説明

逆止弁および複合弁

【課題】可撓性部材にて構成された弁体に大きな逆圧がかかったとしても、閉弁時のシール性能を安定に維持できる逆止弁を提供する。
【解決手段】ある態様の逆止弁においては、主弁体72が、ボディ70に摺動可能に支持される本体86と、本体86に支持されて主弁座80に着脱する可撓性を有する円板状の弁部材92と、本体86から半径方向外向きに延出し、弁部材92を主弁座80とは反対側にて支持するとともに、主弁座80との対向面における半径方向所定位置にその半径方向外向きに向かうほど弁部材92から離間する切り欠き面が形成された支持部88と、を含む。そして、弁部材92と主弁座80との当接部の径をD1、切り欠き面の基端部の径をD2、弁部材92の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次圧側から一次圧側への作動流体の逆流を防止するための逆止弁、およびその逆止弁を含む混合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境にやさしく光熱費も比較的低く抑えられる等の理由から貯湯式給湯装置が普及しつつある。この貯湯式給湯装置は、例えば自然冷媒である二酸化炭素等を使ったヒートポンプシステムによって大気中の熱を汲み上げ、給湯に必要な熱エネルギーとして利用するものであり、熱源としてのヒートポンプユニットと貯湯タンクにて構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
貯湯タンクの下部には給水管が接続され、上水道から低温水が供給される。この低温水は、ヒートポンプユニットに送られて熱交換がなされ、高温の湯となって貯湯タンクの上部に戻される。その結果、貯湯タンクには上部に高温の湯水(高温水)、中間部に中間温度の湯水(中温水)、下部に低温の湯水(低温水)が存在する温度成層が形成される。貯湯タンクの高温層には給湯管が接続され、下流側で給水管と合流する。給湯管と給水管との合流部には混合弁が設けられ、給湯管を流れる高温水と給水管を流れる低温水との混合比を調整して下流側に流す温水の温度調整を行う。このような構成においては、混合弁を介して混合された湯水が給水管や給湯管に逆流しないよう、その混合弁の上流側に逆止弁が設けられることが多い。
【0004】
ところで、このような給湯装置に用いられる逆止弁には、そのシール性を高めるために、弁体に可撓性のあるパッキンを取り付けるものも多い(例えば特許文献2参照)。閉弁時にそのパッキンを弁座に密着させることで、そのシール性を高く維持するものである。ただし、パッキンの過度な変形を防止して閉弁時の安定性を確保するために、弁体におけるパッキンの背部には剛体からなる支持部が所定の間隙を空けるように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−32996号公報
【特許文献2】特開2010−96298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような逆止弁は、パッキンの支持部とは反対側に支持構造が少ないことから、何らかの要因で想定外に大きな逆圧が生じた場合、パッキンが弁座から脱落してしまうおそれがあった。このような脱落があると、逆止弁はその機能を果たせなくなるため、その対策を講じておく必要がある。なお、このような問題は給湯装置に限らず、他の流体機器においても生じうると考えられる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、可撓性部材にて構成された弁体に大きな逆圧がかかったとしても、閉弁時のシール性能を安定に維持できる逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の逆止弁は、一次圧側と二次圧側とをつなぐ流体通路が設けられたボディと、ボディに一体に設けられた円環状の弁座と、弁座に二次圧側から着脱して弁部を開閉するとともに、一次圧と二次圧との差圧が開弁差圧よりも小さくなったときに閉弁して作動流体の順方向の流れを遮断する弁体と、を備える。弁体は、ボディに摺動可能に支持される本体と、本体に支持されて弁座に着脱する可撓性を有する円板状の弁部材と、本体から半径方向外向きに延出し、弁部材を弁座とは反対側にて支持するとともに、弁座との対向面における半径方向所定位置にその半径方向外向きに向かうほど弁部材から離間する切り欠き面が形成された支持部と、を含む。そして、弁部材と弁座との当接部の径をD1、切り欠き面の基端部の径をD2、弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立する。
