF-Iは組換え生産され、臨床研究のためにジェネンテク・インク,サウスサンフランスシコ,CAから入手できる。
好ましいIGF-I変異体は、米国特許第5,077,276号;同5,164,370号;又は同5,470,828号;又は国際公開第87/01038に記載されたもの、すなわち、少なくとも成熟分子のN末端から3位のグルタミン酸残基を欠くもの、又はN末端において5個までのアミノ酸を欠失するものである。最も好ましい変異体は、N末端から最初の3個のアミノ酸を欠失している(脳IGF、tIGF-I、des(1-3)-IGF-I、又はdes-IGF-Iと様々に示される)。
【0015】
ここで用いられる「インスリン」は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、及び好ましくはヒトを含む任意の種からのインスリンの任意の形態を意味し、天然、合成又は組換え生産の任意の供給源からのものである。例えば、真性糖尿病-理論と実際、第4版, Harold Rifkin, MD, Ed.(Elsevier, New York, 1990), 第29章, 及びU.S. Pharmacist, 18(Nov. Suppl.)p.38-40(1993)に報告されている全てのインスリン薬剤がここで適切である。市場にある様々な形態のヒトインスリンの全て、例えばJens Brange, インスリンのガレノス製剤, インスリンの物理化学及び製薬的側面及びインスリン製剤(Springer-Verlag, New York, 1987), 17-40頁が含まれる。これらにはレギュラーインスリン、イソフェンインスリンとも呼ばれているNPH(中性プロタミンハーゲドルン)インスリン、70%のNPHインスリンと30%のレギュラーインスリンからなる70/30インスリン、セミレンテインスリン、ウルトラレンテインスリン、レンテインスリン、及びフマログインスリンが含まれる。ここで動物使用に好ましいのは、治療される特定の種からのインスリンの形態、例えばヒトの治療のためのヒトインスリンである。
ここで用いられる「疾患」という用語は、一般に、ここでの組成物中の逆の電荷を持つポリペプチド類成分での治療により恩恵を受ける任意の状態を意味し、有効量のこれらのポリペプチドで治療可能な任意の病気又は疾患を含む。これは慢性及び急性疾患、並びに哺乳動物を当該疾患にかかりやすくする病理的状態を含む。限定されないが、ここで治療される疾患の例には、良性及び悪性腫瘍;白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質性及び胞胚腔の疾患;造血関連疾患;組織成長疾患;皮膚疾患;線維形成、線維性傷害;高血糖疾患;腎臓疾患;骨関連疾患;外傷、例えば火傷、切開及び他の創傷;異化状態;精巣関連疾患;及び動脈硬化症を含む炎症、血管原性及び免疫疾患が含まれる。IGF-I及びインスリンを用いた治療で恩恵を受け得る疾患の例には糖尿病が含まれる。
【0016】
ここで用いられる「高血糖疾患」なる用語は、糖尿病の全ての形態、例えばI型及びII型糖尿病、並びに高インスリン血症及び高脂血症、例えば、肥満患者、及びインスリン耐性糖尿病、例えばメンデンホール症候群、ヴェルナー症候群、妖精症、脂肪組織萎縮性糖尿病、及び他の脂肪組織萎縮症を意味する。好ましい高血糖疾患は糖尿病、特にI型及びII型糖尿病である。「糖尿病」自体は、インスリンの不十分な生産又は利用を含む炭水化物代謝の進行性疾患を意味し、高血糖及び糖尿によって特徴付けられる。
ここで用いられる「治療する」なる用語は、治癒的処置、予防的療法又は防止的療法の両方を意味する。治療が必要なものとは、既に疾患に罹っているもの、並びに疾患に罹りやすい又は疾患を持つと診断されているもの又は疾患が防止されるべきものを含む。連続的治療又は投与は、少なくとも毎日のベースでの治療を意味し、一又は複数の日で治療が中断されない。間欠的治療又は投与、あるいは間欠形式での治療又は投与とは、連続的ではなく、むしろ周期的な性質の治療を意味する。ここでの治療措置は、連続的又は間欠的のいずれかとできるが、双方のタンパク質が調製され共に投与される場合は連続的であることが好ましい。
ここで用いられる治療目的の「哺乳動物」は哺乳類に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜及び農場動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシ等々を含む。ここでの好ましい哺乳動物はヒトである。「非成体」なる用語は、周産期年齢(出生時低体重乳児など)から思春期の年齢までの哺乳動物を意味し、後者は、可能な完全な成長にはまだ達していないものである。
ここで用いられる「血糖降下剤」なる用語は、インスリンを除く分泌促進薬、好ましくは経口薬を意味し、膵臓によるインスリンの分泌を起こす。ここでヒト使用により好ましいものはスルホニルウレア類の経口血糖降下剤である。この例には、グリブリド、グリピジド、及びグリクラジドが含まれる。さらに、インスリン感受性を増強する薬剤、例えばビグアナイドがこの定義に包含され、また好ましくもある。
【0017】
ここで用いられるポリペプチドにおいての「複合化」とは、それらが共有結合するか、又は約1(mμ)−1を越える結合親和性を有する等を意味する。この例には、IGF-Iと一又は複数のその結合タンパク質、又はリガンドとそのレセプター、又はメトヘモグロビンとウシ肝臓チトクロムbのトリプシン断片の複合体、又はアルブミンとアカシアとのような複合コアセルベーションが含まれる。
ここで用いられる「可溶性」とは、水溶液中にあるとき完全に溶解し、目視で評価して、可視できる粒子がない透明からわずかに乳白色光の溶液になるポリペプチドを意味する。溶液の濁度のさらなるアッセイは、1cmの路程セルを用い、320から360nmにおけるUV吸光度を測定することより実施できる(Eckhardtら, J. Pharmaceutical Science and Technology, 48:64-70(1994))。
「安定化剤」は、製剤中に活性なポリペプチド、例えばインスリン及びIGF-Iを、それらが劣化したり、適度の期間後に不活性になったり、それらの使用を妨げる病原体や毒素が生育したりすることがないように、保護するように機能する任意の化合物である。安定化剤の例には、製剤中において細菌、ウイルス、及び真菌が増殖するのを防止する防腐剤、酸化防止剤、又は種々の方法で製剤の安定性を保持するように機能する他の化合物が含まれる。
ここで用いられる「バッファー」はGRASである任意の適切なバッファーであり、一般的にポリペプチドがIGF-I及びインスリンである場合、約4.8から8、好ましくは約7から7.5、より好ましくは約7.2のpHを付与する。この例には、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムを含む酢酸の任意の塩である酢酸塩バッファー、コハク酸バッファー、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、又は所望の効果を得るために当該分野で公知の任意の他のものが含まれる。最も好ましいバッファーは、pH約7から7.5のヒスチジンである。
