説明

逆シフト反応用触媒、その製造方法、および合成ガスの製造方法

【課題】高温での耐久性に優れ、メタネーション反応の生成を抑制することが可能で、効率よく逆シフト反応を生成させて、メタン含有率の低い、一酸化炭素と未反応の水素からなる合成ガスを効率よく製造することが可能な逆シフト反応用触媒および該逆シフト反応用触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供する。
【解決手段】Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩と、Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分を含む複合酸化物とを含有する組成とする。
前記複合酸化物を、ATiO3,AAl24,AZrO3,AFe24,AWO4,A2WO5,AMoO4(AはCa,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素と水蒸気から二酸化炭素と水素を生成するシフト反応の逆の反応である、二酸化炭素と水素から一酸化炭素と水蒸気を生成する反応に対する活性を有する逆シフト反応用触媒およびそれを用いた合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素は地球温暖化の主要原因物質であることから、排出量の削減・有効利用が緊急の課題とされている。また、石油精製や石油化学などの技術分野からは炭化水素系ガスが発生するが、効率的により有効な物質に変換する方法が求められている。
【0003】
このような状況の下で、水素と二酸化炭素を用いて逆シフト反応を行わせ、生成した一酸化炭素と未反応の水素からなる合成ガスを製造する方法が提案されている(特許文献1および2参照)。
【0004】
また、特許文献1の従来技術(段落0002)に示されているように、水蒸気改質後のガス中の二酸化炭素を分離し、改質器に戻す方法が知られている。
【0005】
ところで、水素を製造することを目的に、下記の式(1)で示される水性シフト反応を促進させるための触媒、いわゆるシフト反応用触媒については、多くの触媒が実用化されている。
CO + H2O → CO2 + H2 ……(1)
【0006】
また、シフト反応を促進させる触媒のうちの多くのものは、下記の式(2)で示される逆シフト反応用の触媒としての活性も有していると考えられる。
CO2 + H2 → CO + H2O ……(2)
【0007】
ところで、この逆シフト反応は、反応により生成する合成ガスの組成(平衡組成)を考えると、600℃以上の高温で反応を行わせることが望ましい。しかしながら、600℃以上という温度は、通常、水性シフト反応を行わせる温度よりはるかに高温であるため、通常のシフト反応用の触媒を使用することは困難であるのが実情である。
【0008】
また、一般的な水蒸気改質触媒中でも逆シフト反応は進行するが、加圧条件下においては、水蒸気改質反応の逆反応である、下記の式(3)のメタネーションが起こり、メタンが生成して一酸化炭素濃度が低下するという問題点がある。
CO + 3H2 → CH4 + H2O……(3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−211502号公報
【特許文献2】特開平4−244035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高温での使用が可能で、メタネーション反応の生成を抑制して、効率よく逆シフト反応を生成させて、メタン含有率の低い、一酸化炭素と水素からなる合成ガスを得ることが可能な逆シフト反応用触媒および該逆シフト反応用触媒を用いた合成ガスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の逆シフト反応用触媒は、
二酸化炭素と水素から一酸化炭素と水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒であって、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩と、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分を含む複合酸化物と
を含有することを特徴としている。
【0012】
また、前記複合酸化物が、ATiO3,AAl24,AZrO3,AFe24,AWO4,A2WO5,AMoO4(AはCa,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属)であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の逆シフト反応用触媒の製造方法は、
二酸化炭素と水素から一酸化炭素と水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒の製造方法であって、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分との複合酸化物を合成する工程と、
前記複合酸化物に二酸化炭素を吸収させて炭酸塩を生成させる工程と