【0009】
この態様によれば、閉弁時には可撓性を有する弁部材が弁座に着座するため、逆止弁としてのシール性能を高く維持することができる。一方、弁部材と弁座との当接部の径をD1、支持部における切り欠き面の基端部の径をD2、弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立する。このため、仮に逆止弁に想定外の大きな逆圧がかかったとしても、弁座の当接部と支持部の基端部との間に弁部材の周縁部近傍がしっかりと挟持されるようになり、弁座からの弁部材の脱落を防止することができる。また、このとき弁部材における挟持箇所が圧縮されるため、その挟持部よりも周縁部の厚みが相対的に大きくなる。その結果、その周縁部がストッパの機能を発揮して弁部材の半径方向内向きへの変位を抑制し、弁部材の脱落防止効果をさらに高めるようになる。このとき、弁部材が挟持部において弁座のみならず支持部にも密着するため、逆圧(二次圧)が弁部材の背部、つまり弁部材と支持部との間に作用することを防止するか、少なくともその影響を相当低減することができるようになる。その結果、弁部材が大きな背圧により弁座から脱落するといった事態も防止できる。すなわち、この態様の逆止弁によれば、弁体に大きな逆圧がかかったとしても、そのシール性能を安定に維持することができる。
【0010】
本発明の別の態様は複合弁である。この複合弁は、第1の作動流体を導入する第1導入通路と、第2の作動流体を導入する第2導入通路と、第1導入通路と第2導入通路との間に設けられて第1の作動流体と第2の作動流体とを混合する合流室と、混合された作動流体を導出する導出通路とが形成された共用のボディと、合流室に設けられて第1導入通路と第2導入通路との開度比率を調整する混合弁体と、ボディに取り付けられて混合弁体を駆動する駆動部とを備え、第1の作動流体と第2の作動流体との混合比を調整する混合弁と、第1導入通路および第2導入通路の少なくとも一方に設けられた逆止弁とを備える。
【0011】
そして、逆止弁は、ボディに一体に設けられた円環状の弁座と、弁座に混合室側から着脱して弁部を開閉するとともに、作動流体を導入する側の一次圧と混合室側の二次圧との差圧が開弁差圧よりも小さくなったときに閉弁して作動流体の順方向の流れを遮断する弁体と、を備える。弁体は、ボディに摺動可能に支持される本体と、本体に支持されて弁座に着脱する可撓性を有する円板状の弁部材と、本体から半径方向外向きに延出し、弁部材を弁座とは反対側にて支持するとともに、弁座との対向面における半径方向所定位置にその半径方向外向きに向かうほど弁部材から離間する切り欠き面が形成された支持部と、を含む。そして、弁部材と弁座との当接部の径をD1、切り欠き面の基端部の径をD2、弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立する。
【0012】
この態様によると、共用のボディに混合弁と逆止弁とを組み付けてユニット化することで、取り扱いの容易な複合弁を提供できるようになる。そして、その複合弁に組み込まれる逆止弁について上述と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可撓性部材にて構成された弁体に大きな逆圧がかかったとしても、閉弁時のシール性能を安定に維持できる逆止弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の逆止弁が適用される貯湯式給湯装置の構成を表すシステム図である。
【図2】制御弁ユニットの全体構成を表す部分断面図である。
【図3】第1逆止弁の構成を表す断面図である。
【図4】第1逆止弁の動作を表す断面図である。
【図5】主弁体の脱落防止機能を表す断面図である。
【図6】実施形態の脱落防止機能が作用しない場合の比較例を表す拡大断面図である。
【図7】第2逆止弁の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態の逆止弁が適用される貯湯式給湯装置の構成を表すシステム図である。本実施形態の給湯装置は、貯湯ユニット10とヒートポンプユニット12を備える。貯湯ユニット10は、貯湯タンク14のほか、湯水を循環または供給するための配管、湯水の流れを制御する制御弁、湯水の温度や流量を検出するためのセンサ等を備える。