【0018】
B.発明の実施の形態
一般的に、製剤は、それぞれ所望の度合いの純度を持つ逆の電荷のポリペプチド類を、一又は複数の次の賦形剤:アルギニン、リジン、グルタメート、又はドデシル硫酸ナトリウム、又は2つの賦形剤β-ヒドロキシシクロデキストリンとアルギニンの組合わせと均質かつ密に混合することにより調製される。場合によっては、組成物は非経口的投与用に、製薬的又は非経口的に許容可能な担体、すなわち使用される濃度及び用量において受容者に対して毒性がなく、製剤の他の成分と融和性のあるものをさらに含有してもよい。製剤は、好ましくは酸化剤及びポリペプチドに有害であることが知られている他の化合物を含有しない。担体は、好ましくは非経口用担体、より好ましくは受容者の体液と等張な溶液である。このようなキャリアビヒクルの例には、水、生理食塩水又は緩衝溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)、リンガー液、デキストロース溶液が含まれる。最も好ましくは、キャリアビヒクルはPBSである。
好ましい賦形剤は使用されるポリペプチドの種類、組成物中における2つのポリペプチドのモル比、他の成分の存在、種類及び量等に依存する。例えば、ポリペプチドがIGF-I及びインスリンである場合、好ましい賦形剤は、1:1のvol/vol比のIGF-1とインスリンに対して100−200mM、より好ましくは約160mM濃度のアルギニンである。さらにインスリンがNPHインスリンである場合、賦形剤としてβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルを、単独で又はアルギニンと組合せて用いることはできないが、これはNPH部分にインスリンの再溶解化を引き起こし、NPHインスリン複合体を分離させてしまうからである。
ポリペプチドがインスリンとIGF-Iである場合、組成物は、好ましくはpHを約7−7.5にするバッファー、例えばヒスチジンをさらに含有する。
また、使用される賦形剤の濃度はポリペプチドの種類と比率に依存する。例えば、賦形剤がアルギニンであり、ポリペプチドが、インスリン濃度が3.8mg/mlでIGF-I濃度が10mg/mlのレギュラーインスリンとIGF-Iである場合、IGF-Iに対するインスリンの最大比率は、アルギニン濃度が150mMならば、0.85:1である。しかしながら、アルギニンの濃度を増加させると、IGF-Iに対するレギュラーインスリンの比率も増加させられ、例えば230mMのアルギニンで最大比率は2.5:1となる。賦形剤として280mMのリジン又はグルタメートが使用される場合、最大比率は1:1である。さらに、0.5%のSDSが使用される場合、混合比率は1:1ないし6:1とすることができる。5%のβ-ヒドロキシシクロデキストリンと150mMのアルギニンが使用される場合は比率1.4:1未満、5%のβ-ヒドロキシシクロデキストリンと230mMのアルギニンが使用される場合は6:1未満、1%のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルが使用される場合は0.25:1未満、1%のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルと150mMのアルギニンが使用される場合は1.2:1未満、5%のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルと230mMのアルギニン、又は2.5%のこのようなエーテルと230mMのアルギニン、又は2%のこのようなエーテルと150mMのアルギニンが使用される場合は10:1未満で混合することができる。
【0019】
ポリペプチドの容量:容量比は、ポリペプチドの種類、ポリペプチドの濃度、賦形剤(類)の種類、及び賦形剤(類)の濃度に依存する。NPHインスリンに対しては、インスリン:IGF-Iの比率は、一般的に約1:15から15:1vol/vol、好ましくは1:1から15:1の範囲にある。レギュラーインスリンに対しては、比率は、一般的に約1:6から6:1、好ましくは約1:1から1:6の間で変わる。70/30インスリンに対しては、好ましい比率は約1:1から約6:1の範囲にある。
ポリペプチドは、主としてポリペプチドのpIに依存して約4.5から8のpHでこのようなビヒクル中で、好ましくはpHレベルを維持するバッファーの存在下で典型的には調製される。ポリペプチドがIGF-Iとインスリンである場合、好ましくはIGF-Iは、インスリンと混合する前に、バッファーとしてヒスチジンを使用し、pH約7から7.5、より好ましくは約7.2で製剤される。最終製剤は安定した液体である。
糖尿病を治療するための一実施態様では、組成物は、約15:1から1:15(v/v)のインスリン:IGF-Iの容量比で、IGF-IとNPHインスリンを含有する。この組成物中のIGF-Iとインスリンのより好ましい量は、IGF-Iが約1から10mg、インスリンが約0.2から2mgである。請求項7に記載の組成物において、IGF-I:インスリンの容量:容量比は約0.2:1から約1:1である。
またここで、組成物は安定化剤をさらに含有してよい。例えば、その分子構造の中心に4つの有機(通常はアルキル又はアリール)基に結合した窒素原子があり、負の電荷を持つ酸基を含む第4級アンモニウム塩が、有用な安定化剤である。これらの塩は、多くの病原性非胞子形成菌及び真菌に対する界面活性殺菌剤として、また安定化剤として有用である。この例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、及び塩化ベンズエトニウムが含まれる。他の種類の安定化剤には、芳香族アルコール、例えばフェノール及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、及びm-クレゾールが含まれる。ここで好ましい安定化剤はフェノール又はベンジルアルコールであり、最も好ましいものはフェノールである。
安定化剤は、安定した液体形態のインスリンとIGF-I製剤に含まれるが、凍結乾燥形態の製剤には含まれない。後者の場合、安定化剤は再構成のために使用される注射用の静菌水(BWFI)中に存在する。
IGF-Iとインスリンを含有する好ましい一組成物は、少なくともアルギニン並びにpHを約7ないし7.5にするバッファー、最も好ましくはヒスチジン、及びフェノールを、場合によってはPBSと共に含む。より好ましくは、アルギニンは約100から300mMの濃度で存在し、インスリン:IGF-Iの比率は約0.1:1から10:1、より好ましくは約0.2:1から約1:1である。他の好ましい実施態様では、100ないし300mMのアルギニン、並びにバッファー、例えばヒスチジン及びフェノールを有するこの製剤は、賦形剤として約1−10%濃度でβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルをさらに含有する。この種のより好ましい組成物は、約5−20mg/mlのIGF-I、約2−10mg/mlのインスリン、約100−200mMのアルギニン、pH約7−7.5での約5−20mMのヒスチジン、及び約1−5mg/mlのフェノールを含有する。最も好ましい組成物は、約10mg/mlのIGF-I、約3−4mg/mlのインスリン、約160mMのアルギニン、約10mMのヒスチジン、及び約3mg/mlのフェノールを、pH約7.2で含有する。