を含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の合成ガスの製造方法は、二酸化炭素と水素を含む原料ガスを、700℃以上の温度条件で、請求項1または2記載の逆シフト反応用触媒と接触させて、逆シフト反応させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の逆シフト反応用触媒は、Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩と、Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分を含む複合酸化物とを含有しており、この逆シフト反応用触媒を用いることにより、高温条件下で、メタネーション反応を抑制しつつ、水素と二酸化炭素の逆シフト反応を効率よく生成させることが可能になり、一酸化炭素と水素を含む合成ガスを効率よく製造することが可能になる。
【0016】
ところで、既に述べたようにシフト反応は、下記の式(1)に示すように、COとH2Oを原料として、H2とCO2を生成させる反応である。
CO + H2O → CO2 + H2 ……(1)
このとき、CO2、H2、CO、H2Oの組成は化学平衡によって支配され、水素製造プロセスでは、上記の式(1)の反応が進行しやすい低温で行われる。
【0017】
そして、高温域においては、逆の方向の反応、すなわち、下記の式(2)で示す、逆シフト反応が生起する。
CO2 + H2 → CO + H2O ……(2)
【0018】
よって、H2とCO2を原料としてCO濃度の高い合成ガスを得たい場合には、通常のシフト反応プロセスより高温で、上記式(2)の逆シフト反応を進行させればよい。
【0019】
なお、上記の式(2)では、COとH2Oが生成することになるが、上述のようにCO2、H2、CO、H2Oの組成は化学平衡によって支配されるので、得られるガスの組成は反応温度と原料ガスのCO2/H2比によって決まる。合成ガスを得るためには反応後のガスから未反応のCO2と生成したH2Oを取り除けばよい。原料ガスのH2の比率が高いほど得られる合成ガスのH2比率を高くすることができる。
【0020】
本発明の逆シフト反応用触媒は、上述のような、700℃を越えるような高温(例えば、700℃〜1100℃)で、上記の式(2)の反応を生じさせる触媒として活性を有する。
【0021】
また、本発明の逆シフト反応用触媒において、複合酸化物として、ATiO3,AAl24,AZrO3,AFe24,AWO4,A2WO5,AMoO4(AはCa,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属)を含有させるようにした場合、使用中に炭酸塩が焼結することを抑制し、水素と二酸化炭素から、一酸化炭素と水素を含む合成ガスを効率よく製造することが可能になる。
【0022】
また、本発明の逆シフト反応用触媒の製造方法は、Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分との複合酸化物を合成した後、複合酸化物に二酸化炭素を吸収させて炭酸塩を生成させるようにしているので、合成された複合酸化物の表面に炭酸塩が生成して、表面が炭酸塩により被覆された状態となり、触媒活性の高い逆シフト反応用触媒を効率よく製造することが可能になる。
【0023】
また、本発明の合成ガスの製造方法のように、二酸化炭素と水素を含む原料ガスを、700℃以上の温度条件で、請求項1または2記載の逆シフト反応用触媒と接触させて、逆シフト反応させることにより、利用価値の高い合成ガスを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例において、逆シフト反応試験を行うのに用いた試験装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例において、触媒AおよびDを用いて行った逆シフト反応試験における反応後のガス組成と、各条件における平衡ガス組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
[逆シフト反応用触媒の製造]
(1)逆シフト反応用触媒Aの製造
(a)BaCO3とTiO2を、モル比2.0:1.0となるように秤量し、ボールミルにより混合した後に乾燥を行った。
(b)次に、この混合物にバインダーを加えて直径2〜5mmの球状に造粒した。
(c)得られた粒状体を空気中にて1100℃で1h焼成し、複合酸化物(Ba2TiO4)を得た。
(d)それからこの複合酸化物(Ba2TiO4)を、20%CO2、80%N2気流中にて、700℃、1hの条件で焼成することにより、BaCO3とBaTiO3の混合体である逆シフト反応用触媒Aを得た。
【0027】
なお、焼成前後の試料の重量変化およびXRD測定結果から、上記(d)の工程で、Ba2TiO4の全てがBaCO3とBaTiO3へと分解し、結果としてBaCO3とBaTiO3のモル比が1.0:1.0の混合体(逆シフト反応用触媒)が得られていることを確認した。
【0028】
(2)逆シフト反応用触媒Bの製造
(a)SrCO3とTiO2を、モル比2.0:1.0となるように秤量し、ボールミルにより混合した後に乾燥を行った。
(b)次に、この混合物にバインダーを加えて直径2〜5mmの球状に造粒した。
(c)得られた粒状体を空気中にて1100℃で1h焼成し、複合酸化物(Sr2TiO4)を得た。
(d)それからこの複合酸化物(Sr2TiO4)を、20%CO2、80%N2気流中にて、700℃、1hの条件で焼成することにより、SrCO3とSrTiO3の混合体である逆シフト反応用触媒Bを得た。
【0029】