【0016】
上水道から供給される低温水は、給水管16によって貯湯ユニット10に供給される。給水管16は、貯湯ユニット10内にて分岐し、その一方である第1給水管18が貯湯タンク14の下部に接続されている。貯湯タンク14とヒートポンプユニット12との間には沸上循環回路が形成されている。すなわち、貯湯タンク14の下部に接続された導出管20がヒートポンプユニット12に接続され、ヒートポンプユニット12に接続された戻り管22が貯湯タンク14の上部に接続されている。
【0017】
このような構成により、貯湯タンク14には上部に高温水、中間部に中温水、下部に低温水が存在する温度成層が形成される。貯湯タンク14の下部に溜まった冷温水は、ヒートポンプユニット12にて熱交換されて高温水となって貯湯タンク14に戻される。導出管20には、このような沸上循環回路における湯水の循環を促進するためのポンプ24が設けられている。
【0018】
一方、貯湯タンク14の上部には、高温水を導出する給湯管26が接続されている。給水管16から分岐した他方である第2給水管28と給湯管26とが下流側で接続され、それらの合流部において高温水と冷温水とが混合される。そして、その混合によって適温となった湯水が、配管30を介して浴槽、台所その他の給湯設備に供給される。給湯管26と第2給水管28との接続点には制御弁ユニット32が設けられている。
【0019】
制御弁ユニット32は、共用のボディに混合弁34、第1逆止弁36および第2逆止弁38を一体に組み付けた複合弁である。混合弁34は、給湯管26を介して供給された高温水と、第2給水管28を介して供給された低温水との混合比を調整し、配管30に適温の湯水を導出する。配管30には上流側から温度センサ40、流量センサ42が設けられている。図示しない制御部は、温度センサ40の温度を取得し、使用者が図示しないリモートコントローラにて設定した給湯温度となるよう混合弁34の開度を制御する。一方、第1逆止弁36は、給湯が停止されたときに合流部の湯水が第2給水管28に逆流することを防止する。第2逆止弁38は、給湯が停止されたときに合流部の湯水が給湯管26に逆流することを防止する。なお、制御弁ユニット32の具体的構成については後述する。
【0020】
一方、ヒートポンプユニット12は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷凍サイクルを備える。この冷凍サイクルは圧縮機、熱交換器、膨張弁、蒸発器を含む冷媒循環回路を備えるが、それらの構成および動作については公知であるため、その詳細な説明を省略する。上述の沸上循環回路を流れる低温水は、その熱交換器を経る際に沸き上げられて高温水となる。
【0021】
次に、制御弁ユニット32の具体的構成について説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に部材の位置関係を表現することがある。
図2は、制御弁ユニット32の全体構成を表す部分断面図である。
制御弁ユニット32は、樹脂材を一体成形して得られたボディ50を有し、そのボディ50に混合弁34、第1逆止弁36および第2逆止弁38を一体に組み付けて構成されている。ボディ50の中央には高温水と低温水とを合流させる合流室52が設けられ、その上部に混合弁34が組み付けられ、下部には円筒状に延出する導出通路54が設けられている。ボディ50の一方の側部には円筒状に延出する第1導入通路56が設けられ、他方の側部には円筒状に延出する第2導入通路58が設けられている。第1導入通路56と第2導入通路58とは同軸状に設けられ、導出通路54と直角に接続されている。第1導入通路56は第2給水管28に接続され、第2導入通路58は給湯管26に接続され、導出通路54は配管30に接続される。
【0022】
混合弁34は、第1導入通路56および第2導入通路58の各開度を調整するための弁部を有する弁本体60と、弁部を駆動する駆動部としてのモータユニット62を備える。弁本体60は、ボディ50の上端開口部に圧入された円筒状のガイド部材64と、ガイド部材64に回転自在に支持された段付円筒状の弁駆動体66を備える。ガイド部材64の外周面とボディ50の内周面との間には、シール用のOリングが介装されている。
【0023】