【0020】
IGF-Iとインスリンを含有する他の好ましい組成物は、賦形剤として約1−10%濃度のドデシル硫酸ナトリウムを含み、インスリン:IGF-Iの比率は約1:1から6:1である。
最終組成物は、液体である場合は、適切な期間、約2から8℃の温度で保存される。あるいは、製剤は凍結乾燥して、液体製剤に対して記載されたようにして保存される注射のための水との再構成用のパウダーとして提供することができる。
治療的投与に用いられるポリペプチドは無菌でなければならない。無菌性は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)を通した濾過によって容易に達成される。治療用組成物は、一般的に、無菌アクセスポート、例えば皮下注射針で貫通可能な止め具を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルを備えた容器に入れられる。
ポリペプチド組成物は、通常、単位又は多数回用量容器、例えば封入アンプル又はバイアルに、水溶液として、又は再構成用の凍結乾燥製剤として貯蔵される。凍結乾燥製剤の例として、10-mLバイアルを5mLの滅菌濾過した1%(w/v)のIGF-I水溶液で満たし、得られた混合物を凍結乾燥する。皮下注射溶液は、凍結乾燥インスリンを、静菌的注射用水を用いて再構成することにより調製される。次にこの溶液を同様に再構成されたインスリン溶液又は液体インスリン溶液と混合する。
IGF-Iとインスリンの双方を含む製剤は、多くの異なる方法で調製することができる。一つの方法は、IGF-I含有組成物(以下に記載する成分を含む)とインスリンを混合することを含む。
上述したインスリン溶液と共に投与するのに有用なIGF-I含有溶液は、好ましくはアルギニンを含有し、より好ましくはアルギニンと安定化剤を含有し、さらに好ましくはアルギニン、安定化剤、及びバッファーを含有し、より好ましくは以下のものである:約5−20mg/mlのIGF-I、約100−200mMのアルギニン、約pH7−7.5での約5−20mMのバッファー、及び約1−5mg/mlのフェノール。この目的のために最も好ましい組成物は、約10mg/mlのIGF-I、約160mMのアルギニン、約pH7.2での約10mMのヒスチジン、及び約3mg/mlのフェノールを含有する。
この発明ではキットも考慮される。典型的なキットは、上述した賦形剤中のIGF-I等の第1のポリペプチドのための容器、好ましくはバイアル;逆の電荷の第2のポリペプチドを収容する容器、好ましくはバイアル、及び使用者に2つの容器の内容物、すなわち2つの製剤を組合わせる旨を指示する使用説明書、例えば製品挿入物又はラベルを具備する。これは好ましくは製薬用製剤を提供する。ポリペプチドがIGF-Iとインスリンである場合、好ましくは製薬用製剤は糖尿病の治療用である。また、IGF-Iを収容する容器は、好ましくはpH約7.0から7.5のバッファー中に、ベンジルアルコール又はフェノール、もしくは双方の安定化剤をさらに含有する。好ましくは、使用者は即時注射のためのシリンジで、容器の内容物、すなわつ2つの製剤を組合わせるように指示される。
他の典型的なキットは、組成物が既に調製されて、それが一つの容器に収容され、キットが適切な疾患を治療するために組成物を使用する旨の使用説明書を具備しているものである。
【0021】
ポリペプチドの組成物は、注入、注射、肺及び経皮的投与を含む任意の適した技術により哺乳動物に直接投与される。特定の投与経路は、例えば、何れかのポリペプチドを単独に使用する場合に知覚され又は予測されるあらゆる副作用を含む患者の病歴、使用されるポリペプチドのタイプ、及び直される特定の疾患に依存するであろう。非経口投与の例には、組成物の皮下、筋肉内、静脈内、動脈内又は腹膜内投与が含まれる。
全身作用性薬剤の一つの好ましい送達方法には、連続的注入(例えば、徐放デバイス又はミニポンプ、例えば浸透ポンプ又は皮膚パッチを用いる)、又は注射(例えば、単一ボーラス投与を使用する静脈内又は皮下手段を用いる)による投与が含まれる。例えば、ポリペプチドがインスリンとIGF-Iである場合、注射による組成物の送達は、糖尿病の治療のための好ましい投与形態である。
他の好ましい投与経路は局所又は全身療法のための経皮的イオン導入送達である。イオン導入法は電気化学的電位勾配の適用により、皮膚を通ってイオン性薬剤の流束を高める手段である。この送達方法に適した薬剤には、LHRH類似体、インスリン、成長ホルモン、及びコレシストキニン-8類似体が含まれる。例えば、Srinivasanら, J. Pharm. Sci., 79:588-591(1990)を参照されたい。
治療に使用されることになる組成物は、個々の患者の臨床的状態(特に単一の薬剤としてのポリペプチドでの治療の副作用)、組成物の送達部位、使用するポリペプチドの種類、投与方法、投与計画、及び実務者に知られた他の要因を考慮して、良好な医療実務に合致する形で製剤され投薬される。ここでの目的のための各成分の「有効量」は、従って、そのような考慮により決定され、哺乳動物に対する薬剤の生物学的利用能を生じる量でなければならない。
【0022】
一般的な提案として、非経口投与されるポリペプチドの投薬当たりの全製薬的有効量は、患者の体重kgに基づき、約10μg/kg/日から約1mg/kg/日の範囲とされる。IGF-Iとインスリンの組合せに対しては、用量当たりの非経口量は、患者の体重kgに基づき、IGF-Iが約10から200μg/kg/日、インスリンが約0.5ないし500単位/日であるが、上述したように、多くの治療的裁量に制約されるであろう。ヒトの糖尿病の治療において好ましくは、IGF-Iの用量は約1から10mgを1日当たり2回、より好ましくは約20から80μg/kg/注射(すなわち約1.5から6mg)を皮下に1日当たり2回、インスリンの用量は約5から50単位/注射(すなわち約0.2から2mg)を皮下に1日当たり2回である。この製剤における用量でのIGF-Iに対するインスリンの比率は上述したとおりである。
注射が好ましいが、連続的皮下(SC)注入用に注入装置も用いられる。また、静脈内バッグ溶液も用いられる。適切な投薬の選択において鍵となる要因は、糖尿病の場合には、正常な範囲を近似するように血中グルコースの低下により、又は医療実務者が適当であると認めるここで記載の糖尿病の治療の測定のための他の基準により測定される結果である。インスリン投与に対するさらなる情報は、真性糖尿病-理論と実際, 上掲, 29及び30章に見出すことができる。
また、ここでの製剤は、所望の薬理効果を生じる他の薬剤、例えばIGF-Iとインスリンの場合にはIGF結合タンパク質、例えば現在公知のものの一つ、例えばIGFBP-1、IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-5又はIGFBP-6、又はIGF結合複合体のALSと共に適切に投与される。ここでIGF-Iのための好ましい結合タンパク質は、IGFBP-3であり、これは米国特許第5,258,287号及びMartin及びBaxter, J. Biol. Chem., 261:8754-8760(1986)に記載されている。このグルコシル化IGFBP-3タンパク質は、GHにより調節され、内因性IGFのほとんどを担持する、ヒト血漿に見出される125−150Kdの糖タンパク質複合体の非還元SDS-PAGEゲル上の約53Kdの酸安定成分である。