なお、焼成前後の試料の重量変化およびXRD測定結果から、上記(d)の工程で、Sr2TiO4の全てがSrCO3とSrTiO3へと分解し、結果としてSrCO3とSrTiO3のモル比が1.0:1.0の混合体(逆シフト反応用触媒)が得られていることを確認した。
【0030】
(3)逆シフト反応用触媒Cの製造
(a)BaCO3とAl23を、モル比2.0:1.0となるように秤量し、ボールミルにより混合した後に乾燥を行った。
(b)次に、この混合物にバインダーを加えて直径2〜5mmの球状に造粒した。
(c)得られた粒状体を空気中にて1100℃で1h焼成し、複合酸化物(Ba2Al25)を得た。
(d)それからこの複合酸化物(Ba2Al25)を、20%CO2、80%N2気流中にて、700℃、1hの条件で焼成することにより、BaCO3とBaAl24の混合体である逆シフト反応用触媒Cを得た。
【0031】
なお、焼成前後の試料の重量変化およびXRD測定結果から、上記(d)の工程で、Ba2Al25の全てがBaCO3とBaAl24へと分解し、結果としてBaCO3とBaAl24のモル比が1.0:1.0の混合体(逆シフト反応用触媒)が得られていることを確認した。
【0032】
(4)比較用の触媒(比較例)Dの用意
比較のため、逆シフト反応用に対する触媒活性を持たない石英砂を用意して、これを比較例の触媒Dとした。
(5)比較用の触媒(比較例)Eの用意
Al23とNiを主成分とする、メタンの水蒸気改質触媒(市販品)を用意して、これを比較例の触媒Eとした。
【0033】
[逆シフト反応試験および特性の評価]
(1)大気圧での逆シフト反応試験
本発明の実施例にかかる逆シフト反応用触媒Aと、比較例の触媒Dを用いて、大気圧下で、二酸化炭素と水素を含む原料ガスから、一酸化炭素と水蒸気を生成させる逆シフト反応試験を行い、触媒Aと触媒Dの特性を比較し、評価した。
【0034】
逆シフト反応試験は、図1に示す試験装置を用いて、以下に説明する方法により行った。
図1に示すように、ここで用いた試験装置は、外部にヒーター2を備えた内径 22mm、長さ300mmのステンレス製の反応管1と、反応管1にガスを供給するためのガス入口4と、反応管1からガスを排出させるためのガス出口5と、反応管内の圧力を調整するための圧力調整器6とを備えている。
【0035】
そして、反応管1に、上記のようにして製造した逆シフト反応用触媒(触媒AとD)3をそれぞれ5cc充填し、ヒーター2により、表1に示す所定の温度(700℃、750℃、800℃)に加熱し、反応管1のガス入口4から水素(H2)と二酸化炭素(CO2)の混合ガス(H2:CO2=63:37(容積比))を5NL/hの割合(SV(空間速度)=1000h-1)で2時間流通させた。
なお、試験中は、圧力調整器6は開放状態とし、大気圧(1気圧)の条件で、上述のように、2時間の逆シフト反応試験を行わせた。
【0036】
そして、試験中は反応管1のガス出口5から排出されるガスを分析装置に導入してガス組成を分析し、得られたガス組成(測定値)を、平衡計算を行って求めた平衡ガス組成(計算値)と比較した。
【0037】
表1に触媒AおよびDを用いて行った逆シフト反応試験における、反応温度と反応後のガス組成の関係を示す。
また、図2に触媒AおよびDを用いて行った逆シフト反応試験における反応後のガス組成(測定値)と、各条件における平衡ガス組成(計算値)を示す。
【0038】
すなわち、図2の1番上のグラフは、触媒AおよびDを用いた場合の、反応後のガス中のH2濃度と温度との関係、および各温度でのH2の平衡濃度を示している。
図2の上から2番目のグラフは、触媒AおよびDを用いた場合の、反応後のガス中のCO2濃度と温度との関係、および各温度でのCO2の平衡濃度を示している。
図2の上から3番目のグラフは、触媒AおよびDを用いた場合の、反応後のガス中のCO濃度と温度との関係、および各温度でのCOの平衡濃度を示している。
図2の上から4番目のグラフは、触媒AおよびDを用いた場合の、反応後のガス中のCH4濃度と温度との関係、および各温度でのCH4の平衡濃度を示している。
なお、図2の各グラフにおいて、点線は各成分についての平衡濃度(計算値)を示している。
【0039】
【表1】

【0040】
表1および図2に示すように、触媒D(活性のない石英砂)を用いた場合、反応後のガスは、各成分濃度が平衡濃度(計算値)とは大きくずれているが、BaCO3とBaTiO3からなる触媒Aを用いた場合には、ほぼ平衡組成に近いガスが得られており、本発明の実施例にかかる逆シフト反応用触媒Aが、逆シフト反応に対する触媒活性を有していることがわかる。
【0041】
(2)5気圧の加圧下での逆シフト反応試験
本発明の実施例にかかる逆シフト反応用触媒A,B,Cと、比較例の触媒Eを用いて、5気圧の加圧下で、二酸化炭素と水素を含む原料ガスから、一酸化炭素と水蒸気を生成させる逆シフト反応試験を行い、触媒A,B,Cと触媒Eの特性を比較し、評価した。
【0042】
逆シフト反応試験は、図1に示す試験装置を用い、反応管1に、上記のようにして製造した逆シフト反応用触媒(触媒A,B,CとE)3をそれぞれ5cc充填し、ヒーター2により、700℃に加熱し、反応管1のガス入口4から水素(H2)と二酸化炭素(CO2)の混合ガス(H2:CO2=63:37(容積比))を10NL/hの割合(SV(空間速度)=2000h-1)で2時間流通させることにより行った。
なお、試験中は圧力調整器6を操作することで反応管1内の圧力を5気圧に保持した。
また、試験中は反応管1のガス出口5から排出されるガスを分析装置に導入してガス組成を分析し、得られたガス組成(測定値)を、平衡計算を行って求めた平衡ガス組成(計算値)と比較した。
【0043】