弁駆動体66は、その上半部がガイド部材64に摺動可能に支持された軸支部67となっており、その軸支部67の外周面にはガイド部材64との間のシール性を確保するためのOリングが嵌着されている。弁駆動体66の下半部は拡径されて弁体68(「混合弁体」として機能する)を構成し、その弁体68の内方に合流室52が形成されている。弁体68の側部には内外を連通させる菱形状の流量調整孔69が設けられている。流量調整孔69は弁体68の周方向に約210度にわたって形成されており、その周方向の中央部が第1導入通路56および第2導入通路58の一方に対向したときに他方の導入通路が遮断されるように構成されている。この流量調整孔69の回転位置を制御することにより、第1導入通路56と第2導入通路58との開度比率を調整でき、高温水と低温水との混合比を調整することができる。
【0024】
モータユニット62は、図示しないロータとステータとを含むステッピングモータとして構成され、ボディ50の上端開口部を封止するように取り付けられている。弁本体60の上端部はロータに連結されており、ロータの回転が弁体68の回転動作として表れるようになる。制御部は、温度センサ40により検出された温度に基づき、給湯設備に供給される湯水が使用者が設定した給湯温度となるよう弁体68の回転位置を制御する。
【0025】
第1導入通路56および第2導入通路58は、いずれも内方に一段縮径される段付円筒状に形成されている。第1逆止弁36は、第1導入通路56の大径部にOリングを介して圧入され、その一端は第1導入通路56の段部に係止されている。同様に、第2逆止弁38は、第2導入通路58の大径部にOリングを介して圧入され、その一端は第2導入通路58の段部に係止されている。
【0026】
図3は、第1逆止弁36の構成を表す断面図である。
第1逆止弁36は、樹脂材からなるボディ70の内方に大口径の主弁(第1の弁部)と小口径の副弁(第2の弁部)とを同軸状に収容するように構成される。主弁は二次圧側から一次圧側への作動流体の流れを防止し、副弁は二次圧と一次圧との差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して作動流体の一部の逆流を許容し、二次圧の急上昇を防止するものである。なお、ここでいう「一次圧側」は第2給水管28側(上流側)が対応し、「二次圧側」は配管30側(下流側)が対応する。ボディ70の内方には主弁を開閉する主弁体72が配設され、主弁体72の内方には副弁を開閉する副弁体74が配設されている。
【0027】
ボディ70は、円筒状の本体76を有する。そして、本体76の一端部が縮径されて主弁孔78が形成され、その二次圧側開口端縁が内方に突出することにより円環状の主弁座80が形成されている。本体76の他端部には、リング状のガイド部82が圧入されている。ガイド部82は、その中央部が本体76の内方に向けて円ボス状に突出し、主弁体72を軸線方向に摺動可能に支持する。ガイド部82における円ボス部83の周りには、軸線に平行な貫通孔84が等間隔にて複数設けられている。
【0028】
主弁体72は、ボディ70に摺動可能に支持される樹脂材からなる本体86を有する。本体86は段付円筒状をなし、その軸線方向中間部に半径方向外向きに延出する支持部88が設けられている。支持部88は円板状をなし、その周縁角部がテーパ状に面取り(例えば0.1〜1.0mm程度のC面取り)されている。本体86は、支持部88よりも主弁座80側の部分が先端に向けて外径が徐々に大きくなるテーパ部90となっており、そのテーパ部90に嵌着させるように弁部材92が組み付けられている。
【0029】
弁部材92は、可撓性を有する円板状のゴムからなり、その中央に軸線方向に同径にて貫通形成された円形の嵌合孔を有し、その嵌合孔がテーパ部90に外嵌されるようにして本体86に組み付けられる。このため、本体86の弁部材92に対する締め代は、支持部88から離れるほど大きくなる。弁部材92は、半径方向の内半部よりも外半部の厚みが小さくなっており、その外半部と支持部88との間に間隙が形成されるようになる。この間隙は、閉弁時に弁部材92の外半部が適度に撓める大きさに設定されている。
【0030】
本体86の先端部には、ばね受け94が嵌着されている。ばね受け94は有底円筒状をなし、その開口端部が本体86の先端部に嵌合して固定されている。ばね受け94には軸線に沿った貫通孔96が設けられている。弁部材92は、その内半部が支持部88とばね受け94との間に挟まれるように支持されている。主弁体72は、弁部材92がその周縁部にて主弁座80に着脱することにより主弁を開閉する。支持部88とガイド部82との間には、主弁体72を閉弁方向に付勢するスプリング98(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0031】