IGF-I及びインスリンと共にIGF結合タンパク質を投与することは、米国特許第5,187,151号に記載の方法により達成される。簡単には、IGF-I及びIGFBPは、約0.5:1から3:1、好ましくは約1:1のモル比で、皮下ボーラス注射により有効量が投与され;インスリンはIGF-Iと共に既に存在している。
【0023】
さらに、製剤は、適切には、スルホニルウレア等の血糖降下剤の有効量と共に投与される。血糖降下剤は、非経口、経鼻、経口、又は他の任意の有効な経路を含む適切な技術によって哺乳動物に投与される。最も好ましくは、投与は経口経路による。例えば、Upjohnから1.25、2.5、及び5mg錠剤濃度で市販されているMICRONASE(商標)錠剤(グリブリド)は経口投与に適している。この治療に配されたII型糖尿病のための通常の維持用量は、一般的に1日当たり約1.25から20mgの範囲であり、これは、適当と考えられる形で1回の投薬として又は1日を通して分割して与えられる(Phisician's Desk Reference, 2563-2565 (1995))。処方に利用可能なグリブリドをベースとする錠剤の他の例は、GLYNASE(商標)ブランド薬(Upjohn)及びDIABETA(商標)ブランド薬(Hoechst-Russel)を含む。GLUCOTROL(商標)(Pratt)は、5及び10mg強度で利用可能なグリピジド(1-シクロヘキシル-3-(p-(2-(5-メチルピラジンカルボキサミド)エチル)フェニル)スルホニル)ウレア)錠剤に対する商標であり、食事制限に続いて血糖降下治療を必要とするII型糖尿病又は他のスルホニルウレアに対する反応が止まった患者に対しても処方される(Phisician's Desk Reference, 1902-1903 (1995))。スルホニルウレア以外の他の血糖降下剤、例えばビグアナイド(例えばメトホルミン又はフェンホルミン)又はトログリトゾン(troglitozones)、又はインスリン作用に影響を及ぼす他の薬剤も用いられる。
本発明は以下の実施例を参照するとより十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。ここに述べた全ての文献と特許引用文献は、出典明記により明示的に取り込まれる。
【0024】
実施例1
材料と方法
組換えヒトIGF-Iはジェネンテク,インクから入手した。レギュラーインスリン(HUMULIN(商標)R)及び70/30インスリン(HUMULIN(商標)70/30)は、イーライリリー社から入手した。0.5-cc及び1-ccインスリンシリンジはベクトンディキンソンから入手し、PD10カラム(SEPHADEX(商品名)G25M)はファーマシア(カタログ番号17-0851-01)から入手した。
表1にはレギュラー、NPH-、及び70/30インスリンの製剤投薬形態を列挙する。
【0025】
表1
インスリンの調製投与形態
HUMULIN(商標)R 亜鉛-インスリン、100USP単位、
(中性レギュラーインスリン) 3.8mg/ml
10μg-40μg亜鉛/100USP単位
2.5mg/ml m-クレゾール
16mg/ml グリセリン
pH〜7.2
HUMULIN(商標)NPH 100USP単位/ml、3.8mg/ml
(中性プロタミンハーゲドルン) 3-6mgプロタミン
16mg/ml グリセリン
1.6mg/ml m-クレゾール
10-40μg亜鉛/100USP
0.65mg/ml フェノール
ホスフェート、pH〜7.2
HUMULIN(商標)70/30 100USP単位/ml、3.8mg/ml
(70%NPH、30%レギュ 約2.5mgプロタミン
ラーインスリン) ホスフェート、pH〜7.2
m-クレゾール
亜鉛
フェノール
【0026】
製剤スクリーニングのためのIGF-Iの調製
0.2Mシトラート、26mg/mlにIGF-Iを入れたものを出発物質として使用した。シトラートはIGF-I溶液から取り除くことが困難であった。よって、2工程のダイアフィルトレーション法をシトラートが除去し、同時にIGF-I濃度を増加させるために設計した。ダイアフィルトレーションは接線流濾過装置を使用して達成された。プロセス工程は以下の通りであった:
(a)200mMのシトラートを含有するIGF-I溶液を200mMのNaCl、230mMのアルギニン及び10mMのヒスチジン中、pH7.2で第1のダイアフィルトレーションした。
(b)ついで、IGF-I溶液を230mMのアルギニン、10mMのヒスチジン中、pH7.2でダイアフィルトレーションした。IGF-Iを28.6mg/mlまで濃縮した。
pH7.2において、高濃度で溶液中にIGF-Iを保持する能力のために、アルギニンを双方の工程で使用した。よって、シトラートの除去とIGF-Iの濃縮は、IGF-Iを沈殿させないで達成された。次に上述のIGF-I溶液をPD-10(商標)カラムを使用し、種々の試験製剤中にバッファー交換した。
【0027】
アッセイ方法
(1)視診:色、外観及び透明度;
(2)pH;
(3)IGF-I濃度:0.646cm−1(mg/ml)−1を使用し276nmでのUV吸光度により測定;
(4)溶液濁度:340から360nmのUV吸光度により測定;
(5)溶液中のIGF-Iとインスリンの定量:酸性pH逆相HPLC(rp-HPLC)法により測定。
カラム: VYDAC(商標)、C18、300Å、25cm
流速: 0.5ml/分
注射量: 25μl/注射
検出波長: 214nm
カラム温度: 50℃
溶媒A: HOに0.1%のトリフルオロ酢酸
溶媒B: アセトニトリルに0.1%のトリフルオロ酢酸
勾配: 時間 %A
0 72
20 72
25 70.5
40 61.5
50 40
51 72
60 72
図1にはIGF-I試料の酸性逆相HPLCを示す。図2にはレギュラーインスリンの酸性逆相HPLCを示す。図3にはレギュラーインスリン:IGF-Iの1:1(vol:vol)混合物の酸性逆相HPLCを示す。
【0028】
これらの図を比較しレビューすることから、IGF-IとレギュラーインスリンがこのHPLC法により良好に分離されることが明らかになった。IGF-Iとインスリンの双方の定量はIGF-Iとインスリンのピークのピーク領域を利用することで達成できる。例えば、溶液中に残存するIGF-IのパーセントはIGF-Iをインスリンと混合する前及び後のIGF-Iピーク領域を比較することにより得ることができる。
IGF-Iとインスリンとを混合するための手順
(1)IGF-Iの用量に等しいインスリンシリンジに空気を吸引。IGF-Iバイアルに針を挿入し、ボトルに空気を注入。IGF-I溶液を全く取り出すことなく、IGF-Iバイアルから針/シリンジを除去。
(2)NPH及び70:30インスリンに対しては、使用前に数回、インスリンバイアルをゆっくりと転倒。レギュラーインスリンを混合する必要なし。インスリンバイアルに空気を注入。