表2に、各触媒を用いて、5気圧の加圧下で行った逆シフト反応試験における、反応後におけるガス組成(測定値)と、平衡ガス組成(計算値)を示す。
なお、この5気圧、700℃という条件は、平衡ガス組成においても、メタネーション反応により生成するメタン(CH4)が5.9%(vol%)の割合で存在するような条件である。
【0044】
【表2】

【0045】
表2より、市販のメタンの水蒸気改質触媒である比較例の触媒Eを用いた場合には、反応後の生成ガスは5.7%のCH4を含有していることがわかる。
これは、市販のCH4の水蒸気改質触媒である比較例の触媒Eが、逆シフト反応に対して触媒活性を有する一方、改質反応の逆反応であるメタネーションに対しても活性を有するため、反応後の生成ガスが、メタネーションも含めて平衡組成とほぼ同じガス組成(すなわち、5.7%のメタン(CH4)を含むガス組成)となったものと考えられる。
【0046】
一方、触媒A〜Cを用いた場合、反応後の生成ガスはCH4をほとんど含有していないことがわかる。これは、メタン改質活性を持たない本発明の実施例にかかる触媒A〜Cは、逆シフト反応のみを選択的に進行させるため、5気圧、700℃という、高温、加圧条件下でもメタン(CH4)の生成を抑えることができたものと考えられる。
また、表2より、触媒A〜Cを用いた場合、メタン(CH4)濃度が低く、H2濃度の高い、利用価値の高い合成ガスが得られることがわかる。
【0047】
また、合成ガスを原料に用いる液体燃料などの化学合成においては、一般に合成圧力が高いほど転化率が増加することが知られている。そのため、この化学合成プロセスの前段の、合成ガスの製造プロセス(逆シフト反応プロセス)においても、加圧プロセスを採用することが望まれるが、本発明によればその要請に応えることが可能になる。
また、前段の、合成ガスの製造プロセス(逆シフト反応プロセス)から、化学合成プロセスまでのプロセス全体を加圧条件で行うことにより、設備全体の小型化を図ることが可能になる。
【0048】
したがって、高温、加圧条件においてもメタン(CH4)の生成を抑えて、メタン含有率の低い、一酸化炭素と水素を高い割合で含む合成ガスを効率よく製造することが可能な本発明の触媒および本発明の合成ガスの製造方法は、極めて有意義であるということができる。
【0049】
また、上記実施例では、アルカリ土類金属として、Ba、Srを用いた場合を例にとって説明したが、アルカリ土類金属としてCaを用いた場合にも同様の作用効果が得られることを確認している。
【0050】
また、上記実施例では、アルカリ土類金属とともに複合酸化物を構成する成分として、Ti,Alを用いた場合について説明したが、Ti,Alに代えて、Zr,Fe,W、Moを用いた場合にも、同様の作用効果が得られることを確認している。
【0051】
本発明はさらにその他の点においても上記の実施例に限定されるものではなく、逆シフト反応用触媒の製造方法や、本発明の逆シフト反応用触媒を用いる場合の逆シフト反応の具体的な条件などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 反応管
2 ヒーター
3 逆シフト反応用触媒
4 反応管のガス入口
5 反応管のガス出口
6 圧力調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素から一酸化炭素と水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒であって、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩と、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分を含む複合酸化物と
を含有することを特徴とする逆シフト反応用触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物が、ATiO3,AAl24,AZrO3,AFe24,AWO4,A2WO5,AMoO4(AはCa,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属)であることを特徴とする、請求項1記載の逆シフト反応用触媒。
【請求項3】
二酸化炭素と水素から一酸化炭素と水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒の製造方法であって、
Ca,SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属と、Ti,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分との複合酸化物を合成する工程と、
前記複合酸化物に二酸化炭素を吸収させて炭酸塩を生成させる工程と
を含むことを特徴とする逆シフト反応用触媒の製造方法。
【請求項4】
二酸化炭素と水素を含む原料ガスを、700℃以上の温度条件で、請求項1または2記載の逆シフト反応用触媒と接触させて、逆シフト反応させることを特徴とする合成ガスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194534(P2010−194534A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20141(P2010−20141)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】