一方、本体86内には、その軸線方向の貫通孔により副通路が設けられ、その軸線方向中央部に半径方向内向きに延出する区画部100が設けられている。そして、その区画部100の内周部により副弁孔102が形成され、その一次圧側開口端部により副弁座104が形成されている。副弁体74は、本体86の内方に配設され、一次圧側から副弁座104に着脱して副弁を開閉する。副弁体74は、主弁体に摺動可能に内挿される樹脂材からなる支持体106と、支持体106の端面中央に圧入された可撓性部材(本実施形態ではゴム)からなる副弁部材108を有する。
【0032】
支持体106は段付円柱状をなし、その副弁座104との対向面中央部に円形の凹部が形成されている。副弁部材108は円柱状をなし、支持体106から一部を突出させるようにその凹部に圧入されている。すなわち、剛体からなる支持体106によって副弁部材108の変形が規制されているため、副弁の閉弁圧の大きさにかかわらず、副弁体74の軸線方向への安定した摺動性を維持することができる。なお、副弁部材108の外周面には軸線に平行な連通溝110が周方向に等間隔で複数設けられており、作動流体の流通性を確保している。支持体106とばね受け94との間には、副弁体74を閉弁方向に付勢するスプリング112(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0033】
そして、このような構成において、図示のように弁部材92と主弁座80との当接部の径をD1、支持部88におけるテーパ面の基端部(テーパ面の始まり箇所)の径をD2、弁部材92の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立するように構成されている。その結果、仮に第1逆止弁36に想定外の大きな逆圧がかかったとしても、弁部材92の周縁部が主弁座80と支持部88との間にしっかりと挟持されるようになり、主弁座80からの弁部材92の脱落を防止することができる。以下、第1逆止弁36の動作とともにそのような脱落防止機能について詳細に説明する。
【0034】
図4は、第1逆止弁36の動作を表す断面図である。(A)は第1逆止弁36(主弁)の開弁状態を示し、(B)は主弁および副弁の閉弁状態を示し、(C)は副弁の開弁状態を示し、(D)は逆圧が過大となった状態を示している。
【0035】
本実施形態における給湯装置の動作時には、上述のように、混合弁34により給湯管26と第2給水管28との開度比率が調整されることにより、合流部にて適温に調整された湯水が給湯設備に供給される。このとき、第1逆止弁36の前後差圧がその開弁差圧(スプリング98の付勢力に抗して主弁体72を開弁させることが可能な差圧)よりも大きくなり、図4(A)に示すように、第1逆止弁36が開弁状態(全開状態)となる。なお、ここでいう「第1逆止弁36の開弁状態」とは、第1逆止弁36がその逆流防止機能を作用させる前の状態、つまり主弁の開弁状態を意味する。
【0036】
一方、給湯装置が停止されると、第1逆止弁36の前後差圧がその開弁差圧よりも小さくなる。このため、図4(B)に示すように、第1逆止弁36は閉弁状態となる。ただし、その閉弁状態において第1逆止弁36に作用する逆圧(二次圧と一次圧との差圧)が設定差圧(スプリング112の付勢力に抗して副弁体74を開弁させることが可能な差圧)よりも大きくなると、図4(C)に示すように、主弁の閉弁状態が維持されつつ、副弁が開弁される。これにより、第1逆止弁36の上流側圧力の急上昇を抑制でき、貯湯ユニット10の安定性を確保することができる。
【0037】
そして、このような状況において、仮に想定外の大きな逆圧が作用した場合には、図4(D)に示すように、弁部材92が主弁座80に強く押しつけられ、本体86とともに主弁孔78に引き込まれる方向に変位するようになる。しかしながら、主弁体72における上述の弁構成により脱落防止機能が作用するため、弁部材92の主弁座80からの脱落は防止される。この脱落防止機能の詳細について、以下に説明する。
【0038】
図5は、主弁体の脱落防止機能を表す断面図である。(A)は図4(C)のA部拡大図であり、(B)は図4(D)のA部拡大図である。図6は、実施形態の脱落防止機能が作用しない構成による比較例を表す拡大断面図である。(A)は主弁の通常の閉弁状態を示し、図5(A)に対応する。(B)および(C)は逆圧が過大となった状態を示し、図5(B)に対応する。