(3)インスリンバイアルに針がある状態で、インスリンボトルとシリンジを転倒。
(4)針の先端が溶液中にあることを確認し、シリンジ内に適切な量のインスリンを取り出す。
(5)インスリンバイアルから針を取り出す前に、シリンジの気泡をチェック。気泡が存在する場合は、シリンジを真っ直ぐ上に向けて、気泡が上部に浮かんでくるまでその側部を軽くたたく。プランジャーで押し出して、適切な用量のインスリンを引き出す。
(6)インスリンバイアルから針を取り出し、IGF-Iバイアル中に挿入。IGF-Iボトルとシリンジを転倒。針の先端が溶液中にあることを確認し、シリンジ内にIGF-Iを所望の量取り出す。
(7)IGF-Iバイアルから針/シリンジを除去し、清浄なガラス製遠心管にインスリン/IGF-I混合物を注入。
インスリン/IGF-I混合物の分析手順
IGF-I/インスリン混合物を0.2μMフィルターを通して濾過するか、又は2000rpmで10分間遠心分離した後に、可溶性IGF-Iとインスリンの含有量についてアッセイした。いくつかの場合には、まずIGF-Iとインスリンとの混合物を、混合物を分析のために濾過又は遠心分離する前に、10分間37℃でリン酸緩衝食塩水でインキュベートした。
【0029】
結果及び議論
インスリンとアセテート緩衝されたIGF-I製剤の混合可能性
ここで標準として使用されるアセテート緩衝IGF-I製剤は透明な液体であり、10mg/mlのIGF-I、100mMの塩化ナトリウム、2mg/mlのポリソルベート20、9mg/mlのベンジルアルコール、50mMのアセテートを含有し、pH5.4である。この製品は、28日間までの使用のための複数使用を目的として意図されたものである。使用期限は2−8℃の貯蔵で60ヶ月にした。まず、インスリンとアセテート緩衝IGF-I製剤の混合可能性を評価した。このIGF-I製剤が投与中にインスリンと混合するために使用されるのが、最も望ましい。
表2はレギュラーインスリンとアセテート緩衝IGF-I製剤を混合した結果を示す。1:1(vol/vol)の混合比率で、溶液は混合時に非常に濁った。溶液から43%のインスリンと14%のIGF-Iが沈殿した。

アセテート製剤中のレギュラーインスリンとIGF-Iの外観を、これらの溶液のpHを0.1NのHCl又はNaOHを添加することにより調節しながらモニターした。溶液を「透明」又は「濁り」のいずれかとして特徴付け、溶液の透明度対pHを図4にプロットした。pH7.2のレギュラーインスリンは透明な溶液であり、pH6.4を越えて透明なままであり;pH6.32又はそれ以下でレギュラーインスリン溶液は濁ってくる。pH5.4のアセテート製剤中のIGF-Iは透明な溶液であり、pH6.34以下で透明なままである。IGF-I溶液はpH6.39を越えると濁り、続いて沈殿したIGF-Iが透明なゲルになる。これらの観察は、タンパク質の溶解性が、タンパク質の等電点(pI)にpHが近づくにつれて減少するという一般的な理解と一致している。IGF-Iとインスリンの等電点は、それぞれ8.7と5.4である。図4に示すデータでは、IGF-Iとレギュラーインスリンの双方が溶液中に存在可能な適切なpH範囲は存在しないことが示唆される。従って、アセテートIGF-I製剤のpHを調整して透明なIGF-I/インスリン混合物をつくることは簡単には可能ではない。
【0030】
表3には、種々の混合比率におけるNPHインスリンとのIGF-Iアセテート製剤の混合結果を示している。NPH:IGF-I混合比率が1:1及び14:1(vol:vol)では、NPHインスリンとIGF-Iの双方が混合の前後で変化しなかった。全てのIGF-Iが溶液中に残り、全てのNPHは、溶液中に可溶インスリンがない状態でNPH結晶として残った。しかしながら、NPHとIGF-Iを1:14(vol:vol)の比率で混合した場合は、100%のインスリンがNPH結晶から放出されたが、IGF-Iは変化しないで残った。

【0031】
インスリンと混合可能な新規なIGF-I製剤の開発:
IGF-Iアセテート製剤がインスリンと混合不能であるために、次の基準に合致する新規な製剤を開発した:(1)pH7.2で製剤された透明なIGF-I溶液。これはIGF-Iとインスリンとを広範囲の混合比率で混合した場合に、pHが激しくシフトすることを防止するためである。(2)インスリン及び/又はIGF-Iの沈殿を回避するために、混合時におけるインスリンとIGF-Iとの相互作用を防止するIGF-I製剤。(3)混合時にNPH結晶からインスリンを解離させないIGF-I製剤。このようなIGF-I製剤の開発中、表4に列挙した種々の賦形剤、例えば塩類、バッファー、金属イオン、糖類、アミノ酸、ポリオール、界面活性剤及びシクロデキストリンをスクリーニングした。

【0032】
pHを6.4以上に調節した場合、対照となるアセテート緩衝IGF-I製剤は濁った。表4に列挙した多くの賦形剤により、pH7.2でIGF-Iは透明溶液になった。これらの賦形剤には、アミノ酸(グリシン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタメート、アスパルテート)、塩類(塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム)、シクロデキストリン誘導体(β-ヒドロキシシクロデキストリン及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテル)、SDS、及びグリセロールが含まれる。しかしながら、IGF-Iとレギュラーインスリンとの混合時に、上述した賦形剤の殆どではインスリンとIGF-Iの沈殿を防止できなかった。
混合時におけるレギュラーインスリンとIGF-Iの沈殿を防止において有効であることが分かった賦形剤は、アルギニン、リジン、グルタメート、SDS、β-ヒドロキシシクロデキストリン及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルであった。これらの賦形剤を使用して混合した結果を表5に示す。0.5%のSDSは、透明なインスリンとIGF-Iとの混合物を達成するのに非常に有効であった。しかしながら、0.5%のSDSを1:1(vol:vol)の比率でNPHインスリンに添加した場合、溶液が透明化し、これはNPH結晶の溶解を示す。リジンとグルタメートの双方を280mMの濃度で使用した場合、IGF-Iとレギュラーインスリンとの1:1(vol/vol)混合時に沈殿を防止した。
【0033】

(a)表に列挙した賦形剤に加えて、全てのIGF-I製剤は10mg/mlのIGF-IとpH7.2で10mMのヒスチジンを含有する。
(b)レギュラーインスリンを150mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジンに、10mg/mlのIGF-Iを200mlゆっくりと添加した。170mlのレギュラーインスリンを添加するまで、溶液は透明なままであった。170ml:200ml=0.85:1の混合比率。
(c)混合を(b)に記載したものと同様にして行った。
(d)これらの条件下、レギュラーインスリンを200mlのIGF-Iにゆっくりと添加した。2mlのレギュラーインスリンを添加した後でさえ、混合した溶液は透明なままであった。
【0034】
アルギニンは、溶液状態にインスリンとIGF-Iを維持する点において、リジン又はグルタメートよりも効果的であった。表5に示されるように、150mMのアルギニン濃度で、レギュラーインスリンとIGF-Iは0.85:1(vol:vol)までの混合比率で混合することができた。混合比率が0.85:1を越えると、IGF-Iとインスリンの双方の沈殿が生じる。230mMのアルギニン濃度では、2.5:1(vol:vol)の混合比率まで、より多くのレギュラーインスリンをIGF-Iと混合して、透明な混合物が形成された。
如何なる理論にも限定されるものではないが、アルギニンにより提供される沈殿からの保護は、pH7.2でインスリン分子が負の電荷を持ち、正の電荷のアルギニン分子が負の電荷を持つインスリンと相互作用し、よって正の電荷を持つIGF-Iと負の電荷を持つインスリンとの間の相互作用及び続く沈殿を遮蔽するという事実によると考えられる。インスリン:IGF-Iの比率が高い混合に対しては、高濃度のアルギニンが必要となる。
表5に示すように、1%のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルにより、0.25:1以下の混合比率で、レギュラーインスリンとIGF-Iの混合が可能になる。5%のβ-ヒドロキシシクロデキストリンの使用では如何なる比率での混合も可能にはならなかった。シクロデキストリンとアルギニンの双方の使用は、混合時におけるインスリンとIGF-Iの沈殿防止に極めて効果的である。150mMから230mMの濃度で使用されるアルギニンと共に、2%から5%の濃度で使用されるβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルにより、10:1(インスリンvol:IGF-Ivol)までの非常に広範囲な混合比率でレギュラーインスリンとIGF-Iとを混合することができる。如何なる理論にも限定されるものではないが、これはpH7.2で、正の電荷を持つアルギニンが負の電荷を持つインスリンと相互作用し、負の電荷を持つβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルが正の電荷を持つIGF-Iと相互作用し、よってインスリンとIGF-Iとの相互作用と続く沈殿を防止すると考えられる。しかしながら、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルの存在下では、NPH-インスリン結晶は溶解した。如何なる理論にも限定されるものではないが、これは、おそらくはβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルと正の電荷を持つプロタミンとの強い相互作用により、これがプロタミン-インスリン複合体を破壊するためであると思われる。よって、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル及び/又はSDS及びアルギニンの双方をIGF-I製剤に使用することは、レギュラーインスリンとの混合に非常に効果的であることが分かったが、NPHインスリンとの混合に使用することはできない。
【0035】
上述した賦形剤のスクリーニング実験の結果、レギュラーとNPHインスリンの双方と混合するための、IGF-I製剤用に好ましく選択される賦形剤はアルギニンであると特定された。ついで、インスリンと混合されるIGF-Iの能力に対するアルギニン濃度の効果を評価するための実験を行った。この実験で試験されたIGF-I製剤は、10mg/mlのIGF-I、10mMのヒスチジン、pH7.2、3mg/mlのフェノール、及び量を変えてアルギニンを含有する。インスリンとIGF-Iを種々の混合比率で混合した。可溶性IGF-I及びインスリンのパーセントを酸性逆相HPLC法によりアッセイした、表6の結果には、レギュラーインスリンとの混合に対しては、高濃度のアルギニンが必要であることが示されている。80mMのアルギニン濃度では、1:1比(vol:vol)で混合した場合に、39%のIGF-Iと68%のインスリンが沈殿した。230mMのアルギニン濃度では、1:1の比率で混合した場合に、全てのインスリンと全てのIGF-Iが溶液のまま残った。しかしながら、230mMのアルギニン濃度では、5:1(vol:vol)比でIGF-I:NPHを混合した場合に、ほぼ50%のNPHが可溶性インスリンに溶解した。160mMのアルギニンがレギュラー及びNPHインスリンの双方と混合するための最善の結果を生じるように思われる。1:1(R-インスリン:IGF-I)の混合比率では、本質的に、レギュラーインスリン及びIGF-Iのいずれも溶液のままではない。1:1(NPHインスリン:IGF-I)の混合比率では、ほぼ100%のNPHインスリンが溶解しており、全てのNPH結晶はそののままであった。
【0036】

(a)この実験において試験したIGF-I製剤は10mg/mlのIGF-I、pH7.2で10mMのヒスチジン、3mg/mlのフェノール、及び種々の量のアルギニンを含有する。
(b)皮下沈着物をシミュレートするために、IGF-Iとレギュラーインスリンを混合した後に、まず1mlの混合物を、可溶性インスリンとIGF-Iの量を分析する前に、2mlのリン酸緩衝食塩水と共に37℃で15分間インキュベートした。
(c)IGF-Iとレギュラーインスリンが十分に混合可能であるならば、得られた混合物は100%の可溶性IGF-Iと100%の可溶性インスリンを有すべきである。
(d)IGF-IとNPHインスリンが十分に混合可能であるならば、得られた混合物は100%の可溶性IGF-Iと0%の可溶性インスリンを有すべきである。
【0037】
従って、インスリンと混合するために好ましいIGF-I製剤は、10mg/mlのIGF-I、160mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジン、及び3mg/mlのフェノールであると定義された。種々の混合比率でのレギュラー、NPH及び70/30インスリンとこの製剤の混合可能性を評価し、結果をそれぞれ表7、8及び9にまとめた。

(a)新規なIGF-I製剤は10mg/mlのIGF-I、160mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジン及び3mg/mlのフェノールを含有する。
(b)皮下沈着物をシミュレートするために、IGF-Iとレギュラーインスリンを混合した後に、まず1mlの混合物を、可溶性インスリンとIGF-Iの量を分析する前に、2mlのリン酸緩衝食塩水と共に37℃で15分間インキュベートした。
(c)IGF-Iとレギュラーインスリンが十分に混合可能であるならば、得られた混合物は100%の可溶性IGF-Iと100%の可溶性インスリンを有すべきである。
【0038】

(a)新規なIGF-I製剤は10mg/mlのIGF-I、160mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジン及び3mg/mlのフェノールを含有する。
(b)IGF-IとNPHインスリンが十分に混合可能であるならば、得られた混合物は100%の可溶性IGF-Iと0%の可溶性インスリンを有すべきである。