【0039】
既に述べたが、本実施形態においては図5(A)に示すように、弁部材92と主弁座80との当接部の径をD1、支持部88におけるテーパ面の基端部の径をD2、弁部材92の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立する。このため、仮に図5(B)に示すように第1逆止弁36に想定外の大きな逆圧がかかったとしても、弁部材92と主弁座80との当接部P1と、支持部88のテーパ面の基端部P2との間に、弁部材92の周縁部近傍がしっかりと挟持され、弁部材92の弁部材92への脱落防止機能を発揮するようになる。さらに、このとき弁部材92における挟持箇所が幅方向に圧縮されるため、その挟持部よりも外側部分(周縁部)の厚みが大きくなる。その結果、その周縁部がさらに弁部材92の半径方向内向きへの動作に対するストッパの機能を発揮し、弁部材92の脱落防止効果をより高めるようになる。
【0040】
また、弁部材92がその挟持部において主弁座80のみならず支持部88にも環状に密着するようになるため、逆圧(二次圧)が弁部材92の背部、つまり弁部材92の外半部と支持部88との間隙に作用することを抑制できるようになる。その結果、弁部材92がその背圧により主弁孔78へ脱落するといった事態も防止することができる。すなわち、主弁体72に大きな逆圧がかかったとしても、そのシール性能を安定に維持することができる。
【0041】
さらに、本実施形態においては上述のように、テーパ部90の外径が支持部88との境界位置から先端側(図の上端側)に向けて徐々に大きくなる形状であるのに対し、弁部材92の内径は一定に形成されているため、テーパ部90の弁部材92に対する締め代は、支持部88から離れるほど大きくなる。このため、仮に弁部材92に背圧が作用して弁部材92を変位させようとしても、その変位にともなって弁部材92とテーパ部90とがより密着するようになる。このため、両者のシール性が一層高められ、両者のクリアランスを介して作動流体が逆流するといった事態を防止することができる。
【0042】
これに対し、例えば図6(A)に示すように、本実施形態のような脱落防止機能のない比較例を想定する。この比較例にかかる逆止弁においては、主弁体172における支持部188の周縁部にテーパ面が設けられておらず、また、弁部材192が嵌合する外周面190にテーパ部も設けられていない。
【0043】
このため、仮に図6(B)に示すように逆止弁に想定外の大きな逆圧がかかると、弁部材192はその外周縁P3において支持部188の平坦面に当接するようになるが、主弁座80と支持部188との間に上記実施形態のような対向する凸部による挟持力を作用させることができない。しかも、逆圧(二次圧)が弁部材192の背部に作用して弁部材192が支持部188から離間する方向に押し上げられるようになる。その結果、図6(C)に示すように、弁部材192が主弁孔78に脱落しやすくなる。このような脱落が生じると、逆止弁はその機能を有効に発揮できなくなる。言い換えれば、本実施形態によれば、上述した脱落防止構造によりこうした問題を解決することができる。
【0044】
図7は、第2逆止弁38の構成を表す断面図である。なお、第2逆止弁38は副弁を備えていない点を除いては第1逆止弁36とほぼ同様の構成を有する。このため、第1逆止弁36と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
第2逆止弁38は、ボディ70の内方に大口径の主弁のみを収容するように構成される。主弁は二次圧側から一次圧側への作動流体の流れを防止する。なお、ここでいう「一次圧側」は給湯管26側(上流側)が対応し、「二次圧側」は配管30側(下流側)が対応する。ボディ70の内方には主弁を開閉する主弁体120が配設されている。
【0046】
主弁体120は、ボディ70に摺動可能に支持される樹脂材からなる本体122を有する。本体122は段付円柱状をなし、その軸線方向中間部に支持部88が設けられている。本体122は、支持部88から先端に向けてその外径が徐々に大きくなるテーパ部90となっており、そのテーパ部90に弁部材92が組み付けられている。本体122の先端部はフランジ状の係止部124となっており、支持部88と係止部124との間に形成される凹部に弁部材92の内周部が嵌着されている。本体122の弁部材92に対する締め代が支持部88から離れるほど大きくなるのは第1逆止弁36と同様である。