【0039】

(a)新規なIGF-I製剤は10mg/mlのIGF-I、160mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジン及び3mg/mlのフェノールを含有する。
(b)IGF-Iと70:30インスリンが十分に混合可能であるならば、得られた混合物は100%の可溶性IGF-Iと22%ないし30%の可溶性インスリンを有すべきである。理論的には、70/30インスリンは30%の可溶性インスリンを含有すべきである。しかしながら、NPHインスリンへの可溶性インスリンの吸着のために、可溶性インスリンの実際の量は酸性逆相HPLC法で22%である。
【0040】
好ましいIGF-I製剤が、1:1(vol:vol)比でレギュラーインスリンと混合された場合、溶液は濁った。混合後に直接アッセイしたところ、65%のIGF-Iと93%のインスリンが溶液状態であった。しかしながら、皮下沈着物条件をシミュレートするために、この混合物をリン酸緩衝食塩水中、37℃で15分間インキュベートした後に、溶液を清澄化し、95%のIGF-Iと99%のインスリンが溶液状態であった。表7には、混合物をリン酸緩衝食塩水中、37℃で15分間インキュベートした後の、IGF-Iとレギュラーインスリンの混合結果を示している。1:1、2:1、6:1(レギュラーインスリン:IGF-I)比で混合した場合、最初に沈殿が生じた。しかしながら、リン酸緩衝食塩水とインキュベートすることで混合物は清澄化し、可溶性IGF-I及びインスリンのパーセントはほぼ90%又はそれ以上であった。よって、IGF-I及びインスリンの薬物動力学的性質は、混合の前後であまり変化しないという結果になった。
好ましいIGF-I製剤が、1:15から15:1(vol:vol)比の混合比率でNPHインスリンと混合された場合、溶液は濁ったままであり、そのままのNPHインスリンの存在が示された。表8に示すように、1:1から15:1(NPH:IGF-I)の間の混合比率では、全てのIGF-Iは溶液状態にあり、全てのNPHはインスリン-プロタミン複合体のままであった。NPH:IGF-Iの混合比率が低い場合は、好ましい製剤中の十分な量のアルギニンにより、NPHが解離し始めた。NPHの解離量は混合比率1:15の極値でさえ、比較的低かった(24%)。よって、殆どの混合比率では、IGF-I及びインスリンの薬物動力学的性質は、混合の前後であまり変化しないという結果になった。表9には、好ましいIGF-I製剤を70/30インスリンと混合した結果を示している。理論的には、70/30インスリンは30%の可溶性インスリンを含有すべきである。しかしながら、可溶性インスリンはNPHインスリン結晶に吸着する傾向があった。70/30インスリン中の可溶性インスリンの実際の量は酸性逆相HPLC法によれば22%であった。IGF-I及び70/30インスリンが十分に混合可能である場合、得られる混合物は100%の可溶性IGF-Iと22%ないし30%の可溶性インスリンを有するべきである。表9の結果には、可溶性IGF-Iとインスリンのパーセントが、70/30とIGF-Iを1:1から6:1(vol:vol)比で混合した場合も変化しなかったことが示されている。70/30:IGF-Iの混合比率が低い場合、NPHの一部は可溶性インスリンに溶解した。
【0041】
上述の全ての実験において、IGF-I又はインスリンのいずれにも、酸性逆相HPLCアッセイにより、混合の結果として何の化学的劣化も見られなかった。
結論
注射の頻度を減らし、患者のコンプライアンスを改善するために、逆の電荷のポリペプチドを混合し、次にそれらを同時投与することが好ましい。この実施例において、まず、対照となるアセテート緩衝製剤中のIGF-Iとインスリンとの融和性を評価した。アセテート製剤中のIGF-Iとレギュラーインスリンを混合して直ぐに、混合物は透明な溶液から濁った懸濁液になり、IGF-Iとインスリンの双方の沈殿を示した。NPHインスリンと混合した場合に、アセテート緩衝IGF-I製剤は、低いNPH/IGF-I混合比率で、NPHインスリン-プロタミン複合体を解離させた。
賦形剤のスクリーニング実験は、IGF-Iとインスリンとの間の融和性を増加させるために実施された。好ましいIGF-I製剤はインスリンと混合するために開発された。それは10mg/mlのIGF-I、160mMのアルギニン、pH7.2で10mMのヒスチジン、及び3mg/mlのフェノールを含有している。このアルギニン製剤が、種々の混合比率でレギュラー、NPH及び70/30インスリンと混合する能力を評価した。この製剤がレギュラーインスリンと混合される場合、可溶性IGF-I及びインスリンのパーセントは、全ての可能な混合比率に対して、ほぼ90%又はそれ以上であった。殆どの混合比率で、このIGF-I製剤とNPHインスリンとを混合しても、混合の前後でIGF-Iとインスリンに変化はなかった。非常に低いNPH/IGF-Iの混合比率では、NPHインスリン-プロタミン複合体の一部が解離した。
賦形剤、例えばアルギニン、リジン、グルタメート、SDS、及び/又はある種のシクロデキストリンは、混合時におけるIGF-Iとインスリンの静電的相互作用とそれに続く沈殿を防止するのに有効であることが示された。IGF-I製剤においてアルギニンと共にSDS及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルを使用すると、IGF-Iとレギュラーインスリンとを非常に広範囲の混合比率で混合可能とするのに極めて効果的であることが証明された。しかしながら、それらはSDS及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルの存在下でNPHインスリン-プロタミン複合体が解離するために、NPHインスリンと混合させるためには使用できない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】IGF-I試料の酸性pHでの逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【図2】レギュラーインスリンの酸性pHでの逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【図3】IGF-Iとインスリンとの混合物の酸性pHでの逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【図4】0.1NのHCl又はNaOHの添加により調節された、溶液pHの関数としての、ここで対照(丸)として使用されたアセテートバッファー製剤におけるIGF-I又はレギュラーインスリン(三角)の溶液透明度のグラフを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆の電荷の製薬的に活性なポリペプチド類の混合物と、アルギニン、リジン、グルタメート、ドデシル硫酸ナトリウム、及びβ-ヒドロキシシクロデキストリンとアルギニンとの組合せからなる群から選択される賦形剤を含有する組成物であって、該ポリペプチド類が可溶性である組成物。
【請求項2】