【0047】
そして、このような構成において、図示のように弁部材92と主弁座80との当接部の径をD1、支持部88におけるテーパ面の基端部の径をD2、弁部材92の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立するように構成されている。その結果、仮に第2逆止弁38に想定外の大きな逆圧がかかったとしても、弁部材92の周縁部が主弁座80と支持部88との間にしっかりと挟持されるようになり、弁部材92の主弁孔78への脱落を防止することができる。なお、この脱落防止機能は第1逆止弁36のものと同様であるため、その説明については省略する。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0049】
上記実施形態においては、支持部88の構造として、その周縁部にC面取りによるテーパ面を施す例を示したが、例えばR面取りによる曲面状としてもよく、半径方向外向きに向かうほど弁部材92から離間する切り欠き面であれば種々の形状を採用することができる。また、上記実施形態では、弁部材92の外半部の厚みを内半部よりも小さくし、支持部88についてはその中央からテーパ面の基端部にかけて平坦面とする例を示した。変形例においては逆に、弁部材を一定の厚みにて形成する一方、支持部における弁部材との対向面を段付形状としてもよい。具体的には、支持部の外半部を内半部に対して一段下げるような段付形状とし、弁部材の外半部との間に所定の間隙を設けてもよい。ただしその場合にも、支持部の周縁部には半径方向外向きに向かうほど弁部材から離間する切り欠き面を設け、弁部材と弁座との当接部の径をD1、切り欠き面の基端部の径をD2、弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立するようにする。
【0050】
上記実施形態においては、図2に示したように、制御弁ユニット32の第1導入通路56(つまり第2給水管28側の導入通路)に主弁と副弁を備える第1逆止弁36を配設し、第2導入通路58(つまり給湯管26側の導入通路)に主弁のみを備える第2逆止弁38を配設する構成を示した。変形例においては、逆に、第1導入通路56に第2逆止弁38を配設し、第2導入通路58に第1逆止弁36を配設してもよい。あるいは、第1導入通路56および第2導入通路58の双方に第1逆止弁36を配設してもよい。または、第1導入通路56および第2導入通路58の双方に第2逆止弁38を配設してもよい。また、第1導入通路56および第2導入通路58の一方のみにいずれかの逆止弁を配設するようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、本発明の逆止弁を作動流体として湯水の逆流を防止する制御弁として構成し、貯湯式給湯装置に適用する例を示した。変形例においては、即時式給湯装置の必要箇所に適用してもよい。また、例えば冷媒を作動流体とする冷凍サイクルなど、二次圧側から一次圧側への逆流防止が必要なシステムであれば、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 貯湯ユニット、 12 ヒートポンプユニット、 14 貯湯タンク、 16 給水管、 18 第1給水管、 20 導出管、 22 戻り管、 26 給湯管、 28 第2給水管、 30 配管、 32 制御弁ユニット、 34 混合弁、 36 第1逆止弁、 38 第2逆止弁、 50 ボディ、 52 合流室、 54 導出通路、 56 第1導入通路、 58 第2導入通路、 60 弁本体、 62 モータユニット、 68 弁体、 69 流量調整孔、 70 ボディ、 72 主弁体、 74 副弁体、 78 主弁孔、 80 主弁座、 86 本体、 88 支持部、 90 テーパ部、 92 弁部材、 102 副弁孔、 104 副弁座、 106 支持体、 108 副弁部材、 120 主弁体、 122 本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧側と二次圧側とをつなぐ流体通路が設けられたボディと、
前記ボディに一体に設けられた円環状の弁座と、
前記弁座に二次圧側から着脱して弁部を開閉するとともに、一次圧と二次圧との差圧が開弁差圧よりも小さくなったときに閉弁して作動流体の順方向の流れを遮断する弁体と、
を備え、
前記弁体は、
前記ボディに摺動可能に支持される本体と、
前記本体に支持されて前記弁座に着脱する可撓性を有する円板状の弁部材と、
前記本体から半径方向外向きに延出し、前記弁部材を前記弁座とは反対側にて支持するとともに、前記弁座との対向面における半径方向所定位置にその半径方向外向きに向かうほど前記弁部材から離間する切り欠き面が形成された支持部と、
を含み、
前記弁部材と前記弁座との当接部の径をD1、前記切り欠き面の基端部の径をD2、前記弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立することを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弁体は、
円柱又は円筒状の前記本体の軸線方向中間部に前記支持部を有し、
前記本体における前記支持部の前記弁座側にその先端側に向けて外径が徐々に大きくなるテーパ部を有し、
前記弁部材は、
軸線方向に同径にて貫通形成された円形の嵌合孔を有し、
前記嵌合孔を前記テーパ部に外嵌させるようにして前記本体に取り付けられ、
半径方向の内半部が前記支持部に当接し、外半部が前記支持部と離間するように前記本体に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記弁部材は、半径方向の外半部が内半部よりも厚みが小さく形成され、その外半部にて前記弁座に着脱するように設けられ、
前記支持部は、前記本体の軸線に直角な平坦面にて前記弁部材に当接し、その外縁部に前記切り欠き面としてのテーパ面を有することを特徴とする請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁座としての主弁座と、
前記弁体として前記主弁座に着脱して第1の弁部を開閉する主弁体と、
前記主弁体を軸線方向に貫通する副通路に設けられた副弁座と、
前記副弁座に一次圧側から接離して第2の弁部を開閉するとともに、前記第1の弁部の閉弁時において二次圧と一次圧との差圧が設定差圧よりも大きくなったときに開弁して作動流体の逆流を許容する副弁体と、
をさらに備え、
前記副弁体は、
前記副弁座に着脱して前記第2の弁部を開閉する可撓性を有する副弁部材と、
前記主弁体に摺動可能に内挿されるとともに、前記副弁座との対向面中央部に前記副弁部材を収容するように支持する支持体と、
を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項5】
第1の作動流体を導入する第1導入通路と、第2の作動流体を導入する第2導入通路と、前記第1導入通路と前記第2導入通路との間に設けられて前記第1の作動流体と前記第2の作動流体とを混合する合流室と、混合された作動流体を導出する導出通路とが形成された共用のボディと、
前記合流室に設けられて前記第1導入通路と前記第2導入通路との開度比率を調整する混合弁体と、前記ボディに取り付けられて前記混合弁体を駆動する駆動部とを備え、前記第1の作動流体と前記第2の作動流体との混合比を調整する混合弁と、
前記第1導入通路および前記第2導入通路の少なくとも一方に設けられた逆止弁と、
を備える複合弁であって、
前記逆止弁は、
前記ボディに一体に設けられた円環状の弁座と、
前記弁座に混合室側から着脱して弁部を開閉するとともに、作動流体を導入する側の一次圧と前記混合室側の二次圧との差圧が開弁差圧よりも小さくなったときに閉弁して作動流体の順方向の流れを遮断する弁体と、
を備え、
前記弁体は、
前記ボディに摺動可能に支持される本体と、
前記本体に支持されて前記弁座に着脱する可撓性を有する円板状の弁部材と、
前記本体から半径方向外向きに延出し、前記弁部材を前記弁座とは反対側にて支持するとともに、前記弁座との対向面における半径方向所定位置にその半径方向外向きに向かうほど前記弁部材から離間する切り欠き面が形成された支持部と、
を含み、
前記弁部材と前記弁座との当接部の径をD1、前記切り欠き面の基端部の径をD2、前記弁部材の外径をD3とした場合に、D1<D2<D3の関係が成立することを特徴とする複合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87897(P2013−87897A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230369(P2011−230369)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】