賦形剤がアルギニンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2又はそれ以上の前記賦形剤が使用される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
賦形剤がアルギニン、ドデシル硫酸ナトリウム、及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルであり、ポリペプチド類がIGF-I及びNPHインスリンではないインスリンである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリペプチド類がIGF-Iとインスリンである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
インスリン:IGF-Iの容量:容量比が約1:15から15:1である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
インスリン:IGF-Iの容量:容量比が約1:6から6:1である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
インスリン:IGF-Iの容量:容量比が約0.2:1から約1:1である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
バッファーをさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
バッファーが約7から7.5のpHである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
バッファーがヒスチジンである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
リン酸緩衝食塩水をさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
安定化剤をさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
賦形剤がアルギニンであり、ヒスチジンとフェノールをさらに含んでなる請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
賦形剤が約100から300mMの濃度のアルギニンであり、インスリン:IGF-Iの比率が約0.1:1から10:1である請求項5に記載の組成物。
【請求項16】
賦形剤としてβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルを約1−10%濃度でさらに含有する請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
賦形剤が約1−10%濃度のドデシル硫酸ナトリウムであり、インスリン:IGF-Iの比率が約1:1から6:1である請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
約5−20mg/mlのIGF-I、約2−10mg/mlのインスリン、約100−200mMのアルギニン、pH約7−7.5で約5−20mMのヒスチジン及び約1−5mg/mlのフェノールを含有する請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
約10mg/mlのIGF-I、約3−4mg/mlのインスリン、約160mMのアルギニン、pH7.2で約10mMのヒスチジン及び3mg/mlのフェノールを含有する請求項7に記載の組成物。
【請求項20】
ポリペプチド類が複合化していない請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
(a)有効量のポリペプチドを含有する請求項1に記載の組成物を収容する容器と、
(b)前記組成物が有効である疾患の治療に該組成物を使用するための使用説明書と、を含んでなるキット。
【請求項22】
ポリペプチド類がIGF-Iとインスリンであり、疾患が高血糖疾患である請求項21に記載のキット。
【請求項23】
アルギニン、リジン、グルタミン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、β-ヒドロキシシクロデキストリン、及びβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルからなる群から選択される賦形剤において成分(a)として第1のポリペプチドを、成分(b)として第1のポリペプチドとは逆の電荷を持つ第2のポリペプチドを互いに混合することを含んでなる、請求項1に記載の組成物の調製方法。
【請求項24】
約30−40℃て所定時間、混合物をインキュベートすることをさらに含み、前記組成物がリン酸緩衝食塩水をさらに含有する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
混合物を約15分間37℃でインキュベートする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)アルギニン、リジン、グルタミン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、及びβ-ヒドロキシシクロデキストリンとアルギニンとの組合せからなる群から選択される賦形剤中の第1のポリペプチドを収容する容器と;
(b)第1のポリペプチドとは逆の電荷を持つ第2のポリペプチドを収容する容器と;
(c)容器(a)と(b)の内容物を組合わせるための使用説明書;
を含んでなる請求項1に記載の組成物を調製するためのキット。
【請求項27】
ポリペプチド類が組合わされるとき、組成物が製薬的に許容可能な製剤である請求項26に記載のキット。
【請求項28】
製薬的に許容可能な製剤が高血糖疾患を治療するためのものである請求項27に記載のキット。
【請求項29】
第1のポリペプチドがIGF-Iであり、第2のポリペプチドがインスリンである請求項26に記載のキット。
【請求項30】
賦形剤がアルギニンである請求項26に記載のキット。
【請求項31】
容器(a)が約5−20mg/mlのIGF-I、約100−200mMのアルギニン、pH約7−7.5で約5−20mMのヒスチジン及び約1−5mg/mlのフェノールを含有する請求項30に記載のキット。
【請求項32】
容器(a)が約10mg/mlのIGF-I、約160mMのアルギニン、pH約7.2で約10mMのヒスチジン及び約3mg/mlのフェノールを含有する請求項31に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−29803(P2009−29803A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−172898(P2008−172898)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2000−610509(P2000−610509)の分割
【原出願日】平成12年3月30日(2000.3.30)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】